TOP > 国内特許検索 > スペクトル可変照明光を用いた宝飾品のディスプレイ方法及び装置 > 明細書

明細書 :スペクトル可変照明光を用いた宝飾品のディスプレイ方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5626841号 (P5626841)
公開番号 特開2011-206319 (P2011-206319A)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
公開日 平成23年10月20日(2011.10.20)
発明の名称または考案の名称 スペクトル可変照明光を用いた宝飾品のディスプレイ方法及び装置
国際特許分類 A44C  17/00        (2006.01)
F21S   2/00        (2006.01)
F21V  23/00        (2006.01)
F21Y 101/00        (2006.01)
FI A44C 17/00
F21S 2/00 311
F21V 23/00 140
F21Y 101:00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 16
出願番号 特願2010-077927 (P2010-077927)
出願日 平成22年3月30日(2010.3.30)
審査請求日 平成25年3月29日(2013.3.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】坂東 敏博
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】青木 良憲
参考文献・文献 特開2008-279227(JP,A)
特開2009-295472(JP,A)
特開2007-026749(JP,A)
特開2007-122950(JP,A)
登録実用新案第3138741(JP,U)
特開2005-228711(JP,A)
特開2008-166101(JP,A)
調査した分野 A44C 17/00
F21S 2/00
F21V 23/00
F21Y 101/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などを対象物とする宝飾品のディスプレイ方法であって、
背景をバックに擁する対象物、時間的に白色照明光のスペクトル成分を変化させ得るスペクトル可変照明光源で前記スペクトル成分を時間的に変化させた白色照明光を照射することで、観測者の眼に入る前記対象物からの虹色の各色成分強度に時間的変化を与え、当該観測者の眼に入る前記対象物からの虹色成分の時間変動を生み出すことを通じて前記対象物のディスプレイ効果を高め得ることを特徴とする宝飾品のディスプレイ方法。
【請求項2】
前記スペクトル可変照明光源が、制御装置によって夫々の輝度を制御され得るよう構成された、ピーク波長の異なる複数のLEDの組み合わせからなることを特徴とする
請求項1に記載のディスプレイ方法。
【請求項3】
前記スペクトル可変照明光源が、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源からなることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ方法。
【請求項4】
前記背景の色彩が時間変化しない様になっていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のディスプレイ方法。
【請求項5】
ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などを対象物とする宝飾品のディスプレイ装置であって、
背景をバックに擁する前記対象物に時間的にスペクトル成分を変化させた白色照明光を照射するスペクトル可変照明光源と、
前記スペクトル可変照明光源に接続され、予め内部メモリ中に格納された制御プログラムまたは外部指令に基づいて時間的にスペクトル成分を変化させる指令を送出して前記スペクトル可変照明光源を制御する制御装置と、
からなり、
前記白色照明光を前記対象物照射することで観測者の眼に入る前記対象物からの虹色の各色成分強度に時間的変化を与え、当該観測者の眼に入る前記対象物からの虹色成分の時間変動を生み出すことを通じて前記対象物のディスプレイ効果を高め得ることを特徴とする宝飾品のディスプレイ装置。
【請求項6】
前記スペクトル可変照明光源が、前記制御装置によって夫々の輝度を制御され得るよう構成された、ピーク波長の異なる複数のLEDの組み合わせからなることを特徴とする
請求項5に記載のディスプレイ装置。
【請求項7】
前記スペクトル可変照明光源が、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源からなることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイ装置。
【請求項8】
前記背景の色彩が時間変化しない様になっていることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のディスプレイ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などの宝飾品の魅力を引き出し、高めるディスプレイ方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤやクリスタルなどの宝飾品は、カットで照明光を複雑に屈折反射させ様々な方向へ向けることに伴う明度分布の急激な変化によるきらめき感と、プリズムの原理による虹色への分光によって、魅力的に見える。また、観る人の視点の動きが加わると、観測者にとっては上記きらめきや分光の態様が時々刻々と変化して観え、その魅力は一層深まる。
【0003】
さらに、ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠のようなものに至っては、分光による発色に依存して、宝飾品として魅力的な色彩美が創造される。
