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明細書 :農業用ハウス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5834353号 (P5834353)
公開番号 特開2012-210189 (P2012-210189A)
登録日 平成27年11月13日(2015.11.13)
発行日 平成27年12月16日(2015.12.16)
公開日 平成24年11月1日(2012.11.1)
発明の名称または考案の名称 農業用ハウス
国際特許分類 A01G   9/14        (2006.01)
A01G   9/24        (2006.01)
FI A01G 9/14 Z
A01G 9/24 A
A01G 9/24 X
請求項の数または発明の数 5
全頁数 23
出願番号 特願2011-078234 (P2011-078234)
出願日 平成23年3月31日(2011.3.31)
審査請求日 平成26年3月24日(2014.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】澤村 篤
【氏名】星 典宏
【氏名】川嶋 浩樹
【氏名】長崎 裕司
【氏名】柴田 昇平
個別代理人の代理人 【識別番号】100082670、【弁理士】、【氏名又は名称】西脇 民雄
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 実開昭55-72857(JP,U)
実開昭57-203263(JP,U)
実開昭60-100447(JP,U)
実開昭56-170961(JP,U)
特開昭61-140747(JP,A)
調査した分野 A01G 9/14 - 9/26
E02D 29/02
特許請求の範囲 【請求項1】
設置面と、該設置面から立ち上がる壁面と、を有する段差地に敷設され、
前記壁面の一部によって形成される側壁と、
土中に開放する開口を有し、前記段差地に埋設されて土中排水を行うことで土中の水圧管理を行う調水パイプと、
前記壁面を貫通し、一端がハウス室内に開放し、他端が前記調水パイプに開放して、前記ハウス室内と前記調水パイプとを連通する連通パイプと、
前記設置面に立設されて前記ハウス室内を覆うと共に、前記壁面によって形成された側壁に連結する屋根部と、を備え、
前記調水パイプは、前記壁面の内側に埋設されると共に、前記壁面に対してほぼ平行に延在し、前記連通パイプが接続して前記ハウス室内に連通する平行パイプと、前記平行パイプよりも上方の土中に埋設されると共に、一端が排水管に接続され、他端が土中に開放した暗渠パイプと、前記平行パイプと前記暗渠パイプを連結する連結パイプと、を有し、
前記連結パイプの中間部に、前記暗渠パイプ内の水を溜める溜水手段を設けた
ことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項2】
請求項1に記載された農業用ハウスにおいて、
前記平行パイプは、長手方向に勾配を有することを特徴とする農業用ハウス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された農業用ハウスにおいて、
前記壁面は、粒子間空隙が比較的大きい礫層を有し、
前記平行パイプは、前記礫層内に埋設したことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された農業用ハウスにおいて、
前記連通パイプに、前記ハウス室内の空気を前記調水パイプへと圧送するブロア接続したことを特徴とする農業用ハウス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された農業用ハウスにおいて、
前記調水パイプは、有機性廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥製造装置に連通していることを特徴とする農業用ハウス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を栽培する農業用ハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜地に設置した農業用ハウスに、このハウスより上部斜面の地下に埋設したパイプを通すことで人工の風穴を作り、地中熱で冷却されたパイプ内の冷気をハウスに導入してハウス内を冷却する農業用ハウスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、有機性廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥製造装置と農業用ハウスとを連通させ、堆肥化の際に発生する発酵熱をハウス内に導入することで、ハウス内温度を上昇させる農業用ハウスが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008-20160号公報
