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明細書 :鋼製橋脚の鉄筋コンクリート方式アンカー部の耐震補強方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-020071 (P2014-020071A)
公開日 平成26年2月3日(2014.2.3)
発明の名称または考案の名称 鋼製橋脚の鉄筋コンクリート方式アンカー部の耐震補強方法
国際特許分類 E01D  22/00        (2006.01)
E01D  19/02        (2006.01)
FI E01D 22/00 B
E01D 19/02
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2012-158308 (P2012-158308)
出願日 平成24年7月17日(2012.7.17)
発明者または考案者 【氏名】後藤 芳顯
【氏名】水野 剛規
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 2D059
Fターム 2D059AA03
2D059GG05
2D059GG40
2D059GG55
2D059GG56
要約
【課題】鋼製橋脚の鉄筋コンクリート方式アンカー部の耐震補強方法において、施工スペースの確保の困難性や大型な補強装置を必要とすることに起因する問題を解決することを課題とする。
【解決手段】鋼製橋脚躯体1とフーチング2は,鋼製橋脚躯体1の一部である上ベースプレート3とフーチング2に埋設されるアンカービーム5をアンカーボルト4により連結し,上部のアンカーボルトナット4aと下部のアンカーボルトナット4bを締めることにより固定される。ここでアンカーボルト上端部を橋脚躯体基部に固定することを特徴とする耐震補強方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
鋼製橋脚の鉄筋コンクリート方式アンカー部の耐震補強方法であって、
アンカーボルト上端部を橋脚躯体基部に固定することを特徴とする耐震補強方法または耐震構造。
【請求項2】
前記アンカーボルト上端部の固定において、橋脚躯体の一部である上ベースプレートとフーチングに埋設されるアンカービームとをアンカーボルトにより連結し,
当該アンカーボルトの上部のアンカーボルトナットと下部のアンカーボルトナットを締めることにより固定することを特徴とする請求項1に記載の耐震補強方法または耐震構造。
【請求項3】
前記アンカーボルト上端部の固定において,アンカーボルトナットとベースプレートの溶接,および/またはアンカーボルトナットとアンカーボルトの溶接を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の耐震補強方法または耐震構造。
【請求項4】
前記溶接において、アンカーボルトナットに溶接脚長確保のための開先を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耐震補強方法または耐震構造。
【請求項5】
前記アンカーボルト上端部の固定に,浮き上がり防止治具を設置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の耐震補強方法または耐震構造。
【請求項6】
前記アンカーボルト上端部の固定において,下ベースプレート下面にアンカーボルトナットと座金を設置し,当該アンカーボルトナットと当該座金は下ベースプレートに密着させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の耐震構造。
【請求項7】
アンカーボルト下端部の固定に,下アンカービーム上面および/または下面にアンカーボルトナットと座金を設置し,前記上面と前記下面で挟み込むようにして固定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の耐震構造。









発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製橋脚の鉄筋コンクリート方式アンカー部の耐震補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼製橋脚とフーチングの定着部であるアンカー部はフーチングに埋設されるため,耐震補強をする場合は大掛かりな工事が必要となる。さらに鋼製橋脚は建設条件の厳しい地点に建設される都市高速道路に採用されるケースが多いため施工スペースの制約から耐震補強がままならない場合も多く見られる。