具体的には、真珠やオパールにおいては、いわゆる遊色効果によって虹のような多色の色彩を示す現象を呈している。
【0004】
遊色効果は、宝石などが虹のような多色の色彩を示す現象である。この現象は、物質に光が入ってきた際に物質内部の結晶構造や粒子配列によって光が分光され、多色の乱反射が生じる事で引き起こされる。
【0005】
遊色効果を示す鉱物の代表例がオパールである。オパールは非晶質であり、珪酸粒子の六方最密充填構造を主体とする含水コロイド(シリカゲル)である。ここに光が入射すると、珪酸粒子の大きさに応じた波長の光が回折を起こし、波長毎に分かれた光が虹色を呈する。
【0006】
オパールのほか、真珠の場合も、この遊色効果によって真珠特有の虹色が生じる。真珠においては、カルシウムの結晶(霰石)と有機質層(主にタンパク質)が交互に積層し、真珠層が形成される。この有機質の薄層と霰石の薄層が干渉色を生み出し、真珠特有の虹色が生じる(=遊色効果)。また、有機質層の厚さや色素の含有量などによって真珠の色味が決まる。
【0007】
したがって、これらオパールや真珠のようなものの場合も、ダイヤやクリスタルなどの場合と同様、観る人の視点の動きを伴わせることで、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得る様になっている。
【0008】
つまり、上記したような宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている上記明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得るには、一般的に観る人の視点の動きを伴うことが必要とされている。
したがって、宝飾品のディスプレイ手法としては通常、観る人の視点の動きを得やすいよう、例えば観賞者をショーケースの周りを周回させて観賞させる手法や、逆に、相対的にショーケース内の対象物を回転させて観賞者に観せる手法等、これまでに種々の手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、観る人の視点の動きを伴わずとも、上記したような宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている上記明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得ることが可能なディスプレイ方法及び装置はこれまで世の中に提供されていなかった。
このようなものが提供されれば、観賞者は居ながらにして、安置された宝飾品の形状を所定方向から愛で得ると同時に、この宝飾品が放つきらめき感や色彩美につき、時々刻々とその表情が変化する流れを愉しむことが可能となり、従来の既成概念を覆すと共に、宝飾品の魅力を顕著に引き出し、高める革新的なディスプレイ方法及び装置となる。
【0010】
ところで、本願発明者は先に、照明と色材の組み合わせを工夫することにより、例えば、照明変化により色相が変化する色材と変化しない色材の組み合わせを作り、照明のコントロールひとつで模様を浮き上がらせたり消したり、あるいは模様を変化させたりできる「照明によるパターン変化の演出法」を発明、提案している(特許文献2参照)。
【0011】
このとき、本願発明者の発想の根底に流れていた背景には、
(1)人間が見える色というのは色材と照明の組み合わせであって、Aを照明の分光分布(光源データより得られる)、Bを色材の分光反射率(反射特性。逆に言えば透過率)とすると、人による色の見え方はA×Bで決まること、そして、
(2)LED照明は、
i) 分光分布の幅が狭いことと、
ii) 様々な分光分布のものを得ることができること、
という特徴があることを認識していること、
が挙げられる。
【0012】
いま、宝飾品のディスプレイにあって、上記A×Bの考え方を適用すると、Aは同様に照明の分光分布であるが、Bは対象物である宝飾品の分光反射率(反射特性)と考えることができる。そして、現状においては、例えば多面カットされたダイヤやクリスタルを周囲の色々な方向、角度から眺めると、観測者と対象物である宝飾品との実効的な距離が変化することを利用して、結果として積極的にBを変えるのと同じ現象となるようにしてBの値を刻々と変化させ、それによってA×Bの結果をも刻々と変化させ、上記したような宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている上記明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得ているものと考えることができる。
仮に、そのような考え方が適用できる余地があるとすれば、逆にAを刻々と変化させる手法によれば、上記したような、観る人の視点の動きを伴わずとも、宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている上記明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得ることが可能なディスプレイ方法及び装置を提供できる可能性がある。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特開2008-279227号公報
【特許文献2】特開2009-295472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって本発明は、ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などを対象とする宝飾品のディスプレイ方法及び装置であって、従来の既成概念を覆すと同時に、宝飾品の魅力を顕著に引き出し、高める革新的なものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、本願発明者は、スペクトル成分を時間的に変化させたスペクトル可変照明光源で対象物であるダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などの宝飾品を、背景をバックに擁する態様で照らすことにより、当該背景の色彩が時間変化しない状況下であっても宝飾品から観測者の眼に入る虹色の各色成分強度に時間的変化を与え得ること、そして、そのようにして生み出された「虹色成分の時間変動」を通じて宝飾品の新たな魅力を引き出し得、観測者に対するディスプレイ効果をより高め得ることを見い出し、本発明を完成した。
