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明細書 :ヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5740138号 (P5740138)
公開番号 特開2012-098114 (P2012-098114A)
登録日 平成27年5月1日(2015.5.1)
発行日 平成27年6月24日(2015.6.24)
公開日 平成24年5月24日(2012.5.24)
発明の名称または考案の名称 ヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法
国際特許分類 G01N  21/78        (2006.01)
FI G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2010-245242 (P2010-245242)
出願日 平成22年11月1日(2010.11.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)刊行物への発表 発行者名:静電気学会 刊行物名:静電気学会講演論文集2010 第34回静電気学会全国大会 発行日:平成22年9月14日 (2)刊行物への発表 発行者名:社団法人電気学会 刊行物名:電気学会研究会資料 パルスパワー放電合同研究会PPT-10-072~082・084 ED-10-112~122・124 発行日:平成22年10月21日
審査請求日 平成25年7月8日(2013.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】金澤 誠司
【氏名】市來 龍大
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査官 【審査官】谷垣 圭二
参考文献・文献 特開2007-163163(JP,A)
Mayank Sahni and Bruce R. Locke,Quantification of Hydroxyl Radicals Produced in Aqueous Phase Pulsed Electrical Discharge Reactors,Industrial & Engineering Chemistry Research,2006年,Vol.45,No.17,5819-5825
梶原淳史 等,レーザ誘起蛍光法による大気圧直流ストリーマ放電中でのOHラジカルの計測,電気関係学会九州支部連合大会講演論文集,2004年,59
飯島崇文 等,難分解性有害有機物処理への適用を目指すOHラジカル発生装置,東芝レビュー,2006年,Vol.61,No.8,40-43
Toshikazu Ohkubo et al,Streamer Corona Discharge Induced by Laser Pulses During LIF Measurements in a DC Non-thermal Plasma Reactor for NO Oxidation,Journal of Advanced Oxidation Technologies,2002年,Vol.5,No.2,129-134
S. Kanazawa et al,Diagnostics of NO oxidation process in a nonthermal plasma reactor: features of DC streamer-corona discharge and NO LIF profile,IEEE Transactions on Plasma Science,2004年,Vol.32,No.1,25-31
調査した分野 G01N 21/78
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の電極間において放電を断続的に繰り返すことによってヒドロキシラジカルを生成するヒドロキシラジカル生成手段によって液中に生成された液中ヒドロキシラジカルを測定するヒドロキシラジカル測定装置であって、
テレフタル酸を含む液体と、前記ヒドロキシラジカル生成手段とを内部に収容する容器と、
紫外線領域の波長の光を発する光源と、前記光の幅を拡張する光拡張手段とを有し、前記容器中の前記液体に前記光を照射する光照射手段と、
前記光の照射によって前記容器中の前記液体が発する蛍光の強度を検出する光検出手段と、
前記放電が断続的に繰り返される際の前記放電が行われていない期間において、前記光検出手段に前記蛍光の強度を検出させる制御手段と、
を備え
前記蛍光の強度から前記液中ヒドロキシラジカルを測定することを特徴とするヒドロキシラジカル測定装置。
【請求項2】
前記光拡張手段は、前記光源からの光の幅を拡張して通す光ファイバーと、前記光ファイバーの先端に取り付けたレンズからなることを特徴とする請求項1に記載のヒドロキシラジカル測定装置。
【請求項3】
一対の電極間において放電が断続的に繰り返されることによって容器内の液体中に生成された液中ヒドロキシラジカルを測定するヒドロキシラジカル測定方法であって、
前記容器内の前記液体にテレフタル酸を混合し、
前記容器内の前記液体に紫外光を照射して、前記ヒドロキシラジカルをトラップした前記テレフタル酸に蛍光を発生させ、前記放電が断続的に繰り返される際の前記放電が行われていない期間において、前記蛍光の強度を検出し、前記蛍光の強度から前記液中ヒドロキシラジカルを測定することを特徴とするヒドロキシラジカル測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法に関し、特に、液中に生成されたヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体中での放電や気液界面での放電は、水処理、殺菌、プラズマ医療から新規ナノ材料の創製というような多くの応用があり、高い注目を集めている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