一般的にアンカー部の補強方法として非特許文献1が挙げられる。ここではアンカー部の補強方法として「ベース部の拡幅」,「基部根巻コンクリートの鋼板巻き立て」,「基部にブレース材の設置」を提示している。なお,アンカー部は杭方式と鉄筋コンクリート方式の2つの構造形式が一般的であるが,本発明の補強方法(以下、「本補強方法」という。)では鉄筋コンクリート方式アンカー部を対象とし,非特許文献1についても鉄筋コンクリート方式アンカー部を対象としている。以下に非特許文献1の各補強方法について説明する。
a)「ベース部の拡幅」については,橋脚躯体基部の上下ベースプレートを拡幅することを目的とする。これによりフーチングコンクリートの支持効果を期待することができる。拡幅後の上下のベースプレート間は剛性が十分でないので,橋脚躯体と拡幅したベースプレートをつなぐリブを取り付けて補強する。
b)「基部根巻コンクリートの鋼板巻き立て」については,これは橋脚躯体の車両衝突による損傷防止を目的として施工される根巻きコンクリートをアンカー部の断面として期待する方法である。アンカー部の不足する耐力に応じて,コンクリートを追加打設し断面を増加させる。根巻きコンクリートを覆う円形鋼板は打設時の型枠としての機能を果たすとともにコンクリートの支持効果を与える。
c)「基部にブレース材の設置」については,コンクリートを充填したブレース材を橋脚躯体とフーチング上面の間に設置する。地震時に橋脚躯体基部に作用する外力はブレース材によって分散され,ブレース材の軸力は直接フーチングコンクリートに伝達される。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】既設鋼製橋脚の耐震補強設計要領(素案),平成9年,阪神高速道路公団
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、次の1)から3)である。
1) 前記非特許文献1で挙げられるa)からc)の3つの補強方法は,いずれの補強方法も橋脚躯体基部の施工スペースの確保が必要となる。都市高速道路では桁下の空間に制約があり,施工スペースの確保が困難な場合が多いと考えられる。
2)非特許文献1で挙げられる前記3つの補強方法は,補強構造が大掛かりであるため,補強材の製作費用のみならず施工費用も多く発生する。特に施工時は,溶接やコンクリート打設が必要な上に,場合によっては車線規制も必要になるため,比較的長い工期が必要となる。
3)非特許文献1で挙げられる前記3つの補強方法は,アンカー部の大幅な耐力向上を見込めるが,補強で必要なアンカー部の耐力が比較的小さいときは構造の規模に見合わず,経済的ではない。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになしたものであり、前記1) の施工スペース及び前記2)の補強装置の大型化の問題を解決するために本補強方法では橋脚躯体基部の上下ベースプレートを越える範囲に補強部材を取り付けることはせず、さらに,施工性を考慮して,全て地表面で作業できるような簡易的な構造としている。大型な補強装置を必要としなければ,結果として工期も短くなる。本補強方法は、部分的な補強であるため,大幅なアンカー部の耐力向上は見込めないが前記3)で課題として挙げた場合,すなわち補強で必要なアンカー部の耐力が比較的小さい場合に非常に有効な耐震補強方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の発明は、鋼製橋脚の鉄筋コンクリート方式アンカー部の耐震補強方法または耐震構造であって、アンカーボルト上端部を橋脚躯体基部に固定することを特徴とする耐震補強方法または耐震構造にある(請求項1)。
第2の発明は、前記アンカーボルト上端部の固定において、橋脚躯体の一部である上ベースプレートとフーチングに埋設されるアンカービームとをアンカーボルトにより連結し,当該アンカーボルトの上部のアンカーボルトナットと下部のアンカーボルトナットを締めることにより固定することを特徴とする請求項1に記載の耐震補強方法にある(請求項2)。
第3の発明は、前記アンカーボルト上端部の固定において,アンカーボルトナットとベースプレートの溶接,および/またはアンカーボルトナットとアンカーボルトの溶接を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の耐震補強方法または耐震構造にある(請求項3)。
第4の発明は、前記溶接において、アンカーボルトナットに溶接脚長確保のための開先を設けることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耐震補強方法または耐震構造にある(請求項4)。
【0007】
第5の発明は、前記アンカーボルト上端部の固定に,浮き上がり防止治具を設置することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の耐震補強方法または耐震構造にある(請求項5)。
