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明細書 :ポリイオンデンドリマー、及びそれよりなるハイドロゲル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5376543号 (P5376543)
登録日 平成25年10月4日(2013.10.4)
発行日 平成25年12月25日(2013.12.25)
発明の名称または考案の名称 ポリイオンデンドリマー、及びそれよりなるハイドロゲル
国際特許分類 C08G  65/333       (2006.01)
C08L  71/02        (2006.01)
C08K   3/34        (2006.01)
C08L  33/02        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  47/34        (2006.01)
A61K  47/32        (2006.01)
FI C08G 65/333
C08L 71/02
C08K 3/34
C08L 33/02
A61K 37/02
A61K 47/34
A61K 47/32
請求項の数または発明の数 21
全頁数 41
出願番号 特願2011-520779 (P2011-520779)
出願日 平成22年6月28日(2010.6.28)
国際出願番号 PCT/JP2010/004267
国際公開番号 WO2011/001657
国際公開日 平成23年1月6日(2011.1.6)
優先権出願番号 2009156670
優先日 平成21年7月1日(2009.7.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月1日(2011.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】ジャスティン マイナー
【氏名】相田 卓三
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】井津 健太郎
参考文献・文献 特開2009-120626(JP,A)
特表平07-505915(JP,A)
特開2008-063316(JP,A)
特開2008-100941(JP,A)
特表2007-530752(JP,A)
特開昭63-099233(JP,A)
WANG,Q. et al,High-water-content moldable hydrogels by mixing clay and a dendritic molecular binder,Nature(London, United Kingdom),2010年 1月21日,Vol.463, No.7279,p.339-343
IHRE,H. et al,Fast and Convenient Divergent Synthesis of Aliphatic Ester Dendrimers by Anhydride Coupling.,J Am Chem Soc,2001年,Vol.123, No.25,p.5908-5917
調査した分野 C08G 65/00-65/48
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16

特許請求の範囲 【請求項1】
コア部に親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合してなるポリイオンデンドリマー。
【請求項2】
線状ポリマーの両末端のデンドロン化が、ポリエステルによるものである請求項1に記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項3】
ポリエステルが、分岐が対称的になるようにするために2個以上の水酸基が対称的に置換した炭素数3~10の脂肪族飽和カルボン酸からなるポリエステルである請求項2に記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項4】
コア部の親水性の線状ポリマーが、ポリアルキレングリコールである請求項1から3のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項5】
デンドロン表面に、ポリエーテル基によりグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合させられている請求項1から4のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項6】
ポリイオンデンドリマーが、次の一般式1
【化11】
JP0005376543B2_000012t.gif
(式中、nはコア部のポリエチレングリコールの繰り返し数を示し、20~100000であり、mは表面にカチオン性の基を導入するためのリンカー基の繰り返し数であり1~6であり、gはデンドロンの世代を示し1~5であり、Rはグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示し、Xは水素原子又はC-Cのアルキル基を示す。)
で表されるポリイオンデンドリマーである請求項1~4のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項7】
一般式1におけるXを含むポリハイドロオキシカルボン酸が、分岐が対称的になるようにするために2個以上の水酸基が対称的に置換した炭素数3~10の脂肪族飽和カルボン酸である請求項6に記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項8】
一般式1におけるXが、メチル基である請求項6又は7に記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項9】
グアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が、次の式2、式3、又は式4、
【化12】
JP0005376543B2_000013t.gif
で表されるカチオン性の基である請求項1~8のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項10】
ポリイオンデンドリマーが、次の式5
【化13】
JP0005376543B2_000014t.gif
(式中、nは20~100000である。)
で表されるポリイオンデンドリマーである請求項1~9のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー、及び粘土鉱物を含有してなるハイドロゲル材料。
【請求項12】
ハイドロゲル材料が、さらにイオン性の側鎖を有する線状のポリマーを含有してなる請求項11に記載のハイドロゲル材料。
【請求項13】
イオン性の側鎖を有する線状のポリマーが、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩である請求項12に記載のハイドロゲル材料。
【請求項14】
粘土鉱物が、水膨潤性のスメクタイト、及び層状珪酸塩からなる群から選ばれる粘土鉱物である請求項11~13のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
【請求項15】
粘土鉱物が、ナノシート構造を有する粘土鉱物である請求項11~14のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
【請求項16】
粘土鉱物が、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、雲母、及び合成雲母からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項11~15のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
【請求項17】
粘土鉱物が、ヘクトライトである請求項16に記載のハイドロゲル材料。
【請求項18】
請求項11~17のいずれかに記載のハイドロゲル材料に水を含有させてなるハイドロゲル。
【請求項19】
水の含有量が、ハイドロゲル材料に対して80%以上である請求項18に記載のハイドロゲル。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のハイドロゲルが、生理活性のあるタンパク質を含有してなるタンパク質含有ハイドロゲル。
【請求項21】
生理活性のあるタンパク質が、ミオグロビン又はアルブミンである請求項20に記載のタンパク質含有ハイドロゲル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリイオンデンドリマーに関する。また、本発明は、当該ポリイオンデンドリマー及び粘土鉱物(クレイ)を含有してなるハイドロゲル材料、並びに当該ハイドロゲル材料に多量の水を含有させてなるハイドロゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
水は地球上の生命にとって必要不可欠なものであり、清浄さの象徴と見なされてきた。地球の表面の71%は水で覆われ、また、我々の体の65%はこの単純でありながら活力に満ちた分子から成り立っている。自然界とりわけ生物界で水は大変重要な役割を担っているので、高含水率の含水材料を作り出すことができれば、環境にも優しい、用途の広い、重要な材料となりうる。しかしながら、これまで高含水率の含水材料を作り出す試みは、容易に予想されるように、機械的強度が劣るために見るべき成果がなかったが、近年、水を主成分とする材料のドラッグデリバリーや人工軟骨などへの潜在的な可能性に注目して、いくつかの研究グループがその機械的強度を向上させることに取り組んでいる(非特許文献1~3)。
【0003】
含水材料として、従来から知られているポリマーハイドロゲルは、基本的には共有結合による架橋により作られている。これらの通常の有機化学的方法により架橋されたポリマーハイドロゲルは、強度が低くもろい不透明な材料であり自己修復性もなかった。
ハイドロゲルの強度を改善するために、粘土鉱物の共存下に(メタ)アクリルアミド誘導体を重合させてなる方法により、引張破断強度が改善された有機無機複合ハイドロゲルが提案されている(特許文献1)。さらに、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する重合性モノマーとの共重合体とすることにより強度が改善されることも報告されている(特許文献2)。
また、最近、ポリマーと水膨潤性粘土鉱物とを複合させたポリマー/無機複合ナノ複合体ハイドロゲルが、比較的優れた機械的強度を持つことから注目されているが、これらのゲルの含水率はたかだか90%であり、機械的強度は含水率の増加に伴い減少し、実用的に意味のある強度を発現させるためには含水率を80%程度にまで減少させる必要があった(非特許文献4)。
【0004】
また、従来から知られているポリマーハイドロゲルを製造するためには、重合反応や架橋反応によるため、加熱や冷却のサイクルを繰り返す等、複雑な工程を経る必要があった。例えば、ケン化度90%以上のポリビニルアルコールを水蒸気の存在下に1.2~5.0気圧で105~150℃に維持したときの凝集物を脱水して、再膨潤させてなるハイドロゲルが報告されている(特許文献3)。
このようなハイドロゲルは、医薬、食品、化粧品、衛生用品、農業資材、電子材料など広範囲な産業分野で利用されており、例えば、ポリ乳酸などからなるハイドロゲルにGM-CSFを含有させてなる医薬品(特許文献4)、オリゴ(ポリ(エチレングリコール)フマレート)を用いた光架橋性生分解性ハイドロゲルを含有してなる関節補填材料(特許文献5)、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーのポリマー結晶系ヒドロゲルによるモルフォロジー発現性を有する生体材料(特許文献6)、ポリビニルアルコールとアニオン性架橋重合体と水酸化アルカリを含有してなるアルカリ電池用高分子ハイドロゲル電解質(特許文献7)、ピリジン等の複素環式化合物から形成される第4級アンモニウムカチオンを含むイオン性有機化合物からなるハイドロゲル(特許文献8)などが知られている。
また、医薬や食品などに適用する場合には、人体に対する安全性が要求され、環境保護の観点からは生分解性であることが望まれている。したがって、ハイドロゲルを構成する材料がこれらの要望を満たす物であることが望まれている。例えば、ポリエチレングリコールやある種のポリエステルは人体から容易に排出されるか又は生物学的に易分解性であることが知られており(非特許文献5~6)、また、クレイナノシートは自然界に存在する無機鉱物を原料とするもので、ローション等の化粧品や歯磨き粉、シャンプー及びシャワーゲル等に広く使われている安全な材料であることが知られており(非特許文献7)、このような材料を用いたハイドロゲルの開発が望まれている。
【0005】
一方、「デンドリマー (dendrimer) は、中心から規則的に分岐した構造を持つ樹状高分子。ギリシャ語で木を意味する用語から命名された。デンドリマーは、コア (core) と呼ばれる中心分子と、デンドロン (dendron) と呼ばれる側鎖部分から構成される。また、デンドロン部分の分岐回数を世代 (generation) と言い表す。一般に高分子はある程度の分子量分布を持つが、高世代のデンドリマーは、分子量数万に達するもののほとんど単一分子量であるという、際立った特徴を持つ。また、コアはデンドロンによって覆われており、外界と遮断された環境にあるために、特異な発光挙動や反応性を示すことが見出され、新しい機能物質として期待されている。ただし、他の高分子と比べて合成が極めて困難であるため、実用化には至っていない。また、現在最もよく用いられているポリアミドアミン構造を持つPAMAMデンドリマーなどは、試薬会社から市販されている。」(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
現在までに、デンドリマーをハイドロゲルに応用したものは見い出せないが、DDSなどへの応用が期待されている。また、PAMAMデンドリマーなどのデンドリマーの表面にアンモニウムイオンやカルボキシレートイオンなどの陽イオンや陰イオンを結合させたイオン性デンドリマーが抗寄生虫組成物として有用であることが報告されている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-53629号公報
【特許文献2】特開2009-46553号公報
【特許文献3】特開平7-216101号公報
【特許文献4】特開2007-308500号公報
【特許文献5】特表2008-537499号公報
【特許文献6】特開2005-213400号公報
【特許文献7】特開2005-322635号公報
【特許文献8】WO2006/082768号公報
【特許文献9】特表2002-524524号公報
【0007】