水(HO)と接する放電により生成する高い酸化力をもつヒドロキシラジカル(OHラジカル)は、液中に含有する微生物の殺菌や溶解した難分解性有機化合物の処理に有効である。特に、水面直上に設置された放電極や水中に設置された放電極から発生する放電はヒドロキシラジカルを効率よく生成させることができる。そのため、ヒドロキシラジカルのモニタリングは重要であるが、液中でのヒドロキシラジカルの検出に利用できる方法は限られており、これまでのところ発光分光分析(OES)が繁用されている。
【0004】
一方、超音波化学や放射線科学の分野では、液中ヒドロキシラジカルの測定に化学プローブ法が用いられてる(例えば、非特許文献2参照)。なかでもテレフタル酸(TA)の水酸化反応を利用した方法は、簡便で再現性や感度の点でも優れている。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】B.R.Locke, M.Sato, P.Sunka, M.R.Hoffmann, J.-S.Chang: Ind.Eng.Chem.Res., 45(2006)882
【非特許文献2】X.Fang, G.Mark, C.Von Sonntag: Ultrason. Sonochem., 3(1996)57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の液中ヒドロキシラジカルの測定では、市販の蛍光分光光度計によって測定していた。その場合、ヒドロキシラジカルを生成しトラップさせた溶液を、蛍光分光光度計の装置の中に入れて測定する必要がある。
その場合、溶液の採取に生成装置を一旦停止させる場合もあることや溶液を輸送中に化学変化が起きる懸念もある。そのためヒドロキシラジカル生成直後の液中の状況が変化することやリアルタイムに観測することができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、ヒドロキシラジカル生成直後の液中の状況をリアルタイムに観測することができるヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0009】
第1のヒドロキシラジカルの測定装置(請求項1に対応)は、一対の電極間において放電を断続的に繰り返すことによってヒドロキシラジカルを生成するヒドロキシラジカル生成手段によって液中に生成された液中ヒドロキシラジカルを測定するヒドロキシラジカル測定装置であって、テレフタル酸を含む液体と、ヒドロキシラジカル生成手段とを内部に収容する容器と、紫外線領域の波長の光を発する光源と、光の幅を拡張する光拡張手段とを有し、容器中の液体に光を照射する光照射手段と、光の照射によって容器中の液体が発する蛍光の強度を検出する光検出手段と、放電が断続的に繰り返される際の放電が行われていない期間において、光検出手段に蛍光の強度を検出させる制御手段とを備え、前記蛍光の強度から液中ヒドロキシラジカルを測定することを特徴とする。
第2のヒドロキシラジカルの測定装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、光拡張手段は、光源からの光の幅を拡張して通す光ファイバーと、光ファイバーの先端に取り付けたレンズからなることを特徴とする。
第1のヒドロキシラジカルの測定方法(請求項3に対応)は、一対の電極間において放電が断続的に繰り返されることによって容器内の液体中に生成された液中ヒドロキシラジカルを測定するヒドロキシラジカル測定方法であって、前記容器内の前記液体にテレフタル酸を混合し、前記容器内の前記液体に紫外光を照射して、前記ヒドロキシラジカルをトラップした前記テレフタル酸に蛍光を発生させ、前記放電が断続的に繰り返される際の前記放電が行われていない期間において、前記蛍光の強度を検出し、前記蛍光の強度から前記液中ヒドロキシラジカルを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記特徴とする手段により、前記テレフタル酸溶液を用いることで生成したヒドロキシラジカルからヒドロキシテレフタル酸を形成させることを所定時間で単数回又は複数回行い、その都度又は継続して、紫外光をヒドロキシテレフタル酸に照射して蛍光を検出しその強度によりヒドロキシラジカルの含有量を精度良く測定することができるものである。これにより寿命の短いヒドロキシラジカルが生成されるその場においてリアルタイムでヒドロキシラジカル含有量の約全量を迅速正確に測定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の本実施形態に係るヒドロキシラジカルの測定装置の全体構成図である。
【図2】本発明の本実施形態に係るヒドロキシラジカルの測定装置による測定の原理を説明する図である。
【図3】本発明の本実施形態に係るヒドロキシラジカルの測定装置を用いての計測での制御プログラムのフローチャートである。
【図4】水面上パルス放電発生装置と放電により処理された液体をサンプリングしてヒドロキシラジカルを計測するための装置の概略図である。
【図5】5分間水面上パルス放電に晒されたテレフタル酸(TA)水溶液をサンプリングしてキュベットに入れ、LED光を照射したときのICCDによる観測画像である。
【図6】定量化のために分光器で測定した蛍光スペクトルの放電時間に対する変化を示すグラフである。
【図7】図6より求めたヒドロキシラジカルの濃度と放電時間との関係を示すグラフである。
【図8】発生したヒドロキシラジカルがテレフタル酸との反応により発生した蛍光の様子をその場においてリアルタイムで観測した様子を示す図である。
【図9】図8に示した図を元に、放電時間経過に対するヒドロキシラジカルの発生量(蛍光強度)をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。

