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明細書 :生分解性多孔質中空微粒子、その製造方法および用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5574445号 (P5574445)
登録日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発行日 平成26年8月20日(2014.8.20)
発明の名称または考案の名称 生分解性多孔質中空微粒子、その製造方法および用途
国際特許分類 C08G  81/00        (2006.01)
C08J   9/28        (2006.01)
C08G  63/06        (2006.01)
FI C08G 81/00 ZBP
C08J 9/28 102
C08J 9/28 CEZ
C08G 63/06
請求項の数または発明の数 11
全頁数 15
出願番号 特願2011-502817 (P2011-502817)
出願日 平成22年3月5日(2010.3.5)
国際出願番号 PCT/JP2010/053626
国際公開番号 WO2010/101240
国際公開日 平成22年9月10日(2010.9.10)
優先権出願番号 2009053149
優先日 平成21年3月6日(2009.3.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年2月28日(2013.2.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】小野 努
【氏名】木村 幸敬
【氏名】村中 誠
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 忠
参考文献・文献 特表平06-508831(JP,A)
特表2007-522274(JP,A)
特表2005-533148(JP,A)
特開2007-254452(JP,A)
特表2004-521152(JP,A)
調査した分野 C08G 81/00-81/02
63/00-63/91
C08J 9/00-9/42
特許請求の範囲 【請求項1】
(1) 構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックと親水性高分子(B)由来のブロックとからなるジブロック共重合体(C)を、飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい有機溶媒と混合する工程、および
(2)上記工程(1)の調製物と、水と、さらなるジブロック共重合体(C)との混合物を乳化することによりエマルションを形成させる工程
により調製される、上記ジブロック共重合体(C)により形成された中空部を有する多孔質中空微粒子の製造用のエマルションであって、
前記ジブロック共重合体(C)のGPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあり、
前記工程(1)における前記ジブロック共重合体(C)として、HLB値が0.4以上12以下である油溶性ジブロック共重合体(C1)が用いられ、前記工程(2)における前記ジブロック共重合体(C)として、HLB値が8以上20未満でありかつ前記油溶性ジブロック共重合体(C1)よりもHLB値が少なくとも2大きい値を有する水溶性ジブロック共重合体(C2)が用いられる、上記エマルション。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)のGPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、請求項に記載の多孔質中空微粒子製造用のエマルション。
【請求項3】
前記親水性高分子(B)のGPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、親水性高分子(B)に由来するものである、請求項1または2のいずれかに記載の多孔質中空微粒子製造用のエマルション。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の多孔質中空微粒子製造用のエマルション。
【請求項5】
前記親水性高分子(B)が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子である、請求項1~4のいずれかに記載の多孔質中空微粒子製造用のエマルション。
【請求項6】
前記ジブロック共重合体(C)の構成比率が、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B)由来のブロックの重合度が0.1~100,000部となる範囲である請求項1~5のいずれかに記載の多孔質中空微粒子製造用のエマルション。
【請求項7】
前記油溶性ジブロック共重合体(C1)100重量部に対して、前記水溶性ジブロック共重合体(C2)を100~1,000,000重量部の割合で用いる、請求項1~6のいずれかに記載の多孔質中空微粒子製造用のエマルション。
【請求項8】
(1)構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックおよび親水性高分子(B)由来のブロックからなるジブロック共重合体(C)を、飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい有機溶媒と混合する工程、
(2)上記工程(1)の調製物と、水と、さらなるジブロック共重合体(C)との混合物を乳化することによりエマルションを形成させ、請求項1~7のいずれかに記載のエマルションを調製する工程、および
(3)上記工程(2)により得られたエマルションから有機溶媒を留去することにより多孔質微粒子を形成させる工程を含む、上記ジブロック共重合体(C)により形成された中空部を有する多孔質中空微粒子の製造法であって、
前記ジブロック共重合体(C)のGPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあり、
前記工程(1)における前記ジブロック共重合体(C)として、HLB値が0.4以上12以下である油溶性ジブロック共重合体(C1)が用いられ、前記工程(2)における前記ジブロック共重合体(C)として、HLB値が8以上20未満でありかつ前記油溶性ジブロック共重合体(C1)よりもHLB値が少なくとも2大きい値を有する水溶性ジブロック共重合体(C2)が用いられる、上記製造法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、油溶性ジブロック共重合体(C1)を溶解し、エステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物およびアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒である、請求項に記載の多孔質中空微粒子の製造法。
