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明細書 :フラボノイド化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5757478号 (P5757478)
公開番号 特開2012-219024 (P2012-219024A)
登録日 平成27年6月12日(2015.6.12)
発行日 平成27年7月29日(2015.7.29)
公開日 平成24年11月12日(2012.11.12)
発明の名称または考案の名称 フラボノイド化合物
国際特許分類 C07D 311/32        (2006.01)
A61K  31/353       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07D 311/32 CSP
A61K 31/353
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2011-083382 (P2011-083382)
出願日 平成23年4月5日(2011.4.5)
審査請求日 平成26年3月27日(2014.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】501174550
【氏名又は名称】国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
発明者または考案者 【氏名】小野 裕嗣
【氏名】中原 和彦
【氏名】吉橋 忠
【氏名】野田澤 茜
【氏名】ゲシニー トラクンティワコン
【氏名】プルンチャイ タンカナクン
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
【識別番号】100109807、【弁理士】、【氏名又は名称】篠田 哲也
審査官 【審査官】早川 裕之
参考文献・文献 Journal of Asian Natural Products Research,2010年,12,505-515
J. Agric. Food Chem.,2003年,51,6456-6460
調査した分野 C07D 311/32
A61K 31/353
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
化学式(III)で示されるフラボノイド化合物。
【化1】
JP0005757478B2_000009t.gif

【請求項2】
化学式(I)で示されるフラボノイド化合物(ただし、R及びR=CH、R及びR=H、R=OHであるか又は、R、R及びR=H、R=OH、Rが化学式(II)である)を有効成分とする抗変異原剤。
【化2】
JP0005757478B2_000010t.gif
【化3】
JP0005757478B2_000011t.gif

【請求項3】
インドセンダンの有機溶剤抽出物をカラムクロマトグラフィーにより分画することで、化学式(I)で示されるフラボノイド化合物(ただし、R及びR=CH、R及びR=H、R=OHであるか又は、R、R及びR=H、R=OH、Rが化学式(II)である)を製造することを特徴とする、フラボノイド化合物の製造方法。

【化4】
JP0005757478B2_000012t.gif
【化5】
JP0005757478B2_000013t.gif



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のフラボノイド化合物及びその製造方法と、その化合物を有効成分とする抗変異原剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドは広く植物界に分布し、古くから知られている一群の化合物である。フラボノイドは、抗酸化活性、抗がん作用、抗菌活性等の働きを持つことが知られている(非特許文献1)。
【0003】
また、インドセンダンの花芽や葉は、東南アジアなどの地域で広く食用に用いられており、インドセンダンが、抗菌防虫作用、鎮痛解熱効果等の薬理作用を示すことが知られている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Crit Rev Food Sci Nutr. 2008、 48(10):929
【非特許文献2】Curr Med Chem Anticancer Agents. 2005、 5(2):149
【非特許文献3】J Agric Food Chem. 2003、 22;51(22):6456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生物の遺伝子に変異を生じさせ、細胞や組織の異常、がんなどの疾病をもたらす因子は、変異原と呼ばれている。
食品や生活環境中に存在する変異原物質として、各種のフリーラジカル、ニトロソ化合物、芳香族炭化水素、複素環アミン類等が知られている。
【0006】
本発明者らは、インドセンダン可食部に変異原を抑制する作用(以下、抗変異原活性と称する。)があることを見いだし(非特許文献3)、インドセンダンから複数のフラボノイド成分を単離取得し、その化学構造をつきとめ、更に単離した化合物が抗変異原活性を有することを確認して、発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、化学式(I)で示されるフラボノイド化合物である(ただし、R及びR=CH、R及びR=H、R=OHであるか、又は、R、R及びR=H、R=OH、Rが化学式(II)である)。
【0008】
【化1】
JP0005757478B2_000002t.gif

【0009】
【化2】
JP0005757478B2_000003t.gif

【0010】
また、本発明は、インドセンダンの有機溶剤抽出物をカラムクロマトグラフィーにより分画することを特徴とする、上記化学式(I)で示されるフラボノイド化合物(ただし、RはH又はCH、RはH又はOH、RはH又は化学式(II)、RはH又はCH、RはOH又はH、を意味する。)の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物は、すぐれた抗変異原活性を有し、飲食品、医薬、化粧品等に添加して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1に示す化合物の電子イオン化質量スペクトルのチャートを示す図である。
【図2】実施形態2に示す化合物の電子イオン化質量スペクトルのチャートを示す図である。
【図3】実施形態1及び2に示す化合物の円二色性スペクトルの結果を表す図である。
【図4】実施形態1及び2に示す化合物の紫外線吸収スペクトルの結果を表す図である。
【図5】実施形態1に示す化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図6】実施形態1に示す化合物のカーボン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図7】実施形態2に示す化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【図8】実施形態2に示す化合物のカーボン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフラボノイド化合物は、前記化学式(I)で示されるフラボノイド化合物であり、以下の実施形態において、R及びR=CH、R及びR=H、R=OHである化合物(実施形態1)と、R、R及びR=H、R=OH、Rが前記化学式(II)である化合物(実施形態2)を示す。
以下、各実施形態について具体的に説明する。

【0014】
[実施形態1]
本実施形態の化合物は、化学式(III)で示されるフラボノイド化合物であり、フラバノンに分類される基本骨格を有する。類似化合物が数多く知られているが、同じ置換基を有する化合物は知られておらず、新規の構造を有する(以下、化合物1と称する。)。

