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明細書 :壁体構造の構築方法およびその方法により構築される壁体構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5702645号 (P5702645)
公開番号 特開2012-207434 (P2012-207434A)
登録日 平成27年2月27日(2015.2.27)
発行日 平成27年4月15日(2015.4.15)
公開日 平成24年10月25日(2012.10.25)
発明の名称または考案の名称 壁体構造の構築方法およびその方法により構築される壁体構造
国際特許分類 E02D  17/18        (2006.01)
FI E02D 17/18 A
請求項の数または発明の数 22
全頁数 28
出願番号 特願2011-073438 (P2011-073438)
出願日 平成23年3月29日(2011.3.29)
審査請求日 平成26年3月24日(2014.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】松島 健一
【氏名】毛利 栄征
【氏名】堀 俊和
【氏名】有吉 充
【氏名】上野 和広
個別代理人の代理人 【識別番号】100086852、【弁理士】、【氏名又は名称】相川 守
審査官 【審査官】鷲崎 亮
参考文献・文献 特開平06-185059(JP,A)
特開昭50-038907(JP,A)
特開昭49-111437(JP,A)
特開平06-026048(JP,A)
調査した分野 E02D 17/00-17/20
E02D 29/02
E02B 3/04-3/14
特許請求の範囲 【請求項1】
地盤側の面に、補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体内外方向に延長して敷設し、補強材上に中詰め材を壁体形成予定位置に沿って投入し、補強材の壁体内外方向自由端のうち少なくともいずれか一方を折り返して中詰め材を包み込み壁体の一部をなす壁体部を形成する第1の工程と、壁体部の背面側に盛土を投入して壁体部と高低差のある盛土面を形成する第2の工程と、壁体部と盛土の高低差面とに、新たな補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体部と高低差面との間に生じた段差を通過させて壁体内外方向に延長して敷設し、新たな補強材上に中詰め材を投入して包み込み、下側に段差部を有する新たな壁体部を形成する第3の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第4の工程とを有することを特徴とする壁体構造の構築方法。
【請求項2】
第1の工程で、壁体形成予定位置の背面側の地盤側面を予め掘削し、最初の壁体部形成時、壁体部下面に段差部を形成することを特徴とする請求項1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項3】
第1の工程で、地盤側の壁体形成予定位置の壁面形成側に壁面の一部を形成する成型面を有する型枠を予め設置し、補強材を型枠の成型面に添わせて一端を型枠から折り返して外側へ延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、壁体部の形成時、型枠の成型面により壁面の一部を成型し、
第3の工程で、壁体部上の壁体形成予定位置の壁面形成側に上記型枠を設置した後、新たな補強材を成型面に添わせて一端を型枠から外側に折り返して延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、新たな壁体部の形成時、型枠の成型面により壁面の一部を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項4】
壁体部が形成され盛土が投入されて盛土面が形成されると、これら盛土面と壁体部とを転圧することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項5】
所望の壁体高さに達するまで第2の工程と第3の工程とを順に繰り返すことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項6】
盛土の高低差面を、壁体部上面より低い平坦面に形成することを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項7】
補強材に投入された中詰め材の上面背面側に高低差面を形成した後、補強材により包み込むことを特徴とする請求項1ないし6うちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項8】
補強材に投入された中詰め材を、外側の平坦面とこの平坦面から連続して傾斜する背面側傾斜面とに形成した後、補強材により包み込むことを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項9】
補強材の壁体内外方向両自由端は、中詰め材を包み込んだ後、重ね合わされて接続されることを特徴とする請求項1ないし8うちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項10】
補強材の壁体内外方向両端のうち外側自由端を、中詰め材を包み込んだ後、補強材の敷設面に重ねて接続し、補強材の背面側延長端を所定の長さ盛土の高低差面に残すことを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項11】
補強材の敷設時、補強材は、壁体の延長方向に沿って隣り合う端部を互いに重ね合わせて並べられることを特徴とする請求項1ないし10のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項12】
敷設された補強材の壁体延長方向両端のうち開放される開口端側に阻止部材を載置し、中詰め材の投入時、中詰め材が補強材の壁体延長方向開口端から外側に崩れ出るのを阻止することを特徴とする請求項1ないし11のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項13】
設計プランに基づいて予め構築される壁体構造に必要とされる引っ張り力を計算により導き、導かれた引っ張り力に基づいて段差の構造と補強材の敷設長と埋設される補強材の層数とを決定することを特徴とする請求項1ないし12のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項14】
地盤側の壁体形成予定位置に、柔軟性を有し変形可能な壁材を外側面が壁面の一部となるよう壁体延長方向に並べて配置し、壁材の上面を外側平坦面と背面側傾斜面とを有するように整え、壁材の背面側に盛土を投入して壁材の上面より低い盛土面を形成する第1の工程と、
壁材と盛土面の壁体側とに新たな壁材を積み上げ、新たな壁材の背面側下面に段差を形成し、新たな壁材の背面側に盛土を投入して新たな壁材の上面より低い盛土面を形成する第2の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第3の工程とを有することを特徴とする壁体構造の構築方法。
【請求項15】
第1の工程で、壁体形成予定位置の背面側の地盤を予め掘削し、壁材配置時、壁材下面に段差部を形成することを特徴とする請求項14に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項16】
所望の壁体高さに達するまで第2の工程を繰り返すことを特徴とする請求項14または15に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項17】
下側壁材上面に板を載せた後、新たな壁材を載置し、新たな壁材の壁面側下面と下側壁材上面とを平坦に整えて板を引き抜くことを特徴とする請求項14ないし16のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法
【請求項18】
壁材を、土嚢により構成したことを特徴とする請求項14ないし17のうちいずれか1に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項19】
地盤側の面には、整地または未整地の地盤面、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面、堆積物が堆積した堆積面、既存の壁体構造、既存の壁体構造を掘削した掘削面または山地突起部間の傾斜地のうちいずれかが含まれることを特徴とする請求項1または14に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項20】
中詰め材または盛土にはそれぞれ、現場の掘削土、固化処理土、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれることを特徴とする請求項1または14に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項21】
補強材は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成されることを特徴とする請求項1または14に記載の壁体構造の構築方法。
【請求項22】
請求項1ないし21のうちいずれか1に記載の構築方法により構築されることを特徴とする壁体構造。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオテキスタイル等の補強材や土嚢を用いて構築される壁体構造の構築方法およびその方法により構築される壁体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、盛土の層にジオテキスタイル等の引っ張り補強材を用い擁壁や土留め壁として構築される壁体構造物は、盛土内に引っ張り補強材を水平に埋設し、耐震性を確保するようにしている。このため、引っ張り補強材に十分な敷設長さや敷設面が確保できない場合、水平方向の地震力によって壁体が壁面露出側の前方に押し出されると、引っ張り補強材が盛土内から引き抜かれ、壁体構造物の崩壊を引き起こすおそれがある。このような課題を解消するため、従来、壁体部分の滑動抵抗力を向上させる目的で、固化処理土を用いて予め凹凸形状の土嚢を製造し、現地でこれら土嚢を積層して構築する壁体構造が提案されている(特許文献1参照。)。また、地盤上にジオテキスタイルを敷き、そのジオテキスタイル上に土嚢を一度に複数層積み上げて壁面の一部を形成した後、土嚢の背面側のジオテキスタイル上に盛土材を投入し、次いで、ジオテキスタイルの端部を土嚢の外側面に沿って折り返し、地盤上のジオテキスタイルとUピンと自硬性定着材で接続して、折り返されたジオテキスタイルと地盤上に盛土材を投入する土嚢巻き込み工法により壁体構造を構築する方法が提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】実開昭51-152228号公報
