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明細書 :ウイロイドPSTVd及びTCDVdの同時検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5278919号 (P5278919)
登録日 平成25年5月31日(2013.5.31)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
発明の名称または考案の名称 ウイロイドPSTVd及びTCDVdの同時検出方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 24
出願番号 特願2010-546754 (P2010-546754)
出願日 平成22年5月26日(2010.5.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本植物病理学会報第76巻第1号(平成22年2月25日)日本植物病理学会発行第37頁に発表。
国際出願番号 PCT/JP2010/058894
国際公開番号 WO2010/140518
国際公開日 平成22年12月9日(2010.12.9)
優先権出願番号 2009133144
優先日 平成21年6月2日(2009.6.2)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年12月9日(2010.12.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】松下 陽介
【氏名】津田 新哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100170221、【弁理士】、【氏名又は名称】小瀬村 暁子
審査官 【審査官】長谷川 茜
参考文献・文献 特開2000-184893(JP,A)
J. Gen. Plant Pathol.,2008年,Vol.74, No.2,p.182-184
Eur. J. Plant Pathol.,2004年,Vol.110, No.8,p.823-831
調査した分野 C12Q 1/68
C12N 15/09
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被験植物試料由来のRNAを鋳型として、下記(a)又は(b)のプライマーセットを用いた核酸増幅を行い、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅及びリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅の有無を判定することにより、被験植物中のウイロイドPSTVd及びTCDVdを区別して検出することを含む、ウイロイドの検出方法
(a) リバースプライマーである配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;PSTVd検出用フォワードプライマーである、配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つのプライマー;並びにTCDVd検出用フォワードプライマーである配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む、プライマーセット、
(b) リバースプライマーである配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;PSTVd検出用フォワードプライマーである配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;及びTCDVd検出用フォワードプライマーである配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む、プライマーセット
【請求項2】
前記プライマーセットを1つの反応液中で用いる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
被験植物がナス科植物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
核酸増幅が逆転写工程とマルチプレックスPCR工程とを含むRT-PCRである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
逆転写工程では前記リバースプライマーが核酸増幅に使用され、かつマルチプレックスPCR工程では前記リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー、及びTCDVd検出用フォワードプライマーが核酸増幅に使用される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーのうち少なくとも1つが標識プライマーである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
下記(a)又は(b)のウイロイドPSTVd及びTCDVd検出用プライマーセット
(a) リバースプライマーである配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;PSTVd検出用フォワードプライマーである、配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つのプライマー;並びにTCDVd検出用フォワードプライマーである配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む、プライマーセット、
(b) リバースプライマーである配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;PSTVd検出用フォワードプライマーである配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;及びTCDVd検出用フォワードプライマーである配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む、プライマーセット
【請求項8】
前記リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーのうち少なくとも1つが標識プライマーである、請求項に記載のプライマーセット。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のプライマーセットを含む、ウイロイド検出用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイロイドの検出方法及びウイロイド検出用プライマーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
トマト黄化萎縮ウイロイド(Tomato chlorotic dwarf viroid; TCDVd)及びポテトスピンドルチューバーウイロイド(Potato spindle tuber viroid; PSTVd)は、ナス科植物(例えば、ジャガイモ、トマト、ペチュニア等)を中心として様々な宿主植物に感染し、ジャガイモでの痩せ芋症状やトマトでの黄化・葉巻症状等の病徴を引き起こす重要植物病害である。TCDVdは最近まで日本国内での発生が確認されていなかったが、2007年に広島県でトマトでの感染が確認された。一方、PSTVdは日本国内で未発生のウイロイドであり日本では植物防疫上侵入警戒を要する病原体として認識されている。
【0003】
ウイロイドは、ウイルスに似た性質を有する低分子の核酸病原体であり、植物に寄生して矮小化や奇形の症状を引き起こすことが知られている。ウイロイドは、分子量が3万~81万程度の一本鎖の環状RNAからなり、構造タンパク質を欠いている。ウイロイドはウイルスの10分の1~100分の1程度の大きさしかなく電子顕微鏡で視認することは容易ではないことや、構造タンパク質を欠くため抗原性を有さないことから、微生物やウイルスの一般的検出方法での検出が困難である。そこで植物がウイロイドに感染しているか否かの診断は、その病徴で判定する生物検定により行うことが多いが、この方法には病徴が現れるまで長い時間を要する場合があること、また環境条件や品種により病徴に差が生じる場合があることなどの問題がある。近年では、分子生物学的検出技術に基づく遺伝子診断法がウイロイド検出に用いられるようになってきている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ウイロイドPSTVd及びTCDVdはいずれもトマト等のナス科植物に感染するため、それらを区別して検出する技術が必要とされている。しかし、PSTVdとTCDVdは同じポスピウイロイド属に属する近縁種であり、PSTVdとTCDVdの全ゲノム配列は相互に85%以上の相同性(配列同一性)を有するため、従来の方法の多くはその両者を識別することができない。一方、ウイロイドPSTVd及びTCDVdが属するポスピウイロイド属を検出するためのRT-PCRアッセイやウイロイドPSTVdとTCDVdを別々に検出するためのRT-PCRアッセイは知られているが(非特許文献1)、これらの方法には同一反応液中でPSTVdとTCDVdを区別して陽性検出することができないという問題がある。1つの反応混合液中で複数の標的核酸を増幅する手法としてマルチプレックスPCR法が知られているが、相同性の高い近縁種の核酸に対してはプライマーの非特異的結合が生じやすいことなどから、マルチプレックスPCRを近縁種間の識別に適用することは非常に困難を伴うのが一般的である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-184893号公報
【0006】

