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明細書 :デジタルホログラフィ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6040469号 (P6040469)
公開番号 特開2013-246424 (P2013-246424A)
登録日 平成28年11月18日(2016.11.18)
発行日 平成28年12月7日(2016.12.7)
公開日 平成25年12月9日(2013.12.9)
発明の名称または考案の名称 デジタルホログラフィ装置
国際特許分類 G03H   1/22        (2006.01)
FI G03H 1/22
請求項の数または発明の数 11
全頁数 29
出願番号 特願2012-122460 (P2012-122460)
出願日 平成24年5月29日(2012.5.29)
権利譲渡・実施許諾 特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
審査請求日 平成27年4月21日(2015.4.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
発明者または考案者 【氏名】粟辻 安浩
【氏名】田原 樹
【氏名】下里 祐輝
【氏名】夏 鵬
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】加藤 昌伸
参考文献・文献 特開2011-099781(JP,A)
国際公開第2012/002207(WO,A1)
国際公開第2011/089820(WO,A1)
国際公開第2009/066771(WO,A1)
特開2005-283683(JP,A)
特開2001-312201(JP,A)
米国特許出願公開第2013/0100241(US,A1)
米国特許出願公開第2009/0322738(US,A1)
調査した分野 G03H 1/00 - 5/00
G02B 5/18
G02B 5/32
特許請求の範囲 【請求項1】
被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する参照光減算手段と、
前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記参照光の強度分布と前記第1ホログラムと前記第2ホログラムとに基づき複素振幅を求める演算手段と、
前記複素振幅をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する再生手段とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項2】
前記並列位相シフトホログラム及び前記参照光の強度分布はメモリに記録されており、
前記参照光減算手段は、前記メモリに記録された並列位相シフトホログラムから前記メモリに記録された参照光の強度分布を減算する請求項1に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項3】
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段をさらに備え、
前記再生手段は、空間フィルタリング手段を透過した空間スペクトルを逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する請求項1に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項4】
前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは1以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成するN種類複素振幅生成手段をさらに備え、
前記フーリエ変換手段は、前記N種類複素振幅生成手段により生成された前記N種類の複素振幅をフーリエ変換し、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から空間周波数帯域幅の広い複素振幅を選択するか、又は、前記空間周波数帯域幅に従って前記N種類の複素振幅を重み付けをすることにより、空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する空間スペクトル分布生成手段をさらに備え、
前記再生手段は、前記空間スペクトル分布生成手段により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する請求項1に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項5】
被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記参照光の強度分布と前記第1ホログラムと前記第2ホログラムとに基づき複素振幅を求める演算手段と、
前記複素振幅をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段と、
前記空間フィルタリング手段を透過した複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する再生手段とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項6】
被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する参照光減算手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記参照光の強度分布と前記第1ホログラムと前記第2ホログラムとに基づき複素振幅を求める演算する請求項5に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項7】
前記並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは1以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成するN種類複素振幅生成手段をさらに備え、
前記フーリエ変換手段は、前記N種類複素振幅生成手段により生成された前記N種類の複素振幅をフーリエ変換し、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から空間周波数帯域幅の広い複素振幅を選択するか、又は、前記空間周波数帯域幅に従って前記N種類の複素振幅を重み付けをすることにより、空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する空間スペクトル分布生成手段をさらに備え、
前記再生手段は、前記空間スペクトル分布生成手段により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する請求項5に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項8】
被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成するN種類複素振幅生成手段と、
前記N種類複素振幅生成手段により生成された前記N種類の複素振幅をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から空間周波数帯域幅の広い複素振幅を選択するか、又は、前記空間周波数帯域幅に従って前記N種類の複素振幅を重み付けをすることにより、空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する空間スペクトル分布生成手段と、
前記空間スペクトル分布生成手段により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する再生手段とを備えたことを特徴とするデジタルホログラフィ装置。
【請求項9】
前記空間スペクトル分布生成手段は、前記N種類の方向のうち、前記複素振幅の中心をとおって前記方向に垂直な直線に対する距離が最小の方向に対応する複素振幅の空間スペクトル成分を抽出する請求項8に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項10】
被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する参照光減算手段をさらに備え、
前記N種類複素振幅生成手段は、前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成する請求項8に記載のデジタルホログラフィ装置。
【請求項11】
