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明細書 :フラボノイド含有組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5850420号 (P5850420)
公開番号 特開2012-235740 (P2012-235740A)
登録日 平成27年12月11日(2015.12.11)
発行日 平成28年2月3日(2016.2.3)
公開日 平成24年12月6日(2012.12.6)
発明の名称または考案の名称 フラボノイド含有組成物
国際特許分類 A23L  33/10        (2016.01)
C07H  17/07        (2006.01)
FI A23L 1/30 B
C07H 17/07
A23L 1/30 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2011-107067 (P2011-107067)
出願日 平成23年5月12日(2011.5.12)
審査請求日 平成26年1月24日(2014.1.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】中野 洋
【氏名】河田 尚之
【氏名】吉田 充
【氏名】小野 裕嗣
【氏名】岩浦 里愛
【氏名】塔野岡 卓司
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】太田 雄三
参考文献・文献 Journal of Agricultural and Food Chemistry,2011年 8月19日,Vol. 59,p. 9581-9587
栃木県農業試験場 研究成果集,2009年 3月,第27号,第4,5頁
平成18年度「高度先進技術研修」資料,2006年11月 7日
調査した分野 A23L 1/30
C07H 17/07
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
オオムギ品種にプロアントシアニジンフリー遺伝子を導入してなるオオムギの子実を粉砕して、メタノールで抽出して得られた抽出物を酢酸エチル及び水で分離し、その酢酸エチル層から、MeOH/HOを移動相としてHPLCにより、ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド、ジヒドロトリシン、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド]、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド及びトリシンから選択される少なくとも1種のフラボノイドを分離して採取することを含む、フラボノイド含有組成物の製造方法であって、
プロアントシアニジンフリー遺伝子がant13、ant17又はant22であり、
オオムギ品種が、10mg/kg以上のトリシン含有率を有するオオムギである、上記方法。
【請求項2】
オオムギ品種が、15mg/kg以上のトリシン含有率を有するオオムギである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
オオムギ品種が、ニシノホシ又はその後代の品種である、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
式Iで示されるジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド:
【化1】
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(式中、RはO-β-D-グルコピラノシドである)。
【請求項5】
式Iで示されるジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド:
【化2】
JP0005850420B2_000007t.gif
(式中、RはO-β-D-グルコピラノシドである)
及びトリシンを含有する組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボノイド含有組成物、フラボノイドを蓄積させる方法及びフラボノイド含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドは、多くの植物に含まれる淡黄色~無色の成分の総称で、ポリフェノールの一種である。その生理活性として、抗酸化作用、抗変異原性、抗ガン性、血圧上昇抑制作用、抗菌・抗ウィルス作用、抗う歯作用、抗アレルギー作用等の様々な生理活性が報告されている。
【0003】
フラボノイドの一種であるトリシンは、抗ガン性(非特許文献1~3)、抗酸化作用(非特許文献4~5)、抗ヒスタミン作用(非特許文献6)及び抗ウィルス作用(非特許文献7)を有する化合物として注目されている。
【0004】
トリシン等のフラボノイドは、化学合成により製造されることもあるが、近年では、ササ及びタケの葉よりトリシンを製造する方法が開発され(特許文献1~2)、トリシンを含むクマザサエキスが販売されている。
【0005】
一方、そのような様々な生理活性を有するフラボノイドを含有する食品・食材は、近年の健康ブームを背景に注目されており、フラボノイドを高濃度で含む食品・食材が産業界より求められている。フラボノイドを含む食材のうちオオムギでは、プロアントシアニジンフリー遺伝子ant17及びant22を導入した品種・系統において、フラボノイドの一種であるホモエリオジクチオール及びクリソエリオールが蓄積されることが報告されている(非特許文献8)。しかし、トリシンがオオムギに蓄積されたとの報告はない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2006-265247号公報
【特許文献2】特開2006-265248号公報
【0007】