【0016】
上記課題を解決可能な宝飾品のディスプレイ方法は、ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などを対象物とする宝飾品のディスプレイ方法であって、背景をバックに擁する対象物、時間的に白色照明光のスペクトル成分を変化させ得るスペクトル可変照明光源で前記スペクトル成分を時間的に変化させた白色照明光を照射することで、観測者の眼に入る前記対象物からの虹色の各色成分強度に時間的変化を与え、当該観測者の眼に入る前記対象物からの虹色成分の時間変動を生み出すことを通じて前記対象物のディスプレイ効果を高め得ることを特徴とするものである。
【0017】
同様に、上記課題を解決可能な宝飾品のディスプレイ装置は、ダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠などを対象物とする宝飾品のディスプレイ装置であって、
背景をバックに擁する前記対象物に時間的にスペクトル成分を変化させた白色照明光を照射するスペクトル可変照明光源と、
前記スペクトル可変照明光源に接続され、予め内部メモリ中に格納された制御プログラムまたは外部指令に基づいて時間的にスペクトル成分を変化させる指令を送出して前記スペクトル可変照明光源を制御する制御装置と、
からなり、
前記白色照明光を前記対象物照射することで観測者の眼に入る前記対象物からの虹色の各色成分強度に時間的変化を与え、当該観測者の眼に入る前記対象物からの虹色成分の時間変動を生み出すことを通じて前記対象物のディスプレイ効果を高め得ることを特徴とするものである。
【0018】
なお、前記スペクトル可変照明光源は、制御装置によって夫々の輝度を制御され得るよう構成された、ピーク波長の異なる複数のLEDの組み合わせからなることが好ましい。
【0019】
或いは、前記スペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源からなることが好ましい。
【0020】
また、前記背景の色彩は時間変化しない様になっていることが好ましい。
【0021】
なお、本明細書で「スペクトル可変照明光源」とは、任意の波長を複数通り、また時々刻々瞬時に作り出せる光源一般を指し示すものとする。
なお、波長分布は同じ儘、その明暗のみが適宜変化するいわゆるゆらぎ照明というものが従来知られているが、上記説明からも明らかなとおり、本願発明で用いるスペクトル可変照明光源はゆらぎ照明の効果を用いたものとは相違する。
【0022】
本明細書で「DLP(Digital Light Processing;登録商標)」、或いは「DLP式」とは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD; Digital Micromirror Device)を用いたスペクトル可変照明光源のことを指し示すものとする。
【0023】
本明細書で「虹色」とは、気象現象における大気光学現象同様、赤から紫までの光のスペクトルが並んだ光の色のことを指し示すものとする。
光源からの光が宝飾品である対象物中を通過する際に対象物内のカットなどによって屈折、反射されるときに、対象物自体がプリズムの役割をするため、いわゆるプリズムによる白色光の色分解同様、光が分解(分光)されて観測者に複数色(一般に日本では赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色とされる。ただ厳密な区分はこれに限定されない)が並んで見える。
要するに、上記した並んで見える複数からなる色のことを本明細書では虹色というものとする。
【0024】
本明細書で「虹色成分の各色変動」とは、例えば虹色を構成する赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色の各色成分が時々刻々と変動しつつある態様を指し示すものとする。また虹色の各色成分の強度変化とは、虹色の各色成分の濃淡の変化を見ることにも相当する。
したがって本明細書においては、「虹色」といっても、スペクトル可変照明光源を用いてスペクトル成分を時々刻々と変化させる制御を行う特質上、あるタイミングで見たときには例えば虹色を構成する赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色の各色成分が必ずしも全て出力されていないときもあり得る。
【0025】
本明細書で「背景」とは、観測者から観て対象物のバックに存在し得るものをいう。したがって、積極的に対象物のディスプレイに供するために背景として準備されたもののほか、観測者から対象物を通じて向こう側に透けて見える壁や廊下の床面、山景、水(河、海、湖)景、空景その他のものをも、本明細書にいう背景と取り扱うものとする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の構成で得られる照明効果によれば、分光による発色に依存するダイヤ、クリスタル、オパールや真珠などにおいてその新たな魅力を引き出し、これまでにない色彩美の創造を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のディスプレイ装置の概要を示す図である。
【図2】本発明に係るディスプレイ装置の一実施例につき説明する図である。
【図3】本発明に係るディスプレイ装置の一実施例につき説明する図である。
【図4】本発明に係るディスプレイ装置の一実施例につき説明する図である。
【図5】本発明に係るディスプレイ装置の一実施例につき説明する図である。
【図6】本発明に係るディスプレイ装置の一実施例につき説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面および次の実施例に基づき、詳細に説明する。

