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明細書 :TPRモチーフタンパク質の機能の調節方法、TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法、および機能調節物質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5971644号 (P5971644)
公開番号 特開2013-177348 (P2013-177348A)
登録日 平成28年7月22日(2016.7.22)
発行日 平成28年8月17日(2016.8.17)
公開日 平成25年9月9日(2013.9.9)
発明の名称または考案の名称 TPRモチーフタンパク質の機能の調節方法、TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法、および機能調節物質
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61K  47/02        (2006.01)
A61K  31/5415      (2006.01)
A61K  31/352       (2006.01)
A61K  31/137       (2006.01)
A61K  31/235       (2006.01)
A61K  31/095       (2006.01)
A61K  31/136       (2006.01)
A61K  31/216       (2006.01)
A61K  31/14        (2006.01)
A61K  31/655       (2006.01)
A61K  31/167       (2006.01)
A61K  31/53        (2006.01)
A61K  31/428       (2006.01)
A61K  31/473       (2006.01)
A61K  31/498       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
C12Q   1/42        (2006.01)
FI A61K 37/02 ZNA
A61K 47/02
A61K 31/5415
A61K 31/352
A61K 31/137
A61K 31/235
A61K 31/095
A61K 31/136
A61K 31/216
A61K 31/14
A61K 31/655
A61K 31/167
A61K 31/53
A61K 31/428
A61K 31/473
A61K 31/498
A61P 43/00 105
A61P 43/00 111
G01N 33/15 Z
C12Q 1/42
請求項の数または発明の数 13
全頁数 43
出願番号 特願2012-042555 (P2012-042555)
出願日 平成24年2月28日(2012.2.28)
審査請求日 平成27年1月8日(2015.1.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】小林 良二
【氏名】嶋本 聖子
【氏名】徳光 浩
【氏名】山口 文徳
【氏名】藤本 智仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100146064、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 玲子
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
審査官 【審査官】安藤 公祐
参考文献・文献 特開2008-104356(JP,A)
特開2001-333776(JP,A)
Carcinogenesis,2012年 1月31日,33(4),868-75
調査した分野 A61K 31/5415
A61K 31/121
A61K 31/136
A61K 31/138
A61K 31/14
A61K 31/185
A61K 31/198
A61K 31/235
A61K 31/352
A61K 31/428
A61K 31/4453
A61K 31/473
A61K 31/498
A61K 31/53
A61K 31/655
A61P 25/28
A61P 35/00
A61P 43/00
C12Q 1/42
G01N 33/15
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
プロテインホスファターゼ5の機能の調節方法であって、
カルシウムイオン存在下、プロテインホスファターゼ5に、S100タンパク質を結合させることで、前記プロテインホスファターゼ5の活性を増強することを特徴とする調節方法。ただし、人間の治療を除く。
【請求項2】
プロテインホスファターゼ5の機能調節物質のスクリーニング方法であって、
候補物質、カルシウムイオンおよびS100タンパク質の共存下、プロテインホスファターゼ5の脱リン酸化活性を分析する分析工程
を含み、
前記分析工程において、前記候補物質存在下におけるプロテインホスファターゼ5の脱リン酸化活性と、前記候補物質非存在下におけるプロテインホスファターゼ5の脱リン酸化活性とを比較し、前記候補物質非存在下に対して前記活性を増強したものをプロテインホスファターゼ5の活性化剤として選択し、前記候補物質非存在下に対して前記活性を低下させたものをプロテインホスファターゼ5の阻害剤として選択する
ことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項3】
式(3)、(4)、(13)~(15)、(17)~(21)、(23)、および(32)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、カルシウムイオンおよびS100タンパク質の共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を増強することを特徴とするプロテインホスファターゼ5の活性化剤。
【請求項4】
式(6)、(11)、(42)~(43)、および(49)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、カルシウムイオンおよびS100タンパク質の共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を低下させることを特徴とするプロテインホスファターゼ5の阻害剤。
【請求項5】
式(10)、(16)、(22)、および(24)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、S100タンパク質の非共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を増強し、カルシウムイオンおよびS100タンパク質との共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を低下させることを特徴とするプロテインホスファターゼ5の機能調節剤。
【請求項6】
式(1)および(5)の少なくとも一方の化合物を含み、S100タンパク質の非共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を低下させ、カルシウムイオンおよびS100タンパク質との共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を増強することを特徴とするプロテインホスファターゼ5の機能調節剤。
【請求項7】
式(12)、(25)~(31)、および(33)~(36)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、S100タンパク質の非共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を増強することを特徴とするプロテインホスファターゼ5の活性化剤。
【請求項8】
式(37)、(38)、(40)、(41)、および(45)~(48)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、S100タンパク質の非共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を低下させることを特徴とするプロテインホスファターゼ5の阻害剤。
【請求項9】
式(2)の化合物を含み、カルシウムイオンおよびS100タンパク質の共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を増強することを特徴とするプロテインホスファターゼ5の活性化剤。
【請求項10】
式(7)~(9)、(39)、および(50)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、カルシウムイオンおよびS100タンパク質の共存下、プロテインホスファターゼ5の活性を低下させることを特徴とするプロテインホスファターゼ5の阻害剤。
【請求項11】
式(2)の化合物を含み、カルシウムイオンの存在下、S100タンパク質の活性を増強することを特徴とするS100タンパク質の活性化剤。
【請求項12】
式(7)~(9)、(39)、および(50)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含み、カルシウムイオンの存在下、S100タンパク質の活性を低下させることを特徴とするS100タンパク質の阻害剤。
【請求項13】
S100タンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法であって、
候補物質、カルシウムイオンおよびS100タンパク質の共存下、プロテインホスファターゼ5の脱リン酸化活性を分析する分析工程
を含み、
前記分析工程において、前記S100タンパク質の非存在下であり且つ前記候補物質の存在下におけるプロテインホスファターゼ5の活性と、前記S100タンパク質の非存在下であり且つ前記候補物質の非存在下におけるプロテインホスファターゼ5の活性とを比較し、前記候補物質非存在下に対して異なる活性を示さず、且つ、前記S100タンパク質と前記候補物質との共存下におけるプロテインホスファターゼ5の活性と、前記S100タンパク質の存在下であり且つ前記候補物質の非存在下におけるプロテインホスファターゼ5の活性とを比較し、前記候補物質非存在下に対して前記活性を増強または低下させるものについて、前記活性を増強する物質をS100活性化剤、前記活性を低下させる物質をS100阻害剤として選択することを特徴とするスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、TPRモチーフタンパク質の機能の調節方法、TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法、および機能調節物質に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、細胞の機能は、タンパク質リン酸化酵素によるタンパク質のリン酸化でスイッチがONとなり、タンパク質脱リン酸化酵素によるタンパク質の脱リン酸化でスイッチがOFFとなる。TPR(tetratricopeptide repeat)モチーフを有するタンパク質(以下、「TPRモチーフタンパク質」という)の一種であるプロテインホスファターゼ5(以下、PP5またはPP5タンパク質という)は、後者の脱リン酸化に関わる酵素であり、生体内のほとんど全ての細胞に存在することが知られている(非特許文献1~6)。しかしながら、PP5は、通常、低活性であるが、どのような活性化機構により、活性が増強されているのかが不明であった。
【0003】
PP5は、これまでに、癌、アルツハイマー病における神経細胞死、細胞の代謝調節に関与することが報告されている。このため、PP5の活性化機構を解明し、PP5の活性調節物質をスクリーニングすることは、生化学等の研究分野および臨床分野のいずれにおいても重要である。また、PP5に限らず、他のTPRモチーフタンパク質についても同様のことが言える。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Ramsey, A.J., and Chinkers, M. (2002). Identification of Potential Physiological Activators of Protein Phosphatase 5. Biochem. 41, 5625-5632.
【非特許文献2】Kang H, Sayner SL, Gross KL, Russell LC, Chinkers M. (2001). Identification of amino acids in the tetratricopeptide repeat and C-terminal domains of protein phosphatase 5 involved in autoinhibition and lipid activation. Biochemistry. 2001 Sep 4;40(35):10485-90.
【非特許文献3】Chinkers, M. (2001). Protein phosphatase 5 in signal transduction. Trends Endocrinol. Metab. 12, 28-32.
【非特許文献4】Morita, K., Saitoh, M., Tobiume, K, Matsuura, H., Enomoto, S., Nishitoh, and H., Ichijo, H.(2001) . Negative feedback regulation of ASK1 by protein phosphatase 5 (PP5) in response to oxidative stress. EMBO J. 20(21), 6028-6036.
【非特許文献5】Liu F, Grundke-Iqbal I, Iqbal K, Gong CX. (2005). Contributions of protein phosphatases PP1, PP2A, PP2B and PP5 to the regulation of tau phosphorylation. Eur J Neurosci. 22(8), 1942-50.
【非特許文献6】Sanchez-Ortiz, E., Hahm, B.K., Armstrong, D.L., and Rossie, S. (2009). Protein phosphatase 5 protects neurons against amyloid-βtoxicity. J. Neurochem. 111, 391-402.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、PP5をはじめとするTPRモチーフタンパク質の機能の調節方法、TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法ならびにTPRモチーフタンパク質の機能調節物質の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の調節方法は、TPRモチーフタンパク質の機能の調節方法であって、TPRモチーフタンパク質に、S100タンパク質(以下、「S100」ともいう)を結合させることを特徴とする。
【0007】
本発明のスクリーニング方法は、TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法であって、候補物質存在下、TPRモチーフタンパク質の機能を分析する分析工程を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の機能調節剤は、TPRモチーフタンパク質の機能調節剤であり、式(1)~(50)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のスクリーニング方法は、S100の機能調節物質のスクリーニング方法であって、前記S100と候補物質との共存下、TPRモチーフタンパク質の機能を分析する分析工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、細胞内カルシウム受容体タンパク質であるS100が、TPRモチーフタンパク質の一種であるPP5に結合することによって、PP5活性が、増強されることを見出した。この知見に基づいて、S100によるTPRモチーフタンパク質の機能の調節方法を達成するに至った。さらに、この知見に基づいて、例えば、S100の拮抗化合物等、TPRモチーフタンパク質の様々な機能調節物質のスクリーニング方法を構築し、この方法によって、種々の機能調節物質を提供するに至った。PP5をはじめとするTPRモチーフタンパク質は、前述のように、癌等の疾患に関連することから、本発明は、生化学等の研究分野および臨床分野のいずれにおいて、極めて重要な技術と言える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1におけるプルダウンアッセイの結果である。
【図2】図2は、実施例1におけるSPRの結果である。
【図3】図3(A)は、実施例1におけるGST融合タンパク質の概略であり、図3(B)は、プルダウンアッセイの結果である。
【図4】図4(A)は、実施例1におけるプルダウンアッセイの結果であり、図4(B)は、ウエスタンブロットの結果である。
【図5】図5(A)および(B)は、実施例1におけるプルダウンアッセイの結果である。
【図6】図6(A)~(C)は、実施例1におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図7】図7(A)および(B)は、実施例1におけるウエスタンブロットの結果であり、図7(C)は、コントロールに対する脱リン酸の相対値を示すグラフである。
【図8】図8(A)~(C)は、実施例1におけるウエスタンブロットの結果である。
【図9】図9は、実施例2において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図10】図10(A)および(B)は、実施例2において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図11】図11(A)~(C)は、実施例3において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図12】図12(A)~(D)は、実施例3において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例3において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図14】図14(A)~(D)は、実施例3において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例4において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図16】図16(A)および(B)は、実施例5において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図17】図17(A)および(B)は、実施例5において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図18】図18(A)~(C)は、実施例6において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図19】図19(A)および(B)は、実施例7において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性を示すグラフである。
【図20】図20は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図21】図21は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図22】図22は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図23】図23は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図24】図24は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図25】図25は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図26】図26は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【図27】図27は、実施例8において、調節物質の存在下におけるPP5の脱リン酸化活性の相対値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(TPRモチーフタンパク質の機能の調節方法)
本発明のTPRモチーフタンパク質の機能の調節方法は、前述のように、TPRモチーフタンパク質に、S100を結合させることを特徴とする。

