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明細書 :磁性ナノコンポジット及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5550013号 (P5550013)
公開番号 特開2011-214026 (P2011-214026A)
登録日 平成26年5月30日(2014.5.30)
発行日 平成26年7月16日(2014.7.16)
公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
発明の名称または考案の名称 磁性ナノコンポジット及びその製造方法
国際特許分類 B22F   1/02        (2006.01)
C04B  35/36        (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
C04B  35/645       (2006.01)
H01F   1/24        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
B22F   3/00        (2006.01)
B22F   3/04        (2006.01)
B22F   3/15        (2006.01)
H01F   1/147       (2006.01)
H01F  41/02        (2006.01)
FI B22F 1/02 E
C04B 35/36 B
C04B 35/64 E
C04B 35/64 302B
H01F 1/24
C22C 38/00 304
C22C 38/00 303S
B22F 3/00 E
B22F 3/04 B
B22F 3/15 M
H01F 1/14 B
H01F 41/02 D
請求項の数または発明の数 1
全頁数 18
出願番号 特願2010-080865 (P2010-080865)
出願日 平成22年3月31日(2010.3.31)
審査請求日 平成25年1月29日(2013.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】廣田 健
【氏名】加藤 将樹
【氏名】小幡 元基
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】田中 永一
参考文献・文献 特開平05-047541(JP,A)
特開2007-088215(JP,A)
特開2005-311078(JP,A)
特開昭56-038402(JP,A)
特開平06-267723(JP,A)
特開2002-256304(JP,A)
特開平05-109520(JP,A)
調査した分野 B22F 3/00 - 3/26
B22F 1/02
H01F 1/147
H01F 1/24
H01F 41/02
C04B 35/36
C04B 35/64
C04B 35/645
C22C 38/00
特許請求の範囲 【請求項1】
Mg(MnFe1-xフェライト/パーマロイFe‐Ni合金系・磁性ナノコンポジットを製造するための方法であって、当該方法が、
工程A:Mg(MnFe1-x(0≦x≦0.4)となる量の、MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子をそれぞれ秤量し、当該MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子をFe‐Ni合金粉末と混合することによってコーティングを行い、前記Fe‐Ni合金粉末の表面が、前記MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子からなる金属酸化物の混合物により被覆されたコンポジット粉末を製造する工程、
工程B:前記工程Aで得られたコンポジット粉末を仮成形し、得られた仮成形体に超高静水圧プレスにて圧力を加えて成形体を製造する加圧工程、
工程C:前記工程Bで得られた成形体を、不活性ガス雰囲気下、焼結温度450~550℃、加圧力50~150MPa、焼結時間3~10分の条件にてパルス通電加圧焼結することにより、前記金属酸化物の混合物をフェライト相とし、相対密度が92%以上の焼結体を製造するパルス通電加圧焼結工程、及び