【0015】
【化3】
JP0005757478B2_000004t.gif

【0016】
化合物1は、インドセンダンのメタノール抽出物をさらにジクロロメタンで抽出し、得られたジクロロメタン抽出物をカラムクロマトグラフィーにより分画することで得ることができる。

【0017】
[実施形態2]
本実施形態の化合物は、化学式(IV)で示されるフラボノイド化合物であり、フラバノールに分類される基本骨格を有する。類似化合物が数多く知られているが、同じ置換基を有する化合物は知られておらず、新規の構造を有する(以下、化合物2と称する。)。

【0018】
【化4】
JP0005757478B2_000005t.gif

【0019】
化合物2は、インドセンダンのメタノール抽出物をさらにジクロロメタンで抽出し、得られたジクロロメタン抽出物をカラムクロマトグラフィーにより分画することで得ることができる。

【0020】
本発明のフラボノイド化合物である化合物1および化合物2は、変異原物質に対する抗変異原作用を有し、食品や化粧品および医薬品の素材などとして広く産業上利用されるものである。
また、本発明のフラボノイド化合物である化合物1および化合物2の化学構造も明らかにされたので、これを化学修飾、又は各種の改変を加えることにより、新規な配糖体、新規なアグリコン等、従来未知の化合物を更に得ることも期待される。

【0021】
なお、化合物1および化合物2は、上述した有機溶媒に限定されることなく、インドセンダンを材料として有機溶媒(アルコール等)による抽出、カラムクロマトグラフィー等、各種のクロマトグラフィーのほか、植物成分の分離、抽出に利用される公知の方法を単独であるいは適宜組み合わせて、容易に得ることができる。

【0022】
以下に、化合物1および化合物2の製造に関する実施例および抗変異原作用を測定した実施例を示す。
【実施例1】
【0023】
凍結乾燥させたインドセンダン可食部(花芽および葉)0.5kgを粉末状に破砕し、室温で5Lのメタノールに24時間浸漬することにより抽出し、抽出液をロータリーエバポレータにより粘稠なシロップ状になるまで濃縮した。
【実施例1】
【0024】
さらに、ジクロロメタン0.5L(リットル)を加え、成分を抽出した。ジクロロメタン溶液をロータリーエバポレータにより、メタノール50mL(ミリリットル)に溶解させた。
【実施例1】
【0025】
メタノール溶液を逆相カラムクロマトグラフィー(Wakogel 40C18)により分画し、得られた画分をTSKgel ODS80Tsカラムを接続した高速液体クロマトグラフィーにて以下の条件で分画することで、純粋な化合物1(4mg)および化合物2(2.7mg)を得た。
【実施例1】
【0026】
カラム:東ソー TSK gel Super-ODS(4.6×50)
溶離液:アセトニトリル/0.5%ギ酸水
グラジエント:0-20分 30-70% 10分
流速:2ml/min
収集波長:290nm
リテンションタイム
化合物1:4.72分
化合物2:5.47分
【実施例1】
【0027】
得られた化合物1及び化合物2について質量分析、円二色性スペクトル分析、紫外吸収スペクトル分析、ならびに核磁気共鳴分析を行い、化学構造を決定した。
【実施例1】
【0028】
質量分析は、島津製作所製QP-2010質量分析計(直接導入プローブ使用、70keV)を用いて行った。エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量スペクトルは、Bruker Daltonics社製 ApexII 70e質量分析計を用いて測定した。図1に、化合物1の電子イオン化質量スペクトル、図2に、化合物2の電子イオン化質量スペクトルの結果を示す。
【実施例1】
【0029】
円二色性スペクトル分析は、日本分光製J-820旋光分散計を用いて行った。結果を図3に示す。実線が化合物2のチャート、点線が化合物1のチャートである。
【実施例1】
【0030】
紫外線吸収スペクトル分析は、島津製作所製UV-1600分光光度計を用いて行った。結果を図4に示す。実線が化合物2のチャート、点線が化合物1のチャートである。
【実施例1】
【0031】
核磁気共鳴は、Bruker Biospin社製 Avance800またはAvance500核磁気共鳴分光計を用いて行った。図5は、化合物1のプロトン核磁気共鳴スペクトル、図6は、化合物1のカーボン核磁気共鳴スペクトルの結果を示す。図7は、化合物2のプロトン核磁気共鳴スペクトル、図8は、化合物2のカーボン核磁気共鳴スペクトルの結果を示す。
【実施例1】
【0032】
化合物1の理化学的性質を以下の表1にまとめて示す。
【実施例1】
【0033】
【表1】
JP0005757478B2_000006t.gif
【実施例1】
【0034】
化合物2の理化学的性質を以下の表2にまとめて示す。
【実施例1】
【0035】
【表2】
JP0005757478B2_000007t.gif
【実施例2】
【0036】
化合物1及び化合物2の抗変異原効果を測定した。
約4×10個の細胞を含むサルモネラ・ティフィムリウムTA98株の培養液に50ngのTrp-P-1(トリプトファン熱分解物である変異原物質)及び3.0 nmolのチトクロムP450を含むラット肝より調製したS9画分を加え、化合物1または化合物2のメタノール溶液とともに、20分間加温した後、最少グルコース培地で2日間培養し、出現した復帰変異コロニー数を計数した。
被検試料無添加の系をコントロール(0%抑制)とし、Trp-P-1を添加しなかった系をバックグラウンド(100%抑制)として、突然変異抑制率を計算した。結果を表3に示す。
【実施例2】
【0037】
【表3】
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【実施例2】
【0038】
以上の試験結果より明らかなように、本発明の化合物である化合物1および化合物2は、複素多環式芳香族に属する変異原物質に対する抗変異原作用を有することがわかる。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
7