前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段をさらに備え、
前記空間スペクトル分布生成手段は、前記空間フィルタリング手段を透過したN種類の複素振幅空間周波数帯域幅の広い複素振幅を選択するか、又は、前記空間周波数帯域幅に従って前記N種類の複素振幅を重み付けをすることにより、空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する請求項8に記載のデジタルホログラフィ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の参照光の位相シフト量が異なる複数のホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、参照光の強度分布と第1ホログラムと第2ホログラムとに基づく複素振幅をフーリエ変換し、フーリエ変換された複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して被写体の3次元像を再生するデジタルホログラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、位相の単位はラジアンで表すこととする。
【0003】
(デジタルホログラフィの背景)
医療進歩を実現する有力な手段の一つである顕微鏡での細胞観察、及び、各種精密機器・加工機などの高精度化・高精密化・多様化に伴う物体の3次元形状・歪等の高度な計測や解析と、各種燃料を使用する燃焼装置の高効率化を実現するための燃焼室の観測と、地震や津波などの自然災害を考慮した各種建築物の耐負荷特性など物体の3次元変位・応力計測や解析等は、ますますその重要性を増し、様々な測定・解析法が開発されている。
【0004】
上記測定法のうち、光の干渉を利用した干渉計測技術、特にデジタルホログラフィは、非接触かつ非破壊で物体の3次元変位や応力などの情報を得ることができるため、近年、注目を集めている測定法の一つとなっている。
【0005】
(デジタルホログラフィの原理)
図12は、非特許文献1に開示された従来のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィは、3次元物体への光照射によって得られる干渉パターン(干渉縞)から、コンピュータを用いて3次元物体の像を再生する技術である。具体的には、図12に示すように、3次元物体(被写体)への光照射によって得られる物体光と、上記物体光に対して可干渉である参照光とが作る干渉パターンを、CCD(charge coupled device)等の撮像素子を用いて記録し、この記録された干渉パターンに基づいて、コンピュータで回折積分し、3次元物体の像を再生する(非特許文献1)。
【0006】
(逐次位相シフトデジタルホログラフィ)
図13は、従来の他のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置では、干渉パターンを記録する撮像素子は画素密度が低く(画素間隔が長く)、また、参照光のCCDカメラの撮像面に対して入射角が垂直から斜めになればなるほど干渉パターンの明暗の干渉パターンの間隔が狭くなるので、干渉パターンを正確に撮像するために、干渉パターンの明暗の間隔ができるだけ広くなるようにCCDカメラの撮像面に対して参照光をほぼ垂直に入射させる。すなわち、CCDカメラの撮像面には、参照光と物体光とがほぼ同じ方向から入射する。
【0007】
そのため、干渉パターンをフレネル変換して得られる再生像は、0次回折像および±1次回折像が重なったものとなり、被写体の鮮明な再生像を得る、つまり+1次回折像のみあるいは-1次項のみを得ることが困難となっている。
【0008】
そこで、0次回折像および±1次回折像を分離し、高精度な再生像を得るために、図13に示すように、参照光の位相を複数段階にシフトさせ、それぞれの位相の参照光から得られた複数の干渉パターンから所望の再生像を得る位相シフト法(「逐次位相シフトデジタルホログラフィ」と呼ぶ)という技術が提案された(非特許文献2)。
【0009】
しかし、この逐次位相シフトデジタルホログラフィでは、上記複数位相の参照光に対する干渉パターンを複数回に分けて逐次に撮像した後に計算処理しなければならない。このため、少しでも動きを伴う物体の観測を行うことは極めて困難で、ましてや動体観測を瞬時にリアルタイムで行うことはできないという問題を有していた。
【0010】
(従来法1)
図14は、従来のさらに他のデジタルホログラフィ装置の機能を示す模式図である。図14のデジタルホログラフィ装置は物体光と参照光の干渉像を撮像するのは同様であるが、上記図13に示した逐次位相シフトデジタルホログラフィに対し、図14に示すように、本発明者らにより、物体光と複数位相の参照光に対するホログラムの情報(干渉パターンI、I、I、I)を同図中に示すように例えばモザイク状に1回の撮像で取得し、リアルタイムで、しかも不要な像成分を除去した鮮明な被写体の3次元情報を得るための並列位相シフトデジタルホログラフィ(従来法1)が考案された(非特許文献3)。ここで、3次元情報は、被写体の3次元の形状、位置または分布の情報を含む。
【0011】
本発明者らは、光源から出射された光をその進行方向に垂直な平面上において互いに位相が異なる複数種類の参照光に分割する位相シフトアレイ素子を有し、上記複数種類の参照光と物体光との複数種類の干渉パターンを、CCDカメラなどの撮像面にモザイク状に1回で結像させ、記録したホログラムから同位相の参照光に対する複数種類の干渉パターンを抽出して、それぞれの干渉パターンの情報が抜けた箇所を補間処理により充填して、各位相の参照光に対する干渉パターンを完成させ、完成させた干渉パターンから位相シフト法で物体光の複素振幅分布を求めることにより、リアルタイムで、しかも不要な像成分を除去した鮮明な被写体の再生画像を得られるデジタルホログラフィ装置を提案している(特許文献1)。
【0012】
図15は、従来法1に係る像再生アルゴリズムを示す模式図である。また、本発明者らは、上記のデジタルホログラフィ装置において撮像される4種類の干渉パターンの一つは原理上、4分の1の画素に対する情報しかないので、若干、再生画像の鮮明さに欠点があることを解決するために、光源から出射された光をその進行方向に垂直な平面上において互いに位相が異なる2種類の参照光に分割する位相シフトアレイ素子を有し、上記2種類の参照光と物体光の2種類の干渉パターンのみと、計測前に取得した参照光の強度分布とにより、被写体の再生画像の画質を更に向上させたデジタルホログラフィ装置を提案している(特許文献2)。
【0013】
本明細書においては、このように参照光の位相シフト量を変えた複数のホログラム情報を1回の撮像で取得し、補間によって各ホログラムを完成することにより、リアルタイムで動体の3次元像を再生する技術を「従来法1」という。
【0014】
しかし、この従来法1では、(1)0次回折光の残存、(2)残留共役像の残存がかなり少なくなったが十分ではなく、また、(3)補間処理に伴う計測範囲(視野)の狭窄という問題があり、これらの3点により再生画像の劣化が依然として問題として残存した。これら(1)(2)(3)の問題を解決するために(4)処理時間を考慮しながら研究を進めた。
【0015】
(従来法2)
図16は、従来法2に係る像再生アルゴリズムを示す模式図である。本明細書においては、前述した(3)補間処理に伴う計測範囲(視野)の狭窄を小さくすることと、(4)処理時間をできるだけ短くするという課題の解決に対応して、複数位相のモザイク状のホログラムから、情報の欠落している画素の補間処理なしで位相シフト法にて計算することによって1種類の複素振幅分布を得る技術を「従来法2」という。
【0016】
本発明者らは、補間処理を施さなくとも、位相シフト量の異なる近傍画素を用いた位相シフト法計算処理により1枚の複素振幅分布を得ることができることに着目し、補間処理なしで近接する2画素で位相シフト法計算を行い、1種類の物体光の複素振幅分布を求めた(例えば図16において左図の破線部内の2画素で右図の破線部の画素の複素振幅を求めた)。これにより、従来法1の方法で起こる補間誤差がないため補間処理に伴う計測範囲(視野)の狭窄の問題を緩和することができるリアルタイムで被写体の再生画像を得られるデジタルホログラフィ装置を本発明者らは提案した(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】特許4294526号(平成17年10月13日公開)
【特許文献2】国際公開第2009/066771号パンフレット(2009年5月28日公開)(特願2008-31965)
【特許文献3】国際出願PCT/JP2012/053985(特願2011-040812)
【特許文献4】国際出願PCT/JP2012/053436(特願2011-040820)
【0018】