【0008】
第6の発明は、前記アンカーボルト上端部の固定において,下ベースプレート下面にアンカーボルトナットと座金を設置し,当該アンカーボルトナットと当該座金は下ベースプレートに密着させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の耐震構造にある(請求項6)。
【0009】
第7の発明は、アンカーボルト下端部の固定に,下アンカービーム上面および/または下面にアンカーボルトナットと座金を設置し,前記上面と前記下面で挟み込むようにして固定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の耐震構造にある(請求項7)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の構造を模式的に示した図である。
【図2】図1においてIaの方向から見たときの図である。
【図3】図1のIbを拡大した図であり,橋脚躯体のアンカーボルト定着部を拡大した図である。
【図4】図3のアンカーボルトナット4aの詳細図である。(a)は上面図, (b)は側面図, (c)は下面図を示す。
【図5】第1実施形態における動作を模式的に示した図である。
【図6】(a)は第2実施形態における橋脚躯体のアンカーボルト定着部を拡大した図である。

【0011】
(b)は(a) においてIcの方向から見たときの図である。
【図7】第2実施形態における動作を模式的に示した図である。
【図8】第3実施形態における橋脚躯体のアンカーボルト定着部を拡大した図である。
【図9】第4実施形態における橋脚躯体のアンカーボルト定着部を拡大した図である。
【図10】第3実施形態における動作を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の構造の断面図である。鉄筋コンクリート方式アンカー部では,鋼製橋脚躯体1とフーチング2は,鋼製橋脚躯体1の一部である上ベースプレート3とフーチング2に埋設されるアンカービーム5をアンカーボルト4により連結し,上部のアンカーボルトナット4aと下部のアンカーボルトナット4bを締めることにより固定する。図2は図1のアンカー部をIaの方向から見た場合の上面図である。図2に示されるようにアンカーボルト4は鋼製橋脚躯体1を囲むように配置する。1本のアンカーボルト4はリブプレート6に挟まれる。図3は橋脚躯体の定着部である図1のIbの部分を拡大した図である。アンカーボルト4は,上下については上ベースプレート3と下ベースプレート7により,四方はリブプレート6と蓋8と鋼製橋脚躯体1により囲まれる。この部分は閉じたボックスとなり,内部には剛性保持や防錆を目的として,グラウト孔8aから無収縮モルタル9を充填する場合も多く見られる。以上に述べた構造は補強前と相違はない。
補強前のアンカーボルト上端部は,上ベースプレート3の上面においてアンカーボルト4を市中品のアンカーボルトナットと座金により締結することにより固定される。第1実施形態の補強方法ではこの部位を施工の対象とする。まず,既設のアンカーボルトナットと座金を取り外し,新たに図4に示すように開先10を設けた特別な構造のアンカーボルトナット4aを取り付ける。ここでアンカーボルトナット4aの締結のみでは補強前と同じであるので,図3に示すように上ベースプレート3に対してアンカーボルトナット4aに全周溶接11を実施する。なお,アンカーボルトナット4aに開先10を設けるのは溶接脚長を確保するためであり,溶接によってアンカーボルト上端部は上ベースプレート3に完全に固定される。さらにアンカーボルトナット4aとアンカーボルト4に滑りが生じないように溶接12を実施する。以上のように,本補強方法の施工は,上ベースプレート3の上面のアンカーボルトナットの交換・溶接のみで対応できるので非常に簡易的である。
図5は第1実施形態の動作を模式的に示した図である。地震時には橋脚躯体基部に鉛直荷重13とモーメント荷重14が作用する。上ベースプレート3と圧縮側のアンカーボルト上端部15はアンカーボルトナット4aにより十分に固定されているのでアンカーボルト4の圧縮軸力16がアンカービーム5を介してフーチング2に伝達され,その結果アンカー部の耐力が向上する。なお,この場合,圧縮軸力を受けるアンカーボルト下端部15aの支持力を十分確保できることが必要な条件となる。ここで,図3の閉じたボックスの内部に充填される無収縮モルタル9とアンカーボルト4の付着により圧縮軸力16を伝達することは可能であるが,充填方法や周辺の拘束に影響するので確実な方法ではない。引張軸力17が生じているアンカーボルト上端部18は,モーメント荷重14の反転時においても固定されている上ベースプレート3に追随し,引張状態から圧縮状態に転じる。そのため,アンカーボルトナット4aと上ベースプレート3の離間によるアンカーボルト4の残留変形は生じず,アンカーボルト4の塑性変形による吸収エネルギを十分に期待することができる。なお,第1実施形態における補強方法は新設構造物に対する耐震構造として適用した場合においても以上のような効果が期待でき有効である。