【0013】
図1は、本発明の本実施形態に係るヒドロキシラジカルの測定装置の全体構成図である。本実施形態では、ヒドロキシラジカルを生成するヒドロキシラジカル生成手段として放電発生装置を用いて説明する。ヒドロキシラジカルの測定装置10は、容器として例えば水槽11と放電発生装置(放電発生手段)12と光照射装置(光照射手段)13と光検出装置(光検出手段)14と制御装置15から構成される。

【0014】
水槽11は、紫外光から可視光の範囲の光を透過する透明体(例えば、石英ガラス、プラスチック等の透明樹脂)で形成されており、水面上放電や水中放電によってヒドロキシラジカルを生成させ、そのヒドロキシラジカルをトラップするテレフタル酸を含む液体16を入れるための水槽である。
尚、水槽11は光照射手段装置13と光検出装置(光検出手段)14を水槽11の液面上方に設けて、水槽内液体16に直接光照射し、蛍光受光する場合は水槽を透明体にする必要はない。

【0015】
放電発生装置12は、水槽11内に設けられた電極12aと電極12bの間で水面上放電や水中放電をさせるための装置である。電極12aと電極12bは上下に可動であり、放電極である電極12aを水中に挿入すれば水中放電が生成され、水面と接するか水面から引き揚げて設置すれば水面上放電が生成される。

【0016】
光照射装置13は、紫外光を水槽11の液体16に照射する装置であり、310nmの波長の紫外光を発光する光源13aと、その光源13aからの光を通す光ファイバー13bから成る。光源13aは、例えば、半導体レーザ、発光ダイオードなどの単色光源、あるいは、水銀ランプ、キセノンランプなどの紫外領域波長を持つ光源である。また、連続スペクトルを持つ光源からの光を単一波長の光を透過する干渉フィルタなどの複数のフィルタを介して照射するようにしてもよい。

【0017】
光照射装置13は、紫外領域の波長の光を発光する光源13aと光源13aからの光を広げる光拡張手段13eを有している。光拡張手段13eは、光源13aからの光の幅を拡張して通す光ファイバー13bと、光ファイバー13bの先端に取り付けたレンズ13cからなる。

【0018】
この紫外光は、ヒドロキシラジカルをトラップしたテレフタル酸、すなわち、ヒドロキシテレフタル酸に照射されることによって、可視光領域での蛍光を発生する。そして、この蛍光強度を測定することにより、液体中のヒドロキシラジカルの量を測定することができる。また、光拡張手段13eである光ファイバー13bとレンズ13cによって紫外光が拡張されることによって蛍光の空間分布を観察することができる。

【0019】
図1に示す光検出装置14は、放電発生装置12による水面上放電や水中放電で生成したヒドロキシラジカルをトラップしたテレフタル酸によって形成されたヒドロキシテレフタル酸が発する蛍光を検出する装置である。光検出装置14としては、蛍光スペクトルを観測するためには、スペクトロメーターを用い、蛍光分布を観測するには、デジタルカメラやICCDを用いることができる。図1では、光検出装置14としてICCDを用いた例を示している。

【0020】
制御装置15は、パーソナルコンピュータ等からなり、放電発生装置12と光検出装置14の動作とそのタイミングを制御し、放電発生装置12により所定の時間間隔で水面上放電や水中放電を起こし、放電と放電の間に光検出装置14により蛍光を検出する。この制御装置15は、操作部(図示せず)からの操作指示により、放電の時間間隔の調整、光検出装置14の測定タイミング等の制御等を行う。