【非特許文献1】J.W.Goodman and R.W.Lawrence, Appl. Phys. Lett., 11(1967) 77.
【非特許文献2】I.Yamaguchi and T.Zhang, Opt. Lett. 22(1997)1269.
【非特許文献3】Y.Awatsuji, et al, Appl. Phys. Lett. 85 (2004) 1069.
【非特許文献4】Y.Awatsuji, et al, Applied Optics Vol.45,Issue 5,pp.968-974 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述した従来法1の構成では、(1)0次回折光の残存、(2)残留共役像の残存、(3)補間処理に伴う計測範囲(視野)の狭窄という課題が生じる。
【0020】
そして、前述した従来法2の構成でも、物体光が撮像素子面に対して垂直入射からずれていると、隣接画素で物体光が位相シフトすることにより、0次回折光および共役像の除去は非常に困難であることという問題と、近傍画素を利用する方向に沿う方向(例えば横方向の近傍画素を利用すれば横方向)で視野狭窄が起こり、大きな被写体の場合では特に面内方向の縦横両方の縁の部分に対応する干渉縞が細かくなる箇所の誤差を低減し、視野範囲を広くして計測範囲を広げる効果は小さいという問題とが生じる。
【0021】
本願発明の目的は、上記の問題点を解決して、被写体の3次元像を高精度に再生することができるデジタルホログラフィ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する参照光減算手段と、前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記参照光の強度分布と前記第1ホログラムと前記第2ホログラムとに基づき複素振幅を求める演算手段と、前記複素振幅をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する再生手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
この特徴により、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布が減算される。このため、参照光の強度むらが並列位相シフトホログラムから除去される。従って、被写体の3次元像の画質の劣化を防止することができる。
【0024】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、前記並列位相シフトホログラム及び前記参照光の強度分布はメモリに記録されており、前記参照光減算手段は、前記メモリに記録された並列位相シフトホログラムから前記メモリに記録された参照光の強度分布を減算することが好ましい。
【0025】
上記構成により、予め記録された参照光の強度分布を利用することができ、計測のたびに参照光の強度分布を計測する必要がなくなり、簡単な構成で被写体の3次元像を再生することができる。
【0026】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段をさらに備え、前記再生手段は、空間フィルタリング手段を透過した空間スペクトルを逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生することが好ましい。
【0027】
上記構成により、空間フィルタリング手段は、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる。このため、被写体の3次元像における残留共役像を除去することができる。
【0028】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは1以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成するN種類複素振幅生成手段をさらに備え、前記フーリエ変換手段は、前記N種類複素振幅生成手段により生成された前記N種類の複素振幅をフーリエ変換し、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する空間スペクトル分布生成手段をさらに備え、前記再生手段は、前記空間スペクトル分布生成手段により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生することが好ましい。
【0029】
上記構成により、N種類複素振幅生成手段は、記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは1以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成する。そして、空間スペクトル分布生成手段は、フーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する。このため、被写体の3次元像の再生精度を高めることができる。
【0030】
本発明に係る他のデジタルホログラフィ装置は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記参照光の強度分布と前記第1ホログラムと前記第2ホログラムとに基づき複素振幅を求める演算手段と、前記複素振幅をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段と、前記空間フィルタリング手段を透過した複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する再生手段とを備えたことを特徴とする。
【0031】
この特徴により、空間フィルタリング手段が、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる。このため、被写体の3次元像における残留共役像を除去することができる。
【0032】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する参照光減算手段をさらに備えることが好ましい。
【0033】
上記構成により、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算される。このため、参照光の強度むらが並列位相シフトホログラムから除去される。従って、被写体の3次元像の画質の劣化を防止することができる。
【0034】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、前記並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは1以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成するN種類複素振幅生成手段をさらに備え、前記フーリエ変換手段は、前記N種類複素振幅生成手段により生成された前記N種類の複素振幅をフーリエ変換し、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する空間スペクトル分布生成手段をさらに備え、前記再生手段は、前記空間スペクトル分布生成手段により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生することが好ましい。
【0035】
上記構成により、N種類複素振幅生成手段は、記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは1以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成する。そして、空間スペクトル分布生成手段は、フーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する。このため、被写体の3次元像の再生精度を高めることができる。
【0036】
本発明に係るさらに他のデジタルホログラフィ装置は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成するN種類複素振幅生成手段と、前記N種類複素振幅生成手段により生成された前記N種類の複素振幅をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する空間スペクトル分布生成手段と、前記空間スペクトル分布生成手段により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する再生手段とを備えたことを特徴とする。
【0037】
この特徴により、N種類複素振幅生成手段は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成し、空間スペクトル分布生成手段は、フーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する。このため、被写体の3次元像の再生精度を高めることができる。
【0038】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置では、前記空間スペクトル分布生成手段は、前記N種類の方向のうち、前記複素振幅の中心をとおって前記方向に垂直な直線に対する距離が最小の方向に対応する複素振幅の空間スペクトル成分を抽出することが好ましい。
【0039】
上記構成により、任意の空間スペクトル分布に対し誤差の小さいスペクトル成分計算結果を重み付けあるいは選択することができる。
【0040】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置では、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する参照光減算手段をさらに備え、前記N種類複素振幅生成手段は、前記参照光減算ホログラムから前記参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、前記第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成することが好ましい。
【0041】
上記構成により、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布が減算される。このため、参照光の強度むらが並列位相シフトホログラムから除去される。従って、被写体の3次元像の画質の劣化を防止することができる。
【0042】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置では、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段をさらに備え、前記空間スペクトル分布生成手段は、前記空間フィルタリング手段を透過したN種類の複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルから誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成することが好ましい。
【0043】
上記構成により、空間フィルタリング手段は、前記フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる。このため、被写体の3次元像における残留共役像を除去することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する。このため、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから前記参照光の強度分布が減算される。この結果、参照光の強度むらが並列位相シフトホログラムから除去される。従って、被写体の3次元像の画質の劣化を防止して、被写体の3次元像を高精度に再生することができる。
【0045】
また、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる空間フィルタリング手段を備えており、空間フィルタリング手段を透過した空間スペクトルを逆フーリエ変換し、回折積分して被写体の3次元像を再生する。つまり、空間フィルタリング手段が、フーリエ変換手段によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる。このため、被写体の3次元像における残留共役像を除去することができる。
【0046】
さらに、本発明に係るデジタルホログラフィ装置は、N種類複素振幅生成手段により、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成し、空間スペクトル分布生成手段は、フーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する。このため、被写体の3次元像の再生精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図2】上記デジタルホログラフィ装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】上記デジタルホログラフィ装置の参照光強度の課題を説明するための図である。
【図4】(a)は上記デジタルホログラフィ装置に係る参照光減算処理適用前の被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は参照光減算処理適用後の被写体の3次元像を示す画像であり、(c)は両者の差分を取った後の値を示す画像である。
【図5】参照光減算処理適用前後の被写体の3次元像を示す画像の差分を取った後の値を示す画像の詳細を説明するための図である。
【図6】(a)は上記デジタルホログラフィ装置に係る空間フィルタリング処理を適用した被写体の3次元像を示す画像であり、(b)はその空間周波数分布を示す画像である。
【図7】上記デジタルホログラフィ装置に係るN種類複素振幅生成処理を説明するための図である。
【図8】上記N種類複素振幅生成処理において、任意の空間スペクトル分布に対し誤差の小さいスペクトル成分計算結果を重み付けあるいは選択する方針を示す図である。
【図9】(a)は従来の逐次位相シフトデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は従来法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(c)は従来法2に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(d)は比較法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(e)は上記デジタルホログラフィ装置に係るN種類複素振幅生成処理を適用した被写体の3次元像を示す画像である。
【図10】(a)は従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した画像であり、(b)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した画像であり、(c)はは従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した画像であり、(d)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した画像である。
【図11】(a)は従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した拡大画像であり、(b)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した拡大画像であり、(c)はは従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した拡大画像であり、(d)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した拡大画像である。
【図12】従来のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図13】従来の他のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図14】従来のさらに他のデジタルホログラフィ装置の構成を示す模式図である。
【図15】従来法1に係る像再生アルゴリズムを示す模式図である。
【図16】従来法2に係る像再生アルゴリズムを示す模式図である。
【図17】比較法1に係る像再生アルゴリズムを示す模式図である。
【図18】従来法、比較法における問題を説明するための図であり、(a)は従来の逐次位相シフトデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は従来法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(c)は従来法2に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(d)は比較法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像である。
【図19】従来法、比較法における問題を説明するための図であり、(a)は従来法1による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像であり、(b)は比較法1による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像である。
【図20】上記従来法2による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像と、上記比較法1による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像との差分を示す画像である。
【図21】(a)は比較法1による被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は比較法1による被写体の3次元像を示す画像と従来法2による被写体の3次元像を示す画像との差分を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(本願発明の前提)
本発明者らは、本願発明の前提として、前述した課題を解決する構成を特許文献3、特許文献4により提案している。これらの特許文献3、特許文献4は、本願の出願時点で未公開である。