【0013】
TPRモチーフタンパク質とS100との結合は、TPRモチーフタンパク質とS100とを接触させることにより行える。TPRモチーフタンパク質とS100との接触は、例えば、in vivoでもよいし、in vitroでもよい。in vivoの場合、例えば、生体に、TPRモチーフタンパク質および/またはS100を投与することにより行うことができる。この場合、TPRモチーフタンパク質およびS100は、一方(例えば、TPRモチーフタンパク質)が前記生体由来であり、他方(例えば、S100)が前記生体外から投与されてもよく、ともに前記生体外から投与されてもよい。in vitroの場合、例えば、TPRモチーフタンパク質とS100との接触は、例えば、試験管、培養器等の人工的環境下でもよいし、培養細胞等の細胞(組織の意味も含む)で行うことができる。後者の場合、TPRモチーフタンパク質およびS100は、例えば、両方が、細胞由来でもよいし、一方が、細胞由来であり、他方が、細胞外から投与されてもよいし、両方が、前記細胞外から投与されてもよい。投与とは、例えば、タンパク質としての投与でもよいし、前記タンパク質のコード遺伝子の投与でもよく、後者の場合、例えば、前記コード遺伝子から前記タンパク質を発現させればよい。前記コード遺伝子は、例えば、ベクターにより投与してもよい。

【0014】
TPRモチーフタンパク質は、前述のように、TPRモチーフを有するタンパク質である。本発明において、TPRモチーフタンパク質の種類は、特に制限されず、例えば、PP5、FKBP52、Cyclophilin40、kinesin light chain等があげられる。本発明において、S100は、TPRモチーフタンパク質のTPRドメインに結合することによって、その機能を調節していると解される。

【0015】
PP5は、タンパク質の脱リン酸化酵素である。PP5は、TPRドメインと触媒ドメイン(CD)とを有している。PP5の場合、S100は、そのTPRドメインに結合することによって、PP5の脱リン酸化活性を増強していると解される。

【0016】
TPRモチーフタンパク質の由来は、特に制限されず、ヒト由来、または、ヒト以外の非ヒト動物由来があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ等の非ヒト哺乳類があげられる。具体例として、ヒト由来PP5は、例えば、NCBI アクセッション番号BC001970で登録されており、配列番号1で示すことができる。配列番号1において、1番目~181番目の領域(下線部)が、TPRドメインであり、182番目~499番目の領域が、触媒ドメインである。

【0017】
配列番号1(PP5):BC001970
MAMAEGERTECAEPPRDEPPADGALKRAEELKTQANDYFKAKDYENAIKF
YSQAIELNPSNAIYYGNRSLAYLRTECYGYALGDATRAIELDKKYIKGYY
RRAASNMALGKFRAALRDYETVVKVKPHDKDAKMKYQECNKIVKQKAFER
AIAGDEHKRSVVDSLDIESMTIEDEYSGPKLEDGKVTISFMKELMQWYKD
QKKLHRKCAYQILVQVKEVLSKLSTLVETTLKETEKITVCGDTHGQFYDL
LNIFELNGLPSETNPYIFNGDFVDRGSFSVEVILTLFGFKLLYPDHFHLL
RGNHETDNMNQIYGFEGEVKAKYTAQMYELFSEVFEWLPLAQCINGKVLI
MHGGLFSEDGVTLDDIRKIERNRQPPDSGPMCDLLWSDPQPQNGRSISKR
GVSCQFGPDVTKAFLEENNLDYIIRSHEVKAEGYEVAHGGRCVTVFSAPN
YCDQMGNKASYIHLQGSDLRPQFHQFTAVPHPNVKPMAYANTLLQLGMM

【0018】
PP5を、以下に例示するが、本発明は、これには制限されない。PP5は、例えば、下記(A1)~(A3)からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質があげられる。
(A1)配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質
(A2)前記(A1)のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、且つ、前記(A1)のタンパク質と同一の機能を有するタンパク質
(A3)前記(A1)のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、前記(A1)のタンパク質と同一の機能を有するタンパク質

【0019】
前記(A2)および(A3)において、「同一の機能」とは、脱リン酸化活性を示すことを意味する。

【0020】
前記(A2)において、「1個または数個」は、特に制限されず、例えば、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個である。

【0021】
前記(A3)において、「同一性」は、例えば、比較する配列同士を適切にアライメントしたときの同一性の程度であり、前記配列間のアミノ酸の正確な一致の出現率(%)を意味する。同一性は、例えば、任意のアルゴリズムの利用により行うことができ、具体的に、BLAST等が使用できる。同一性の算出は、例えば、デフォルトのパラメーターが使用できる。以下、同様である。前記同一性は、例えば、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは96%以上、97%以上、98%以上または99%以上である。

【0022】
S100の由来は、特に制限されず、ヒト由来、または、ヒト以外の非ヒト動物由来があげられる。前記非ヒト動物は、前述のような非ヒト哺乳類があげられる。ヒト由来PP5は、例えば、S100A1、S100A2、S100A6、S100B、S100P等があげられる。例えば、S100A1は、NCBI アクセッション番号BC014392で登録されており、配列番号2で示すことができ、S100A2は、NCBI アクセッション番号BC105787で登録されており、配列番号3で示すことができ、S100A6は、NCBI アクセッション番号BC001431で登録されており、配列番号4で示すことができ、S100Bは、NCBI アクセッション番号BC001766で登録されており、配列番号5で示すことができ、S100Pは、NCBI アクセッション番号BC006819で登録されており、配列番号6で示すことができる。