【非特許文献1】Chang, C.L. et al., Calamus quiquesetinervius. Phytochemistry. (2010) 71, 271-279
【非特許文献2】Hudson, E.A. et al., Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. (2000) 9, 1163-1170
【非特許文献3】Kwon, Y.S. et al., Sorghum bicolor. Arch. Pharm. Res. (2003) 26, 535-539
【非特許文献4】Cai, H. et al., Br. J. Cancer (2004) 91, 1364-1371
【非特許文献5】Oyama, T. et al., Cancer Prev. Res. (2009) 12, 1031-1038.
【非特許文献6】Kuwabara, H. et al., J. Nat. Prod. (2003) 66, 1273-1275
【非特許文献7】Sakai, A. et al., Antivir. Chem. Chemoth. (2008) 19, 125-132
【非特許文献8】Jende-Strid, B., Hereditas (1993) 119, 187-204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、トリシン等のフラボノイドを高濃度で含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、オオムギを用いて、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プロアントシアニジンフリー遺伝子ant13、ant17及びant22を導入したオオムギ品種において、トリシンを含む特定のフラボノイドが蓄積されることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]オオムギ品種にプロアントシアニジンフリー遺伝子を導入してなるオオムギの子実又は茎葉を抽出もしくは粉砕して得られ、又は得られた抽出物もしくは粉砕物をさらに処理して得られ、かつ、ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド、ジヒドロトリシン、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド]、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド及びトリシンから選択される少なくとも1種のフラボノイドを含有する組成物。
[2]プロアントシアニジンフリー遺伝子がant13、ant17又はant22である、[1]に記載の組成物。
[3]オオムギ品種が、10mg/kg以上のトリシン含有率を有するオオムギである、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]オオムギ品種が、ニシノホシ又はその後代の品種である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]飲食品用である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6][5]に記載の組成物を用いた飲食品。
[7]オオムギ品種にプロアントシアニジンフリー遺伝子を導入することにより、ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド、ジヒドロトリシン、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド]、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド及びトリシンから選択される少なくとも1種のフラボノイドを蓄積させる方法。
[8]プロアントシアニジンフリー遺伝子がant13、ant17又はant22である、[7]に記載の方法。
[9]オオムギ品種が、10mg/kg以上のトリシン含有率を有するオオムギである、[7]又は[8]に記載の方法。
[10]オオムギ品種が、ニシノホシ又はその後代の品種である、[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]オオムギ品種にプロアントシアニジンフリー遺伝子を導入してなるオオムギから、ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド、ジヒドロトリシン、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド]、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド及びトリシンから選択される少なくとも1種のフラボノイドを採取することを含む、フラボノイド含有組成物の製造方法。
[12]プロアントシアニジンフリー遺伝子がant13、ant17又はant22である、[11]に記載の方法。
[13]オオムギ品種が、10mg/kg以上のトリシン含有率を有するオオムギである、[11]又は[12]に記載の方法。
[14]オオムギ品種が、ニシノホシ又はその後代の品種である、[11]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]式Iで示されるジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド:
【化1】
JP0005850420B2_000002t.gif
(式中、RはO-β-D-グルコピラノシドである)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来のオオムギ品種では得られない量の特定のフラボノイドが蓄積されているオオムギが得られ、そのオオムギから採取される特定のフラボノイドを含有する組成物の製造方法、及びそれらのフラボノイドを含有する組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「オオムギ品種」としては、特に限定されないが、好ましくは日本のオオムギ品種である。「日本のオオムギ品種」とは、日本国で育種され普及するオオムギの品種を意味する。日本のオオムギ品種の種類としては、六条オオムギ品種、裸麦品種、二条オオムギ品種が挙げられる。

【0013】
六条オオムギ品種としては、例えば、カシマムギ、ミノリムギ、マサカドムギ、はるしらね又はその後代の品種が挙げられる。

【0014】
裸麦品種としては、例えば、イチバンボシ、マンネンボシ、トヨノカゼ、ダイシモチ、ユメサキボシ、キラリモチ、ビューファイバー又はその後代の品種が挙げられる。