【0021】
図2は、ヒドロキシラジカルの測定装置10による測定の原理を示す。テレフタル酸(TA)は、ヒドロキシラジカルのスカベンジャーとなり、水酸化反応によりヒドロキシテレフタル酸(HTA)が生成する。HTAに波長310nmの励起光を入射すると波長425nmの蛍光を発する。その蛍光を測定することにより、ヒドロキシラジカルの量の情報を得ることができる。

【0022】
次に、図1~図3を用いてヒドロキシラジカルの測定装置10の動作について説明する。

【0023】
本実施形態に係るヒドロキシラジカルの測定装置10を用いての測定は、例えば、操作部、演算部、記憶部、表示部を備えたパーソナルコンピュータ等を用いて形成した制御装置15により行われ、そのパーソナルコンピュータの記憶部に記憶された制御プログラムにより制御されて実行される。図3は、制御プログラムのフローチャートである。

【0024】
まず、操作者は、水槽11に液体16を入れた後、本実施形態のヒドロキシラジカルの測定装置10の動作をパーソナルコンピュータから実行命令を入力することにより開始させる。ヒドロキシラジカルの測定装置10は、動作開始とともに、以下に記述するフローチャートに従った制御プログラムが実行される。光照射装置13により、紫外光を透明体で形成された水槽11内の液体に照射する。まず、パーソナルコンピュータ15からの制御信号により透明体で形成された水槽11内のテレフタル酸を含む液体に放電発生装置12によって水面上放電や水中放電を所定の時間間隔で行う(ステップS11:放電工程)。光照射装置13により、紫外光を透明体で形成された水槽11内の液体16に照射されている状態で放電工程の間に又は放電工程直後に光検出装置14により、放電発生装置12による水面上放電や水中放電で生成したヒドロキシラジカルをトラップしたテレフタル酸によって形成されたヒドロキシテレフタル酸が発する蛍光を検出する(ステップS12:光検出工程)。検出した結果をパーソナルコンピュータ15の表示部により、数値データやグラフあるいは分布図として表示する(ステップS13)。ヒドロキシラジカルの測定装置10は、操作者の停止指示、または、所定量のデータを取得した後に計測を終了する。

【0025】
以上の測定により、ヒドロキシラジカルの量を測定することができる。

【0026】
(実施例1)
まず、実施例1では、水面上放電で生成された液中ヒドロキシラジカルの本発明による測定法の確認として、図4に示す測定装置19を用いて、次の例を示した。放電発生装置20を備えた第1の水槽21内のテレフタル酸を含む液体22に放電発生装置20によって水面上放電を行う放電工程と、透明体で形成された第2の水槽23に、第1の水槽21から水面上放電を行った後の液体22を入れる液体移動工程と、光照射装置13により、紫外光を透明体で形成された第2の水槽23内の液体22に照射し、光検出装置14により、放電発生装置20による水面上放電で生成したヒドロキシラジカルをトラップしたテレフタル酸によって形成されたヒドロキシテレフタル酸が発する蛍光を検出する光検出工程と、を含む測定方法による例を示す。

【0027】
図4に水面上パルス放電発生装置(放電発生装置)20と放電により処理された液体22をサンプリングしてヒドロキシラジカルを計測するための装置の概略図を示す。放電部は、直径6mmのステンレスパイプに取り付けたノズル電極20a(外径0.57mm、内径0.31mm、長さ15mm)と液体22で満たした矩形リアクター(第1の水槽)21(80mm×20mm、深さ20mm)よりなる。ノズル電極20aの先端は水面上約1mmの位置に設定し、矩形リアクター21の底面が接地した平板電極(カーボン板)20bとなる。水面上放電は、スパークギャップスイッチによるコンデンサの充放電で発生するパルス電圧をノズル電極20aに印加することで発生させた。

【0028】
また、本実施例では、LED光源(光照射装置)13(Sandhouse Design、中心波長310nm、FWHM10nm)と簡易分光器(光検出装置)14b(Ocean Optics,USB2000)からなる計測システムを構築した。放電開始からの任意の時間で液体をサンプリングして蛍光測定を行った。また、蛍光はICCDカメラ(光検出装置)14a(Andor,i-Star)でも観測した。OHラジカルの定量化には標準物質のHTAを用いて検量線を作成して換算した。使用する試料は、0.2mMのTA水溶液である。TAは、酸性や中性の水には溶けないため、溶媒として蒸留水をNaOH1.4mMの濃度に調整したものを用いた。液体の導電率は、105μS/cm、pHは8である。なお、図4中の符号30は、ミラーを示し、符号31は、暗箱を示す。

