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明細書 :農業用ハウス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2012-205510 (P2012-205510A)
公開日 平成24年10月25日(2012.10.25)
発明の名称または考案の名称 農業用ハウス
国際特許分類 A01G   9/24        (2006.01)
F24F   1/00        (2011.01)
FI A01G 9/24 S
F24F 1/00 331
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2011-071557 (P2011-071557)
出願日 平成23年3月29日(2011.3.29)
発明者または考案者 【氏名】星 典宏
【氏名】根角 博久
【氏名】川嶋 浩樹
【氏名】長崎 裕司
【氏名】澤村 篤
出願人 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100082670、【弁理士】、【氏名又は名称】西脇 民雄
審査請求 未請求
テーマコード 2B029
3L050
Fターム 2B029SE03
3L050BB04
3L050BB14
要約 【課題】ハウス内の温度環境を通年で良好に制御できる農業用ハウスを提供する。
【解決手段】農業用ハウス1は、骨格体2と、被覆材3と、骨格体2の上部に設けられた複数の散水管4と、複数の散水管4に接続された散水装置とを備えている。骨格体2の内部には農作物の栽培を行う栽培空間が形成され、後側には温度制御体である傾斜壁21が配置されている。被覆材3は日射透過性のシートから形成され、栽培空間を覆うように骨格体2に取り付けられている。各散水管4には複数の散水孔が設けられている。寒冷期には屋根被覆材31からハウス1内に入ってきた日射の熱エネルギーは傾斜壁面21aで蓄積され、低温対策となる。暑熱期には散水装置を駆動して各散水管4から傾斜壁面21aに散水を行う。傾斜壁面21aは蓄熱体としての機能が抑制され、散水された水が気化して吸熱体として機能する。これにより栽培空間が冷却されてハウス1内の高温対策となる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
農作物の栽培空間を内部に形成する骨格体と、前記栽培空間を覆うように前記骨格体に取り付けられた被覆材とを備える農業用ハウスにおいて、
前記被覆材に設けられ、日射を前記栽培空間に通すための日射透過部と、
前記栽培空間内に少なくとも一部が位置するように設けられ、前記日射透過部を通して前記栽培空間に入ってきた前記日射の熱エネルギーを蓄積または放出する温度制御体と、
前記温度制御体で前記栽培空間内に位置している部分に散水する散水手段とをさらに備え、
前記温度制御体は、散水によって前記日射の熱エネルギーの蓄積が抑制されるとともに、散水された水が気化して前記栽培空間の熱エネルギーを吸収することを特徴とする農業用ハウス。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用ハウスにおいて、
前記散水手段は、前記温度制御体へ散水した水が前記ハウス内の地面に到達する前に全て気化するように散水量を制御することを特徴とする農業用ハウス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の農業用ハウスにおいて、
前記ハウス内に外気を供給する給気手段と、前記ハウス内の空気を排出する排気手段とをさらに備えたことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の農業用ハウスにおいて、
前記温度制御体で前記栽培空間内に位置している部分を斜め上向きに傾斜して配置し、前記日射透過部を当該温度制御体の傾斜部分と対向して配置したことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項5】
請求項4に記載の農業用ハウスにおいて、
擁壁として設置されている既存のコンクリート製の傾斜壁を、前記温度制御体の傾斜部分に使用したことを特徴とする農業用ハウス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温暖な気候で水はけの良好な土壌の西日本の中山間地域は、カンキツ類の栽培が盛んであり、主要な産地を形成している。1960年代以降の果実需要の増加に伴い急傾斜地でも積極的にウンシュウミカン園として開園されてきた。しかし、今日ではウンシュウミカンの価格低迷の影響などから高価格販売が期待できる中晩生カンキツへの栽培品種の転換が進められている。
【0003】
ウンシュウミカンよりも熟期が遅く、また、温度要求性の高い中晩生カンキツ栽培は施設栽培が有利である。さらに、中晩生カンキツ‘不知火’などでは良好な果実形状を形成するために、発芽期から展葉期において温度の日格差が必要である。カンキツ産地の活性化や中山間地域の傾斜地の有効利用のためにも、傾斜地の特徴を活かした新たな栽培施設の展開が必要である。
【0004】
農作物の栽培環境を制御する施設としては、農業用ハウスが知られている。この農業用ハウスは、一般的に農作物の栽培空間を内部に形成する骨格体と、この骨格体に取り付けられて前記栽培空間を覆う被覆材とを備えている。農業用ハウスは寒冷期でも農作物の栽培に適した温度を保持することができるが、必要な温度を保待できない場合は、別途暖房設備により加温し栽培空間の低温対策とすることもある。化石燃料などの燃焼による暖房設備を用いない寒冷期の低温対策として、特許文献1、2や非特許文献1、2に記載されているように農業用ハウス内部に熱容量が大きい固体壁面を具備し、この固体壁面を蓄熱体として用いることがある。このことによって農作物の栽培に適した温度環境を保持することができる。