【非特許文献1】Zhang, S., Nat. Biotechnol. 21, p.1171-1178 (2003).
【非特許文献2】Aggell, A. et al., Nature 386, p.259-262 (1997).
【非特許文献3】Hirst, A. R. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 47, p.8002-8018 (2008).
【非特許文献4】Haraguchi, K. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 44, p.6500-6504 (2005).
【非特許文献5】Greenwald, R. B. et al., Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst.17, p.101-163 (2000).
【非特許文献6】Ihre, H. et al., J. Am. Chem. Soc. 123, p.5908 (2001).
【非特許文献7】Rockwood Additives Ltd., Laponite in personal care products Laponite technical bulletin L211/01g (1990).
【非特許文献8】H. Ihre, et al., J. Am. Chem. Soc. 123, p.5908 (2001).
【非特許文献9】Yoshida, M. et al., J. Am. Chem. Soc. 129, p.11039-11041(2007).
【非特許文献10】Nowak, A. P. et al., Nature 417, p.424-428 (2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来のハイドロゲルの欠点を克服し、水を主成分とし含水量が大きく、実用的な機械的強度を有するハイドロゲル、及びその材料を提供する。本発明は、さらに、高い透明度を有し、自己修復性があり、形状維持性のあるハイドロゲル、及びその材料を提供するものである。さらに、本発明は、新規なポリイオンデンドリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような従来のハイドロゲルの欠点を克服し、水を主成分とし、実用的な機械的強度を有する材料を開発すべく、鋭意検討した結果、コア部にポリエチレングリコール等の親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をポリエステルでデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基等のカチオン性の基を多数擁するポリイオンデンドリマーの分子設計とその合成法を確立し、これらのポリイオンデンドリマーが静電気的な相互作用及び水素結合等を介してナノシート構造を有する粘土鉱物(クレイ)の表面と結合してできる複合体よりなるハイドロゲルが、高い機械的強度と瞬時に完全に自己修復する性質を併せ持つ材料となること、さらにイオン性の側鎖を有する線状のポリマーを併用することにより、さらに高い機械的強度を発現することを見い出して、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、コア部にポリエチレングリコール等の親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をポリエステルでデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基、チオ尿素基、及び/又はイソチオ尿素基から選ばれるカチオン性の基が結合してなるポリイオンデンドリマーに関する。
また、本発明は、前記した本発明のポリイオンデンドリマー、及び粘土鉱物(クレイ)を含有してなるハイドロゲル材料、並びにさらに水を含有してなるハイドロゲルに関する。
さらに、本発明は、前記した本発明のポリイオンデンドリマー、粘土鉱物(クレイ)、及びイオン性の側鎖を有する線状のポリマーを含有してなるハイドロゲル材料、並びにさらに水を含有してなるハイドロゲルに関する。
本発明は、前記した本発明のいずれかのハイドロゲルに生理活性のあるタンパク質を含有してなるタンパク質含有ハイドロゲルに関する。
【0011】
本発明を更に詳細に説明すれば次のとおりである。
(1)コア部に親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合してなるポリイオンデンドリマー。
(2)コア部に親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をポリエステルでデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合してなるポリイオンデンドリマー。
(3)ポリエステルが、分岐が対称的になるようにするために2個以上の水酸基が対称的に置換した炭素数3~10の脂肪族飽和カルボン酸からなるポリエステルである前記(2)に記載のポリイオンデンドリマー。
(4)コア部の親水性の線状ポリマーが、ポリアルキレングリコールである前記(1)から(3)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(5)デンドロン表面に、ポリエーテル基によりグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合させられている前記(1)から(4)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(6)ポリイオンデンドリマーが、次の一般式1
【0012】
【化1】
JP0005376543B2_000002t.gif

【0013】
(式中、nはコア部のポリエチレングリコールの繰り返し数を示し、20~100000であり、mは表面にカチオン性の基を導入するためのリンカー基の繰り返し数であり1~6であり、gはデンドロンの世代を示し1~5であり、Rはグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示し、Xは水素原子、又はC-Cのアルキル基を示す。)
で表されるポリイオンデンドリマーである前記(1)~(4)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(7)一般式1におけるXを含むポリハイドロオキシカルボン酸が、分岐が対称的になるようにするために2個以上の水酸基が対称的に置換した炭素数3~10の脂肪族飽和カルボン酸である前記(6)に記載のポリイオンデンドリマー。
(8)一般式1におけるXが、メチル基である前記(6)又は(7)に記載のポリイオンデンドリマー。
(9)グアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が、次の式2、式3、又は式4、
【0014】
【化2】
JP0005376543B2_000003t.gif

【0015】
で表されるカチオン性の基である前記(1)~(8)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(10)ポリイオンデンドリマーが、次の式5
【0016】
【化3】
JP0005376543B2_000004t.gif

【0017】
(式中、nは20~100000である。)
で表されるポリイオンデンドリマーである前記(1)~(9)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー。
(11)前記(1)~(10)のいずれかに記載のポリイオンデンドリマー、及び粘土鉱物を含有してなるハイドロゲル材料。
(12)ハイドロゲル材料が、さらにイオン性の側鎖を有する線状のポリマーを含有してなる前記(11)に記載のハイドロゲル材料。
(13)イオン性の側鎖を有する線状のポリマーが、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩である前記(12)に記載のハイドロゲル材料。
(14)粘土鉱物が、水膨潤性のスメクタイト、及び層状珪酸塩からなる群から選ばれる粘土鉱物である前記(11)~(13)のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
(15)粘土鉱物が、ナノシート構造を有する粘土鉱物である前記(11)~(14)のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
(16)粘土鉱物が、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、雲母、及び合成雲母からなる群から選ばれる1種又は2種以上である前記(11)~(15)のいずれかに記載のハイドロゲル材料。
(17)粘土鉱物が、ヘクトライトである前記(16)に記載のハイドロゲル材料。
(18)前記(11)~(17)のいずれかに記載のハイドロゲル材料に水を含有させてなるハイドロゲル。
(19)水の含有量が、ハイドロゲル材料に対して80%以上である前記(18)に記載のハイドロゲル。
(20)前記(18)又は(19)に記載のハイドロゲルが、生理活性のあるタンパク質を含有してなるタンパク質含有ハイドロゲル。
(21)生理活性のあるタンパク質が、ミオグロビン又はアルブミンである前記(20)に記載のタンパク質含有ハイドロゲル。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、表面にカチオン性の基が結合したポリイオンデンドリマー、及びそれを用いたハイドロゲルを提供するものである。
本発明は、少なくとも94%の水分を含有することができ、非共有結合のみでゲル化している強靱で透明なハイドロゲルを提供することができる。また、このような水分含有量の高い含水材料はタンパク質をその生物学的機能性を失うことなく取り込むことが可能であり、本発明のハイドロゲルはタンパク質を取り込んだことによる機械的強度の減少もなく、タンパク質含有ハイドロゲルとして有用である。
さらに、本発明のハイドロゲルはテトラヒドロフラン等の有機溶剤に浸漬しても形態保持性があり、乾燥した後に水で処理して再ゲル化しても元の形状を回復する特徴を有している。
本発明により得られる超分子ハイドロゲルは、特定の大きさを有するデンドリマーを含有するものであり、デンドリマーのコア部の線状ポリマーの重合度やデンドロン部の世代及びデンドロン表面のイオン種を変えることにより、種々のサイズや形状のポリイオンデンドリマーを分子設計してその成分として用いることができるので、幅広い物性のデザインが可能である。また、本発明のポリイオンデンドリマーの合成も容易である。さらに、本発明のハイドロゲルはクレイナノシートとポリイオンデンドリマーと必要によりポリアクリル酸ナトリウムのようなイオン性の側鎖を有する線状のポリマーを混合して撹拌するだけで容易に形成されるため(図1参照)、従来のポリマーハイドロゲルの製造時に必要であった加熱や冷却のサイクルが不要であるので、調製が容易で環境に優しい多目的の材料として大きな可能性を有している。
【0019】
即ち、本発明のハイドロゲルは、水分含有量が高く(少なくとも94%)、かつ十分な機械強度を有し、さらに透明性に優れ、形状維持性に優れ、耐薬品性があり、再ゲル化しても元の形状を回復する自己修復性があり、生理活性や酵素活性のあるタンパク質等を該タンパク質の性質を変えずに保持できるという優れた特徴を有するものである。
さらに、本発明のハイドロゲルを構成するポリイオンデンドリマーのコア部を構成する親水性の線状ポリマーであるポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール、及びデンドロンを構成するポリエステルは人体から容易に排出されるか又は生物学的に易分解性であることが知られており(非特許文献5~6)、環境に優しいだけでなく人体に対する安全性にも優れている。本発明のハイドロゲルに使用されるクレイナノシートも、自然界に存在する無機鉱物を原料とするもので、ローション等の化粧品や歯磨き粉、シャンプー及びシャワーゲル等に既に広く使われている安全な材料であり(非特許文献7)、この点からも本発明のハイドロゲルは環境に優しいだけでなく人体に対する安全性にも優れているということができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、自己集積化によるハイドロゲルの製造過程を写真と模式図で示したものである。
【図2】図2は、本発明のハイドロゲル2%G3-Clay-ASAPの透過型電子顕微鏡像である。
【図3】図3は、本発明のハイドロゲルClay-G1、Clay-G2及びClay-G3の動的粘弾性の結果を示したグラフである。
【図4】図4は、本発明のハイドロゲルClay-G1-ASAP、Clay-G2-ASAP、及びClay-G3-ASAPの動的粘弾性の結果を示したグラフである。
【図5】図5は、本発明のハイドロゲルG3-Clayの貯蔵弾性率によるクレイナノシートの効果を表したグラフである。
【図6】図6は、本発明のハイドロゲルG3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率によるクレイナノシートの効果を表したグラフである。
【図7】図7は、本発明のハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの動的粘弾性による歪み依存性を表したグラフである。
【図8】図8は、本発明のハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの高速粘弾性回復特性の結果を示したグラフである。
【図9】図9は、本発明のハイドロゲルに取り込まれたミオグロビンの脱離率の結果を示したグラフである。
【図10】図10は、本発明のハイドロゲルに取り込まれたミオグロビン及びアルブミンの脱離率の結果を示したグラフである。
【図11】図11は、本発明のハイドロゲルに取り込まれたミオグロビンの活性試験の結果を示したグラフである。
【図12】図12は、本発明のハイドロゲルの形状保持性能を示したカラー写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポリイオンデンドリマーは、コア部に親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合してなることを特徴とするものである。
コア部の親水性の線状ポリマーとしては、炭素数2~5の直鎖状又は分岐状のアルキレングリコールからなるポリアルキレングリコールが好ましく、より好ましいポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールが挙げられる。これらのポリアルキレングリコールは、親水性であることが必要であり、アルキレングリコールの繰り返し数(n)としては、特に制限はないが、20~100000、好ましくは100~10000、より好ましくは150~1000、さらに好ましくは200~500が挙げられる。一般に、繰り返し数(n)が小さすぎるとハイドロゲルの強度が不足し、大きすぎると含水率が低下することがあるので、強度と含水率を考慮して適宜決めることができる。