【請求項10】
請求項もしくはに記載の製造方法により得られる中空部を有する多孔質中空微粒子であって、
前記中空部を有する多孔質中空微粒子の平均外径が10~100μmであり、その微粒子全体に存在する平均細孔径が0.1~1μmであり、かつ中空部の平均径が1~80μmである、多孔質中空微粒子。
【請求項11】
請求項10に記載の多孔質中空微粒子を用いた、除放性医薬用、除放性農薬用、固定化酵素・固定化微生物用、触媒用、動物細胞培養用または分離材料用の多孔質カプセル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂(生分解性樹脂)により形成された多孔質微粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質微粒子は、その多孔性および微小性により、たとえば徐放性を有する医薬製剤や農薬の基材として、あるいは酵素や触媒を固定化する担体などとして利用されている。特に、ポリ乳酸に代表される脂肪族ポリエステル系樹脂は、生分解性を有し、また生体親和性に優れることから、上記の用途において好適な素材といえる。
【0003】
このような脂肪族ポリエステル系樹脂を用いて多孔質微粒子を製造する方法はいくつか知られている。
たとえば、非特許文献1には、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、および乳酸・グリコール酸共重合体とポリエチレングリコールの混合物を用い、様々な条件下でW/O/Wエマルションを形成する、多孔質微粒子の調製法が記載されている。
【0004】
非特許文献2には、ポリカプロラクトン、ポリエチレンオキシド、およびポリラクチドからなるトリブロックコポリマーを用いた多孔質微粒子の調製法が記載されている。
非特許文献3には、乳酸・グリコール酸共重合体を用いた化学的発泡による多孔質微粒子の調製法が記載されている。
【0005】
しかしながら、いずれの方法によって得られた多孔質微粒子も、中空部分を多孔質のカプセル膜が覆っているような構造にはなっていない。また、脂肪族ポリエステル樹脂ブロックと親水性高分子ブロックとからなるジブロック共重合体により形成された多孔質微粒子もこれまでに知られていない。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Yi-Yan Yung, Tai-Shung Chung, Xin-Lai Bai and Woon-Khion Chan, Effect of preparaition condition on morphology and release profiles of biodegradable polymeric microspheres containing protein fabricated by double-emulsion method, Chemical Engineering Science, 55, 2223-2236 (2000)
【非特許文献2】Guangming Li, Qing Cai, Jianzhong Bei and Shenguo Wang, Morphology and Levonorgestrel Release Behavior of Polycaprolactone/Poly(ethylene oxide)/Polylactide Tri-component Copolymeric Microssspheres, Polymer for Advanced Technologies, 14, 239-244 (2003)
【非特許文献3】Taek Kyoung Kim, Jun Jin Yoon, Doo Sung Lee and Tae Gwan Park, Gas formed open porous biodegradable polymeric microspheres, Biomaterials, 27, 152-159 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の製造法では、得られる多孔質微粒子の孔径等の性状をある程度改変することは可能であるものの、所望の性状となるよう制御することには困難が伴った。また、たとえば多孔質微粒子の医薬品や農薬の担体などとしての用途を考慮した場合、薬剤等を保持することできる中空部を内部に有し、その外層を多孔質のカプセル膜が覆うような構造を有する微粒子は、従来にない除放特性を有する特徴的な製品になるものと考えられる。
【0008】
すなわち本発明は、孔径等の性状を制御しやすい多孔質微粒子の製造方法を提供することを一つの課題とする。また本発明は、中空構造を有する新規な形態の多孔質微粒子の製造方法を提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記一つ目の課題に対して、脂肪族ポリエステル樹脂(たとえばポリ乳酸)由来のブロックと親水性高分子(たとえばポリエチレングリコール)由来のブロックとからなるジブロック共重合体を用いて多孔質微粒子を製造し、この際に双方のブロックの分子長の比率を変化させることにより、平均細孔径など多孔性に関する性状を調節することができることを見出した。
【0010】
また、上記二つ目の課題に対して、W/Oエマルションを形成する一次乳化工程において水相(W)の量を極めて少量にする、具体的には添加する水の量を油相(O)をなす有機溶媒への飽和溶解量以下とすることにより、中空構造を有する新規な形態の多孔質微粒子が得られることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、一側面において、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックと親水性高分子(B)由来のブロックとからなるジブロック共重合体(C)により形成された、中空部を有する多孔質微粒子を提供する。
【0012】
前記中空部を有する多孔質微粒子の好ましい態様は、平均外径が0.05~500μmであり、その微粒子全体に存在する平均細孔径が0.005~10μmであり、かつ中空部の平均径が0.01~450μmである。
【0013】
前記ジブロック共重合体(C)は、GPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあることが好ましい。
【0014】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあることが好ましい。
