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明細書 :ウエストナイルウイルス構造蛋白質特異的モノクローナル抗体、および該モノクローナル抗体を用いたウエストナイルウイルス感染の判定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5737687号 (P5737687)
公開番号 特開2012-200172 (P2012-200172A)
登録日 平成27年5月1日(2015.5.1)
発行日 平成27年6月17日(2015.6.17)
公開日 平成24年10月22日(2012.10.22)
発明の名称または考案の名称 ウエストナイルウイルス構造蛋白質特異的モノクローナル抗体、および該モノクローナル抗体を用いたウエストナイルウイルス感染の判定方法
国際特許分類 C12N  15/02        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
G01N  33/569       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
C07K  16/10        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
C12Q   1/00        (2006.01)
C12Q   1/06        (2006.01)
FI C12N 15/00 C
C12N 15/00 A
G01N 33/569 L
G01N 33/543 551A
C07K 16/10
C12N 5/00 102
C12P 21/08
C12Q 1/00 C
C12Q 1/06
請求項の数または発明の数 14
微生物の受託番号 IPOD FERM BP-11308
IPOD FERM BP-11309
IPOD FERM BP-11310
全頁数 21
出願番号 特願2011-066253 (P2011-066253)
出願日 平成23年3月24日(2011.3.24)
審査請求日 平成25年4月23日(2013.4.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】清水 眞也
【氏名】広田 次郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 Journal of Virological Methods,2008年,vol.154,pp.20-26
Acta virologica,1998年,vol.42,pp.389-395
MOLECULAR BIOLOGY,2007年,vol.41 no.1,pp.5-13
Virology,2010年11月,vol.410,pp.30-37
JOURNAL OF VIROLOGY,2006年,vol.80 no.14,pp.6982-6992
J. Vet. Med. Sci.,2010年,vol.72 no.3,pp.369-372
J. Vet. Med. Sci.,2009年,vol.71 no.7,pp.969-974
医学のあゆみ,2010年,vol.234 no.11,pp.1061-1065
調査した分野 C12N 15/00-15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
ハイブリドーマSHW-23H11株(FERM BP-11308)によって産生される、ウエストナイルウイルス(WNV)のエンベロープ蛋白質(E)を特異的に認識し、他のフラビウイルスとの交差反応性が低いモノクローナル抗体。
【請求項2】
ハイブリドーマSHW-29C2株(FERM BP-11309)またはハイブリドーマSHW-31B2株(FERM BP-11310)によって産生される、ウエストナイルウイルス(WNV)のプレメンブレン蛋白質(PrM)を特異的に認識し、他のフラビウイルスとの交差反応性が低いモノクローナル抗体。
【請求項3】
ウエストナイルウイルス(WNV)が、WNV NY99株、WNV Kunjin株、WNV g2266 株、またはWNV Eg101株である、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
他のフラビウイルスが、日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)
、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)である、請求項1または2に記載のモノクローナル抗
体。
【請求項5】
ハイブリドーマSHW-23H11株(FERM BP-11308)。
【請求項6】
ハイブリドーマSHW-29C2株(FERM BP-11309)。
【請求項7】
ハイブリドーマSHW-31B2株(FERM BP-11310)。
【請求項8】
被験血清と請求項1~のいずれかに記載のモノクローナル抗体とをWNV抗原に競合反応させるステップを少なくとも含む、ウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法。
【請求項9】
ウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法であって、以下のステップ:
(a) WNV抗原を固相に固定化させるステップ;
(b) 被験血清と請求項1~のいずれかに記載のモノクローナル抗体とを前記固相に添加し、固定化したWNV抗原に競合反応させるステップ;
(c) 前記モノクローナル抗体と反応する酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体を前記
固相に添加するステップ;
(d) 前記標識酵素の基質液を前記固相に添加するステップ;
(e) 前記基質液の発色の程度によって、被験血清に含まれる抗WNV抗体の有無を判定し
、それによって被験血清のWNV感染の有無を判定するステップ;
を含む上記方法。
【請求項10】
発色の程度を吸光度変化により測定する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
被験血清に含まれる抗WNV抗体によって、前記モノクローナル抗体と固定化したWNV抗原との結合が阻害される割合(抗体結合阻害%)を算出するステップをさらに含む、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
抗体結合阻害%が下記式:
抗体結合阻害(%)=100-(被験血清の吸光度値/陰性血清の吸光度値)×100
で算出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれかに記載のモノクローナル抗体を用いて免疫学的測定法により、試料中のウエストナイルウイルス(WNV)を検出することを特徴とする、ウエストナイルウイルス(WNV)の検出方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、ウエストナイルウイルス(WNV)感染判定用またはウエストナイルウイルス(WNV)検出用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエストナイルウイルス(以下、「WNV」と称することもある)の構造蛋白質であるエンベロープ蛋白質(E)またはプレメンブレン蛋白質(PrM)を特異的に認識するモノクローナル抗体、および該モノクローナル抗体を用いたウエストナイルウイルス感染の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエストナイルウイルス(WNV)感染症は、人獣共通感染症として世界的に蔓延している感染症である。WNVは日本脳炎ウイルス(JEV)血清型群に属するウイルスであり、同群のウイルス間では高い共通抗原性を有することが知られている。このため、JEV血清型群ウイルス感染血清は、血清診断においてJEV血清型群に属する異なったウイルス種間で高頻度に交差反応が生じうる。北米ではセントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、オセアニアではマレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)とJEV、そして日本を含む東アジアにはJEVが蔓延しており、WNVが日本において発生した場合には、交差反応により正確な診断が難しいため、両者を区別する判定法の開発が期待されている。また、個体からウイルスを分離できる期間が通常1週間以内と短く、さらに抗体が上昇し始めた個体ではウイルスは検出されないことから、ウイルス分離法やPCRによる遺伝子増幅法は適用時期が限られてしまうため、そのような制約のない血清診断法への期待がより高まっている。
【0003】
現在WNV感染症の血清診断法としては、中和法、赤血球凝集阻害反応法、IgG indirect ELISA、Epitope Blocking ELISA、IgM antibody capture ELISAなどが用いられている(非特許文献1)。これらの中で、中和法、赤血球凝集阻害反応法、IgG indirect ELISAは近縁のフラビウイルスに感染した動物の血清では広範な交差反応が生ずることが知られており(非特許文献1~5)、複数のフラビウイルス感染症が蔓延している地域では正確な血清診断が難しい。
【0004】
これに対し、IgM antibody capture ELISAおよびEpitope Blocking ELISAは特異的な診断が可能である。IgM antibody capture ELISAは血清中の、感染後早期に産生されるウイルス特異的IgM抗体を検出する手法である。IgM antibody capture ELISAは比較的交差反応性が低いが、複数のウイルスに感染した際には、幅広いウイルスに反応するIgM抗体が産生されるため特異的な診断が困難である。また、JEVワクチンを接種されたウマでは、WNVに感染してもWNV特異的IgM抗体の産生が短期間で終わるか、産生されない例が報告されており(非特許文献6)、IgM antibody capture ELISAによる検出には限界がある。また、Epitope Blocking ELISAはモノクローナル抗体と検体中のウイルス特異的抗体のエピトープ競合を利用した診断法であり、WNVのNon-structure protein 1(NS1)に対するモノクローナル抗体を用いたWNV特異的Epitope Blocking ELISAが開発されている(非特許文献7、8;特許文献1)。しかしながら、この方法は、通常不活化ワクチンには含まれないNS1がターゲット抗原となるので、ワクチン接種後の抗体価検査等には使用できない。また、現在使用されているモノクロ-ナル抗体は、現在問題となっているWNV NY99株ではなく、WNV Kunjin株抗原から作製されているため、異なる株での感度の低下が起こりうる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-58194号
【0006】