【0022】
本発明のポリイオンデンドリマーは、コア部の線状ポリマーの両末端をデンドロン化したものである。デンドロン化する方法としては、エーテル結合(-O-)、イミノ結合(-N-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)、カルバモイルオキシ結合(-OCONH-)などの任意の結合により行うことができる。例えば、ポリオールによるポリエーテル、ポリアミンによるポリアミン、ハイドロキシカルボン酸によるポリエステル、アミノカルボン酸によるポリアミド、ポリカルバミン酸誘導体によるポリカーボネートなどによることもできるが、製造方法が簡便で親水性であるものが好ましい。好ましいデンドロン化としては、ポリエステルが挙げられる。ポリエステルによるデンドロン化における分岐させるために使用されるカルボン酸としては、ジハイドロオキシカルボン酸、トリハイドロオキシカルボン酸などのポリハイドロオキシカルボン酸を使用することができる。また、分岐が対称的になるようにするために、2個以上の水酸基が対称的に置換したカルボン酸が好ましい。このようなカルボン酸としては、炭素数3~10、好ましくは5~10の脂肪族飽和カルボン酸(但し、炭素数はカルボキシル基の炭素原子を含まない炭素数である。)が好ましいが、これに限定されるものではない。好ましいカルボン酸としては、3-ハイドロオキシ-2-ハイドロオキシメチル-プロピオン酸、又は3-ハイドロオキシ-2-ハイドロオキシメチル-2-アルキル-プロピオン酸が挙げられる。当該アルキル基は、一般式1において基Xで示されているものであり、基Xは水素原子、又はC-Cのアルキル基、好ましくはC-Cのアルキル基、より好ましくはC-Cのアルキル基を示す。当該アルキル基としては、メチル基、エチル基などのC-C、好ましくはC-C、より好ましくはC-Cの直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。特に好ましいカルボン酸としては、3-ハイドロオキシ-2-ハイドロオキシメチル-2-メチル-プロピオン酸が挙げられる。
デンドロン部分の分岐回数を世代 (generation)と言う。本発明のポリイオンデンドリマーにおいては、当該世代(g)としては特に制限はないが、世代が大きくなると製造が煩雑になり、小さいとハイドロゲルの強度が低下することから、世代(g)としては1~5、好ましくは1~4、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3が挙げられる。

【0023】
このようにして成長させたデンドリマーの表面は、ポリハイドロオキシカルボン酸を使用してエステル化したことにより、当該ポリハイドロオキシカルボン酸の水酸基が存在することになる。そして、当該水酸基に、グアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合したものが本発明のポリイオンデンドリマーである。当該水酸基にカチオン性の基を結合させる方法としては、適当なリンカー基を用いる方法が好ましい。リンカー基としては、直鎖状の原子数で3~40個、好ましくは6~30個、6~20個のものが挙げられる。これらのリンカー基を構成する原子としては、炭素原子、酸素原子、又は窒素原子が挙げられる。リンカー基は、デンドリマーの表面の水酸基とカチオン性の基を結合させることができれば十分であるが、デンドリマー全体の親水性を保持させるために、リンカー基も親水性のものが好ましい。好ましいリンカー基としてはポリエーテルが挙げられる。ポリエーテルの繰り返し数(m)としては1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2~3が挙げられる。
リンカー基とデンドリマーの表面の水酸基との結合は、特に限定されるものではない。エーテル結合(-O-)、イミノ結合(-N-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)、カルバモイルオキシ結合(-OCONH-)などの任意の結合を選択することができるが、製造の容易さから好ましい結合としては、カルバモイルオキシ結合(-OCONH-)が挙げられる。
好ましいカチオン性の基としては、前記した式2、式3、又は式4で表されるグアニジン基、チオ尿素基やイソチオ尿素基が挙げられる。より好ましいカチオン性の基としては、前記した式2で表されるグアニジン基が挙げられる。

【0024】
本発明の好ましいポリイオンデンドリマーにおける線状ポリマーの両末端のデンドロン化としては、ポリエステルによるものが挙げられ、より好ましくは、当該ポリエステルが、分岐が対称的になるようにするために2個以上の水酸基が対称的に置換した炭素数3~10、好ましくは炭素数3~7の脂肪族飽和カルボン酸でエステル化されたポリエステルによるものが挙げられる。
本発明の好ましいポリイオンデンドリマーにおけるコア部の親水性の線状ポリマーとしては、ポリアルキレングリコールが挙げられ、より好ましくは、繰り返し数20~100000のポリアルキレングリコール、さらに好ましくは繰り返し数20~100000のポリエチレングリコールが挙げられる。
本発明の好ましいポリイオンデンドリマーにおけるデンドロン表面としては、ポリエーテル基によりグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合している基が挙げられる。当該ポリエーテル基の好ましい例としては、繰り返し数が1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、さらに好ましくは2~3のポリアルキレンエーテル、より好ましくはポリエチレンエーテルが挙げられる。
本発明の好ましいポリイオンデンドリマーとしては、コア部の親水性の線状ポリマーが繰り返し数20~100000のポリアルキレングリコール、線状ポリマーの両末端のデンドロン化が分岐が対称的になるようにするために2個以上の水酸基が対称的に置換した炭素数3~10の脂肪族飽和カルボン酸からなるポリエステルによるものであり、かつデンドロン表面に、ポリエーテル基によりグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基が結合しているポリイオンデンドリマーが挙げられる。
本発明のさらに好ましいポリイオンデンドリマーは、前記した一般式1におけるXがメチル基である次の一般式6、

【0025】
【化4】
JP0005376543B2_000005t.gif

【0026】
(式中、nはコア部のポリエチレングリコールの繰り返し数を示し、20~100000であり、mは表面にカチオン性の基を導入するためのリンカー基の繰り返し数であり1~6であり、gはデンドロンの世代を示し1~5であり、Rはグアニジン基、チオ尿素基、及びイソチオ尿素基からなる群から選ばれるカチオン性の基を示す。)
で表されるポリイオンデンドリマーが挙げられる。
本発明のさらに好ましいポリイオンデンドリマーとしては、前記した式5で表されるポリイオンデンドリマーが挙げられる。式5で表されるポリイオンデンドリマーの世代数は3世代であり、以下ではこれを「G3」と略称する。同様に2世代のポリイオンデンドリマーを「G2」と略称し、1世代のポリイオンデンドリマーを「G1」と略称する。式5で表されるG3の例では、ポリエーテルの繰り返し数は2となっているが、これに限定されるものではない。

【0027】
本発明のポリイオンデンドリマーは、公知の方法に準じて製造することができる。
例えば、表面部として水酸基、分岐鎖としてポリエステル基、コア部として親水性の高いポリエチレングリコール基を有するビスデンドリマーを実施例1に示した製造ルートにしたがって製造する。表面部として水酸基を有するデンドリマー(G1-OH、G2-OH、G3-OHと略称する。)は、公知の方法、例えば、H. Ihre, O. L. Padilla De Jesus, J. M. J. Frechet, J. Am. Chem. Soc. 123, 5908 (2001).に記載の方法に準じて製造することができる。
このようにして製造された表面部として水酸基を有するデンドリマー(G1-OH、G2-OH、G3-OH)に適当なリンカー基を結合させ、次いで、グアニジン基などのカチオン性の基に誘導することにより本発明のポリイオンデンドリマーを製造することができる。この具体例として以下の実施例2~4に示した方法を参照されたい。
デンドロン部が第4世代以上のビスデンドリマーも実施例1~4の方法を繰り返すことにより製造することができる。また、表面部にチオウレニウム基又はイソチオウレニウム基を有するビスデンドリマーも表面部の水酸基を公知の方法によりチオウレニウム基に変換することにより合成することができる。
これらの製造工程において、必要があればペプチド合成などに汎用されている保護基を導入することもできる。