【0015】
前記親水性高分子(B)は、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあることが好ましい。
【0016】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0017】
前記親水性高分子(B)は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子であることが好ましい。
【0018】
前記ジブロック共重合体(C)の構成比率が、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B)由来のブロックの重合度が0.1~100,000部となる範囲である、またはジブロック共重合体(C)のHLB値が0.4以上20未満であることが好ましい。
【0019】
前記ジブロック共重合体(C)は、HLB値が0.4以上12以下である油溶性ジブロック共重合体(C1)と、HLB値が8以上20未満でありかつ該油溶性ジブロック共重合体(C1)よりもHLB値が少なくとも2は大きい値を有する水溶性ジブロック共重合体(C2)とを含む、少なくとも2種のジブロック共重合体から構成される混合物であることが好ましい。
【0020】
前記ジブロック共重合体(C)は、前記油溶性ジブロック共重合体(C1)100重量部に対して、前記水溶性ジブロック共重合体(C2)100~1,000,000重量部の割合で含む、少なくとも2種のジブロック共重合体から構成される混合物であることが好ましい。
【0021】
本発明は、一側面において、(1)構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックおよび親水性高分子(B)由来のブロックからなるジブロック共重合体(C)を、飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい有機溶媒と混合する工程、(2)上記工程(1)の調製物と水との混合物を乳化することによりエマルションを形成させる工程、および(3)上記工程(2)により得られたエマルションから有機溶媒を留去することにより多孔質微粒子を形成させる工程を含む、上記ジブロック共重合体(C)により形成された中空部を有する多孔質微粒子の製造法を提供する。
【0022】
なお、この製造法における脂肪族ポリエステル樹脂(A)、親水性高分子(B)およびジブロック共重合体(C)ならびに得られる中空部を有する多孔質微粒子の好ましい態様は前述した通りである。
【0023】
前記工程(1)における混合物中の水の割合を、当該工程で用いた有機溶媒に対する飽和溶解量以下とすることにより、得られる多孔質微粒子を中空部を有するものとすることができる。
【0024】
前記有機溶媒は、ジブロック共重合体(C)を溶解するエステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物、アルコール、ミネラルオイル、シリコンオイルおよび炭酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
【0025】
上記の多孔質微粒子の製造法は、前記ジブロック共重合体(C)として、前記工程(1)において、HLB値が0.4以上12以下である油溶性ジブロック共重合体(C1)を用い、さらに前記工程(2)において、HLB値が8以上20未満でありかつ該油溶性ジブロック共重合体(C1)よりもHLB値が少なくとも2大きい値を有する水溶性ジブロック共重合体(C2)を用いる態様のものも好ましい。
【0026】
上記の態様では、前記油溶性ジブロック共重合体(C1)100重量部に対して、前記水溶性ジブロック共重合体(C2)を100~1,000,000重量部の割合で用いることが好ましい。
【0027】
また、上記の態様において、前記有機溶媒は、油溶性ジブロック共重合体(C1)を溶解し、エステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物およびアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
【0028】
さらに本発明は、上述した中空部を有する多孔質微粒子、または上述した製造方法により得られる中空部を有する多孔性微粒子を用いた、除放性医薬用、除放性農薬用、固定化酵素・固定化微生物用、触媒用、動物細胞培養用または分離材料用の多孔質カプセルを用いた、除放性医薬用、除放性農薬用、固定化酵素・固定化微生物用、触媒用、動物細胞培養用または分離材料用の多孔質担体を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来実現されることのなかった中空構造を有する多孔質微粒子を、常温で比較的容易な方法により製造することが可能となる。しかも、本発明の多孔質微粒子の製造方法においては、製造原料であるジブロック共重合体(C)の親水性高分子(B)由来ブロックの長さを調節するという簡明な方法により、所望の平均細孔径を有する多孔質微粒子を製造することができる。また、本発明の製造法は、ジブロック共重合体(C)を溶解する工程(1)の有機溶媒としてハロゲンを有するもの(たとえばクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素)を全く使用しなくても多孔質中空微粒子を製造することが可能であり、そのような製造法および得られる多孔質中空微粒子は生体や環境への安全性が高い。
【0030】
さらに、本発明の多孔質中空微粒子は良好な多孔性を有するため、従来の多孔質微粒子が用いられていた各種の分野での使用に好適であるが、従来の多孔質微粒子とは異なり、中空部と多孔質の外層部とを備えた独特の形態(カプセル構造)を有するため、新たな性能を有する製品の開発を可能とするものとして期待される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例1([a]:内水相0mL)、実施例2([b]:内水相0.1mL)、参考例1([c]:内水相1mL)および参考例2([d]:内水相2.5mL)により得られた多孔質微粒子の全体、拡大図、表面および内部を、走査型電子顕微鏡により撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
- 多孔質微粒子 -
本発明は、所定のジブロック共重合体(C)から形成される多孔質中空微粒子を提供する。本発明では、中空部と多孔質の外層部(カプセル膜)とにより構成されるものを「多孔質中空微粒子」と呼んでいる。本発明において単に「多孔質微粒子」といった場合、特に断らない限り、上記多孔質中空微粒子を意味している。