【非特許文献1】Beaty BJ, Calisher CH, Shope RE.: 1995. Arboviruses, In: Diagnostic Procedures for Viral, Rickettsial, and Chlamydial Infections. ed. Lennette EH, Lennette DA, Lennette ET, 7th ed., pp. 189-212. American Public Health Association, Washington.
【非特許文献2】Boyle DB, Marshall ID, Dickerman RW.: 1983. Primary antibody responses of herons to experimental infection with Murray Valley encephalitis and Kunjin viruses. Aust J Exp Biol Med Sci. Dec;61 (Pt 6):665-74.
【非特許文献3】Calisher CH, Karabatsos N, Dalrymple JM, et al: 1989. Antigenic relationship between flaviviruses as determined by cross-neutralization tests with polyclonal antisera. J Gen Virol 70:37-43.
【非特許文献4】De Madrid AT, Porterfield JS: 1974. The flaviviruses (Group B Arboviruses): a Cross-neutralization Study. J Gen Virol 23:91-96.
【非特許文献5】Hirota J, Nishi H, Matsuda H, Tsunemitsu H, Shimiz S. Cross-reactivity of Japanese encephalitis virus-vaccinated horse sera in serodiagnosis of West Nilevirus. J Vet Med Sci. 2010 Mar;72(3):369-72.
【非特許文献6】Shirafuji, H., Kanehira, K., Kamio, T., et al. 2009. Antibody responses induced by experimental West Nile virus infection with or without previous immunization with inactivated Japanese encephalitis vaccine in horses. J Vet Med Sci. Jul;71(7):969-74.
【非特許文献7】R.A. Hall, A.K. Broom, A.C Hartnett, M.J. Howard, J.S. Mackenzie ; Journal of Virological Methods 51 (1995) 201-210; Immunodominant epitopes on the NS1 protein of MVE and KUN viruses serve as tergets for a blocking ELISA to detect virus-specific antibodies in sentinel animal serum.
【非特許文献8】Kitai Y, Shoda M, Kondo T et al.:2007. Epitope-blocking enzyme-linked immunosorbent assay to differentiate west nile virus from Japanese encephalitis virus infections in equine sera. Clin Vaccine Immunol. Aug;14(8):1024-31. Epub 2007 Jun 27.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、WNV感染を迅速かつ高精度に判定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、WNV NY-99株を感染させたVero細胞の培養上清を不活化処理し、ショ糖密度勾配遠心法にて精製することによって得られたWNV(WNV蛋白質)を免疫原として接種したマウスの脾臓細胞やリンパ節細胞とミエローマ細胞を細胞融合したハイブリドーマから、WNVの構造蛋白質であるエンベロープ蛋白質(E)またはプレメンブレン蛋白質(PrM)を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ることに成功した。また、当該ハイブリドーマにより産生されるWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体を用いた競合ELISAは、同じ血清型群ウイルスである、日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)免疫血清に対して交差反応性が低いことを確認した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] ウエストナイルウイルス(WNV)のエンベロープ蛋白質(E)を特異的に認識し、他のフラビウイルスとの交差反応性が低いモノクローナル抗体。
[2] ウエストナイルウイルス(WNV)が、WNV NY99株、WNV Kunjin株、WNV g2266 株、またはWNV Eg101株である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[3] 他のフラビウイルスが、日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)である、[1]または[2]に記載のモノクローナル抗体。
[4] ハイブリドーマSHW-23H11株(FERM BP-11308)によって産生される、[1]~[3]のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【0010】
[5] ウエストナイルウイルス(WNV)のプレメンブレン蛋白質(PrM)を特異的に認識し、他のフラビウイルスとの交差反応性が低いモノクローナル抗体。
[6] ウエストナイルウイルス(WNV)が、WNV NY99株、WNV Kunjin株、WNV g2266 株、またはWNV Eg101株である、[5]に記載のモノクローナル抗体。
[7] 他のフラビウイルスが、日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)である、[5]または[6]に記載のモノクローナル抗体。
[8] ハイブリドーマSHW-29C2株(FERM BP-11309)またはハイブリドーマSHW-31B2株(FERM BP-11310)によって産生される、[5]~[7]のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【0011】