【0049】
そこで、本願発明の実施の形態を説明する前に、本願発明の前提として、特許文献3、特許文献4で提案した構成をそれぞれ比較法1、比較法2として説明する。

【0050】
(比較法1)
図17は、比較法1に係る像再生アルゴリズムを示す模式図である。比較法1は、前述した(3)補間処理に伴う計測範囲(視野)の狭窄という課題の解決に対応するものであり、複数種類の補間処理により1枚のホログラムから複数のホログラムと複数の複素振幅分布を生成し、空間周波数分布面でどの複素振幅分布を選択、抽出するかを決める。

【0051】
特許文献3に記載したデジタルホログラフィ装置は、撮像素子の画素に記録されて、参照光の位相シフト量が異なるN種類(Nは2以上の整数)のホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムを生成し、例えば、N=2の場合、並列位相シフトホログラムから抽出した、参照光の位相シフト量が同じである第1ホログラム及び位相シフト量が同じである第2ホログラムに、主補間を施して複数の主補間領域を有する主補間複素振幅を生成し、加えて、第1及び第2ホログラムに副補間を施して複数の副補間領域を有する副補間複素振幅を生成し、主補間複素振幅の主補間領域と副補間複素振幅の副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成し、空間周波数分布に基づいて被写体の3次元像を再生するものである。ここで、主補間は、縦方向に隣接する画素及び横方向に隣接する画素に基づく4方向補間であり、前記副補間は、横方向に隣接する画素に基づく2方向横補間と、縦方向に隣接する画素に基づく2方向縦補間である。そして、主補間複素振幅は1種類、副補間複素振幅は2種類生成され、この3種類の複素振幅分布から情報量の多い個所を選択して被写体の3次元像を再生するものである。

【0052】
すなわち、主補間複素振幅の主補間領域と副補間複素振幅の副補間領域とを抽出して空間周波数分布を生成するので、被写体の3次元像の位置に応じて補間の方式を変更して、大きな被写体の縁の部分などに対応する干渉縞が細かい箇所の誤差を低減し、デジタルホログラフィ装置の視野範囲を広くして計測範囲を広げることが期待できる。また、従来法2と比較し、面内方向の縦横両方に大きな被写体にも対応できるため、より広範囲計測に向くという特徴を有する。

【0053】
しかしながら、この方式では物体光が撮像素子面に対して垂直入射から角度がずれていると、隣接画素で物体光が位相シフトすることにより、共役像の除去は非常に困難であることという問題と、1つの主補間と2つの副補間のみでは、補間の方向に沿う方向において視野狭窄が起こり、干渉縞が細かい箇所の誤差を十分に低減することはできず、視野範囲を広くして計測範囲を広げる効果は十分ではないという問題と、また、補間処理の回数が増えるので計算時間がかかるという問題とがあることを見出した。

【0054】
(比較法2)
比較法2は、本発明者らが特許文献4により提案した構成であるが、前述した(1)0次回折光の残存という課題の解決に対応するもので、特に、不要な像成分である0次回折光を正確に除去して強度ムラを補正し、被写体を高精度に計測することができる。

【0055】
従来の並列位相シフトデジタルホログラフィ装置では、位相シフトアレイの区画の撮像面の画素に対する方向及び位置がずれるため組み立て誤差が生じる。この組み立て誤差は温度変化や経時変化によっても起き、デジタルホログラフィ装置による被写体の再生画像に強度むらが生じる。このため、物体光、参照光の強度が各透過軸で等しくないときには、デジタルホログラフィ装置による画像の再生処理時に、不要な0次回折光を完全に除去することができないという問題がある。

【0056】
この問題に対して、位相シフトアレイを透過して撮像素子の画素に記録されて、参照光の位相シフト量が異なる2種類のホログラム情報を含むホログラムから、位相シフト量が同じ成分をそれぞれ抽出して第1ホログラム及び第2ホログラムを生成し、第1ホログラムを複数の第1領域に分割し、第2ホログラムを複数の第1領域の分割パターンと同じ分割パターンにより複数の第2領域に分割し、第1ホログラムの第1領域における強度の第1平均値と、第2ホログラムの第1領域に対応する第2領域における強度の第2平均値とを比較し、第1平均値と第2平均値とが異なるときに、第1平均値と第2平均値とが等しくなるように少なくとも一方を補正する。この方法では第1平均値と第2平均値とを等しくすることができるので、各ホログラムの各領域において強度比を1:1にすることができ、撮像素子面全体において、不要な像成分である0次回折光を正確に除去して強度ムラを補正し、被写体を高精度に計測することができる。しかし、この方式は、多大な計算時間がかかるという問題がある。

【0057】
(従来法、比較法における問題)
図18は、従来法、比較法における問題を説明するための図であり、(a)は従来の逐次位相シフトデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は従来法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(c)は従来法2に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(d)は比較法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像である。

【0058】
図18(a)に示す逐次位相シフトデジタルホログラフィ装置による画像は、動きのある物体の3次元像を得ることはできないが、静止像を得る場合には完全に元の像を復元できるので、図18(b)~(d)に示す従来法1、従来法2、比較法1による被写体の3次元像の精度の基準とする。

【0059】
図18に示す写真の下に示すように、従来法1による画像の平均二乗誤差は7.78であり、従来法2による画像の平均二乗誤差は6.71であり、比較法1による画像の平均二乗誤差は8.66であり、逐次位相シフトデジタルホログラフィ装置による画像に比べて誤差が大きいことがわかる。図18の(b)~(b)により表される写真に四角枠frm1~frm7で囲って示しているように、従来法1、従来法2、比較法1のいずれの画像にも不要な像成分が残留し、誤差が減少していないことが視覚的にも明確である。

【0060】
図19は、従来法、比較法における問題を説明するための図であり、(a)は従来法1による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像であり、(b)は比較法1による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像である。図19に示す画像を検討すると、補間誤差または位相シフト誤差と、エイリアシングにより共役像が残留していると考えられる。

【0061】
(本実施の形態の着眼点)
図20は、上記従来法2(補間なし)による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像と、上記比較法1(複数の補間処理)による物体像の合焦面、共役像の合焦面を示す画像との差分を示す画像である。