【非特許文献1】Rudra P. Singh, et al., Journal of General Virology (1999), 80, 2823-2828
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ウイロイドPSTVdとTCDVdを区別しながら同時に検出する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、同一反応液中でPSTVdとTCDVdの双方を相互に容易に区別可能な核酸増幅断片として増幅できるプライマーセットを作製し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0010】
[1] 被験植物試料由来のRNAを鋳型として、(i) 配列番号1の塩基位置18番目から114番目の塩基配列に対する相補配列中の16~30塩基長の配列からなるリバースプライマーと、(ii) 配列番号1の塩基位置127番目から147番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーと、(iii) 配列番号1の塩基位置210番目から224番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーとを含むプライマーセットを用いた核酸増幅を行い、前記リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅及び前記リバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅の有無を判定することにより、被験植物中のウイロイドPSTVd及びTCDVdを区別して検出することを含む、ウイロイドの検出方法。
【0011】
この方法で使用するプライマーセットの好ましい一実施形態では、前記リバースプライマーが、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーであり、1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーが、配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つのプライマーを含み、そして1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーが、配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0012】
この方法で使用するプライマーセットの好ましい別の実施形態では、前記リバースプライマーが、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーであり、1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーが、配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含み、そして1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーが、配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0013】
本発明に係るウイロイドの検出方法では、前記プライマーセットを一つの反応液中で用いることが好ましい。
【0014】
本発明に係るこの検出方法では、被験植物がナス科植物であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る方法では、好ましくは、核酸増幅が逆転写工程とマルチプレックスPCR工程とを含むRT-PCRである。その場合、好適には、逆転写工程では前記リバースプライマーが核酸増幅に使用され、かつマルチプレックスPCR工程ではリバースプライマー、1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマー、及び1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーが、核酸増幅に使用される。
【0016】
本発明に係る方法で使用するプライマーセットでは、前記リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーのうち少なくとも1つが標識プライマーであることも好ましい。
【0017】
[2] 配列番号1の塩基位置18番目から114番目の塩基配列に対する相補配列中の16~30塩基長の配列からなるリバースプライマーと、配列番号1の塩基位置127番目から147番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーと、配列番号1の塩基位置210番目から224番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーとを含む、ウイロイドPSTVd及びTCDVd検出用プライマーセット。
【0018】
この本発明に係るプライマーセットの好ましい一実施形態では、前記リバースプライマーが、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーであり、1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーが、配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つのプライマーを含み、そして1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーが、配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0019】
この本発明に係るプライマーセットの好ましい別の実施形態では、前記リバースプライマーが、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーであり、1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーが、配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含み、そして1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーが、配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0020】
本発明に係るプライマーセットにおいては、前記リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーのうち少なくとも1つが標識プライマーであることが好ましい。
【0021】
[3] 上記[2]に記載のプライマーセットを含む、ウイロイド検出用キット。
【0022】
本発明はさらに、以下を包含する。
【0023】
[4] 被験植物試料由来のRNAを鋳型として、配列番号3の塩基配列からなる第1のオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号4の塩基配列からなる第2のオリゴヌクレオチドプライマーと、配列番号5の塩基配列からなる第3のオリゴヌクレオチドプライマーとを含むプライマーセットを用いた核酸増幅を行い、第1のオリゴヌクレオチドプライマーと第2のオリゴヌクレオチドプライマーによる核酸増幅及び第1のオリゴヌクレオチドプライマーと第3のオリゴヌクレオチドプライマーによる核酸増幅の有無を判定することにより、被験植物中のウイロイドPSTVd及びTCDVdを区別して検出することを含む、ウイロイドの検出方法。
【0024】
本方法では、前記プライマーセットを1つの反応中で用いることが好ましい。本方法は被験植物がナス科植物である場合に特に適している。本方法における核酸増幅としては、逆転写工程とマルチプレックスPCR工程とを含むRT-PCRが好ましい。本方法において用いる前記の第1、第2及び第3のオリゴヌクレオチドプライマーのうち少なくとも1つが標識プライマーであることも好ましい。
【0025】
[5] 配列番号3の塩基配列からなる第1のオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号4の塩基配列からなる第2のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列番号5の塩基配列からなる第3のオリゴヌクレオチドプライマーを含む、ウイロイドPSTVd及びTCDVd検出用プライマーセット。
【0026】
このプライマーセットにおいて、前記の第1、第2及び第3のオリゴヌクレオチドプライマーのうち少なくとも1つが標識プライマーであることも好ましい。
【0027】
[6] 上記[5]のプライマーセットを含む、ウイロイド検出用キット。
【0028】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特願2009-133144号の明細書及び図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の方法では、ウイロイドPSTVd及びTCDVdを相互に区別して同時に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、プライマーTCDVd-F、PSTVd-F及びPS+TCV-Rの、TCDVdとPSTVdのゲノム配列上の設計位置を示す。
【図2】図2は、プライマーTCDVd-F、PSTVd-F及びPS+TCV-Rからなるプライマーセットを用いたマルチプレックスRT-PCRの増幅産物についての電気泳動写真を示す。Mは100bpラダーマーカー(分子量マーカー)を表す。レーン1ではTCDVd+PSTVd混合RNA、レーン2ではPSTVd-RNA、レーン3ではTCDVd-RNA、レーン4ではウイロイド無接種トマトからのRNA抽出物、レーン5では水を鋳型として使用した。白抜きの三角は191bpに対応する増幅産物、網掛けの三角は281bpに対応する増幅産物を示す。
【図3】図3は、プライマーTCDVd-F及びPSTVd-Fの組み合わせ以外の候補フォワードプライマーの組み合わせと、リバースプライマーPS+TCV-Rとを用いてウイロイドTCDVd及び/又はPSTVdから増幅したRT-PCR増幅産物の電気泳動写真を示す。図3Aは、フォワードプライマーとしてPSV-F4とTCV-F10の組み合わせを使用した増幅結果を示す。図3Bは、フォワードプライマーとしてPSV-F6とmultiplex TCDVd-Fの組み合わせ(左)及びPSV-F6とTCV-F10の組み合わせ(右)を使用した増幅結果を示す。図3Cは、フォワードプライマーとしてPSV-F6とTCV-F12の組み合わせ(左)及びPSV-F6とTCV-F13の組み合わせ(右)を使用した増幅結果を示す。各パネルの左側に示した上の矢印はPSTVdに特異的な281bpのバンド、下の矢印はTCDVdに特異的な191bpのバンドの位置を示している。各実験で使用した鋳型RNAは、レーン1:TCDVd+PSTVd混合RNA、レーン2:PSTVd-RNA、レーン3:TCDVd-RNA、レーン4:ウイロイド無接種トマト(健全個体)からのRNA抽出物であった。図中、Mは図2と同じ100bpラダーマーカー(分子量マーカー)である。
【図4】図4は、MpRプライマーPS+TCV-R、MpTFプライマーTCDVd-F、並びにマルチプレックスPSTVd検出用フォワードプライマーMpPTAF、MpPTCF及びMpPCTFからなるプライマーセットを用いたマルチプレックスRT-PCRの増幅産物についての電気泳動写真を示す。Mは100bpラダーマーカー(分子量マーカー)を表す。レーン1ではTCDVd+PSTVd混合RNA、レーン2ではPSTVd-RNA、レーン3ではTCDVd-RNA、レーン4では健全なウイロイド無接種トマトからのRNA抽出物、レーン5ではRNase不含水を鋳型として使用した。白抜きの三角は191bpに対応する増幅産物、白の矢印は270bpに対応する増幅産物を示す。
【図5】図5は、MpRプライマーPS+TCV-R、MpTFプライマーTCDVd-F、並びにマルチプレックスPSTVd検出用フォワードプライマーMpPTAF、MpPTCF及びMpPCTFからなるプライマーセットを用いたマルチプレックスRT-PCRによる、4パターンの変異体PSTVd RNA(PSTVd-UA、PSTVd-UC、PSTVd-CA、PSTVd-CU)の検出実験の結果を示す写真である。M:100bpラダーマーカー(分子量マーカー)、レーン1:PSTVd-UA、レーン2:PSTVd-UC、レーン3:PSTVd-CA、レーン4:PSTVd-CU、レーン5:RNase不含水。白の矢印は270bpに対応する増幅産物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0032】
本発明は、後述する特定のプライマーの組み合わせを含むプライマーセットを用いて、被験RNAを鋳型とする核酸増幅を行い、所定の増幅産物の増幅の有無を判定することにより、ウイロイドPSTVd及びTCDVdを区別して検出することを可能にする方法に関する。ウイロイドPSTVd及びTCDVdの全ゲノム配列の情報は、GenBank配列データベースにおいて、それぞれアクセッション番号EU862231及びAB329668に基づいて入手することができる。ウイロイドPSTVdのアクセッション番号EU862231で開示された全ゲノム配列(DNA配列で表されている)を配列番号1に、ウイロイドTCDVdのアクセッション番号AB329668で開示された全ゲノム配列(DNA配列で表されている)を配列番号2に示す。

【0033】
本発明の方法では、任意の被験RNAを鋳型として用いることができるが、RNA病原体であるポテトスピンドルチューバーウイロイド(Potato spindle tuber viroid; PSTVd)及び/若しくはトマト黄化萎縮ウイロイド(Tomato chlorotic dwarf viroid; TCDVd)を含むか又は含む可能性のあるRNAを、鋳型として用いることが好ましい。本発明の方法では、ウイロイドPSTVd又はTCDVdが存在又は感染しているかどうかを試験すべき植物(被験植物)の試料(被験植物試料)に由来するRNAを鋳型として供試することができる。

【0034】
本発明の方法に用いる被験植物は、限定するものではないが、ウイロイドPSTVd及びTCDVdに対して被感染性を有する植物が好ましい。そのような被験植物としては、ナス科植物(例えば、ナス属、ペチュニア属、トウガラシ属、タバコ属)、クマツヅラ科植物(例えば、クマツヅラ属)、キク科植物(例えば、キク属、シュンギク属)等が挙げられる。具体例としては、ジャガイモ、トマト、ペチュニア、ピーマン、タバコ、バーベナ、シュンギク等が挙げられる。ウイロイドPSTVd又はTCDVdの感染の可能性がある植物は、本発明の方法の適用対象として特に好適である。

【0035】
被験植物試料は、それら被験植物の植物体全体であってもよく、そこから採取した植物体の一部(例えば、葉、茎、果実、がく、花弁、根、塊茎又は種子等)であってもよく、その細胞又は細胞培養物(培養細胞、カルス等)であってもよい。