【0033】
また、本発明において、多孔質微粒子の「平均外径」は、個々の多孔質微粒子の径の平均値であり、「平均細孔径」は、多孔質微粒子全体に存在する個々の細孔の孔径の平均値であり、「平均内径」は、多孔質微粒子が内部に中空部を有する場合の、個々の中空部の径の平均値である。これらの平均値はいずれも数平均であり、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により(平均内径であれば分割されて中空部が表れた多孔質微粒子を対象とすることにより)測定することができる。

【0034】
本発明は一つの態様において、ジブロック共重合体(C)から構成される、中空部を有する多孔質微粒子(多孔質中空微粒子)を提供する。
この多孔質中空微粒子の平均外径は、好ましくは0.05~500μmであり、より好ましくは10~100μmである。平均細孔径は、好ましくは0.005~10μmであり、より好ましくは0.1~1μmである。平均内径は、好ましくは0.01~450μmであり、より好ましくは1~80μmである。また、多孔質中空微粒子の外径に対する内径の比率の平均は、好ましくは5~95%である。

【0035】
- ジブロック共重合体(C) -
本発明では、多孔質微粒子の製造原料として、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロック(構成単位)および親水性高分子(B)由来のブロックからなるジブロック共重合体(C)を用いる。このジブロック共重合体(C)の連結形態はいわゆるA-B型であり、脂肪族ポリエステル樹脂(A)に由来するブロックは疎水性の部位となり、親水性高分子(B)に由来するブロックは文字通り親水性の部位となる。

【0036】
・脂肪族ポリエステル樹脂(A)ブロック
ジブロック共重合体(C)の一方の構成単位の原料となる脂肪族ポリエステル樹脂(A)としては、公知の各種の脂肪族ポリエステル樹脂(A)を用いることができるが、たとえば、生分解性ポリマーとして周知慣用のポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、ポリブチレンサクシネートなどが好適である。これらの樹脂は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0037】
炭素原子数が2~6のヒドロキシカプロン酸またはジカルボン酸、あるいはこれらと共重合するジアルコールは、脂肪族ポリエステル樹脂の製造原料として用いることができるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、炭素原子数が2~6のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸(C2)、乳酸(C3)、3-ヒドロキシ酪酸(C4)、4-ヒドロキシ酪酸(C4)、4-ヒドロキシ吉草酸(C5)、5-ヒドロキシ吉草酸(C5)、6-ヒドロキシカプロン酸(C6)などが挙げられる。なお、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が不斉炭素を有する場合、L体、D体、およびその混合物(ラセミ体)のいずれであってもよい。炭素原子数が2~4のジカルボン酸としては、シュウ酸(C2)、マロン酸(C3)、コハク酸(C4)、グルタル酸(C5)、アジピン酸(C6)などが挙げられる。ジアルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0038】
また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のホモポリマー(たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸)およびコポリマー(たとえば乳酸とグリコール酸とのコポリマー);脂肪族ジアルコールと脂肪族ジカルボン酸とのコポリマー(たとえばポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ブタンジオールとコハク酸およびアジピン酸とのコポリマー、エチレングリコールおよびブタンジオールとコハク酸とのコポリマー);脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジアルコールおよび/または脂肪族ジカルボン酸とのコポリマー(たとえばポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブロックコポリマー)のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。

【0039】
脂肪族ポリエステル樹脂(A)のGPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましい。重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましい。分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0040】
・親水性高分子(B)ブロック
ジブロック共重合体(C)のもう一方の構成単位の原料となる親水性高分子(B)としては、脂肪族ポリエステル樹脂(A)ブロックと結合しうる各種の親水性高分子を用いることができる。たとえば、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール:PEG)、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの親水性高分子は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0041】
親水性高分子(B)のGPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましい。重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましい。分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0042】
本発明では、ジブロック共重合体(C)における脂肪族ポリエステル樹脂(A)ブロックの分子鎖の長さと親水性高分子(B)ブロックの分子鎖の長さを変化させる、換言すればジブロック共重合体(C)のHLB値を変化させることにより、得られる多孔質微粒子の細孔径等を調節することができる。

【0043】
たとえば、親水性高分子(B)ブロックの分子鎖の長さを比較的長くする、つまり合成の原料として用いた脂肪族ポリエステル樹脂(A)のMnに対する親水性高分子(B)のMnの比率を比較的大きくする、換言すればジブロック共重合体(C)のHLB値を比較的大きくすると、多孔質微粒子の細孔径を比較的大きくすることができる。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)ブロックの長さと親水性高分子(B)ブロックの長さの比率(HLB値)が同一であっても、親水性高分子(B)ブロックがより長い方が、細孔径は大きくなり、細孔数は減少する。