【特許文献2】特開2003-245018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、斜面にパイプを埋設して形成した人工風穴内の冷気を利用する農業用ハウスでは、ハウスの上部斜面に沿ってパイプを埋設する必要がある。そのため、パイプの埋設に必要な面積を広く確保しなければならず、また多大な費用と労力を必要とするため、容易に施工することができなかった。
一方、堆肥製造装置内の発酵熱を利用する農業用ハウスでは、冬等の低温期における保温効果は有しているが、暑熱対策については言及しておらず、一年を通じたハウス内温度の制御を行うことはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に着目してなされたものであり、敷設費用の増大を抑えつつ、一年を通じて室内温度を制御することができる農業用ハウスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の農業用ハウスでは、設置面と、該設置面から立ち上がる壁面と、を有する段差地に敷設され、前記段差地に埋設され、土中の水圧管理を行う調水パイプと、前記壁面を貫通し、ハウス室内と前記調水パイプとを連通する連通パイプと、前記設置面に立設されると共に、前記壁面に連結する屋根部と、を備え、前記壁面を側壁の一部とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の農業用ハウスにあっては、設置面から立ち上がる壁面を有する段差地に埋設された調水パイプと、壁面を貫通してハウス室内と調水パイプを連通する連通パイプと、を備えている。
ここで、ハウス室内温度は地中温度に対して温度変化率が高い。すなわち、地中温度が低いときにはハウス室内温度は地中温度よりも高くなり、地中温度が高いときにはハウス室内温度は地中温度よりも高くなる。一方、地中熱によってハウス室内の空気よりも温度変化率が小さくなる調水パイプ内の空気は、ハウス室内温度の変化によって、連通パイプを介してハウス内に流入する。
そのため、ハウス室内温度が地中温度よりも高いときには、調水パイプ内の空気は地中熱によって比較的低くなっているため、連通パイプを介してハウス内に流入した調水パイプ内の空気によってハウス室内温度は低下する。また、ハウス室内温度が地中温度よりも低いときには、調水パイプ内の空気は地中熱によって比較的暖かくなっているため、連通パイプを介してハウス内に流入した調水パイプ内の空気によってハウス室内温度は上昇する。
これにより、地中熱によって気温に比べて温度変化が抑えられた調水パイプ内の空気により、一年を通じてハウス内温度の制御を行うことができる。
また、段差地に埋設された調水パイプは、壁面に作用する水圧を低減するために不可欠である。すなわち、段差地の造成に伴って調水パイプや連通パイプを埋設するため、これらのパイプ埋設費用は段差地造成費用として負担することができる。そのため、段差地造成費用で埋設費用をまかなうことができる調水パイプ及び連通パイプを利用することで、農業用ハウスの敷設費用を低く抑えることができる。
この結果、ハウス敷設費用の増大を抑えつつ、一年を通じて室内温度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の農業用ハウスを敷設した段差地の全体を示す概観図である。
【図2】実施例1の農業用ハウスを示す斜視説明図である。
【図3】(a)は実施例1の農業用ハウスを示す断面図であり、(b)は図3(a)のA部拡大図である。
【図4】実施例1の平行パイプの配置を示す正面図である。
【図5】実施例2の農業用ハウスを示す断面図である。
【図6】本発明の平行パイプに暗渠パイプを連結した例を示す説明図である。
【図7】図6に示す農業用ハウスにおける溜水手段の他の例を示す説明図である。
【図8】本発明の平行パイプに圧送ブロアを連結した例を示す説明図である。
【図9】実施例2の農業用ハウスの変形例を示した断面図である。
【図10】本発明の平行パイプに堆肥製造装置を連結した例を示す説明図である。