【特許文献2】特開平3-187414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の工法では、凹凸形状にした土嚢には、構造的に凹凸部分のジオテキスタイルに引っ張り力を発揮させることができないため、中詰め材に高い拘束効果を発揮させることができないという問題がある。また、土嚢積層面でのなじみが悪いため、局所的な応力集中が生じると、固化処理土にクラックが発生するおそれがある。また、上記特許文献2に記載の工法では、壁体部分(土嚢部分)の滑動抵抗力が低いため、十分な引っ張り抵抗力を確保できないという問題がある。すなわち、上記特許文献2に記載の工法では、土嚢の背面の盛土材を撒き出す際の仮設的な土留めの役割を担っており、土嚢の積層体自体は滑動抵抗力が低いため、壁体全体の構造的安定性には寄与しておらず、設計においても土嚢の効果を見込まずジオテキスタイルの補強効果しか見込んでいない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成および工程で、コストダウンを図るとともに、ジオテキスタイルによる盛土の補強効果だけでなく確実に滑動抵抗力を増大させて壁体構造の剛性を向上させ、耐震性と耐侵食性とを高め、壁体構造の安定化を図ることができる壁体構造の構築方法およびその方法により構築される壁体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る壁体構造の構築方法は、地盤側の面に、補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体内外方向に延長して敷設し、補強材上に中詰め材を壁体形成予定位置に沿って投入し、補強材の壁体内外方向自由端のうち少なくともいずれか一方を折り返して中詰め材を包み込み壁体の一部をなす壁体部を形成する第1の工程と、壁体部の背面側に盛土を投入して壁体部と高低差のある盛土面を形成する第2の工程と、壁体部と盛土の高低差面とに、新たな補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体部と高低差面との間に生じた段差を通過させて壁体内外方向に延長して敷設し、新たな補強材上に中詰め材を投入して包み込み、下側に段差部を有する新たな壁体部を形成する第3の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第4の工程とを有するようにしたことを特徴としている。
【0007】
本発明の請求項1に係る壁体構造の構築方法では、地盤側の面に、補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体内外方向に延長して敷設し、補強材上に中詰め材を壁体形成予定位置に沿って投入し、補強材の壁体内外方向自由端のうち少なくともいずれか一方を折り返して中詰め材を包み込み壁体の一部をなす壁体部を形成する第1の工程と、壁体部の背面側に盛土を投入して壁体部と高低差のある盛土面を形成する第2の工程と、壁体部と盛土の高低差面とに、新たな補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体部と高低差面との間に生じた段差を通過させて壁体内外方向に延長して敷設し、新たな補強材上に中詰め材を投入して包み込み、下側に段差部を有する新たな壁体部を形成する第3の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第4の工程とを有するようにしたことにより、壁体構造に背面土圧や水平方向の地震力などの滑動力が加えられると、補強材に引っ張り力が発生し、この引っ張り力により内部の中詰め材に拘束力が作用して、せん断強度と剛性とが高まる。その結果、補強材により包み込まれた壁体部内部の領域は中詰め材がたとえ土質材料であっても剛体のブロックのように硬くなる。こうして硬くなった剛体同士は段差部分を互いに有しているので、段差に乗り上げるか、または、補強材が破断したり引き抜けない限り滑動することがない。しかも、補強材は段差を介して高低差のある面を有して埋設されているので、補強材に引き抜き力が加えられると、補強材の段差部の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。そのため、補強材をすべり領域よりも水平方向で奥深く敷設しなくとも、壁体自体が背面土圧に抵抗できるので、資材コストや施工コストが抑制される。さらに、掘削幅の縮小により既存構造物の耐震化や応急の復旧作業がし易くなる。また、補強材の敷設、中詰め材の投入、中詰め材の包み込み、盛土の投入の順に作業を行うので、作業工程が簡素化され、施工作業が効率化される。
【0008】
本発明の請求項2に係る壁体構造の構築方法は、第1の工程で、壁面形成予定位置の背面側の地盤側面を予め掘削し、壁体部形成時、壁体部下面に段差部を形成するようにしたことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項2に係る壁体構造の構築方法では、第1の工程で、壁面形成予定位置の背面側の地盤側面を予め掘削し、壁体部形成時、壁体部下面に段差部を形成するようにしたことにより、最下段の壁体部から最上部の壁体部に至るまですべての壁体部には下側に段差が形成される。このため、壁体の上下全体にわたって均等に引き抜き抵抗力が確保される。
【0010】
本発明の請求項3に係る壁体構造の構築方法は、第1の工程で、地盤側の壁体形成予定位置の壁面形成側に壁面の一部を形成する成型面を有する型枠を予め設置し、補強材を型枠の成型面に添わせて一端を型枠から折り返して外側へ延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、壁体部の形成時、型枠の成型面により壁面の一部を成型し、第3の工程で、壁体部上の壁体形成予定位置の壁面形成側に上記型枠を設置した後、新たな補強材を成型面に添わせて一端を型枠から外側に折り返して延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、新たな壁体部の形成時、型枠の成型面により壁面の一部を形成することを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項3に係る壁体構造の構築方法では、第1の工程で、地盤側の壁体形成予定位置の壁面形成側に壁面の一部を形成する成型面を有する型枠を予め設置し、補強材を型枠の成型面に添わせて一端を型枠から折り返して外側へ延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、壁体部の形成時、型枠の成型面により壁面の一部を成型し、第3の工程で、壁体部上の壁体形成予定位置の壁面形成側に上記型枠を設置した後、新たな補強材を成型面に添わせて一端を型枠から外側に折り返して延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、新たな壁体部の形成時、型枠の成型面により壁面の一部を形成するようにしたことにより、型枠の成型面を適宜選択することにより、壁面の一部として形成される補強材の外面を、補強材に引っ張り力を発生させる好ましい形状に成型することができるので、内部の中詰め材への拘束力を効果的に作用させることができ、せん断強度と剛性とをより増大させることができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る壁体構造の構築方法は、壁体部が形成され盛土が投入されて盛土面が形成されると、これら盛土面と壁体部とを転圧することを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項4に係る壁体構造の構築方法では、壁体部が形成され盛土が投入されて盛土面が形成されると、これら盛土面と壁体部とを転圧するようにしたことにより、型枠を取り外して、投入された盛土の盛土面と壁体部とが転圧されると、盛土および中詰め材が密実化するとともに、盛土と中詰め材が壁面露出側へ変形して補強材は引っ張り力が発揮され、張力の働いた断面円弧状の壁面が構築される。そのため、補強材で包み込んだ部分の強度、剛性が増加して壁体の滑動抵抗力と剛性とがさらに向上する。
【0014】
本発明の請求項5に係る壁体構造の構築方法は、所望の壁体高さに達するまで第2の工程と第3の工程とを順に繰り返すことを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項5に係る壁体構造の構築方法では、所望の壁体高さに達するまで第2の工程と第3の工程とを順に繰り返すようにしたことにより、壁体全体を、せん断強度や剛性が高く引き抜き抵抗力の高い補強材の壁体部各層により構成することができ、壁体構造全体の強度が向上する。
【0016】
本発明の請求項6に係る壁体構造の構築方法は、盛土の高低差面を、壁体部上面より低い平坦面に形成することを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項6に係る壁体構造の構築方法では、盛土の高低差面を、壁体部上面より低い平坦面に形成するようにしたことにより、中詰め材を包み込んだ補強材の下面は、壁体外側の面が高く段差を介して背面側の面が低くなるので、引き抜き抵抗力を増大させることができる。また、転圧時、補強材は緊張させられるので、外部から滑動力が加えられると、効果的に引っ張り力を発揮する。さらに、補強材は転圧面にも敷設されるので、補強材の高低差面を乱れることのない均一な面とすることができ、予め計算された引き抜き抵抗力の性能を確保することができる。
【0018】
本発明の請求項7に係る壁体構造の構築方法は、補強材に投入された中詰め材の上面背面側に高低差面を形成した後、補強材により包み込むことを特徴としている。
【0019】
本発明の請求項7に係る壁体構造の構築方法では、補強材に投入された中詰め材の上面背面側に高低差面を形成した後、補強材により包み込むようにしたことにより、中詰め材と盛土との間でも引き抜き抵抗力を発生させることができる。

【0020】
本発明の請求項8に係る壁体構造の構築方法は、補強材に投入された中詰め材を、外側の平坦面とこの平坦面から連続して傾斜する背面側傾斜面とに形成した後、補強材により包み込むことを特徴としている。
【0021】