【0044】
・調製方法
ジブロック共重合体(C)は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)および親水性高分子(B)を公知の方法に従って合成することにより調製できる。この際の脂肪族ポリエステル樹脂(A)と親水性高分子(B)の構成比率は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B)由来のブロックの重合度が0.1~100,000部となるような範囲が好ましい。上記の重合度は、ジブロック共重合体(C)の合成の際の脂肪族ポリエステル樹脂(A)および親水性高分子(B)の添加量によって調整することができる。

【0045】
また、HLB値としては0.4以上20未満が好ましい。なお、本発明におけるHLB値は、下記式で表されるグリフィン法により定義される:
HLB=20×(親水性高分子(B)のMn)/(ジブロック共重合体(C)のMn)。

【0046】
ジブロック共重合体(C)のGPCで測定した数平均分子量Mnは500~200,000が好ましい。重量平均分子量Mwは500~200,000が好ましい。分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0047】
・混合物
本発明の多孔質中空微粒子の製造に用いるジブロック共重合体(C)は、1種単独のジブロック共重合体からなるものであっても、2種以上のジブロック共重合体からなる混合物であってもよい。ジブロック共重合体(C)が1種単独のジブロック共重合体である場合、そのジブロック共重合体は、通常、本発明の製造方法の工程(1)で有機溶媒に溶解して用いるもの、通常は脂溶性ジブロック共重合体(C1)に該当する。一方、ジブロック共重合体(C)が2種以上のジブロック共重合体からなる混合物である場合、少なくとも1種は、工程(1)で有機溶媒に溶解して用いる脂溶性ジブロック共重合体(C1)であり、少なくとも1種は、工程(2)で混合物に添加して(通常はあらかじめ水に溶解して)用いる水溶性ジブロック共重合体(C2)であることが好ましい。

【0048】
油溶性ジブロック共重合体(C1)とは、たとえば、HLB値が0.4以上12以下であるジブロック共重合体をいう。一方、水溶性ジブロック共重合体(C2)とは、たとえば、HLB値が8以上20未満であり、かつ油溶性ジブロック共重合体(C1)よりも少なくとも2大きい値、好ましくは少なくとも4大きい値を有するジブロック共重合体をいう。

【0049】
上記の所定のHLB値を有する油溶性ジブロック共重合体(C1)および水溶性ジブロック共重合体(C2)は、原料として用いる脂肪族ポリエステル樹脂(A)および親水性高分子(B)の性状や使用量を調整することにより製造することができる。たとえば、脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックの重合度100部に対して、親水性高分子(B)由来のブロックの重合度が0.1~100部となる範囲で調整することにより、油溶性ジブロック共重合体(C1)を調製できる。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックの重合度100部に対して、親水性高分子(B)由来のブロックの重合度が100(好ましくは400、より好ましくは1,000)~100,000部の割合となる範囲で調整することにより、水溶性ジブロック共重合体(C2)を調製できる。

【0050】
なお、本発明において、「油溶性」ジブロック共重合体(C1)および「水溶性」ジブロック共重合体(C2)という概念は相対的なものであり、選択された水相や油相(有機溶媒)との溶解性の関係や、工程(1)で用いるジブロック共重合体と工程(2)で用いるジブロック共重合体とを比較してどちらがより油溶性または水溶性の性質が強いかという関係性にも左右されることがある。たとえば、酢酸エチルは一定程度水に溶解し、それにともない酢酸エチル中のジブロック共重合体の水に対する溶解性も上がる場合があるため、HLBがやや低めのジブロック共重合体であっても水溶性ジブロック共重合体として取り扱えることがある。

【0051】
ジブロック共重合体(C)が、油溶性ジブロック共重合体(C1)および水溶性ジブロック共重合体(C2)を含む混合物である場合、それらの割合は、油溶性ジブロック共重合体(C1)100重量部に対して、水溶性ジブロック共重合体(C2)が通常は100~1,000,000重量部、好ましくは100~100,000重量部である。

【0052】
- 多孔質微粒子の製造方法 -
本発明の多孔質微粒子は、以下に述べる工程(1)~(3)を含む(必要に応じてその他の工程が組み合わされてもよい)方法により製造することができる。かかる製造方法は、基本的には公知の多孔質微粒子の製造方法に準じたものであり、同様の製造装置類を用いて行うことができる。

【0053】
・工程(1)
第1の工程では、ジブロック共重合体(C)を、飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい有機溶媒と混合する。ここで、「飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい有機溶媒」には、以下に述べるように、飽和溶解量以下ではあるが0ではない量の水を含む態様の有機溶媒と、水を全く含まない(0の量の水を含む)態様の有機溶媒とが包含される。