【図11】平行パイプを水平に配置したときの空気の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の農業用ハウスを実現するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の農業用ハウスを敷設した段差地の全体を示す概観図である。
【実施例1】
【0011】
実施例1の段差地1は、平野の外縁部から山間地に至るまでの平坦な耕地の少ない地域、いわゆる中山間地域に適用されている。そして、前記段差地1は、ハウス設置面(設置面)2と、温度調整用壁面(壁面)3と、上段作業道4と、傾斜畑5と、を備えており、前記ハウス設置面2に農業用ハウス10が敷設されている。
【実施例1】
【0012】
前記ハウス設置面2は、中山間地域の傾斜地に造成されたほぼ水平な平坦地であり、等高線に沿って帯状に延びている。このハウス設置面2の等高線に対して直交する方向の幅(以下、単に「幅」という)W1は、野菜や果樹を耕作可能な長さを有する必要がある。ここでは、ハウス設置面2の幅W1を一般的な農業用ハウスの規格に合わせて約3~6m程度としている。
【実施例1】
【0013】
前記温度調整用壁面3は、ハウス設置面2から立ち上がった南方に臨む壁面であり、蓄熱性を有する高さH1となっている。この「蓄熱性を有する高さH1」とは、日光が当たったときには日光からの熱を蓄積し、周囲温度が下がったときには蓄積した熱を放出することができる高さであり、この温度調整用壁面3により外気温よりもハウス室10c内の温度変化率を低くすることができる高さである。ここでは、温度調整用壁面3の高さH1をハウス設置面2から約2~3m程度としている。また、この温度調整用壁面3は鉛直方向に対して上向きに傾斜している。
さらに、この温度調整用壁面3は、少なくとも後述する平行パイプ21が埋設される部分は礫層3aによって造成される一方、表面は高い熱容量を有する蓄熱材3bによって覆われている(図3(b)参照)。ここで、「礫層3a」とは、小石や粒子の粗い砂からなる地層であり、粒子間空隙が比較的大きい地層である。また、蓄熱材3bは、ここでは温度調整用壁面3の全体を覆っており、例えばコンクリート製ブロック、レンガ、自然石等である。この蓄熱材3bは、温度調整用壁面3の表面に積み重ねることで崩れを防止する擁壁としての機能も併せ持つ。なお、これらの蓄熱材3bの積み方は平積みや布積み等、温度調整用壁面3の形状や傾斜角度等に合わせて選択できる。また、コンクリートはブロック状ではなく、温度調整用壁面3の全面を一体的に覆うものであってもよい。
【実施例1】
【0014】
前記上段作業道4は、温度調整用壁面3の上端部3cから水平方向に連続した作業用通路である。この上段作業道4は、ハウス設置面2と同様、等高線に沿って帯状に延びている。そして、この上段作業道4は、人又は農作業用機械が通行可能とする幅となっており、ここでは一般的な作業用通路に合わせて約0.5~3m程度としている。
【実施例1】
【0015】
前記傾斜畑5は、上段作業道4から傾斜地の上方に続く、例えば果樹等の作物を育成する畑面5aが傾斜した畑である。ここでは、畑面5a内に帯状に延びる複数の畑内作業道5b,…を高さ方向に一定間隔で配置している。畑面5aは、これらの畑内作業道5b,…により等高線に沿って区画される。なお、各畑内作業道5bは、例えばスピードスプレーヤーや高所作業車等の作業機械が走行可能な幅となっている。
【実施例1】
【0016】
図2は、実施例1の農業用ハウスを示す斜視説明図である。図3は、(a)は実施例1の農業用ハウスを示す断面図であり、(b)は図3(a)のA部拡大図である。図4は、実施例1の平行パイプの配置を示す正面図である。
【実施例1】
【0017】
前記農業用ハウス10は、ハウス設置面2及び温度調整用壁面3を一体的に覆うようにハウス設置面2に立設され、温度調整用壁面3を側壁の一部としている。この農業用ハウス10は、上部側壁11と、屋根部12と、一対の妻側側壁13と、温度制御用配管20と、を備えている。
【実施例1】
【0018】
前記上部側壁11は、温度調整用壁面3の上端部3cから鉛直方向に延びた側壁であり、上段作業道4よりも上方に突出している。この上部側壁11の高さは、上段作業道4からこの上部側壁11越しに、屋根部12に対する作業を許容する高さに設定されており、ここでは、上段作業道4から約0.5~1.5m程度としている。なお、「屋根部12に対する作業」とは、後述する被覆材10aの着脱作業や張替え作業、屋根部12上からの灌水・農薬散布作業等である。
【実施例1】
【0019】