【0062】
比較法1は、広範囲な計測が可能な従来法2と比較してノイズ(白んだ部分)が多いものの、被写体の端を同程度に再生できている。このため、補間なしの方法で近接画素の選択の方向を複数採用して情報量の多いものを選択するという、従来法2と比較法1の良い点を兼ね備えた、工夫した像再生アルゴリズムを発明することにより、誤差の少ない計測を達成できるのではないかと本発明者らは考えた。

【0063】
図21(a)は比較法1による被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は比較法1による被写体の3次元像を示す画像と従来法2による被写体の3次元像を示す画像との差分を示す画像である。像は明るいが、(1)被写体の像に不要な像が重畳し、(2)共役像が残留し、そして、(3)複数画素を利用する方向における撮影範囲が犠牲になる(共役像が重畳するため)という問題がある。そこで、これらの問題をすべて解決するアルゴリズムが必要になる。

【0064】
(実施の形態の概要)
本実施の形態は、並列位相シフトデジタルホログラフィにおいて、従来法の技術の問題点、及び比較法の技術の問題点を解決することを目的とするものである。すなわち、特に、(1)0次回折光除去能力を高め、(2)残留共役像を除去し、(3)計測範囲(視野)を拡大し、(4)処理計算時間が短いという4つの重大な課題の解決が可能な新たな像再生アルゴリズムとそれを用いた計測装置を実現するものである。

【0065】
本実施の形態の構成は下記に示す3つの対策(A)~(C)を含んでおり、この対策(A)~(C)のうち必要な対策を選択してデジタルホログラフィ装置を構成すればよい。ここで、対策(A)は課題(1)に対応し、対策(B)は課題(2)に対応し、対策(C)は課題(3)に主に対応する。下記に示す実施の形態は本発明を実行する一例に過ぎず、実際には、問題に応じて対策(A)(B)(C)の中から一つ、または二つ、または全部の対策を実行すればよい。
対策(A)
ホログラムから参照光強度分布を減算してから位相シフト法を適用し、位相シフト法誤差により残留していた0次回折光や、参照光同士の干渉成分を除去する。
対策(B)
被写体の像の大部分と共役像は空間周波数分布面で分離されているので、空間フィルタリングで残留共役像を除去する。
対策(C)
複数の方向で位相シフト法の計算結果の画像を生成し、空間周波数分布面で被写体の情報が劣化せずに多く含まれている画像を選択・抽出することにより視野拡大を実現する。

【0066】
(実施の形態)
(デジタルホログラフィ装置1Aの構成)
図1は、実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置1Aの構成を示す模式図である。デジタルホログラフィ装置1Aは、並列2段階位相シフトデジタルホログラフィを実現するためのシステムである。図1は、撮像素子6の撮像面に微小偏光子アレイ5を貼り付ける場合の光学系の一例を示している。図1に示すデジタルホログラフィ装置1Aを説明する。まず、光源32から出射されるレーザ光は垂直偏光成分のみを有するものとする。光源32から出射されたレーザ光は、ビーム分割素子BS1によって物体光と参照光とに分けられる。

【0067】
ビーム分割素子BS1を透過した物体光は、対物レンズ33及びレンズ35を透過し、ミラーM1により反射され、被写体37に照射される。被写体37からの散乱光は、偏光子39を通り、垂直偏光となる。そして、散乱光は、ビーム結合素子BS2を通り、偏光子アレイ5を通過して撮像素子6の撮像面に到達する。

【0068】
一方、ビーム分割素子BS1により反射された参照光は、ミラーM2により反射され、対物レンズ34及びレンズ36を通り、1/4波長板38を通過するときに垂直偏光と水平偏光との成分を持った円偏光になる。このとき、参照光は位相シフトのない成分と-π/2だけ位相シフトした成分とを持つ。そして、参照光は、ミラーM3により反射され、ビーム結合素子BS2により反射されて、偏光子アレイ5と一体に構成された撮像素子6の撮像面へ到達する。

【0069】
偏光子アレイ5を通過した物体光と参照光とは、撮像素子6の撮像面上で干渉する。偏光子アレイ5を通過した参照光の位相は、空間的に2種類の情報を持ち、市松模様に分布する。この参照光と物体光とが干渉することにより、2種類のホログラムの情報を含む並列位相シフトホログラムを1回で撮像することができる。

【0070】
デジタルホログラフィ装置1Aは、再生像生成器31を有している。再生像生成器31には、参照光減算器2と演算器3とフーリエ変換器4と空間フィルタリング器6と再生器5とが設けられている。参照光減算器2から空間フィルタリング器6の各器の機能を説明する。

【0071】
参照光減算器2は、被写体37の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから参照光の強度分布を減算した参照光減算ホログラムを生成する。

【0072】
演算器3は、参照光の強度分布と参照光減算ホログラムから抽出された2種類の位相にそれぞれ対応する第1ホログラム及び第2ホログラムに基づき複素振幅を求める。

【0073】
フーリエ変換器4は、参照光の強度分布と第1ホログラムと第2ホログラムとに基づく複素振幅をフーリエ変換する。

【0074】
空間フィルタリング器6は、フーリエ変換器4によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる。

【0075】
再生器5は、フーリエ変換器4によりフーリエ変換された複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して被写体37の3次元像を再生する。

【0076】
再生像生成器31は、N種類複素振幅生成器7と空間スペクトル分布生成器8とを有している。

【0077】
次に、N種類複素振幅生成器7、空間スペクトル分布生成器8の各器の動作を説明する。N種類複素振幅生成器7は、参照光減算器2により生成された参照光減算ホログラムから参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、第1ホログラム及び第2ホログラムをそれぞれN種類の方向(Nは2以上の整数)の近傍画素を用いた位相シフト法計算処理によりN種類の複素振幅を生成する。

【0078】
フーリエ変換器4は、N種類複素振幅生成器7により生成されたN種類の複素振幅をフーリエ変換する。

【0079】
空間スペクトル分布生成器8は、フーリエ変換器4によりフーリエ変換されたN種類の複素振幅から誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する。また、空間スペクトル分布生成器8は、N種類の方向のうち、複素振幅の中心をとおって前記方向に垂直な直線に対する距離が最小の方向に対応する複素振幅の空間スペクトル成分を抽出する。

【0080】
再生器5は、空間スペクトル分布生成器8により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する。

【0081】
ここで、再生像生成器31には、メモリ9が設けられている。メモリ9には、並列位相シフトホログラム及び参照光の強度分布が記録されることが好ましい。参照光減算器2は、メモリ9に記録された並列位相シフトホログラムからメモリ9に記録された参照光の強度分布を減算することが好ましい。

【0082】
(デジタルホログラフィ装置1Aの動作)
図2は、デジタルホログラフィ装置1Aの動作を示すフローチャートである。まず、参照光強度分布Ir(x、y)をメモリ9に記録しておく。そして、撮像素子6により撮像された2種類のホログラムの情報を含む並列位相シフトホログラムI(x、y)をメモリ9に記録する(ステップS1)。参照光強度分布Ir(x、y)は、並列位相シフトホログラムI(x、y)を記録した後でメモリ9に記録してもよいし、デジタルホログラフィ装置1Aの起動時、停止時など、撮像素子6で並列位相シフトホログラムを撮像する時と強度分布が大きく変わらないという条件を満たせば、任意の時に記録すればよい。そして、参照光減算器2は、並列位相シフトホログラムI(x、y)から参照光強度分布Ir(x、y)を減算して参照光減算ホログラムI´(x、y)を生成する(ステップS2)。