【0054】
有機溶媒が水を含むものの、有機溶媒に対する水の割合をその有機溶媒に対する水の飽和溶解量以下とした場合、W/Oエマルション(逆ミセル)は形成されず、混合により水が有機溶媒に溶解することとなる。たとえば、酢酸エチル100mLに対する水の飽和溶解量は約2.5mLであるので、水の添加量をこの割合以下とすることにより、水およびジブロック共重合体(C)が酢酸エチルに溶解した溶液が得られる。この場合、通常はジブロック共重合体(C)をあらかじめ有機溶媒と混合して溶解させておき、この溶液を撹拌しながら水を添加して混合し、溶解させるという操作が行われる。また、有機溶媒が水を全く含まなくてもよく、その場合はジブロック共重合体(C)のみが有機溶媒に溶解した溶液が得られる。これらいずれか態様の溶液を用いて、続く二次乳化工程でO/Wエマルションを形成させ、さらに有機溶媒を留去すると、中空部を有する多孔質微粒子が得られる。

【0055】
このような飽和溶解量以下の水を含んでいてもよい有機溶媒を工程(1)で用いることから、それと混合するジブロック共重合体(C)は、有機溶媒に溶解しやすい、前述したような油溶性ジブロック共重合体(C1)を用いることが好ましい。

【0056】
なお、この処理において、有機溶媒に対する水の割合をその有機溶媒に対する水の飽和溶解量よりも大きくした場合、この工程はいわゆる「一次乳化工程」となり、W/O(水相-油相)エマルションが形成される。このW/Oエマルションを用いて、続く二次乳化工程でW/O/Wエマルションを形成させ、さらに有機溶媒を留去すると、得られる多孔質微粒子は通常中空部を有さないものとなる。

【0057】
工程(1)で用いる有機溶媒は、脂肪族ポリエステル樹脂(A)またはジブロック共重合体(C)を溶解しうるエステル(酢酸エチルなど)、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素(クロロホルムなど)、芳香族化合物(トルエン,ベンゼン,キシレンなど),アルコール,ミネラルオイル,シリコンオイル,炭酸エステルなどの中から適切なものを用いることができる。特に、油溶性ジブロック共重合体(C1)を溶解し、エステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物およびアルコールからなる群から選ばれた少なくとも1種のハロゲンを有さない有機溶媒、つまりハロゲン化炭化水素やその他のハロゲンを有するエステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物、アルコール等の化合物を一切含まない有機溶媒が好ましい。

【0058】
工程(1)における乳化方法としては、撹拌、超音波、ホモジナイザー、マイクロリアクター、マイクロチャンネル、多孔質膜などを用いる、各種の公知の乳化方法を採用することができる。また、それらの乳化方法の操作条件(たとえば撹拌であれば、撹拌翼の回転速度、撹拌時間など)は、従来の多孔質微粒子の製造方法で用いられている一次乳化処理に準じて、適宜調整すればよい。有機溶媒に添加するジブロック共重合体(C)の量も当業者であれば適切に調整できるものであり、工程(1)の有機溶媒の量および工程(2)の水の量を考慮して、また工程(2)でさらにジブロック共重合体を添加するならばその量も考慮して、適切なエマルションおよび最終的な多孔質微粒子が形成される量とすればよい。

【0059】
・工程(2)
第2の工程では、上記工程(1)による調製物と、水と、必要に応じてさらなるジブロック共重合体(C)との混合物を乳化する。通常は、必要に応じてさらなるジブロック共重合体(C)が溶解した水に上記工程(1)による調製物を添加しながら乳化するという操作が行われる。

【0060】
多孔質中空微粒子を製造する場合、上記工程(1)による調製物は前述のように、ジブロック共重合体(C)と飽和溶解量以下の水(0の場合を含む)とが溶解した有機溶媒溶液であり、工程(2)ではその溶液と水との混合物を乳化することにより、O/W(油相-水相)エマルションが形成される。

【0061】
なお、飽和溶解量よりも多い水を添加したために上記工程(1)による調製物が溶液ではなくW/Oエマルションである場合、工程(2)はいわゆる「二次乳化工程」となり、W/Oエマルションと水との混合物を乳化することにより、W/O/W(水相-油相-水相)エマルションが形成される。

【0062】
工程(2)においても、前記のような各種の公知の乳化方法を採用することができ、またそのための操作条件(たとえば撹拌による場合は撹拌翼の回転速度、撹拌時間など)も、従来の多孔質微粒子の製造方法で用いられている(二次)乳化処理に準じて、適宜調整すればよい。

