TOP > 国内特許検索 > チューナブルキャパシタ > 明細書

明細書 :チューナブルキャパシタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6032701号 (P6032701)
公開番号 特開2014-036022 (P2014-036022A)
登録日 平成28年11月4日(2016.11.4)
発行日 平成28年11月30日(2016.11.30)
公開日 平成26年2月24日(2014.2.24)
発明の名称または考案の名称 チューナブルキャパシタ
国際特許分類 H01G   7/06        (2006.01)
FI H01G 7/06
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2012-174483 (P2012-174483)
出願日 平成24年8月7日(2012.8.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 The 8th Asian Meeting on Electroceramics(AMEC-8)概要集(平成24年7月2日)第41-42ページに発表
審査請求日 平成27年6月30日(2015.6.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】岩田 真
【氏名】前田 雅輝
【氏名】田中 数機
審査官 【審査官】小池 秀介
参考文献・文献 特開平09-202621(JP,A)
特開昭60-240006(JP,A)
特開平05-024915(JP,A)
特開平04-363012(JP,A)
特開昭49-030900(JP,A)
特開昭61-101460(JP,A)
W.P.Chen, J.Q.Qi, Y.Wang, X.P.Jiang, and H.L.W.Chan,Water-induced degradation in 0.91Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-0.09PbTiO3 single crystals,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,米国,American Institute of Physics,2004年 5月15日,VOLUME 95, NUMBER 10,Page 5920-5921
調査した分野 C04B35/42-35/443
35/46-35/462
35/468-35/48
35/49-35/493
35/50
35/51
H01G 5/00-7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
強誘電体の電界誘起相転移および臨界点近傍での誘電チューナビリティーを利用したチューナブルキャパシタにおいて、電界が0~10kV/cmのとき、前記誘電チューナビリティーTがT≧80%であるチューナブルキャパシタ。
(誘電チューナビリティーT=(ε(0)-ε(E))/ε(0)×100(%)で表される。ε(0),ε(E)はそれぞれ、電場ゼロと電場(E)での誘電率である。)
【請求項2】
前記誘電チューナビリティーTがT<0である請求項1記載のチューナブルキャパシタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、容量の調整ができるキャパシタに関する。特にDCバイアス電圧によってキャパシタの電気容量を変化させることができる素子(誘電体チューナビリティー素子)に関するものである
【背景技術】
【0002】
キャパシタ(コンデンサ)は共振回路やフィルタ回路に使われることは広く知られているが、容量可変であるキャパシタを用いると、共振回路やフィルタ回路の特性周波数の電気的コントロールが可能になる。このような容量可変のキャパシタとして、対向電極の面積を機械的に変えるタイプが一般的に知られている。一方、対向電極の距離を可変するものとして、印加電圧により電極間距離が変化して容量が変わる技術が開示されている(特開2008-10717公報参照)。
【0003】
前記対向電極の面積あるいは電極間距離を変えること以外に、電極に挟まれる誘電体の誘電率を変えることにより容量を変える方法も知られている。例えば、強誘電体に交流電界以外に外部DCバイアス電界(電界)を与えると一般に誘電率は小さくなる。(この現象は、分極の電場に対する非線形性や分域壁構造の変化などによると考えられているが、まだそのメカニズムは良くわかっていない。)。その中で誘電率の電界依存性が大きい材料を利用して容量可変のキャパシタを作製することが原理的には可能である。しかし、DCバイアス電場下におけるACプローブ電場に対する誘電率は、分域構造によって周波数依存性と履歴現象を示し、電界変化に対する誘電率変化が不安定であるという問題がある。
【0004】
さらに、強誘電体にはリラクサと呼ばれる散漫な相転移を起こして誘電率が変化する物質があり、比較的大きなチューナビリティーが得られることが知られている(非特許文献1~3参照)。例えば、非特許文献1では、図5に示すように、強誘電体であるBa(ZrTi1-y)Oに関する誘電率の電場依存性が記載されている。電場が0~±5kVにおいて、電界1kV/cmあたり、誘電率が500程度変化するという比較的大きな誘電率の電場依存性がある。しかし、このリラクサタイプの誘電率変化は、緩和現象ゆえに特性の安定性あるいは経時変化の問題がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008‐10717公報
【0006】