【0005】
また、暑熱期の構造体内部の高温対策としては、特許文献3~6に記載されているような構造体の外部に散水し冷却する方法が用いられている。これは非特許文献3に記載されているように農業用ハウスの冷却方法としても用いられている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-312616号公報
【特許文献2】実用新案公開平6-79230号公報
【特許文献3】特開2001-241151号公報
【特許文献4】特開2001-49806号公報
【特許文献5】特開2006-97367号公報
【特許文献6】実用新案登録第3093284号公報<nplcit num="1"> <text>山口智治、畔柳武司、陳青雲、「日光温室の熱環境形成機構に関する研究(第1報)」、農業施設、農業施設学会、2003年6月、第34巻、第1号、p.31-37</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>山口智治、馬承偉、薫仁傑、「中国の施設園芸における工学技術の現状と展望」、農業施設、農業施設学会、2001年6月、第32巻、第1号、p.23-32</text></nplcit><nplcit num="3"> <text>森川信也、「屋根散水による夏季のパイプハウス内昇温抑制技術」、近畿中国四国農業研究、近畿中国四国農業研究協議会、2009年3月、第14巻、p.20-25</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1、2に記載されている農業用ハウスは、寒冷期でも農作物の栽培に適した温度環境を提供できるが、暑熱期の対策は検討されず、被覆材を取り除くなどして運用されることが多い。従来のハウス内の温度環境の制御技術は、暑熱期の高温対策か、あるいは寒冷期の低温対策かに特化して検討されてきており、通年で制御している事例は少ない。
【0008】
高温対策として特許文献3~6、非特許文献3に記載されている散水による対策は、屋根面等への散水により冷却効果を得ているが、ハウス内の空気を直接冷却するものではないため、高い冷却効果が十分に得られているとは言い難い。
【0009】
特に永年性作物を対象とした場合、良好なハウス内の栽培環境作出のためには、寒冷期の低温対策に加え暑熱期の高温対策を兼ね備えた温度環境を制御できる方策が要求されている。
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ハウス内の温度環境を通年で良好に制御することができる農業用ハウスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような農業用ハウスを採用した。
【0012】
本発明は、農作物の栽培空間を内部に形成する骨格体と、前記栽培空間を覆うように前記骨格体に取り付けられた被覆材とを備える農業用ハウスにおいて、
前記被覆材に設けられ、日射を前記栽培空間に通すための日射透過部と、
前記栽培空間内に少なくとも一部が位置するように設けられ、前記日射透過部を通して前記栽培空間に入ってきた前記日射の熱エネルギーを蓄積または放出する温度制御体と、
前記温度制御体で前記栽培空間内に位置している部分に散水する散水手段とをさらに備え、
前記温度制御体は、散水によって前記日射の熱エネルギーの蓄積が抑制されるとともに、散水された水が気化して前記栽培空間の熱エネルギーを吸収することを特徴とする。
【0013】
ここで、散水手段は、温度制御体へ散水した水がハウス内の地面に到達する前に全て気化するように散水量を制御することが好ましい。
【0014】
また、本発明の農業用ハウスは、ハウス内に外気を供給する給気手段と、ハウス内の空気を排出する排気手段とをさらに備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明の農業用ハウスは、温度制御体で栽培空間内に位置している部分を斜め上向きに傾斜して配置し、日射透過部を当該温度制御体の傾斜部分と対向して配置することが好ましい。なお、日射透過部および温度制御体の傾斜部分を必ずしも真南に向ける必要はない。日射透過部および温度制御体の傾斜部分を真南にすれば、日射の熱エネルギーを効率よく得られるが、過剰な高温対策が必要となる。一方、日射透過部および温度制御体の傾斜部分を、南東側、あるいは南南東側などにすれば、傾斜部分が受ける日射の時間が短く、高温対策は緩和され、温度の日格差が容易に作れることができる。
【0016】
また、擁壁として設置されている既存のコンクリート製の傾斜壁を、温度制御体の傾斜部分に使用しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の農業用ハウスでは、寒冷期にはハウス内に入ってきた日射の熱エネルギーを温度制御体が蓄積して蓄熱体として機能するため、日射の無い夜間でもこの温度制御体が放熱体として機能し、ハウス内の温度環境を維持することが可能になる。また、暑熱期には温度制御体への散水によって、日中の蓄熱体としての機能が抑制される一方、散水された水が気化して吸熱体として機能するため栽培空間が冷却される。これは、従来と異なりハウス内から冷却することになり、ハウス内の冷却効果を高めることが可能になる。よって、本発明の農業用ハウスは、ハウス内の温度環境を通年で良好に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態を示す農業用ハウスの斜視図である。
【図2】同実施の形態の農業用ハウスの内部を示す図である。
【図3】同実施の形態の農業用ハウスの傾斜壁面に散水が行われた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。