【0028】
このようにして製造された本発明のポリイオンデンドリマーは、溶液状としてそのままハイドロゲルの材料とすることもできるし、乾燥させてハイドロゲルの材料とすることもできる。
本発明のハイドロゲル材料として使用される粘土鉱物(クレイ)としては、ナノシート構造を有するものが好ましいが、これに限定されるものではない。好ましい粘土鉱物(クレイ)としては、水膨潤性のスメクタイトや雲母等の層状珪酸塩が挙げられる。より具体的には、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、雲母、合成雲母などが挙げられる。より好ましい粘土鉱物(クレイ)としては、ヘクトライトが挙げられる。粘土鉱物(クレイ)は、市販のものをそのまま使用することもできる。
粘土鉱物(クレイ)の使用量としては、本発明のポリイオンデンドリマー1質量部に対して、1~100質量部、好ましくは10~100質量部、より好ましくは10~50質量部が挙げられる。

【0029】
本発明のハイドロゲル材料として使用されるイオン性の側鎖を有する線状のポリマーとしては、線状ポリマーであって、側鎖にイオン性の基を有するものである。好ましいイオン性の側鎖を有する線状のポリマーとしては、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。好ましいポリマーとしては、ポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。
当該ポリマーの重合度には特に制限はないが、好ましい重合度としては100~200000、より好ましくは2000~100000、さらに好ましくは20000~100000や、重合度が20000~70000のものが挙げられる。ポリアクリル酸ナトリウムとしては、市販のものをそのまま使用することもできる。
イオン性の側鎖を有する線状のポリマーの使用量としては、本発明のポリイオンデンドリマー1質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.1~1質量部が挙げられる。

【0030】
本発明のハイドロゲルの製造方法としては、本発明のハイドロゲルは従来の共有結合による架橋ゲルの製造の場合と異なり、重合反応や架橋反応が不要であり、構成成分をただ混合するだけでよい。すなわち、図1に示したように、まず、ポリアクリル酸ナトリウム(ASAP)(3mg)とクレイナノシート(100mg)を水(5ml)中に投入すると透明な粘凋な液体となる(図1b)。次いで第三世代のデンドロンを両末端に有するポリイオンデンドリマー(G3)(7.5mg)を加えて撹拌すると3分以内にハイドロゲルが生成する(図1c)。ポリアクリル酸ナトリウムを用いない場合も同様な方法で容易にハイドロゲルを製造することができる。これらの具体的な製造例については、後述する実施例を参照されたい。

【0031】
図1は、本発明の自己集積化によるハイドロゲルの製造例を模式図(図1の上段)とカラー写真(図1の下段)で示したものである。図1aは、水中にクレイナノシートを混合した場合のものである。水中にクレイナノシートが懸濁している様子を模式的に示したものが図1aであり、そのカラー写真がその下段に示されている。懸濁により水が少し濁っている様子が移されている。それに、ポリアクリル酸ナトリウム(ASAP)を混合した場合のものが、図1bであり、その下段がその写真である。ポリアクリル酸ナトリウム(ASAP)が、クレイナノシートに付着して、懸濁状態が緩和されている。
これに、さらに第三世代のデンドロンを両末端に有するポリイオンデンドリマー(G3)を混合してゲル化したものが図1cであり、その下段がその写真である。図1cの写真ではゲル化している様子を明確にするために瓶の上下が逆にされている。それを模式的に示したものが図1cの模式図である。それぞれ単独で存在していたクレイナノシートが、ポリイオンデンドリマー(G3)によりゲル化する様子を図1cが示している。

【0032】
図2は、実施例13で製造された2%G3-Clay-ASAP(ポリイオンデンドリマー(G3)、クレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)、及びポリアクリル酸ナトリウム(ASAP)を用いたハイドロゲル)の透過型電子顕微鏡像である。クレイのナノシートが相互に両末端がデンドロン化されたポリマーにより相互に結合されて互いにもつれ合いながら均一に分散している様子がわかる。

【0033】
図3は、実施例9、実施例10及び実施例11で製造したハイドロゲルClay-G1、Clay-G2及びClay-G3のそれぞれについての、動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて歪み一定(γ=1%)の条件で測定した結果を示すものである。図3の縦軸は、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)(Pa)を示し、横軸は周波数(rad/sec)を示す。図3中の黒丸印(●)はハイドロゲルClay-G3の貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒四角印(■)はハイドロゲルClay-G2の貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒三角印(▲)はハイドロゲルClay-G1の貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示す。白丸印(○)はハイドロゲルClay-G3の損失弾性率(G”)の周波数分散を示し、白四角印(□)はハイドロゲルClay-G2の損失弾性率(G”)の周波数分散を示し、白三角印(△)はハイドロゲルClay-G1の損失弾性率(G”)の周波数分散を示す。
この結果、これらのハイドロゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は周波数に依存しない平坦部を有しており、この領域でG’>G”であって、擬固体状態のゲルの特徴を表していた。これらのハイドロゲルの強度をあらわすG’は、ハイドロゲルの製造に用いた両末端にデンドロン部を有するコア部がポリエチレングリコールのデンドロン部のグアニジンカチオンの濃度が同一であるにも拘わらず、該デンドロン部の世代が増加するに伴って上昇しており、デンドロン効果が示された。

【0034】
図4は、実施例17、実施例18及び実施例19で製造したアニオンポリマーを含有するハイドロゲルClay-G1-ASAP、Clay-G2-ASAP及びClay-G3-ASAPのそれぞれについての、動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて歪み一定(γ=1%)の条件で測定した結果を示すものである。図4の縦軸は、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)(Pa)を示し、横軸は周波数(rad/sec)を示す。図4中の黒丸印(●)はハイドロゲルClay-G3-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒四角印(■)はハイドロゲルClay-G2-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒三角印(▲)はハイドロゲルClay-G1-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示す。白丸印(○)はハイドロゲルClay-G3-ASAPの損失弾性率(G”)の周波数分散を示し、白四角印(□)はハイドロゲルClay-G2-ASAPの損失弾性率(G”)の周波数分散を示し、白三角印(△)はハイドロゲルClay-G1-ASAPの損失弾性率(G”)の周波数分散を示す。
この結果、これらのハイドロゲルの強度についてもデンドリマー効果が認められるとともに、アニオンポリマーの添加による、ハイドロゲルの強度(G’)の上昇が認められた。

【0035】
図5は、実施例5~実施例8で製造したハイドロゲル2%G3-Clay、3%G3-Clay、4%G3-Clay及び5%G3-Clayのそれぞれについての、動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて歪み一定(γ=1%)の条件で測定した結果を示すものである。図5の縦軸は、貯蔵弾性率(G’)(Pa)を示し、横軸は周波数(rad/sec)を示す。図5中の黒四角印(■)はハイドロゲル5%G3-Clayの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒丸印(●)はハイドロゲル4%G3-Clayの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒三角印(▲)はハイドロゲル3%G3-Clayの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒逆三角印(▼)はハイドロゲル2%G3-Clayの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示す。
この結果、これらのハイドロゲルの強度(G’)は、クレイナノシートの濃度の上昇に伴い上昇し、5%G3-Clayでは0.1MPaにまで上昇した。

【0036】
図6は、実施例12~実施例16で製造したハイドロゲル1%G3-Clay-ASAP、2%G3-Clay-ASAP、3%G3-Clay-ASAP、4%G3-Clay-ASAP及び5%G3-Clay-ASAPのそれぞれについての、動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて歪み一定(γ=1%)の条件で測定した結果を示すものである。図6の縦軸は、貯蔵弾性率(G’)(Pa)を示し、横軸は周波数(rad/sec)を示す。図6中の黒四角印(■)はハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒丸印(●)はハイドロゲル4%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒三角印(▲)はハイドロゲル3%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒逆三角印(▼)はハイドロゲル2%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、黒横向き三角印はハイドロゲル1%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示す。
この結果、これらのハイドロゲルの強度(G’)は、クレイナノシートの濃度の上昇に伴い上昇し、5%G3-Clay-ASAPでは0.5MPaにまで上昇した。

【0037】
図7は、実施例16で製造したハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPについての、動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて歪み一定(γ=1%)の条件で測定した結果を示すものである。図7の縦軸は、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)(Pa)を示し、横軸は周波数(rad/sec)を示す。図7中の濃い黒丸印(●)はハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)の周波数分散を示し、薄い黒丸印(○)はハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの損失弾性率(G”)の周波数分散を示す。
この結果、低歪み条件下では5%G3-Clay-ASAPは0.5MPaの貯蔵弾性率(G’)を有する擬固体ゲルであるが、限界歪み(γ=9%)を超えるとG’が急激に低下し、ゲルが破壊されて擬液体状態になることがわかった。