【非特許文献1】“Diffuse phase transition and dielectric tenability of Ba(ZryTi1-y)O3 relaxor ferroelectrics cermics”, X. G. Tang, K.-H. Chew, and H.L.W.Chan: Acta Materialia 50(2004) 5177-5183.
【非特許文献2】“Dielectric tenability of barium strontium titanate/silicone-rubber composite”, J. W. Liou and B. S. Chiou: J. phys.: Condens. Matter 10 (1998) 2773-3786.
【非特許文献3】“Voltage-controlled RF filters employing thin-film barium-strontium-titanate tunable capacitor”, A. Tombak et al.: IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques 51 (2003) 462-467.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電界に対する誘電率変化が大きく、かつ安定な材料を用いて得られるチューナブルキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、強誘電体材料にDC バイアス電界を印加して、その物質の安定相の変化、具体的には温度・電界相図の研究を行ってきた。その研究の中で、電界を印加することによって、電界誘起相転移を起こす場合や臨界点が存在する場合には、その相転移温度の近傍で誘電率がDC電界によって著しく変化することを見いだした。これは、強誘電性の相転移温度の近傍で、誘電率が温度に依存して著しく大きくなることに類似した現象である。この現象を利用することにより、チューナビリティーの大きいチューナブルキャパシタが提供される。
【0009】
[1] 強誘電体の電界誘起相転移および臨界点近傍での誘電チューナビリティーを利用したチューナブルキャパシタにおいて、電界が0~10kV/cmのとき、前記誘電チューナビリティーTがT≧80%であるチューナブルキャパシタ。
(誘電チューナビリティーT=(ε(0)-ε(E))/ε(0)×100(%)で表される。ε(0),ε(E)はそれぞれ、電場ゼロと電場(E)での誘電率である。)
【0011】
]前記誘電チューナビリティーTがT<0である前記[1]記載のチューナブルキャパシタ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明実施例1の誘電率の電場依存性を示す。
【図2】本発明実施例2の誘電率の電場依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
本発明の電界誘起相転移および臨界点とは、以下のことを言う。多くの強誘電体では、高温から低温への温度を低下させると1次転移によって常誘電相から強誘電相に相転移する。さらに、この強誘電体の常誘電相にDCバイアス電界を印加すると電界誘起の相転移が起こり、その一次転移が二次転移に近づき、二次転移に変化すると同時に相転移が消滅する。この二次転移に移行する点を臨界点(臨界温度、または臨界電界)と言う。このような温度変化において一次転移により強誘電相が現れる材料は、常誘電相で所定の電界を印加するとある温度で、一次転移から二次転移に変化する。その結果、誘電率が大きくなり、臨界電界で誘電率がピークとなり、さらに電界を印加すると誘電率が著しく小さくなる。この臨界点近傍における誘電率の電界依存性を利用してチューナブルキャパシタを作製することができる。この現象を利用する場合、電界変化に対して、周波数依存性がなく、また履歴のない安定した誘電率変化が期待できる。

【0015】
PZTは、酸化物強誘電体混晶のPb(Zr,Ti)Oモルフォトロピック(MPB)という相境界近傍組成で、著しく大きな誘電圧電応答を示すことが知られた代表的な圧電材料である。PZTに限らず、MPBを示す強誘電体混晶は大きい誘電圧電応答を示すことが知られ、本発明ではPb(Zn1/3Nb2/3)O‐PbTiOを対象に誘電チューナビリティーを検証した。しかし、この材料系に限らず、例えば、ZnをMgで置換してもよい。

【0016】
本発明にあっては、 電界が0~10kV/cmにおいて、 前記誘電チューナビリティーTがT≧80%であることが好ましい。なお、誘電チューナビリティーTはT=(ε(0)-ε(E))/ε(0)×100(%)で表され、ε(0),ε(E)はそれぞれ、電界ゼロと電界(E)での誘電率である。さらに、前記誘電チューナビリティーTがT<0であることがより好ましい。電界が小さい領域でT<0であり、誘電率の電界依存性も大きく、好ましい。そして、Pb(Zn1/3Nb2/3)O‐PbTiO系の材料あるいは、この系においてZnをMgにて置換した材料系が好ましい。

【0017】
試料は、Pb(Zn1/3Nb2/3)O‐xPbTiOからなり、長さ×幅×厚さが3mm×3mm×0.2mm の正方形板状の単結晶であり、主面が(100)、および(110)のものを用いた。そして電界を主面に垂直に印加して、誘電率の電界依存性を測定した。誘電率の測定は、ACプローブ電圧を0.1Vとし、ゲインフェースアナライザーを用いて行った。ゲインフェースアナライザーによる測定結果は、事前に市販のLCRメータによる結果と一致することは確認されている。

【0018】
(実施例1)
Pb(Zn1/3Nb2/3)O‐9%PbTiO なる、主面が(001)面の単結晶板であり、主面に垂直である[001] 方向に電界を印加した。周波数10kHz、測定温度187℃で誘電率の電界強度依存性を測定した結果を図1に示す。臨界温度付近であり、誘電率の電界依存性がピークを形成し、電界増減に対する履歴が小さい。また、小さな電界では正のチューナビリティーを示す領域があり、電界10kV/cmのとき、T=87%を示す。

【0019】
(実施例2)
Pb(Zn1/3Nb2/3)O‐9%PbTiO なる、主面が(011)面の単結晶板であり、主面に垂直である[011] 方向に電界を印加した。周波数10kHz、測定温度187℃で誘電率の電界強度依存性を測定した結果を図2に示す。この方位に臨界点は存在しないので、電界増減に対する履歴がある。電界14kV/cmのとき、T=92%という大きなチューナビリティーを示した。

【0020】
実施例1および実施例2は180~190℃での測定結果であるが、同族の複合ペロブスカイト型酸化物強誘電体 ( 例えば、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3) を用いることにより、室温付近に臨界点が存在する物質を容易に見つけることができ、これにより、より実用的なチューナブルキャパシタを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のチューナブルキャパシタに利用することができる。





図面
【図1】
0
【図2】
1