【0083】
次に、N種類の方向D=D、…、D(Nは1以上の整数)についてステップS3~S7を繰り返す。即ち、方向D(iは1以上N以下の整数)に沿った画素を利用して複素振幅計算処理を含む位相シフト法の計算を行う(ステップS4)。

【0084】
その後、フーリエ変換器4は、位相シフト法の計算により求めた複素振幅をフーリエ変換する(ステップS5)。そして、空間フィルタリング器6は、フーリエ変換器4によりフーリエ変換された複素振幅の所定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させて共役像を除去する(ステップS6)。その後、ステップS4~S6の処理をN種類の方向D=D、…、Dについて実施し、合計N種類のフーリエ変換後の複素振幅を得る(ステップS3~S7)。

【0085】
次に、空間スペクトル分布生成器8は、N種類のフーリエ変換後の複素振幅から、誤差が最も小さくなる空間スペクトル成分を抽出して空間スペクトル分布を生成する(ステップS8)。

【0086】
そして、再生器5は、空間スペクトル分布生成器8により生成された空間スペクトル分布を逆フーリエ変換し、回折積分して前記被写体の3次元像を再生する(ステップS9~11)。Nの値を大きくとれば、高精度な再生画像が得られるが、処理時間が長くなるので、必要な再生画像精度と処理時間を考慮してNの値を決定する。

【0087】
(参照光強度分布の減算処理)
ステップS2で前述した並列位相シフトホログラムI(x、y)から参照光強度分布Ir(x、y)を減算して参照光減算ホログラムI´(x、y)を生成する処理を具体的に説明する。

【0088】
図3は、デジタルホログラフィ装置1Aの参照光強度の課題を説明するための図である。並列位相シフトホログラムHL1に基づいて位相シフト法による計算を行う場合は、計算時に用いる画素において参照光強度が一定であるということが前提条件である。従って、参照光に強度むらがあると、被写体の3次元像の画質が劣化するという問題がある。

【0089】
そこで、並列2段階位相シフトデジタルホログラフィにおいて、位相シフト法の計算を行なう前に、あらかじめ、並列位相シフトホログラムから参照光強度分布を減算して参照光減算ホログラムを生成すると画質が向上する。

【0090】
以下、計算手順を説明する。まず、各変数を(式1)、(式2)により示す。

【0091】
【数1】
JP0006040469B2_000002t.gif
Ir(x、y):参照光強度分布
U(x、y):物体光
α:位相シフト量
ここで、並列位相シフトホログラムから参照光強度分布を差し引いたものを、I´(x、y:α)とすると、

【0092】
【数2】
JP0006040469B2_000003t.gif
と表すことができ、I´(x、y)、Ir(x、y)を用いて2段階位相シフト法の計算を行う。

【0093】
並列位相シフトホログラムに対して近傍画素法による位相シフト法の計算を行なう場合、x軸方向の隣接画素、y軸方向の隣接画素を用いて計算を行なうことが考えられる。y軸方向の隣接画素を用いる場合で説明すると、物体光U(x、y)は、

【0094】
【数3】
JP0006040469B2_000004t.gif
と、(式5)~(式9)より求めることができる。物体光U(x、y)に対し2次元フーリエ変換、空間フィルタリングを施すことにより不要な像成分を除去することができる。

【0095】
(式5)~(式9)では、(x、y)における物体光U(x、y)をI´(x、y)、I´(x、y+1)、Ir(x、y)より求めたが、I´(x、y+1)の代わりにI´(x、y-1)またはI´(x+1、y)またはI´(x-1、y)の値を用いて位相シフト法の計算をすることも可能である。

【0096】
ある画素(x、y)における物体光U(x、y)を求めるとき、(1)y軸方向の隣接画素I´(x、y+1)またはI´(x、y-1)を用いる場合、y軸方向の視野狭窄が生じ、x軸方向の視野は理論限界近くまで保持され、(2)x軸方向の隣接画素I´(x+1、y)またはI´(x-1、y)を用いる場合、x軸方向の視野狭窄が生じ、y軸方向の視野は理論限界近くまで保持される。

【0097】
このように、先に並列位相シフトホログラムから参照光強度を差し引くことにより、近傍画素法において不要な像成分の除去能力を高めることができる。このため、被写体の3次元像の画質向上を達成することができる。なお,この計算処理方法自体は補間を用いる方法にも適用可能である。

【0098】
(参照光強度分布減算処理の効果)
図4(a)はデジタルホログラフィ装置1Aに係る参照光減算処理前(参照光減算処理を適用しなかった時)の被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は参照光減算処理適用後の被写体の3次元像を示す画像であり、(c)は両者の差分を取った後の値を示す画像である。図5は、参照光減算処理適用前後の被写体の3次元像を示す画像の差分を取った後の値を示す画像の詳細を説明するための図である。

【0099】
これらの画像は、参照光強度分布Ir(x、y)を並列位相シフトホログラムI(x、y)から事前に減算する処理を実施した2段階位相シフト法の効果を確かめるための画像である。参照光強度分布の減算処理を追加した結果、位相シフト誤差により残留していた0次回折光、及び参照光同士の干渉成分を除去することができたということが、図4(c)、図5の差分画像により示されている。

【0100】
(空間フィルタリング処理)
ステップS6で前述した空間フィルタリング処理を具体的に説明する。空間フィルタリング処理は、下記の(式10)により表される。

【0101】
【数4】
JP0006040469B2_000005t.gif
ここで、
F[*]:フーリエ変換、
U(x、y):物体(被写体)の再生像の複素振幅、
W(f、f):空間周波数領域における透過フィルタ(窓関数)であって、特定の空間周波数領域の空間スペクトルを透過させる機能を有する。窓関数には、矩形、ガウス窓、ハニング窓、ハミング窓などが含まれる。この透過フィルタは、信号処理分野で用いられているあらゆる種類の関数を用いることが可能である。
、f:空間周波数、
また、近傍画素を用いた方向Dに対して、撮像素子で記録可能な最大空間周波数fの半分で空間スペクトルを遮断するように窓関数を選択する。たとえば、x軸方向に隣り合う2画素を用いて位相シフト法の計算を行って複素振幅分布を得た場合、矩形窓を適用するとき、

【0102】
【数5】
JP0006040469B2_000006t.gif
として、(式11)を(式10)に代入して計算する。

【0103】
(空間フィルタリング処理の効果)
図6(a)はデジタルホログラフィ装置1Aの空間フィルタリング処理を適用した被写体の3次元像を示す画像であり、(b)はその空間周波数分布を示す画像である。