【0015】
二条オオムギ品種としては、例えば、アサカゴールド、さきたま二条、ニシノゴールド、ミカモゴールデン、あまぎ二条、スカイゴールデン、ニシノチカラ、ミサトゴールデン、おうみゆたか、タカホゴールデン、ニシノホシ、ミハルゴールド、きぬか二条、ダイセンゴールド、ニューゴールデン、みょうぎ二条、きぬゆたか、とね二条、はるな二条、なす二条、ほうしゅん、白妙二条、とちのいぶき又はその後代の品種が挙げられる。

【0016】
ニシノホシは、多収で病害抵抗性をもつ、西海皮38号(のちのニシノチカ)と、精麦品質が優れる栃系145とを人工交配し、派生系統育種法により育種した二条オオムギ品種である。ニシノホシの種子は、福岡、佐賀、長崎、大分等の奨励品種採用県から入手することができる。

【0017】
本発明において、「プロアントシアニジンフリー遺伝子」とは、プロアントシアニジン合成を抑制する突然変異遺伝子を意味し、例えば、ant13、17、18、21、22、25~30である。

【0018】
本発明において、「遺伝子を導入」とは、公知の交配・交雑技術等により対象遺伝子をオオムギ品種に導入することを意味する。交配・交雑技術としては、特に限定されないが、例えば、系統育種法、集団育種法、もどし交配育種法が挙げられる。

【0019】
本発明において、「子実」とは、胚と胚乳及び種皮からなる種子を意味する。
本発明において、「茎葉」とは、植物の地上部にある茎及び葉の任意の部分を意味する。

【0020】
本発明において、「抽出」とは、化学的分離操作法の一つで、液体又は固体の原料を溶剤と接触させ、原料中に含まれている溶剤に可溶な成分を、溶剤に不溶又は難溶性の成分から選択的に分離する操作を意味する。本発明における抽出操作は、上記一般的な抽出操作に含まれ、原料が植物の固体であり、溶剤として脂溶性溶媒を用いるものである。

【0021】
本発明において、「粉砕」とは、一般に、固形物を砕くことを意味し、特に限定されないが、例えば、磨り潰すことや、対象物の原形を留めつつ、亀裂等により組織を破壊すること等が挙げられる。粉砕は、乳鉢、包丁、カッターナイフ、ハサミ等を用いて手作業で行ってもよいが、大量の植物体を短時間で処理しようとする場合には装置を使用する。そのような装置としては、例えば、ミル、ハンマー式粉砕機、ミキサー、ブレンダーが挙げられ、また野菜用の細断機を用いてもよい。

【0022】
本発明では、上記の抽出や粉砕により得られた抽出物や粉砕物を、必要に応じてさらに、圧搾、濃縮、固液分離、加熱滅菌、ろ過滅菌等の公知の技術を単独又は2つ以上組み合わせて処理することもできる。

【0023】
本発明において、圧搾とは、植物体に物理的な圧力をかけて液を搾り出し、成分を搾汁に移行させる方法である。圧力は一方向のみにかけてもよいし、二以上の方向からかけてもよく、せん断力を伴わせることもできる。圧搾の操作は市販の圧搾機を用いれば容易であるが、手搾り、足踏み搾り等の機械を用いない方法で行ってもよい。このとき、植物体に水や湯を加えて圧搾してもよい。

【0024】
濃縮とは、他の成分を減少させることなく水分量、溶媒量を減らす操作であり、例えば、減圧濃縮、加熱濃縮、ろ過膜を用いた濃縮が挙げられる。

【0025】
固液分離とは、溶媒及びそこに溶解している成分と、不溶性の固形分を分離する方法であり、分離方法としては、例えば、フィルターろ過、圧搾ろ過、遠心分離、デカンテーション等のあらゆる方法を使用できる。清澄な植物抽出液を得る場合には、珪藻土等のろ過助剤を使用したフィルターろ過を行うことが好ましい。

