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明細書 :免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2012-515766 (P2012-515766A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成24年7月12日(2012.7.12)
特許番号 特許第5569946号 (P5569946)
登録日 平成26年7月4日(2014.7.4)
発行日 平成26年8月13日(2014.8.13)
発明の名称または考案の名称 免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤
国際特許分類 A61K  39/395       (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
FI A61K 39/395 D
A61K 39/395 U
A61P 3/10
請求項の数または発明の数 4
全頁数 32
出願番号 特願2011-547342 (P2011-547342)
出願日 平成22年1月26日(2010.1.26)
国際出願番号 PCT/JP2010/051306
国際公開番号 WO2010/084999
国際公開日 平成22年7月29日(2010.7.29)
優先権出願番号 2009014139
優先日 平成21年1月26日(2009.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年1月28日(2013.1.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】和田 淳
【氏名】神崎 資子
【氏名】八木田 秀雄
【氏名】棚井 丈雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100135415、【弁理士】、【氏名又は名称】中濱 明子
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
審査官 【審査官】加藤 文彦
参考文献・文献 特開2004-244411(JP,A)
特開2003-189874(JP,A)
特表2008-500013(JP,A)
国際公開第2008/060617(WO,A1)
The Journal of experimental medicine,2007年,Vol.204, No.6,p.1289-1294
Science,2007年,Vol.318, No.5953,p.1141-1143
調査した分野 A61K 39/395
A61P 3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
抗Tim-3抗体及び/または抗ガレクチン-9抗体を有効成分とする、ヘルパーT細胞サブタイプ1(Th1)が関与する1型糖尿病の予防および治療剤。
【請求項2】
抗Tim-3抗体を有効成分とする請求項1記載の予防および治療剤。
【請求項3】
抗ガレクチン-9抗体を有効成分とする請求項1記載の予防および治療剤。
【請求項4】
抗Tim-3抗体が、ガレクチン-9によるTh1細胞のアポトーシスを誘導しない低濃度のガレクチン-9存在下で、ガレクチン-9によるTh1細胞アポトーシス誘導を増強することを特徴とする、請求項2に記載の予防および治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤に関する。本発明はさらに、免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫機構は先天性免疫と獲得免疫からなり、協調的、かつ効率的に病原体の侵入から生体を防御している。さまざまなレクチンファミリーがこの免疫機構に関与していることが明らかにされている。免疫に関与しているほとんどのレクチンは膜結合タンパク質であるが、ガレクチンはその例外であり、興味深い存在である。ガレクチンは、β-ガラクトシド構造を認識する糖鎖認識ドメイン(carbohydrate recognition domain, CRD)を有するレクチンファミリーとして定義されている。
【0003】
ガレクチンファミリーは、現在1 ~ 14までが同定されている。ガレクチンファミリーにはその分子中に1つのCRDを持つガレクチンと2つのCRDを持つガレクチンが存在し、またそのCRD構造としてPrototype (CRDが一つのガレクチン-6, 7, 10; 2つのCRDがホモダイマーとして結合したもの ガレクチン-1, 2, 11, 13, 14)、Chimeric type(ガレクチン-3)およびTandem-repeat type (ガレクチン-4, 6, 8, 9, 12)の3つタイプがあることが知られている。ガレクチン-9はその分子中に2つのCRDが架橋ペプチドを介してタンデムに存在するTandem -repeat type に属するガレクチンである。
【0004】
ヒトガレクチン-9は「ホジキンリンパ腫」患者の自己抗体を用いて脾臓cDNAライブラリーから単離された(Sahin U., et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 11810-11813, 1995.)。これとは独立してヒトガレクチン-9のマウスおよびラット相同遺伝子が腎臓のcDNAライブラリーからクローニングされた(Wada J. and Kanwar YS.: J. Biol. Chem. 272: 6078-6086, 1997)。
【0005】
ガレクチンは生合成後、通常の分泌タンパク質のように古典的分泌経路に入らず、免疫反応が始動されるべき時に、細胞外に能動的又は受動的に放出されることが知られている。細胞外に分泌されたガレクチンは、オートクラインに分泌した細胞に結合するか、パラクラインに近傍の細胞に結合し、免疫系細胞上のガレクチン結合因子、あるいはガレクチン受容体と架橋することにより、種々の免疫反応を誘起する。可溶性のガレクチンは細胞表面上にあるガレクチン結合因子、あるいはガレクチン受容体を少なくとも3通りの様式で架橋することができる。すなわち、細胞接着(cell-cell interaction)、アゴニスト的なシグナル伝達(signal transduction)、そしてガレクチン-複合糖鎖の格子の形成(Formation of galectin-glycoconjugate lattice)である。ガレクチンの特徴は、他のサイトカインと異なり、白血球への作用因子として、また白血球の接着分子として機能すること、そしてガレクチン-複合糖鎖格子を形成することであり、このガレクチン格子の免疫学的な重要性が近年注目されている。
【0006】
免疫反応や炎症反応の過程では、まず、白血球が炎症局所に引き寄せられる。その局所では、白血球は侵入した外来細胞又は病原体や死細胞を貪食する。さらに殺細胞性因子、あるいは殺菌性因子や免疫カスケードを活性化するサイトカインを分泌する。これらの過程で、個体保全、あるいは免疫応答を終焉させるため、損傷を受けた白血球や活性化T細胞のサブセット(Th1やTh2など)の一部にアポトーシスが誘導される。ガレクチン-9はヘルパーT細胞のサブセットであるTh1細胞に作用してアポトーシスを誘導することが明らかにされている。また、炎症局所や感染巣には、白血球、たとえば、好中球、マクロファージやリンパ球が血流から浸潤する。ガレクチン-3は単球、マクロファージに対する走化性因子であり、またガレクチン-9は好酸球特異的な走化性因子として知られている。
【0007】
ガレクチン-9の生物活性としては、マウスにおいてガレクチン-9は胸腺細胞のアポトーシスを惹起することが知られている(Wada J., et al.: J. Clin. Invest. 99: 2452-2461, 1997)。また、ガレクチン-9の有用な生物活性として、悪性腫瘍細胞に対する細胞障害活性、悪性腫瘍細胞に対してアポトーシス誘導活性、活性化T細胞のアポトーシス誘導活性、特にCD4陽性T細胞のアポトーシス誘導活性、免疫抑制活性、抗炎症作用、抗アレルギー作用など多様な活性を発現することが開示されている(特開2004-244411)。さらに、ガレクチン-8, ガレクチン-9, ガレクチン-10およびガレクチン-10SVタンパク質をコードする核酸分子およびそれらのガレクチンの癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、喘息およびアレルギー性疾患などへの適用が特許出願されている(特表2001-501831)。
【0008】
これらのガレクチン-9の生物活性の発現機序については、あまりよくわかっていなかった。特に、ガレクチン-9が結合し、そのシグナルを伝達する細胞膜タンパク質、すなわちガレクチン-9結合分子(ガレクチン-9受容体)は未同定であった。
【0009】
ガレクチン-9の結合タンパク質(ガレクチン-9受容体)の探索・同定法には、1) ガレクチン-9タンパク質を固定化したアフィニティカラム法、2) 免疫沈降法、3) ウエスタンブロット法、4)分子間架橋法、5)ツーハイブリッド法、6) Tandem affinity purification (TAP)法 (Puig O., et al.: Methods 24: 218-229, 2001.)、表面プラズモン共鳴法などがある。
【0010】
ガレクチン-9によるアポトーシス関連ガレクチン-9結合タンパク質(ガレクチン受容体も含まれる)を探索・同定するために、ガレクチン-9CT (C末端領域)を固定化したカラムにガレクチン-9によりアポトーシスを起こす癌細胞株MOLT4の細胞破砕液を通液し、回収したタンパク質をSDS-PAGEに負荷して、得られたタンパクバンドゲル片について、タンパク質の内部アミノ酸配列を解析することによりガレクチン-9結合分子が同定されている(特開2004-244411)。それによると、4F2 heavy chain antigen (177216)、ATP ase, Na+/K+ transporting, alpha 1 polypeptide (21361181)などを含めて数十種類に及ぶガレクチン-9結合タンパク質が同定されている(特開2004-244411)。このようにガレクチン-9結合タンパク質が多数存在するということは、ガレクチン-9の結合特異性が非常に低いことを示唆している。
【0011】
一方、Tヘルパー細胞タイプ1(Th1)特異的細胞表面タンパク質であるTim-3 (T-cell immunoglobulin and mucin domain protein; 別名 Hepatitis A virus cellular receptor 2)はTh1の応答を制御するタンパク質であるが、そのリガンドは不明であった。2005年にTim-3のリガンドがガレクチン-9であることが同定された(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005)。それによると、Tim-3とイムノグロブリンFc (Ig)との融合タンパク質 (Tim-3-Ig)を調製し、細胞表面をビオチン化したCD8+マウスリンパ腫細胞株TK-1の破砕液に加えて、4℃でインキュベートする。ついで、Tim-3-Igとそれに特異的に結合したタンパク質との複合体をプロテインG-アガロースビーズで沈降させ、ビーズをよく洗浄後、1 x SDS-PAGEバッファーで煮沸する。その上清を遠心分離で集め、SDS-PAGEに負荷したところ特異的な単一タンパクバンドの出現がみとめられ、質量分析によりガレクチン-9と同定された。さらに、ガレクチン-9はTim-3への結合を介してシグナル伝達し、Th1細胞のアポトーシスを誘導し自己免疫抑制活性を発現することから、ガレクチン-9が受容体Tim-3のリガンドであることが実証された(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005.)。
【0012】
前述の先行技術 (特開2004-244411)において同定された数十種類のガレクチン-9結合タンパク質には、Tim-3が含まれていないことから、Tim-3がガレクチン-9の受容体であることが明らかにされたのは、2005年に報告された本論文が最初である。
【0013】
ガレクチン-9はin vitroで細胞表面の受容体Tim-3に結合し、Th1細胞の細胞内カルシウム流入、凝集および細胞死を誘導する。さらに、ガレクチン-9のin vivo投与はインターフェロンγ産生細胞の選択的欠損およびTh1自己免疫抑制を引き起こすことが明らかにされている(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005.)。
【0014】
CD4陽性ヘルパーT細胞の亜集団には、サイトカインとしてインターフェロンγを産生するTh1細胞とIL-4やIL-5を産生するTh2細胞が存在し、Th1は細胞性免疫を惹起し、Th2は液性免疫(抗体産生)を誘導し、即時性免疫応答に関与している。アレルギー疾患などの免疫抑制剤としてステロイドホルモンが用いられているが副作用が強いことから、その使用においては、副作用への対慮が必要である。ガレクチン-9を含め、ステロイドホルモンに代わる副作用の少ない新しい免疫抑制剤の開発が望まれている。
【0015】
さらに、自己免疫疾患の一つである1型糖尿病発症には、樹状細胞の活性化、その下流にあるTh1細胞の活性化およびTh1サイトカインの産生が重要であり、その結果ランゲルハンス氏島炎によりインスリン分泌低下をきたす。1型糖尿病の免疫異常を治療ターゲットとした従来の技術には「1型糖尿病の処置のための治療的ワクチン組成物 (特許公報2006-526651)や「1型糖尿病において罹患性病原性T細胞により標的とされる抗原ならびにこれの使用」(特許公表2006-525813)がある。これら従来技術では、自己免疫疾患における免疫異常の具体的なターゲットが同定されておらず、効果が乏しく実用化には至っていない。
【0016】
活性化Th1細胞が関与する自己免疫疾患には全身性に自己免疫反応が起こって発症する全身性エリトマトーデスや限られた特定の臓器で自己免疫現象が惹起される1型糖尿病をはじめ関節リウマチ、シェーグレン症候群など数多くの自己免疫疾患が存在するが、有効な予防および治療法が確立されていない状況にあり、ガレクチン-9を含め、有効な新薬の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】特開2004-244411
【特許文献2】特表2001-501831
【特許文献3】特表2006-526651
【特許文献4】特表2006-525813
【0018】