【0036】
被験植物試料由来のRNAは、限定するものではないが、例えば、被験植物試料から抽出したRNA(例えば、全RNA)又はその精製物である。被験植物試料からのRNA抽出は、植物分子生物学の分野で慣用されているRNA抽出技術に従って抽出することができる。例えば、シングルステップRNA精製法、ガラス吸着法、酸性フェノール抽出法等の公知の任意のRNA抽出法を使用することができる。RNAの抽出は、例えばTRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen)、RNAiso(TaKaRa)、RNeasyTM(QIAGEN)、ToTALLY RNATM(Ambion)等の市販のRNA抽出試薬や市販のRNA抽出キット(例えば、TRIzol(登録商標) Plus RNA 精製キット(Invitrogen)、MaxwellTM16 Total RNA Purification Kit(Promega)等)を用いて行うこともできる。抽出したRNAは、RT-PCRに供する前に、必要に応じてHPLC精製等の周知技術により精製してもよい。

【0037】
本発明の好ましい実施形態では、所定のプライマーセットを用いて、被験植物試料由来のRNAを鋳型として核酸増幅を行う。核酸増幅は、RNAを鋳型として使用できる任意の核酸増幅法(例えば、RT-PCR、NASBA法、Ribo-SPIATM増幅法等)に従って行うことができるが、とりわけ逆転写PCR(RT-PCR)を実施することが好ましい。RT-PCRは、通常は、鋳型RNAから逆転写酵素及び第一鎖cDNA合成プライマーを用いてcDNAを合成する逆転写工程と、逆転写工程で合成されたcDNA(第一鎖cDNA)を増幅するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)工程とを含む。RT-PCRの詳細な手順については、例えばSambrook, J. AND RUSSEL, D. W. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press等の分子生物学分野のテキストを参照することができる。本発明の方法では、核酸増幅として、逆転写工程とマルチプレックスPCR工程とを含むRT-PCRを行う場合に特に適している。本発明において「マルチプレックスPCR」とは、フォワードプライマーを2種類以上含むプライマーセットを同一反応液中で用いるPCRをいう。本発明において「プライマーセット」とは、それぞれ1又は2種以上のフォワードプライマー及びリバースプライマーを組み合わせたものをいう。ここで本発明に係るプライマーセットは、リバースプライマーを1種のみ含む場合であっても、そのリバースプライマーが2種以上のフォワードプライマーとの組み合わせで(プライマー対として)それぞれ別個の増幅産物を生成するときは、マルチプレックスPCR用プライマーセットとして使用することができる。

【0038】
本発明の方法における核酸増幅は、被験植物試料由来のRNAから所定のプライマーセットにより目的の増幅産物が直接増幅されてもよいし、該RNAから逆転写されたDNA(cDNA)から所定のプライマーセットにより目的の増幅産物が増幅されてもよい。

【0039】
本発明の方法で用いるプライマーセットは、具体的には、以下の(i)~(iii)のプライマーを含むマルチプレックスPCR用プライマーセットである:
(i) 配列番号1の塩基位置18番目から114番目の塩基配列に対する相補配列中の16~30塩基長の配列からなるリバースプライマー、
(ii) 配列番号1の塩基位置127番目から147番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマー、及び
(iii) 配列番号1の塩基位置210番目から224番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマー。

【0040】
ここで「配列番号1の塩基配列上に設計したプライマー」とは、配列番号1の塩基配列の一部を含み、かつ配列番号1の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるように設計した配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを意味する。「ストリンジェントな条件」は、例えば、1×SSC、0.1% SDS中、60℃で洗浄する条件である。配列番号1の塩基配列上に設計したプライマーは、配列番号1の塩基配列由来の連続した16~30塩基の配列からなるものであってもよいし、その配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるものであってもよい。

【0041】
このプライマーセットを使用する場合、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーとによる特異的な増幅産物が検出されれば、PSTVdの存在が示されたことになる。さらに、リバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーとによる特異的な増幅産物が検出されれば、TCDVdの存在が示されたことになる。

【0042】
なお本発明において、リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーをそれぞれ1種類ずつ使用する場合、それぞれ「第1のプライマー」、「第2のプライマー」及び「第3のプライマー」と称することがある。

【0043】
本発明の方法で用いるプライマーセットの好ましい一実施形態では、上記(i)のリバースプライマーは、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーであることが好ましい。本発明に係るプライマーセットは、限定するものではないが、好ましくは、上記(i)のリバースプライマーを1種類含む。

【0044】
本発明に係るプライマーセットにおいては、1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーは、配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは全部のプライマーを含むことが好ましい。

【0045】
さらに本発明に係るプライマーセットでは、1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーは、配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むことが好ましい。

【0046】
さらに好ましい実施形態では、(i)のリバースプライマーとして配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、(ii)の1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーとして配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、そして(iii)の1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーとして配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを使用するプライマーセットをウイロイド検出に利用できる。このプライマーセットを使用することにより、配列番号1の塩基位置140番目~141番目に対応するゲノム配列として「UA」、「UC」、「CA」、「CU」の4パターンのいずれかを有する様々な系統のPSTVdを広く検出することができる。

【0047】
好ましい別の実施形態では、本発明の方法で用いるプライマーセットは、(i)のリバースプライマーとしての配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー(第1のプライマー:5'-TCAGGTGTGAACCACAGGAA-3')と、(ii)の1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーとしての配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー(第2のプライマー:5'-TGGCAAAAGGCGCGGTG-3')と、(iii)の1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーとしての配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー(第3のプライマー:5'-CTTCCTTTGCGCGCCACT-3')とを含むプライマーセットである。

【0048】
本発明の「オリゴヌクレオチドプライマー」は、便宜上、配列番号1、3~5及び15~17で示されるDNA配列を引用して規定されているが、DNAプライマーだけでなくRNAプライマーも包含するものとする。そのオリゴヌクレオチドプライマーがRNAである場合には、引用されたDNA配列中の「T(チミン)」は「U(ウラシル)」に読み替えるものとする。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーはまた、DNAとRNAのキメラも包含する。本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、天然塩基のみを含んでもよいが、修飾塩基を含んでもよい。修飾塩基としては、デオキシイノシン、デオキシウラシル、S化塩基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。修飾塩基を含む本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、その修飾塩基に対応する天然塩基で表された塩基配列で規定されるオリゴヌクレオチドプライマーの範囲に包含されるものとする。オリゴヌクレオチドプライマーは、当業者であればホスホロアミダイト法等の常法に従って合成することができ、例えば市販のオリゴヌクレオチド自動合成装置を用いて化学合成することもできる。

【0049】
本発明では、上記プライマーセットに含まれるリバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーのうちの少なくとも1つが、当該オリゴヌクレオチドに標識物質を付加して得られる標識プライマーであることも好ましい。リバースプライマー(第1のプライマー)、PSTVd検出用フォワードプライマー(第2のプライマー)及びTCDVd検出用フォワードプライマー(第3のプライマー)をそれぞれ1種類ずつ含むプライマーセットを使用する場合、例えば配列番号3の塩基配列からなる第1のオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号4の塩基配列からなる第2のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列番号5の塩基配列からなる第3のオリゴヌクレオチドプライマーからなるプライマーセットを用いる場合には、プライマーセットに含まれる第1、第2及び第3のオリゴヌクレオチドプライマーのうちの少なくとも1つが、当該オリゴヌクレオチドに標識物質を付加して得られる標識プライマーであることも好ましい。標識物質は、通常はオリゴヌクレオチドの5'末端又は3'末端に付加される。標識物質としては、分子生物学分野又は生化学分野等で一般的に使用される様々な標識物質を使用することができ、例えば、蛍光分子、色素分子、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、リン酸基、アミノ基、ペプチド核酸(PNA)のペプチド部分、及びタグ配列等が挙げられる。標識プライマーを使用することにより、得られた増幅産物の検出や精製等をより容易にすることができる。