本発明の請求項8に係る壁体構造の構築方法では、補強材に投入された中詰め材を、外側の平坦面とこの平坦面から連続して傾斜する背面側傾斜面とに形成した後、補強材により包み込むようにしたことにより、中詰め材の投入後、上面を整える作業を簡素化することができ、作業が効率化される。
【0022】
本発明の請求項9に係る壁体構造の構築方法は、補強材の壁体内外方向両自由端は、中詰め材を包み込んだ後、重ね合わされて接続されるようにしたことを特徴としている。
【0023】
本発明の請求項9に係る壁体構造の構築方法では、補強材の壁体内外方向両自由端は、中詰め材を包み込んだ後、重ね合わされて接続されるようにしたことにより、外部から滑動力が加えられた際、補強材により包み込まれた中詰め材には確実に拘束力が生じる。
【0024】
本発明の請求項10に係る壁体構造の構築方法は、補強材の壁体内外方向両端のうち外側自由端を、中詰め材を包み込んだ後、補強材の敷設面に重ねて接続し、補強材の背面側延長端を所定の長さ盛土の高低差面に残すことを特徴としている。
【0025】
本発明の請求項10に係る壁体構造の構築方法では、補強材の壁体内外方向両端のうち外側自由端を、中詰め材を包み込んだ後、補強材の敷設面に重ねて接続し、補強材の背面側延長端を所定の長さ盛土の高低差面に残すようにしたことにより、引き抜き抵抗力が増大する。
【0026】
本発明の請求項11に係る壁体構造の構築方法は、補強材の敷設時、補強材は、壁体の延長方向に沿って隣り合う端部を互いに重ね合わせて並べられるようにしたことを特徴としている。
【0027】
本発明の請求項11に係る壁体構造の構築方法では、補強材の敷設時、補強材は、壁体の延長方向に沿って隣り合う端部を互いに重ね合わせて並べられるようにしたことにより、簡素な工程で壁体を長く延長しても所望の性能を確保することができる。
【0028】
本発明の請求項12に係る壁体構造の構築方法は、敷設された補強材の壁体延長方向両端のうち開放される開口端側に阻止部材を載置し、中詰め材の投入時、中詰め材が補強材の壁体延長方向開口端から外側に崩れ出るのを阻止するようにしたことを特徴としている。
【0029】
本発明の請求項12に係る壁体構造の構築方法では、敷設された補強材の壁体延長方向両端のうち開放される開口端側に阻止部材を載置し、中詰め材の投入時、中詰め材が補強材の壁体延長方向開口端から外側に崩れ出るのを阻止するようにしたことにより、中詰め材を補強材の内部に閉塞したまま包み込むことができるので、中詰め材の拘束効果を保持することができる。
【0030】
本発明の請求項13に係る壁体構造の構築方法は、設計プランに基づいて予め構築される壁体構造に必要とされる引っ張り力を計算により導き、導かれた引っ張り力に基づいて段差の構造と補強材の敷設長と埋設される補強材の層数とを決定するようにしたことを特徴としている。
【0031】
本発明の請求項13に係る壁体構造の構築方法では、設計プランに基づいて予め構築される壁体構造に必要とされる引っ張り力を計算により導き、導かれた引っ張り力に基づいて段差の構造と補強材の敷設長と埋設される補強材の層数とを決定するようにしたことにより、壁体構造に適した引き抜き抵抗力が導かれるので、段差の構造をコンパクトにしたり、補強材の敷設長を短くしたり、埋設される補強材の枚数を少なくすることができ、作業効率が向上するとともにコストが削減される。
【0032】
本発明の請求項14に係る壁体構造の構築方法は、地盤側の壁体形成予定位置に、柔軟性を有し変形可能な壁材を外側面が壁面の一部となるよう壁体延長方向に並べて配置し、壁材の上面を外側平坦面と背面側傾斜面とを有するように整え、壁材の背面側に盛土を投入して壁材の上面より低い盛土面を形成する第1の工程と、壁材と盛土面の壁体側とに新たな壁材を積み上げ、新たな壁材の背面側下面に段差を形成し、新たな壁材の背面側に盛土を投入して新たな壁材の上面より低い盛土面を形成する第2の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたことを特徴としている。
【0033】
本発明の請求項14に係る壁体構造の構築方法では、地盤側の壁体形成予定位置に、柔軟性を有し変形可能な壁材を外側面が壁面の一部となるよう壁体延長方向に並べて配置し、壁材の上面を外側平坦面と背面側傾斜面とを有するように整え、壁材の背面側に盛土を投入して壁材の上面より低い盛土面を形成する第1の工程と、壁材と盛土面の壁体側とに新たな壁材を積み上げ、新たな壁材の背面側下面に段差を形成し、新たな壁材の背面側に盛土を投入して新たな壁材の上面より低い盛土面を形成する第2の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたことにより、現場で補強材の包み込み作業を行うことなく、壁体構造全体を構築できるので、作業が効率化される。また、壁体構造に背面土圧や水平方向の地震力などの滑動力が加えられると、補強材に引っ張り力が発生し、この引っ張り力により内部の中詰め材に拘束力が作用して、せん断強度と剛性とが高まる。しかも、補強材は段差を介して高低差のある面を有して埋設されているので、補強材に引き抜き力が加えられると、補強材の段差部の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。そして、二次的に支圧効果により中詰め材が拘束され、せん断強度が増加する。
【0034】
本発明の請求項15に係る壁体構造の構築方法は、第1の工程で、壁体形成予定位置の背面側の地盤を予め掘削し、壁材配置時、壁材下面に段差部を形成するようにしたことを特徴としている。
【0035】
本発明の請求項15に係る壁体構造の構築方法では、第1の工程で、壁体形成予定位置の背面側の地盤を予め掘削し、壁材配置時、壁材下面に段差部を形成するようにしたことにより、最下段の壁材から最上部の壁材に至るまですべての壁材には下側に段差が形成される。このため、壁体の上下全体にわたって均等に引き抜き抵抗力が確保される。
【0036】
本発明の請求項16に係る壁体構造の構築方法は、所望の壁体高さに達するまで第2の工程を繰り返すようにしたことを特徴としている。
【0037】
本発明の請求項16に係る壁体構造の構築方法では、所望の壁体高さに達するまで第2の工程を繰り返すようにしたことにより、壁体全体では、せん断強度や剛性が高く引き抜き抵抗力を向上させた補強材の敷設形状を各層に構成することができ、壁体構造全体の強度が向上する。
【0038】
本発明の請求項17に係る壁体構造の構築方法は、下側壁材上面に板を載せた後、新たな壁材を載置し、新たな壁材の壁面側下面と下側壁材上面とを平坦に整えて板を引き抜くようにしたことを特徴としている。
【0039】
本発明の請求項17に係る壁体構造の構築方法では、下側壁材上面に板を載せた後、新たな壁材を載置し、新たな壁材の壁面側下面と下側壁材上面とを平坦に整えて板を引き抜くようにしたことにより、壁材の壁面側の上下両面を平坦にして段差を形成することができるので、せん断強度や剛性および引き抜き抵抗力の所望の性能を確保することができる。
【0040】
本発明の請求項18に係る壁体構造の構築方法は、壁材を、土嚢により構成したことを特徴としている。
【0041】
本発明の請求項18に係る壁体構造の構築方法では、壁材を、土嚢により構成したことにより、上面を外側平坦面と背面側傾斜面とに整えやすく作業効率が向上する。
【0042】
本発明の請求項19に係る壁体構造の構築方法は、地盤側の面には、整地または未整地の地盤面、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面、堆積物が堆積した堆積面、既存の壁体構造、既存の壁体構造を掘削した掘削面または山地突起部間の傾斜地のうちいずれかが含まれることを特徴としている。
【0043】
本発明の請求項19に係る壁体構造の構築方法では、地盤側の面には、整地または未整地の地盤面、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面、堆積物が堆積した堆積面、既存の壁体構造、既存の壁体構造を掘削した掘削面または山地突起部間の傾斜地のうちいずれかが含まれるようにしたことにより、壁体構造の構築の適用範囲が拡大するとともに、洪水や土石流流出等の被害を受けた被災地の復旧にも対応することができる。
【0044】
本発明の請求項20に係る壁体構造の構築方法は、中詰め材または盛土にはそれぞれ、現場の掘削土、固化処理土、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれることを特徴としている。
【0045】
本発明の請求項20に係る壁体構造の構築方法では、中詰め材または盛土にはそれぞれ、現場の掘削土、固化処理土、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかが含まれるようにしたことにより、水路や道路、鉄道等のインフラ用構造物だけでなく、堤体や堤防、農地や廃棄物の貯留場所にも適用範囲を拡大することができる。
【0046】
本発明の請求項21に係る壁体構造の構築方法は、補強材は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成されることを特徴としている。
【0047】
本発明の請求項21に係る壁体構造の構築方法では、補強材は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成されるようにしたことにより、補強材を求められるせん断強度や剛性あるいは引き抜き抵抗力に応じて適宜選択して使用することができ、設計プランの自由度が増す。
【0048】
本発明の請求項22に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造は、請求項1ないし21のうちいずれか1に記載の構築方法により構築されることを特徴としている。
【0049】
本発明の請求項22に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造では、請求項1ないし21のうちいずれか1に記載の構築方法により構築されるようにしたことにより、壁体構造は、壁体構造に背面土圧や水平方向の地震力などの滑動力が加えられると、補強材に引っ張り力が発生し、この引っ張り力により内部の中詰め材に拘束力が作用して、せん断強度と剛性とが高まる。しかも、補強材は段差を介して高低差のある面を有して埋設されているので、補強材に引き抜き力が加えられると、補強材の段差部の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。さらに、支圧効果によっても中詰め材のせん断強度は大きくなる。また、補強材の敷設、中詰め材の投入、中詰め材の包み込み、盛土の投入の順に作業を行うので、作業工程が簡素化され、施工作業が効率化される。さらに、壁体構造は、請求項2ないし21のうちいずれか1に記載の構成に基づく作用を果たす。