【非特許文献1】Sahin U., et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 11810-11813, 1995.
【非特許文献2】Wada J. and Kanwar YS.: J. Biol. Chem. 272: 6078-6086, 1997.
【非特許文献3】Wada J., et al.: J. Clin. Invest. 99: 2452-2461, 1997.
【非特許文献4】Puig O., et al.: Methods 24: 218-229, 2001.
【非特許文献5】Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、ガレクチン-9 をリガンドとし、その受容体であるTim-3 への結合を介するシグナル伝達(ガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達経路)を遮断する物質が、in vivo薬効試験で予想外に強力な自己免疫抑制活性を発現することを見出し、当該物質によって、自己免疫を抑制することにより、1型糖尿病を始めヘルパーT細胞サブタイプ1(Th1)が関与する多くの自己免疫疾患の予防および治療のための薬剤及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、ガレクチン-9の受容体がTim-3であることが明らかにされたので、後述の実施例に示したように、ガレクチン-9はin vivoでもTh1が関与する自己免疫を抑制するかどうか調べた。Th1が関与する自己免疫疾患の一つである1型糖尿病を自然発症するモデルマウス(NODマウス)におけるガレクチン-9による発症抑制効果を調べた。その結果、予想された通り、ガレクチン-9投与群はPBS投与対照群にくらべて、有意(p= 0.048)な発症抑制効果、すなわち自己免疫抑制効果を発揮した。また、44週齢まで糖尿病を発症しなかったガレクチン-9非投与群(対照群)と投与群において膵臓ランゲルハンス氏島(以下、膵島と称する)におけるインスリンの発現を比較したところ、ガレクチン-9投与群では膵島での明確なインスリン発現が認められたが、ガレクチン-9非投与群では膵島内への細胞浸潤が激しく、インスリン分泌が著明に低下していたことから、組織学的にもガレクチン-9の糖尿病発症抑制効果が確認された。
【0021】
さらに、ガレクチン-9の作用細胞をフローサイトメトリ(Flow Cytometry)で調べたところ、ガレクチン-9はNODマウスの成熟Th1 (CD4+Tim-3+)のアポトーシスを誘導する傾向が見られた。
【0022】
そこで、後述の実施例に示したように、本発明者らはガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達経を遮断する物質はNODマウスの1型糖尿病発症を促進するはずであることを確かめるために、ガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達経路を遮断する抗ガレクチン-9抗体、および抗Tim-3抗体を作製し、それぞれの投与のNODマウスの1型糖尿病発症に及ぼす効果を調べた。その結果、抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体は、予想外にNODマウスの1型糖尿病発症を強力に抑制する効果を発揮することを見出した。しかも、同時に実施した対照のガレクチン-9投与群における1型糖尿病発症抑制効果と比べて、抗ガレクチン-9抗体投与群はほぼ同等であったが、抗Tim-3抗体投与群ははるかに高い薬効を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
ガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達は、Th1細胞のアポトーシスを誘導し、自己免疫を抑制することが明らかにされている(Zhu C., et. al., Nature Immunology 6: 1245-1252, 2005)。この事実に基づけば、ガレクチン-9はTh1細胞にアポトーシスを誘導することにより、自己免疫を抑制することを示唆している。後述の実施例に示すように、ガレクチン-9は実際にin vivoにおいてもTh1細胞が関与する自己免疫疾患である1型糖尿病発症を抑制する効果を有し、in vivoにおいてもガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達系が働いていることが確認された。
【0024】
したがって、in vivoでも働いているガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達系を遮断する抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体は、NODマウスの1型糖尿病発症を促進するはずであるが、意外なことに、それぞれガレクチン9と比べて同等およびはるかに高い発症抑制効果を発現した。
【0025】
本発明者らは、in vivoでこの予想外の効果が発現したメカニズム、あるいはその原因については、現在のところ良くわかっていないが、以下のように考えている。
【0026】
本発明者らは、ガレクチン-9は活性化Th1細胞にアポトーシスを誘導する以外に、抗原提示細胞である樹状細胞からのTNF-αの産生を亢進させることを確認した。また、ガレクチン-9はTNF-αの産生を介して炎症を惹起することが報告されている(Anderson AC., et al.: Science 318: 1141-1143, 2007)。したがって、異なった細胞へのガレクチン-9の作用は、炎症のプロセスに対して活性化Th1細胞では抑制的に、樹状細胞では促進的に働いている。そのためガレクチン-9投与そのものによる1型糖尿病発症抑制効果と抗ガレクチン9抗体投与によるガレクチン-9の樹状細胞を介する炎症プロセスの抑制による治療効果とがほぼ同等であったと説明される。
【0027】
一方、抗Tim-3抗体がより強力にその治療効果を発揮したことは、
(1)Tim-3のリガンド結合にはガレクチン-9以外の結合、すなわちガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達系以外の経路が存在し、抗Tim-3抗体はそれらの経路を遮断していること、
および
(2)樹状細胞上のTim-3経路は炎症メカニズムの上流にあり、それを遮断することが自己免疫疾患の治療に重要であること
を明らかにしたものである。
【0028】
さらに、本発明におけるガレクチン-9 - Tim-3シグナル伝達経路の遮断する物質としては、抗体以外にRNAおよびDNAアプタマーも含まれる。アプタマーは抗体と同様にタンパク質を認識する物質として注目されており、抗体に比べて化学的に同じものを人工合成することができ、抗原性もほとんどなく、かつ安価に供給できるという特徴がある。本発明における免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤の有効成分は、(1)ガレクチン-9に特異的に結合し、Tim-3との結合を阻害する、(2)Tim-3に特異的に結合し、ガレクチン-9との結合を阻害する、RNAおよびDNAアプタマーであることを特徴とする。
【0029】
ガレクチン-9 に特異的に結合するRNAおよびDNAアプタマーについて、ガレクチン-9とTim-3との結合性に与える影響を評価し、ガレクチン-9とTim-3との結合を阻害するアプタマーを選別することにより、本発明の上記(1)のRNAおよびDNAアプタマーを得ることができる。また、Tim-3に特異的に結合するRNAおよびDNAアプタマーについて、さらにガレクチン-9とTim-3の結合性に与える影響を評価し、ガレクチン-9とTim-3との結合を阻害するRNAおよびDNAアプタマーを選別することにより、本発明の上記(2)のRNAおよびDNAアプタマーを得ることができる。
【0030】
さらに、本発明におけるガレクチン-9 — Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質として、抗ガレクチン-9抗体、抗Tim-3抗体、RNAおよびDNAアプタマーだけでなく、低分子化合物も含まれる。ガレクチン-9はその受容体であるTim-3への結合を介してその生物活性を発揮することから、上記シグナル伝達経路を遮断する低分子化合物としては、(1)ガレクチン-9に結合し、ガレクチン-9のTim-3への結合を阻害する、(2)ガレクチン-9よりもTim-3への結合親和性が高く、ガレクチン-9のTim-3への結合を競合的に阻害する、および(3)Tim-3に強固に結合することによりTim-3の立体構造変化を誘導し、ガレクチン-9の結合能だけではなく、受容体機能を破壊する低分子化合物であっても差し支えない。その中でも、(3)の低分子化合物は、抗Tim-3抗体と同様な高い自己免疫抑制効果を発揮する可能性の高い低分子化合物として有用である。
【0031】
自己免疫疾患には、自己免疫反応が全身に起こる全身性エリトマトーデスから自己免疫反応が限局された部位、たとえば膵島で起こる1型糖尿病、関節部位に起こる関節リウマチや涙腺や唾液腺で起こるシェーグレン症候群など、数多くの自己免疫疾患が存在する。
【0032】
本発明の物質を有効成分とする予防および治療剤は、Th1細胞の関与した自己免疫疾患に強力な治療効果を発揮することから、1型糖尿病以外にTh1細胞が関与する自己免疫疾患である関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、混合型結合組織病、成人発症スチル病、血管炎症候群(大動脈炎、結節性動脈周囲炎、顕微鏡的血管炎、ANCA関連血管炎)、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、キャッスルマン病、ベーチェット病、IgA腎症、膜性腎症、急速進行性糸球体腎炎、バセドウ病、潰瘍性大腸炎、クローン病、ギランバレー症候群、多発性硬化症、再生不良性貧血、移植後拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD)などの予防および治療に有用である。