【0050】
本発明の方法において、例えばRT-PCRにより核酸増幅を行う場合には、逆転写工程は逆転写酵素及び第一鎖cDNA合成プライマー等を用いて常法に従って行うことができる。ウイロイドは環状RNAであるため、逆転写にはウイロイドPSTVd及びTCDVdに特異的な相補配列を有するリバースプライマーを第一鎖cDNA合成プライマーとして用いることが好ましい。そのような第一鎖cDNA合成プライマーとしては、ウイロイドPSTVd及びTCDVdの全ゲノム配列を示す配列番号1及び2の塩基位置18番目~114番目の塩基配列に対する相補配列中の例えば16~30塩基の配列、より好ましくは18~25塩基の配列からなるリバースプライマーが好ましい。そのようなリバースプライマーは、本発明に係るプライマーセットにおいてPSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーと組み合わせて核酸増幅にも使用できる。利便性や感度等の点で特に好ましい第一鎖cDNA合成プライマーは、上記のプライマーセットに含まれ得る配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーである。本発明において「相補配列」とは、ある塩基配列の全長に相補的な塩基配列のみからなる配列をいう。逆転写反応は、限定するものではないが、例えば、鋳型RNA、第一鎖cDNA合成プライマー、逆転写酵素、及びdNTPs等を含む逆転写反応液を、42℃で30分、99℃で5分処理した後、4℃で維持することによって行うことができる。

【0051】
RT-PCRを実施する場合、逆転写工程後のPCR工程において上記のプライマーセットを用いることが好ましい。その場合、リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーを含む上記のプライマーセット(又は、第1~第3のプライマーを含む上記のプライマーセット)、逆転写工程で得られた鋳型cDNA、DNAポリメラーゼ、及びdNTPs等を含有するPCR反応液を調製し、その反応液を核酸変性温度、アニーリング温度及び伸長温度で複数サイクル処理することによりPCR反応を実施することができる。好適な反応条件の詳細例は、後述の実施例に記載しているが、例えば、反応液を98℃で3分の後、98℃で45秒、62℃で10秒、74℃45秒を1サイクルとして35サイクル行い、次いで74℃で5分、その後好ましくは4℃で維持するサイクリング条件である。なお、逆転写工程において第一鎖cDNA合成プライマーとして配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー等のプライマーセット中のリバースプライマーを用いた場合、逆転写反応完了後の反応液(逆転写産物)を精製せずに用いてPCR反応液を調製すれば、そのPCR反応液中にはリバースプライマーが通常残存するため、PCR反応液を調製する際に第1のプライマーを改めて添加しなくてもよい。このようにして行うRT-PCRでは、逆転写工程ではリバースプライマーが核酸増幅に使用され、続くマルチプレックスPCR工程では逆転写工程と同じリバースプライマー、そして1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマー、及び1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーが核酸増幅に使用される。

【0052】
本発明では、上記プライマーセットを用いた核酸増幅を行った後、ウイロイドPSTVdに特異的な核酸増幅が起こったか否か(プライマーセット中のリバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅の有無)と、ウイロイドTCDVdに特異的な核酸増幅が起こったか否か(プライマーセット中のリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅の有無)を判定することにより、ウイロイドPSTVd及びTCDVdを検出することができる。

【0053】
これらの核酸増幅の有無は、限定するものではないが、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによって特異的に増幅された核酸断片、及びリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによって特異的に増幅された核酸断片が生成されたか否かを調べることによって判定することができる。例えばリバースプライマーと一種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーのいずれかとを用いて得られる増幅産物が反応液中に陽性検出されれば、それらプライマーによる核酸増幅が「有」と判定され、その結果は被験植物中にウイロイドPSTVdが検出されたことを意味する。一方、リバースプライマーと一種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーのいずれかとを用いて得られる増幅産物が反応液中に陽性検出されれば、それらプライマーによる核酸増幅が「有」と判定され、その結果は被験植物中にウイロイドTCDVdが検出されたことを意味する。逆に、それらの増幅産物が反応液中に検出されなければ、それらプライマーによる核酸増幅は「無」と判定され、その結果は被験植物中に各ウイロイドが検出されなかったことを意味する。

【0054】
リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによって得られる増幅断片、及びリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによって得られる増幅断片は、任意の核酸検出法を用いて検出することができる。そのような核酸検出法としては、限定するものではないが、例えば、ゲル電気泳動解析、キャピラリー電気泳動解析、自動シークエンサー等を用いた塩基配列決定解析、MALDI-TOF/MS解析等が挙げられる。

【0055】
リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマー又はTCDVd検出用フォワードプライマーによって得られる増幅断片のサイズは、当業者であれば、配列番号1(PSTVdゲノム)及び配列番号2(TCDVdゲノム)の塩基配列に基づいて予測することができる。ウイロイドは環状RNAであるため、配列番号1(及び2)の塩基位置1番目からリバースプライマーの5'末端を設計した塩基位置までと、配列番号1(及び2)のPSTVd検出用フォワードプライマー又はTCDVd検出用フォワードプライマーの5'末端塩基を設計した塩基位置から配列番号1(及び2)の塩基位置358番目(PSTVd)又は359番目(TCDVd)までが、連続した領域として増幅されることになる。

【0056】
例えば、リバースプライマーとしての配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー;1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーとしての配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つのプライマー、好ましくはそれら3種のプライマー;並びに1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーとしての配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなるプライマーセットを使用した場合、PSTVd RNAからは270bpの断片が増幅される。一方、TCDVd RNAからは191bpの断片が増幅される。

【0057】
しかしながら、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる増幅断片、及びリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる増幅断片は、例えば検出対象のウイロイドPSTVd又はTCDVd RNAに塩基の欠失や付加等の変異が存在する場合には増幅断片は上記の予測サイズよりも多少(限定するものではないが例えば1~5塩基)短いか又は長いこともありうる。しかしそのような変異を有する場合であっても、例えば、電気泳動解析により上記予測サイズ付近に明瞭な増幅バンドが検出されれば、目的の増幅産物が陽性検出されたものと判断できる。あるいは、又はさらに、得られた増幅断片の塩基配列決定を行い、配列番号1で示される塩基配列と比較することにより、その増幅断片がリバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる増幅断片又はリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる増幅断片であるか否かは明確かつ容易に判断することができる。

【0058】
好ましい1つの実施形態では、核酸増幅の反応終了後の反応液を電気泳動解析、例えば、1×TBEバッファー中での1%アガロースゲルでの電気泳動解析に供し、増幅断片のサイズを分子量マーカーと比較することにより、核酸増幅の有無を判定すればよい。その結果、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる増幅断片の予測サイズ(例えば上記の例では270bp)に対応する明瞭な増幅バンドが検出された場合には、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅が起こったものと判定し、ウイロイドPSTVdが検出されたと結論付けることができる。一方、リバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる増幅断片の予測サイズ(例えば上記の例では191bp)に対応する明瞭な増幅バンドが検出された場合には、リバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーによる核酸増幅が起こったものと判定し、ウイロイドTCDVdが検出されたと結論付けることができる。PSTVdに特異的なサイズの増幅バンドとTCDVdに特異的なサイズの増幅バンドの両方が検出された場合には、ウイロイドPSTVdとウイロイドTCDVdの両方が検出されたと結論付けることができる。それらの増幅バンドは、比較的短い増幅断片を十分に分離可能な電気泳動ゲル(例えば1%アガロースゲル)を用いることにより、明確に異なる増幅バンドパターンとして容易に認識することができる。

【0059】
さらに本発明の一実施形態では、リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーをそれぞれ1種類ずつ使用する場合、例えば配列番号3の塩基配列からなる第1のオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号4の塩基配列からなる第2のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列番号5の塩基配列からなる第3のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる場合、上記プライマーセットを用いた核酸増幅を行った後、ウイロイドPSTVdに特異的な核酸増幅が起こったか否か(第1のオリゴヌクレオチドプライマーと第2のオリゴヌクレオチドプライマーによる核酸増幅の有無)と、ウイロイドTCDVdに特異的な核酸増幅が起こったか否か(第1のオリゴヌクレオチドプライマーと第3のオリゴヌクレオチドプライマーによる核酸増幅の有無)を判定することにより、ウイロイドPSTVd及びTCDVdを検出する。