[9] ハイブリドーマSHW-23H11株(FERM BP-11308)。
[10] ハイブリドーマSHW-29C2株(FERM BP-11309)。
[11] ハイブリドーマSHW-31B2株(FERM BP-11310)。
[12] 被験血清と前記[1]~[8]のいずれかに記載のモノクローナル抗体とをWNV抗原に競合反応させるステップを少なくとも含む、ウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法。
[13] ウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法であって、以下のステップ:
(a) WNV抗原を固相に固定化させるステップ;
(b) 被験血清と前記[1]~[8]のいずれかに記載のモノクローナル抗体とを前記固相に添加し、固定化したWNV抗原に競合反応させるステップ;
(c) 前記モノクローナル抗体と反応する酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体を前記固相に添加するステップ;
(d) 前記標識酵素の基質液を前記固相に添加するステップ;
(e) 前記基質液の発色の程度によって、被験血清に含まれる抗WNV抗体の有無を判定し、それによって被験血清のWNV感染の有無を判定するステップ;
を含む上記方法。
[14] 発色の程度を吸光度変化により測定する、[13]に記載の方法。
[15] 被験血清に含まれる抗WNV抗体によって、前記モノクローナル抗体と固定化したWNV抗原との結合が阻害される割合(抗体結合阻害%)を算出するステップをさらに含む、[13]または[14]に記載の方法。
【0012】
[16] 抗体結合阻害%が下記式:
抗体結合阻害(%)=100-(被験血清の吸光度値/陰性血清の吸光度値)×100
で算出される、[15]に記載の方法。
[17] 前記[1]~[8]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を用いて免疫学的測定法により、試料中のウエストナイルウイルス(WNV)を検出することを特徴とする、ウエストナイルウイルス(WNV)の検出方法。
[18] 前記[1]~[8]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、ウエストナイルウイルス(WNV)感染判定用またはウエストナイルウイルス(WNV)検出用キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規なウエストナイルウイルス(WNV)構造蛋白質特異的モノクローナル抗体は、WNVと同じ血清型群ウイルスである、日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)免疫血清に対して交差反応性が低いため、WNV感染を特異的かつ高精度に判定できる。また、当該モノクローナル抗体を用いて構築した競合ELISAによる本発明のWNV感染の判定方法によれば、従来法で3時間要していた被験血清と抗体の保持時間が、1時間に短縮でき、WNV感染の迅速な判定が可能となる。また、従来法では5-10倍希釈の血清が必要であったが、本発明の方法では、100倍に希釈した血清でも正しく判定することが可能である。よって、少量の血清しか得られない、野鳥におけるサーベイランスに用いることができる。また、本発明の方法におけるターゲット抗原は構造蛋白質であるため、不活化ワクチン接種後の抗体検査等に用いることができる。さらに、競合ELISAでは、検体ごとに種特異的二次抗体を用意する必要がないため、幅広い動物種において適用できる。本発明のモノクロ-ナル抗体はウエストナイルウイルスに対し反応性が高く、他の日本脳炎型群ウイルスへの反応性が低いのでウエストナイルウイルスの免疫学的検出に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のモノクローナル抗体(SHW-23H11,SHW-29C2,SHW-31B2)のウェスタンブロットパターンを示す(1:抗-E 抗体 (HB-112)、2:SHW-23H11、3:抗-PrM 抗体(ab25888)、4:SHW-29C2、5:SHW-31B2)。
【図2】間接ELISAにおける、本発明のモノクローナル抗体(SHW-23H11,SHW-29C2,SHW-31B2)と日本脳炎ウイルス(JEV)血清型群フラビウイルスとの交差反応性試験結果を示す(各数字はWNV NY99 OD-値を100としたときの割合を示す)。
【図3】競合ELISAにおける、本発明のモノクローナル抗体(SHW-23H11,SHW-29C2,SHW-31B2)と日本脳炎ウイルス(JEV)血清型群ウイルス免疫血清(100倍希釈)との交差反応性試験結果を示す。ニワトリの数は、WNV NY99 株 (n=6)、SLEV Parton株(n=5)、他のウイルス株 (n=4)。
【図4】ウエストナイルウイルス(NY99株)感染血清の中和抗体価の経時変化を示す。
【図5】競合ELISAにおける、本発明のモノクローナル抗体(SHW-23H11,SHW-29C2,SHW-31B2)とWNV抗原との結合に対するウエストナイルウイルス(NY99株)感染血清(10倍希釈)による阻害%の経時変化を示す。
【図6】競合ELISAにおける、本発明のモノクローナル抗体(SHW-31B2)と日本脳炎ウイルス(JEV)血清型群ウイルス免疫血清(100倍希釈)との交差反応性試験結果を示す。
【図7】競合ELISAにおける、本発明のモノクローナル抗体(SHW-31B2) とWNV抗原との結合に対するウエストナイルウイルス(NY99株)感染血清(100倍希釈)による阻害%の経時変化を示す。
【図8】競合ELISA阻害%とIgG 間接ELISA OD 値との相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体
本発明のモノクローナル抗体は、ウエストナイルウイルス(WNV)の構造蛋白質であるエンベロープ蛋白質(E)またはプレメンブレン蛋白質(PrM)を特異的に認識し、他のフラビウイルスとの交差反応性が低いモノクローナル抗体(以下、これらを「WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体」と称する場合がある)である。ウエストナイルウイルス(WNV)の種類は、限定はされないが、NY99株、Kunjin株、g2266 株、Eg101株が含まれる。これらの株の全てを認識するものでもよく、これらの株のうちの1種のみを認識するものでもあってもよい。従って、本発明のモノクローナル抗体を用いてウエストナイルウイルス(WNV)の感染判定またはウエストナイルウイルス(WNV)の検出を行う場合は、目的に応じて適宜好ましい抗体を選択して使用してもよい。例えば、ウエストナイルウイルス(WNV)の全般的な感染判定または検出を目的とする場合は、上記株の全てを認識できるモノクローナル抗体を用いることが好ましく、また、特定の株の感染判定または特異的検出を目的とする場合は、当該特定の株に特異的なモノクローナル抗体のみを用いることが好ましい。