【0038】
図8は、実施例16で製造したハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの動的粘弾性測定を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて行い、図8に示す結果を得た。図8の縦軸は、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)(Pa)を示し、横軸は時間(秒)を示す。図8中の濃い実線(原図は濃紺の線)はハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの貯蔵弾性率(G’)を示し、薄い実線(原図は水色の線)はハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの損失弾性率(G”)を示す。
この結果、周波数(ω)6rad/s(1Hz)、歪み(γ)0.1%の条件で貯蔵弾性率(G’)が約0.5MPaであり、さらに損失正接(tanδ=G”/G’)が約0.4~0.5である擬固体性を示す値であった(図8)。このゲルに同じ周波数6rad/sを保持したまま、歪みを100%適用した際の貯蔵弾性率(G’)は5KPa程度まで減少し、損失正接(tanδ)が3~4の擬液体性を示す値となった。さらに300秒間連続で100%歪負荷を与え続けた直後、再び歪みを0.1%に戻して動的粘弾性を測定したところ、貯蔵弾性率(G’)は直ちに0.5MPaに回復した。さらにこの高速復帰挙動には繰り返し特性があり、連続して低歪負荷(0.1%)と高歪負荷(100%)のサイクルを3回繰り返しても、高速弾性率復帰挙動は損なわれなかった。この結果から本発明のハイドロゲルは特異な高速回復挙動を持つことがわかる。同様な挙動を示すハイドロゲルがこれまでにも報告されているが、本発明のハイドロゲルの低歪み条件下での貯蔵弾性率(0.5MPa)はオリゴメリックエレクトロライトハイドロゲル(前記の非特許文献9)より1桁以上高く、またコポリペプチドハイドロゲル(前記の非特許文献10)より2~3桁高く、さらにピリジン等の複素環式化合物から形成される第4級アンモニウムカチオンを含むイオン性有機化合物からなるハイドロゲル(前記の特許文献8)と比べても2桁近く高い値である。
以上により本発明のハイドロゲルが高度な自己修復性を持つことが示された。

【0039】
図9は、実施例27、実施例28及び実施例29で製造したミオグロビン(Mb)を含有したハイドロゲルG3-Clay-Mb、G1-Clay-Mb及びG2-Clay-Mbについてそれぞれ、15000rpmで遠心分離し、分離した水中のミオグロビンの濃度を405nmのソーレバンドの吸収を用いて分析しミオグロビンの脱離率を算定した(1st release)結果のグラフ、並びに、次いで脱水したハイドロゲルを水で処理した後、再度15000rpmで遠心分離し、分離した水中のミオグロビンの濃度から2回目のミオグロビンの脱離率を算定した(2nd release)結果を示すグラフである。図9の縦軸はミオグロビンの脱離率(%)を示す。横軸は左側から、G1-Clay-Mb(G1)の場合、G2-Clay-Mb(G2)の場合、及びG3-Clay-Mb(G3)の場合をそれぞれ示す。それぞれのハイドロゲルにおける左側は1st releaseの結果を示し、右側は2nd releaseの結果を示す。
この結果、脱離するミオグロビンの量はわずかであり、両末端にデンドロン基を有するポリマーのデンドロン基の世代が高くなるほど脱離率が急激に少なくなることがわかった。

【0040】
図10は、実施例27、実施例30、実施例31及び実施例32のハイドロゲルG3-Clay-Mb、G3-Clay-BSA、G3-Clay-ASAP-Mb及びG3-Clay-ASAP-BSAのそれぞれを、15000rpmで遠心分離し、分離した水中のミオグロビン又はアルブミンの濃度を405nm又は280nmのソーレバンドの吸収を用いて分析しミオグロビン又はアルブミンのそれぞれの脱離率を算定した結果を示すグラフである。図10の縦軸はタンパク質の脱離率(%)を示す。横軸は左側から、G3-Clayの場合、G3-Clay-ASAPの場合をそれぞれ示す。それぞれのハイドロゲルにおける左側はミオグロビン(Mb)の場合を示し、右側はアルブミン(BSA)の場合を示す。
この結果、ミオグロビンの脱離率及びアルブミンの脱離率はいずれも5%以下であった。

【0041】
図11は、ミオグロビンの濃度が0.5μMの濃度になるように実施例27及び実施例31のハイドロゲルG3-Clay-Mb及びG3-Clay-ASAP-Mbをそれぞれ用いて、ミオグロビンの活性を調べた結果を示すグラフである。比較のため、Clay-Mb、ASAP-Mb及びG3-Mbのそれぞれについても同様の測定を行った結果を示す。図11の縦軸はミオグロビンの比活性(%)を示す。横軸の左側から、G3-Clay-ASAP-Mbの場合、G3-Clay-Mbの場合、G3-Mbの場合、Clay-Mbの場合、ASAP-Mbの場合を示す。
この結果、Clay-Mb及びASAP-Mbの系でのミオグロビンは遊離のミオグロビンのそれぞれ98%及び96%の活性を示し、クレイナノシート及びASAPはミオグロビンの活性に影響を及ぼさないことがわかるが、G3-Mbの系ではミオグロビンの活性が遊離のミオグロビンの活性の35%しかなかった。この系でのミオグロビンの活性の大幅な低下はG3のグアニジン基(500μM)がミオグロビン(5μM)に対して大過剰に存在するためにグアニジン基がミオグロビンの活性に大きな影響を及ぼしたものと考えられる。
これに対して、G3-Clay-Mb及びG3-Clay-ASAP-Mbの系ではグアニジン基の大部分はクレイナノシートの表面に補足されていると考えられるので、このような影響は極めて少なくなった。即ち、本発明のハイドロゲルはカチオン性の基を多数有しているが、これらのカチオン性の基はクレイナノシートの表面に補足され、生理活性タンパク質の活性には大きな影響を与えないことがわかった。
なお、G3-Clay-Mbの系でのミオグロビンの活性はG3-Clay-ASAP-Mbでのミオグロビンに比べてやや高い活性を示したが、これは、G3-Clay-ASAPのゲルの強度がG3-Clayの強度より強く、ハイドロゲルの構造がG3-Clay-Mbの場合にはG3-Clay-ASAP-Mbの場合に比べてやや緩いため拡散しやすいというためと考えられる。

【0042】
図12は、ハート型の5%G3-Clay-ASAPハイドロゲルを製造し、このハイドロゲルをテトラヒドロフラン(THF)中に浸漬した場合、及びこのゲルを乾燥させた場合の形状をカラー写真で示したものである。図12のaは、G3-Clay-ASAPハイドロゲルであり、図12のbはTHFに浸漬後のゲルであり、図12のcは乾燥させたゲルである。
通常の物理的に架橋されたハイドロゲルはTHFに浸漬すると形状が破壊されるが、本発明のハイドロゲルは図12bに示したようにハート型の形状を維持していた。更にこのゲルを乾燥させると全体的に収縮するものの、図12cに示したようにハート型の形状は維持されていた。この乾燥ゲルは水中に投入すると図12aに示すハート型のハイドロゲルに再生された。

【0043】
このように、本発明は、コア部にポリアルキレングリコール等の親水性の線状ポリマーを有し、該線状ポリマーの両末端をポリエステルでデンドロン化し、デンドロン表面にグアニジン基等のカチオン性の基を多数擁するポリイオンデンドリマー、及びナノシート構造を有する粘土鉱物(クレイ)からなる新規なハイドロゲル材料を提供するものである。
本発明のポリイオンデンドリマーが静電気的な相互作用及び水素結合等を介してナノシート構造を有する粘土鉱物(クレイ)の表面と結合してできる複合体よりなる本発明のハイドロゲルは、水分含有量が高く(少なくとも94%)、強度の高い透明なハイドロゲルであり、かつ自己修復性があり、形状維持性があり、そして、生理活性や酵素活性のあるタンパク質等を該タンパク質の性質を変えずに保持できるという特徴を有している。
したがって、本発明のハイドロゲルは、従来のハイドロゲルの用途のみならず、医薬、食品、化粧品、衛生用品など広範囲の産業分野において極めて有用なものである。