【0060】
これらの核酸増幅の有無は、限定するものではないが、第1のプライマー(配列番号3)と第2のプライマー(配列番号4)を用いた特異的増幅産物、及び第1のプライマー(配列番号3)と第3のプライマー(配列番号5)を用いた特異的増幅産物が得られたか否かを調べることによって判定することができる。例えば、第1のプライマーと第2のプライマーを用いた特異的増幅産物が反応液中に陽性検出されれば、それらプライマーによる核酸増幅が「有」と判定され、その結果は被験植物中のウイロイドPSTVdが検出されたことを意味する。一方、第1のプライマーと第3のプライマーを用いた特異的増幅産物が反応液中に陽性検出されれば、それらプライマーによる核酸増幅が「有」と判定され、その結果は被験植物中のウイロイドTCDVdが検出されたことを意味する。逆に、それらの特異的増幅産物が反応液中に検出されなければ、それらプライマーによる核酸増幅は「無」と判定され、その結果は被験植物中の各ウイロイドが検出されなかったことを意味する。

【0061】
第1のプライマーと第2のプライマーを用いた特異的増幅産物、及び第1のプライマーと第3のプライマーを用いた特異的増幅産物は、任意のDNA検出法を用いて検出することができる。そのようなDNA検出法としては、限定するものではないが、例えば、ゲル電気泳動解析、キャピラリー電気泳動解析、自動シークエンサー等を用いた塩基配列決定解析、MALDI-TOF/MS解析等が挙げられる。

【0062】
第1のプライマーと第2のプライマーを用いた特異的増幅産物は、典型的には、配列番号1(ウイロイドPSTVd配列)の塩基位置115番目~358番目及び1番目~37番目の領域(環状ウイロイドRNA上では実際には連続した領域である)の塩基配列からなる281bpの核酸増幅断片である。

【0063】
しかしながら、当該増幅断片の塩基配列は、例えば検出対象のウイロイドPSTVdが他の変異体である場合などには、塩基配列中に多少の変異を含みうる。従って変異として塩基の欠失や付加が存在する場合にはその増幅断片は281bpよりも多少(限定するものではないが例えば1~5塩基)短いか又は長いこともありうる。そのような変異を有する場合であっても、例えば、電気泳動解析により281bp付近に明瞭な増幅バンドが検出されれば、第1のプライマーと第2のプライマーを用いた特異的増幅産物が陽性検出されたものと判断できる。あるいは、得られた増幅断片の塩基配列決定を行い、配列番号1で示される塩基配列と比較することにより、その増幅断片が第1のプライマーと第2のプライマーを用いたウイロイドPSTVdからの特異的増幅産物であるか否かは明確かつ容易に判断することができる。

【0064】
一方、第1のプライマーと第3のプライマーを用いた特異的増幅産物は、典型的には、配列番号2(ウイロイドTCDVd配列)の塩基位置206番目~359番目及び1番目~37番目の領域(環状ウイロイドRNA上では実際には連続した領域である)の塩基配列からなる191bpの核酸増幅断片である。しかしながら、当該増幅断片の塩基配列は、例えば検出対象のウイロイドTCDVdが変異体である場合などには、塩基配列中に多少の変異を含みうる。従って変異として塩基の欠失や付加が存在する場合にはその増幅断片は191bpよりも多少(限定するものではないが例えば1~5塩基)短いか又は長いこともありうる。そのような変異を有する場合であっても、例えば、電気泳動解析により191bp付近に明瞭な増幅バンドが検出されれば、第1のプライマーと第3のプライマーを用いた特異的増幅産物が陽性検出されたものと判断できる。あるいは、得られた増幅断片の塩基配列決定を行い、配列番号2で示される塩基配列と比較することにより、その増幅断片が第1のプライマーと第3のプライマーを用いたウイロイドTCDVdからの特異的増幅産物であるか否かは明確かつ容易に判断することができる。

【0065】
好ましい1つの実施形態では、核酸増幅の反応終了後の反応液を電気泳動解析、例えば、1×TBEバッファー中での1%アガロースゲルでの電気泳動解析に供し、分子量マーカーと比較することにより、核酸増幅の有無を判定すればよい。その結果、281bpに対応する明瞭な増幅バンドが検出された場合には、第1のプライマーと第2のプライマーによる核酸増幅が起こったものと判定し、ウイロイドPSTVdが検出されたと結論付けることができる。一方、191bpに対応する明瞭な増幅バンドが検出された場合には、第1のプライマーと第3のプライマーによる核酸増幅が起こったものと判定し、ウイロイドTCDVdが検出されたと結論付けることができる。281bpに対応する明瞭な増幅バンドと191bpに対応する増幅バンドの両方が検出された場合には、ウイロイドPSTVdとウイロイドTCDVdの両方が検出されたと結論付けることができる。281bpと191bpに対応するそれらの増幅バンドは、比較的短い増幅断片を十分に分離可能な電気泳動ゲル(例えば1%アガロースゲル)を用いることにより、明確に異なる増幅バンドパターンとして容易に認識することができる。

【0066】
本発明では、以上のようにして、プライマーセットに含まれる上記のような2組以上のプライマー対による核酸増幅の有無の判定結果に基づき、被験植物中のウイロイドPSTVd及びTCDVdを区別して検出することができる。本発明の検出方法を用いれば、ウイロイドPSTVdとTCDVdを相互に識別することが可能である。

【0067】
本発明のこのようなウイロイド検出方法は、限定するものではないが、上記プライマーセットを1つの反応中で用いて核酸増幅を行う場合に特に適している。かかる核酸増幅において、リバースプライマーとPSTVd検出用フォワードプライマー、及びリバースプライマーとTCDVd検出用フォワードプライマーを別々の反応液に含有させて別個の核酸増幅反応(例えばPCR反応)を行うこともできるが、プライマーセットを構成するリバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーは1つの反応液中に含めて用いることによりマルチプレックスPCRを行うことがより好ましい。本発明では、かかる核酸増幅において、例えば配列番号3の塩基配列からなる第1のオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号4の塩基配列からなる第2のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列番号5の塩基配列からなる第3のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる場合には、第1のプライマーと第2のプライマーのプライマー対と、第1のプライマーと第3のプライマー対とを別々の反応液に含有させて別個の核酸増幅反応(例えばPCR反応)を行うこともできるが、第1、第2及び第3のプライマーを含む1つの反応液を用いることにより1つの反応中でPCR反応を行うことがより好ましい。

【0068】
一般に、3種以上のプライマーを1つの反応中で同時に使用するマルチプレックスPCRは、同時解析が可能になるため便利であるが、プライマー毎に特異的反応条件が異なるため、複数の特異的増幅産物を得ることが困難な場合が多い。特に、個々の近縁種に特異的な複数のプライマーをマルチプレックスPCRに使用する場合、交差反応の可能性が高まるため、特異的増幅産物を得ることはさらに困難となる。しかし本発明の方法では、配列相同性の高い近縁種ウイロイドPSTVdとTCDVdのそれぞれに特異的なプライマーを1つの反応中で同時使用しても、PSTVdとTCDVdの双方を特異的に増幅することができ、それぞれのウイロイドを高感度に相互に区別して検出することができる。さらに本発明の方法は、ウイロイドPSTVdとTCDVdの両方を鋳型RNAとして含むサンプルについてもそれぞれのウイロイドを高感度かつ特異的に検出することができる。

【0069】
本発明はまた、本発明の検出方法において使用される、上記プライマーセットも提供する。本発明に係るプライマーセットは、(i) 配列番号1の塩基位置18番目から114番目の塩基配列に対する相補配列中の16~30塩基長の配列からなるリバースプライマーと、(ii) 配列番号1の塩基位置127番目から147番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーと、(iii) 配列番号1の塩基位置210番目から224番目の領域内に3'末端が位置するように配列番号1の塩基配列上に設計した16~30塩基長の1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーとを含む、ウイロイドPSTVd及びTCDVd検出用プライマーセットである。