【0104】
台の上に配置されたアヒルの模型とひよこの模型とを含む被写体の像の大部分と共役像(図6(b)に四角枠frm8~frm10で囲んで示している)とは、空間周波数分布面で分離されている。このため、空間フィルタリングにより残留共役像を除去することができる。

【0105】
(N枚画像から誤差の小さい空間スペクトル成分を選択、抽出する方法)
図7は、デジタルホログラフィ装置1Aに係るN種類複素振幅生成処理を説明するための図である。図2のステップS3~S7で前述したように、N種類の方向D=D、…、D(Nは2以上の整数)について、方向D(iは1以上N以下の整数)に沿った並列位相シフトホログラムHL1の画素を利用して複素振幅計算処理を含む位相シフト法の計算を行い、合計N種類のフーリエ変換後の複素振幅SP2を得る。

【0106】
このN種類のフーリエ変換後の複素振幅SP2について、スペクトル分布選択をすることにより、誤差が最小になる重みを選ぶことが可能である。得られたN種類の複素振幅SP2から誤差の小さい空間スペクトル成分を重み付けする、あるいは、選択して空間スペクトル分布SP1を得るとき、次の指針に従う。

【0107】
例えば、垂直方向に沿って複数画素を用いると、垂直方向の画像劣化の少ない撮影範囲が狭くなる。そして、垂直方向に直交する方向(この場合、水平方向)の画像劣化の少ない撮影範囲は狭くならない。見方を変えれば、図7の方向Dである垂直方向に沿って複数画素を用いると水平方向の画像劣化の少ない撮影範囲は広いままであり、図7の方向Dである水平方向に沿って複数画素を用いると垂直方向の画像劣化の少ない撮影範囲は広いままであることになる。

【0108】
そこで、複数のN種類の方向D=D、…、Dに沿って、複素振幅計算処理を含む位相シフト法の計算結果の複素振幅SP2を生成し、空間周波数分布面において被写体の情報が劣化せずに多く含まれている情報を選択し、抽出すればよい。例えば、画像の鮮明さは空間周波数帯域幅に比例するので、空間周波数帯域幅の広い画素を選択するか、空間周波数帯域幅に従って重み付けをすればよい。

【0109】
図8は、N種類複素振幅生成処理において、任意の空間スペクトル分布に対し誤差の小さいスペクトル成分計算結果を重み付けあるいは選択する方針の一例を示す図である。例えば、図8に示す空間スペクトル分布面においてある座標(fx0、fy0)に着目すると、方向Dに直交する方向Dから見て、原点を通り方向Dに沿って引いた直線から座標(fx0、fy0)までの距離が最も短くなるときの方向Dにおける空間スペクトル成分を重み付けあるいは選択する。

【0110】
まず、選択する場合を説明する。例えば、図8に示す例では、方向D、方向D、方向D、及び方向Dのうち、方向Dに垂直な方向D3Hに対応する直線からの座標(fx0、fy0)に対する距離が最短である。このため、方向Dに沿った位相シフトホログラムHL1の近傍画素を利用して複素振幅計算処理をした結果の複素振幅SP2の誤差が最も小さくなる。従って、座標(fx0、fy0)について、方向Dに沿った位相シフトホログラムHL1の近傍画素を利用して複素振幅計算処理をした結果の複素振幅SP2の空間スペクトルを選択する。

【0111】
近傍画素を用いる位相シフト法の計算を行なった後、位相シフト法の計算に用いる方向Dと直交する方向Dおける物体(被写体)の空間スペクトルが劣化することなく得られ、方向Dに近い成分も殆ど劣化することなく得られる。そのため、直線から任意の座標までの距離が短ければ短いほど高い精度の情報を得ることができる。

【0112】
例えば、N=2のとき、D:x軸、D:y軸とし、得られた再生像の複素振幅分布をU、Uとおくと、選択される空間スペクトル成分は、下記の(式12)により表される。

【0113】
【数6】
JP0006040469B2_000007t.gif
ここで、Uselは選択された後の被写体の空間スペクトルを表す。

【0114】
方向Dの数を増やすと、方向Dと直交する方向Dに対応する直線から各座標までの距離をより短くすることができるため、物体の空間情報をより高精度に取得することができる。

【0115】
また、選択ではなく、重みを付ける態様も可能である。例えば、空間スペクトル成分を下記の(式13)により表すことも可能である。

【0116】
【数7】
JP0006040469B2_000008t.gif
ここで、
a、b、c:重み、
である。

【0117】
例えば、N=2、D:x軸、D:y軸とし、座標(fx0、fy0)に対する直線の最短距離で重みを付けると、

【0118】
【数8】
JP0006040469B2_000009t.gif
とすることができる。また、位相シフト法の計算時に起こる空間スペクトル情報が減少した量の逆数を重みに掛け合わせることも可能である。

【0119】
そして、上記の計算の後、エリアシング、共役像残留を防ぐための窓関数により、誤差をさらに減らした空間スペクトルを抽出する。段数2の並列位相シフトデジタルホログラフィにおいて市松模様の位相シフト量の配列のとき、

【0120】
【数9】
JP0006040469B2_000010t.gif
ここで、Uobtainedは最終的に得られる物体の空間スペクトルを表す。

【0121】
ただし、物体の空間スペクトルがf≦f/2のとき、及び、物体の空間スペクトルがf≦f/2のとき、それぞれ、

【0122】
【数10】
JP0006040469B2_000011t.gif
とすることも可能であり、また必要に応じてフィルタの範囲、関数を他の形に変えることも可能である。

【0123】
(原理確認実験による有効性確認)
提案アルゴリズムの有効性を確認するために原理確認実験を行った。逐次記録された位相シフトホログラムを用いて、並列2段階位相シフトデジタルホログラフィに必要なホログラムを計算機内で等価的に生成し、本実施の形態に係るアルゴリズムで像を再生した。比較のために、従来の像再生アルゴリズムでも像を再生した。

【0124】
撮影範囲の広さ、共役像の残留が誤差に影響すると考え、再生像の振幅値を、255で規格化された平均二乗誤差(root mean square error: RMSE)で定量的に評価した。

【0125】
評価のために、逐次記録された複数枚のホログラムを用いて逐次位相シフトデジタルホログラフィで像を再生し、この逐次位相シフトデジタルホログラフィによる像を標準画像として使用した。

【0126】
N=2とし、方向D、Dをそれぞれホログラムの垂直(y軸)、水平(x軸)方向と設定した。

【0127】
方向Dより得られるフーリエ変換後の画像より低空間周波数成分および水平方向高空間周波数成分を選択・抽出し、方向Dより得られる画像より垂直方向高空間周波数成分を選択・抽出した。