【0023】
配列番号2(S100A1)BC014392
MGSELETAMETLINVFHAHSGKEGDKYKLSKKELKELLQTELSGFLDAQKDVDAVDKVMKELDENGDGEVDFQEYVVLVAALTVACNNFFWENS
配列番号3(S100A2)BC105787
MMCSSLEQALAVLVTTFHKYSCQEGDKFKLSKGEMKELLHKELPSFVGEKVDEEGLKKLMGSLDENSDQQVDFQEYAVFLALITVMCNDFFQGCPDRP
配列番号4(S100A6)BC001431
MACPLDQAIGLLVAIFHKYSGREGDKHTLSKKELKELIQKELTIGSKLQDAEIARLMEDLDRNKDQEVNFQEYVTFLGALALIYNEALKG
配列番号5(S100B)BC001766
MSELEKAMVALIDVFHQYSGREGDKHKLKKSELKELINNELSHFLEEIKEQEVVDKVMETLDNDGDGECDFQEFMAFVAMVTTACHEFFEHE
配列番号6(S100P)BC006819
MTELETAMGMIIDVFSRYSGSEGSTQTLTKGELKVLMEKELPGFLQSGKDKDAVDKLLKDLDANGDAQVDFSEFIVFVAAITSACHKYFEKAGLK

【0024】
S100を、以下に例示するが、本発明は、これには制限されない。S100は、例えば、下記(B1)~(B3)からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質があげられる。
(B1)配列番号2~6のいずれかで表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質
(B2)前記(B1)のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、且つ、前記(B1)のタンパク質と同一の機能を有するタンパク質
(B3)前記(B1)のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、前記(B1)のタンパク質と同一の機能を有するタンパク質

【0025】
前記(B2)および(B3)において、「同一の機能」とは、TPRモチーフタンパク質への結合によって、TPRモチーフタンパク質の機能を調節することを意味する。TPRモチーフタンパク質が、例えば、PP5の場合、「同一の機能」は、PP5への結合によって、PP5の脱リン酸化活性を増強することを意味する。

【0026】
前記(B2)において、「1個または数個」は、特に制限されず、例えば、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個である。

【0027】
前記(B3)において、前記同一性は、例えば、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、特に好ましくは96%以上、97%以上、98%以上または99%以上である。

【0028】
本発明において、TPRモチーフタンパク質とS100との組合せは、特に制限されない。前記組合せは、例えば、TPRモチーフタンパク質とS100とが同じ由来であることが好ましい。

【0029】
S100は、細胞内カルシウム信号系に関与するカルシウム受容体タンパク質である。S100は、カルシウムイオン(Ca2+)非存在下でアポ型となり、カルシウムイオン存在下でホロ型となる。S100は、例えば、ホロ型でTPRモチーフタンパク質に結合するため、TPRモチーフタンパク質へのS100の結合は、カルシウムイオン存在下で行うことが好ましい。または、S100は、ホロ型S100を使用することが好ましい。

【0030】
本発明において、S100は、前述のようにTPRモチーフタンパク質の機能を調節できる。そこで、本発明の機能調節剤は、TPRモチーフタンパク質の機能調節剤であって、S100を含むことを特徴とする。本発明の機能調節剤は、S100を含むことが特徴であって、その他の構成は何ら制限されない。前記TPRモチーフタンパク質が、例えば、PP5の場合、本発明の機能調節剤は、PP5の活性増強剤といえる。

【0031】
S100は、例えば、TPRモチーフタンパク質の機能により直接的または間接的に生じる疾患の治療に使用できる。前記TPRモチーフタンパク質が、例えば、PP5の場合、前記疾患は、例えば、癌、アルツハイマー病等があげられる。そこで、S100は、以下に示すような治療剤および治療方法に適用できる。

【0032】
本発明の疾患の治療剤は、S100を含むことを特徴とする。本発明の治療剤は、S100を含むことが特徴であって、その他の構成は何ら制限されない。

【0033】
本発明の治療剤は、例えば、必要に応じて、さらに、薬学上許容される添加剤を含んでもよい。前記添加剤は、特に制限されず、基剤原料、賦形剤、着色剤、安定化剤、保存剤、香料等があげられる。本発明において、S100の配合量および前記添加剤の配合量は、S100の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。

【0034】
本発明の治療剤の投与条件は、特に制限されず、対象となる疾患の種類および程度等に応じて、投与形態、投与時期、投与量等を適宜設定できる。

【0035】
本発明の治療剤の投与形態は、特に制限されず、例えば、経口投与でもよいし、非経口投与でもよい。前記非経口投与は、例えば、静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、腹腔内投与、局所投与等があげられる。また、本発明の治療剤の投与対象は、特に制限されず、ヒト、または、非ヒト動物等があげられる。非ヒト動物は、例えば、前述のような非ヒト哺乳類等が例示できる。

【0036】
本発明の治療剤の剤型は、特に制限されず、例えば、前記投与形態に応じて適宜決定できる。前記剤型は、特に制限されず、例えば、液体状、固体状があげられる。経口投与の場合、前記剤型は、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等があげられる。非経口投与の場合、前記剤型は、例えば、注射用製剤、点滴用製剤等があげられる。

【0037】
本発明の疾患治療方法は、S100を患者に投与する工程を含むことを特徴とする。本発明は、S100を投与することが特徴であって、その他の条件および工程等は、特に制限されない。投与条件等は、特に制限されず、例えば、前記本発明の治療剤の記載を援用できる。前記患者は、例えば、ヒト、または、前述のような非ヒト動物があげられる。

【0038】
(TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、前述のように、TPRモチーフタンパク質の機能調節物質のスクリーニング方法であって、候補物質存在下、TPRモチーフタンパク質の機能を分析する分析工程を含むことを特徴とする。

【0039】
前記分析工程において、分析対象の機能は、特に制限されず、ターゲットとなるTPRモチーフタンパク質の種類に応じて設定できる。

【0040】
本発明のスクリーニング方法によれば、例えば、以下の作用を示す機能調節物質をスクリーニングできる。
(x1)TPRモチーフタンパク質に対するS100の機能を増強する増強物質。
(x2)S100に結合して、TPRモチーフタンパク質に対するS100の機能を失わせる物質。
(x3)TPRモチーフタンパク質に対して、S100と競合的に結合し、S100のTPRモチーフタンパク質への結合を阻害する物質。
(x4)TPRモチーフタンパク質の機能を増強する物質。
(x5)TPRモチーフタンパク質の機能調節部位に作用して、TPRモチーフタンパク質の機能を低下させる物質。
(x6)TPRモチーフタンパク質の機能部位に作用して、TPRモチーフタンパク質の機能を阻害する物質。

【0041】
前記候補物質は、特に制限されず、例えば、低分子化合物、高分子化合物等の化合物があげられる。前記候補物質は、例えば、天然由来でも、合成品でもよい。前記化合物は、例えば、塩、水和物でもよい。

【0042】
本発明のスクリーニング方法は、例えば、前記分析工程において、前記候補物質存在下におけるTPRモチーフタンパク質の機能と、前記候補物質非存在下におけるTPRモチーフタンパク質の機能とを比較する工程を含むことが好ましい。また、前記分析工程において、さらに、前記候補物質非存在下に対して異なる機能を示したものを、前記機能調節物質として選択する選択工程を含むことが好ましい。このように、前記候補物質の存在下と非存在下との間で、機能を比較することで、前記候補物質の調節能を判断できる。

【0043】
本発明のスクリーニング方法は、前記分析工程において、例えば、S100の存在下、TPRモチーフタンパク質と前記候補物質とを接触させてもよいし、S100の非存在下、TPRモチーフタンパク質と前記候補物質とを接触させてもよい。前記接触工程をS100存在下で行う場合、例えば、S100とカルシウムイオンとの共存下で行うことが好ましく、または、S100として、カルシウムイオンと結合したホロ型S100を使用することが好ましい。

【0044】
S100存在下で前記接触工程を行う場合、例えば、TPRモチーフタンパク質の機能を活性化する活性化物質、PP5を不活性化する不活性化物質をスクリーニングできる。前者は、例えば、前記(x1)の物質、後者は、例えば、前記(x2)、前記(x3)の物質があげられる。前記比較工程において、前記候補物質存在下のTPRモチーフタンパク質の機能が、前記候補物質非存在下のTPRモチーフタンパク質の機能よりも高い場合、前記候補物質は、前記活性化物質と判断できる。また、前記比較工程において、前記候補物質存在下のTPRモチーフタンパク質の活性が、前記候補物質非存在下のTPRモチーフタンパク質の活性よりも低い場合、前記候補物質は、前記不活性化物質と判断できる。