【0029】
図1は、本実施形態のディスプレイ装置の概要を示す図である。
本実施形態では、スペクトル成分を時間的に変化させた白色照明光で宝飾品を照らすことによって、背景の色彩は時間変化しない状況下で、宝飾品から観測者の眼に入る虹色の各色成分強度に時間的変化を与えることにより、いわゆる「虹色成分の時間変動」を生みだし、宝飾品の新たな魅力を引き出している。

【0030】
上記照明光源としては、ピーク波長の異なる多数のLEDの輝度をコンピュータ制御するものや、波長プログラマブル光源を用いれば、スペクトル成分強度を時間的に変化させることが可能である。
図1に示す通り、本実施形態ではそのようなスペクトル可変照明光源として、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源を用いている。具体的には、本実施形態ではOptronic Laboratories社製のDLP式分光装置であるアジャイル(Agile)光源OL490を使用した。この装置は、光・デジタル処理技術を利用したものであり、プログラムによる可変制御が可能な高輝度かつ高分解能スペクトルを出力する、高い柔軟性とスピードを備えた装置である。すなわち、この装置では、集光されたXeランプ500Wの光源からの光がDMDに投射される。そして、DMDの個々のミラーがオン状態に傾いている時の光が投影レンズで拡大され、外部出力される。一方、DMDミラーがオフ状態に傾いているときの光は投影レンズに入らず、捨てられる。

【0031】
このようなスペクトル可変照明光源では、ミラーをオンにしている時間とオフにしている時間の比率で外部出力の明るさが制御される。すなわち、100%オン状態だと最大輝度となるし、50%オン、50%オフだと半分の輝度になる。
また本実施形態で用いたスペクトル可変照明光源では、カラー外部出力を得るために、光源とDMDの間に高速で回転するカラーホイールを配置し、R、G、Bの光を時分割でDMDに当てる手法(単板方式)を採っている。例えば赤色を投影したい場合には赤の光がDMDに当たっている瞬間だけミラーをオン状態にする。
なお、DMDを3個用い、光源もR、G、Bの3つを用意する手法もある。