前記屋根部12は、ハウス設置面2及び温度調整用壁面3を一体的に覆うと共に、一端が温度調整用壁面3から延びる上部側壁11の上端部11bに連結され、他端がハウス設置面2に固定されて、ここでは円弧状のアーチ形状をかたどっている。また、この屋根部12は、農業用ハウス10の骨格となる骨組みパイプ10bと、この骨組みパイプ10bに対して着脱可能に固定された被覆材10aと、から構成されている。被覆材10aは、農業用ポリオレフィン系フィルムやフッ素樹脂フィルムから構成された透光性を有する合成樹脂フィルムである。なお、この被覆材10aは、透光性を有する合成樹脂フィルムに遮光幕や布団状の断熱被覆材を着脱可能に層状に重ね合わせたシートであってもよい。
【実施例1】
【0020】
前記妻側側壁13は、農業用ハウス10の妻面に位置する側壁であり、出入口13aが設けられている。また、この妻側側壁13は、上記被覆材10a及び骨組みパイプ10bにより構成されている。
【実施例1】
【0021】
前記温度制御用配管20は、温度調整用壁面3の内側に埋設された中空管であり、温度調整用壁面3を造成した礫層3a内に埋設されている(図3参照)。そして、この温度制御用配管20は、平行パイプ21と、連通パイプ22と、を有している。
【実施例1】
【0022】
前記平行パイプ21は、温度調整用壁面3の内側に埋設された両端が開口した中空管であり、土中の水圧管理を行うために埋設されて土中排水を行う調水パイプである。この平行パイプ21は、温度調整用壁面3に対してほぼ平行に延在している。なお、ここでは、3本の平行パイプ21,21,21が上下方向に一定間隔をあけて並んで配置されている。
また、前記平行パイプ21は、図4に示すように、農業用ハウス10のハウス室10cから見たときに、一方(図4では右側)の端部21aが他方(図4では左側)の端部21bよりも低くなるように、長手方向に勾配を有するように配設されている。
さらに、この平行パイプ21には、長手方向に一定間隔をあけて複数の連通孔21c,…が形成されている。各連通孔21cは、平行パイプ21の周方向において同一箇所に設けられ、農業用ハウス10のハウス室10c内に向いた状態になっている。
【実施例1】
【0023】
前記連通パイプ22は、両端が開口した中空管であり、一端が平行パイプ21の各連通孔21cと連通し、他端が温度調整用壁面3を貫通してハウス室10c内に開放した空気放出孔22aとなっている。
【実施例1】
【0024】
次に、作用を説明する。
まず、本発明に係る「農業用ハウスの技術課題」の説明を行い、続いて、実施例1の農業用ハウス10における作用を、「室温制御作用」、「敷設容易作用」に分けて説明する。
【実施例1】
【0025】
[農業用ハウスの技術課題]
従来の農業用ハウスを用いた施設栽培では、冬期等の低温期には、ボイラー等の暖房設備を利用して室温を維持しなければならず、この暖房に必要なコストが多額になり、経営を圧迫することがある。また、昨今の異常気象による高温や、ハウス内の防除のためにハウス密閉度を高めていること等の影響により、農業用ハウス内の暑熱対策も必要となっている。すなわち、作物栽培に農業用ハウスを用いる場合には、外気温に関わらず、運用コストを抑えてハウス内温度を制御する必要がある。
【実施例1】
【0026】
一方、農業用ハウスに対して室温制御するための手段を付加するには、少なからず費用が発生する。そのため、室温制御のための手段の付加に必要な費用を安価にし、農業用ハウスの敷設費用を低く抑えることも重要である。
【実施例1】
【0027】
[室温制御作用]
一般的に土壌の持つ蓄熱性は空気の蓄熱性よりも高く、地中温度は気温よりも温度変化率が低い。すなわち、農業用ハウスでは、ハウス内温度が比較的高いときには地中温度はハウス内温度よりも低くなり、ハウス内温度が比較的低いときには地中温度はハウス内温度よりも高くなる。
【実施例1】
【0028】
ここで、実施例1の農業用ハウス10は、ハウス設置面2から立ち上がる温度調整用壁面3の内側に、この温度調整用壁面3に対してほぼ平行に延在する調水パイプである平行パイプ21と、温度調整用壁面3を貫通すると共に平行パイプ21に連通する連通パイプ22と、を備えている。
【実施例1】
【0029】
そのため、夏期のように気温が高く、ハウス室10c内の温度が高いときには、平行パイプ21内の空気は地中熱によってハウス室10c内よりも温度が低く抑えられる。そして、この比較的温度の低い平行パイプ21内の空気は、ハウス室10cとの温度差で生じる対流によって、連通パイプ22を通って空気放出孔22aからハウス室10c内に流れ込む。これにより、ハウス室10c内が冷却され、室温の上昇を抑制することができる。
【実施例1】
【0030】