【発明の効果】
【0050】
本発明の請求項1に係る壁体構造の構築方法は、地盤側の面に、補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体内外方向に延長して敷設し、補強材上に中詰め材を壁体形成予定位置に沿って投入し、補強材の壁体内外方向自由端のうち少なくともいずれか一方を折り返して中詰め材を包み込み壁体の一部をなす壁体部を形成する第1の工程と、壁体部の背面側に盛土を投入して壁体部と高低差のある盛土面を形成する第2の工程と、壁体部と盛土の高低差面とに、新たな補強材を壁体形成予定位置を基準に壁体部と高低差面との間に生じた段差を通過させて壁体内外方向に延長して敷設し、新たな補強材上に中詰め材を投入して包み込み、下側に段差部を有する新たな壁体部を形成する第3の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第4の工程とを有するようにしたので、確実に滑動抵抗力を増大させて壁体構造の剛性を向上させ、耐震性と耐侵食性とを高め、壁体構造の安定化を図ることができる。また、簡素な構成および工程で壁体構造を構築することができるので、施工作業が効率化されコストダウンを図ることができる。
【0051】
本発明の請求項14に係る壁体構造の構築方法は、地盤側の壁体形成予定位置に、柔軟性を有し変形可能な壁材を外側面が壁面の一部となるよう壁体延長方向に並べて配置し、壁材の上面を外側平坦面と背面側傾斜面とを有するように整え、壁材の背面側に盛土を投入して壁材の上面より低い盛土面を形成する第1の工程と、壁材と盛土面の壁体側とに新たな壁材を積み上げ、新たな壁材の背面側下面に段差を形成し、新たな壁材の背面側に盛土を投入して新たな壁材の上面より低い盛土面を形成する第2の工程と、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第3の工程とを有するようにしたので、確実に滑動抵抗力を増大させて壁体構造の剛性を向上させ、耐震性と耐侵食性とを高め、壁体構造の安定化を図ることができる。また、予め用意された壁材を用いることで、施工作業を迅速化することができ、しかも、簡素な構成および工程で壁体構造を構築することができ、施工作業が効率化されコストダウンを図ることができる。
【0052】
本発明の請求項22に係る壁体構造は、請求項1ないし21のうちいずれか1に記載の構築方法により構築されるようにしたので、簡素な構造で滑動抵抗力を増大させて壁体構造の剛性を向上させることができ、構造物を小型化コンパクト化することができ、しかも、施工作業が効率化されコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1の(A)ないし(I)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図、図1の(J)は要部を拡大して示す断面図である。(実施例1)
【図2】図2の(A)、(B)はそれぞれ、図1の壁体構造の壁体形成予定位置に配置された型枠と背面側の堤体とを示す説明図および補強材を壁体延長方向に重ねて敷設した状態を示す説明図である。
【図3】図3は、図1の壁体構造の壁面を成型する型枠を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1の壁体構造の築造を完了した状態を示す説明図である。
【図5】図5の(A)、(B)はそれぞれ、図1の壁体構造の構築方法により構築される壁体構造の壁体部に作用する力と従来の壁体構造の壁体部に作用する力とを比較して示す説明図である。
【図6】図6の(A)、(B)はそれぞれ、水平せん断試験に用いられ、補強材が内部の中詰め材を包み込む構造のうち中詰め材に対し拘束力を発揮しない例と、この(A)の結果により変形が生じた例を示す変形図、図6の(C)は、補強材が中詰め材に対し拘束力を発揮する本発明の構造に基づいた例を示す説明図、図6の(D)は図6の(C)に示す構造について引き抜け力と支圧の作用を説明する説明図である。(実施例2)
【図7】図7の(A)、(B)はそれぞれ、計算式を導く説明図である。
【図8】図8の(A)、(B)はそれぞれ、盛土層内にジオテキスタイルが水平に埋設された従来の既設構造物と本発明を適用して構築された壁体構造とを比較して示す説明図で、図8の(C)は、壁体をコンクリートで構築した構造物を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造を示す説明図である。(実施例3)
【図10】図10は、図9の壁体構造の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図11】図11の(A)ないし(F)はそれぞれ、本発明の第3の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。(実施例4)
【図12】図12の(A)ないし(F)はそれぞれ、本発明の第4の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。(実施例5)
【図13】図13は、図12の壁体構造築造に用いられる成型材を示す斜視図である。
【図14】図14の(A)、(B)はそれぞれ、第1の実施例の第1の変形例に係る壁体構造を示す説明図および第1の実施例の第2の変形例に係る壁体構造を示す説明図である。(実施例6)、(実施例7)
【図15】図15の(A)ないし(C)はそれぞれ、第1の実施例の第3の変形例に係る壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。(実施例8)
【図16】図16の(A)ないし(D)はそれぞれ、第1の実施例の第4の変形例に係る壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。(実施例9)
【図17】図17は、本発明の第5の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造を示す説明図である。(実施例10)
【図18】図18は、図17の壁体構造を示す正面図である。
【図19】図19は、図17の壁体構造を山地突起部間に築造し池の堤体として構築した例を示す斜視図である。
【図20】図20の(A)ないし(C)はそれぞれ、本発明の第6の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。(実施例12)
【発明を実施するための形態】
【0054】
簡素な構成で、滑動抵抗力を増大させて壁体構造の剛性を向上させ、壁体構造の安定化を図り、しかも、施工作業の効率化を図るという目的を、まず、壁面形成予定位置の背面側の地盤側面を予め掘削し、地盤側の壁体形成予定位置に壁面の一部を形成する成型面を有する型枠を予め設置し、補強材を型枠の成型面に添わせて一端を型枠から折り返して壁体外側へ延ばすとともに他端を背面側に延長して敷設し、補強材に段差を形成し、補強材上に中詰め材を壁体形成予定位置に沿って壁体延長方向に投入し、補強材の壁体内外方向両自由端を折り返して中詰め材を包み込んで接続し、壁体の一部をなす壁体部を形成する第1の工程と、壁体部の背面側に盛土を投入して壁体部より低い盛土面を形成する第2の工程と、壁体部上の壁体形成予定位置に上記型枠を設置した後、壁体部と盛土面とに、新たな補強材を成型面に添わせて一端を型枠から外側に折り返して延ばすとともに、他端を壁体部と盛土面との間に生じた段差を通過させて背面側に延長して敷設し、新たな補強材上に中詰め材を投入して包み込み、下側に段差部を有する新たな壁体部を形成する第3の工程と、所望の壁体高さに達するまでこの第2の工程と第3の工程とを繰り返し、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第4の工程とを有するようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0055】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1の(A)ないし(I)はそれぞれ、本発明の第1の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造を順を追って示す説明図である。なお、本明細書中、壁体構造とは、壁体を備えた盛土造成構造物であって、壁体の一部を構成する壁体部の構築と盛土の投入とを繰り返して壁体を形成する壁体構造物一般をいうものであり、水路や道路、鉄道、河川やため池の堤体等のインフラ用構造物だけでなく、住宅の造成地、農地、廃棄物や残滓、火山灰の貯留場所、崖地や崖地崩壊箇所の補強構造等が含まれる。本実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造2は、図1の(A)に示すように、堤体5に沿った地盤3上の被構築場所(地盤側の面)4に構築される。地盤3は、整地された地盤であっても未整地の地盤であってもよい。以下、同一符号は同一または相当部分を示す。
【実施例1】
【0056】
まず、地盤3の被構築場所4には、図2の(A)に示すように、設計プランに基づいて、壁体の壁面の位置を決める壁面形成予定位置P1が予め決められる。この予定位置P1が決定すると、この壁面形成予定位置P1から背面側(堤体5側)に所定の距離K1後退した位置Pkから堤体5側に向かって地盤3を所定深さ掘削し、段差3Bを形成するとともに、平坦な掘削面4Aを形成する。次に、図2の(B)に示すように、この予定位置P1には、成型面11を有する型枠10が設置される。型枠10の成型面11は、壁面の一部を成型し、断面円弧状に形成された半割状の湾曲板により構成される。本実施例では、成型面11の高さ寸法hを35cmに設定している。
【実施例1】
【0057】
型枠10を壁面形成予定位置P1に設置すると、次に、所定の敷設長を有し柔軟性を有するシート状の補強材(引っ張り補強材)6を、型枠10を基準にして内外両端6B、6Cを壁体内外方向(壁体の延長方向に対して直角方向)に延ばして敷く。このとき、補強材6の型枠10から背面側は、地盤3上面から段差3Bを経て掘削面4Aに達し、段差3Bに対応する部位に段差部6Fが生じる。次に、補強材6の型枠10を覆う部分(中央部分6A)を、型枠10の成型面11に添わせて外側端6Bを型枠10から折り返して形成予定の壁体の外側へ延ばすとともに、内側端6Cを背面側の掘削面4A上に延長して敷設する。つまり、補強材6を壁面形成予定位置P1を基準にして壁体内外方向の両端側6B、6Cを壁体内外方向に延長して敷設するようになっている。言い換えれば、この予定位置P1上に補強材6のほぼ中央部分6Aを位置させてこの予定位置P1を通過するように敷設する。補強材6は、引っ張り補強材であって、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセンティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成される。補強材6は、図2の(B)に示すように、築造予定の壁体の延長方向に沿って隣り合う端部6R、6Lを互いに重ね合わせて並べて敷設される。重ね合わせる幅は、所要の引き抜き抵抗力が得られる敷設幅とするが、計算上20~40cm程度となる。