【0016】
また、「他のフラビウイルスとの交差反応性が低い」とは、本発明のモノクローナル抗体と他のフラビウイルスである日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)との反応性(交差反応性)が、ウエストナイルウイルス(WNV)との反応性を基準として、約30%以下、好ましくは約20%以下、より好ましくは約10%以下であることをいう。

【0017】
本発明のWNVのエンベロープ蛋白質(E)を特異的に認識する抗体としては、好ましくはハイブリドーマSHW-23H11株によって産生されるモノクローナル抗体、WNVのプレメンブレン蛋白質(PrM)を特異的に認識する抗体としては、好ましくはハイブリドーマSHW-29C2株またはハイブリドーマSHW-31B2株によって産生されるモノクローナル抗体が例示できる。ここで、「他のフラビウイルス」には、日本脳炎ウイルス(JEV)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)が含まれる。また、上記モノクローナル抗体には、目的の抗原を特異的に認識する限り、その抗体断片、例えば、Fab、F(ab')2、Fab'、Fvを含む意である。

【0018】
本発明のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体を産生する好適なハイブリドーマとして、上記ハイブリドーマSHW-23H11株、ハイブリドーマSHW-29C2株、ハイブリドーマSHW-31B2株は、平成22年10月22日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1 中央第6)にそれぞれ受託番号FERM BP-11308、FERM BP-11309、FERM BP-11310としてそれぞれプタベスト条約の規定下で国際寄託された。以下、ハイブリドーマSHW-23H11株、ハイブリドーマSHW-29C2株、ハイブリドーマSHW-31B2株から産生されるモノクローナル抗体をそれぞれSHW-23H11、SHW-29C2、SHW-31B2と称する場合がある。

【0019】
2.WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体の作製
本発明のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体は、(1) WNV抗原の調製、(2)免疫及び抗体産生細胞の採取、(3)細胞融合、(4)ハイブリドーマの選択及びクローニング、(5)モノクローナル抗体の採取の各工程を含む一般的な手法により作製できる。

【0020】
(1) WNV抗原の調製
WNV抗原は、WNV株、好ましくは、WNV NY99株を株化細胞に感染させ、該ウイルス感染細胞を培養した後、培養上清を不活化処理し、一般的なウイルス精製法として使用されているショ糖密度勾配遠心法にて精製することによって調製する。ここで、株化細胞としては、例えば、Vero細胞、MDCK細胞、BHK-21細胞、GL37細胞、HmLu-1細胞などの動物由来の細胞や昆虫由来細胞を用いることができる。ウイルスの不活化処理は、β-プロピオラクトンやホルマリン処理、加熱、紫外線照射などの通常の方法で行えばよいが、β-プロピオラクトン処理が好ましい。

【0021】
(2) 免疫及び抗体産生細胞の採取
上記のようにして得られたWNV抗原を免疫原として、アジュバンドとともに、あるいはアジュバンドなしに哺乳類、鳥類等に投与する。ここで、アジュバンドとしては、通常用いられるアジュバント、例えばフロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント、BCG、ハンターズ、タイターマック、ゲルブアジュバント、百日咳毒素、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムゲル等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、これらの2種以上を混合して使用してもよい。哺乳類としては、マウス、ラット、ウサギ等を使用することができ、鳥類としては、ハト、ニワトリ等を使用することができるが、マウスを使用するのが好ましく、BALB/cマウスを使用することがより好ましい。抗原の1回の投与量は、マウスの場合1匹当たり通常1~100μgである。投与部位は、主として腹腔内、皮下、静脈内である。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2~3週間間隔で、最低2~3回行う。そして、最終免疫後、抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞等が挙げられるが、脾臓細胞およびリンパ節細胞が好ましい。

【0022】
(3) 細胞融合
次に、ハイブリドーマを得るため、抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞としては、マウスなどの動物由来の細胞であって一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株は、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地 (ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む) で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。一般的には、8-アザグアニン耐性株を使用できる。この細胞株は、ヒポキサンチン-グアニンホスフォリボシルトランスフェラーゼを欠損し(HGPRT-)、HAT培地で生育できない。ミエローマ細胞の好適な具体例としては、P3-X63-Ag8-U1、P3-X63-Ag8、P3/NS1/1-Ag4-1、P3X63Ag8.653、Sp2/O-Ag14、Sp2/O/FO-2などのマウスミエローマ細胞株が挙げられる。

【0023】
ミエローマ細胞と抗体産生細胞との細胞融合は、血清を含まないDMEM、RPMI-1640培地などの動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを15:1~25:1の割合で混合し、ポリエチレングリコール等の細胞融合促進剤存在下、あるいは電気パルス処理(例えばエレクトロポレーション)により融合反応を行う。

【0024】
(4) ハイブリドーマの選択、スクリーニング及びクローニング
細胞融合後、ハイブリドーマを選択する。ハイブリドーマの選択方法は、通常の方法に従えばよく、特に限定されない。ハイブリドーマの選択は、例えば、ハイブリドーマを選択培地(例えばHAT培地)で培養することにより行なうことができる。この際の培養は、常法に従えばよく、特に限定されない。通常は、30~37℃で7~10日間培養すればよい。

【0025】
目的のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウェルに含まれる培養上清の一部を採集し、酵素免疫測定法 (ELISA; enzyme-linked immunosorbent assay)等によってスクリーニングすることができる。具体的には、マイクロプレートの各ウェルにWNV抗原を吸着させた後、仔ウシ血清、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、スキムミルク等でブロックする。該マイクロプレートの各ウェルにハイブリドーマの培養上清を加え、25~37℃で1~2時間放置する。これに適当に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)-結合抗マウスイムノグロブリン抗体を加える。次いで、HRP活性を、発色基質として2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)を用いて検出し、発色が認められるウェルをWNV抗原に特異的な抗体を産生する細胞を含むウェルとする。なお、各操作毎に過剰量の各試薬を除去するため、洗浄液(界面活性剤(例えば0.02% Tween 20)を加えた生理的食塩水等)で洗浄した後、次の試薬を投入する。これによって目的のハイブリドーマをスクリーニングすることができる。このウェルから目的とするハイブリドーマをクローニングする方法は、通常の方法に従えば良く、特に限定されない。例えば、限界希釈法、軟寒天法、フィブリンゲル法、蛍光励起セルソーター法等により行なうことができる。

【0026】
(5) モノクローナル抗体の採取
取得したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法としては、通常の細胞培養法や腹水形成法等を用いることができる。細胞培養法においては、例えば、ハイブリドーマを仔ウシ血清含有RPMI1640培地、MEM培地等の動物細胞培地中で、通常の培養条件(例えば、37℃、5%C02濃度)で3~10日間培養し、その培養上清から目的とするモノクローナル抗体を取得できる。また、高密度培養法により高濃度のモノクロ-ナル抗体を含む培養上清を得、目的とするモノクロ-ナル抗体を取得することもできる。腹水形成法においては、例えば、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種の動物の腹腔内にプリスタン(2,6,10,14‐テトラメチルペンタデカン)等の鉱物油を投与し、その後、ハイブリドーマ1×106~1×107個、好ましくは1×106個を腹腔内に投与する。投与した哺乳動物を1~2週間以上飼育し、腹腔に貯留した腹水又は血清を採取することにより目的とするモノクローナル抗体を取得できる。

【0027】
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安分画法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、又はこれらの方法を組み合わせることにより精製することができる。