一方、冬期のように気温が低く、ハウス室10c内の温度が低いときには、平行パイプ21内の空気は地中熱によってハウス室10c内よりも温度が高く維持される。そして、この比較的温度の高い平行パイプ21内の空気は、ハウス室10cとの温度差で生じる対流によって、連通パイプ22を通って空気放出孔22aからハウス室10c内に流れ込む。これにより、ハウス室10c内が暖められ、室温の低下を抑制することができる。
【実施例1】
【0031】
このように、地中熱で気温よりも温度変化を抑えられた平行パイプ21内の空気を利用することで、一年を通じてハウス室10c内の温度を制御することができる。
【実施例1】
【0032】
また、実施例1の農業用ハウス10の平行パイプ21は、ハウス室10cから見たときに、一方の端部21aが他方の端部21bよりも低くなるように、長手方向に勾配を有するように配設されている。
【実施例1】
【0033】
そのため、平行パイプ21内の空気が比較的暖かいときには、比較的高くなっている他方の端部21b側に空気が流れ、この他方の端部21b近傍の連通パイプ22から平行パイプ21内の空気はスムーズに流れ出ることができる。また、平行パイプ21内の空気が比較的冷たいときには、比較的低くなっている一方の端部21a側に空気が流れ、この一方の端部21a近傍の連通パイプ22から平行パイプ21内の空気はスムーズに流れ出ることができる。つまり、平行パイプ21の長手方向に勾配を有することで、平行パイプ21内の空気が円滑に流れ、ハウス室10c内の温度制御をスムーズに行うことができる。
さらに、平行パイプ21内に侵入した水分は、自重により他方の端部21b側から一方の端部21a側へと流れるため、連通パイプ22に入り込むことを防止できる。これにより、温度調整用壁面3の内側に溜まった水分が、ハウス室10c内に流れ込むことを防止できる。
【実施例1】
【0034】
そして、実施例1の農業用ハウス10では、温度調整用壁面3は、少なくとも平行パイプ21が埋設される部分は粒子間空隙が比較的大きい礫層3aによって造成される一方、平行パイプ21は、この礫層3a内に埋設されている。これにより、平行パイプ21の周囲には空隙が多く生じ、平行パイプ21内の空気の流れがより円滑になって、温度調整効果をさらに向上させることができる。
なお、土壌中の空気には二酸化炭素を多く含むことから、平行パイプ21から流れ出る空気には二酸化炭素が多く含まれることとなる。そのため、ハウス室10c内の二酸化炭素濃度が高まり、作物の成長を促進させる効果も有する。
【実施例1】
【0035】
また、実施例1の農業用ハウス10では、温度調整用壁面3は、蓄熱性を有する高さとなっている。そのため、日光からの熱を温度調整用壁面3に蓄え、夜間等には温度調整用壁面3から蓄えた熱を放出することで、この温度調整用壁面3を低温期の農業用ハウス10内の温度維持に利用することができる。すなわち、低温期では、平行パイプ21から流れる空気による室温低下抑制効果に加え、温度調整用壁面3による蓄熱効果によって低温対策を図ることができる。
【実施例1】
【0036】
[敷設容易作用]
実施例1の農業用ハウス10では、温度調整用壁面3の内側に埋設された平行パイプ21は、温度調整用壁面3に対してほぼ平行に延在している。
【実施例1】
【0037】
そのため、平行パイプ21の埋設に必要な面積は限定的になり、平行パイプ21の埋設に必要な労力や費用の増大が抑制され、農業用ハウス10の敷設費用を低く抑えることができる。
【実施例1】
【0038】
特に、ハウス設置面2と、このハウス設置面2から立ち上がる温度調整用壁面3と、を有する段差地1を造成する傾斜地の区画整備と併せて、平行パイプ21及び連通パイプ22からなる温度制御用配管20を埋設すれば、段差地1の造成事業である傾斜地の区画整備事業と農業用ハウス10の建設事業との両方で配管埋設費用を負担することとなる。つまり、土中の水圧管理を行う調水パイプとしての機能を有する平行パイプ21は、温度調整用壁面3に作用する水圧を低減するために不可欠である。そこで、段差地1の造成に伴って調水パイプである平行パイプ21を埋設すれば、調水パイプ埋設費用は、傾斜地の区画整備事業における段差地造成費用として負担することができる。このように、段差地造成費用で埋設費用をまかなうことができる平行パイプ21を利用することで、農業用ハウス10の敷設費用を低く抑えることができる。これにより、より安価に農業用ハウス10を敷設することができる。
【実施例1】
【0039】