【実施例1】
【0058】
次に、図1の(C)に示すように、敷設された補強材6に中詰め材7を壁面形成予定位置P1に沿って壁体延長方向に投入する。中詰め材7は型枠10側から投入され、補強材6の成型面11に接した湾曲面に隙間なく投入されるようになっている。中詰め材7が投入されると、中詰め材7は上面7Aが平坦に形成されるとともに、背面側面(壁体の内側方向の面)に段差7B(または傾斜面7C)が形成される。中詰め材7に上面7Aと段差7Bまたは傾斜面7Cが形成されると、次に、図1の(D)に示すように、補強材6の壁体内外方向両自由端6B、6Cを折り返して中詰め材7を巻き込み(包み込み)、両自由端6B、6Cを重ね合わせて接続し、壁体の一部をなす壁体部8を形成する(第1の工程S1)。このとき、型枠10の成型面11に接している補強材6の湾曲面6Dが壁面の一部として成型される。すなわち、中詰め材7を包み込んで接続された補強材6は、内部の中詰め材7とともに土嚢状の壁体部8を構成し、この壁体部8は、壁体の最下層の壁体部8Aとなる。壁体部8の壁面形成予定位置P1から背面側端部までの部分が壁体の厚さとなり、壁体形成予定位置Pw1に対応することになる。この壁体形成予定位置Pw1の部分は、補強領域を壁体ということもあるため、巻き込み部(包み込み部)の厚さでもある。
【実施例1】
【0059】
次に、図1の(E)に示すように、この壁体部8(8A)の背面側に盛土9を投入して、補強材6の上面(壁体部上面)6Eより低い盛土面(高低差のある盛土面)9Aを平坦に形成する(第2の工程S2)。型枠10が取り外されると、補強材6の湾曲面6Dが壁面の一部として露出する。次に、盛土面9Aと壁体部8の上面(補強材の上面)6Eとが転圧される。転圧が行われると、盛土9と中詰め材7が密実化するとともに、盛土9と中詰め材7が壁面露出側へ変形して補強材に引っ張り力が生まれる。なお、中詰め材7と盛土9とはいずれも、現場の掘削土、固化処理土、セメント固化処理土、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかであればよい。
【実施例1】
【0060】
次に、図1の(F)に示すように、壁体部8(8A)上の壁面形成予定位置P2に上記型枠10を設置した後、新たな補強材6を第1の工程S1の敷設時と同様に、成型面11に添わせて外側端6Bを型枠10から折り返して延ばすとともに内側端6Cを背面側の盛土面9A上に延長して敷設する。すなわち、下側壁体部8A上の壁面形成予定位置P2を基準にして補強材6の両端6B、6Cを内外方向に延ばしている。このとき、壁体部8Aの上面(下側補強材の上面)6Eと盛土面9Aとの間に段差12が生じており、新たな補強材6はこの段差12を通過させて敷設される。このため、敷設された新たな補強材6には、段差12の部分に段差部6Fが生まれる。そして、図1の(G)に示すように、この段差部6Fを有する新たな補強材6上に中詰め材を投入する。中詰め材7は、第1の工程S1と同様に、型枠10側から投入され、補強材6の成型面11に接した湾曲面に隙間なく投入される。中詰め材7が壁体延長方向に沿って投入されると、中詰め材7には、新たな補強材6の段差部6Fを塞いで下面に段差7Hが形成される。中詰め材7の投入が完了すると、中詰め材7は上面7Aが平坦に形成されるとともに、背面側面(壁体の内側方向の面)に傾斜面7Cが形成される。中詰め材7の上面側に平坦面7Aと傾斜面7Cが下面側に段差7Hがそれぞれ形成されると、次に、図1の(H)に示すように、補強材6の内外方向両自由端6B、6Cを折り返して中詰め材7を巻き込み、両自由端6B、6Cを重ね合わせて接続し、新たな壁体部8(8B)を形成する(第3の工程S3)。このため、新たな壁体部8B(壁体部8)の下面には、段差部6Fを介して外側高位部6Gと内側低位部6Hとが形成される。中詰め材7は壁体延長方向の面を除くすべての面が新たな補強材6により覆われて包み込まれた状態となっている。
【実施例1】
【0061】
こうして、図1の(I)に示すように、所望の壁体高さに達するまで、第2の工程S2と第3の工程S3とを順に繰り返す。次に、所望の壁体高さに達すると盛土上面9Bを整地して造成を完了する(第4の工程S4、図4参照)。
【実施例1】
【0062】
次に、上記第1の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造2の作用について説明する。本実施例に係る壁体構造2では、第1の工程S1で、壁体形成予定位置Pw1の背面側地盤3を堤体5側に向かって所定深さ掘削して段差3Bと低位の掘削面4Aを形成し、地盤3側の壁面形成予定位置P1(P1・・・Pn(nは任意の整数))に壁面の一部を形成する成型面11を有する型枠10を予め設置し、補強材6を型枠10の成型面11に添わせて一端6Bを型枠10から折り返して外側へ延ばすとともに他端6Cを背面側に延長して敷設して補強材6に段差部6Fを形成し、補強材6上に中詰め材7を投入し、平坦な上面7Aと段差7Bまたは傾斜面7Cを形成し、補強材6の自由端6B、6Cを折り返して中詰め材7を包み込んで重ね合わせて接続し、壁体の一部となる壁体部8を形成する。次に、第2の工程S2で、壁体部8の背面側に盛土9を投入して壁体部8の上面6Eより低い盛土面9Aを形成し、型枠10を取り外し、盛土面9Aと壁体部8の上面6Eを転圧する。次に、第3の工程S3で、壁体部8上の壁面形成予定位置P2に型枠10を設置した後、新たな補強材6を成型面11に添わせて外側端6Bを型枠10から折り返して外側に延ばすとともに、他端6Cを背面側の盛土面9A上に延長して下側の壁体部8Aと低い盛土面9Aとの間に生じた段差部12を通過させて敷設し、この新たな補強材6上に中詰め材7を壁体延長方向に沿って投入して、平坦な上面7Aと背面側傾斜面7Cと下面に段差7Hとを形成し、この中詰め材7を補強材6で包み込み新たな壁体部8B(8)を構成する。そして、所望の壁体高さに達するまで第2、第3の工程S2、S3を順次繰り返し、第4の工程で、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する。
【実施例1】
【0063】
本実施例に係る壁体構造2では、上述の工程により構築されているので、壁体を構成する積み重ねられた壁体部8は、壁体部8毎に、背面土圧や水平方向の地震力などの滑動力が加えられると、補強材6に引っ張り力Fp(図5の(A)参照)が発生し、この引っ張り力Fpにより内部の中詰め材7に拘束力Frが作用して、せん断強度と剛性とが高まる。しかも、壁体部8は段差部6Fを介して高低差のある下面6G、6Hを有して埋設されているので、補強材6からなる壁体部8に引き抜き力F(図6の(A)ないし(C)参照)が加えられると、補強材6の段差部12の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力Rはさらに増大する。支圧による中詰め材7のせん断強度も向上する。このため、壁体全体でせん断強度と剛性と引き抜き抵抗Rとを増大させることができる。このように、本実施例に係る壁体構造2では、確実に滑動抵抗力を増大させて壁体構造の剛性を向上させ、耐震性と耐侵食性とを高め、壁体構造の安定化を図ることができる。また、補強材6の敷設、中詰め材7の投入、中詰め材7の包み込みと接続、盛土9の投入、転圧の順に作業を行うので、作業工程が簡素化され、施工作業が効率化される。なお、上記実施例では、第2、第3の工程S2、S3を繰り返して所望高さの壁体を構成しているがこれに限られるものではなく、第2、第3の工程S2、S3を繰り返すことなく、それぞれ一度の工程として築造を完了するようにしてもよい。
【実施例1】
【0064】
なお、上記第1の実施例では、第1の工程S1で、被構築場所4の壁体形成予定位置Pw1のうち背面側の部分を掘削し、形成された壁体部8Aの下面に段差を形成するようにしているが、これに限られるものではなく、第1の工程S1で、被構築場所4を掘削しないで手を加えていないそのままの平坦な地盤上に型枠10を設置して補強材6を敷き、補強材6に中詰め材7を投入して壁体部8を形成し、壁体部8の下面を段差のない平坦面に形成し、次に、盛土9を投入する際、壁体部8に対して低い盛土面を形成するようにしてもよい。
【実施例1】
【0065】
次に、上記実施例に係る壁体構造2の構成と、従来の壁体構造の構成との差異について、図5の(A)、(B)に基づいて説明する。図5の(A)、(B)はそれぞれ、上記実施例に係る壁体構造2の壁体部に作用する力と従来の壁体構造の壁体部に作用する力とを比較して示す説明図である。図5の(A)では、外部から水平方向の滑動力が加えられると、引っ張り力Fpが湾曲面6Dに沿って均一に生じる。このため、中詰め材7に対する拘束力Frが湾曲面6Dに向かって均一に発生し、効果的に中詰め材7を拘束する。さらに、補強材6の下面6G、6Hは段差部6Fを介して高低差面となっているので、予め計算された引き抜き抵抗力Rの性能を確保することができる。これに対して、図5の(B)では、土嚢SBの上下面が平坦に形成されて積み重ねられているので、引く抜き力Fに対して滑動抵抗力が低く耐震性能を確保するのが困難である。また、複数の土嚢を巻き込んだ巻き込み構造同士も接している部分が平坦に形成されて積み重ねられているので、巻き込み構造も滑動抵抗力が低い。
【実施例2】
【0066】
次に、本発明の上記第1の実施例による構成について、滑動抵抗力が増大する理由の根拠と、実際に行った実験の結果について、図6の(C)および図8の(A)ないし(C)を参照して説明する。図6の(A)、(B)はそれぞれ、水平せん断試験に用いられ、補強材が内部の中詰め材を包み込む構造のうち中詰め材に対し拘束力を発揮しない例を示し、図6の(C)は、補強材が中詰め材に対し拘束力を発揮する本発明の構造に基づいた例を示す説明図である。図6の(A)に示す構造では、段差があっても中詰め材を閉塞していなければ、滑動力が発生した場合、上側の補強材が矢印の方向に引きずられるため、しわが発生し、補強材に引っ張り抵抗力が発達せず、補強材内の中詰め材に拘束力を生じさせることができなかった。このため、アンカー効果が期待できない。図6の(B)は、図6の(A)の結果により変形が生じた例を示す変形図である。傾斜面があっても中詰め材を閉塞していなければ、滑動力が発生した場合、補強材内の中詰め材に拘束力を生じさせることができず、中詰め材の強度や剛性が高まらず、中詰め材がせん断破壊を引き起こす畏れがある。また、仮に引っ張り力が発生しても中詰め材を拘束する方向に支圧されないので容易に段差構造は変形する。これに対し、図6の(C)に示すように、上記実施例に係る壁体構造2の壁体部8と同じ構造では、中詰め材に対して十分な拘束力が得られた。図6の(C)に示す構造における作用を図6の(D)に示す。図6の(D)に示すように、段差の傾斜方向に補強材を敷設することで引き抜け力に対して支圧効果が発揮されるため、補強材が引きずられることなく、高い引き抜け抵抗力を得ることができる。一方、中詰め材と背面土に働く支圧力は拘束力として作用するため、土質材料の強度を向上させる。