【0063】
工程(2)では、前記工程(1)で用いたジブロック共重合体(特に油溶性ジブロック共重合体(C1))と同一のまたは相違するジブロック共重合体(特に水溶性ジブロック共重合体(C2))を、前記混合物に添加して乳化してもよい。つまり、本発明の製造法では、工程(1)で有機溶媒に添加したジブロック共重合体だけでも本発明の多孔質微粒子を形成することができるが、必要に応じてそれと同一または相違するジブロック共重合体を工程(2)でさらに添加して、それら両方のジブロック共重合体で本発明の多孔質微粒子を形成するようにしてもよい。

【0064】
たとえば、工程(1)で油溶性ジブロック共重合体(C1)を有機溶媒に溶解しておき、工程(2)で、脂肪族ポリエステル樹脂(A)由来のブロックに対する親水性高分子(B)由来のブロックの長さの比がその油溶性ジブロック共重合体(C1)よりも大きい(つまりHLB値がより大きい)、水溶性ジブロック共重合体(C2)を用いることが好ましい。ジブロック共重合体として性質の異なる少なくとも2種類のものを用いることにより、得られる多孔質微粒子の性状(細孔径、細孔数など)をより細かく、さらに好適なものに調節することも可能となる。

【0065】
工程(2)で水溶性ジブロック共重合体(C2)を用いる場合、通常、工程(1)の調製物(溶液)を添加する水にあらかじめ溶解させておくようにする。また、工程(2)で用いる水溶性ジブロック共重合体(C2)の添加量は、工程(1)で用いた油溶性ジブロック共重合体(C1)の量との関係が、前述したような混合物中の割合を満たすようなものとすればよい。

【0066】
・工程(3)
第3の工程では、上記工程(2)で調製したエマルション(多孔質中空微粒子を製造する場合は通常O/Wエマルション)から有機溶媒を留去することにより多孔質微粒子を形成させる。たとえば、エマルションを撹拌しつつ加温または減圧する液中(水中)乾燥法を用いて有機溶媒を留去すると、脂肪族ポリエステル樹脂(A)またはジブロック共重合体(C)が析出して樹脂化し、多孔質微粒子が形成される。この工程における加熱温度、減圧幅、処理時間、その他の操作条件は、従来の従来の多孔質微粒子の製造方法で用いられている液中乾燥法に準じて、適宜調整すればよい。

【0067】
- 多孔質微粒子の用途 -
本発明の多孔質微粒子の用途は特に限定されるものではないが、従来の多孔質微粒子が用いられている徐放性医薬、徐放性農薬、固定化酵素・固定化微生物(バイオリアクター)、化学反応、動物細胞培養など多様な分野において、医薬、農薬、酵素・微生物、触媒、動物細胞などを保持するための、あるいは分離材料とするための、担体ないしカプセルとして使用することができる。

【0068】
たとえば、多孔質中空微粒子は内部に薬物の貯蔵槽となる中空部を保有しつつ、その薬剤類を徐放することのできる多孔質の外層部を備えたものといえるため、従来よりも長時間の薬物の徐放が可能で、時限的に徐放挙動が変わる(たとえば徐放開始から一定時間経過後に粒子が壊れ一挙に薬物を放出する)など、特異な性質を有する薬物担体ないしカプセルとして用いることができる。

【0069】
なお、ジブロック共重合体(C)の親水性の部位が配向した中空部には、親水性化合物を内包させることができ、一方疎水性の部位が配向している外層部(微細孔内部)には疎水性化合物を保持させることができる。また、たとえばポリ乳酸とポリエチレングリコール(PEG)を合成して得られたジブロック共重合体は、生体内における安全性も高く、表面がPEGで覆われているため抗原性がなく生体親和性に優れているため、そのようなジブロック共重合体により形成された多孔質微粒子は、特に体内に投与される医薬品としての用途に適している。