【0020】
図1は、本発明の一実施の形態を示す農業用ハウス1の斜視図である。この農業用ハウス1は、骨格体2と、骨格体2に取り付けられた被覆材3と、骨格体2の上部に設けられた複数の散水管4と、複数の散水管4に接続された散水装置(図示せず)とを備えている。なお、複数の散水管4と散水装置とにより本発明の散水手段が構成されている。

【0021】
骨格体2は半蒲鉾型のハウス状に形成されている。骨格体2の内部には、図2に示すように農作物のハウス栽培を行うための栽培空間Sが形成されている。

【0022】
また、図1や図2に示すように、骨格体2は、後側に配置された傾斜壁21と、左右側に配置された複数の支柱フレーム22と、天井側から前側に配置された複数のアーチフレーム23と、支柱フレーム22やアーチフレーム23に結合された複数の横フレーム24とから形成されている。

【0023】
傾斜壁21は既存のものであり、擁壁として設置されている。この傾斜壁21は斜め上向きに配置されている。また、この傾斜壁21はコンクリートで形成されており、本発明の温度制御体を構成している。

【0024】
複数の支柱フレーム22は、傾斜壁21の前方にある設置場所Pに左右に対向して立設している。複数のアーチフレーム23は、この左右の複数の支柱フレーム22,22間に左右に並列して配置されている。各アーチフレーム23は上方へ弓形に曲げられており、上端部が傾斜壁21の上面21bに載せられて設置場所Pに立設している。また、これらの複数のアーチフレーム23のうち、左右側に位置しているアーチフレーム23は、それぞれ左右の複数の支柱フレーム22に接合されている。

【0025】
複数の横フレーム24は、複数のアーチフレーム23に前後に並列して架設されている。これらの横フレーム24とアーチフレーム23とにより骨格体2の屋根部2aが形成されている。