【0045】
S100非存在下で前記接触工程を行う場合、例えば、TPRモチーフタンパク質の機能を活性化する活性化物質、TPRモチーフタンパク質の機能を不活性化する不活性化物質をスクリーニングできる。前者は、例えば、前記(x4)の物質があげられる。後者は、例えば、前記(x5)の物質または前記(x6)の物質があげられる。前記比較工程において、前記候補物質存在下のTPRモチーフタンパク質の機能が、前記候補物質非存在下のTPRモチーフタンパク質の機能よりも高い場合、前記候補物質は、前記活性化物質と判断できる。また、前記比較工程において、前記候補物質存在下のTPRモチーフタンパク質の活性が、前記候補物質非存在下のTPRモチーフタンパク質の活性よりも低い場合、前記候補物質は、前記不活性化物質と判断できる。

【0046】
前記接触工程は、例えば、in vivoで行ってもよいし、in vitroで行ってもよい。in vivoの場合、例えば、生体に、前記候補物質を投与することにより行うことができる。この場合、TPRモチーフタンパク質およびS100は、ともに前記生体由来でもよいし、ともに前記生体外から投与されてもよいし、TPRモチーフタンパク質およびS100の一方が前記生体由来であり、他方が前記生体外から投与されてもよい。in vitroの場合、例えば、TPRモチーフタンパク質とS100との接触は、例えば、試験管、培養器等の人工的環境下でもよいし、培養細胞等の細胞、培養組織等の組織で行うことができる。また、後者の場合、TPRモチーフタンパク質とS100は、それぞれ、前記細胞または前記組織由来でもよいし、前記細胞または前記組織外から投与されてもよい。

【0047】
本発明のスクリーニング方法において、TPRモチーフタンパク質は、例えば、全長アミノ酸配列からなるタンパク質でもよいし、一部の領域を欠失した欠失タンパク質でもよい。前記欠失タンパク質は、例えば、TPRドメインを欠失するタンパク質、機能ドメインを欠失するタンパク質等があげられる。

【0048】
本発明のスクリーニング方法において、TPRモチーフタンパク質の種類は、特に制限されず、前述のようなタンパク質があげられる。以下に、具体例として、ターゲットのTPRモチーフタンパク質がPP5の例を示す。

【0049】
本発明のスクリーニング方法は、TPRモチーフタンパク質がPP5の場合、前記機能調節物質が、PP5の前記活性調節物質であり、前記分析工程において、PP5の脱リン酸化活性を分析することが好ましい。

【0050】
本発明のスクリーニング方法によれば、例えば、PP5に対して、以下の作用を示す活性調節物質をスクリーニングできる。
(x1’)S100によるPP5の活性化を増強する増強物質。以下、S100ポテンシエーター(potentiator)ともいう。
(x2’)S100に結合してS100の活性化機能を失わせる物質。以下、S100アンタゴニストともいう。
(x3’)PP5に対して、S100と競合的に結合し、S100のPP5への結合を阻害する物質。以下、S100バインディング アンタゴニストともいう。
(x4’)PP5の活性を増強する物質。以下、PP5 アクティベーター、S100ミミックまたはS100アゴニストともいう。
(x5’)PP5の活性調節部位に作用して、PP5の活性を低下させる物質。以下、アロステリックPP5インヒビターともいう。
(x6’)PP5の活性部位に作用して、PP5の活性を阻害する物質。以下、PP5カタリティックインヒビターともいう。

【0051】
本発明のスクリーニング方法は、例えば、さらに、前記候補物質の非存在下におけるPP5の活性と、前記候補物質の存在下におけるPP5の活性とを比較する工程を含む。前記比較工程において、前記候補物質存在下のPP5の活性が、前記候補物質非存在下のPP5の活性よりも高い場合、前記候補物質は、PP5の活性化物質と判断でき、また、前記候補物質存在下のPP5の活性が、前記候補物質非存在下のPP5の活性よりも低い場合、前記候補物質は、PP5不活性化物質と判断できる。

【0052】
本発明のスクリーニング方法は、前記接触工程において、例えば、S100の存在下、PP5と前記候補物質とを接触させてもよいし、S100の非存在下、PP5と前記候補物質とを接触させてもよい。前記接触工程をS100存在下で行う場合、例えば、S100とカルシウムイオンとの共存下で行うことが好ましく、または、S100として、カルシウムイオンと結合したホロ型S100を使用することが好ましい。

【0053】
S100存在下で前記接触工程を行う場合、例えば、PP5を活性化する活性化物質、PP5を不活性化する不活性化物質をスクリーニングできる。前者は、例えば、前記(x1’)S100によるPP5の活性化を増強する増強物質(S100ポテンシエーター)があげられる。後者は、例えば、前記(x2’)S100に結合してS100の活性化機能を失わせる物質(S100アンタゴニスト)、前記(x3’)PP5に対して、S100と競合的に結合し、S100のPP5への結合を阻害する物質(S100バインディング アンタゴニスト)があげられる。前記比較工程において、前記候補物質存在下のPP5タンパク質の活性が、前記候補物質非存在下のPP5タンパク質の活性よりも高い場合、前記候補物質は、前記活性化物質と判断できる。また、前記比較工程において、前記候補物質存在下のPP5タンパク質の活性が、前記候補物質非存在下のPP5タンパク質の活性よりも低い場合、前記候補物質は、前記不活性化物質と判断できる。

【0054】
S100非存在下で前記接触工程を行う場合、例えば、PP5を活性化する活性化物質、PP5を不活性化する不活性化物質をスクリーニングできる。前者は、例えば、前記(x4’)PP5の活性を増強する物質(PP5 アクティベーター、S100ミミックまたはS100アゴニスト)があげられる。後者は、例えば、前記(x5’)PP5の活性調節部位に作用して、PP5の活性を低下させる物質(アロステリックPP5インヒビター)または前記(x6’)PP5の活性部位に作用して、PP5の活性を阻害する物質(PP5カタリティックインヒビター)があげられる。前記比較工程において、前記候補物質存在下のPP5の活性が、前記候補物質非存在下のPP5の活性よりも高い場合、前記候補物質は、前記活性化物質と判断できる。また、前記比較工程において、前記候補物質存在下のPP5の活性が、前記候補物質非存在下のPP5の活性よりも低い場合、前記候補物質は、前記不活性化物質と判断できる。

【0055】
前記分析工程において、PP5のホスファターゼ活性の分析方法は、特に制限されず、公知の手法が採用できる。前記活性の分析は、例えば、市販のキットを使用し、そのプロトコールにしたがって行うことができる。前記キットは、例えば、Ser/Thr Phosphatase Assay kit(Upstate)等があげられる。

【0056】
ホスファターゼ活性の分析は、例えば、以下のような方法で行うことができる。基質として、リン酸化されたホスホペプチド(配列番号7:KRpTIRR)を使用する。そして、前記ホスホペプチドと、候補物質および/またはPP5とを、緩衝液に添加し、この混合液をインキュベートする。前記緩衝液の組成は、例えば、20mmol/L Tris-HCl(pH7.5)、20mmol/L MgCl、0.01% Tween20、および1mmol/L CaClである。インキュベート後、前記混合液に所定濃度のS100を添加し、インキュベートする。そして、インキュベート後の反応液に、malachite green solutionを添加した後、630nmにおけるサンプルの吸光度を測定する。前記malachite green solutionの組成は、例えば、0.034% malachite green、10mmol/L ammonium molybdate、1mol/L HCl、3.4% エタノールおよび0.01% Tween20とする。そして、放出されたリン酸塩の量を、既知量のリン酸塩から準備したリン酸塩標準曲線を用いて算出する。これをホスファターゼ活性として評価できる。

【0057】
本発明のスクリーニング方法において、PP5は、例えば、本発明の調節方法に記載したタンパク質でもよいし、例えば、以下に示す欠失PP5でもよい。前記欠失PP5は、例えば、TPRドメインを欠失するPP5-ΔTPR、触媒ドメイン(CD)を欠失するPP5-ΔCD等があげられる。

【0058】
本発明のスクリーニング方法において、S100は、例えば、本発明の調節方法に記載したタンパク質が例示できる。

【0059】
(TPRモチーフタンパク質の機能調節剤)
本発明のTPRモチーフタンパク質の機能調節剤は、TPRモチーフタンパク質の機能を調節する調節剤であり、TPRモチーフタンパク質の機能を活性化する活性化剤、または、TPRモチーフタンパク質の機能を不活性化する不活性化剤があげられる。

【0060】
TPRモチーフタンパク質がPP5の場合、本発明の機能調節剤は、PP5の活性を調節する調節剤であり、PP5活性を活性化する活性化剤、または、PP5の活性を不活性化する不活性化剤があげられる。

【0061】
本発明の機能調節剤は、例えば、下記式(1)~(50)に示される化合物が例示できる。TPRモチーフタンパク質がPP5の場合、以下の化合物は、それぞれ、前記(x1’)S100によるPP5の活性化を増強するS100ポテンシエーター、前記(x2’)S100に結合してS100の活性化機能を失わせるS100アンタゴニスト、前記(x3’)PP5に対して、S100と競合的に結合し、S100のPP5への結合を阻害するS100バインディング アンタゴニスト、前記(x4’)PP5の活性を増強するPP5アクティベーター、前記(x5’)PP5の活性調節部位に作用して、PP5の活性を低下させるアロステリックPP5インヒビター、前記(x6’)PP5の活性部位に作用して、PP5の活性を阻害するPP5カタリティックインヒビターに分類できる。なお、本発明は、これらには限定されない。