【0070】
多孔質中空微粒子は、多孔質のカプセル膜と中空部とを有する構造であることから、カプセル内部の溶液の交換が極めて迅速で容量も大きいものと考えられる。そのため、高い比表面積を活かして酵素や化学反応用触媒を固定化する担体として好適であるのみならず、酵素反応または化学反応による各種の処理を効率的に行う(バイオ)リアクターとしても応用できる。多孔質中空微粒子の質量あたりの溶液内封量は従来の中空でない多孔質微粒子に比べて大きいため、溶液中からの稀少資源の濃縮用材料としても好適である。さらに、本発明の多孔質中空微粒子は生体適合材料によって形成されており、中空部は比較的広い空間であるため、微生物や動物細胞の増殖などにも有用である。
【実施例】
【0071】
(HLB値10のジブロック共重合体の合成)
MeO-PEG (Mn = 4,000, Mw/Mn = 1.06) を開始剤とするD,L-lactideの開環重合にてジブロック共重合体の合成を行った。この際、MeO-PEG濃度を3 mol%として、仕込み量10 gのスケールで重合を行った。重合の触媒として、Tin (II) 2-ethylhexanoate / toluene (濃度0.4 g/ 5 mL)溶液を50 μL用いた。重合は、オイルバス中で130℃、24時間行った。得られた生成物はクロロホルムに溶解させ、ヘキサンに再沈殿させることで触媒を生成物から除去した。また、2-プロパノールに再沈殿させることで、未反応モノマーを除去し、その後、遠心分離 (15,000 rpm, 5 min)によって生成物を回収した。回収後の生成物を1晩減圧乾燥させることで、ジブロック共重合体(Mn = 8,000, Mw/Mn = 1.08)を得た。収率は68.9 wt%であった。
【実施例】
【0072】
(HLB値18.2のジブロック共重合体の合成)
MeO-PEG (Mn = 4,000, Mw/Mn = 1.06)を開始剤とするD,L-lactideの開環重合にてジブロック共重合体の合成を行った。この際、MeO-PEG濃度を15 mol%として、仕込み量10 gのスケールで重合を行った。重合の触媒としてはTin (II) 2-ethylhexanoate / toluene (濃度0.4 g/ 5 mL)溶液を50 μL用いた。重合は、オイルバス中で130℃、24時間行った。得られた生成物はクロロホルムに溶解させ、ヘキサンに再沈殿させることで触媒を生成物から除去した。また、2-プロパノールに再沈殿させることで、未反応モノマーを除去し、その後、遠心分離 (15,000 rpm, 5 min)によって生成物を回収した。回収後の生成物を1晩減圧乾燥させることで、ジブロック共重合体(Mn = 4,400, Mw/Mn = 1.05)を得た。収率は73.3 wt%であった。
【実施例】
【0073】
実施例1(O/Wエマルションでの調製)
酢酸エチルへHLB値10のジブロック共重合体(Mn = 8,000, Mw/Mn = 1.08)を1 wt%となるように溶解させた溶液を油相溶液とした。その溶液8 mLを、HLB値18.2のジブロック共重合体(Mn=4,400,Mw/Mn=1.05)を1wt%となるように溶解させた酢酸エチル飽和水溶液300mLの入っている三つ口フラスコに注いだ(そのとき外水相は撹拌翼によって250rpmで撹拌されており、外水相の入った三つ口フラスコはウォーターバスで50℃に保っていた)。
【実施例】
【0074】
O/Wエマルションを調製後、減圧下で4時間液中乾燥を行うことで酢酸エチルを留去し、微粒子を調製した。液中乾燥後、遠心分離(11,000rpm,3min)により、固体を回収し、さらに超純水で3回洗浄を行った。得られた固体を少量の超純水に分散させ、液体窒素を使って凍結させた。そのまま凍結乾燥器で1晩乾燥させることで、多孔質中空微粒子を得た(図1[a]参照)。
【実施例】
【0075】
実施例2(油相が飽和溶解量以下の水を含むO/Wエマルションでの調製)
酢酸エチルへHLB値10のジブロック共重合体(Mn=8,000,Mw/Mn=1.08)を1wt%となるように溶解させた溶液を油相溶液とした。その溶液8mLに超純水を0.1mL加え、ホモジナイザーで処理した(8,000rpm,2min)。その油相溶液を、あらかじめ準備しておいたHLB値18.2のジブロック共重合体(Mn=4,400,Mw/Mn=1.05)を1wt%になるように溶解させた酢酸エチル飽和水溶液300mLの入っている三つ口フラスコに注いだ(そのとき外水相は撹拌翼によって250rpmで撹拌されており、外水相の入った三つ口フラスコはウォーターバスで50℃に保っていた)。
【実施例】
【0076】
エマルションを調整後、減圧下で、4時間液中乾燥を行うことで、酢酸エチルを留去し、微粒子を調製した。液中乾燥後、遠心分離(11,000rpm,3min)により、固体を回収し、さらに超純水で3回洗浄を行った。得られた固体を少量の超純水に分散させ、液体窒素によって凍結させた。そのまま凍結乾燥器で1晩乾燥させることで、多孔質中空微粒子を得た(図1[b]参照)。
【実施例】
【0077】
参考例1
ホモジナイザーで処理する際、油相溶液8mLに超純水を飽和溶解量より多い1mL加えてW/Oエマルションが調製されるようにしたこと以外は上記実施例2と同様にして多孔質微粒子を調整した(図1[c]参照)。得られた多孔質微粒子は中空部を有さないものであった。
【実施例】
【0078】
参考例2
ホモジナイザーで処理する際、油相溶液8mLに超純水を飽和溶解量より多い2.5mL加えてW/Oエマルションが調製されるようにしたこと以外は上記実施例2と同様にして多孔質微粒子を調製した(図1[d]参照)。得られた多孔質微粒子は中空部を有さないものであった。
図面
【図1】
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