【0026】
その他の複数の横フレーム24は、左右のアーチフレーム23と支柱フレーム22とを結合し、また、支柱フレーム22,22間を結合している。これらの横フレーム24、左右のアーチフレーム23、支柱フレーム22により骨格体2の左右側部2bが形成されている。また、左右側部2bには、支柱フレーム22,22間に扉10が開閉可能に取り付けられている。

【0027】
被覆材3は日射透過性のシートから形成されている。この日射透過性のシートは既存のものが使用されている。また、被覆材3は、栽培空間Sを覆うように骨格体2に取り付けられている。具体的に説明すると、この被覆材3は、屋根部2aに取付けられた屋根被覆材31と、左右側部2b,2bに取り付けられた左右側被覆材32,32とを備えている。

【0028】
屋根被覆材31は本発明の日射透過部を構成している。この屋根被覆材31は屋根部2aの下端部分と上端部分を除いて屋根部2aに取り付けられている。これにより屋根部2aの下端部分には複数の地窓5(給気窓)が形成され、上端部分には複数の天窓6(排気窓)が形成されている。地窓5は本発明の給気手段であり、天窓6は本発明の排気手段である。

【0029】
複数の散水管4は、図3に示すように屋根部2aの上端部分(地窓5が形成されている部分)において、複数のアーチフレーム23に前後に並列して架設されている。各散水管4には、複数の散水孔4aが設けられている。散水装置は複数の散水管4に接続されており、散水管4に水を供給して散水を行うものである。

【0030】
以上のように構成されている農業用ハウス1において、次に、傾斜壁21を利用したハウス1内(栽培空間S内)の温度制御方法について説明する。

【0031】
寒冷期(冬季)においては、日射が屋根被覆材31を透過してハウス1内に入る。傾斜壁21は、ハウス1内に入ってきた日射の熱エネルギーを蓄積する。したがって、寒冷期の日中においては、傾斜壁21は蓄熱体になる。夜間にはこの蓄えられた熱によって傾斜壁21は放熱体として機能し、ハウス1内の温度環境が維持され、低温対策となる。

【0032】
暑熱期(夏季)においては、傾斜壁21は、寒冷期の日中と同様に屋根被覆材31を通してハウス1内に入ってきた日射の熱エネルギーを蓄積するが、このときに散水装置を駆動する。これにより図3に示すように各散水管4の散水孔4aから傾斜壁面21a(傾斜壁21においてハウス1内に位置する面)に散水を行う。傾斜壁面21aは、散水された水Wによって、日中の蓄熱体としての機能が抑制される。また、このときの傾斜壁面21aの表面で水Wが気化することで、ハウス1内の熱エネルギーを吸収する。したがって、傾斜壁面21aの表面の水Wは吸熱体として機能しハウス1内が冷却され、高温対策となる。

【0033】
本実施の形態の農業用ハウス1では、傾斜壁面21aを蓄熱体、放熱体として機能させる、また傾斜壁面21aの表面の水Wを吸熱体としての機能させることによって、温度環境を通年で良好に制御することができる。

【0034】
また、散水装置は少量の水を点滴のように継続して散水できればよく、その総散水量は傾斜壁面21aへ散水した水がハウス1内の地面に到達する前に全て気化するように制御されることが好ましい。これにより、散水した水が地面に到達して余剰となった水を回収する設備を必要としないので、設備コストを抑えることができる。

【0035】
また、暑熱期(夏季)においては晴天の正午頃がハウス1内の温度が最も高くなるが、この時に傾斜壁面21aに散水を行うだけではなく、日中間欠的に散水し続けて傾斜壁面21a自体の温度が上がらないように抑制しても良い。また、夏季以外にも春先の発芽期から展葉期の夕方に少量を散水することで日没以降の傾斜壁面21aの温度低下を促し、日中と夜間のハウス1内の温度差を効果的に形成することができる。これは中晩生カンキツ‘不知火’などでは良好な果実形状の形成ができる。また、これを晩秋に行うと着色促進の効果も得られる。