【0128】
実験条件は、以下のとおりである。
記録光源:波長632.8nmのHe-Neレーザ、
撮像素子:画素数2448(H) 2050(V)、画素間隔3.45(H)×3.45(V)μmのCCDカメラ、
被写体:アヒル、柵、ヒヨコのミニチュア模型
(撮像素子から300mmの位置にアヒル、380mの位置に柵、350mmの位置にヒヨコを配置)、
図9(a)は従来の逐次位相シフトデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(b)は従来法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(c)は従来法2に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(d)は比較法1に係るデジタルホログラフィ装置による被写体の3次元像を示す画像であり、(e)は上記デジタルホログラフィ装置に係るN(=2)方向処理を適用した被写体の3次元像を示す画像である。

【0129】
撮像素子から300mmの位置に合焦したときの再生像で比較した。図9(b)の従来法1による画像では、画像全体の平均二乗誤差が7.78、被写体周辺の平均二乗誤差が6.96であった。図9(c)の従来法2による画像では、画像全体の平均二乗誤差が6.71、被写体周辺の平均二乗誤差が5.26であった。図9(d)の比較法1による画像では、画像全体の平均二乗誤差が8.66、被写体周辺の平均二乗誤差が6.24であった。

【0130】
図9(e)の本実施の形態による画像では、画像全体の平均二乗誤差が5.45、被写体周辺の平均二乗誤差が4.005であった。

【0131】
画像全体で、図9(b)の従来法1による画像よりも、図9(e)の本実施の形態による画像は、30%誤差が減少した。

【0132】
被写体周辺で、図9(b)の従来法1による画像よりも、図9(e)の本実施の形態による画像は、42.5%誤差が減少した。

【0133】
図9(e)の本実施の形態による画像は、図9(b)~(d)の従来の画像よりも明るい像を再生している。

【0134】
図9(e)の本実施の形態に係るアルゴリズムによる画像は、従来像再生アルゴリズムで見られた共役像の残留が見られない。

【0135】
以上より,本実施の形態に係る提案アルゴリズムにより視野拡大および広範囲高画質3次元イメージングを達成することができた。

【0136】
(実証実験)
本実施の形態に係る提案アルゴリズムの有効性を確認するために並列位相シフトデジタルホログラフィの光学系を組んでさらに実験を行った。

【0137】
図10(a)は従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した画像であり、(b)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した画像であり、(c)はは従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した画像であり、(d)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した画像である。図11(a)は従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した拡大画像であり、(b)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、折り鶴に合焦した拡大画像であり、(c)はは従来のデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した拡大画像であり、(d)は本実施の形態に係るデジタルホログラフィ装置による折り鶴と賽とを含む被写体の3次元像であって、賽に合焦した拡大画像である。

【0138】
実験条件は以下のとおりである。
記録光源:波長532nmのNd:YVO4レーザ、
撮像素子:画素数1164(H) 874(V)の偏光子アレイ付きCCDカメラ、
被写体:折り鶴(撮像素子から475mm),賽(撮像素子から600mm)、
図10(b)、(d)、図11(b)、(d)に示す本実施の形態に係る画像は、再生像の中央に0次回折光の重畳が見られず、被写体のみの像を再生できていることが分かる。よって、位相シフト法の計算精度を向上することができ、画質向上を達成することができた。

【0139】
本発明の実施の形態は、前述したように、下記の(A)(B)(C)の3つの対策に関するものである。対策(A):ホログラムから参照光強度分布を減算してから位相シフト法を適用し、位相シフト法誤差により残留していた0次回折光や、参照光同士の干渉成分を除去する。対策(B):被写体の像の大部分と共役像は空間周波数分布面で分離されているので、空間フィルタリングで残留共役像を除去する。対策(C):複数の方向で位相シフト法の計算結果の画像を生成し、空間周波数分布面で被写体の情報が劣化せずに多く含まれている画像を選択・抽出することにより視野拡大を実現する。本明細書中で説明した実施の形態は、3つの対策(A)~(C)全てを含んでいるが、実際には必要とする画像精度と処理時間とを考慮して、対策(A)~(C)のうち必要な対策を選択してデジタルホログラフィ装置を構成すればよい。例えば、対策(A)(B)(C)のいずれか一つを選択することもできるし、対策(B)と(C)を組み合わせて2つの対策を選択するなど多くの並列位相シフトデジタルホログラフィの例が考えられる。

【0140】
本実施の形態では、対策(C)の実施例として、被写体の参照光の位相シフト量が異なる複数のホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから補間処理なしで近接する画素で位相シフト法計算を行い、1種類の物体光の複素振幅分布を求める例で説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。被写体の参照光の位相シフト量が異なる複数のホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから補間処理を施して、位相シフト量に対応した複数枚のホログラムを得た後に、複素振幅分布を求める場合でも適用可能である。

【0141】
(実施の形態の効果)
以上のように本実施の形態では、並列位相シフトデジタルホログラフィにおいて、0次回折光、-1次回折光あるいは1次回折光のいずれか一方、及び参照光同士の干渉などの影響を極力取り除き、解像度の優れた視野拡大アルゴリズムを提案し、原理確認実験と実証実験とにより有効性を確認した。本実施の形態に係るアルゴリズムは、特許文献3で並列位相シフトデジタルホログラフィに対して提案している像再生アルゴリズムよりも、位相シフト法の計算精度向上により0次回折光除去能力を高め、残留共役像の除去も可能なため、より高精度に計測できる点で有効である。本実施の形態に係るアルゴリズムを用いた計測方法によって、並列位相シフトデジタルホログラフィで大きな物体の高画質イメージングを達成することができる。

【0142】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、被写体の参照光の位相シフト量が異なるホログラム情報を含む並列位相シフトホログラムから参照光の位相シフト量が異なる第1ホログラム及び第2ホログラムを抽出し、参照光の強度分布と第1ホログラムと第2ホログラムとに基づく複素振幅をフーリエ変換し、フーリエ変換された複素振幅を逆フーリエ変換し、回折積分して被写体の3次元像を再生するデジタルホログラフィ装置に利用することができる。
【0144】
また、本発明は、顕微鏡での細胞観察、各種精密機器・加工機などの高精度化・高精密化・多様化に伴う物体の3次元形状・歪等の高度な計測や解析、各種燃料を使用する燃焼装置の高効率化を実現するための燃焼室の観測、地震や津波などの自然災害を考慮した各種建築物の耐負荷特性など物体の3次元変位・応力計測や解析に利用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1A デジタルホログラフィ装置
2 参照光減算器(参照光減算手段)
3 演算器(演算手段)
4 フーリエ変換器(フーリエ変換手段)
5 再生器(再生手段)
6 空間フィルタリング器(空間フィルタリング手段)
7 N種類複素振幅生成器(N種類複素振幅生成手段)
8 空間スペクトル分布生成器(空間スペクトル分布生成手段)
HL1 並列位相シフトホログラム
SP1 空間スペクトル分布
SP2 複素振幅
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図8】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
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【図20】
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【図21】
20