工程D:前記工程Cで得られた焼結体を、圧力100MPa以上の不活性ガス雰囲気下で700℃~900℃未満の温度を一定時間維持して熱間静水圧プレスで処理し、焼結体の相対密度94%以上とする熱間静水圧プレス工程
を含むことを特徴とする磁性ナノコンポジットの製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ナノコンポジット、特にMg(MnFe1-xフェライト/パーマロイFe-Ni合金系・ナノ磁性コンポジット、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用される軟磁性材料には、高い飽和磁束密度(B)を有し、かつ、高周波領域で使用可能な高い電気抵抗率(ρ)と高い透磁率(μ)を有することが求められているが、単相のバルク磁性材料でこれらの要求を満足するものは知られていない。
飽和磁束密度の高い金属磁性材料粒子の表面を高電気抵抗のフェライトで被覆して緻密化した複合材料(磁性ナノコンポジット)は、両者の長所を合わせもつ高周波用磁性材料として期待できるが、金属と酸化物という全く性質の異なる物質を熱処理によって緻密化することは、熱平衡下での酸化物の還元・分解や磁性金属の酸化、金属と酸化物間の塑性変形能の差異等により、通常の粉末冶金のプロセスでの製造は至難となっている。
これまでの、高周波領域で使用可能な高効率化・小型化に対応した磁性材料の研究事例としては、例えば、以下の非特許文献1~4に示されるものが挙げられ、これら非特許文献には、センダスト(85Fe‐9.5Si‐5.5Al系(重量%))と酸化物皮膜との熱間静水圧プレス(HIP)を用いた焼結(非特許文献1)、MgFeとスーパーセンダスト(86.5Fe‐6Si‐4Al‐3.5Ni系(重量%))との混合粉体の放電プラズマ焼結(非特許文献2)、テルミット法による鉄‐フェライト複合粉体を合成する方法(非特許文献3)、酸化処理および蒸着処理により作製したZnフェライト被覆鉄粉の作製(非特許文献4)がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】廣田他, 粉体および粉末冶金, 48, 174-176 (2001)
【非特許文献2】廣田他, Mater. Res. Bull., 35, 1137-41 (2000)
【非特許文献3】廣田他, 粉体および粉末冶金, 39, 1015-18 (1992)
【非特許文献4】五十嵐他, 粉体粉末冶金協会講演概要集平成16年度春季大会, 1-34A (2004)
【0004】
しかしながら、高温で焼結を行った場合、Fe-Ni系高透磁率磁性合金のパーマロイが酸化されて、同時に逆にフェライトは還元され、また、磁性金属と酸化物粉体の混合原料からなる成形体に圧力を加えて緻密化させる時、金属粒子の塑性変形に対してフェライトが追従できなくなって、金属粒子同士が接触するという問題点があるため、これまでに高周波領域においても使用できる充分に高い磁束密度・透磁率および電気抵抗を有した軟磁性材料が作製されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高周波領域においても使用可能な高磁束密度・高透磁率および高電気抵抗を有した磁性ナノコンポジット、特にMg(MnFe1-xフェライト/パーマロイFe-Ni合金系・ナノ磁性コンポジット、並びに当該磁性ナノコンポジットの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、金属磁性材料として、N‐アトマイズ法で製造し高磁気特性を有するパーマロイ(Fe‐Ni)合金を用い、電気的絶縁層を形成する磁性酸化物として、低温での塑性変形能が高い酸化マグネシウムMgOを構成成分とするMgフェライト系を用い、このMgフェライトに、フェライト層の磁気特性を向上させるためにMnを添加し