【0028】
3.ウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法
本発明のウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法は、被験血清と1.のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体(本発明のモノクローナル抗体)とをWNV抗原に競合反応させるステップを少なくとも含む。競合反応は、必ずしも固相を必要としない(液相法)が、固相を用いた方が、測定操作が簡便になるため好ましい。例えば、固相法により競合反応を行う場合は、WNV抗原を適当な担体に固定化し、次いで、WNV感染の判定が望まれる被験血清と本発明のモノクローナル抗体とを、固定化したWNV抗原と接触させて、本発明のモノクローナル抗体‐WNV抗原の免疫複合体および被験血清中の抗WNV抗体- WNV抗原免疫複合体を競合的に生成させる。生成した本発明のモノクローナル抗体‐WNV抗原の免疫複合体の検出を行い、その結果から、被験血清中の抗WNV抗体の有無、すなわちWNV感染の有無の判定を行うことができる。上記免疫複合体の検出には、本発明のモノクローナル抗体と結合可能な標識抗体(二次抗体)を用いて行う。標識物質としては、例えば酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジン、又は放射性同位体のいずれであってもよい。

【0029】
本発明のウエストナイルウイルス(WNV)感染の判定方法の好ましい態様は、以下のステップ(a)~(e)を包含する競合ELISAによる。
(a) WNV抗原を固相に固定化させるステップ;
(b) 被験血清と1.のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体とを前記固相に添加し、固定化したWNV抗原に競合反応させるステップ;
(c) 前記モノクローナル抗体と反応する酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体を前記固相に添加するステップ;
(d) 前記標識酵素の基質液を前記固相に添加するステップ;
(e) 前記基質液の発色の程度によって、被験血清に含まれる抗WNV抗体の有無を判定し、それによって被験血清のWNV感染の有無を判定するステップ。

【0030】
以下、各ステップについて説明する。
ステップ(a):
ステップ(a)は、WNV抗原を固相に固定する工程である。ここで用いるWNV抗原はWNVの抗原性を有する限り、いかなる蛋白質またはペプチドであってもよい。WNVの抗原性とは、抗WNV抗体と反応することができる能力、すなわち、抗体結合部分(エプトープ)を有することをいう。また、WNV抗原は、天然から回収されたもの、組換え遺伝子工学的手法により作製されたもの、又は化学合成されたもののいずれであってもよい。よって、WNV抗原は、例えば、前項2(1)のように、WNVを感染させた株化細胞を培養して、培養物から単離精製することにより作製してもよいし、WNV構造蛋白質またはその部分ペプチドのアミノ酸配列情報に基づいて公知のペプチド合成法で化学合成してもよいし、WNV構造蛋白質またはその部分ペプチドをコードする遺伝子を含有する形質転換体を培養して組換え体として作製することもできる。

【0031】
WNV抗原を固定化する固相は、該抗原を固定化し得る限り、いかなるものであってもよい。例えば、プラスチック(ポリスチレン、ポリビニル、ポリカーボネート等)、ニトロセルロース膜、アガロース、セルロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、ガラス等を固相として使用することができる。市販のELISAプレート(例えば、96ウェルELISAプレート)を使用すると便利である。

【0032】
WNV抗原の固相への固定化は、物理的吸着、共有結合、架橋等などの常法により行うことができる。例えば、96ウェルELISAプレートを使用する場合、WNV抗原を界面活性剤(例えば、Triton X-100)で可溶化し、炭酸緩衝液等で至適な倍率に希釈し、例えば4℃で1晩静置することにより固相に固定化できる。固相化されなかった余剰の抗原は洗浄液(例えば、0.05%Tweenを含むPBS)で数回(例えば3回)洗浄する。

【0033】
次いで、固相中のWNV抗原が固定化されていない部分を適当なブロッキング剤でブロッキングすることが好ましい。ブロッキング剤としては、仔ウシ血清、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、スキムミルク等のブロッキング剤を使用することができる。反応後、余剰のブロッキング剤を除去するために固相を洗浄する。固相の洗浄には、例えば、洗浄液(例えば、0.05%Tweenを含むPBS)を使用できる。固相の洗浄は十分に行うのが好ましく、通常3~5回洗浄する。

【0034】
ステップ(b):
ステップ(b)は、被験血清と、1.のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体とを前記固相に添加し、固定化したWNV抗原に競合反応させるステップである。このステップにおいては、固定化したWNV抗原のエピトープ部分に対し、被験血清中の抗WNV抗体とWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体が競合反応する。被験血清を採取した動物がWNVに感染している場合は、被験血清中に抗WNV抗体が含まれており、固定化したWNV抗原へのWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体の結合が阻害される。一方、被験血清を採取した動物がWNVに感染していない場合は、被験血清中に抗WNV抗体が含まれておらず、固定化したWNV抗原へのWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体の結合が阻害されない。上記の競合反応は、例えば、37℃で1~2時間インキュベーションすることにより行う。

【0035】
反応後、未反応の被験血清中の抗WNV抗体およびWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体を除去するために固相を洗浄する。固相の洗浄には、洗浄液(例えば、0.05%Tweenを含むPBS)を使用できる。固相の洗浄は十分に行うのが好ましく、通常3~5回洗浄する。

【0036】
被験血清は、ウエストナイルウイルスに感染するヒトを含む哺乳類、鳥類など動物の血清であれば特に限定はされない。例えば、ヒト、ウマ、ニワトリ、ブタ、ウシなどが挙げられる。被験血清は、常法に従って調製することができる。例えば、採血後、血液が十分に凝固した後室温で3000rpm 、15分程度遠心し、その上清を分離し、血清とする。

【0037】
ステップ(c):
ステップ(c)は、前記WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体と反応する酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体を前記固相に添加するステップである。酵素標識としては、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等が挙げられる。なお、ステップ(b)において酵素標識したモノクローナル抗体を用いた場合、このステップは省かれる。また、モノクロ-ナル抗体をビオチン化することにより、アビジン-ビオチン系を用いることも可能である。

【0038】
ステップ(d):
ステップ(d)は、前記標識酵素の基質液を前記固相に添加するステップである。本ステップにおいては、酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体によるWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体の検出が可能となる。検出は、標識酵素と基質との反応産物による発色に基づいて行う。

【0039】
ステップ(e):
ステップ(e)は、前記基質液の発色の程度によって、被験血清に含まれる抗WNV抗体の有無を判定し、それによって被験血清のWNV感染の有無を判定するステップである。被験血清が陽性血清の場合、被験血清中の抗WNV抗体が固相に固定化されたWNV抗原と反応し、WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体の該WNV抗原への結合が阻害されるために、呈色反応が弱い。一方、被験血清が陰性血清の場合、WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体が該WNV抗原に結合し、該WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体に酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体が結合するため、酵素による呈色反応が強い。よって、発色が弱い場合は、被験血清が陽性血清であると判定でき、発色が強い場合は、被験血清が陰性血清であると判定できる。