【0033】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1)ガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質を有効成分とする免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(1-2)免疫抑制および自己免疫疾患の治療が必要な対象者に、有効量のガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質を投与することを含む、免疫抑制及び自己免疫疾患の予防および治療の方法。
(1-3)免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療用の医薬品の製造における、ガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質の使用。
(1-4)自己免疫疾患の予防および治療に使用される、ガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質。
(2)抗Tim-3抗体を有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(2-2)免疫抑制および自己免疫疾患の治療が必要な対象者に有効量の抗Tim-3抗体を投与することを含む、(1-2)に記載の方法。
(2-3)免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療用の医薬品の製造における、抗Tim-3抗体の使用。
(2-4)自己免疫疾患の予防および治療に使用される、抗Tim-3抗体。
(3)抗ガレクチン-9抗体を有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(4)抗Tim-3抗体が、ガレクチン-9によるヘルパーT細胞サブタイプ1(Th1細胞)のアポトーシスを誘導しない低濃度のガレクチン-9存在下で、ガレクチン-9によるTh1細胞アポトーシス誘導を増強することを特徴とする、(2)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(5)ガレクチン-9に特異的に結合し、ガレクチン-9とTim-3との結合を阻害するRNAおよびDNAアプタマーをそれぞれ有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(6)Tim-3に特異的に結合し、ガレクチン-9とTim-3との結合を阻害するRNAおよびDNAアプタマーをそれぞれ有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防よび治療剤。
(7)ガレクチン-9に特異的に結合し、ガレクチン-9とTim-3との結合を阻害する低分子化合物を有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(8)Tim-3に特異的に結合し、Tim-3とガレクチン-9との結合を阻害する低分子化合物を有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防及び治療剤。
(9)Tim-3に強固に結合し、立体構造を破壊することによりガレクチン-9との結合性を消失させる低分子化合物を有効成分とする(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤。
(10)自己免疫疾患が、ヘルパーT細胞サブタイプ1(Th1)が関与する1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、成人発症スチル病、血管炎症候群(大動脈炎、結節性動脈周囲炎、ANCA関連血管炎)、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、キャッスルマン病、ベーチェット病、IgA腎症、膜性腎症、急速進行性糸球体腎炎、バセドウ病(Grave’s disease)、潰瘍性大腸炎、クローン病、およびギランバレー症候群、多発性硬化症、再生不良性貧血、移植後拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD) を含む(1)に記載の免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防及び治療剤。
(11)下記の工程からなる(7)に記載のガレクチン-9に結合し、Tim-3との結合を阻害する低分子化合物のスクリーニング方法。
(a)低分子化合物サンプルをガレクチン-9と接触させる工程、
(b)低分子化合物のガレクチン-9への結合を検出する工程、
(c)低分子化合物のガレクチン-9への結合がガレクチン-9とTim-3との結合を阻害することを評価する工程。
(12)下記の工程からなる8)に記載のTim-3に結合し、ガレクチン-9の結合を競合的に阻害する低分子化合物のスクリーニング方法。
(a)ガレクシン-9をTim-3に接触させる工程、
(b)低分子化合物をガレクチン-9結合Tim-3に接触させる工程、
(c)Tim-3に結合したガレクチン-9量の減少を評価する工程。
(13)下記の工程からなる(9)に記載のTim-3に強固に結合し、立体構造を破壊することによりガレクチン-9との結合性を消失させる低分子化合物のスクリーニング方法。
(a)低分子化合物サンプルをTim-3と接触させる工程、
(b)低分子化合物のTim-3への結合を検出する工程、
(c)低分子化合物のTim-3への結合によるTim-3とガレクチン-9との結合阻害および抗Tim-3抗体との反応性消失などを評価する工程。
【発明の効果】
【0034】
ガレクチン-9 - Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質によって自己免疫を抑制することにより、1型糖尿病を始めヘルパーT細胞サブタイプ1(Th1)が関与する多くの自己免疫疾患の予防および治療のための薬剤を提供することができる。
【0035】
例えば、抗Tim-3抗体は、樹状細胞上のTim-3経路を遮断して、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を抑制し、その下流にあるTh1反応を抑制して抗炎症効果を発揮し、自己免疫疾患の治療や予防に有効である。さらに、抗Tim-3抗体は、ガレクチン-9によるTh-1細胞アポトーシス誘導において、無作用量のガレクチン-9の存在下で、ガレクチン-9のアポトーシス誘導効果を増強する。
【0036】
1型糖尿病以外にも、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性硬化症、Sjogren症候群、混合性結合組織病、成人 スチル病、血管炎症候群(大動脈炎、結節性動脈周囲炎、顕微鏡的血管炎、ANCA関連血管炎)、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、キャッスルマン病
、ベーチェット病、IgA腎症、膜性腎症、急速進行性糸球体腎炎、バセドウ病(Grave’s disease)、潰瘍性大腸炎、クローン病、ギランバレー症候群、多発性硬化症、再生不良性貧血、移植後拒絶反応、及び移植片体宿主病への応用が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】1型糖尿病自然発症モデルマウスであるNODマウスとICRマウスそれぞれの膵島におけるガレクチン-9の発現を示したものである。
【図2】膵臓β細胞樹立細胞株MIN6のガレクチン-9発現に及ぼす各種サイトカイン刺激の影響を示したものである。
【図3】ガレクチン-9投与によるNODマウスの糖尿病発症における抑制効果を示したものである。
【図4】ガレクチン-9非投与群および投与群のNODマウス(44週齢)それぞれの膵島におけるインスリン発現の差異を示したものである。
【図5】NODマウスおよびICRマウスのCD4+, CD8+, CD4+CD25+細胞、CD4+Tim3+細胞のポピュレーションとガレクチン-9投与のこれらポピュレーションに及ぼす影響を示したものである。
【図6】NODマウスへのガレクチン-9投与により、CD4+, CD8+, CD4+CD25+, CD4+Tim3+細胞分画の中で、アポトーシスが誘導される細胞分画を調べたものである。
【図7】抗ガレクチン-9抗体(RG9-35)および抗Tim-3抗体(RMT3-23)は、それぞれガレクチン-9とBALB type Tim-3およびガレクチン-9とB6 type Tim-3の結合を阻害することを示したものである。
【図8】抗ガレクチン-9抗体 (RG9-35)はガレクチン-9が誘導するTh1細胞死を抑制するが、抗Tim-3抗体(RMT3-23)はほとんど抑制しないことを示したものである。
【図9】抗ガレクチン-9抗体(RG9-35)投与および抗Tim-3抗体(RMT3-23)投与によるNODマウスの糖尿病発症における抑制効果、特に抗Tim-3抗体(RMT3-23)投与が顕著な1型糖尿病発症抑制効果を有することを示したものである。
【図10】ガレクチン-9(0.2μM;高濃度)による培養Th1細胞のアポトーシス誘導作用を、抗Tim-3抗体(RMT3-23)が抑制しないことを示したものである。
【図11】培養Th-1細胞のアポトーシスを誘導しない濃度(0.04μM; 低濃度)のガレクチン-9と抗Tim-3抗体(RMT3-23)の同時添加による培養Th1細胞のアポトーシス誘導作用を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ガレクチン-9としては、公知のガレクチン-9生産能を有するヒトの白血球や培養株化細胞から産生される天然型ガレクチン-9を使用することができる。また、公知の マウスガレクチン-9 cDNA (Wada J. and Kanwar YS: J. Biol. Chem. 272: 6078-6086, 1997)やs-type human galectin-9 cDNA (Tureci O., et al.: J. Biol. Chem. 272: 6416-6422, 1997)をそれぞれクローニングし、遺伝子工学を利用して動物細胞、あるいは大腸菌などを宿主として遺伝子組み換えマウスガレクチン-9およびヒトガレクチン-9を生産することができる。また、ガレクチン-9分子としては、その活性、すなわちTim-3に結合できその活性を保持している限り、その一部のアミノ酸配列を欠失、置換、付加などの改変を行ったものであってもよい。それらの中でも、糖鎖を有するヒトガレクチン-9が好ましいが糖鎖を欠失したものもほぼ同様の活性がある。