【0070】
本発明に係るプライマーセットは、例えば、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーであるリバースプライマーと;配列番号15の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号16の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー及び配列番号17の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーからなる群より選択される少なくとも1つ(好ましくは全部)のプライマーを含む1種以上のPSTVd検出用フォワードプライマーと;配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマーを含む1種以上のTCDVd検出用フォワードプライマーと、を含むプライマーセットであってよい。このプライマーセットは、各種系統のPSTVdをTCDVdと区別して検出することができる。本発明に係るプライマーセットに含まれる各プライマーの詳細は、上記の通りであり、例えば、各プライマーは標識プライマーであってもよい。リバースプライマー、PSTVd検出用フォワードプライマー、及びTCDVd検出用フォワードプライマーの少なくとも1つが標識プライマーであるプライマーセットも、本発明の好ましいプライマーセットの例である。本発明に係るこのプライマーセットは、核酸増幅、例えば逆転写工程とマルチプレックスPCR工程とを含むRT-PCRに基づいてウイロイドPSTVd及びTCDVd検出を行う場合にとりわけ好適である。

【0071】
本発明に係るプライマーセットはまた、例えば、配列番号3の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー(第1のプライマー)、配列番号4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー(第2のプライマー)、及び配列番号5の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー(第3のプライマー)を含むプライマーセットであってよい。このプライマーセットは、限定するものではないが、特にウイロイドPSTVd及びTCDVd検出用に好適である。このプライマーセットに含まれるオリゴヌクレオチドプライマーは、上記の通りであり、例えば、該オリゴヌクレオチドプライマーは標識プライマーであってもよい。少なくとも1つが標識プライマーである上記の第1のプライマー、第2のプライマー、及び第3のプライマーを含むプライマーセットも、本発明の好ましいプライマーセットの例である。本発明に係るこのプライマーセットは、核酸増幅、例えば逆転写工程とマルチプレックスPCR工程とを含むRT-PCRに基づいてウイロイドPSTVd及びTCDVd検出を行う場合にとりわけ好適である。

【0072】
さらに本発明は、本発明に係る上記のようなプライマーセットを含む、ウイロイド検出用キットも提供する。本発明に係るこのキットは、ウイロイドPSTVd及びTCDVd検出用キットであってもよいが、ウイロイドPSTVd及びTCDVdを含む各種ウイロイドを検出できるキットであってもよい。本発明のウイロイド検出用キットは、さらに他の試薬、容器、使用説明書等を含んでもよい。該キットは、例えば、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、dNTP混合液、及び核酸増幅反応バッファーなどの逆転写試薬及び核酸増幅用試薬、並びにRNA抽出用試薬等を含んでもよい。本発明のウイロイド検出用キットは、様々なウイロイド(例えばナス科植物感染性ウイロイド)に対する他の特異的オリゴヌクレオチドプライマー等のウイロイド検出用試薬を含んでもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
1.RNAの抽出
ポテトスピンドルチューバーウイロイド(Potato spindle tuber viroid; PSTVd)のみに感染したトマトの葉、及びトマト黄化萎縮ウイロイド(Tomato chlorotic dwarf viroid; TCDVd)のみに感染したトマトの葉からそれぞれ以下のような手順でRNAを抽出した。
【実施例】
【0075】
まず、上記感染葉50~100mgにTRIzol(登録商標)試薬(Invitogen)1mLを添加し、磨砕した。これにクロロフォルム200mLを添加して、ボルテックスにかけた後、12000gで15分間遠心分離した。得られた上清を採取し、それにイソプロパノール200 mLを加えて混合し、12000gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、75%エタノールを1mL加え、7500gで5分間遠心分離した。なお、以上の操作における遠心分離はいずれも2~8℃で行った。得られた沈殿を乾燥させた後、RNA Free water(Sigma)50~100mLを濃度に応じて添加した。全RNA(total RNA)を含むこの溶液を後述の逆転写反応(RT-PCR)の鋳型として用いた。
【実施例】
【0076】
2.プライマーの設計及びRT-PCR
ウイロイドPSTVdとTCDVdを区別して検出するためのマルチプレックスRT-PCRプライマー候補は、PSTVdとTCDVdの全ゲノム配列(それぞれ、配列番号1及び2)に基づき、コンピュータを利用して設計した。本発明者らは、両ウイロイドの相同性が低い領域のうち特定領域(PSTVdの全ゲノム配列を示す配列番号1の塩基位置127番目から147番目の領域及び210番目から224番目の領域)に着目し、3'末端がその領域内に位置するように、フォワードプライマーとして用いるPSTVd検出用プライマー候補及びTCDVd検出用プライマー候補を設計した。PSTVdの全ゲノム配列(配列番号1)の塩基位置115番目~131番目の塩基配列に基づいて設計したPSTVd検出用プライマー候補5'-TGGCAAAAGGCGCGGTG-3'(配列番号4)は、マルチプレックスプライマーPSTVd-Fと名付けた(図1)。またTCDVdのゲノム配列(配列番号2)の塩基位置206番目~223番目の塩基配列に基づいて設計したTCDVd検出用プライマー候補5'-CTTCCTTTGCGCGCCACT-3'(配列番号5)は、マルチプレックスプライマーTCDVd-Fと名付けた(図1)。設計したプライマーは常法により合成したDNAプライマーを用いた。
【実施例】
【0077】
さらに、PSTVdとTCDVdの全ゲノム配列(配列番号1及び2)の塩基位置18番目~37番目の領域の相補配列に基づいて設計したリバースプライマー5'-TCAGGTGTGAACCACAGGAA-3'(配列番号3)は、マルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-Rと名付けた。このリバースプライマーは、常法によりDNAプライマーとして合成したものを、RT-PCRにおける逆転写反応(RT)のための第一鎖cDNA合成用プライマーとして、さらに、逆転写反応後の反応液中の残存プライマーを続くPCR工程のためのPCRプライマーとして、用いた。
【実施例】
【0078】
逆転写反応液は、以下の組成で調製した。
逆転写反応液組成
RTバッファー(TOYOBO) 2 μl
dNTPs(10 mM)(TOYOBO) 1 μl
RNase阻害剤(1 U)(TOYOBO) 0.5 μl
逆転写酵素RverTra Ace(登録商標) (20 μM)(TOYOBO) 0.5 μl
マルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-R(20 μM) 0.5 μl
RNaseフリー水 4.5 μl
全RNA(鋳型) 1 μl
合計 10 μl

ここで全RNAとしては、3種の鋳型を用いた。すなわち、TCDVd感染葉由来全RNAのみ(TCDVd-RNA)、PSTVd感染葉由来全RNAのみ(PSTVd-RNA)、及びそれらの等量混合物(TCDVd+PSTVd混合RNA)である。
【実施例】
【0079】
逆転写反応は、上記反応液を42℃で30分、99℃で5分処理した後、4℃で保存することによって実施した。逆転写反応完了後、逆転写産物1μlをPCRチューブに分注し、以下の組成のPCR反応液を調製した。
PCR反応液組成
KOD Dashバッファー(TOYOBO) 1 μl
DNAポリメラーゼKOD Dash(TOYOBO) 0.1 μl
dNTPs(2 mM)(TOYOBO) 1 μl
マルチプレックスプライマーPSTVd-F(10 μM) 0.1 μl
マルチプレックスプライマーTCDVd-F(10 μM) 0.1 μl
水 6.7 μl
逆転写(RT)産物(鋳型cDNA、プライマーPS+TCV-R含む) 1 μl
合計 10 μl