【実施例2】
【0067】
次に、実際に行った実験の結果について、図6の(C)、図7の(A)、(B)および図8の(A)ないし(C)を参照して説明する。図6の(C)に示す壁体構造では、補強材にジオテキスタイルを用い、中詰め材7を巻き込んで接続された壁体部8の高さh1(h1は、15cm~50cmの範囲)で、壁体部8の背面側に投入された盛土面との最大段差高Dmaxを、h1×1/2~h1×1/8(h1/2≧Dmax≧h1/8)に設定した。
【実施例2】
【0068】
まず、このようなジオテキスタイルによる段差構造によって得られる効果について説明する。
本発明で示す段差構造を有した壁体の崩壊は、段差を乗り上げるか、または、段差部分が崩壊するかのいずれかによって生じる。どちらの破壊モードになるかは、巻き込み部分に作用する荷重レベルと巻き込み部分の強度・剛性に関連するが、滑動破壊時にはいずれの場合も段差部分に応力が集中することになる。相対的に荷重レベルよりも巻き込み部分の強度・剛性が高い場合は、段差を乗り上げ、それと反対に、相対的に荷重レベルの方が高いと、段差部分がせん断破壊することになる。
(a)滑動抵抗力の向上効果について
今、壁体部分が完全な剛体と仮定すると、滑動時には壁体に作用しているすべての荷重が段差部分に集中することになる。ここで、壁体部分に作用する鉛直荷重をPとし、段差部分の傾斜角度をδとすると、水平方向の滑動抵抗力Tは、次式で表すことができる。(図7の(A)参照)
=P・tan(φ+δ) ・・・(1)
φはジオテキスタイル間の摩擦角
式(1)から明らかなように、δが大きいほど、高い滑動抵抗力が得られる。実際の壁体は、完全な剛体ではないので、段差部分以外にも荷重が分散する。段差部分への荷重の集中度合いは壁体の剛性および段差寸法に依存するため、その都度、実験により求める必要がある。荷重集中度合いをαとすれば、巻き込み構造間の水平滑動抵抗力は、
=α・P・tan(φ+δ)+(1-α)・P・tan(φ) ・・・(2)
と表すことができる。
すなわち、ここで、傾斜面に働く滑動力をT、傾斜面に働く垂直力をPとすると、壁体部分に作用する鉛直荷重P と水平方向の滑動抵抗力Tとをそれぞれ傾斜面上に働く垂直力Pと滑動力T に以下の式を用いて変換する。
=Pcosδ+Tsinδ ・・・(3)
=-Psinδ+Tcosδ ・・・(4)
=Ptanφ ・・・(5)
(5)式に(3)式と(4)式を代入すると、
=P・tan(φ+δ) ・・・(1)
となる(図7の(B)参照)。
【実施例2】
【0069】
(b)段差構造について
段差構造は傾斜角度δと段差高さによって決まる。式(1)で示されるように滑動抵抗力の大きさは、段差高h(h1)は関係せず、傾斜角度δで決まる。一方、段差高さh(h1)は、乗り上げるために必要なエネルギー量と、荷重の集中度合いに関連している。すなわち、段差高さhが高いほど、乗り上げるために必要なエネルギー量が大きく、かつ、全面積に対して傾斜部の面積の割合が高くなるので、荷重の集中度合いも大きくなる。例えば、水平方向の地震力が滑動抵抗力を一時的に超過した場合、滑動変位が生じるが、段差を乗り上げるだけのエネルギーが継続しなければ、段差を乗り上げることができない。したがって、段差高h(h1)は高いほど、崩壊は生じにくくなる。設計では、地震力によって、段差部分に作用する滑動エネルギーを想定し、算出された滑動変位量が段差部分の水平方向の幅よりも小さくなるよう段差高hを決定すればよい。実用上の設定として段差高8cm程度、傾斜角度δ=40°の条件で計算した場合、高い滑動抵抗力が得られることが明らかとなった。また、実大規模の振動実験により兵庫県南部地震を上回る震度7の地震動に対しても耐えられることが確認されている。
【実施例2】
【0070】
このため、上記第1の実施例に係る壁体構造の構築方法では、設計予定の壁体構造について、設計プランに基づいて予め構築される壁体構造に必要とされる引っ張り力を計算により導き、導かれた引っ張り力に基づいて段差12(6F)の構造と補強材6の敷設長と埋設される補強材6の層数とを決定するようにしている。
【実施例2】
【0071】
(c)段差の構築方法について
段差は、地盤面の仕上がり高さによって設けるものであり、通常の施工過程で簡便に構築することができる。土質材料であるため、撒きだしや転圧作業を考慮すると、地盤の仕上がり高さは2~3cm程度のバラツキが生じるので、最低でも5cm以上の段差高を設ける必要がある。また、最大段差高Dmaxは、下限を5cmとして施工上、ジオテキスタイルによって巻き込んだ高さh1(h1=15cm~50cm)の1/2~1/8程度とする。これ以上の段差高さを設定することもできるが、施工が煩雑になる上、実質的には8.0m未満の擁壁であれば、15cm程度の段差高さを確保すれば、十分な安定性を確保することができる。なお、8.0mとした根拠は、擁壁等の構造物のほとんどが、8.0m未満の規模であるためであり、それ以上の規模については、構造計算により段差構造を設定すればよい。段差部分の傾斜角度δは90度に近いほど、高い滑動抵抗力を得られるが、実用上40度以上の傾斜角度を設ければ、十分な滑動抵抗力を得られることが判明した。実際の施工試験において傾斜角度40度程度であれば、施工上の困難を伴わず傾斜構造を設けることができる。また、60度までは、十分に施工が可能な範囲であることが確認できている。すなわち、好ましい壁体部8の高さh1は15cm~50cm、好ましい最大段差高Dmaxは高さh1の1/2~1/8、好ましい段差部分の傾斜角度δは40度~60度で、90度に近い角度とすることも可能である。従って、使用する地盤材料の特性および転圧・整形作業等の施工性を考慮して傾斜角度や段差高を設定すればよい。なお、巻き込み高については、設計者が任意に設定することができる。
【実施例2】
【0072】
(d)中詰め材の使用範囲について
ジオテキスタイルで巻き込んだ中詰め材はジオテキスタイルの引っ張り力によって拘束されるので、巻き込んだ部分が石のように硬化する。そのため、バラバラの粒状体であっても、一体化した壁体が構築できる。そのため、巻き込み部分に使用する中詰め材は圧縮剛性が高く、せん断強度が高いものが好適である。例えば、大粒径材を多く含んだ礫材などがよい。締め固めが可能であれば、シルト質砂ぐらいであればそのまま使用することができる。一方、細粒分を多く含む粘性土等は圧縮性が高いため、直接中詰め材として使用するのは不適であるが、セメント固化材等で固化処理し、設計上の荷重レベルに対して十分な圧縮剛性・強度を確保すれば、使用することができる。なお、固化処理土の強度は設置位置の応力条件および作用する滑動力から定めることができる。
【実施例2】
【0073】
次に、巻き込んだ部分に固化処理土を用いた場合について考える。地震力等によって段差部分に応力集中し、引っ張りクラックによって分断されると、滑動抵抗力が低下するが、ジオテキスタイルによって分割された部分が抜け出すのを引き留める効果が発揮される。そのため、固化処理土を単体で使用する場合に比べて粘り強さが発揮され、壁体構造を保持することができる。
【実施例2】
【0074】
(e)作用効果上の利点について
従来の引っ張り補強土擁壁は、コンクリート擁壁(図8の(C)参照)のような抗土圧構造物の設計法とは異なり、盛土内に想定されたすべり面に対し、水平に埋設された引っ張り補強材が補強効果を発揮することで擁壁の安定性を確保する(図8の(A)参照)。このため、すべり通過する位置に引っ張り補強材を敷設することが原則となっている。しかし、本発明では、図8の(B)に示すように、従来の引っ張り補強土擁壁と比べて、壁体部分が一体化されているので、コンクリート擁壁のような抗土圧構造物としても高い機能を発揮できる。その結果、従来のジオテキスタイルによる改修技術では、掘削断面を大きくとる必要があったが、大幅に掘削断面を縮小することができる。また、コンクリート擁壁に比べて軽量かつ低コストで控え長を長く確保できるので、転倒・滑動に対する安定性を向上させることができ、耐震対策として合理的な構造物を提供することができる。すなわち、図8の(C)に示すコンクリート擁壁では控え長がおよそ50cmで重くて薄いのに対し、図8の(B)に示す本願発明の構成では、低コストが実現できて控え長がおよそ2.0mで軽くて厚くなっている。このため、本願発明の構成では、支持に負担がかかりにくく転倒しにくい。それに対し、図8(C)のコンクリート擁壁では、転倒時、擁壁のつま先に荷重が集中して局所的な支持基盤の破壊が生じるおそれがある。また、コンクリートは密度が大きいため、慣性力が大きい。このため、地震時には不安定になるおそれがある。
【実施例2】
【0075】
土質材料を主体とする構造物に越流に対する耐侵食機能を付加させるためには、堤体表面を固化処理土で被覆することが考えられるが、盛土は少なからず長期的に繰り返し荷重や圧密によって塑性変形が生じるので、脆性的な性質を持っているコンクリートや固化処理土では、堤体の変形に追従することができず、クラック等が発生し、崩壊する危険性が高い。特に固化処理土を単に表面に被覆する方法では、クラック等の局所的な崩壊が存在すると、その部分が流水の抵抗になり、進行的に侵食崩壊を引き起こす可能性がある。そのため、固化処理土を使用するには、基礎地盤の改良や剛性の高い盛土材料を使用して堤体の剛性を向上させることが必要になる。しかしながら、多くの既設構造物が現地発生土や粘成分の多い圧縮性が高い土質材料が用いられていること、軟弱な地盤上にも構築されていることから、上記の条件を満たす既設構造物はかなり限定されることになる。
【実施例2】
【0076】
一方、本発明のように固化処理土をジオテキスタイルで仕切って、ブロック状に分割し、それらを積層した壁体構造を構築すれば、盛土の変形をブロック間の変位で吸収することができるので、クラック等の発生原因となる過大な曲げや引っ張り応力の発生を抑制することができる。また、固化処理土もジオテキスタイルで巻き込まれているので、それ自体で侵食抵抗力を向上させることができる。また、ブロックにクラックが発生したとしても、ブロックが引っ張り補強材で拘束されているので、抜けにくい構造になる。さらに、盛土内に敷設されたジオテキスタイルがアンカーする機能を有しているので、越流や土石流等の流下に対して堤体から壁体が引き剥がされることがない。