【0040】
また、発色の程度を定量的に測定するために、被験血清に含まれる抗WNV抗体によって、WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体と固定化したWNV抗原との結合が阻害される割合(抗体結合阻害%)を算出するステップをさらに含めてもよい。

【0041】
抗体結合阻害%は、下記式:
抗体結合阻害(%)=100-(被験血清の吸光度値/陰性血清の吸光度値)×100
で算出することができる。

【0042】
算出された抗体結合阻害%により、被験血清のWNV感染の有無を判定できる。例えば、抗体結合阻害%が約80~90%である場合は、被験血清がWNV NY99株に感染している可能性が高いと判定でき、抗体結合阻害%が約75~85%である場合は被験血清がWNV Kunjin株感染に感染している可能性が高いと判定でき、抗体結合阻害%が約50~60%である場合は(ただし、WNV g2266株感染についてはSHW-31B2抗体を用いた場合の阻害%)、被験血清がWNV Eg101株またはWNV g2266株に感染している可能性が高いと判定できる。また、予め、抗体結合阻害%とWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体との相対関係を示す検量線を作成しておくことにより、抗体結合阻害%から被験血清中の抗WNV抗体の量を求めることも可能である。

【0043】
4.ウエストナイルウイルス(WNV)検出方法
本発明のウエストナイルウイルス(WNV)検出方法は、前記1.のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体(本発明のモノクローナル抗体)を用いて免疫学的測定法により、試料中のウエストナイルウイルス(WNV)を検出することを特徴とする。免疫学的測定法(イムノアッセイ)としては、本発明のモノクローナル抗体とウエストナイルウイルス(WNV)との免疫複合体の形成の有無を検出できるものであればいかなる方法でもよく、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、酵素イムノメトリックアッセイ法(ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射線免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、イムノブロット法、ウェスタンブロット法等などを挙げることができる。これらの免疫測定方法自体は公知であり、本発明のモノクローナル抗体を使用する以外は、常法に従って行うことができる。試料としては、ウエストナイルウイルス(WNV)が含まれる可能性のある生体試料であれば特に限定はされないが、例えば、血液、血清、血漿、リンパ球培養上清、細胞などが挙げられる。また、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、又は発光免疫測定法等の標識抗体を用いた免疫測定法により実施する場合には、サンドイッチ法又は競合法により行うこともでき、サンドイッチ法の場合には固相化抗体及び標識抗体のうち少なくとも1種が本発明のモノクローナル抗体であればよい。標識物質としては、例えば、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ等)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンイソチオシアネート等)、放射性同位体(125Iや3H等)などを使用することができる。