【0039】
Tim-3はIgVおよびmucin ドメインを含むfull length Tim-3、あるいはIgVドメインを含み、mucinドメインを欠失させた可溶性Tim-3のいずれであってもよい。Full length Tim-3をコードするflTim-3 cDNA (Monney L., et al.: Nature 415: 536-541, 2002)をクローニングし、またクローニングしたflTim-3 cDNAからIgV ドメインを有し、mucinドメインを欠失させた可溶性Tim-3 (sTim-3)をコードするsTim-3 cDNAを作製することができる。これらのTim-3 cDNAsを動物細胞を宿主として発現させることにより、遺伝子組み換えTim-3 (fl Tim-3およびsTim-3)を生産することができる。また、flTim-3あるいはsTim-3にイムノグロブリン(Ig)のFcを結合させた融合タンパク質として発現させ、flTim-3-IgあるいはsTim-3-Ig融合タンパク質として用いることも可能である。Tim-3分子としては、sTim-3のようにTim-3としての受容体活性を保持しているかぎり、その一部のアミノ酸配列を欠失、あるいは置換、付加などの改変を行ったものであってもよい。それらの中でも、ヒトTim-3 (flTim-3およびsTim-3)が好ましい。

【0040】
本発明の予防および治療剤に用いるガレクチン-9に対する抗体(抗ガレクチン-9抗体)およびTim-3に対する抗体(抗Tim-3抗体)は、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヒツジ抗体、キメラ抗体、ヒト型抗体、ヒト抗体等を適宜用いることができる。抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、均一な抗体を安定して生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は当業者に周知の方法により調製することができる。

【0041】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、ガレクチン-9、あるいはTim-3 (Tim-3-Ig融合タンパク質であってもよい)を感作抗原として用い、これを通常の免疫方法に従って免疫し、得られる免疫細胞(たとえば脾細胞)を通常の細胞融合法によって公知のミエローマ細胞株と融合させ、通常のスクリーニング法により取得できる。ハイブリドーマの作製は、通常、公知の方法であるミルステインらの方法(Kohler G. and Milstein C.: Methods Enzymol. 73: 3-46, 1981)に準じて実施できる。抗原がペプチドなどのように免疫原性が低い場合には、keyhole limpet hemocyanin (KLH)と複合体(conjugates)を形成させて、免疫を行えばよい。

【0042】
さらに、医薬用抗体として目的のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから抗体遺伝子をクローニングし、すでにタンパク性医薬品の製造に使用され、安全性が確立されている宿主細胞であるチャイニーズハムスター卵母細胞(CHO細胞)やNSO細胞などを用い、遺伝子組み換え技術を駆使して生産させた遺伝子組み換え型抗体を用いることができる(Carl A. et al.: THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, 1990, 英国 MACHILLAN PUBLISHERS LTDから出版)。通常、ハイブリドーマからの抗体遺伝子のクローニングは、ハイブリドーマからのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域 (V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAが得られれば、このV領域をコードするDNAを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結する。このようにして得られた抗体遺伝子は、発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御下で発現するように発現ベクターに組み込む。遺伝子組み換え型抗体は、このように作製した抗体遺伝子発現ベクターを適当な宿主に導入して、形質転換された宿主を培養することにより生産することができる。

【0043】
抗体をヒトの治療薬として用いる場合には、ヒトに対する免疫原性を低減させたキメラ(Chimeric) 抗体やヒト型化 (Humanized) 抗体、最も望ましくは、異種抗原性のないヒト抗体が好ましい。

【0044】
キメラ抗体やヒト型化抗体などの改変抗体は、既知の方法を用いて作製することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体のH鎖、L鎖の可変領域をヒト抗体のH鎖およびL鎖の定常領域に結合させた抗体である。具体的な作製法としては、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結する。キメラ抗体は、このキメラ抗体遺伝子を適当な発現ベクターに組み込み、宿主に導入し産生させることにより得ることができる。このキメラ抗体においては、マウス抗体由来のアミノ酸配列部分が約33%残存するので、ヒトに投与した場合にはキメラ抗体に対する抗体が出現する可能性がある。

【0045】
ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementary determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植する方法、すなわちCDR グラフティング(CDR grafting)と呼ばれている一般的な遺伝子組み換え手法により作製することができる。CDR グラフティングによるヒト型化抗体の作製は、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region; FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成し、かくして得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結する、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し発現させることにより行うことができる(EP 239400)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。

【0046】
しかしながら、CDRグラフティングによるヒト型化抗体には、マウスとヒトのフレームワークの違いにより、約10%のマウス抗体由来のアミノ酸配列部分が残ることになる。ヒト型化抗体は、マウス由来の抗原部位が非常に少ないので、ヒトに投与した場合にキメラ抗体よりも免疫原性は低く、ヒト型化抗体に対する抗体はできにくい。一般的に、CDRグラフティングにより、ヒト型化抗体は、元のマウス抗体よりも抗原に対する親和性が低下するので、必要に応じて、ヒト型化抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸置換が行われる (Sato, K. et al.: Cancer Res. 53: 851-856, 1993)。

【0047】
ヒト抗体も既知の技術で取得することができる。たとえば、ヒトリンパ球を抗原でin vitro感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、たとえば、U266と融合させ、抗原への結合活性を有する目的のヒト抗体を得ることができる (特公平1-59878)。また、ヒト抗体遺伝子のすべてのレパートリーを有するトランスジェニックマウスを抗原で免疫することにより目的とするヒト抗体を取得することができる (WO92/03918, WO 93/12227, WO94/25585, WO 96/34096)。たとえば、完全ヒト抗体を産生するKMマウスがすでに作製されている。