【実施例2】
【0077】
例えば、固化処理土を用いた砂防ダム・治山ダムなどを例に挙げると、これらの盛土は大粒径材を含む比較的良質な盛土材料を要し、富配合の高強度の固化処理土を盛土全体に使用する必要があった。また、同時に強固な基礎地盤が必要であった。一方、本発明のジオテキスタイルによる分割した壁体構造は、基礎地盤や堤体の変形に追従することができるので、固化材の添加量が貧配合で、かつ、細粒分が多い比較的低品質な盛土材料でも耐侵食構造構築することが可能である。さらに、既設のため池堤体や河川堤防にも適用することが可能である。このように本発明では、これまで想定していなかった施設に越水や土石流などの外力に耐える機能を、既設および新設の各種の構造物に付加させることができる。なお、固化処理土を用いなくとも、ジオテキスタイルで土質材料を巻き込んでいるので耐侵食性の高い構造となっている。
【実施例2】
【0078】
(f)適用できる構造物について
段差構造を有する壁体構造をため池堤体や河川堤防等の水利構造物に適用すれば、地震時の安定性を向上できるだけでなく、越流時の安全性を向上させることができる。湖沼、河川、水路などの護岸に適用すれば、波浪等による侵食防止を図ることができる。また、道路盛土、バラスト軌道、造成盛土、農地の法面に適用すれば、地震に対する安定性を高めることができる。法面勾配は使用用途に応じて幅広く設定することができる。例えば、道路や造成地などで適用されている擁壁と同じ勾配(1:0.6以上:擁壁と分類される勾配)とすることができるし、河川堤防やため池堤体のように緩い勾配(1:1.0以下:盛土)にも適用することができる。また、両者の中間的な勾配(1:1から1:0.6:急勾配盛土)に合わせて設定することができる。なお、施工する勾配に応じて、作業性および労働安全性の面を考慮し、足場など適切な対策を講じる必要がある。
【実施例2】
【0079】
(g)実験結果
図の角度と段差の違いによる滑動抵抗力の影響を示した実験結果を示す。段差がない供試体に比べて段差高h=8.0cmで、段差部の傾斜角度δ=40度、詰め物がシルト質砂の場合の供試体の滑動抵抗力は2.3倍に増加することがわかった。
【実施例3】
【0080】
次に、本発明の第2の実施例に係る壁体構造の構築方法について説明する。第2の実施例に係る壁体構造の構築方法は、図9および図10に示すように、上記第1の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造2が、堤体5の側面側の地盤3に構築されるのに対し、堤体自体を壁体構造で構築する点、すなわち、堤体の両側面を本実施例の壁体構造で構成した点と、補強材の敷設時、補強材の背面側端部を延長し、補強材の壁体内外方向両端のうち外側自由端を、中詰め材を包み込んだ後、補強材の敷設面に重ねて接続し、補強材の背面側延長端(内側延長端)を所定の長さ盛土の高低差面に残して埋設するようにした点が異なっている。その他の点は、上記第1の実施例とほぼ同じ構成を有している。
【実施例3】
【0081】
すなわち、第2の実施例に係る壁体構造102は、例えばため池等の堤体として形成される。地盤3の被構築場所104には、設計プランに基づいて、堤体102の壁面の位置を決める堤体形成予定位置(壁面形成予定位置)Pbf1、Pbr1が予め決められる。
被構築場所104のため池側予定位置Pbr1は、予め地盤3が掘削され、最下段の包み込み部108(108r)がため池底面より低位置に配置されるようになっている。これら予定位置Pbf1、Pbr1には、断面円弧状に形成された半割状の成型面11を有する型枠10が予め設置される。型枠10が堤体形成予定位置Pbf1、Pbr1に設置されると、上記第1の実施例と同様に、シート状の補強材106を堤体形成予定位置Pbf1、Pbr1を基準にして壁体内外方向の両端側106B、106Cを延長して敷設する。このとき、補強材106の背面側端部106Cを接続部より背面側に延長している。補強材106は、築造予定の堤体102の延長方向に沿って隣り合う端部同士を互いに重ね合わせて並べて敷設される。そして、補強材106の型枠10側に投入された中詰め材7を包み込んだ後、補強材106の外側端106Bを引き回して、補強材106の敷設面に重ねて接続し、補強材106の背面側延長部(尾ひれ部)106EXを背面側(堤体内側)に所定の長さL1残すようにしている(図10参照)。本実施例に係る壁体部108、106EXは、包み込み部108と背面側延長部106EXとにより構成される。すなわち、壁体は、包み込み部108と背面側延長部106EXとからなる壁体部により構成される。
【実施例3】
【0082】
次に、中詰め材7を包み込んで形成された両包み込み部108(108f、108r)の背面側に盛土9を投入して、補強材106の上面(壁体部上面)106Eより低い盛土面(109Aを形成する。次に、型枠10を取り外して、包み込み部108上の堤体形成予定位置Pbf2、Pbr2に上記型枠10を設置した後、新たな補強材106を上述の如く敷設し、補強材106の背面側延長部106EXを段差を介して低くなった盛土面109A上に延長して敷設する。こうして、型枠10の設置、補強材106の敷設、中詰め材7の投入、中詰め材7の包み込みと接続、盛土面109A上への補強材106の背面側延長部106EXの残留、盛土9の投入と一連の工程を繰り返し、所望の堤体高さに達すると盛土上面109Bを整地して造成を完了する。
【実施例3】
【0083】
このように、第2の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造(堤体)102では、壁体が堤体の両側に形成されるので、堤体両側について滑動抵抗力を高めることができる。このため、壁体全体でせん断強度と剛性と引き抜き抵抗とをより増大させることができる。なお、本実施例では、図9に示すように一枚の補強材108Sで堤体102の両側の壁面を構築することもできるようになっている。なお、壁高が高くなれば、包み込み部108の奥行き長さ(背面側長さ)を大きくするほかに背面側延長部(尾ひれ部)106EXの長さを長くすればよい。これらは経済性の面から決定してもよい。
【実施例4】
【0084】
次に、本発明の第3の実施例に係る壁体構造の構築方法について説明する。第3の実施例に係る壁体構造の構築方法は、図11の(A)ないし(F)に示すように、上記第1の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造2が、型枠10を用いて壁体構造2を構築するようにしているのに対し、作業時間などに制約がある、例えば、増水時の緊急堤防(かさ上げ)のような緊急の復旧作業に適用されるもので、型枠10を用いたり地盤を予め掘削することなく、補強材の敷設、中詰め材の投入、補強材による中詰め材の包み込みと重ね合わせ接続、形成された壁体部の背面側への盛土の投入と壁体部より低い盛土面の形成という一連の工程により構築する点が異なっている。
【実施例4】
【0085】
すなわち、本実施例に係る壁体構造の構築方法により構築される壁体構造202は、以下の工程により構築される。まず、地盤3側の平坦面の被構築場所4に補強材206を壁体形成予定位置P201A-P201Bを基準に壁体内外方向に延長して敷設し(図11の(A)参照)、補強材206上に中詰め材7を壁体形成予定位置P201A-P201Bに沿って、すなわち、壁体延長方向に沿って投入し(図11の(B)参照)、補強材206の壁体内外方向両端206B、206Cを折り返して中詰め材7を包み込み壁体部208を形成する(第1の工程S201)。壁体形成予定位置P201A-P201Bの壁体内外方向寸法Pw201は、外側予定位置P201Aと背面側予定位置P201Bとの間の距離により決定される。次に、中詰め材7を包み込んだ壁体部208の背面側に盛土9を投入して壁体部208側より低い盛土面109Aを形成し、盛土面209Aと壁体部208上面を転圧する。(第2の工程S202、図11の(C)参照)。次に、壁体部208と盛土面209Aとに新たな補強材206を壁体形成予定位置P202A-P202Bを基準に壁体内外方向に延長して敷設し、下側壁体部208と低位の盛土面209Aとの間に生じた段差部212を有する新たな補強材206上に中詰め材7を投入し(図11の(D)参照)、投入された中詰め材7を包み込み上側の壁体部208を形成する(第3の工程S203、図11の(E)参照)。そして、図11の(F)に示すように、所望の壁体高さに達するまで、第2の工程S202と第3の工程S203とを順に繰り返す。次に、所望の壁体高さに達すると盛土上面209Bを整地して造成を完了する(第4の工程S204)。
【実施例4】
【0086】
上記第3の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造202では、型枠10を用いることなく、壁体部208毎に、背面土圧や水平方向の地震力などの滑動力が加えられると、補強材206に引っ張り力が発生し、この引っ張り力により内部の中詰め材7に拘束力が作用して、せん断強度と剛性とが高まる。しかも、壁体部208は段差部212を介して高低差のある下面を有して埋設されているので、補強材206からなる壁体部208に引き抜き力が加えられると、補強材206の段差部212の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力Rはさらに増大する。このため、壁体全体でせん断強度と剛性と引き抜き抵抗Rとを増大させることができる。このため、時間的な制約の下、緊急の復旧作業が求められる場合であっても、高いせん断強度と剛性とを発揮し、高い滑動抵抗力が期待できる壁体構造を速やかに構築することができる。
【実施例5】
【0087】
次に、本発明の第4の実施例に係る壁体構造の構築方法について説明する。第4の実施例に係る壁体構造302の構築方法は、図12の(A)ないし(F)に示すように、上記第3の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造2が、型枠10を用いて壁体構造2の壁面6Dを外側から成型して構築するようにしているのに対し、補強材306の敷設後、型310を補強材306の壁面形成予定位置P301Aに設置し、その後、補強材306上の型310側に中詰め材7を投入し、型310を埋め殺しにして補強材306を裏面から支持して壁面を形成するようにした点が異なっている。断面J字状の型310は、全面に透水孔が多数形成され、断面円弧状の成型面310Aとこの成型面に310Aに連続する平坦部310Bとにより構成される。型310は、硬質の合成樹脂または金属を成型して用いてもよい。