てこれらを複合化した新軟磁性材料の開発を行った結果、合金粒子表面にMgO微粒子及びFe微粒子、好ましくはさらにMnO微粒子、を均一にコーティングした後、高静水圧下で相対密度80%以上に成形し、さらに高速昇温可能なパルス通電加圧焼結(SPS)により、金属酸化物の混合物をフェライト層とし、かつ試料全体を相対密度92%以上に緻密化した後、熱間静水圧プレス(HIP)で金属/フェライト相が残存するようにして熱処理条件を最適化すると、高周波領域でも電気・磁気損失の少ない磁性ナノコンポジット、Mg(MnFe1-x(0≦x≦0.4)が得られることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決可能な本発明のMg(MnFe1-xフェライト/パーマロイFe‐Ni合金系・ナノ磁性コンポジットは、パーマロイFe‐Ni合金粒子の表面が、Mg(MnFe1-x(0≦x≦0.4)からなるフェライト層にて被覆された状態で緻密化された微細構造を有することを特徴とする。
又、本発明のMg(MnFe1-xフェライト/パーマロイFe‐Ni合金系・ナノ磁性コンポジット(0≦x≦0.4)の製造方法は、
工程A:Mg(MnFe1-x(0≦x≦0.4)となる量の、MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子をそれぞれ秤量し、当該MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子をFe‐Ni合金粉末と混合することによってコーティングを行い、前記Fe‐Ni合金粉末の表面が、前記MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子からなる金属酸化物の混合物により被覆されたコンポジット粉末を製造する工程、
工程B:前記工程Aで得られたコンポジット粉末を仮成形し、得られた仮成形体に超高静水圧プレスにて圧力を加えて成形体を製造する加圧工程、
工程C:前記工程Bで得られた成形体をパルス通電加圧焼結することにより、前記金属酸化物の混合物をフェライト相とし、相対密度が92%以上の焼結体を製造するパルス通電加圧焼結工程、及び
工程D:前記工程Cで得られた焼結体を熱間静水圧プレスで処理し、焼結体の相対密度94%以上とする熱間静水圧プレス工程
を含むことを特徴とする。
【0007】
又、本発明は、上記の特徴を有した製造方法において、上記工程Cにおけるパルス通電加圧焼結が、不活性ガス雰囲気下、焼結温度450~550℃、加圧力50~150MPa、焼結時間3~10分の条件にて行われることを特徴とするものでもある。
【0008】
更に、本発明は、上記の特徴を有した製造方法において、上記工程Dにおける熱間静水圧プレス処理が、圧力100MPa以上の不活性ガス雰囲気下で700℃~900℃未満の温度を一定時間維持して熱処理を行うことを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法の場合、AlやSiを含まない磁性合金を採用することで、熱処理後に金属/フェライト間の界面に非磁性酸化物のSiOやAlが生成せず、コンポジットの磁気特性の劣化が少なくなるという利点がある。また、塑性変形するMgO微粒子を磁性金属粒子の表面に均一にコーティングすることにより、最終的にはコンポジット内のフェライト層の膜厚が一定となり、良好な電気的絶縁層を形成させることができる。
本発明の製造方法を用いることによって、金属粒子と酸化物間の固相反応を出来るだけ抑制し、金属粒子の粒界を完全にフェライト層で被覆して、金属粒子相互の直接接触を防止し、試料全体の電気抵抗を高め、高周波領域でも電気・磁気損失の少ない磁性ナノコンポジットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法における製造手順(実験手順)を示すフローチャートである。
【図2】パルス通電加圧焼結(SPS)によって得られた焼結体のX線回折(XRD)パターンである。
【図3】熱間静水圧プレス(HIP)処理時の温度が700℃、800℃、900℃である場合の焼結体のXRDパターンである。
【図4】上図の(a)は、SPS 550℃にて得られた焼結体のXRDパターン、(b)は、SPS 550℃後さらにHIP 700℃にて得られた焼結体のXRDパターンであり、下図の(a)は、SPS 550℃にて得られた焼結体のXRDパターン、(b)は、SPS 550℃さらにHIP 800℃にて得られた焼結体のXRDパターンである。
【図5】成形体(x=0.4)の破断面のSEM画像(3000倍~50000倍)である。
【図6】成形体(x=0.4)の破断面のSEM画像(300倍及び700倍)である。