【0048】
また、ヒト型抗体ファージライブラリーを用いて、パニングによりヒト抗体を取得するファージディスプレイ法がある。たとえば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、パニングにより抗原に結合するファージを選別することができる。選別されたファージの遺伝子を解析することにより、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原特異的なscFvのDNAが得られれば、既知の技術(WO 92/01047, WO 93/06213, WO 95/01438など)により当該配列を適当な発現ベクターに挿入、発現させることによりヒト抗体を作製することができる。

【0049】
さらに、健常人や患者からの末梢血由来のBリンパ球にEBウイルスを感染・不死化して培養することにより、サイトカイン等の蛋白質に対する自己抗体産生Bリンパ球をクローニングする方法(イーベック法)を用いることができる。これとは対照的に、健常人や患者の末梢血由来Bリンパ球を培養しないで、一個のBリンパ球からcDNAを合成・増幅し、in vitro翻訳系を用いて目的の蛋白質に対する抗体をコードする抗体遺伝子をクローニングするSICREX(Single-cell RT-PCR)法を用いることも可能である。これらヒト健常人や患者の末梢血Bリンパ球が産生する自己抗体は、完全ヒト抗体というだけでなく、極めて親和性が高い抗体であるという特徴がある。

【0050】
遺伝子組み換え抗体を生産する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを用いることができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。宿主細胞として、(1)哺乳動物細胞、たとえば、CHO, NSO, COS, BHK, Veroなど、(2)両性類細胞、たとえばアフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、たとえば、sf9, sf21, Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属、たとえば、ニコティアナ・タバカム (Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、この細胞を宿主として、カルス培養により遺伝子組み換え抗体を生産することができる。

【0051】
真菌細胞としては、酵母、たとえば、サッカロミセス (Saccharomyces)属のサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、たとえばアスペルギルス(Aspergillus)属のアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger)などが知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞として、大腸菌 (E. coli)、枯草菌 が知られている。たとえば、大腸菌に目的抗体遺伝子を組み込んだ発現ベクターを導入し、形質転換された大腸菌をタンク培養して得られた菌体の抽出物から抗体を調製できる。

【0052】
本発明におけるガレクチン-9-Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質として、抗ガレクチン-9抗体や抗Tim-3抗体だけでなく、RNAおよびDNAアプタマーも含まれる。本発明における免疫抑制剤および自己免疫疾患の予防および治療剤の有効成分は、(1)ガレクチン-9に特異的に結合し、Tim-3との結合を阻害する、(2)Tim-3に特異的に結合し、ガレクチン-9との結合を阻害する、RNAおよびDNAアプタマーであることを特徴とする。

【0053】
本発明におけるRNAおよびDNAアプタマーの具体的な取得方法としては、例えば、RNAライブラリーを用いるSELEX法(WO91/19813, USP5270163, JP 27639598, EP 0786469B1)、RNAの発現解析のために開発されたマイクロアレイを用いた迅速、かつ効率的なアプタマー取得法(WO2004/087919)、およびDNAライブラリーを用い、膜に固定した標的タンパク質に添加して標的タンパク質に特異的に結合するDNAを回収する方法(特願2005-200823)などを用いて取得することができる。

【0054】
さらに、ガレクチン-9に特異的に結合するRNAおよびDNAアプタマーについて、まず
(a)ガレクチン-9をアプタマーの存在、および非存在下で一定時間インキュベーションし、ついで、
(b)反応液を固定化Tim-3(flTim-3-IgあるいはsTim-3-Ig融合タンパク質であってもよい)に加えて一定時間インキュベーションした後、
(c)Tim-3に結合したガレクチン-9量をガレクチン-9 ELISAで測定し、ガレクチン-9のTim-3への結合を阻害するアプタマーを選別すること
により、本発明の上記(1)のRNAおよびDNAアプタマーを得ることができる。

【0055】
また、Tim-3に特異的に結合するRNAおよびDNAアプタマーについて、まず
(a)Tim-3(flTim-3-IgあるいはsTim-3-Ig融合タンパク質であってもよい)をアプタマーの存在、および非存在下で一定時間インキュベーションし、ついで、
(b)反応液を固定化ガレクチン-9に加えて一定時間インキュベーションした後、
(c)ガレクチン-9に結合したTim-3量をTim-3 ELISAで測定し、Tim-3のガレクチン-9への結合を阻害するアプタマーを選別すること
により、本発明の上記(2)のRNAおよびDNAアプタマーを得ることができる。

【0056】
さらに、本発明におけるガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する物質として、抗ガレクチン-9抗体、抗Tim-3抗体、RNAおよびDNAアプタマーだけでなく、低分子化合物も含まれる。ガレクチン-9はその受容体であるTim-3への結合を介してその生物活性を発揮することから、上記シグナル伝達系を遮断する低分子化合物としては、(1)ガレクチン-9に結合し、Tim-3への結合を阻害する低分子化合物、(2)ガレクチン-9のTim-3への結合を競合的に阻害する低分子化合物、および(3)受容体Tim-3に強固に結合し、立体構造を破壊することにより受容体機能を消失させてガレクチン-9との結合性を阻害する低分子化合物が挙げられる。その中でも、(3)の低分子化合物は抗Tim-3抗体と同様な高い自己免疫抑制活性を発揮する低分子化合物として有用である。

【0057】
具体的なスクリーニング方法としては、低分子化合物ライブラリーを用いて、各々の低分子化合物を(a)ガレクチン-9に接触させ、(b)低分子化合物のガレクチン-9への結合性をガレクチン-9のELISAにおける反応性の低下などにより検出し、さらに(c)Tim-3固定化ELISAにより低分子化合物結合ガレクチン-9のTim-3への結合性を評価することにより、上記(1)の低分子化合物をスクリーニングすることができる。さらに、(a)ガレクチン-9をTim-3(flTim-IgあるいはsTim-Ig融合タンパク質であってもよい)に接触させ、(b)ガレクチン-9とTim-3の結合複合体に低分子化合物サンプルを接触させて、(c)低分子化合物の添加によるTim-3に結合したガレクチン-9の減少量をガレクチン-9のELISAで評価することにより、(2)の低分子化合物をスクリーニングすることができる。また、低分子化合物ライブラリーを用いて、各々の低分子化合物を(a)Tim-3 (flTim-3-IgあるいはsTim-3-Ig融合タンパク質であってもよい)に接触させ、(b)低分子化合物のTim-3への結合を検出する工程、ついで、(c)低分子化合物のTim-3への結合によるTim-3とガレクチン-9との結合阻害および立体構造破壊の指標として抗Tim-3抗体との反応性消失などをTim-3 ELISAにより評価することにより、(3)の低分子化合物としてスクリーニングすることができる。

【0058】
本発明のガレクチン-9-Tim-3シグナル伝達系路の遮断物質(抗体および低分子化合物)を有効成分とする予防および治療剤は、1型糖尿病をはじめとする自己免疫疾患の予防および治療に有用である。自己免疫疾患には、自己免疫反応が全身に起こる全身性エリトマトーデスから自己免疫反応が限局された部位、たとえば膵臓のランゲルハンス氏島で起こる1型糖尿病、関節部位に起こる関節リウマチや涙腺や唾液腺で起こるシェーグレン症候群など多数の自己免疫疾患が存在する。

【0059】
本発明において抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体が、Th1細胞活性化が関与する自己免疫疾患の一つである1型糖尿病を自然発症するモデルマウス(NODマウス)の糖尿病発症を有意に抑制し、特に抗Tim-3抗体が顕著な自己免疫抑制効果を発揮することを実証した。このように、本発明の物質を有効成分とする予防および治療剤は、Th1細胞が関与する自己免疫疾患に対して強力な治療効果を発揮することから、1型糖尿病以外にTh1細胞が関与する自己免疫疾患である関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、混合型結合組織病、成人発症スチル病、血管炎症候群(大動脈炎、結節性動脈周囲炎、顕微鏡的血管炎、ANCA関連血管炎)、ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス、キャッスルマン病、ベーチェット病、IgA腎症、膜性腎症、急速進行性糸球体腎炎、バセドウ病(Grave’s disease)、潰瘍性大腸炎、クローン病、ギランバレー症候群、多発性硬化症、再生不良性貧血、移植後拒絶反応および移植片対宿主病(GVHD)などの自己免疫疾患の予防および治療に有用である。