【0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
次に示す反応式にしたがって、G1-OH、G2-OH及びG3-OHを製造した。
【実施例1】
【0046】
【化5】
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【実施例1】
【0047】
表面部として水酸基、分岐鎖としてポリエステル基、コア部としてポリエチレングリコール基を有するビスデンドリマーである化合物7(G1-OH)、その2世代の化合物9(G2-OH)、及びその3世代の化合物11(G3-OH)を、文献(非特許文献8 H. Ihre, O. L. Padilla De Jesus, J. M. J. Frechet, J. Am. Chem. Soc. 123, 5908 (2001).)に記載の方法により製造した。
【実施例1】
【0048】
化合物7(G1-OH)のNMRとMSのデータ:
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.09 (s, 6), 3.64 (bs, ~1200), 4.32 (t, 4, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=10879.
化合物9(G2-OH)のNMRとMSのデータ:
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.05 (s, 12), 1.29 (s, 6), 3.36 (t, 10, J=4.8),
3.64 (bs,~1200),4.32 (m, 8), 4.40 (d, 4, J=11.1).
MALDI-TOF-MS:[M]=11476.
化合物11(G3-OH)のNMRとMSのデータ:
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.05 (s, 24), 1.28 (s, 18), 3.28 (t, 5, J=5.8),
3.35 (t, 5, J=5.8), 3.50 (t, 6, J=5.8),
3.64 (bs,~1200), 3.78 (m, 25), 4.28 (m, 20).
MALDI-TOF-MS:[M]=12620.
【実施例2】
【0049】
次の反応式にしたがって、G1を製造した。
【実施例2】
【0050】
【化6】
JP0005376543B2_000007t.gif
【実施例2】
【0051】
(1)化合物13(G1-NH(Boc))の製造
化合物7(G1-OH)1.0g(0.09mmol,1当量)を5.0mLのジクロロメタン(CHCl)に溶解させ、0.25mLのピリジンと4-ニトロフェニルクロロホルメイト0.40g(2.0mmol,22当量)を加え、室温で22時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルに注ぎ、生成した化合物12を沈殿させて精製した。化合物12を6.0mLのベンゼンに溶解させ、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)0.07g(0.51mmol,5.7当量)とtert-ブチル2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチルカルバメイト0.35gを加えて、室温で12時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルに注いで、化合物13を0.8gの白色の固体として得た(收率68%)。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.20 (s, 6), 1.04 (s, 6), 1.42 (s, 36),
3.64 (bs, ~1200), 4.19 (t, 8, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=11684.
【実施例2】
【0052】
(2)化合物15(G1-Gdn(Boc))の製造
0.3gの化合物13をトリフルオロ酢酸(TFA)とジクロロメタン1:1の混合溶媒1mLに溶かし、室温で5時間撹拌して保護基を外した。ついで反応液をジエチルエーテルに注ぎ化合物14を沈殿物として得た。こうして得た化合物14を8mLのジクロロメタンに溶かし、0.50mLのトリエチルアミンと50mgのN,N’-ジ(tert-ブチルオキシカルボニル)-N”-トリフルオロメタンスルホニルグアニジンを加え、室温で8時間撹拌し反応させた。反応液をジエチルエーテルに注いで、化合物15を0.22gの白色の固体として得た(收率62%)。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.20 (s, 6), 1.48 (s, 72), 3.64 (bs, ~1200),
4.19 (t, 8, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=11863.
【実施例2】
【0053】
(3)化合物1(G1(溶液))の製造
0.032gの化合物15を、トリフルオロ酢酸とジクロロメタンの混合溶媒(1:1)0.50mLに溶かし、室温で6時間撹拌して保護基を外し、化合物1(G1)を得た。反応はNMRで追跡し、1.48のシグナルが完全に消滅して、化合物15の保護基が外れたのを確認した。反応液は高真空下で溶媒と副生物を除去した後、1.0mLの純水を加えて3重量%のG1水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのままに用いた。
【実施例3】
【0054】
次の反応式にしたがって、G2を製造した。
【実施例3】
【0055】
【化7】
JP0005376543B2_000008t.gif
【実施例3】
【0056】
(1)化合物17(G2-NH(Boc))の製造
化合物9(G2-OH)1.0g(0.09mmol,1当量)を5.0mLのジクロロメタンに溶解させ、0.25mLのピリジンと4-ニトロフェニルクロロホルメイト0.80g(4.0mmol,44当量)を加え、室温で12時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルに注ぎ、生成した化合物16を沈殿させて精製した。化合物16を6.0mLのベンゼンに溶解させ、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)0.14g(1.02mmol,11.4当量)とtert-ブチル2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチルカルバメイト0.70gを加えて、室温で12時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルに注いで、化合物17を0.71gの白色の固体として得た(收率55%)。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.17 (s, 12), 1.24 (s, 6), 1.42 (s, 72),
3.64 (bs,~1200), 4.16 (t, 16, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=12542.
【実施例3】
【0057】
(2)化合物19(G2-Gdn(Boc))の製造
0.3gの化合物17をトリフルオロ酢酸とジクロロメタン1:1の混合溶媒2mLに溶かし、室温で5時間撹拌して保護基を外した。ついで反応液をジエチルエーテルに注ぎ化合物18を沈殿物として得た。こうして得た化合物18を8.0mLのジクロロメタンに溶かし、1.0mLのトリエチルアミンと0.10gのN,N’—ジ(tert—ブチルオキシカルボニル)-N”-トリフルオロメタンスルホニルグアニジンを加え、室温で8時間撹拌し反応させた。反応液をジエチルエーテルに注いで、化合物19を0.18gの白色の固体として得た(収率58%)。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.16 (s, 12), 1.24 (s, 6), 1.47 (s, 144),
3.64 (bs, ~1200), 4.16 (t, 16, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=12896.
【実施例3】
【0058】
(3)化合物2(G2(溶液))の製造
0.034gの化合物19を、トリフルオロ酢酸とジクロロメタンの混合溶媒(1:1)0.50mLに溶かし、室温で6時間撹拌して化合物19の保護基を外し、化合物2(G2)を得た。反応はNMRで追跡し、1.47のシグナルが完全に消滅して、保護基が外れたのを確認した。反応液は高真空下で溶媒と副生物を除去した後、1.0mLの純水を加えて3重量%のG2水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのまま用いた。
【実施例4】
【0059】
次の反応式にしたがって、G3を製造した。
【実施例4】
【0060】
【化8】
JP0005376543B2_000009t.gif
【実施例4】
【0061】
【化9】
JP0005376543B2_000010t.gif
【実施例4】
【0062】
【化10】
JP0005376543B2_000011t.gif
【実施例4】
【0063】
(1)化合物21(G3-NH(Boc))の製造
化合物11(G3-OH)1.0g(0.08mmol,1当量)を5.0mLのジクロロメタンに溶解させ、1.0mLのピリジンと4-ニトロフェニルクロロホルメイト1.6g(8.0mmol,100当量)を加え、室温で12時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルに注ぎ、生成した化合物20を沈殿させて精製した。化合物20を6.0mLのベンゼンに溶解させ、4-(ジメチルアミノ)ピリジン0.29g(2.12mmol,26当量)とtert-ブチル2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エチルカルバメイト1.4gを加えて、室温で12時間撹拌して反応させた。反応液をジエチルエーテルに注いで、化合物21を0.83gの白色の固体として得た(收率58%)。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.17 (s, 24), 1.23 (s, 18), 1.42 (s, 144),
3.64 (bs, ~1200), 4.16 (t, 32, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=13535.
【実施例4】
【0064】
(2)化合物23(G3-Gdn(Boc))の製造
0.3gの化合物21をトリフルオロ酢酸とジクロロメタン1:1の混合溶媒4mLに溶かし、室温で5時間撹拌して保護基を外した。ついで反応液をジエチルエーテルに注ぎ化合物22を沈殿物として得た。こうして得た化合物22を8.0mLのジクロロメタンに溶かし、1.5mLのトリエチルアミンと0.20gのN,N’-ジ(tert-ブチルオキシカルボニル)-N”-トリフルオロメタンスルホニルグアニジンを加え、室温で8時間撹拌し反応させた。反応液をジエチルエーテルに注いで、化合物29を0.21gの白色の固体として得た(收率59%)。
H-NMR(270MHz,CDCl)δ:
1.16 (s, 24), 1.21 (s, 18), 1.47 (s, 288),
3.64 (bs, ~1200), 4.14 (t, 32, J=5.0).
MALDI-TOF-MS:[M]=14106.
【実施例4】
【0065】
(3)化合物3(G3(溶液))の製造
0.036gの化合物23を、トリフルオロ酢酸とジクロロメタンの混合溶媒(1:1)0.50mLに溶かし、室温で6時間撹拌して保護基を外し、化合物3(G3)を得た。反応はNMRで追跡し、1.47のシグナルが完全に消滅して、保護基が外れたのを確認した。反応液は高真空下で溶媒と副生物を除去した後、1.0mLの純水を加えて3重量%のG3水溶液として、ハイドロゲルの製造にそのまま用いた。
【実施例5】
【0066】
自己集積化によるハイドロゲル(2%G3-Clay)の製造
実施例4で製造した3重量%のG3水溶液を純水で希釈して0.15%のG3水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)(ヘクトライト)を2重量%となるように加えて撹拌した。撹拌初期には透明な溶液となったが、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを2%G3-Clayと命名する。このゲルの含水率は97.9%であった。
【実施例6】
【0067】
自己集積化によるハイドロゲル(3%G3-Clay)の製造