なお、平坦地において本発明の農業用ハウス10を適用する場合では、壁面を新たに自立的に造成する必要があったり、自立的な壁面の内側は外気層となってしまうため平行パイプを埋設するための盛土が必要となったりする。これらの理由から、傾斜地において本発明の農業用ハウス10を適用する場合よりも、現実には多額の費用が必要となってしまう。一方、実施例1のように、傾斜面を利用して温度調整用壁面3を構成することにより、敷設作業を容易に行うことができる。つまり、本発明の農業用ハウス10は、傾斜面において適用することで、さらに敷設を安価で容易に行うことが可能となる。
【実施例1】
【0040】
次に、効果を説明する。
実施例1の農業用ハウス10にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【実施例1】
【0041】
(1) 設置面(ハウス設置面)2と、該設置面2から立ち上がる壁面(温度調整用壁面)3と、を有する段差地1に敷設され、前記段差地1に埋設され、土中の水圧管理を行う調水パイプ(平行パイプ)21と、前記壁面3を貫通し、ハウス室10c内と前記調水パイプ21とを連通する連通パイプ22と、前記設置面2に立設されると共に、前記壁面3に連結する屋根部12と、を備え、前記壁面3を側壁の一部とする構成とする。
これにより、ハウス敷設費用を低く抑えつつ、一年を通じて室内温度を調整することができる。
【実施例1】
【0042】
(2) 前記調水パイプは、前記壁面(温度調整用壁面)3の内側に埋設され、前記壁面3に対してほぼ平行に延在する平行パイプ21とした構成とする。
このため、平行パイプ21の埋設に必要な面積は限定的になり、平行パイプ21の埋設に必要な労力や費用の増大が抑制され、農業用ハウス10の敷設費用を低く抑えることができる。
【実施例1】
【0043】
(3) 前記平行パイプ21は、長手方向に勾配を有する構成とする。
これにより、平行パイプ21内の空気の流れを円滑にし、室内温度調整をスムーズに行うと共に、ハウス室10c内に水分が浸入することを防止できる。
【実施例1】
【0044】
(4) 前記壁面(温度調整用壁面)3は、粒子間空隙が比較的大きい礫層3aを有し、前記平行パイプ21は、前記礫層3a内に埋設した構成とした。
これにより、平行パイプ21の周囲には空隙が多く生じ、平行パイプ21内の空気の温度変化をより小さくすることができて、温度調整効果をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、調水パイプを平行パイプとした実施例1に対し、調水パイプとして暗渠パイプを採用した例である。
【実施例2】
【0046】
まず、構成を説明する。
図5は、実施例2の農業用ハウスを示す断面図である。
【実施例2】
【0047】
実施例2の農業用ハウス30は、実施例1に示した段差地1に敷設されている。このため、段差地1についての説明は省略する。
【実施例2】
【0048】
前記農業用ハウス30は、ハウス設置面2及び温度調整用壁面3を一体的に覆うようにハウス設置面2に立設され、温度調整用壁面3を側壁の一部としている。そして、この農業用ハウス30は、上部側壁11と、屋根部12と、一対の妻側側壁(ここでは図示せず)と、温度制御用配管31と、を備えている。なお、前記上部側壁11、前記屋根部12、前記一対の妻側側壁については、実施例1に示したものと同等であるため、説明を省略する。
【実施例2】
【0049】
前記温度制御用配管31は、暗渠パイプ32と、連通パイプ33と、埋設タンク34と、を有している。
【実施例2】
【0050】
前記暗渠パイプ32は、両端が開放した中空管であり、段差地1よりも上部に造成された傾斜畑5の土中に埋設されて、地下に浸透した地下水を排水する。この暗渠パイプ32は、一端が図示しない排水管に接続され、他端は土中で開放している。そして、この暗渠パイプ32は、傾斜畑5を造成する際に土中に埋設される。さらに、この暗渠パイプ32には、周面に農業用ハウス30に向いた連通孔32aが形成されている。
【実施例2】
【0051】
前記連通パイプ33は、両端が開口した中空管であり、一端が暗渠パイプ32の連通孔32aと連通し、他端が温度調整用壁面3を貫通してハウス室10c内に開放した空気放出孔33aとなっている。
なお、図5では、空気開口孔33aが一つであるが、連通パイプ33の他端が複数に分岐し、多数の空気放出孔を形成してもよい。
【実施例2】
【0052】
前記埋設タンク34は、暗渠パイプ32に連通した連通パイプ33の中間部に設けられ、暗渠パイプ32から連通パイプ33に流れ込んだ水を溜める溜水手段である。この埋設タンク34は、上段作業道4の地下に埋設されており、上部が上段作業道4に開放している。なお、通常は蓋部34aによって閉塞されている。
【実施例2】
【0053】