PCR反応は、98℃で3分の変性処理後、98℃で45秒、62℃で10秒、74℃45秒を1サイクルとして35サイクル行い、74℃で5分に続いて4℃で保存することにより行った。
【実施例】
【0080】
PCR完了後、PCR産物とローディング色素を1滴ずつ混合し、1%アガロースゲルに注入して1×TBEバッファーを使用して電気泳動を行った。電気泳動後、UV光を使用して色素を発光させ、増幅バンドの有無を確認した。
【実施例】
【0081】
その結果を図2に示す。両ウイロイドRNAを用いて上記の通りマルチプレックスRT-PCRを行ったところ、TCDVd-RNAについては191bp(レーン3)、PSTVd-RNAについては281bp(レーン2)の予測通りのサイズに対応する明瞭な特異的バンドが確認された。TCDVd-RNAについての191bpのバンドは、配列番号2の塩基位置206番目~359番目及び1番目~37番目の領域(環状ウイロイドRNA上では実際には連続した領域である)を増幅した断片である(図2中、白抜きの三角)。同様に、PSTVd-RNAについての281bpのバンドは、配列番号1の塩基位置115番目~358番目及び1番目~37番目の領域(環状ウイロイドRNA上では実際には連続した領域である)を増幅した断片である(図2中、網掛けの三角)。
【実施例】
【0082】
図2に示される通り、TCDVd+PSTVd混合RNAでは、TCDVd及びPSTVdの双方のバンド(191bp及び281bp)が確認され(レーン1)、PSTVd-RNAではPSTVdに特異的なバンド(281bp)が確認され(レーン2)、TCDVd-RNAではTCDVdに特異的なバンド(191bp)が確認された(レーン3)。一方、コントロールである、健全なウイロイド無接種トマトの葉由来RNA(レーン4)及び水のみ(レーン5)では、そのいずれのバンドも確認されなかった。
【実施例】
【0083】
このように、上記のマルチプレックスプライマーTCDVd-F、マルチプレックスプライマーPSTVd-F及びマルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-Rを用いたRT-PCRにより、TCDVdとPSTVdの存在を明瞭に識別できることが示された。この方法では、TCDVdとPSTVdのいずれか一方にのみ特異的なバンドが増幅され、双方のウイロイドに共通するバンドはほぼ増幅されなかったことから、擬陽性を示しにくいことが示された。
【実施例】
【0084】
さらに、RT-PCRにおけるPCR反応のアニーリング温度(55、58、60、62℃)及び各フォワードプライマーの最終濃度(0.2、0.1、0.05μM)を変更して上記と同様の検出を行うことにより、両ウイロイドの同時検出により適したRT-PCR反応条件を検討した。その結果、検出感度の点で、PCR反応のアニーリング温度は62℃が最も適しており、各フォワードプライマーの最終濃度は0.1μMが最も適していることが示された。
【実施例】
【0085】
[実施例2]
実施例1の検出結果との比較のため、マルチプレックスプライマーPSTVd-F及びTCDVd-Fと類似の位置に設計した他の数種類のPSTVd検出用プライマー候補及びTCDVd検出用プライマー候補を用いて、実施例1と同様の手順及び条件でマルチプレックスRT-PCRを行うことにより、PSTVd及びTCDVdの検出を行った。
【実施例】
【0086】
逆転写反応には、実施例1と同じマルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-Rを使用し、PCR反応には、マルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-Rに加えて表1に示すPSTVd検出用プライマー候補及びTCDVd検出用プライマー候補を様々な組み合わせで使用した(表2)。なお表1及び表2中、multiplex PSTVd-FはマルチプレックスプライマーPSTVd-F、multiplex TCDVd-FはマルチプレックスプライマーTCDVd-Fを表す。
【表1】
JP0005278919B2_000002t.gif
【表2】
JP0005278919B2_000003t.gif
【実施例】
【0087】
表2には上記RT-PCRによって得られた増幅結果を示した。表2に示される通り、multiplex PSTVd-Fとmultiplex TCDVd-Fの組み合わせでは、1つの反応中でTCDVdとPSTVdの双方から各々に特異的な増幅バンドを増幅でき、それにより両者を区別して陽性検出できることが示された(表2のP&T)。一方、それ以外の候補プライマーの組み合わせでは、明瞭な特異的バンドは増幅されないか又はTCDVdとPSTVdのどちらか片方のみからしか特異的バンドを増幅できず、両者を陽性検出することはできなかった。特にTCDVdとPSTVdの混合RNAを鋳型とした場合には、multiplex PSTVd-Fとmultiplex TCDVd-Fの組み合わせを用いてTCDVdとPSTVdの各々に特異的な増幅バンドが明瞭に検出されたのとは対照的に、それ以外の候補フォワードプライマーの組み合わせでは、TCDVdとPSTVdのいずれか単独を鋳型として検出した場合よりもずっと不明瞭な増幅バンドしか検出されなかった。
【実施例】
【0088】
一例として、表2に示した結果の一部についての電気泳動写真を図3に示した。図3に示した候補プライマーの組み合わせによるRT-PCRでは、TCDVd RNA又はPSTVd RNAの一方又は両方の鋳型について明瞭な特異的増幅バンドを検出できず、さらに、TCDVdとPSTVdの混合RNAを鋳型とした場合にはいずれの特異的増幅バンドも明瞭に検出されなかった(図3)。この結果からは、multiplex PSTVd-Fとmultiplex TCDVd-Fの組み合わせ以外の上記候補プライマーの組み合わせは、TCDVdとPSTVdを区別して検出する方法には適さないこと、及び、特にTCDVd又はPSTVdの混在が疑われるRNA試料についてのTCDVdとPSTVdの検出には特に適さないことが示された。
【実施例】
【0089】
従って、マルチプレックスRT-PCRに基づくTCDVd及びPSTVdの検出試験には、multiplex PSTVd-Fとmultiplex TCDVd-Fが、フォワードプライマーの最適な組み合わせであることが判明した。TCDVdとPSTVdの全塩基配列は相互に85%以上の相同性があることから、両ウイロイドを区別して陽性検出できるマルチプレックスプライマーセットの作製は非常に困難であることが予測されたが、実際、類似の位置に設計したプライマー候補の多数の組み合わせのうちで、上記のmultiplex PSTVd-Fとmultiplex TCDVd-Fの組み合わせを含むプライマーセットのみが、TCDVdとPSTVdの双方を各々特異的に陽性検出することができるマルチプレックスRT-PCRに最適なプライマーセットであることが示されたことになる。
【実施例】
【0090】
また上記で用いた本願発明に係るプライマーセット(マルチプレックスプライマーPSTVd-F、マルチプレックスプライマーTCDVd-F、及びリバースプライマーPS+TCV-R)は、PSTVd及びTCDVdのそれぞれについて報告されている各種変異体の多くで一致する塩基を含むように設計されていることから、PSTVdとTCDVdの識別に広く使用することができる。具体的には、本願発明に係るプライマーセットの各プライマーは、PSTVdの配列番号1の配列及びTCDVdの配列番号2の配列に加えて、既報のTCDVd変異体の塩基配列(例えば、GenBankアクセッション番号DQ859013[Plant Dis., 91, p.324 (2007)]、AF162131[J. Gen. Virol., 80, p.2823-2828 (1999)]、EF582392[Plant Pathol., 57, p.400 (2008)]、EF582393[Plant Pathol., 57, p.400 (2008)]、AY372399[Eur. J. Plant Pathol., 110, p.823-831 (2004)])及び既報のPSTVd変異体の塩基配列(例えば、GenBankアクセッション番号Z34272[EMBO J., 13(24), p.6172-6177 (1994)]、M25199[Nucleic Acids Res., 10 (24), p.7947-7957 (1982)]、AF458986[J. Gen. Virol., 84 , p.751-756 (2003)]、AF459005[Virology, 187 (2), p.654-662 (1992)]、AY937179[J. Gen. Virol., 86 , p.1835-1839 (2005)]、M88677[EMBO J., 4, p.2181-2190 (1985)]、M88678[Nature, 273 (5659), p.203-208 (1978)]、M88681[EMBO J., 4, p.2181-2190 (1985)]、U23058[Nature, 273 (5659), p.203-208 (1978)]、U23059[Nature, 273(5659), p.203-208 (1978)]、V01465[Nature, 273(5659), p.203-208(1978)]、X97387[Virology, 226(2), p.191-197 (1996)]、M16826[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, p.3967-3971 (1987)])を考慮して設計されており、これら変異体を始めとする多くの変異体の識別に利用することができる。
【実施例】
【0091】
以上の結果から、マルチプレックスプライマーTCDVd-F、マルチプレックスプライマーPSTVd-F及びマルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-Rを用いたRT-PCRを行い、TCDVdに特異的な増幅断片(191bpのバンドに対応)とPSTVdに特異的な増幅断片(281bpのバンドに対応)の有無を確認することにより、ウイロイドPSTVdとTCDVdを明瞭に区別して検出できることが示された。
【実施例】
【0092】
[実施例3]
ウイロイドPSTVdには多数の系統が存在する。このため、さらに多くの系統のPSTVdを検出可能にすべく、フォワードプライマーとして用いるPSTVd検出用プライマーの配列を、実施例1と同様にPSTVdの全ゲノム配列を示す配列番号1の塩基位置127番目から147番目の領域内に3'末端が位置する範囲内でさらに検討し、さらなるPSTVd及びTCDVd同時検出用プライマーセットの作製を試みた。新たなPSTVd検出用プライマー候補を使用して実施例1と同様にマルチプレックスRT-PCRを行うことにより、PSTVd及びTCDVdの同時検出が可能かどうかを調べた。
【実施例】
【0093】
以下には、このようにして新たに設計されたPSTVd検出用フォワードプライマーを含む特定のプライマーセットを用いたPSTVd及びTCDVdの良好な検出結果の例を示す。
【実施例】
【0094】
まず、逆転写反応の鋳型としては、実施例1と同じ方法で抽出したPSTVd及びTCDVdのそれぞれのRNAを使用した。逆転写反応は、実施例1と同じマルチプレックスリバースプライマー(以下ではMpRとも称する)PS+TCV-R(配列番号3)を使用して実施例1と同じ手順及び条件で行った。
【実施例】
【0095】
続いてのPCR反応には、マルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-Rを、PSTVd検出用フォワードプライマー及びTCDVd検出用フォワードプライマーと組み合わせてマルチプレックスPCR用プライマーセットとして使用した(表3)。マルチプレックスTCDVd検出用フォワードプライマー(以下ではMpTFとも称する)としては、実施例1と同じマルチプレックスプライマーTCDVd-F(配列番号5)を使用した。PSTVdの様々な系統を広く検出するため、3'末端の配列が異なる3種類のマルチプレックスPSTVd検出用フォワードプライマーを新たに設計して使用した。これらのマルチプレックスPSTVd検出用フォワードプライマーの3'末端は、各種系統のPSTVd間で異なる配列番号1の塩基位置140番目~141番目の配列を検出できるように、「TA」、「TC」、及び「CT」の3パターンとした。
【表3】
JP0005278919B2_000004t.gif
【実施例】
【0096】
PCR反応液は以下の組成で調製した。
PCR反応液組成
KOD Dashバッファー(TOYOBO) 1 μl
DNAポリメラーゼKOD Dash(TOYOBO) 0.1 μl
dNTPs(2 mM)(TOYOBO) 1 μl
MpTFプライマー(TCDVd-F)(10 μM) 0.1 μl
プライマーMpPTAF(10 μM) 0.1 μl
プライマーMpPTCF(10 μM) 0.1 μl
プライマーMpPCTF(10 μM) 0.1 μl
水 6.5 μl
逆転写(RT)産物(鋳型cDNA、プライマーPS+TCV-R含む) 1 μl
合計 10 μl