【0062】
【化1】
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【0063】
【化2】
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【0064】
【化3】
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【0065】
【化4-1】
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【0066】
【化4-2】
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【0067】
【化4-3】
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【0068】
【化4-4】
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【0069】
【化4-5】
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【0070】
【化5】
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【0071】
【化6-1】
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【0072】
【化6-2】
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【0073】
【化6-3】
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【0074】
また、これらの化合物のうち、以下に示すものは、一般式で表わすことができる。
【化7】
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【0075】
前記活性化剤は、例えば、式(1)~(5)および(12)~(36)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。前記活性化剤は、例えば、1種類の化合物を含んでもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0076】
前記不活性化剤は、式(6)~(11)および(37)~(50)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。前記不活性化剤は、例えば、1種類の化合物を含んでもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0077】
本発明の機能調節剤は、これらの例示には制限されない。前記機能調節剤は、例えば、例示した化合物の誘導体でもよい。具体例として、前記化合物において、例えば、スルホン基およびアゾ基は、例えば、任意でもよい。

【0078】
これらの機能調節剤を組合せて使用すれば、例えば、TPRモチーフタンパク質の機能のON-OFFを自由に設定することが可能となる。

【0079】
本発明の機能調節剤は、例えば、前述のような化合物を含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。

【0080】
本発明の機能調節剤は、例えば、TPRモチーフタンパク質の機能により直接的または間接的に生じる疾患の治療に使用できる。TPRモチーフタンパク質がPP5の場合、前記疾患は、例えば、癌、アルツハイマー病等があげられる。そこで、前記機能調節剤は、以下に示すような治療剤および治療方法に適用できる。

【0081】
本発明の疾患の治療剤は、前記機能調節剤を含むことを特徴とする。本発明の治療剤は、前記機能調節剤を含むことが特徴であって、その他の構成は何ら制限されない。

【0082】
本発明の治療剤は、例えば、必要に応じて、さらに、薬学上許容される添加剤を含んでもよい。前記添加剤は、特に制限されず、前述と同様のものがあげられる。本発明において、前記機能調節剤の配合量および前記添加剤の配合量は、前記機能調節剤の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。本発明の治療剤の投与条件、投与形態、剤型は、特に制限されず、例えば、前述の記載が援用できる。

【0083】
本発明の疾患治療方法は、前記機能調節剤を患者に投与する工程を含むことを特徴とする。本発明は、前記機能調節剤を投与することが特徴であって、その他の条件および工程等は、特に制限されない。投与条件、投与対象等は、特に制限されず、例えば、前述の記載が援用できる。

【0084】
(S100の機能調節物質のスクリーニング方法)
本発明のスクリーニング方法は、前述のように、S100の機能調節物質のスクリーニング方法であって、S100と候補物質との共存下、TPRモチーフタンパク質の機能を分析する分析工程を含むことを特徴とする。

【0085】
本発明のスクリーニング方法によれば、例えば、TPRモチーフタンパク質に対するS100の機能を調節する機能調節物質をスクリーニングできる。前記機能調節物質としては、例えば、前述したような前記(x1)~(x3)等の物質があげられる。
(x1)TPRモチーフタンパク質に対するS100の機能を増強する増強物質。
(x2)S100に結合して、TPRモチーフタンパク質に対するS100の機能を失わせる物質。
(x3)TPRモチーフタンパク質に対して、S100と競合的に結合し、S100のTPRモチーフタンパク質への結合を阻害する物質。