【0060】
本発明の1型糖尿病をはじめとする自己免疫疾患の予防および治療剤(以下においては本発明の製剤という)には、その投与方法や剤型に応じて必要により、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、吸着防止剤、界面活性剤、含硫還元剤、酸化防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、緩衝剤、などを適宜添加することができる。

【0061】
懸濁化剤としては、メチルセルロース、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどを例示できる。

【0062】
安定化剤としては、デキストラン40、メチルセルロース、ゼラチン、ヒト血清アルブミンなどを例示できる。

【0063】
等張化剤としては、例えば、D-マンニトール、ソルビトールなどを挙げることができる。

【0064】
吸着防止剤としては、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、低分子ゼラチン、ポリソルベート80、ポリソルベート20、デキストラン、メチルセルロースなどを例示できる。

【0065】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、たとえばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル; グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル; デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリル脂肪酸エステル; ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを例示することができる。また、陰イオン界面活性剤として、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩; ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩; 天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スイフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質などを典型例として挙げることができる。本発明の製剤には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添加することができる。

【0066】
これらの多くの界面活性剤の中で、好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20、40、60又は80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、ポリソルベート20および80が特に好ましい。また、ポリキサマーに代表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールがよく用いられている。

【0067】
含硫還元剤としては、N-アセチルシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオグリセロール、グルタチオンなどが例示される。

【0068】
酸化防止剤としては、例えばエリソルビン酸、α-トコフェロール、L-アスコルビン酸およびその塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-アスコルビン酸ステアレートなどを挙げることができる。

【0069】
さらに、緩衝剤成分として、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機酸塩などをpH調整剤として添加してもよい。

【0070】
本発明の抗体を有効成分とする製剤は、通常は注射剤(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内など)として投与する。しかし、経皮、経粘膜、経鼻などの投与に適した剤形として投与することも可能である。また、本発明の低分子化合物を有効成分とする製剤は、注射剤(皮下、皮内、筋肉内、腹腔内など)として投与する。さらに、経皮、経粘膜、経鼻などの投与に適した剤形、好ましくは経口投与に適した剤形(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤など)として投与することも可能である。本発明は投与経路や剤形などによって限定されるものではない。

【0071】
本発明の抗体を有効成分とする予防および治療剤は、静脈、皮下および筋肉注射が好ましく、その場合の投与量、投与回数は対象の自己免疫疾患患者の病状を配慮して当業者が適宜決定することができるが、通常は、1~1000mg/BW/monthの範囲から選ばれる。また、本発明の低分子化合物を有効成分とする予防および治療剤は、静脈、皮下、あるいは経口投与が好ましく、投与量および投与回数は対象の自己免疫疾患患者の病状を配慮して当業者が適宜決定することができるが、通常は0.1~1000 mg/BW/dayの範囲から選ばれる。