【0026】
加熱滅菌とは、熱を加えて殺菌することであり、その温度範囲は、滅菌が十分に行われ、かつ、有効成分が分解しない範囲で行う。

【0027】
ろ過滅菌とは、微生物が通過できないサイズの膜を、加圧又は減圧して通過させることで除菌する操作である。膜の孔径は、処理方法に応じて適宜設定する。

【0028】
本発明において、「フラボノイド」とは、2個のベンゼン環が3個の炭素原子を介してつながれるフェニルクロマン骨格(C-C-C)を基本構造に有する芳香族化合物群の総称である。フラボノイドとしては、特に限定されないが、例えば、フラボノール、フラボン、イソフラボン、フラバノン、フラバノノール、フラバン-3,4-ジオール、フラバン-3-オール(フラバノール)、アントシアニジン、オーロン、カルコン、ジヒドロカルコンが挙げられる。これらの基本骨格に加え、異なる位置で水酸化、縮合、プレニル化されている多様な構造が存在する。また、そのような基本骨格を有する化合物に糖が結合した配糖体が存在する。本発明では、ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド、ジヒドロトリシン、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド]、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド及びトリシンが好ましい。

【0029】
本発明において、「飲食品」とは、一般に、飲料品又は食料品を意味し、特に限定されないが、例えば、飯類(例えば、おにぎり、弁当のご飯)、菓子類(例えば、アイス、ポテトチップス及び他のスナック類)、ベーカリー類(例えば、パン、パイ、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー)、麺類(例えば、うどん、そば、ラーメン)、冷凍・冷蔵流通の加工食品、離乳食、ベビーフード、ペットフード、動物用飼料、飲料(例えば、果汁飲料、清涼飲料、アルコール飲料、茶、スポーツ飲料)、薬用酒等の醗酵食品、みりん、食酢、醤油、味噌、スポーツ食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品(丸剤、錠剤、ゼリー剤又はカプセル剤等の形態を有するサプリメント、グラノーラ様シリアル、グラノーラ様スネークバー、シリアルバー)が挙げられる。飯類、スナック菓子類、ベーカリー類、麺類及び栄養補助食品は、本発明の対象として好ましい食品の例である。

【0030】
本発明の好ましい実施形態として、日本のオオムギ品種、特にニシノホシに、ant13、ant17又はant22遺伝子を導入したオオムギ品種が挙げられる。