【0086】
具体例として、TPRモチーフタンパク質がPP5の場合、本発明のスクリーニング方法によれば、例えば、S100がPP5の活性を増強する機能に対する調節物質をスクリーニングできる。前記調節物質としては、例えば、前述したような前記(x1’)~(x3’)等の物質があげられる。
(x1’)S100によるPP5の活性化を増強するS100ポテンシエーター。
(x2’)S100に結合してS100の活性化機能を失わせるS100アンタゴニスト。
(x3’)PP5に対して、S100と競合的に結合し、S100のPP5への結合を阻害するS100バインディング アンタゴニスト。
【実施例】
【0087】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【実施例】
【0088】
1.材料
グルタチオンセファロースおよびNickel-nitrilotriacetic acid-アガロースは、それぞれ、GE HealthcareおよびQiagenから購入した。抗体として、抗S100A1抗体(R&D systems)、抗S100A2抗体(Sigma)、抗S100A6抗体(Sigma)、抗S100B抗体(QED)、抗Hsp90抗体(Stressgen)、抗PP5抗体(BD transduction laboratories)、抗pSer396 tau抗体(Abcam)、抗pSer409抗体(Invitrogen)、抗tau抗体(Invitrogen)、抗pThr845 ASK1抗体(Cell Signaling)、HRP標識化抗マウスIgG(Cell Signaling)、HRP標識化抗ラビットIgG(Cell Signaling)、抗HA-HRP標識化抗体(Sigma)を使用した。ゲネチシンは、Invitrogenから、イオノマイシン、抗HA抗体アガロースおよび他の化学物質は、Sigmaから購入した。
【実施例】
【0089】
2.細胞培養およびトランスフェクション
COS-7細胞は、JCRBから購入した。COS-7細胞の培養は、95%Oおよび5%COの加湿されたチャンバー、ならびに10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリンおよび1%ストレプトマイシンを添加したDMEM(Sigma)を使用した。トランスフェクションは、トランスフェクション試薬として、Fugene6(Invitrogen)またはHD transfection reagent(Invitrogen)を使用し、そのプロトコールに従って行った。
また、Tauタンパク質を安定的に発現するCOS-7細胞を調製するため、COS-7細胞は、トランスフェクション後の数週間、500ng/ml ゲネチシン共存下で培養した。なお、tauの発現は、ウエスタンブロットにより確認した。
【実施例】
【0090】
3.組換えタンパク質
S100として、S100A1、S100A2、S100A4、S100A6、S100A10、S100A11、S100A13、S100BおよびS100Pを、下記文献に基づき、発現させて精製した。
Okada, M. et al., (2004) J. Biol. Chem. 279, 4221-4233
Yamashita, K. et al., (1999) Protein Expr. Purif. 16, 47-52
GSTを結合させたGST-PP5およびHisタグ(6×His)を結合させたHis-PP5は、製造者(GE HealthcareおよびQiagen)のプロトコールに従って、発現させ精製した。組換えGSK-3βおよびPKAは、それぞれ、SignalChemおよびPromegaから購入した。ヒトHSP90は、下記文献に基づき調製した。
Shimamoto, S. et. Al., (2008) J. Biol. Chem. 283, 28246-28258
組換えtauタンパク質は、ENZO life sciencesから購入した。
【実施例】
【0091】
4.プラスミド
ヒトPP5遺伝子を、ヒトcDNAライブラリからPCRにより増幅し、pET16a、PGEX-6P1、pME18S-FlagおよびpME18S-HAベクターにクローニングした。GST-PP5遺伝子の変異体を、PCRにより調製した。前記変異体は、PP5におけるTPRの1-181残基のうち、28-160を欠失させた欠失変異体(ΔTPR)、および、32、74、97または101番目のアミノ酸残基をアラニンに変異させた4種類のアラニン変異体(K32A、R74A、K97AおよびR101A)を調製した。また、His-PP5の触媒ドメインの変異体(His-PP5-CD)として、ヒトPP5における171-486番目の変異体を作製した。ヒトHsp90遺伝子を、文献(Shimamoto, S. et. Al., (2008) J. Biol. Chem. 283, 28246-28258)に基づいて、クローニングした。マウスASK1遺伝子を、マウス脳cDNAからPCRにより増幅し、pME18S-cMycベクターにクローニングした。pET11a-S100プラスミドおよびpME18S-S100プラスミドの構築は、文献(Okada, M. et al., (2004) J. Biol. Chem. 279, 4221-4233)に基づいて行った。恒久的に活性なS100P(S100P-PA)の遺伝子は、文献(Austermann, J. et. al., (2009) Biochim. Biophys. Acta 1793,1078-1085)に基づいて調製した。pcDNA3-tauプラスミドは、ヒトtau441のcDNA(Addgene)を、pcDNA3ベクターにクローニングして調製した。
【実施例】
【0092】
5.GSTプルダウン
S100またはHSP90について、PP5への結合分析を、以下のように行った。緩衝液中、GST-PP5(12.5μg)と、S100タンパク質(25μg)またはHsp90タンパク質(50μg)と、グルタチオンセファロースビーズ(50μl)とを、室温で1時間混合した。前記GST-PP5は、野生型(WT)または前記変異体を使用した。前記緩衝液の組成は、100mmol/L KCl、20mmol/L Tris-HCl(pH7.5)、0.01% Tween20、および1mmol/L CaClまたはEGTAとした。
【実施例】
【0093】
S100Bの結合アッセイは、GST-PP5 50μgおよびS100B 50μgを使用した。そして、前記ビーズを複数回洗浄した後、SDSサンプルバッファーと共にボイルし、10%トリシンSDS-PAGEゲルにより分離し、クーマシーブリリアントブルー(CBB)で染色した。競合的結合アッセイは、GST-PP5(20μg)、S100(50μg)および所定量(0-150μg)のHSP90を、前述と同様にして、グルタチオンセファロース(25μl)とインキュベートした。同様の実験を、GST-PP5(20μg)、HSP90(50μg)および所定量(0-150μg)のS100を用いて行った。
【実施例】
【0094】
6.表面プラズモン共鳴(SPR)
タンパク質の結合相互作用を、SPR Biacore2000 system(Biacore)を用いて行った。CM5 chip(Biacore)のデキストラン表面へのPP5のアミンカップリングのために、N-エチル-N’-(3-ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびエタノールアミド-HCl(Biacore)を使用した。His-PP5(100μg/ml、140μl)を、20mmol/L 酢酸アンモニウム(pH4.2)中で固定化し、応答ユニット2600(0.3pmol)まで結合させ、安定したベースラインを得た。全ての工程において、20mmol/L HEPES(pH7.4)、150mmol/L NaCl、0.005% Tween20、1mmol/L CaClを、流速20μl/minで用いた。組換えタンパク質S100A1、S100A2、S100A6およびS100Bを、所定濃度(1.25μmol/L、625nmol/L、313nmol/L、156nmol/L)で注入した。His-PP5をカップリングしたセンサーチップを、タンパク質インジェクションの間、応答ユニットがユニットインジェクション前のベースラインに戻るまで、50mmol/L NaOHでの短時間(60秒)の洗浄により、再生した。応答曲線は、コントロールフローセルで同時に発生したシグナルを差し引いて準備した。Biacoreセンサグラム曲線は、1:1 Langmuir modelを用いるBIA evaluation 3.0において評価した。
【実施例】
【0095】
7.in vivoでの競合的結合アッセイ
PP5結合アッセイのために、pME18S-S100およびpME18S-HA-PP5プラスミドを、COS-7細胞に共トランスフェクションした。トランスフェクションから48時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、緩衝液で溶解した。前記緩衝液の組成は、50mmol/L Tris-HCl(pH7.5)、150mmol/L NaCl、0.5% Triton-X100、0.5% NP40およびprotease inhibitor cocktail(Roche)とした。溶解後のサンプルを、ソニケーションし、14,000rpm、10分間で遠心分離した。得られた上清を、1mmol/L CaClまたはEGTA存在下、30μlの抗HA抗体アガロースと、1時間、室温でインキュベートした。そして、前記抗HA抗体アガロースを洗浄後、得られたサンプルを、抗HSP90抗体、抗HA-HRP抗体または抗S100タンパク質抗体により、ウエスタンブロットにより分析した。また、ASK1結合アッセイのために、pME18S-Flag-PP5、pME18S-cMyc-ASK1およびpME18S-S100A1またはpME18S-S100PもしくはpME18S-S100P-PAプラスミドを、共トランスフェクションした。タンパク質を精製し、30μlの抗Flag抗体アガロースでインキュベートした。得られたサンプルを、抗PP5抗体または抗cMyc-HRP抗体によるウエスタンブロットにより分析した。
【実施例】
【0096】
8.in vitroでのホスファターゼアッセイ
PP5タンパク質(WT)またはPP5変異体タンパク質(PP5-CD)のホスファターゼ活性を、Ser/Thr Phosphatase Assay kit(Upstate)を使用し、そのプロトコールに従って測定した。ホスホペプチド(配列番号7:KRpTIRR)100μmol/Lを、緩衝液50μl中で、250ngのHis-PP5(WT)または250ngのHis-PP5-CDとインキュベートした。前記緩衝液の組成は、20mmol/L Tris-HCl(pH7.5)、20mmol/L MgCl、0.01% Tween20、および1mmol/L CaClまたはEGTAとした。所定濃度(0-50μmol/L)のS100タンパク質またはHSP90を添加し、10分間、37℃でインキュベートした。HSP90は、HSP90-WTおよびHSP C90を、それぞれ使用した。そして、100μlのmalachite green solutionの添加後、630nmにおけるサンプルの吸光度を、マイクロプレートリーダーにより測定した。前記malachite green solutionの組成は、0.034% malachite green、10mmol/L ammonium molybdate、1mol/L HCl、3.4% エタノールおよび0.01% Tween20とした。放出されたリン酸塩の量を、既知量のリン酸塩から準備したリン酸塩標準曲線を用いて算出した。これをホスファターゼ活性として評価した。
【実施例】
【0097】
9.in vitroでのtau脱リン酸化
組換えtau441を、GSK-3βまたはPKAでリン酸化した。tauのSer396のリン酸化のために、10μgのtauを、緩衝液中で、1μgのGSK-3βと90分間、30℃でインキュベートした。前記緩衝液の組成は、40mmol/L HEPES(pH7.5)、10mmol/L MgCl、0.5mmol/L DTTおよび0.2mmol/L ATPとした。tauのSer409のリン酸化のために、前記タンパク質を、緩衝液中で、250ユニットのPKAと、90分間、30℃でインキュベートした。前記緩衝液の組成は、40mmol/L HEPES(pH6.8)、10mmol/L β-メルカプロエタノール、10mmol/L MgClおよび0.2mmol/L ATPとした。リン酸化反応後、サンプルを、Amicon ultra spin column(Millipore)で洗浄し、500μlの20mmol/L Tris-HCl(pH7.5)および0.01% Tween20で洗浄した。リン酸化されたtauを、緩衝液中で、100ngのHis-PP5とインキュベートした。前記緩衝液の組成は、20mmol/L Tris-HCl(pH7.5)、20mmol/L MgCl、0.01% Tween20、および1mmol/L CaClまたはEGTAとした。S100A1、S100A2またはS100A6を、前記反応混合物に添加し、10分間、37℃でインキュベートした。得られたサンプルを、SDS-PAGEにより分離し、抗pSer396抗体、抗pSer409抗体または抗tau抗体を用いて、ウエスタンブロットにより分析した。
【実施例】
【0098】
10.in vivoでの脱リン酸化
tauの脱リン酸化のために、安定的にtauを発現するCOS-7細胞を、pME18SまたはpME18S-S100A1発現プラスミドでトランスフェクションした。48時間後、5μmol/Lのイオノマイシンをアプライし、さらに、15分間または60分間インキュベートした。発現したタンパク質を、protease inhibitor cocktailおよびphosphatase inhibitor cocktail(Pierce)を含む溶解用緩衝液を用いて精製した。ソニケーションおよび遠心分離の後、得られたサンプルを、抗pSer396 tau抗体、抗tau抗体、抗S100A1抗体または抗PP5抗体を用いて、ウエスタンブロット分析を行った。
【実施例】
【0099】
ASK1の脱リン酸化のため、pME18S-Flag-PP5、pME18S-cMyc-ASK1、およびpME18S-S100PまたはpME18S-S100P-PAプラスミドを、COS-7細胞に共トランスフェクションした。48時間後、発現したタンパク質を精製し、得られたサンプルを、抗pThr845-ASK1抗体を用いて、ウエスタンブロット分析を行った。
【実施例】
【0100】
11.統計
統計は、unpaired t testおよびpaired t testを行った。そして、信頼水準p<0.05を、統計学的に有意とした。
【実施例】
【0101】
[実施例1]
PP5のTPRドメインに対するS100の結合を確認した。
【実施例】
【0102】
(1)プルダウンアッセイ
プルダウンアッセイにより、in vitroにおいて、1mmol/L CaClまたはEGTAの存在下、S100がPP5に直接結合するか否かの確認を行った。これらの結果を図1に示す。図1は、各種S100とGST-PP5との結合を示すプルダウンアッセイの結果である。図1(A)に示すように、S100A2およびS100A6は、Ca2+存在下、PP5に結合した。また、S100A1は、Ca2+存在下だけでなく、Ca2+非存在下においても、PP5への結合が確認された。また、多量のGST-PP5(50μg)を用いた場合、図1(B)に示すように、S100Bは、Ca2+存在下、PP5に結合した。
【実施例】
【0103】
(2)SPR
PP5に対するS100A1、S100A2、S100A6およびS100Bの結合について、SPRにより、リアルタイム結合反応速度論を解析した。この結果を、図2および下記表1に示す。表1に示すように、PP5に対する各S100の会合速度定数(Ka)は、類似していた。また、S100A6およびS100A2の解離は、S100BおよびS100A1の解離と比較して、ゆっくり起こり、全体の結合親和性は、相対的に高くなっていることがわかる。この結果から、S100A1およびS100Bと、S100A2とS100A6との間で、異なる相互作用メカニズムが存在すると考えらえる。
【実施例】
【0104】
【表1】
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【実施例】
【0105】
(3)PP5におけるS100結合ドメインの決定
PP5は、N末端のTPRおよびC末端の触媒ドメイン(CD)により構成される。そこで、PP5におけるS100の結合ドメインを、プルダウンアッセイにより決定した。
【実施例】
【0106】