次に、作用を説明する。
この実施例2の農業用ハウス30では、暗渠パイプ32内の空気が、パイプ周囲の土壌による蓄熱効果に加え、暗渠パイプ32内の水分の持つ蓄熱効果によっても温度の変化が抑制される。すなわち、暗渠パイプ32内の空気は温度変化が少ない。これにより、暗渠パイプ32内の温度が安定した空気を利用してハウス室10c内の温度を調整することができる。また、埋設タンク34を設けることで、ハウス室10c内に暗渠パイプ32の水分が流入することを防止できる。
【実施例2】
【0054】
また、暗渠パイプ32は、傾斜畑5を造成する際に埋設されるいわゆる既設管であるため、農業用ハウス30を敷設する際に、新たに排水用の調水パイプを埋設する必要がない。そのため、ハウス敷設費用を低く抑えることができる。
【実施例2】
【0055】
以上、本発明の農業用ハウスを実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【実施例2】
【0056】
実施例1の農業用ハウス10では、温度制御用配管20が平行パイプ21と連通パイプ22とを有しており、実施例2の農業用ハウス30では、温度制御用配管31が暗渠パイプ32と連通パイプ33とを有している。しかしながら、これに限らず、例えば、図6に示すように、温度調整用壁面3を貫通する連通パイプ22を平行パイプ21に連結し、この平行パイプ21を、連結パイプ35を介して、段差地1よりも上方に埋設された暗渠パイプ32に連結してもよい。この場合、暗渠パイプ32内の水を溜める溜水手段である埋設タンク34を、連結パイプ35の中間部に設ける。また、上下方向に並ぶ複数の平行パイプ21,21,21は、パイプ23によって互いに連通させる。
【実施例2】
【0057】
これにより、平行パイプ21及び暗渠パイプ32のそれぞれにおいて温度変化が安定した空気を利用してハウス室10c内の温度調整を行うことができる。すなわち、地中に埋設された調水パイプの全長を長く確保することができて、パイプ内空気の温度変化をさらに抑制することができる。
【実施例2】
【0058】
また、溜水手段としては、埋設タンク34に限らない。例えば平行パイプ21の内径を連通パイプ22よりも十分に大きくすると共に、連通パイプ22を平行パイプ21の中心よりも上側に連結することで、埋設タンク34を設けなくても暗渠パイプ32内の水が連通パイプ22を介してハウス室10cへ浸入することを防止できる(図7参照)。
【実施例2】
【0059】
また、図8に示すように、ハウス室10c内の空気を平行パイプ21に圧送するブロアBを、平行パイプ21に接続してもよい。このとき、上下方向に並ぶ複数の平行パイプ21,21,21は、パイプ23によって互いに連通させる。
この場合、ブロアBによって強制送風されたハウス室10c内の空気は圧力が高められ、温度が上昇する。そのため、特に低温期において室内温度を上げるときには有利である。
【実施例2】
【0060】
なお、ブロアBの駆動に必要な電力は、農業用ハウス10の屋根部12や妻側側壁13、あるいは傾斜畑5等に設置した太陽光発電パネルを利用することで、さらに運用コストの削減を図ることができる。
【実施例2】
【0061】
さらに、図5に示す暗渠パイプ32や埋設タンク34内の水にブロアBからの空気を送り込んでバブリングさせることで蓄熱したり、ハウス室10c内の空気を暗渠パイプ32に送り込んで、暗渠パイプ32の周囲の土中温度を上昇させたりしてもよい。この場合では、暗渠パイプ32の上方に生育する植物体の成長促進を図ることができる。
【実施例2】
【0062】
また、一般的に、農業用ハウスでは、夜間の湿度が100%近くの高湿状態となり、この高湿状態が病害虫の発生や生育阻害の原因となるため、ハウス室10c内を80%以下の低湿状態にすることが求められている。
そこで、本発明の農業用ハウス10では、図8に示すブロアBによってハウス室10c内の空気を平行パイプ21に圧送することで、ハウス室10c内の温度を下げることなく夜間のハウス内換気と除湿を行うことができる。
【実施例2】
【0063】
すなわち、平行パイプ21の周囲を礫層3aで構成することで、平行パイプ21の周囲に比較的温度が低い低湿の空気層が生じる。また、暗渠パイプ32では、パイプ周囲に籾殻等からなる疎水材を設けることで、暗渠パイプ32の周囲に比較的温度が低い低湿の空気層が生じる。さらに、冬期等の降雨量が少ない時期では土中の水分量が少なく、さらに平行パイプ21や暗渠パイプ32の周囲の空気層の湿度が低くなる。