(第2実施形態)
図6は第2実施形態における鋼製橋脚躯体1のアンカーボルト定着部を拡大したものである。図6(a)は第1実施形態の図3に対応し,図6(b)は,図6(a)に示すIcの方向から見た図である。図6に示すようにアンカーボルト上端部は市中品のアンカーボルトナット4cと座金4dにより上ベースプレート3により締結され固定される。これは補強前の構造と相違はない。第2実施形態では,さらに浮き上がり防止治具19をアンカーボルト天端と接するように設置することでアンカーボルト上端部の固定をより確実なものとする。なお,浮き上がり防止治具19は,ベースプレート19aとリブプレート19bにより構成され,溶接により鋼製橋脚躯体1に固定される。第2実施形態においても第1実施形態と同様に上ベースプレート3の上面で作業できるので簡易的で施工性がよい。
図7は第2実施形態における動作を模式的に示した図である。圧縮側のアンカーボルト上端部15は,浮き上がり防止治具19のベースプレート19aにより支圧力を受けてアンカーボルト4には圧縮軸力16が生じる。また,引張軸力17が生じているアンカーボルト上端部18は,モーメント荷重14の反転時においても浮き上がり防止治具19のベースプレート19aにより支圧力を受けることにより上ベースプレート3に追随し,引張状態から圧縮状態に即座に移行する。以上より,第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果を期待することができ,耐震補強のみならず新設構造物に対する耐震構造としても適用可能である。

(第3,4実施形態)
第3,4実施形態では,既設の補強ではなく新設のアンカー部の構造に対応している。ここでは,第1,2実施形態は新設構造でも有効であることを考慮して,より確実にアンカーボルトの圧縮力をフーチングに伝達することができるように追加措置を加える。
図8は第3実施形態における橋脚躯体のアンカーボルト定着部を拡大したものであり,図9は第4実施形態に対応している。アンカーボルト上端部の構造は,第3実施形態は第1実施形態(図3)と同じであり,第4実施形態は第2実施形態(図6)と同じある。第3,4実施形態では,アンカーボルト4に圧縮軸力をより確実に伝達するために,下ベースプレート7の下面にアンカーボルトナット4eと座金4fを追加で設置する。ここでは,アンカーボルトナット4eと座金4fは下ベースプレート7に必ず密着させることが重要であり,全てのアンカーボルト4に対してこのような措置を実施する。その結果,第3実施形態の動作の模式図を示す図10のように,下ベースプレート7がアンカーボルトナット4eを押し込む作用が働き,アンカーボルトに圧縮軸力16が伝達される。このような方法は単独で使用しても効果はあるが,圧縮軸力16が過大になるとアンカーボルトナット4eとアンカーボルト4のネジ部に滑りが生じる可能性があるので,第1実施形態あるいは第2実施形態と組み合わせて使用することでより有効である。なお,実施工においてこのようにアンカーボルトナット4eと座金4fを下ベースプレート7の下面に部分的に設置するケースが見られるが,これは施工における橋脚躯体の基部保持を目的としたものであり,設置された箇所もアンカーボルトナット4eと座金4fが下ベースプレート7に必ずしも密着しているとは限らず,本発明とは異なった状態となる。
さらに図10に示すように,アンカーボルト下端部について,下アンカービーム5の下面のみならず上面においてもアンカーボルトナット4gと座金4hを設置して下面のアンカーボルトナット4bと挟み込んで締結すれば,アンカーボルト4を下アンカービーム5に完全に固定することができる。この措置によりアンカーボルトの圧縮軸力16が下アンカービーム5を介してフーチング2に伝達する機構はより確実なものとなる。
【符号の説明】
【0013】
1 鋼製橋脚躯体
2 フーチング
3 上ベースプレート
4 アンカーボルト
4a~4c アンカーボルトナット
4d 座金
4e アンカーボルトナット

4f 座金
4g アンカーボルトナット
4h 座金
5 アンカービーム
6 リブプレート
7 下ベースプレート
8 蓋
8a グラウト孔
9 無収縮モルタル
10 開先
11 全周溶接
12 溶接
19 浮き上がり防止治具
19a 浮き上がり防止治具のベースプレート
19b 浮き上がり防止治具のリブプレート
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9