【0031】
本発明の好ましい他の実施形態では、オオムギ品種が、トリシンを10mg/kg以上、好ましくは15mg/kg以上、特に20mg/kg以上含有する。

【0032】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
[実施例1]ant13、ant17又はant22遺伝子を導入した日本のオオムギ品種(特にニシノホシ)の育種方法
プロアントシアニジンフリー遺伝子のant13、ant17又はant22遺伝子を有する大麦品種・系統を1回親とし、日本のオオムギ品種(特にニシノホシ)を反復親として交配し、その雑種第2世代(F2)の種子を採種する。このF2個体種子について塩酸バニリン法等でプロアントシアニジンの有無を判定し、プロアントシアニジンフリー個体を選抜する。さらに、プロアントシアニジンフリー個体に日本のオオムギ品種(特にニシノホシ)を複数回連続戻し交雑を行い育成することによって、ant13、ant17又はant22遺伝子を導入した日本のオオムギ品種を得た。
【実施例】
【0034】
[実施例2]フラボノイドの抽出及び単離
実施例1から得られた、ant17を導入したニシノホシの子実(500g)を粉砕して、メタノール(5L)で6日間抽出した。その抽出物(25g)を酢酸エチル及び水で2層分離した。その酢酸エチル層(25g)を、C18HPLC[TSKgel ODS-80Ts、Tosoh Co.Ltd.、4.6×250mm;溶出液:MeOH/HO(13:7);流速:0.8mL/min;UV検出:290nm及び350nm]により分離したところ、7種のフラボノイド、(2RS)-ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド(1)(3.2mg、収率:0.0006%、t:4.5分)、(2RS)-ジヒドロトリシン(2)(7.3mg、収率:0.0015%、t:7.5分)、(2RS)-ホモエリオジクチオール(3)(2.0mg、収率:0.0004%、t:8.1分)、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド](4)(4.7mg、収率:0.0009%、t:4.8分)、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド(5)(6.6mg、収率:0.0013%、t:5.3分)、トリシン(6)(5.2mg、収率:0.0010%、t:12.5分)及びクリソエリオール(7)(3.2mg、収率:0.0006%、t:12.8分)が得られた。これらのフラボノイドの構造は、HRESIMS、NMR及びCDスペクトルを用いて決定した。各フラボノイドの構造式を以下に示す。
【実施例】
【0035】
【化2】
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【実施例】
【0036】
そのうち、(2RS)-ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド(1)の物理化学的性質は以下の通りである。また、この化合物のNMRスペクトルを表1に示す。
【実施例】
【0037】
(1)外観
無色個体
(2)UV(MeOH)λmax
278nm(ε=51000)
(3)HRESIMS m/z
517.1297[(M+Na)+; calcd for C23H26O12Na, 517.1316]。
【実施例】
【0038】
【表1】
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【実施例】
【0039】
[実施例3]フラボノイドの定量
ant13、ant17又はant22を導入したニシノホシ(ニシノホシを遺伝的背景とする、プロアントシアニジンフリー遺伝子ant13、ant17又はant22の準同質遺伝子系統で、それぞれ、iso ant13、iso ant17又はiso ant22と表記する)、ニシノホシ、あまぎ二条及びHarringtonの子実(3g)を粉砕して、メタノール(30mL)で1日間抽出した。その抽出物をC18HPLC[TSKgel ODS-80Ts、Tosoh Co.Ltd.、4.6×250mm;溶出液:CHCN/MeOH/HO(1:1:3);流速:0.8mL/min;UV検出:290nm(フラボノイド1)、350nm(フラボノイド4、5)]に供し、(2RS)-ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド(1)(t:8.4分)、クリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド](4)(t:7.7分)及びクリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド(5)(t:9.6分)の含有率(収穫後のオオムギの子実において乾物1kg当たりに含まれるフラボノイド含有量(mg))を決定する。また、その抽出物をC18HPLC[TSKgel ODS-80Ts、Tosoh Co.Ltd.、4.6×250mm;溶出液:CHCN/MeOH/HO(15:4:31);流速:0.8mL/min;UV検出:290nm(フラボノイド2、3)、350nm(フラボノイド6、7)]に供し、(2RS)-ジヒドロトリシン(t:18.5分)(2)、(2RS)-ホモエリオジクチオール(3)(t:21.0分)、トリシン(6)(t:22.3分)及びクリソエリオール(7)(t:23.5分)の含有率を決定した。各品種について、各フラボノイドの含有率を表2に示す。
【実施例】
【0040】
【表2】
JP0005850420B2_000005t.gif
【実施例】
【0041】
7種のフラボノイドのうち、ジヒドロトリシン7-O-β-D-グルコピラノシド(1)はこれまでに報告のない新規化合物である。また、ジヒドロトリシン(2)及びクリソエリオール7-O-[α-L-ラムノピラノシル-(1→6)-β-D-グルコピラノシド](4)は、オオムギの成分としてこれまでに報告されていない。さらに、クリソエリオール7-O-β-D-グルコピラノシド(5)及びトリシン(6)は、オオムギの成分としての報告はあるが、プロアントシアニジンフリー遺伝子ant13、ant17又はant22を導入することにより子実に大量に蓄積することは、今回初めて明らかになった。
【実施例】
【0042】
トリシン(6)は、ニシノホシ、あまぎ二条及びHarringtonに元々含まれているが、表2より、その含有率が2倍以上に増加していることがわかる。さらに、トリシン以外の表中のフラボノイドは、ニシノホシ、あまぎ二条及びHarringtonに元々含まれていないところ、プロアントシアニジンフリー遺伝子を導入することにより、それらの含有率が増加することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、農業や食品等の分野で利用される。