そして、平行パイプ21や暗渠パイプ32にブロアBで高湿のハウス室10c内の空気を送り込むと、平行パイプ21等からパイプ周囲の空気層に流れ込んだ高温高湿の空気と、パイプ周囲にある低温低湿の空気層との間で熱交換が行われる。これにより、パイプ周囲には低温高湿の空気層が残り、ハウス室10c内には高温低湿の空気が戻されることとなる。これにより、ハウス室10c内の温度を下げることなく夜間のハウス内換気と除湿を行うことができる。
【実施例2】
【0064】
なお、必要であれば、パイプ周囲の土に吸湿剤を入れることで、パイプ周囲の空気層の湿度を低減し、除湿効果を高めることができる。また、ハウス室10c内と平行パイプ21や暗渠パイプ32とをブロアBを介することなく連通させるだけであっても、自然対流によってハウス室10c内の空気が平行パイプ21等に導かれる。そして、ハウス室10c内の空気の循環あるいは交換によって、換気・除湿効果を得ることができる。
【実施例2】
【0065】
そして、実施例2の農業用ハウス30では、ハウス上部に配置された暗渠パイプ32を利用しているがこれに限らず、図9に示すように、農業用ハウス10の上下にそれぞれ暗渠パイプ32A,32Bを配置すると共に、それぞれの暗渠パイプ32A,32Bを、連通パイプ33を介してハウス室10cと連通させてもよい。
この場合、ハウス室10c内よりも暖かい空気は、ハウス下部に位置する暗渠パイプ32B内の空気を利用し、ハウス室10c内よりも冷たい空気は、ハウス上部に位置する暗渠パイプ32A内の空気を利用する。なお、これらの空気は一定温度を有していることから、ヒートポンプ暖冷房機に用いるとエネルギー効率が向上して、省エネルギーを図ることができる。
【実施例2】
【0066】
さらに、図10に示すように、平行パイプ21を、有機性廃棄物を発酵させて堆肥化する堆肥製造装置Tと連通させてもよい。このとき、上下方向に並ぶ複数の平行パイプ21,21,21は、パイプ23によって互いに連通させる。
ここで、堆肥製造装置Tとは、いわゆるコンポスターであり、農業用ハウス10から排出される果樹等の有機性廃棄物や残滓を微生物によって分解・発酵することで堆肥化する装置である。そして、この廃棄物の分解・発酵工程で微生物が自己発熱するため、堆肥製造装置Tから排出される空気は温度が高くなる。そのため、平行パイプ21と堆肥製造装置Tとを連通させることで、堆肥製造装置Tから排出される暖かい空気を利用して、ハウス室10c内の温度を高めることができ、低温期において室内温度を上げるときに有利である。
なお、堆肥製造装置Tを図5に示す暗渠パイプと連通させた場合であっても、堆肥製造装置Tから排出される暖かい空気が利用でき、低温期における室内温度の上昇に有利である。
【実施例2】
【0067】
そして、実施例1の農業用ハウス10では、平行パイプ21が長手方向に勾配を有しているが、両端が同じ高さになるように水平状態に配設してもよい。この場合、平行パイプ21内の空気とハウス室10c内の空気との温度差によって生じる対流で、ハウス室内温度調整を行うこととなる。
なお、このとき、図11に示すように、平行パイプ21内においても対流が発生するが、平行パイプ21と連通パイプ22の内径をほぼ同じにすれば、平行パイプ21から連通パイプ22へとスムーズに空気が流れ出ることができる。
【実施例2】
【0068】
また、実施例1の農業用ハウス10では、調水パイプとして平行パイプ21を採用し、実施例2の農業用ハウス30では、調水パイプとして暗渠パイプ32を採用している。しかしながら、これに限らず、段差地1に埋設され、土中の水圧管理を行うためのパイプであれば調水パイプとすることができる。
【実施例2】
【0069】
さらに、本発明における農業用ハウス10におけるハウス設置面2あるいは傾斜畑5は、果樹栽培だけでなく、稲作を行う水田や、トマト、イチゴ等の野菜、花卉を栽培する耕作地、あるいは耕作放棄地であってもよい。また、ハウス設置面2では、鉢花の栽培を行ってもよい。本発明の農業用ハウス10は、栽培する作物の種類は限定されず、あらゆる作物栽培に有効な手段である。
【符号の説明】
【0070】
1 段差地
2 ハウス設置面(設置面)
3 温度調整用壁面(壁面)
3a 蓄熱材
3b 上端部
4 上段作業道
5 傾斜畑
5a 畑面
5b 畑内作業道
10 農業用ハウス
10a 被覆材
10b パイプ
10cハウス室
11 上部側壁
11b 上端部
12 屋根部
13 妻側側壁
13a 出入口
20 温度制御用配管
21 平行パイプ
21c連通孔
22 連通パイプ
22a空気放出孔
31 温度制御用配管
32 暗渠パイプ
33 連通パイプ
34 埋設タンク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10