【0044】
5.ウエストナイルウイルス(WNV)感染判定用またはウエストナイルウイルス(WNV)検出用キット
本発明のWNV感染判定用またはウエストナイルウイルス(WNV)検出用キットは、前記1.のWNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体を少なくとも含むものであればよく、当該キットには、前述の方法で調製したWNV抗原、固相、WNV構造蛋白質特異的モノクローナル抗体と反応する酵素標識抗マウスイムノグロブリン抗体、酵素基質液を含めてもよい。さらに、当該キットには、上記の試薬や材料のほかに、陽性・陰性の参照試料、緩衝液、溶解液、洗浄液、反応停止液、使用説明書などが含まれていてもよい。上記各試薬のうち、懸濁液、溶液、または凍結乾燥品の形態とすることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
1.材料および方法
(1) ウイルス
ウエストナイルウイルス(WNV)(NY99 株, Kunjin株,g2266 株, Eg101 株)、日本脳炎ウイルス(JEV)(Nakayama 株, JaNAr0102 株)、マレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)(MVEV 1-51株)、セントルイス脳炎ウイルス (SLEV) (Parton株)を用いた。これらのウイルスの培養上清をVero 細胞を用いて調製した。ウイルス抗原は、β-プロピオラクトン(ナカライテス社製)で不活化した培養上清をショ糖密度勾配精製法によって調製し、抗血清(免疫血清)作製、免疫化、競合ELISA、間接ELISA、およびウェスタンブロットの抗原として用いた。
【実施例】
【0046】
(2) モノクローナル抗体
モノクローナル抗体の調製は、“Current Protocols in Immunology”に記載の方法に若干の改良を加えて行った(Yokoyama WM. Production of Monoclonal Antibodies. In: Coligan JE, Kruisbeek AM, Margulies DH, Shevach EM, Strober W, Eds. Current Protocols in Immunology New York: John Wiley and Sons, 1991 ; Unit 2.5.: 2.5.1.)。
【実施例】
【0047】
11週齢のメスBALB/cを、水酸化アルミニウムゲルと混合した前記不活化および精製したWNV20μgにて腹腔内注射で2~3回免疫した。最終免疫は、前記不活化および精製したWNV20μgにて静脈内注射で行った。最終免疫から3日後にマウスを麻酔し、放血した。マウスの脾臓細胞をP3-X63-Ag8-U1 ミエローマ細胞と50% ポリエチレングリコール(Hampton Research, California, USA)を用いて融合した。
【実施例】
【0048】
ハイブリドーマ細胞をHAT選択培地中に希釈し、CO2 インキュベータ内で7~10日間インキュベートした。ハイブリドーマ細胞の一次スクリーニングアッセイを抗原として前記不活化精製WNV抗原を用いて間接ELISAにて行った。二次スクリーニングはWNV NY99株免疫ニワトリ血清を用いて競合ELISAにて行った。
【実施例】
【0049】
3つのハイブリドーマ株を選択し、限界希釈法にてクローン化した。クローン化したハイブリドーマ株の全部をプリスタン処理したBALB/c マウスに腹腔内に接種し、腹水を採取した。腹水を硫酸アンモニウム沈殿法およびDEAEイオン交換法にて精製した。
【実施例】
【0050】
(3) ウェスタンブロット解析
WNV 抗原を12 % Bis-Tris 勾配ゲル(Invitrogen, California, USA)上で、非還元条件下で電気泳動し、その後、ニトロセルロース膜(Bio-Rad laboratories, California, USA)上にエレクトロブロッティングした。膜を20 % ブロックエース(大日本製薬、大阪、日本)を用いてTBS中で一晩4℃にてブロックした。膜をストリップに切断し、各ストリップを、上記3つのハイブリドーマ株から産生される各モノクローナル抗体の希釈液に、室温で1時間攪拌しながら浸した。インキュベーション後、各ストリップを0.02 % Tween20 (TBST)を含有するTBSで洗浄し、HRP-結合抗-マウス IgG (Zymed Laboratories, San Francisco, USA)と共にインキュベートした。TBSTで洗浄後、該ストリップを3,3'-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド溶液 (Sigma, St. Louis, USA)に浸した。抗-E 抗体 HB-112 (ATCC, Virginia, USA)及び抗-PrM 抗体ab25888 (Abcam, Massachusetts, USA)を参照抗体として用いた。
【実施例】
【0051】
(4) 間接ELISA
間接ELISAを文献(Hirota J, Nishi H, Matsuda H, Tsunemitsu H, Shimiz S. Cross-reactivity of Japanese encephalitis virus-vaccinated horse sera in serodiagnosis of West Nile virus. J Vet Med Sci. 2010 Mar;72(3):369-72.)に記載の方法に若干の改変を加えて実施した。各ウイルス抗原はタンパク質濃度100 ng/ウェルで用いた。
各ウイルス抗原と上記3つのハイブリドーマ株から産生される各モノクローナル抗体との交差反応性を間接ELISAによって評価した。HRP-結合抗マウスIgG (Zymed)を二次抗体として用いてモノクローナル抗体の検出を行い、また、HRP-結合抗-ニワトリIgG 二次抗体 (Bethyl, Texas, USA)を用いてニワトリIgGの検出を行った。
【実施例】
【0052】
(5) WNV 感染ニワトリ血清
9羽の5週齢のSPF(Specific-Pathogen-Free)ニワトリにWNV (NY99株)を注射により接種した。ニワトリ一羽につき103, 10, 10, 10, 10 プラーク形成ユニット(PFU) (200 μlあたり)を胸筋に筋肉内注射した。それらのニワトリについて、Vero細胞を用いたプラークアッセイによってウイルス接種後48時間にWNVウイルス血症を調べた。それらのすべてがウイルス血症を示し、平均PFUは7540 pfu/mlであった。
【実施例】
【0053】
ニワトリをWNV接種後、1週、10日、2週、3週、4週、5週、および6週で放血させた。血液サンプルを室温で4~6時間凝固させ、その後、4℃にて一晩保持し、2,500g で20分間遠心分離して血清を分離し、使用するまで-80℃にて凍結保存した。なお、感染性を有すると考えられる試料はすべて、P3施設内で取り扱った。
【実施例】
【0054】
(6) JEV, MVEV, SLEV およびWNV 免疫ニワトリ血清
SPF(Specific-Pathogen-Free)の5週齢のニワトリを用いた。水酸化アルミニウムゲルと混合したウイルス抗原25 μg/ニワトリを用いて筋肉内注射で隔週3回免疫した。すべてのニワトリを最終免疫後2週間で放血し、全採血した。血液サンプルを室温で4~6時間凝固させ、4℃にて一晩保持し、2,500g で20 分遠心分離し、血清を分離し、使用するまで-80 ℃にて凍結保存した。これらの血清のすべては、プラーク減少中和試験(PRNT)において免疫ウイルスの相同ウイルスに対して中和能を有していた。
【実施例】
【0055】
(7) 中和試験におけるプラーク減少
プラーク減少中和試験(PRNT)をVero 細胞を塗布した6-ウェルプレートを用いてWNV のOIE Manual に記載された通り行った(Office International des epizooties (OIE): 2004. West Nile virus, In: Manual of diagnostic tests and vaccines for terrestrial animals: mammals, birds and bees, 5th ed., pp.1064-1071. OIE, Paris)。被験血清を希釈し、10% テンジクネズミ血清を含む最小必須培地中で等量のウイルス調製物 (103 PFU/1 ml)と混合し、37℃で1時間保持した。混合物のアリコート100 μlをVero細胞単層の各ウェルに接種し、ときどき攪拌しながらCO2インキュベータ内で37℃にて1時間保持した。インキュベーション後、トラガカントガム(Nacalai tesque)を含む栄養分を添加し、細胞をCO2インキュベータ内で3~5日間放置し、続いて、該細胞をホルマリンで固定してクリスタルバイオレット(Nacalai tesque)で染色した。プラーク減少が70%または90 %を示した最大血清希釈率をタイターエンドポイントとした。
【実施例】
【0056】
(8) 競合 ELISA