【図7】SPSの焼結温度550℃にて得られた焼結体(x=0.2)の表面のSEM画像(1000倍及び3000倍)である。
【図8】SPSの焼結温度550℃にて得られた焼結体(x=0.2)の表面の、SEM画像と同じ場所のEDS(エネルギー分散型X線分光分析)マップであり、各元素(Fe,Ni,O,Mn,Mg)の分布が示されている。
【図9】800℃の温度でのHIP処理後の、焼結温度550℃にて得られた焼結体(x=0.2)の表面のSEM写真(1000倍及び3000倍)である。
【図10】種々のHIP処理温度(700℃、800℃、900℃)にて得られた各焼結体(x=0.2)の磁気特性を示すBHカーブである。
【図11】HIP処理温度800℃にて得られた焼結体(x=0.2)における保磁力と磁束密度の関係を示すグラフである。
【図12】金属磁性材料であるパーマロイ(市販のFe‐Ni合金)と、本製法にて得られたMg(Mn0.2Fe0.8/Fe‐47Niコンポジットの、周波数と相対透磁率の関係を示すグラフであり、右側のグラフには、10~10Hzの高周波領域における関係が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の磁性ナノコンポジットの製造方法における各工程について以下に説明する。
図1は、本発明の製造方法における好ましい一例の手順を示すフローチャートである。 まず、本発明の製法における工程Aでは、Mg(MnFe1-x(0≦x≦0.4)となる量の、MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子をそれぞれ秤量し、これらMgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子をFe‐Ni合金粉末と混合することによってFe‐Ni合金粉末表面へのコーティングを行う。本発明では、水‐アトマイズ法で精製された金属磁性材料よりも粒子内ひずみの小さいN‐アトマイズ法で精製された金属磁性材料のパーマロイ(53Fe‐47Ni(重量%)以下Fe‐47Niと記す)合金粉末を使用することが好ましく、一方、Mg(MnFe1-xのフェライト層を形成するための原料としては、純度99.9%以上で、nmオーダーの粒子径を有する市販のMgO微粒子、MnO微粒子、Fe微粒子が使用できる。尚、本発明では、焼結性を改善するために、MnO粉末を予め粉砕(例えば粒子径200nm以下)することが好ましく、この際の粉砕方法は特に限定されるものではないが、遊星ボールミルにより酸化ジルコニウム製のポットとボールを用いて一定時間粉砕を行うのが好ましい。
Fe‐Ni合金粉末の表面が、MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子からなる金属酸化物の混合物により均一にコーティングされたコンポジット粉末を製造するには、混合を行う際、不活性ガス雰囲気下でメカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン(株)製)を使用することが好ましく、このシステムでは、軸固定され、高速回転チャンバーとのギャップが1mm程度のインナーピースによって粉末混合物に強力な剪断応力が加えられ(圧密複合化)、インナーピースを通過した粉末がスクレーパによって掻き落とされるという工程が繰り返されることで、Fe‐Ni合金粉末の表面に、金属酸化物の混合物を均一にコーティングすることができる。

【0012】
そして、次の工程B(加圧工程)においては、前記工程Aで得られたコンポジット粉末を仮成形し、焼結性を上げるために、得られた仮成形体に超高静水圧プレスにて圧力を加えて緻密化された高密度(相対密度80%以上)の成形体を製造する。このコンポジット粉末の仮成形は、一般的には50~100MPa程度の圧力の冷間等方圧プレス(CIP)にて行うことが好ましく、超高静水圧プレス時の圧力は1GPa程度が好ましい。

【0013】