【0072】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
【実施例】
【0073】
実施例1:膵島におけるガレクチン-9の発現
1)NODマウスとICRマウスの膵島におけるガレクチン-9発現の比較
免疫染色法は以下の方法により実施した。
ホルマリン固定した組織を100%キシレンで5分ずつ計3回、脱パラフィン化した。その後、100%エタノールで5分ずつ3回、90%エタノールで5分、80%エタノールで5分、70%エタノールで5分、親水化を行った。洗浄後、0.3%過酸化水素水とメタノールで、内因性ペルオキシダーゼのブロッキングを実施した。2次抗体由来の正常ウサギ血清(10%)でブロッキングした。Vector社(Burlingame, CA, US)のAVIDIN-BIOTIN BLOCKING KIT(SP-2001)を使用し、Avidin block(15min), Biotin block(15min)を施行した。Goat polyclonal Galectin-9 antibody(M-20)(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を1:50に希釈し、4℃で一晩インキュベーションした。さらに2次抗体Biotinylated Anti-Goat IgG(H+L)(Vector社 BA-7000)を50倍に希釈し反応後、Vector社のABC Kit(PK-4100)の3次抗体を反応させた。DAB試薬(Vector社)を1分反応させ、マイヤーヘマトキシリンでカウンター染色5秒、40℃の水に1分間つけ発色させた。さらにエタノール、キシレンで脱水し、M・X(松浪硝子工業株式会社)で包埋した。
【実施例】
【0074】
膵島を免疫染色した結果を図1に示す。
【実施例】
【0075】
7週齢のNODマウスとICRマウスの膵島を免疫染色した結果、図 1に示すように、いずれのマウスにおいてもガレクチン-9の発現が認められた。
【実施例】
【0076】
2)膵β細胞株であるMIN6細胞のガレクチン-9の発現に及ぼす各種サイトカインの影響次に、膵臓β細胞株であるMIN6細胞を様々なサイトカインで刺激し、ガレクチン-9の発現に及ぼす影響をノーザンブロットで解析した。具体的な実験方法は以下の通りである。
【実施例】
【0077】
MIN6細胞の培養には15% FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン及びグルコース(450 mg/dl)、グルタミン含有DMEM (Dulbecco’s modified Eagle’s medium) (D5796)(Sigma, St. Louis, MO, US)を用いた。MIN6細胞を1 x 106 cells/ well で16 Well Cell Culture Cluster (Costar, Corning, NY, US)に播種し、3日間培養した。さらに培地を15% FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン及びグルコース(100 mg/dl)、グルタミン含有DMEM (D5648)に変更し、20 ng/ml IFN-γ (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, US)、1 ng/ml IL-1β (Sigma)、5 ng/ml TNF-α (Sigma)を単独、あるいはそれぞれの組み合わせで24時間刺激した。高グルコース濃度の影響も見るために、ペニシリン・ストレプトマイシン及びグルコース(450 mg/dl)、グルタミン含有DMEM (D5796)の条件でも培養した。培養細胞からRNAeasy Mini (Qiagen, Hilden, Germany)を用いてtotal RNAを抽出し、2.2 mol/Lホルムアルデヒド含有1%アガロースゲルで電気泳動を行い、さらにHybond N+ Nylon (GE Bioscience, Buckinghamshire, UK)に転写した。マウスガレクチン-9cDNAをRediprime II DNA Labelling System (GE Bioscience)により[alpha-32P]dCTPでラベルした。 cDNA (1 x 106cpm)をExpressHyb Hybridization Solution (Clontech, Palo Alto, CA, US)を用いて、68℃で2時間ハイブリダイゼーションした。ナイロンフィルターを1XSSC (standard sodium citrate)/0.1%SDS (sodium dodecyl sulfate)で4回(24℃)、0.1XSSC/0.1%SDSで2回洗浄(68℃)し、オートラジオグラフィーを実施した(Hyperfilm MP, GE Bioscience)。
【実施例】
【0078】
その結果を図2に示す。
【実施例】
【0079】
インターフェロン-γ(IFN-γ)とインターロイキン-1β(IL-1β)、TNF-α、もしくはTNF-αとIL-1βを組み合わせてMIN6細胞を刺激したところ、ガレクチン-9の発現が認められ、その発現誘導効果は相乗的であることがわかった。
【実施例】
【0080】
このことから、ガレクチン-9は膵島に存在し、Th1産生サイトカインであるIFN-γにより発現誘導されることが明らかになった。
【実施例】
【0081】
実施例2:ガレクチン-9投与の1型糖尿病自然発症モデルマウス(NODマウス)の糖尿病発症に及ぼす影響
投与実験のプロトコール(1)を以下に示す。
【実施例】
【0082】
プロトコール(1)
(a)NODマウス(n = 20, メス) に遺伝子組み換えマウスガレクチン-9 (1mg/kg BW)、および対照群としてPBS-DTTを7週齢から42週齢まで週に一回、腹腔内投与する。
(遺伝子組み換えマウスガレクチン-9の生産と調製は、後述の実施例4-1)により実施)
(b)週1回血糖測定を行い2回連続して血糖値レベルが250 mg/dl以上に達した時に、糖尿病発症と規定する。
(c)マウスは糖尿病発症後(ケトアシドーシスに陥り死亡するので)、直ちに殺して試験に供する。
【実施例】
【0083】
1)ガレクチン-9投与の糖尿病発症に及ぼす効果
遺伝子組み換えマウスガレクチン-9の投与によるNODマウスの1型糖尿病発症に及ぼす効果をKaplan-Meyerの生存曲線で図3に示す。
【実施例】
【0084】
図3から明らかなように、40週齢の時点でガレクチン-9投与群が対照群(PBS投与)に比べて、有意(p = 0.048)に高い糖尿病発症抑制効果を示した。
【実施例】
【0085】
2)ガレクチン-9投与の膵島インスリン発現に及ぼす効果
膵島におけるインスリンの染色は以下のように実施した。
ホルマリン固定した組織を100%キシレンで5分ずつ計3回、脱パラフィン化した。その後、100%エタノールで5分ずつ3回、90%エタノールで5分、80%エタノールで5分、70%エタノールで5分、親水化を行った。洗浄後、0.3%過酸化水素水とメタノールで、内因性ペルオキシダーゼのブロッキングを施行した。正常ヤギ血清(10%)でブロッキングした。Vector社のAVIDIN-BIOTIN BLOCKING KIT(SP-2001)を使用し、Avidin block(15min), Biotin block(15min)を施行した。Polyclonal Guinea Pig Anti-Swine(DAKO社:A 0564)を500倍に希釈し、4℃で一夜、インキュベーションした。
【実施例】
【0086】
2次抗体Biotinylated Anti-Guinea Pig IgG(H+L)(Vector社 BA-7000)を150倍に希釈し、染色した。Vector社のABC Kit(PK-4100)の3次抗体を反応させた。DAB試薬(Vector社)を1分反応させ、マイヤーヘマトキシリンでカウンター染色5秒、40℃の水に1分間つけ発色させた。さらにエタノール、キシレンで脱水し、M・X(松浪硝子工業株式会社)で包埋した。
【実施例】
【0087】
膵島の組織所見を図4に示す。44週齢まで糖尿病を発症しなかったガレクチン-9非投与群(対照群)と投与群の膵島におけるインスリンの発現を比較したところ、ガレクチン-9投与群では膵島で明確なインスリン発現が認められたが、ガレクチン-9非投与群では膵島内への細胞浸潤が激しく、インスリン分泌が著明に低下していた。このことから、組織学的にもガレクチン-9の糖尿病発症抑制効果が確認された。
【実施例】
【0088】
実施例3:ガレクチン-9が作用する細胞の解析
次に、ガレクチン-9がどの細胞に作用するかについてフローサイトメトリ(Flow Cytometry)を用いて検討した。
そのプロトコールを以下に示す。
【実施例】
【0089】
フローサイトメトリ解析プロトコール
(a)7週齢のNODマウスとICRマウスに解析24時間前に遺伝子組み換えマウスガレクチン-9 (1mg/kg・BW)、および対照群としてPBSを投与する。
(遺伝子組み換えマウスガレクチン-9の生産と調製は、後述の実施例4-1)により実施)
(b)マウスを殺して後、脾細胞を分離し、Lymphocyte-Mを用いて、リンパ球の分離を行う。
(c)リンパ球を染色後、速やかにBD FACSAria Cell Sorterで解析する。
【実施例】
【0090】
1)NODマウスおよびICRマウスのCD4+, CD8+細胞のポピュレーションとガレクチン-9投与のこれらポピュレーションに及ぼす影響
FACS解析結果を図5に示す。
【実施例】
【0091】
図5は、ICRおよびNODマウスのCD4+、CD8+のポピュレーションを示したものである。CD4+はCD4+CD25+細胞、CD4+Tim3+細胞の分画についても検討したところ、ICRマウスとNODマウスとの比較では、CD8陽性細胞がNODマウスで多い傾向にあった。一方、ICRマウス、NODマウスのいずれも、ガレクチン-9投与によってポピュレーションには大きな変化は認められなかった。
【実施例】
【0092】
2)ガレクチン-9投与によるアポトーシス誘導細胞
CD4+, CD8+, CD4+CD25+およびCD4+ Tim3+の各々の細胞分画についてAnnexin Vを用い、アポトーシスについて解析した。その結果を図6に示す。
【実施例】
【0093】
各細胞分画 (n =5)で、NODマウスではガレクチン-9投与によりCD4+Tim3+細胞、すなわち成熟Th1 (CD4+Tim3+)細胞においてアポトーシスが増加する傾向が見られた。しかしながら、ICRマウスではそのような傾向は認められなかった。
【実施例】
【0094】
実施例4:抗体の作製
ガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体をそれぞれ作製した。
【実施例】
【0095】
1)遺伝子組み換えマウスガレクチン-9の調製
(a)マウスガレクチン-9は公知の方法(Wada J., et al.: J. Biol. Chem. 272:6078-6086, 1997; Wada J., et al.: J. Clin. Invest. 99:2452-2461, 1997)に基づいて、pTrcHisベクター(Invitrogen, San Diego, CA, US)を使用して産生させた。なおガレクチン-9は、C末端にc-mycエピトープ及び(His)6を有する融合たんぱく質として産生される。
(b)マウスガレクチン-9をコードするDNAを含むベクター(以下、「pTrcHis2/G9」という)を、TOP10バクテリア宿主(Invitrogen社製)にトランスフォーメーションした。トランスフォーメーションした細菌コロニーを、Luria-Bertani’s培地で培養し、1 mmol/Lのisopropyl-β-D-thiogalactopyranoside (IPTG)を加えることによりタンパク質合成を誘導した。1%TritonX-100、10mmol/L benzamidine、10 mmol/L ε-amino-n-caproic acid及び2 mmol/L phenylmethanesulfonyl fluorideを含むTris-dithiothreitol (Tris-DTT)緩衝液(20 mmol/L Tris (pH 7.4), 5 mmol/L ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA), 150 mmol/L sodium chloride, 1 mmol/L)で細菌を溶解した。