【0032】
上記DMDを構成するミラーは一般にマイクロ秒単位でオン、オフを変化させることができるため、本実施形態ではこの特性を生かして時々刻々とそのスペクトル成分を変化させ得るスペクトル可変照明光源を実現している。なお、本実施形態で使用した波長プログラマブル光源では、1nm毎の波長設定が可能な程度の高精度が実現されている。

【0033】
また、図1に示すとおり、本実施形態のディスプレイ装置100では、上述したスペクトル可変照明光源1を制御する制御装置2を備えている。制御装置2はスペクトル可変照明光源1に接続されている。

【0034】
制御装置2は、予め内部メモリ3中に格納された制御プログラムまたは外部指令Cに基づいて時々刻々とスペクトル成分を変化させる指令を送出してスペクトル可変照明光源1を制御する。制御装置2は、上述したカラーホイールモータ制御をも司っている。なお外部指令Cは、制御装置2に接続されたコンピュータ4より送出され得るものである。
本実施形態では、制御装置2は、内部の演算装置(DSP; Digital Signal Processor)における信号制御、演算を通して、例えば、予め内部メモリ3中に格納された制御プログラムに基づいて一定周期でスペクトル可変照明光源1から出力される照明光の波長分布が刻々と変化するよう、時間的にスペクトル成分を変化させる指令を送出している。

【0035】
上述したとおり、本実施形態では、スペクトル可変照明光源1から出力される照明光は白色である。しかしながら、この照明光は、見た目は白色に見えるまま、実際には時々刻々とその分光分布が変化するよう、制御装置2によって制御されている。すなわち、本実施形態では、スペクトル可変照明光源1および制御装置2の相互作用により、時間変化に応じて厳密な意味で「照明」が変えられている。
ただ、観測者の眼には、スペクトル可変照明光源1から出力される照明光は白色のままで、しかも光が揺れているような感覚を全く与えない点は実用上、ディスプレイ装置として見たとき有用である。

【0036】
なお、本実施形態においてスペクトル可変照明光源1として使用されている波長プログラマブル光源というのは、例えば照明実験や、多数からなるサンプルの試験条件を同じうすることを目的(基準照明)としたり、或いは半導体検出器開発、検査(CCD、CMOS、太陽電池)や食品、薬品検査などのような、試験又は色彩若しくは物性評価用途に供されることを主眼として開発され、提供されてきたものであった。
本実施形態では発想を転換し、これまで利用されてきた波長プログラマブル光源の使用目的とは逆を行く、つまり制御装置2を適切に作用させることにより、波長プログラマブル光源を、その出力光が一見同じ色に見えるまま、実際には時々刻々とその分光分布が変化するようなスペクトル可変照明光源1として適用している。

【0037】
本実施形態では、スペクトル可変照明光源1より出力される白色光を分光してその分光分布を切り出してみたとき、時間軸上で別のところにおける分光分布は同一ではなく、一々変化している。本発明は、このようなスペクトル可変照明光源1の特性を利用して構成されている。
また、そのように観測者が直截看取することのできない照明光の分光分布の刻々とした変化Aを、分光反射率(反射特性)Bをもつ対象物(宝飾品)を通じ宝飾品から観測者の眼に入る虹色の各色成分の時間変動へと可視化した上で(A×B)観測者の眼に見せるのが本発明の根底に流れる思想、本質である。

【0038】
上記のA、B、またはA×Bは、先に挙げた特許文献2における考え方(1)、すなわち、人間が見える色というのは色材と照明の組み合わせであって、Aを照明の分光分布、Bを色材の分光反射率(反射特性)とすると、人による色の見え方はA×Bで決まること、を前提としている。
本実施形態に係るディスプレイ装置についてみれば、Bを変えるというのは、積極的にBを変えるというよりはむしろ、これと同じ現象となるように例えば多面カットされたダイヤやクリスタルを周囲の色々な方向、角度から眺めると、観測者と対象物である宝飾品との実効的な距離が変わっていることで、実は結果的に実現されている。
他方、Aを変えるというのは、光源の分光分布を制御すること、すなわち、例えばR、G、B各色のLEDからなる光源のそれぞれLED出力を制御したり、或いは本実施形態で用いているような波長プログラマブル光源から出力される光の分光分布を制御したりすることで実現できる。