そして、次工程の工程C(パルス通電加圧焼結工程)では、前記工程Bで得られた成形体を、高速昇温可能なパルス通電加圧焼結装置を用いてパルス通電加圧焼結(SPS)することにより、MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子からなる金属酸化物の混合物をフェライト相とし、相対密度が92%以上(92~96%程度、より好ましくは93~95%)の焼結体を製造する。このパルス通電加圧焼結では、低電圧でパルス状直流大電流を投入して粒子間に火花放電現象を生じさせ、これにより瞬時に高エネルギーを発生させることができ、急激なジュール加熱により高速拡散が起きることで、短時間かつ、比較的低温で粒成長を抑制した緻密な焼結体が得られ、高強度、高靭性なセラミックスを作製することが可能となる。
本発明では、使用する原料粉末の粒子径や配合割合等に応じて、工程Cにおけるパルス通電加圧焼結の条件を適宜選択することができるが、不活性ガス雰囲気下、焼結温度450~550℃、加圧力50~150MPa、焼結時間3~10分の条件にて行うことが好ましく、特に好ましいパルス通電加圧焼結の条件は、アルゴンガス雰囲気下で、焼結温度550℃、加圧力100MPa、焼結時間3分である。この際、焼結温度が450℃より低い温度では、金属も塑性変形しにくくなり緻密化が困難になり、加えてフェライト相が生じにくく、かつ脆性破壊し易くなり、逆に、焼結温度が550℃を超えると還元性酸化物のFeOが生成するので好ましくない。

【0014】
最終工程である工程D(熱間静水圧プレス工程)においては、前記工程Cで得られた焼結体を、金属/フェライト相が残存するような熱処理条件にて熱間静水圧プレスで処理し、最終的に得られる磁性ナノコンポジットの相対密度をさらに高める(94%以上、好ましくは95%以上まで)。本発明における熱間静水圧プレス工程では、圧力100MPa以上、好ましくは200MPaの不活性ガス雰囲気下で700℃~900℃未満、好ましくは750~850℃の温度を一定時間(3~8時間、好ましくは6時間)維持して熱処理を行うことが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴンガスや、0.01%Oを含むアルゴンガスが好ましい。

【0015】
本発明においてxが0≦x≦0.4の範囲に限定されるのは、この範囲がMnを添加したMgFeフェライト固溶体生成領域だからであり、xが0.4を超えた場合(例えばx=0.5の場合)には、固溶限界を超えるのでスピネルフェライト相以外のγ-M相が析出して磁気特性が低下し、複合体の透磁率も低下し、実用化できなくなるという問題が生じる。
本発明の製造方法では、上記のMnの添加範囲(0≦x≦0.4)において、700℃~900℃未満の温度で熱間静水圧プレス工程を行うことにより、高周波領域で電気・磁気損失を少ない磁性コンポジットが得られる。
【実施例】
【0016】
実施例1:本製法による本発明のMg(MnFe1-xフェライト/パーマロイFe‐Ni合金系・ナノ磁性コンポジット(0≦x≦0.4)の製造例
金属磁性材料として、N‐アトマイズ法で製造されたFe‐47Niパーマロイ合金(福田金属箔粉工業(株)製、平均粒径P:20μm)を準備し、Fe微粒子には堺化学(株)製の平均粒径P=60nmのものを使用し、MgO微粒子には宇部マテリアル(株)製の平均粒径P=50nmφのもの(純度99.98%)を使用した。尚、MnO微粒子としては、高純度化学(株)製の平均粒径P=10μmの市販品(純度99.9%)を遊星ボールミル(酸化ジルコニウムボール:0.3mm)にて350rpmで8時間粉砕を行い、微粒子化したものを用いた。微粒子化されたMnO微粒子の平均粒径Pは約200nmであった。
上記のMgO微粒子、MnO微粒子及びFe微粒子を、Mg(MnFe1-x(x=0.2)のフェライト相となるようにそれぞれ7.63g、5.37g、24.17g秤量し、これら金属酸化物微粒子を上記Fe‐47Ni合金粉末150gと混合し、この混合物を、市販のメカノフュージョン装置(ホソカワミクロン(株)製AMS-MINI)を用いて、アルゴンガス雰囲気下、高速回転チャンバーとインナーピースとのギャップ1mm、回転数4500rpm、混合時間30分の条件にてコーティングを行い、Fe‐47Ni合金粉末の表面に、MgO‐MnO‐Feが均質にコーティングされたコンポジット粉末を得た。そして、得られたコンポジット粉末を用いて68.6MPaの圧力でCIP仮成形し、その後、超高静水圧プレスで1GPaの圧力で緻密化した。その後、上記成形体を市販のパルス通電加圧焼結装置(シンテック(株)製、SPS-510A)を用いて、異なる焼結温度(550℃、575℃、600℃)で、アルゴンガス雰囲気下、加圧力100MPa、昇温速度100℃/分、焼結時間3分の条件にてパルス通電加圧焼結し、焼結体を得た。