【0029】
5分間水面上パルス放電に晒されたTA水溶液22をサンプリングしてキュベット(第2の水槽)23に入れ、LED光を照射したときのICCD(光検出装置)14aによる観測画像を図5に示す。放電で発生したOHラジカルが水面から水中のごく浅い部分に拡散される間にTAと反応し、安定なHTAとなる。図5よりLED光が透過する部分から蛍光が出ていることが分かる。放電時間が長くなると蛍光強度も強くなった。室内を暗くすれば目視でも蛍光が観測された。

【0030】
定量化のために分光器で測定した蛍光スペクトルの放電時間に対する変化を図6に示す。図7は、図6より求めたOHラジカルの濃度と放電時間との関係である。水中でのOH補足効率を考慮して補正してある。本実施例の場合、放電で生成したOHラジカルはTAと反応しHTAとなると変化しないため、ここで観測しているOHラジカルは、時間経過とともに増加することになる。OHラジカル生成率を推定すると10-9M/sのオーダーとなる。

【0031】
(実施例2)
次に、本発明の本実施形態で説明したヒドロキシラジカルの測定装置および測定方法による実施例を示す。

【0032】
図1に示したヒドロキシラジカルの測定装置10を用いて、水中放電を、スパークギャップスイッチによるコンデンサの充放電で発生するパルス電圧をノズル電極12aに印加することで発生させた。正極性パルス電圧は、24.5kVである。

【0033】
放電開始からの任意の時間で液体をリアルタイムにICCDカメラ(光検出装置)14(Andor,i-Star)で観測した。使用する試料は、0.2mMのTA水溶液である。TAは、酸性や中性の水には溶けないため、溶媒として蒸留水をNaOH1.4mMの濃度に調整したものを用いた。液体の導電率は、127μS/cm、pHは9.6である。

【0034】
テレフタル酸を入れたリアクター内で直接放電を行い、OHラジカルが発生する。発生したOHラジカルはテレフタル酸との反応により蛍光を発生する。その様子をその場においてリアルタイムで観測した様子を写真(図8)で示す。図の帯状部分がLED光(幅は約3.8mm)により励起されている部分。蛍光画像は1msのシャッターで撮影したものを20ショット積算したもの。放電とはタイミングをずらしているため、重畳することはない。左の方と電極先端は散乱光による光である。

【0035】
図9は、図8に示した写真を元に、時間経過に対するOHラジカルの発生量(蛍光強度)をプロットしたグラフを以下に示す。放電開始とともにラジカルは発生し、最初のプロットは放電直後(開始から約30秒の間で撮影した)。その後、時間経過とともにラジカルは増えるが、約10分経つと飽和傾向にある。これは使用した溶液中のテレフタル酸がOHラジカルをトラップできる量の限界に達するためと思われる。(この場合は初期濃度を予め高くする)。
したがって予側されるOHラジカルの発生量に必要充分な濃度のテレフタル酸溶液を収容しておくことにより、前記飽和状態が含有OHラジカルの約全量とすることができる。

【0036】
以上の実施例でも示したように、本発明によれば、ヒドロキシラジカル生成直後の液中の状況をリアルタイムに観測することができるヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法を提供することができる。

【0037】
なお、本実施形態では、ヒドロキシラジカル生成手段として放電発生装置を用いて説明したが、さらに、ヒドロキシラジカルの発生方法として知られる水中での超音波照射、光触媒反応、過酸化水素とオゾンおよび紫外線による促進酸化反応、フェントン反応に代表される生体内反応に対しても本手法は適用することができる。

【0038】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係るヒドロキシラジカルの測定装置及び測定方法は、水面上放電や水中放電に代表される水(HO)と接する放電により生成された液中ヒドロキシラジカルの測定に利用される。さらに、水中での超音波照射、光触媒反応、過酸化水素とオゾンおよび紫外線による促進酸化反応、フェントン反応に代表される生体内反応により生成された液中ヒドロキシラジカルの測定にも利用される。
【符号の説明】
【0040】
10 ヒドロキシラジカル測定装置
11 水槽
12 放電発生装置
13 光照射装置
13a 光源
13b 光ファイバー
13c レンズ
14 光検出装置
15 制御装置
16 液体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図3】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8