PCR反応は、実施例1と同様に、98℃で3分の変性処理後、98℃で45秒、62℃で10秒、74℃45秒を1サイクルとして35サイクル行い、74℃で5分に続いて4℃で保存することにより行った。
【実施例】
【0097】
PCR完了後、PCR産物とローディング色素を1滴ずつ混合し、1%アガロースゲルに注入して1×TBEバッファーを使用して電気泳動を行った。電気泳動後、UV光を使用して色素を発光させ、増幅バンドの有無を確認した。
【実施例】
【0098】
その結果を図4に示す。両ウイロイドRNAを用いて上記の通りマルチプレックスRT-PCRを行ったところ、TCDVd-RNAについては191bp(レーン3)、PSTVd-RNAについては270bp(レーン2)の予測通りのサイズに対応する明瞭な特異的バンドが確認された。TCDVd-RNAについての191bpのバンドは、配列番号2の塩基位置206番目~359番目及び1番目~37番目の領域(環状ウイロイドRNA上では実際には連続した領域である)を増幅した断片である(図4中、白抜きの三角)。同様に、PSTVd-RNAについての270bpのバンドは、配列番号1の塩基位置126番目~358番目及び1番目~37番目の領域(環状ウイロイドRNA上では実際には連続した領域である)を増幅した断片である(図4中、白の矢印)。
【実施例】
【0099】
図4に示される通り、ここで使用した新たなプライマーセットを使用したマルチプレックスPCRでも、実施例1と同様に、TCDVd+PSTVd混合RNAサンプルについてTCDVd及びPSTVdの双方のバンド(191bp及び270bp)(レーン1)、PSTVd-RNAサンプルについてPSTVdに特異的なバンド(270bp)(レーン2)、TCDVd-RNAサンプルについてTCDVdに特異的なバンド(191bp)(レーン3)を確認できた。一方、コントロールである、健全なウイロイド無接種トマトの葉由来RNA(レーン4)及び水のみ(レーン5)では、そのいずれのバンドも確認されなかった。
【実施例】
【0100】
そこでさらに、表3に示したマルチプレックスRT-PCRプライマーセットを使用して、各種系統のPSTVdを検出できるかどうかを試験した。ウイロイドPSTVdの配列番号1の塩基位置140番目~141番目の配列には、系統により、「UA」、「UC」、「CA」、「CU」の4パターンが存在する。そこでPSTVdの系統X76844を用いて、配列番号1の塩基位置140番目~141番目に当たるゲノム配列が「UA」、「UC」、「CA」、又は「CU」である4パターンの変異体PSTVdのRNA(それぞれ、PSTVd-UA、PSTVd-UC、PSTVd-CA、PSTVd-CUと名付けた)を作製し、それらRNAを鋳型として、MpPTAF、MpTCF、MpCTFの混合プライマーを含むマルチプレックスRT-PCRプライマーセット(表3)を使用して上記と同じ手順及び条件でマルチプレックスRT-PCRに基づく検出試験を行った。その結果、図5に示すように、このマルチプレックスRT-PCRプライマーセットを使用することにより、PSTVdの4パターンの変異体RNAのいずれについても、同一サイズ(270bp)の増幅産物が確認された。すなわち、PSTVdの4パターンの変異体RNA全てが検出可能であった(レーン1~4)。一方、水のみの対照サンプル(レーン5)では、バンドは全く確認されなかった。
【実施例】
【0101】
このように、マルチプレックスリバースプライマーPS+TCV-R、マルチプレックスTCDVd検出用フォワードプライマーTCDVd-F、並びにマルチプレックスPSTVd検出用フォワードプライマーMpPTAF、MpTCF、及びMpCTFから構成されるプライマーセットを用いたマルチプレックスRT-PCRにより、TCDVdとPSTVdの存在を明瞭に識別でき、しかも多様な系統のPSTVdを検出できることが示された。この方法でも、TCDVdとPSTVdのいずれか一方にのみ特異的なバンドが増幅され、双方のウイロイドに共通する特異的バンドはほぼ増幅されなかったことから、このマルチプレックスRT-PCRプライマーセットもウイロイドTCDVd及びPSTVdの同時検出に最適であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の方法は、主にナス科植物に感染する病原体ウイロイドTCDVdとPSTVdを相互に区別して検出するために用いることができる。本発明の方法を用いれば、TCDVdとPSTVdを1つの反応系で識別することができる。本発明の方法は、ウイロイドTCDVd及びPSTVdの国内侵入に対する防御に資するだけでなく、国内検疫における迅速な診断に活用することにより、防疫体制の強化に役立てることができる。
【0103】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願はそのまま参照により本明細書にとり入れるものとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0104】
配列番号3~17はプライマーである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4