図2には、このようにして得られた焼結体のXRDパターンが示されており、XRD測定には、リガク社製の自動X線回折装置RINT-2200を用いた。
この図2の実験結果から、550℃より高い温度で焼結を行うと、反磁性酸化物のFeOのピークが現れることが分かり、焼結温度は550℃が最適であると考えられる。
【実施例】
【0017】
そして、同様にして、上記MgO微粒子、Fe微粒子及びMnO微粒子を、Mg(MnFe1-x(x=0,0.4)のフェライト相となる量にてそれぞれ秤量し、これら金属酸化物微粒子を上記Fe‐47Ni合金粉末と混合し、この混合物を、上記メカノフュージョン装置を用いて、上記の条件にてコーティングを行い、Fe‐47Ni合金粉末の表面に、MgO‐Fe又はMgO‐MnO‐Feが均質にコーティングされたコンポジット粉末を得た。そして、得られたコンポジット粉末を用いて上記のCIP仮成形を行ない、その後、超高静水圧プレスで緻密化を行った。以下の表1には、このようにして得られた成形体(x=0,0.2,0.4)の成形密度、理論密度、相対密度が示されている。
【実施例】
【0018】
【表1】
JP0005550013B2_000002t.gif
【実施例】
【0019】
その後、上記成形体を市販のパルス通電加圧焼結装置(SPSシンテック(株)製、SPS-510A)を用いて、アルゴンガス雰囲気下、焼結温度550℃、加圧力100MPa、昇温速度100℃/分、焼結時間3分の条件にてパルス通電加圧焼結し、焼結体を得た。以下の表2には、このようにして得られた焼結体(x=0,0.2,0.4)の焼結密度、理論密度、相対密度が示されている。
【実施例】
【0020】
【表2】
JP0005550013B2_000003t.gif
【実施例】
【0021】
上記表1及び表2の結果より、上記の超高静水圧プレス処理と低温高圧パルス通電加圧焼結処理によって、相対密度93%以上の高密度焼結体が得られることがわかった。一般に相対密度が92~93%以上の高密度になると、焼結体表面の気孔が閉気孔となってガスが焼結体内部に侵入せず、焼結体を高圧ガス雰囲気下においた場合、密閉式の容器(カプセル)に試料を入れなくても、高圧下の熱間静水圧プレス処理を行うことができる。このカプセルフリー熱間静水圧プレス処理は、高密度焼結体の作製が低コストになるとともにカプセルの大きさや形状の制限を受けずに試料の高密度化が可能となる。
【実施例】
【0022】
そして次に、熱間静水圧プレス処理における最適温度を検討するために、上記のパルス通電加圧焼結処理にて得られた焼結体(x=0.2)を、市販の熱間静水圧プレス装置((株)神戸製鋼所製、SYS-5X)を用いて、異なる焼結温度(700℃、800℃、900℃)で、アルゴンガス雰囲気下、二次熱処理圧力200MPa、焼結時間6時間の条件にて熱間静水圧プレス(熱間等方圧加圧)し、高密度焼結体を得た。
図3には、このようにして得られた3種類の焼結体のXRDパターンが示されており、この図3の実験結果から、700℃及び800℃で熱間静水圧プレス処理を行った場合は殆ど反磁性体のFeOは生成しないが、900℃で熱処理した場合には、FeOの生成を顕著に確認することができ、900℃以上で熱間静水圧プレス処理を行うと金属パーマロイが酸化されること(フェライト相が還元されること)がわかった。
【実施例】
【0023】
又、図4には、熱間静水圧プレス処理前と処理後における焼結体のXRDパターンの変化が示されており、上側の図が熱間静水圧プレス時の温度が700℃の場合、下側の図が800℃の場合である。この結果から、パルス通電加圧焼結処理だけの試料と比べても組成の変化は見られず、マグネシウムマンガンフェライトのピークが強くなって結晶性が向上していることがわかり、熱間静水圧プレスの最適温度は800℃であると考えられる。
【実施例】
【0024】
そこで、上記のパルス通電加圧焼結処理にて得られた焼結体(x=0.2)について、焼結温度800℃にて上記熱間静水圧プレス処理を行い、得られた焼結体の焼結密度を測定した。以下の表3に、このようにして得られた焼結体の焼結密度、理論密度、相対密度を示す。
【実施例】
【0025】
【表3】
JP0005550013B2_000004t.gif