【0036】
また、散水手段は、本実施の形態のような散水管4と散水装置との組み合わせの他に畑地用のかん水設備等を用いても良い。点滴チューブなどのかん水設備等を用いた場合、点滴チューブの適用範囲内の水圧で用いれば、大規模散水のようにエンジンや電動ポンプによる加圧を行わなくても散水は駆動する。また、農業施設で主に用いられている細霧冷房などの暑熱対策では、送風機や機械換気装置が必要であるが、本実施の形態では、それらと比較して大きな動力を用いることなく、温度環境を通年で良好に制御することができる。また、散水の実施は、かん水時刻を制御するタイマーと、かん水量を制御する電磁弁、栽培に適したハウス1内の温度・湿度に合わせて行うことが合理的である。

【0037】
また、本実施の形態の農業用ハウス1では地窓5と天窓6を設けた。このため、図1や図2に示すように地窓5から新鮮な外気Aが供給され、傾斜壁面21aで暖められたハウス1内の空気Bは傾斜壁面21aに沿って上昇して天窓6から排出される。したがってハウス1内が換気されるので、ハウス1内に継続的に散水してもハウス1内の高多湿状態を防ぐことができる。よって、ハウス1内の栽培環境を良好に維持することができる。

【0038】
また、地窓5と天窓6にそれぞれ開閉可能な扉を取り付けても良い。この扉を状況に応じて開閉することでハウス1内の温度や湿度を自由に調節することが可能になる。よって、ハウス1内の栽培環境をさらに良好に維持することができる。

【0039】
また、本実施の形態の農業用ハウス1では、傾斜壁面21aを斜め上向きに配置し、この傾斜壁面21aと対向するように屋根被覆材31を配置した。しかし、必ずしも真南に向いている壁面を傾斜壁面21aとする必要はない。真南壁面を傾斜壁面21aにすれば、日射の熱エネルギーを効率よく得られるが、過剰な高温対策が必要となる。一方、南東壁面、あるいは南南東壁面などを傾斜壁面21aにすれば、壁面が受ける日射の時間が短く、高温対策は緩和され、温度の日格差が容易に作れることができる。

【0040】
また、本実施の形態の農業用ハウス1では、擁壁として設置されている既存のコンクリート製の傾斜壁21を後部壁として使用するとともに温度制御体として使用した。このため、農業用ハウス1の部品点数が抑えられるので、コストの低減化を図ることができる。

【0041】
以上、本発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。

【0042】
例えば、本実施の形態の農業用ハウス1では、本発明の温度制御体として既存の傾斜壁21を使用したが、この傾斜壁21を必ずしも使用する必要はなく、温度制御体としての機能が得られるのであればコンクリート製積みブロック、単純コンクリート壁、自然石を積み上げた壁などでもよく、その積み方は平積み、布積みなど問わない。また、これらの物を温度制御体として使用する場合には、ハウス1内(栽培空間S内)に少なくとも一部が位置するように設置されれば良い。このようにして温度制御体を設置することにより、ハウス1の内部の温度環境を通年で良好に制御することが可能になる。

【0043】
また、本実施の形態の農業用ハウス1では、栽培空間S内の対象作物は中晩生カンキツ栽培のみを対象としたものではなく、温度環境の制御が必要なさまざまな作物に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように本発明の農業用ハウスは、ハウス内の温度環境を通年で良好に制御することができる。したがって、本発明の農業用ハウスを、農業用ハウスの技術分野で十分に利用することができる。また、本発明の農業用ハウスを、農作業性が低く重労働を伴うために敬遠されがちな傾斜地に設置して、日射の熱エネルギーを有効に活用することにより、経済効果を高めることができ、中山間地域において十分に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 農業用ハウス
2 骨格体
3 被覆材
4 散水管(散水手段)
5 地窓(給気手段)
6 天窓(排気手段)
21 傾斜壁(温度制御体)
21a 傾斜壁面(温度制御体で栽培空間内に位置している部分)
31 屋根被覆材(日射透過部)
S 栽培空間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2