前記プルダウンアッセイには、GSTと融合させた4種類のタンパク質を使用した。これらのタンパク質の概略を図3(A)に示す。野生型(WT)は、PP5とGSTとの融合タンパク質、欠失体(TPR)は、触媒ドメインを欠失するTPRとGSTとの融合タンパク質、欠失変異体(ΔTPR)は、TPRを欠失する触媒ドメインとGSTとの融合タンパク質、GSTは、GSTのみから構成されるタンパク質とした。
【実施例】
【0107】
これらの結果を、図3(B)に示す。図3(B)は、プルダウンアッセイの結果である。図3(B)に示すように、いずれのS100も、TPRを欠失する変異体への結合は確認できなかった。この結果から、S100は、PP5のTPRドメインに相互作用することがわかった。
【実施例】
【0108】
(4)in vivoまたはin vitroにおける、S100による、PP5とHSP90との相互作用の阻害
HSP90は、そのC末端のEEVD残基を介して、PP5のTPRドメインに結合することが知られている。S100およびHSP90は、TPRドメインを共有する。そこで、in vitroにおいて、HSP90またはS100の量の増加に伴って、PP5との会合が阻害されるか否かを、プルダウンアッセイにより確認した。
【実施例】
【0109】
これらの結果を、図4(A)に示す。図4(A)は、プルダウンアッセイの結果である。図4(A)に示すように、HSP90の量の増加に伴って、量依存的に、PP5からS100A1およびS100A2の置換が生じた。そして、S100A6に対しては、弱い結合阻害を示した。他方、S100A1およびS100A2の増加に伴って、PP5に対するHSP90の会合を阻害した。
【実施例】
【0110】
さらに、哺乳類細胞におけるPP5の競合的結合を確認するため、共免疫沈降を行った。具体的には、HA-PP5と、S100A1またはS100A2を共発現させたCOS-7細胞のライゼートについて行った。HA-PP5と共沈降された内因性HSP90を、抗HSP90抗体を用いて、ウエスタンブロット分析により検出した。
【実施例】
【0111】
これらの結果を、図4(B)に示す。図4(B)に示すように、前述のin vitroの結果と同様に、S100A1またはS100A2の過剰発現により、PP5とHSP90の相互作用が阻害された。
【実施例】
【0112】
(5)PP5変異体に対するS100およびHSP90の結合
HSP90は、PP5のTPRドメインにおけるcarboxylate clampと呼ばれるモチーフに結合する。carboxylate clampは、基本となる4つのアミノ酸残基、すなわち、K32、R74、K97およびR101から構成される。PP5とHSP90との結合が、S100に阻害される際、S100が、carboxylate clampにおける前記4種類のアミノ酸残基の一つに、競合的に結合するか否かを確認した。
【実施例】
【0113】
carboxylate clampのアラニン置換変異体として、アラニン変異体(K32A、R74A、K97AおよびR101A)を使用し、プルダウンアッセイを行った。これらの結果を、図5に示す。図5(A)に示すように、HSP90は、いずれのアラニン変異体には結合しなかった。これに対して、図5(B)に示すように、S100は、いずれのアラニン変異体にも結合した。この結果から、PP5におけるcarboxylate clampの点突然変異は、S100の結合に影響を及ぼさないことがわかった。
【実施例】
【0114】
(6)Ca2+依存的なS100によるPP5の活性化
S100によるPP5の脱リン酸化活性に対する効果を確認した。具体的には、所定濃度のHis-PP5と、基質となる合成ホスホペプチド(配列番号7:KRpTIRR)とをインキュベートし、ホスファターゼ活性を測定した。これらの結果を図6に示す。
【実施例】
【0115】
図6(A)において、丸は、Ca2+存在下の結果を示し、丸は、Ca2+非存在下の結果を示す。図6(A)に示すように、PP5の基礎ホスファターゼ活性は、10nmol/min/mgタンパク質であった。S100A1、S100A2、S100A6およびS100Bは、それぞれ、Ca2+依存的に、PP5活性を著しく活性化した。
【実施例】
【0116】
TPRドメインは、PP5の触媒ドメイン(CD)を、TPRドメインの活性化および除去から保護している。そこで、N末端のTPRドメインを除去し、C末端の触媒ドメイン(CD)を残した、変異体His-PP5を作製した。そして、この変異体His-PP5に対する各S100の活性化を確認した。これらの結果を図6(B)に示す。
【実施例】
【0117】
図6(B)において、コントロールは、S100非存在下の変異体His-PP5の結果である。この結果から、PP5は、TPRドメインの除去により、構造的に活性型となり、約650nmol/min/mgタンパク質を示した。この変異体の活性は、野生型酵素の基礎活性の65倍であった。
【実施例】
【0118】
つぎに、全長HSP90(12kDa)およびHSP C90(HSP90のC末端ドメイン)が、PP5の活性を、活性化可能か否かを確認した。この結果を、図6(C)に示す。図6(C)の各グラフにおいて、右上の小さいグラフは、タンパク質の添加量が0~20μg/mlの結果を示す。図6(C)に示すように、HSP90およびHSP C90による、His-PP5の用量依存性の活性化を示した。しかしながら、S100と比較した結果、HSP90によるPP5の活性化は弱く、約6.5倍でしかなかった。他方、HSP C90は、17.3倍の活性の誘導を示した。
【実施例】
【0119】
(7)in vivoおよびin vitroにおける、S100によるPP5の活性化ならびにtauの脱リン酸化
PP5は、tauの脱リン酸化において、キーとなる役割を果たす。そして、過剰なリン酸化は、アルツハイマー病の要因となる。そこで、基質としてリン酸化されたtauを使用し、Ca2+存在下でのS100(Ca2+/S100)による、PP5の活性化を確認した。
【実施例】
【0120】
tauの複数部位は、PKA、GSK-3β、cdk5およびCaMKII等のtauキナーゼにより、リン酸化される。そこで、in vitroにおけるPP5のホスファターゼアッセイのため、GSK-3βおよびPKAを、それぞれ、tauのSer396およびSer409のリン酸化に用いた。そして、リン酸化tauを、His-PP5、およびS100A1、S100A2またはS100Bとインキュベートした。そして、tauのリン酸化状態を、抗pSer396 tau抗体または抗pSer409 tau抗体を用いて、ウエスタンブロットにより検出した。これらの結果を、図7(A)に示す。
【実施例】
【0121】
図7(A)に示すように、各S100は、それぞれPP5を活性化し、tauの脱リン酸化を増加させた。
【実施例】
【0122】
S100A1によるPP5の活性化、およびtauの脱リン酸化について、in vivoでの確認を行った。細胞は、tau441を安定的に高レベルで発現する、トランスフェクションされたCOS-7細胞株を使用した。これらの結果を、図7(B)および(C)に示す。
【実施例】
【0123】
図7(B)および(C)に示すように、S100非存在下のコントロールは、イオノマイシン処理によっても、pSer396におけるtauリン酸化状態に、変化は見られなかった(95.3±25.9%、N=5)。また、S100A1を過剰発現した場合、イオノマイシン非存在下では、リン酸化状態に変化は見られなかった(106.0±15.7%、N=5)。しかしながら、15分間のイオノマイシン処理により、pSer396 tauのレベルが低下し(69.0±12.6%、P<0.05、N=4)、さらに、60分間の処理により、有意な低下が見られた(46.4±4.6%、P<0.01、N=5)。これらの結果から、S100A1は、Ca2+依存的に、PP5を活性化し、tauの脱リン酸化を増加させることがわかった。
【実施例】
【0124】
(8)in vivoにおけるS100によるPP5とASK1との相互作用の阻害
ASK1は、JNKキナーゼカスケードおよびp38 MAP キナーゼカスケードを活性化するMAP3Kであり、H等の酸化ストレスへの応答において活性化される。ASK1の活性化は、キナーゼドメインに位置するThr845の自己リン酸化に関連する。そして、酸化ストレスによるASK1の活性化に続いて、PP5がASK1に結合することで、ASK1は脱リン酸化され、不活性化状態に戻る。
【実施例】
【0125】
そこで、COS-7細胞内で、S100A1、PP5およびASK1を共発現させた。そして、細胞のイオノマイシン処理により、PP5とASK1との結合が阻害されることを、ウエスタンブロットにより確認した。これらの結果を、図8(A)に示す。
【実施例】
【0126】
図8(A)に示すように、イオノマイシン処理していない場合、阻害は、確認されなかった。これは、イオノマイシンによる細胞内Ca2+濃度の増加により、PP5に対するS100A1の結合が刺激され、これによって、PP5-ASK1の相互作用が阻害されるためと推測される。
【実施例】
【0127】
また、S100として野生型S100Pを使用した。この結果を、図8(B)に示す。図8(B)に示すように、野生型のS100Pは、S100A1、S100A2、S100A6およびS100Bと同様に、in vitroにおいて、GST-PP5に結合した。
【実施例】
【0128】
また、COS-7細胞について、野生型S100PまたはS100P-PAを、PP5およびASK1と共発現させた。この結果を、図8(C)に示す。図8(C)に示すように、S100P-PAは、PP5およびASK1の結合を阻害した。一方、野生型S100Pは、阻害がみられなかった。リン酸化されたASK1のpThr845の増加に起因し、S100P-PAは、ASK1からのPP5の解離により、脱リン酸化を阻害すると解される。
【実施例】
【0129】
[実施例2]
S100と調節物質との共存下、PP5のホスファターゼ活性を評価し、前記調節物質の機能を確認した。
【実施例】
【0130】
PP5(PP5-WT)のホスファターゼ活性を測定した。ホスファターゼ活性の測定方法は、特に示さない限り、前述の「8.in vitroでのホスファターゼアッセイ」に従って行った。具体的には、前記ホスホペプチド(100μmol/L)、所定濃度(0-200μmol/L)の調節物質、0.25μmol/LのS100A1、0.02μmol/LのPP5を、緩衝液50μl中、37℃で10分間インキュベートした。そして、100μlのmalachite green solutionの添加後、630nmにおけるサンプルの吸光度を、マイクロプレートリーダーにより測定した。前記緩衝液および前記malachite green solutionは、前述の通りとした。そして、放出されたリン酸塩の量を、既知量のリン酸塩から準備したリン酸塩標準曲線を用いて算出した。これをホスファターゼ活性として評価した。
【実施例】
【0131】
(1)S100バインディング アンタゴニスト
調節物質としてPonceau‐3Rを使用した。この結果を、図9に示す。図9に示すように、Ponceau-3Rを添加した結果、S100のPP5への結合が阻止され、PP5の活性が、定常活性に抑制された。この結果から、Ponceau-3Rは、S100バインディング アンタゴニストといえる。
【実施例】
【0132】
(2)S100ポテンシエーター
調節物質として、Erythrosine BおよびPhlosine Bを使用した。これらの結果を、図10に示す。図10に示すように、PP5-WTにおいて、S100A1と前記調節物質とを共存させた結果、前記調節物質未添加(0μmol/L)の活性と比較して、グラフ内の矢印で示すように、活性の増強が確認された。これらの結果から、前記調節物質は、S100によるPP5の活性化を、増強していると解される。このため、前記調節物質は、S100ポテンシエーターと言える。
【実施例】
【0133】
[実施例3]
調節物質の存在下、PP5のホスファターゼ活性を評価し、前記調節物質の機能を確認した。
【実施例】
【0134】
ホスファターゼ活性は、PP5(PP5-WT)およびTPRドメインを欠失したPP5(PP5-ΔTPR)について測定した。ホスファターゼ活性の測定方法は、特に示さない限り、前述の「8.in vitroでのホスファターゼアッセイ」に従って行った。具体的には、所定濃度(0-200μmol/L)の調節物質、0.25μmol/LのS100A1、0.02μmol/LのPP5-WTまたはPP5—ΔTPRを、緩衝液50μl中、37℃で10分間インキュベートした以外は、前記実施例2と同様に、ホスファターゼ活性を評価した。
【実施例】
【0135】
(1)PP5 アクティベーター
調節物質として、チオフラビン-S、α-ナフトールオレンジ、Direct red80を使用した。
【実施例】
【0136】
これらの結果を、図11に示す。図11(A)に示すように、チオフラビン-Sは、S100と同様に、PP5に結合してPP5の活性を増強した。また、PP5-ΔTPRの活性も増強させたことから、チオフラビン-Sは、PP5における触媒ドメイン(CD)への結合による活性の増強も可能と考えられる。図11(B)および(C)に示すように、α-ナフトールオレンジおよびDirect red80は、S100と同様に、PP5のTPRに結合してPP5の活性を増強した。これらの結果から、各調節物質は、PP5 アクティベーター、S100ミミックまたはS100アゴニストといえる。
【実施例】
【0137】
(2)PP5 アクティベーターとPP5カタリティックインヒビターとを兼ねる調節物質
調節物質として、Congo-Red、Chrysamine-G、Evans-blue、4,4-ビス(2-スルフォナトスチリル)ビフェニルを使用した。これらの結果を、図12に示す。図12(A)~(D)に示すように、いずれの調節物質も、低濃度の添加でPP5活性を増強し、一定量以上の添加で、PP5活性を阻害した。これらの結果から、各調節物質は、TPRへの結合によるPP5活性の増強能と、触媒ドメイン(CD)への結合によるPP5活性の阻害能とを有すると解される。
【実施例】
【0138】
(3)アロステリックPP5インヒビター
調節物質として、Proflavineを使用した。これらの結果を、図13に示す。図13に示すように、前記調節物質は、TPRへの結合により、PP5活性を阻害した。この結果から、前記調節物質は、PP5の活性調節部位に作用する、アロステリックPP5インヒビターと言える。
【実施例】
【0139】
(4)PP5カタリティックインヒビター
調節物質として、Ethyl violet、Methyl green、Acridine Orange、Acridine Yellowを使用した。これらの結果を、図14に示す。図14(A)~(D)に示すように、いずれの調節物質も、PP5活性を阻害した。これらの結果から、各調節物質は、PP5カタリティックインヒビターと言える。
【実施例】
【0140】
[実施例4]
調節物質として、トリフェニルメタン化合物である、TBPEを使用し、前記実施例2と同様にして、S100の存在下、PP5の活性を確認した。これらの結果を、図15に示す。図15に示すように、PP5-WTにおいて、S100A1と前記調節物質とを共存させた結果、前記調節物質未添加(0μmol/L)の活性と比較して、活性の増強が確認された。
【実施例】
【0141】
[実施例5]
調節物質として、トリフェニルメタン化合物である、Fast green FCF、Acid violet 6B、Guinea green B、Brilliant milling greenを使用した。これらの結果を、図16および図17に示す。図16(A)および(B)に示すように、Fast green FCF、Acid violet 6Bは、PP5活性の減少が確認された。また、図17(A)および(B)に示すように、Guinea green B、Brilliant milling greenは、PP5の活性の増強が確認された。
【実施例】
【0142】
[実施例6]
調節物質として、アクリジン誘導体である、Acridine Orange、Acridine YellowおよびProflavinを使用し、前記実施例3と同様にして、S100非存在下、PP5の活性を確認した。これらの結果を、図18に示す。図18に示すように、各調節物質は、PP5-WTについて、同様にPP5活性を阻害したが、PP5-ΔTPRについては、Acridine Orange、Acridine YellowおよびProflavinの順番に、PP5の活性阻害が緩和された。
【実施例】
【0143】
[実施例7]
調節物質として、キサンテン化合物EosinおよびRose Bengalを使用し、前記実施例2と同様にして、S100存在下、PP5の活性を確認した。これらの結果を、図19に示す。図19(A)に示すように、Eosinは、S100の共存下、PP5活性を変化させず、S100非存在下で、PP5を阻害した。他方、図19(B)に示すように、Rose Bengalは、S100の共存下、PP5活性を増強し、所定量を超えると、PP5活性を阻害した。