【実施例】
【0026】
又、以下の表4には、熱間静水圧プレス処理前と処理後における焼結体(x=0.2)の焼結密度及び相対密度の変化が示されている。
【実施例】
【0027】
【表4】
JP0005550013B2_000005t.gif
【実施例】
【0028】
上記表4の実験結果から、パルス通電加圧焼結後に熱間静水圧プレス処理を行うことによって、それぞれの温度条件において焼結体密度の上昇がみられた。しかし、熱間静水圧プレス操作の900℃の条件では、あまり焼結体密度の上昇が見られなかった。この原因として、パルス通電加圧焼結操作によりできた焼結体に閉空間気孔が残っていため、熱間静水圧プレス操作で等方的に圧力をかけても気孔が焼結体内に残ったものと考えられる。
【実施例】
【0029】
実施例2:本発明の製法における成形体及び焼結体のSEM観察結果
Mg(MnFe1-x(x=0.4)のフェライト相を形成するための、パルス通電加圧焼結処理前の成形体(工程B終了時の未焼結体)の破断面を、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子社製:JSM7001F)により観察した。図5は、この成形体の破断面のSEM画像(3000倍~50000倍)であり、図6は、この成形体の破断面のSEM画像(300倍及び700倍)である。
又、図7は、焼結温度550℃でパルス通電加圧焼結を行うことにより得られた焼結体表面のSEM画像(1000倍及び3000倍)であり、図8は、この焼結体表面の、SEM画像と同じ場所のEDS(エネルギー分散型X線分光分析)マップで、Fe,Ni,O,Mn,Mgの元素分布が示されている。EDSによる元素分析には、エネルギー分散型X線分光分析装置(日本電子社製:JED2300)を使用した。図8のEDSマップとSEM画像から、Mg,Oの分布する位置が、金属粒子の粒界位置と対応していることが確認された。
図9は、800℃での熱間静水圧プレス処理後の焼結体表面のSEM画像(1000倍及び3000倍)であり、図7と図9の比較から、パルス通電加圧焼結操作のみの焼結体よりも、パルス通電加圧焼結+熱間静水圧プレス操作の焼結体の方が緻密になっていることが確認でき、これは、表4に示された焼結密度及び相対密度の上昇と一致している。
【実施例】
【0030】
実施例3:本発明の製法により得られた焼結体(ナノ磁性コンポジット)の磁気特性の測定
Mg(MnFe1-x(x=0.2)のフェライト層が形成されたパーマロイFe‐Ni系合金・ナノ磁性コンポジットについて、VSM解析によりヒステリシス曲線を作成した。図10は、種々のHIP処理温度(700℃、800℃、900℃)にて得られた各焼結体(x=0.2)の磁気特性を示すBHカーブであり、以下の表5には、各焼結体の飽和磁束密度が要約されている。
【実施例】
【0031】
【表5】
JP0005550013B2_000006t.gif
【実施例】
【0032】
図10のBHカーブ及び表5から、熱間静水圧プレス処理温度が700,800℃である場合の焼結体の磁束密度Bは1[T]を超えており、優れた磁気特性を有する磁性材料であることがわかった。
図11には、HIP処理温度800℃にて得られた焼結体(x=0.2)における保磁力と磁束密度の関係が示されており、図12には、金属磁性材料であるパーマロイ(市販のFe‐Ni合金)と、本製法にて得られたMg(Mn0.2Fe0.8/Fe‐47Niコンポジットの、測定周波数と比透磁率の関係が示されている。図12の右側に位置するグラフは、10~10Hzの高周波領域における周波数と比透磁率の関係を示すものである。
図12のグラフから、20000Hzを超える高周波領域においては、市販の金属磁性材料(パーマロイ)よりも、本発明の製法を用いて得られたナノ磁性コンポジットの透磁率が高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の製造方法を用いることで、高周波領域でも電気・磁気損失の少ない磁性ナノコンポジットが製造でき、電子機器だけでなく種々の用途に応用展開が可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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