【0039】
本発明においては、Aを刻々と変化させることで、観る人の視点の動きを伴わずとも、宝飾品が魅力的に見える要因ともなっているダイヤやクリスタルなどにおいて起こるカットで照明光を複雑に屈折反射させ様々な方向へ向けることに伴う明度分布の急激な変化によるきらめき感や、またダイヤ、クリスタルのほか、オパールや真珠のようなものについても、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得ることが可能なディスプレイ方法及び装置を提供できる。
従来同様、本実施形態のディスプレイ装置100においても、観測者の眼にはダイヤやクリスタルは一部が虹色にキラッと光って観え、また真珠やオパールは比較的広範囲で光沢を帯びると共に、虹色にキラッと光って観える。
【実施例1】
【0040】
次に、上記本実施形態に係るディスプレイ装置100を用いて対象物Pを展示したときに、観測者にどのような視覚上の変化をもたらすかにつき、一実施例に基づき説明する。図2~6は、本発明に係るディスプレイ装置の一実施例につき説明する図である。
【実施例1】
【0041】
図2~6に示す例は、上記した本実施形態に係るディスプレイ装置100を用いて対象物Pに見立てたガラスタイルを展示したときに、当該ガラスタイルを観る観測者Oの眼にもたらされる視覚上の変化の様子を示したものである。上記の通り、本実施例に係るディスプレイ装置100においては、スペクトル可変照明光源1から放たれる白色光は時々刻々とその分光分布が変化するように、制御装置2によって制御されており、図2~6にはそれぞれ、互いに異なる時間において撮影されたガラスタイルの表面の様子が表されている。
【実施例1】
【0042】
今回宝飾品の代替品として用いたガラスタイル自体は、公知のもので、ガラスタイルを真横からみるとよくわかる通り、ガラスに色が付いているわけではなく、タイルの表又は裏面に塗装或いはコーティングにより形成されている層が、観測者の眼にはまるでタイルの色みたいに観えるものを称する。ものによっては、タイルの表又は裏面には、質感や手触りといった概念を示すテクスチャとも称される細かな凹凸が形成されている。ガラスタイルは通常、ガラス裏面に形成された色彩や絵柄若しくは細かな凹凸、或いはガラス表面に形成された色彩や絵柄若しくは細かな凹凸と、当該ガラスタイルを照らす照明光との相互作用により光の干渉を生んで、観測者の眼には比較的広範囲で光沢を帯びると共に、観る角度に応じて虹色にキラッと光って観える。このとき、ガラスタイルは観測者に、観る角度に応じて透明感も同時に与える。
【実施例1】
【0043】
図2~6に示す通り、本実施例では、図1の背景50は白色紙となっており、スペクトル可変照明光源1から放たれる白色光によってその色彩が特段変化しないものとなっている。
【実施例1】
【0044】
また、図2~6に示されたガラスタイルの色変化が起こる要因である、スペクトル可変照明光源1から放たれる白色光のスペクトル分布は、それぞれ下表に示される通りである。下表には、図2~6が撮像されたときにおける白色光の3ピーク波長のデータが示されている。
【表1】
JP0005626841B2_000002t.gif