【実施例】
【0096】
その溶解液を4℃で30分間、2000 x gで遠心した。遠心上清を10mlのlactosyl-Sepharoseカラム(Sigma, St. Louis, MO, US)に添加した。非結合タンパク質を洗浄した後、融合タンパク質を200mmol/L Lactoseを含むTris-DTTバッファーで溶出した。その溶出画分を1 mmol/L DTTを含有するリン酸緩衝液(PBS)で透析し、-70℃で保存した。サンプルを12.5%のSDS-PAGE (sodium dodecyl sulfate-polyacrulamide gel electrophoresis)で解析したところ、単一のバンドが得られ、分子量は39kDaであり、構成アミノ酸から予測される分子量と一致した。
【実施例】
【0097】
2) 遺伝子組み換えマウスTim-3-Ig融合タンパク質の調製
マウスTim-3は、マウスTim-3 (BALB-type) (Monney L., et al.: Nature 415: 536-541, 2002)およびTim-3のメジャーなバリアントのマウスTim-3 (B6 type) (McIntire JJ., et al.: Nat. Immunol. 2: 1109-1116, 2001)のそれぞれの細胞外部(1-191アミノ酸残基)とマウスIgG2aのFc部との融合タンパク質(mouse Tim-3-Ig)をそれぞれ安定発現させたCHO細胞の培養上清からProtein Gカラムクロマトグラフィーで精製することにより調製した (Oikawa T., et al.: J. Immunology 177: 4281-4287, 2006)。
【実施例】
【0098】
1)抗ガレクチン-9抗体の作製
遺伝子組み換えマウスガレクチン-9 100μgを初回はcomplete Freund’s adjuvantおよび2, 3回目はincomplete Freund’s adjuvantとともにSDラットのfootpadに2週間ごとに3回免疫し、最終免疫の7日後にpopliteal lymph node cellsをP3U1ミエローマ細胞と融合して、ハイブリドーマの培養上清中の抗体活性を遺伝子組み換えマウスガレクチン-9に対する ELISAでスクリーニングした。クローニングすることにより抗ガレクチン-9抗体(RG9-35)を安定して産生するハイブリドーマを樹立した。
【実施例】
【0099】
2)抗Tim-3抗体の作製
マウスTim-3-Ig融合タンパク質(BALB typeおよびB6 type)それぞれを抗原として、上記と同様にSDラットを免疫後、同様にハイブリドーマを作製した。BALB type Tim-3およびB6 type Tim-3のそれぞれに対する抗体産生ハイブリドーマは、それぞれの全長マウスTim-3を安定して発現させたNRK細胞を用いてFACSでスクリーニングした。
【実施例】
【0100】
このように作製したTim-3に対するモノクローナル抗体で、BALB type Tim-3およびB6 type Tim-3の両方を共に認識する抗体(RMT3-23)を安定して産生するハイブリドーマを同様に樹立した。
【実施例】
【0101】
3)抗体の生産と精製
抗体RG9-35 (rat IgG 2a, κ)およびRMT3-23 (rat IgG2a, κ)の生産と精製は、それぞれの抗体産生ハイブリドーマをヌードマウスの腹腔内に移植し、生成される復水からカプリル酸/硫酸アンモニウム(caprylic acid/ammonium sulfate)沈殿法により実施した。
【実施例】
【0102】
実施例5:抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体によるガレクチン-9-Tim-3シグナル伝達経路の遮断
1)抗ガレクチン-9 および抗Tim-3抗体によるガレクチン-9とTim-3結合の阻害作用
抗ガレクチン-9抗体(RG9-35)および抗Tim-3抗体(RMT3-23)のそれぞれによるガレクチン-9とTim-3との結合阻害作用を図7に示す。
【実施例】
【0103】
RG9-35およびRTM3-23は、両者ともガレクチン-9とBALB type Tim-3およびB6 type Tim-3との両結合を阻害することがわかった。
【実施例】
【0104】
2)抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体によるTh1細胞死誘導作用
ガレクチン-9刺激によるTh1細胞死誘導に及ぼす作用を調べた結果を図8に示す。
【実施例】
【0105】
図8から明らかなように、抗ガレクチン-9抗体(RG9-35)はガレクチン-9により誘導されるTh1細胞死を抑制したが、抗Tim-3抗体(RMT3-23)はほとんど抑制しなかった。
【実施例】
【0106】
図7に示すように、抗Tim-3抗体(RMT3-23)はガレクチン-9とTim-3との結合を阻害するが、ガレクチン-9誘導Th1細胞死を抑制しないことから、ガレクチン-9によるTh1細胞死はTim-3のみを介するものではないことが示唆される。
【実施例】
【0107】
実施例6:ガレクチン-9—Tim-3シグナル伝達経路を遮断する抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体のNODマウスの糖尿病発症に及ぼす効果
ガレクチン-9には、1型糖尿病発症抑制効果があり、その作用機序はガレクチン-9が成熟Th1細胞(CD4+Tim-3+)に作用してTh1細胞のアポトーシスを介していると考えられた。
【実施例】
【0108】
そこで、次に抗ガレクチン-9抗体 (RG9-35)、抗Tim-3抗体(RMT3-23)を用いて逆に糖尿病促進効果があるかどうかについて検討した。
【実施例】
【0109】
実施例5-1)に示したように、これら抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体は共にガレクチン-9とTm-3との結合を阻害することが確認された抗体である。
【実施例】
【0110】
投与実験のプロトコールを以下に示す。
【実施例】
【0111】
プロトコール(2)
(a)抗ガレクチン-9抗体、あるいは抗Tim-3抗体をNODマウス1個体あたり0.25 mg, 週に2回、8週齢から51週齢までの計43週間、腹腔内投与する。
(b)実施例2で示したガレクチン-9投与実験の場合と同様に、週に1回の血糖測定を行い、連続して2回250 mg/dl以上を示した時に、糖尿病発症と規定する。
(c)糖尿病発症後、速やかに殺して各種試験に供する。
【実施例】
【0112】
投与実験の結果を図9に示す。
【実施例】
【0113】
予想に反して、抗Tim-3抗体投与群は極めて高い糖尿病発症抑制効果を示し、40週齢の時点で対照のPBS投与群、ガレクチン-9投与群や抗ガレクチン-9抗体投与群に比べて、それぞれ有意な糖尿病発症抑制効果 (PBS v.s. Tim-3 Ab: p < 0.0001; Gal-9 v.s. Tim-3 Ab: p = 0.0025; Gal-9 Ab v.s. Tim-3 Ab: p = 0.0067) を発揮することを認めた。
【実施例】
【0114】
ガレクチン-9投与群は対照のPBS投与群に比べて、有意な糖尿病発症抑制効果(PBS v.s. Gal-9: p = 0.0248)を発揮し、実施例2の結果に再現性が認められた。また、ガレクチン-9投与群と抗ガレクチン-9 抗体投与群間には有意差は認められなかった (p = 0.6344)。
【実施例】
【0115】
このように、抗ガレクチン-9抗体および抗Tim-3抗体のin vivo投与実験において予想外の効果が発現した。そのメカニズム、あるいはその原因については、現在のところ良くわかっていないが、以下のように考えられる。
【実施例】
【0116】
本発明者らは、ガレクチン-9は活性化Th1細胞にアポトーシスを誘導する以外に、抗原提示細胞である樹状細胞からのTNF-αの産生を亢進させることを確認した。また、ガレクチン-9は樹状細胞からのTNF-α産生を介して炎症を惹起することが報告されている(Anderson AC., et al.: Science 318: 1141-1143, 2007)。
【実施例】
【0117】
したがって、異なった細胞へのガレクチン-9の作用は、炎症のプロセスに対して活性化Th1細胞では抑制的に、樹状細胞では促進的に働いている。そのため投与ガレクチン-9によるNODマウスの1型糖尿病発症抑制効果と抗ガレクチン9抗体投与によるガレクチン-9の樹状細胞を介する炎症プロセスの抑制による治療効果とがほぼ同等であったと説明される。
【実施例】
【0118】
一方、抗Tim-3抗体がより強力にその治療効果を発揮したことは、(1)図8に示すように、Tim-3のリガンド結合にはガレクチン-9以外の結合、すなわちガレクチン-9によるTh1アポトーシス誘導は抗Tim-3抗体(RTM3-23)によりほとんど抑制されないことから、ガレクチン-9 - Tim-3シグナル伝達系以外の経路が存在し、抗Tim-3抗体はそれらの経路を遮断していること、(2)樹状細胞上のTim-3経路は炎症メカニズムの上流にあり、それを遮断することが自己免疫疾患の治療に重要であることを明らかにしたものである。
【実施例】
【0119】
実施例7:ガレクチン-9誘導Th1細胞死における抗Tim-3抗体の影響
実施例5-2(図8)の結果から明らかなように、抗Tim-3抗体(RMT3-23)は、ガレクチン-9(0.2μM)存在下で培養されたTh1細胞の細胞死に対してほとんど影響を及ぼさなかった。本実施例では、Th1アポトーシス誘導に対する作用量(0.2μモル)および無作用量のガレクチン-9(0.04μM)の存在下において抗Tim-3抗体の影響を検討した。
【実施例】
【0120】
具体的な実験方法は以下の通りである。
1. メスのICRマウスの脾臓から、CD4 microbeads (Miltenyi)を用いてCD4+ T cellを分離した。
2. 抗CD3 mAb (2C11, 10μg/ml) をコーティングした24 well プレートに5×105個ずつまき、抗CD28Ab (PV-1) 10μg/ml, マウス IL-12 10 ng/ml、抗IL-4Ab (11B11) 10μg/ml を添加し、4日間培養した。
3. 回収して96 wellプレートに 5×105/ml の濃度でまき直し、ヒトIL-2 20 U/ml を添加し、3日間培養した。
4. 解析24時間前に遺伝子組み換えマウスガレクチン-9 (rGal-9) (0.2 μM又は0.04 μM)、抗Tim-3抗体(RMT3-23) (10 μg/ml又は100 μg/ml)を添加し、FACS Ariaを用いてアポトーシスについて解析した。
【実施例】
【0121】
図10は、高濃度(0.2μM)のガレクチン-9(rGal-9)によるアポトーシス誘導作用に対する抗Tim-3抗体(RMT3-23)の作用を示す。rGal-9 (0.2 μM;高濃度)の添加によってTh1細胞のアポトーシスが誘導された。抗Tim-3抗体単独添加では、いずれの濃度においてもアポトーシスの誘導は認められなかった。高濃度rGal-9の添加と同時に抗Tim-3抗体を添加した場合アポトーシスの抑制も亢進も認めなかった。さらに高濃度rGal-9にGal-9抗体を添加した場合もアポトーシスの抑制を認めなかった。
【実施例】
【0122】
図11は、低濃度(0.04 μM)のガレクチン-9(rGal-9)によるアポトーシス誘導作用に対するRMT3-23の作用を示す。すなわち、低濃度rGal-9の添加によってTh1細胞のアポトーシスは誘導されないが、抗Tim-3抗体添加によってアポトーシスの増強が用量依存性に観察された。
【実施例】
【0123】
このことから、ガレクチン-9によるTh1細胞アポトーシス誘導において、Th1細胞のアポトーシスを誘導しない低濃度のガレクチン-9存在下で、抗Tim-3抗体がTh1細胞アポトーシス誘導を増強することがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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