【実施例6】
【0088】
図14の(A)は、上記第1の実施例の第1の変形例に係るもので、上記第1の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造2が、第3の工程S3で、補強材6に投入された中詰め材7の背面側に傾斜面7Cを形成するようにしているのに対し、この第1の変形例に係る壁体構造402では、投入された中詰め材7の背面側を段差を介して低い面7Dに形成して補強材6で包み込み接続するようにしている。投入される盛土9は、中詰め材7の低い面7D上を覆う補強材6の上に盛土面9Cが形成され、補強材6の外側上面6Eより低くなっている。
【実施例7】
【0089】
図14の(B)は、上記第1の実施例の第2の変形例に係るもので、この第2の変形例に係る壁体構造502は、上記第1の変形例に係る壁体構造402が、中詰め材7を包み込んだ後、補強材6の壁体内外方向両端を接続しているのに対し、補強材6の背面側延長部6EXを背面側に所定の長さ残して埋設した点が異なっている。
【実施例8】
【0090】
図15の(A)ないし(C)はそれぞれ、第1の実施例の第3の変形例に係る壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。第3の変形例に係る壁体構造602は、第1の実施例では、第2の工程S2で、補強材6により中詰め材7を包み込んで構成された最も地盤3に近い壁体部8の背面側に盛土9を投入して、盛土面9Aを形成する際、補強材6の上面(壁体部上面)6Eより低い盛土面に形成するようにしているのに対し、盛土面609Aを補強材6の上面6Eより高く形成した点が異なっている。また、第3の変形例に係る壁体構造602は、上記第1の実施例の第1の変形例では、第3の工程S3で、投入された中詰め材7の背面側を段差を介して低い面7Dに形成して補強材6で包み込んで接続するようにしているのに対し、中詰め材7の背面側を段差を介して高い面7Eと傾斜面7Gとに形成して包み込み壁体部608を形成した点が異なっている。
【実施例9】
【0091】
図16の(A)ないし(D)はそれぞれ、第1の実施例の第4の変形例に係る壁体構造の築造工程を順を追って示す説明図である。第4の変形例に係る壁体構造702は、第1の実施例では、第1の工程S1で、投入された中詰め材7の背面側に段差7Bを形成し、第3の工程S3で投入された中詰め材7の背面側に傾斜面7Cを形成するようにしているのに対し、第1の工程S1と第3の工程S3とで、中詰め材7の背面側を段差を介して高い面7Fと傾斜面7Gとに形成して包み込み壁体部708を形成した点が異なっている。第2の工程S2で壁体部708に投入される盛土9は、補強材6の上面(壁体部708の上面)706Eより低い盛土面に形成されるようになっている。
【実施例9】
【0092】
このように、補強材上に投入される中詰め材7は、背面側に段差や傾斜面を形成したり低位面を形成したりするだけでなく、壁体の内外方向に高低差面があればよい。また、壁体部の背面側に投入される盛土面は、壁体部上面に対して低い位置に限定されるものではなく、高低差面が形成されさえすればよい。
【実施例10】
【0093】
次に、本発明の第5の実施例に係る壁体構造の構築方法について説明する。第5の実施例に係る壁体構造の構築方法は、図17に示すように、第1の工程S1で、補強材6を、築造予定の壁体の延長方向に沿って隣り合う端部6R、6Lを互いに重ね合わせて並べて敷設した後、壁体の延長方向両端6R、6Lのうち、開放される開口端側6R、6Lに土嚢(阻止部材)803を載置し、中詰め材7を投入した際、中詰め材7が補強材6の開口端側6R、6Lから外側に崩れ出るのを阻止するようにしている。第5の実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造802では、築造予定の壁体の延長方向が開放されていたり、接続すべき堤体や山部との間に空隙があっても壁体構造構築の間、安定を保ち所望の性能を確保して築造を完了することができる。壁体構造802の法面の勾配は垂直距離V:水平距離H=1:0.6となるのが好ましいが、これに限られるものではなく、1:0.2~1:1.2まで幅広い範囲で設定してもよい。図18および図19はそれぞれ、築造完了後の壁体構造802の正面図および山地突起部間に築造され池Wの堤体として構築された壁体構造802の斜視図を示す。なお、上記第5の実施例では、補強材の壁体延長方向両端のうち、開口が形成される開放端に土嚢803を配置して、中詰め材7を投入するようにしているがこれに限られるものではなく、開放端側の地盤に盛土を投入して中詰め材投入時の流出を阻止してもよいし、開放端側の地盤に板(図示せず)を打ち込み、中詰め材の流出を阻止するようにしてもよい。また、本実施例では、中詰め材の流出を阻止する阻止部材として土嚢803を用いているがこれに限られるものではなく、ブロック等の剛体や砂利や砕石等の重量物、コンクリート等の経時的に硬化する硬化材を用いるようにしてもよい。
【実施例11】
【0094】
次に、本発明の第6の実施例に係る壁体構造の構築方法について説明する。本実施例に係る壁体構造の構築方法は、上記第1ないし第5の実施例および各変形例では、地盤3側の面に補強材6、106、206を壁体形成予定位置を基準に壁体内外方向に延長して敷設し、補強材6、106、206上に中詰め材7を投入し、補強材の自由端を折り返して中詰め材7を包み込み壁体部8、108、208、308、608、708を形成するようにしているのに対し、図20の(A)に示すように、壁体の壁面の位置を決める壁面形成予定位置P901Aが決定すると、この壁面形成予定位置P901Aから背面側(堤体5側)に所定の距離後退した位置から堤体5側に向かって地盤3を所定深さ掘削し、段差3Bを形成するとともに、平坦な掘削面4Aを形成する。次に、柔軟性を有し変形可能な土嚢(壁材)906を外側面906Dが壁面の一部となるよう壁体延長方向に並べて配置し、土嚢906の上面を外側平坦面906Eと背面側傾斜面906Cとに整え、土嚢906の背面側に盛土9を投入して土嚢の外側平坦面906Eより低い盛土面9Aを形成する第1の工程S301を有する点が異なっている。
【実施例11】
【0095】
また、本実施例に係る壁体構造の構築方法は、図20の(B)に示すように、下側土嚢906の外側平坦面906E上に板910を載置し、土嚢906上の板910と盛土面9Aの壁体側とに新たな土嚢916を積み上げ、新たな土嚢916の背面側下面に段差912を形成し、新たな土嚢916の背面側に盛土9を投入して新たな土嚢916の上面906Eより低い盛土面9Aを形成し、下側土嚢906と新たな土嚢916との間から板910を引き抜く第2の工程S302を有している。さらに、本実施例に係る壁体構造の構築方法は、土嚢906、916、926・・・9N6(Nは2以上の任意の整数)の積み重ねと盛土9の投入により所望の壁体高さに達するまで第2の工程S302を繰り返す。そして、所望の壁体高さに達すると整地して造成を完了する第3の工程S303を有している。なお、本実施例の壁体構造902は、壁体の一部を構成する壁材を土嚢906により構成しているがこれに限られるものではなく、柔軟性を有し変形可能で積み重ねることができる材料であればよい。また、土嚢906、916の上下面を板910により整えるようにしているが、板910を用いず、土嚢載置後、平坦に整えるようにしてもよい。なお、土嚢906の中詰め材には、上記各実施例および各変形例に用いられる中詰め材7を用いてもよい。また、中詰め材7を閉塞して包み込む袋体には、布の外、上記各実施例および各変形例に用いられる補強材の素材を用いてもよい。
【実施例11】
【0096】
本実施例に係る壁体構造の構築方法により構築された壁体構造902では、上述の工程により構築されるようになっているので、現場で補強材の包み込み作業を行うことなく、壁体構造全体を構築できるので、作業が効率化される。また、壁体構造に背面土圧や水平方向の地震力などの滑動力が加えられると、土嚢906、916、・・・9N6に引っ張り力が発生し、この引っ張り力により内部の中詰め材に拘束力が作用して、せん断強度と剛性とが高まる。しかも、土嚢906~9N6は段差912を介して高低差のある面を有して埋設されているので、土嚢906~9N6に引き抜き力が加えられると、土嚢906~9N6の段差部912の上下方向から支圧が生じ、引き抜き抵抗力はさらに増大する。
【実施例11】
【0097】
なお、本実施例に係る壁体構造902では、土嚢906の投入前に地盤3を掘削して段差3Bと掘削面4Aとを形成するようにしているがこれに限られるものではなく、地盤3を掘削しないで、平坦な地盤に最下段の土嚢609を投入し、最下段の土嚢609の下側にのみ段差を設けず、この最下段の土嚢609より上段の土嚢916、926・・・9N6については段差を設けるようにしてもよい。時間的制約がある場合に有効である。
【実施例11】
【0098】
なお、上記各実施例および各変形例では、地盤3側の面を、整地または未整地の地盤面としているがこれに限られるものではなく、掘削された地盤面、盛土が投入された盛土面、盛土が転圧された転圧面、堆積物が堆積した堆積面、既存の壁体構造、既存の壁体構造を掘削した掘削面または山地突起部間の傾斜面のうちいずれかであってもよい。また、上記各実施例および各変形例では、壁体構造の一部を構成し、壁体部を積み重ねて壁面を構成する壁体を一面または左右両面に設けるようにしているがこれに限られるものではなく、平面多角形状の壁体構造を構築する場合、壁体を3面以上としてもよい。また、壁体は延長方向が直線状に限られるものではなく、壁体の延長軌跡を曲線状または折曲された折れ曲がり線状としてもよい。さらに、壁体部を積み重ねて構成される壁体はほぼ垂直に形成してもよいし、傾斜させて形成してもよい。また、壁体部の内外方向寸法、すなわち壁体の厚さを上下方向で変えるようにしてもよいし、ほぼ、同じ厚さとしてもよい。その場合、壁体の壁面を垂直に形成してもよいし傾斜させてもよい。さらに、上記各実施例および各実施例では、補強材は折り返し自由端を互いに重ねてあわせて接続するようにしているがこれに限られるものではなく、接続具で接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
3 地盤
4 地盤側の面
6 補強材
6B、6C 補強材自由端
7 中詰め材
8A~8N 壁体
9 盛土
9A 盛土面
12 段差部
Pw1 壁体形成予定位置
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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