96ウェルプレート (Nunc, Roskilde, Denmark)に、炭酸塩-重炭酸塩緩衝生理食塩水(50 mM, pH9.6)に希釈したWNV抗原を1ウェルあたり150または75 ng被覆し、該プレートを4℃にて12時間インキュベートした。プレートを0.02 % Tween20 (PBST)を含む350 μlのPBSで3回洗浄した。
【実施例】
【0057】
以降の各ステップにおいて、被験試料およびモノクローナル抗体のウェルへの添加後のインキュベーション条件は37℃で1時間、洗浄は350μlのPBSTを用いて3回行った。プレートをPBST 中で20% ブロックエース(大日本製薬)でブロックした。2% ブロックエース (PBST-BA)を含むPBSTに希釈した各ウイルス免疫血清(10倍希釈)100μlを各ウェルに添加した。該希釈血清を添加した後、PBST-BAに希釈したモノクローナル抗体100μlを各ウェルに添加した。各ウェルにPBST-BAに希釈したペルオキシダーゼ標識抗-マウスIgG (Zymed) 100μlを添加した。プレートを基質溶液[50 mM クエン酸ナトリウム中に1.0 mM 2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)(Sigma)、4mM H2O2 含有、pH 4.0] 100μlで満たした。
【実施例】
【0058】
各ウェルの吸光度は37℃にて1時間インキュベーション後に405 nm にて測定した。結果は、式:阻害%=100-[(試験サンプルの吸光度値/コントロール血清の吸光度値)]×100で計算される阻害%で表わした。
【実施例】
【0059】
(9) 実験動物管理
実験開始前に動物を用いる全ての実験は動物衛生研究所の動物実験倫理委員会による承認を得た。
【実施例】
【0060】
2.結果
(1) モノクローナル抗体の特徴
抗-WNV モノクローナル抗体を分泌する3つのハイブリドーマ (SHW-23H11, SHW-29C2 およびSHW-31B2)を得た。モノクローナル抗体のイムノグロブリンクラスはIgG1,kであった。ウェスタンブロット解析では、SHW-23H11はWNVエンベロープ蛋白質(E)と反応し、SHW-29C2およびSHW-31B2はWNVプレメンブレン蛋白質(PrM)と反応することが示された(図1)。SHW-23H11 は、プラーク減少中和試験(PRNT)において弱い中和活性を示した。他の2抗体は、PRNTにおいてプラーク数減少能はなかった。なお、上記モノクロナール抗体を産生するハイブリドーマSHW-23H11株は受託番号FERM BP-11308として、ハイブリドーマSHW-29C2株は受託番号FERM BP-11309として、ハイブリドーマSHW-31B2株は受託番号FERM BP-11310として、平成22年10月22日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1 中央第6)にそれぞれ寄託されている。
【実施例】
【0061】
間接ELISAによって、上記3種のモノクローナル抗体と日本脳炎ウイルス(JEV)血清型群フラビウイルスとの交差反応性について調べた。SHW-23H11は JEV、SLEV、およびMVEVとも反応した。SHW-29C2はWNV NY99株及びKunjin株に高度に特異的であった。SHW-31B2はWNV NY99 株に高度に特異的であり、一方、JEV Nakayama 株とも反応したが、そのレベルはWNV NY99 株のOD値と比べて5分の1であった(図2)。
【実施例】
【0062】
(2)競合ELISA における交差反応性
競合ELISAを、上記3種のモノクローナル抗体を用いて構築した。競合ELISAでは、一連のフラビウイルス免疫ニワトリ血清を用いて当該モノクローナル抗体の特異性を調べた。免疫ウイルスに対する中和抗体価と各フラビウイルス免疫ニワトリ血清の競合ELISAにおける阻害%を表1に示す。表中の中和抗体価は、免疫ウイルスの相同ウイルスに対するPRNT価を示す。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP0005737687B2_000002t.gif
JP0005737687B2_000003t.gif
【実施例】
【0064】
上記3種のモノクローナル抗体をベースとする全ての競合ELISAにおいて、抗-WNV NY99 株抗体および抗-WNV Kunjin 株抗体を検出することができた。WNV NY99株免疫血清は全ての競合ELISAにおいて、約80~90%の阻害を示した。また、全ての競合ELISAにおいて、WNV g2266株免疫血清とWNV Eg101 株免疫血清はWNV NY99 株免疫血清よりも低い阻害を示す傾向にあった。しかしながら、SHW-31B2をベースとする競合ELISAでは、他のモノクローナル抗体をベースとする競合ELISAに比べてWNV g2266 株免疫血清とWNV Eg101 株免疫血清に比較的感受性であった。JEV、SLEV、及びMVEV 免疫血清はSHW-29C2およびSHW-31B2をベースとする競合ELISAにおいて、約20%阻害を示した。SHW-23H11は、他のモノクローナル抗体をベースとする競合ELISAよりも比較的MVEV免疫血清との交差反応性が高かった(図3)。
【実施例】
【0065】
カットオフ値および算出式:異種フラビウイルス免疫血清の平均阻害%+3×標準偏差で設定した(表2)。SHW-23H11はMVEV 免疫ニワトリ血清に高度に交差反応性であった。
【実施例】
【0066】
【表2】
JP0005737687B2_000004t.gif
【実施例】
【0067】
(3)競合ELISAの感受性
WNV 感染ニワトリから経時的に採取した血清を用いて、上記3種のモノクローナル抗体を用いて構築した競合ELISAにおいて阻害%の上昇時期について調べた。WNV感染ニワトリはウイルス接種後2日目にウイルス血症を示し、平均ウイルス血症力価は8372 PFU/ml (SD: ± 12367 PFU/ml)であった。各ニワトリの中和抗体価の経時変化を図4に示す。プラーク減少中和試験(PRNT)における抗体価の上昇時期はニワトリ毎に異なっていた。例えば、No.49は感染後7日で上昇を開始したが、No.44 は感染後35日まで上昇しなかった(図4)。
【実施例】
【0068】
SHW-23H11及びSHW-29C2をベースとする競合ELISA はほとんど同じ阻害%曲線を示した。すべてのWNV 感染ニワトリ血清は両競合ELISAにおいて感染3週間後にほとんど50%阻害を示した(図5)。SHW-23H11、SHW-29C2をベースとする競合ELISAにおいてはWNV感染後3週間後における平均阻害%は、それぞれ55.8%、61.6%であった。
【実施例】
【0069】
一方、WNV感染ニワトリ血清はSHW-31B2をベースとする競合ELISAではわずかに早く阻害%の上昇を示した。SHW-31B2をベースとする競合ELISAにおいてはWNV感染後3週間後における平均阻害%は、71.8%であった。表2に示したMVEVに対するカットオフ値を用いると、4羽のニワトリ血清が感染後2週間で陽性に転じた。そして、SLEV およびJEVに対するカットオフ値を用いると、すべての感染ニワトリ血清が、感染後2週間で陽性に転じた。
【実施例】
【0070】
また、SHW-31B2をベースとする競合ELISAにおいて、100倍希釈した被験血清を用いる以外は、上記と同様にして、該抗体の日本脳炎ウイルス(JEV)血清型群ウイルス免疫血清との交差反応性を調べた。該抗体のJEV、マレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス免疫血清による阻害%は4.8%以下であるのに対し、WNVの各株毎の阻害%はWNV g2266の免疫血清では24.2%、WNV Eg101の免疫血清では41.4%、WNV Kunjinの免疫血清では58.7%、WNV NY99の免疫血清では84.3%であり、WNVの各株、特にWNV NY99 によって特異的に阻害された(図6)。また、図7に示すように、WNV(NY99株)の感染血清(100倍希釈)では、感染後14日から、阻害%が上昇し始め、感染後21日には、明らかな阻害%の上昇が認められた。以上の結果から、本発明のモノクローナル抗体によれば、100倍希釈した被験血清を用いても競合ELISAによる測定が可能であることが確認できた。
【実施例】
【0071】
(4)競合ELISA阻害%と間接ELISA OD 値との相関性
競合ELISA阻害%と間接ELISA OD 値との相関性をWNV 感染ニワトリから経時的に採取した血清を用いて調べた。上記3種のモノクローナル抗体をベースとする全ての競合ELISAにおける阻害%と間接ELISA OD 値との間に高い相関性が見られた(図8)。SHW-23H11、SHW-29C2、およびSHW-31B2の近似直線のγ2値はそれぞれ0.9615、0.9661、および0.9244 であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明はWNV感染の診断薬・検査薬の製造分野において利用される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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