【実施例】
【0144】
[実施例8]
また、各種調節物質について、前記実施例2および実施例3と同様の方法により、機能を確認した。
【実施例】
【0145】
具体的には、PP5(WT)、PP5-ΔTPR、PP5(WT)+S100A1のそれぞれの条件について、ホスファターゼ活性を測定した。そして、PP5(WT)およびPP5-ΔTPRについては、前記調節物質未添加の活性を100%として相対値を求めた。また、PP5(WT)+S100A1については、下記式に基づいて相対値を求めた。
相対値(%)=[X-Y]/[Z-Y]×100
X:PP5(WT)、S100A1および調節物質の共存下における活性
Y:PP5(WT)の活性
Z:PP5(WT)およびS100A1の共存下における活性
【実施例】
【0146】
これらの結果を、図20~27に示す。各図に示すように、いずれもPP5の活性に対して調節機能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上のように、本発明によれば、S100によりTPRモチーフタンパク質の機能の調節が可能である。また、本発明のスクリーニング方法によれば、例えば、S100の拮抗化合物等、様々なTPRモチーフタンパク質の機能調節物質をスクリーニングでき、種々の機能調節物質を提供可能である。TPRモチーフタンパク質の一種であるPP5は、癌等の疾患に関連することから、本発明は、生化学等の研究分野および臨床分野のいずれにおいて、極めて重要な技術と言える。
図面
【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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