実施例4で製造した3重量%のG3水溶液を純水で希釈して0.23%のG3水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を3重量%となるように加えて撹拌した。撹拌初期には透明な溶液となったが、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを3%G3-Clayと命名する。このゲルの含水率は96.3%であった。
【実施例7】
【0068】
自己集積化によるハイドロゲル(4%G3-Clay)の製造
実施例5で製造したハイドロゲル2%G3-Clayをクレイナノシートの濃度が4%となるように80℃で脱水してハイドロゲルを製造した。このハイドロゲルを4%G3-Clayと命名する。このゲルの含水量は95.7%であった。
【実施例8】
【0069】
自己集積化によるハイドロゲル(5%G3-Clay)の製造
実施例5で製造したハイドロゲル2%G3-Clayをクレイナノシートの濃度が5%となるように80℃で脱水してハイドロゲルを製造した。このハイドロゲルを5%G3-Clayと命名する。このゲルの含水率は94.6%であった。
【実施例9】
【0070】
自己集積化によるハイドロゲル(Clay-G1)の製造
実施例2で製造した3重量%のG1水溶液を純水で希釈して0.15%のG1水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えて撹拌した。撹拌初期には透明な溶液となったが、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルのグアニジン基の濃度は0.5mMであった。このハイドロゲルをClay-G1と命名する。このゲルの含水率は97.9%であった。
【実施例10】
【0071】
自己集積化によるハイドロゲル(Clay-G2)の製造
両末端をデンドロン化したポリエチレングリコールのデンドロン部の世代効果を見るために、実施例3で製造した3重量%のG2水溶液を純水で希釈して、ハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように、0.078%のG2水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えて撹拌した。撹拌初期には透明な溶液となったが、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルをClay-G2と命名する。このゲルの含水率は97.9%であった。
【実施例11】
【0072】
自己集積化によるハイドロゲル(Clay-G3)の製造
両末端をデンドロン化したポリエチレングリコールのデンドロン部の世代効果を見るために、実施例4で製造した3重量%のG3水溶液を純水で希釈して、ハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように、0.043%のG3水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えて撹拌した。撹拌初期には透明な溶液となったが、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルをClay-G3と命名する。このゲルの含水率は98.0%であった。
【実施例12】
【0073】
自己集積化によるハイドロゲル(1%G3-Clay-ASAP)の製造
0.03重量%のポリアクリル酸ナトリウム(ASAP)(和光純薬工業株式会社のポリアクリル酸ナトリウム 重合度22,000~70,000 high viscosity (カタログ番号196-02955))と1重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液にG3を0.075%になるように加え、撹拌したところ、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを1%G3-Clay-ASAPと命名する。このゲルの含水率は98.9%であった。
【実施例13】
【0074】
自己集積化によるハイドロゲル(2%G3-Clay-ASAP)の製造
0.06重量%のASAPと2重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液にG3を0.15%になるように加え、撹拌したところ、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを2%G3-Clay-ASAPと命名する。このゲルの含水率は97.8%であった。
【実施例14】
【0075】
自己集積化によるハイドロゲル(3%G3-Clay-ASAP)の製造
0.09重量%のASAPと3重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液にG3を0.23%になるように加え、撹拌したところ、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルを3%G3-Clay-ASAPと命名する。このゲルの含水率は96.7%であった。
【実施例15】
【0076】
自己集積化によるハイドロゲル(4%G3-Clay-ASAP)の製造
実施例13で製造したハイドロゲル2%G3-Clay-ASAPを、クレイナノシートの濃度が4%となるように80℃で脱水してハイドロゲルを製造した。このハイドロゲルを4%G3-Clay-ASAPと命名する。このゲルの含水率は95.6%であった。
【実施例16】
【0077】
自己集積化によるハイドロゲル(5%G3-Clay-ASAP)の製造
実施例13で製造したハイドロゲル2%G3-Clay-ASAPを、クレイナノシートの濃度が5%となるように80℃で脱水してハイドロゲルを製造した。このハイドロゲルを5%G3-Clay-ASAPと命名する。このゲルの含水率は94.5%であった。
【実施例17】
【0078】
自己集積化によるハイドロゲル(Clay-G1-ASAP)の製造
0.06重量%のASAPと2重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液にG1を0.15%になるように加え、撹拌したところ、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルのグアニジン基の濃度は0.5mMであった。このハイドロゲルをClay-G1-ASAPと命名する。このゲルの含水率は97.8%であった。
【実施例18】
【0079】
自己集積化によるハイドロゲル(Clay-G2-ASAP)の製造
0.06重量%のASAPと2重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。両末端をデンドロン化したポリエチレングリコールのデンドロン部の世代効果を見るために、該粘凋液にハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように0.078%のG2を加え、撹拌したところ、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルをClay-G2-ASAPと命名する。このゲルの含水率は97.9%であった。
【実施例19】
【0080】
自己集積化によるハイドロゲル(Clay-G3-ASAP)の製造
0.06重量%のASAPと2重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。両末端をデンドロン化したポリエチレングリコールのデンドロン部の世代効果を見るために、該粘凋液にハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように0.043%のG3を加え、撹拌したところ、5分以内にハイドロゲルとなった。このハイドロゲルをClay-G3-ASAPと命名する。このゲルの含水率は97.9%であった。
【実施例20】
【0081】
実施例13のハイドロゲル2%G3-Clay-ASAPを5マイクロリットル秤量し、水分の蒸発を防ぐために湿度を97~99%に保った恒温恒湿糟中で多孔性のカーボングリッド(Lacey-substrate-Ted Pella Ltd.)上に展開して薄膜を製造した。余分な液を濾紙で2~3秒間処理して除去した後、この薄膜を直ちに液体窒素で冷却した液化エタンに浸漬して固化させ、クライオトランスファーデバイスを用いて Gatan 626 cryoholder に移し、透過型電子顕微鏡(JEOL JEM-2010, 120kV)でSC 1000 CCD カメラ (Gatan, Inc.)を用いて撮影し、図2に示すTEM像を得た。図2から、クレイのナノシートが相互に両末端がデンドロン化されたポリマーにより相互に結合されて互いにもつれ合いながら均一に分散している様子がわかる。
【実施例21】
【0082】
粘弾性の測定-デンドリマー効果
実施例9、実施例10及び実施例11で製造したハイドロゲルClay-G1、Clay-G2及びClay-G3の動的粘弾性を25mmの平行円盤を備えたARES-RFS レオメーター(TA インスツルメント社製)を用いて歪み一定(γ=1%)の条件で測定し、図3に示す周波数分散を得た。これらのハイドロゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)は周波数に依存しない平坦部を有しており、この領域でG’>G”であって、擬固体状態のゲルの特徴を表していた。これらのハイドロゲルの強度をあらわすG’は、ハイドロゲルの製造に用いた両末端にデンドロン部を有するポリエチレングリコールのデンドロン部のグアニジンカチオンの濃度が同一であるにも拘わらず、該デンドロン部の世代が増加するに伴って上昇しており、デンドロン効果を示している。
【実施例22】
【0083】
粘弾性の測定-デンドリマー効果
実施例17,実施例18及び実施例19で製造したアニオンポリマーを含むハイドロゲルClay-G1-ASAP、Clay-G2-ASAP、及びClay-G3-ASAPを用いた以外は実施例21と同様の測定を行い、図4に示す結果を得た。これらのハイドロゲルの強度についてもデンドリマー効果が認められるとともに、アニオンポリマーの添加による、ハイドロゲルの強度(G’)の上昇が認められた。
【実施例23】
【0084】
粘弾性の測定—クレイナノシートの効果
実施例5~実施例8で製造した、ハイドロゲル2%G3-Clay、3%G3-Clay、4%G3-Clay、及び5%G3-Clayを用いた以外は実施例21と同様に粘弾性の測定を行い、図5に示す結果を得た。これらのハイドロゲルの強度(G’)は、クレイナノシートの濃度の上昇に伴い上昇し、5%G3-Clayでは0.1MPaにまで上昇した。
【実施例24】
【0085】
粘弾性の測定-クレイナノシートの効果
実施例12~実施例16で製造したハイドロゲル1%G3-Clay-ASAP、2%G3-Clay-ASAP、3%G3-Clay-ASAP、4%G3-Clay-ASAP、及び5%G3-Clay-ASAPを用いた以外は実施例21と同様に粘弾性の測定を行い、図6に示す結果を得た。これらのハイドロゲルの強度(G’)は、クレイナノシートの濃度の上昇に伴い上昇し、5%G3-Clay-ASAPでは0.5MPaにまで上昇した。
【実施例25】
【0086】
粘弾性の測定-歪み依存性
実施例16で製造したハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPを用いて、実施例21と同じ装置で粘弾性測定を行い、歪み依存性を評価し、図7に示す結果を得た。低歪み条件下では5%G3-Clay-ASAPは0.5MPaの貯蔵弾性率(G’)を有する擬固体ゲルであるが、限界歪み(γ=9%)を超えるとG’が急激に低下し、ゲルが破壊されて擬液体状態になることがわかる。
【実施例26】
【0087】
弾性の測定-高速粘弾性回復特性-自己修復性
実施例16で製造したハイドロゲル5%G3-Clay-ASAPの動的粘弾性測定を実施例21と同じ装置を用いて行い、図8に示す結果を得た。周波数(ω)6rad/s(1Hz)、歪み(γ)0.1%の条件で貯蔵弾性率(G’)が約0.5MPaであり、さらに損失正接(tanδ=G”/G’)が約0.4~0.5である擬固体性を示す値であった(図8参照)。このゲルに同じ周波数6rad/sを保持したまま、歪みを100%適用した際の貯蔵弾性率(G’)は5KPa程度まで減少し、損失正接(tanδ)が3~4の擬液体性を示す値となった。さらに300秒間連続で100%歪負荷を与え続けた直後、再び歪みを0.1%に戻して動的粘弾性を測定したところ、貯蔵弾性率(G’)は直ちに0.5MPaに回復した。さらにこの高速復帰挙動には繰り返し特性があり、連続して低歪負荷(0.1%)と高歪負荷(100%)のサイクルを3回繰り返しても、高速弾性率復帰挙動は損なわれなかった。この結果から本発明のハイドロゲルは特異な高速回復挙動を持つことがわかる。同様な挙動を示すハイドロゲルがこれまでにも報告されているが、本発明のハイドロゲルの低歪み条件下での貯蔵弾性率(0.5MPa)はオリゴメリックエレクトロライトハイドロゲル(非特許文献9(Yoshida, M., Koumura, N., Misawa, Y., Tamaoki, N., Matsumoto, H., Kawanami, H., Kazaoui, S., Minami, N. Oligomeric electrolyte as a multifunctional gelator J. Am. Chem. Soc. 129, 11039-11041 (2007).))より1桁以上高く、またコポリペプチドハイドロゲル(非特許文献10(Nowak, A. P., Breedveld, V., Pakstis, L., Bulent, O., Pine, D. J., Pochan, D., Deming, T. J. Rapid recovering hydrogel scafflds from self-assembling diblock copolypeptide amphiphiles Nature 417, 424-428 (2002).))より2~3桁高く、