すなわち、本実施例では、表1に示された3ピーク波長を有するスペクトル分布を持つ白色光がスペクトル可変照明光源1から放たれると、観測者Oからはガラスタイルが図2~6に示された光沢、色調或いは模様を持ったものとして観える様な構成となっている。
【実施例1】
【0045】
なお、図2~6に示す通り、各図には、特に支配的に表われている色調と、それに続いてはっきりと表われている色調の名が併記されている。
図2では金色掛かった橙色が支配的に表われていると共に、青色も表われていることが、ガラスタイルの様子から判断することができる。
図3では緑色が支配的に表われていると共に、金色掛かった橙色のほか紫色も表われていることが、ガラスタイルの様子から判断することができる。
図4では黄色及び緑色が支配的に表われていると共に、金色掛かった橙色のほか青色そして紫色も表われていることが、ガラスタイルの様子から判断することができる。
図5では黄色が支配的に表われていると共に、緑色のほか青色そして紫色も表われていることが、ガラスタイルの様子から判断することができる。
図6では黄色及び青色が支配的に表われていると共に、緑色のほか紫色も表われていることが、ガラスタイルの様子から判断することができる。
【実施例1】
【0046】
ここで、上で説明した図2~6に示す各様子は、時々刻々とその分光分布が変化するスペクトル可変照明光源1から放たれる白色光によって時々刻々と表情が変化するガラスタイルの表面を断片的に例示したものである。
したがって、実際には、本実施形態に係るディスプレイ装置100を用いてガラスタイルを展示したときには、観測者Oの眼には、このガラスタイルは比較的広範囲で光沢を帯びると共に、時々刻々と連続的に虹色にキラッと光って観えることとなる。本実施例によれば、観測者O或いは対象物Pが一々相対的に移動しなくとも、上記の要領で、対象物Pを観る観測者Oに視覚上の変化がもたらされる。
【実施例1】
【0047】
[産業上の利用可能性]
上述したとおり、ダイヤなどの宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている上記明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得るには、一般的に観る人の視点の動きを伴うことが必要とされていた。
本発明によれば、スペクトル可変照明光源およびその制御装置を含むディスプレイ装置の作用により、観賞者は居ながらにして、自身の眼前にある宝飾品の形状を所定方向から愛で得ると同時に、この宝飾品が放つきらめき感や色彩美につき、時々刻々とその表情が変化する流れを愉しむことが可能となる。このように、本発明によれば、宝飾品の魅力を顕著に引き出し、高める革新的なディスプレイ方法及び装置を提供することができる。
【実施例1】
【0048】
[変形例]
以上、本発明につき一実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明は上記構成に何ら限定されず、種々の変形が可能である。
たとえば、上記実施形態においてスペクトル可変照明光源は、内蔵されているデジタルマイクロミラーデバイスが制御されることにより光の色や分光分布が制御され得る波長プログラマブル光源からなるものとしたが、これに限定されず、例えば制御装置によって夫々の輝度を制御され得るよう構成された、ピーク波長の異なる複数のLEDの組み合わせからなるものであっても良い。
【実施例1】
【0049】
同様に、本実施形態では、照明光源としてスペクトル成分を時間的に変化させた白色照明光を用いるものとしたが、スペクトル可変照明光源からの出力光については何ら白色に限定されない。
【実施例1】
【0050】
また本発明によれば、観る人の視点の動きを伴わずとも、宝飾品が魅力的に見える要因ともなっている明度分布の急激な変化によるきらめき感や、プリズムの原理による虹色への分光の態様が刻々と変化することに依る宝飾品としての魅力的な色彩美を得ることが可能なディスプレイ方法及び装置を提供することが可能となるが、本発明の構成要件に加えてさらに、これまで同様に観る人の視点の動きを得やすいよう、従来知られた手法を組み合わせることにより、従来技術で既に得られている効果との相乗効果が期待できる。
相乗効果の観点から言えば、背景が時間変化し得るよう構成されていても、少なくとも本発明の効果は発揮され得る。
【実施例1】
【0051】
以上の通り、本発明は新規かつ有用なるものであることは明らかである。
【符号の説明】
【0052】
C 外部指令
O 観測者
P 対象物
1 スペクトル可変照明光源
2 制御装置
3 内部メモリ
4 コンピュータ
50 背景
100 ディスプレイ装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5