さらにピリジン等の複素環式化合物から形成される第4級アンモニウムカチオンを含むイオン性有機化合物からなるハイドロゲル(特許文献1(WO2006/082768))と比べても2桁近く高い値である。
以上により本発明のハイドロゲルが高度な自己修復性を持つことが示された。
【実施例27】
【0088】
ミオグロビンを含有するハイドロゲルの製造
実施例4で製造した3重量%のG3水溶液を純水で希釈して、ハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように、0.043%のG3水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えた。次いでミオグロビン(Mb)の濃度が5μMとなるようにミオグロビンを加えて撹拌したところ、ハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルをG3-Clay-Mbと命名する。紫外可視分光光度計でこのゲルを分析したところ、405nmにミオグロビンのソーレバンドに基づく吸収を有しており、この吸収は遊離のミオグロビンのソーレバンドと同じ波長であった。このことから、ミオグロビンはハイドロゲル中に取り込まれても構造上の変化がないことがわかる。
【実施例28】
【0089】
ミオグロビンを含有するハイドロゲルの製造
実施例2で製造した3重量%のG1水溶液を純水で希釈してハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように、0.15%のG1水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えた。次いでミオグロビン(Mb)の濃度が5μMとなるようにミオグロビンを加えて撹拌したところ、ハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルをG1-Clay-Mbと命名する。紫外可視分光光度計でこのゲルを分析したところ、405nmにミオグロビンのソーレバンドに基づく吸収を有しており、この吸収は遊離のミオグロビンのソーレバンドと同じ波長であった。このことから、ミオグロビンはハイドロゲル中に取り込まれても構造上の変化がないことがわかる。
【実施例29】
【0090】
ミオグロビンを含有するハイドロゲルの製造
実施例3で製造した3重量%のG2水溶液を純水で希釈して、ハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように、0.078%のG2水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えた。次いでミオグロビン(Mb)の濃度が5μMとなるようにミオグロビンを加えて撹拌したところ、ハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルをG2-Clay-Mbと命名する。紫外可視分光光度計でこのゲルを分析したところ、405nmにミオグロビンのソーレバンドに基づく吸収を有しており、この吸収は遊離のミオグロビンのソーレバンドと同じ波長であった。このことから、ミオグロビンはハイドロゲル中に取り込まれても構造上の変化がないことがわかる。
【実施例30】
【0091】
アルブミンを含有するハイドロゲルの製造
実施例4で製造した3重量%のG3水溶液を純水で希釈して、ハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように、0.043%のG3水溶液とし、該水溶液にクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を2重量%となるように加えた。次いでアルブミン(BSA)の濃度が3μMとなるようにアルブミンを加えて撹拌したところ、ハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルをG3-Clay-BSAと命名する。紫外可視分光光度計でこのゲルを分析したところ、280nmにアルブミンのソーレバンドに基づく吸収を有しており、この吸収は遊離のアルブミンのソーレバンドと同じ波長であった。このことから、アルブミンはハイドロゲル中に取り込まれても構造上の変化がないことがわかる。
【実施例31】
【0092】
ミオグロビンを含有するハイドロゲルの製造
0.06重量%のASAPと2重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液にハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように0.043%のG3を加えた。次いでミオグロビン(Mb)の濃度が5μMとなるようにミオグロビンを加えて撹拌したところ、ハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルをG3-Clay-ASAP-Mbと命名する。紫外可視分光光度計でこのゲルを分析したところ、405nmにミオグロビンのソーレバンドに基づく吸収を有しており、この吸収は遊離のミオグロビンのソーレバンドと同じ波長であった。このことから、ミオグロビンはハイドロゲル中に取り込まれても構造上の変化がないことがわかる。
【実施例32】
【0093】
アルブミンを含有するハイドロゲルの製造
0.06重量%のASAPと2重量%のクレイナノシート(ROCKWOOD社製LAPONITE XLG)を含有する水溶液を撹拌して透明な粘凋液を得た。該粘凋液にハイドロゲル中のグアニジン基の濃度が0.5mMとなるように0.043%のG3を加えた。次いでアルブミン(BSA)の濃度が3μMとなるようにアルブミンを加えて撹拌したところ、ハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルをG3-Clay-ASAP-BSAと命名する。紫外可視分光光度計でこのゲルを分析したところ、280nmにアルブミンのソーレバンドに基づく吸収を有しており、この吸収は遊離のアルブミンのソーレバンドと同じ波長であった。このことから、アルブミンはハイドロゲル中に取り込まれても構造上の変化がないことがわかる。
【実施例33】
【0094】
ミオグロビンを含有するハイドロゲルからのミオグロビンの脱離
実施例27で製造したハイドロゲルG3-Clay-Mbを15000rpmで遠心分離し、分離した水中のミオグロビンの濃度を405nmのソーレバンドの吸収を用いて分析しミオグロビンの脱離率を算定した(1st release)。ついで脱水したハイドロゲルを水で処理した後、再度15000rpmで遠心分離し、分離した水中のミオグロビンの濃度から2回目のミオグロビンの脱離率(2nd release)を算定した。実施例28及び実施例29で製造したハイドロゲルG1-Clay-Mb及びG2-Clay-Mbについても同様の測定を行い、図9に示す結果を得た。図9より脱離するミオグロビンの量はわずかであり、両末端にデンドロン基を有するポリマーのデンドロン基の世代が高くなるほど脱離率が少なくなることがわかる。
【実施例34】
【0095】
種々のタンパク質を含有するハイドロゲルからのタンパク質の脱離
実施例27、実施例30、実施例31及び実施例32のハイドロゲルG3-Clay-Mb、G3-Clay-BSA、G3-Clay-ASAP-Mb及びG3-Clay-ASAP-BSAをそれぞれ15000rpmで遠心分離し、分離した水中のミオグロビン又はアルブミンの濃度を405nm又は280nmのソーレバンドの吸収を用いて分析しミオグロビン又はアルブミンの脱離率を算定し、図8に示した結果を得た。ミオグロビンの脱離率及びアルブミンの脱離率はいずれも5%以下であった。
【実施例35】
【0096】
ハイドロゲルに取り込まれたミオグロビンの活性
ミオグロビンは過酸化水素(H)によるオルソフェニレンジアミン(o-phenylenediamine(OPD))の酸化反応の触媒となることが知られているので、この反応をモデル反応として、ハイドロゲルに取り込まれたミオグロビンがオルソフェニレンジアミンの酸化反応活性を維持しているかを検討した。25.0mMのHと10.0mMのOPDを含有する水溶液にミオグロビンを0.5μMの濃度になるように加えて、反応生成物である2,3-ジアミノ-5,10-ジヒドロフェナジン(2,3-diamino-5,10-dihydrophenazine)の420nmの吸収(ε420nm=16300M-1.cm-1)の増加を10秒間隔で3分間追跡し、その勾配から反応速度を求め、これを遊離のミオグロビンの活性とした。さらに、25.0mMのHと10.0mMのOPDを含有する水溶液にミオグロビンの濃度が0.5μMの濃度になるように実施例27又は実施例31のハイドロゲルG3-Clay-Mb又はG3-Clay-ASAP-Mbを加え、上記の遊離のミオグロビン場合と同様の方法で、ハイドロゲルに取り込まれたミオグロビンの活性を求め、上記の遊離のミオグロビンの活性との比で整理して、図11に示す結果を得た。G3-Clay-Mb中のミオグロビンは遊離のミオグロビンの約80%の活性を有し、G3-Clay-ASAP-Mbは約71%の活性を有していた。遊離のミオグロビンの活性からの若干の低下が認められたが、これはハイドロゲル中での反応基質及び反応生成物の拡散のしにくさが原因であると考えられる。このことを確認するために、Clay-Mb、ASAP-Mb及びG3-Mbについても同様の測定を行い、それぞれの環境下でのミオグロビンの活性を求め、図11に示した。図11から明らかなように、Clay-Mb及びASAP-Mbの系でのミオグロビンは遊離のミオグロビンのそれぞれ98%及び96%の活性を示し、クレイナノシート及びASAPはミオグロビンの活性に影響を及ぼさないことがわかるが、G3-Mbの系ではミオグロビンの活性が遊離のミオグロビンの活性の35%しかなかった。この系でのミオグロビンの活性の大幅な低下はG3のグアニジン基(500μM)がミオグロビン(5μM)に対して大過剰に存在するためにグアニジン基がミオグロビンの活性に影響を及ぼしていると考えられるが、G3-Clay-Mb及びG3-Clay-ASAP-Mbの系ではグアニジン基の大部分はクレイナノシートの表面に補足されていると考えられるので、このような影響は受けない。G3-Clay-Mbの系でのミオグロビンの活性はG3-Clay-ASAP-Mbでのミオグロビンに比べてやや高い活性を示したが、ハイドロゲルの構造がG3-Clay-Mbの場合にはG3-Clay-ASAP-Mbの場合に比べてやや緩いため拡散の影響を受けにくいためと考えられ、G3-Clay-ASAPのゲルの強度がG3-Clayの強度より高い現象と矛盾しない。
【実施例36】
【0097】
ハイドロゲルの形状保持性能
実施例16と同様にして型の中で、図12aに示したようにハート型の5%G3-Clay-ASAPハイドロゲルを製造した。このハイドロゲルをテトラヒドロフラン(THF)中に浸漬した。通常の物理的に架橋されたハイドロゲルはTHFに浸漬すると形状が破壊されるが、このハイドロゲルは図12bに示したようにハート型の形状を維持していた。更にこのゲルを乾燥させると全体的に収縮するものの、図12cに示したようにハート型の形状は維持されていた。この乾燥ゲルは水中に投入すると図12aに示すハート型のハイドロゲルに再生された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポリイオンデンドリマー、及び粘土鉱物(クレイ)からなる新規なハイドロゲル材料を用いて製造される本発明のハイドロゲルは、水分含有量が高く(少なくとも94%)、強度の高い透明なハイドロゲルであり、かつ自己修復性があり、形状維持性があり、そして、生理活性や酵素活性のあるタンパク質等を該タンパク質の性質を変えずに保持できるものであり、本発明のハイドロゲルは、従来のハイドロゲルの用途のみならず、医薬、食品、化粧品、衛生用品など広範囲の産業分野において極めて有用なものであり、産業上の利用可能性を有する。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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