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明細書 :石油汚染土壌の浄化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-088548 (P2014-088548A)
公開日 平成26年5月15日(2014.5.15)
発明の名称または考案の名称 石油汚染土壌の浄化剤
国際特許分類 C09K  17/32        (2006.01)
B09C   1/10        (2006.01)
C12N   1/14        (2006.01)
C12R   1/645       (2006.01)
C09K 101/00        (2006.01)
FI C09K 17/32 H
B09B 3/00 ZABE
C12N 1/14 A
C12N 1/14 E
C12N 1/14 E
C12R 1:645
C12N 1/14 A
C12R 1:645
C09K 101:00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 51
出願番号 特願2013-197581 (P2013-197581)
出願日 平成25年9月24日(2013.9.24)
優先権出願番号 2012223505
優先日 平成24年10月5日(2012.10.5)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】橘 燦郎
【氏名】ヤント・デデ・ヘリ・ユリ
出願人 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100129757、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久彦
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
【識別番号】100125173、【弁理士】、【氏名又は名称】竹岡 明美
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4D004
4H026
Fターム 4B065AA58X
4B065AA71X
4B065BA23
4B065BB15
4B065BB19
4B065BB26
4B065BB37
4B065BC03
4B065CA56
4D004AA41
4D004AB02
4D004AC07
4D004CA18
4D004CA50
4D004CC07
4H026AA08
4H026AB04
要約 【課題】石油成分により汚染された土壌を短時間で効率良く浄化できる石油汚染土壌の浄化剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、Pestalotiopsis属のNG007株(NITE P-1233)を含む。本発明の浄化剤は、更にPolyporus属の担子菌に属するS133株(NITE P-461)や、Trametes属のD7株(NITE P-01703)を含むことが好ましい。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
Pestalotiopsis属のNG007株(NITE P-1233)を含むことを特徴とする石油汚染土壌の浄化剤。
【請求項2】
更にPolyporus属の担子菌に属するS133株(NITE P-461)を含むものである請求項1に記載の石油汚染土壌の浄化剤。
【請求項3】
更にTrametes属のD7株(NITE P-01703)を含むものである請求項2に記載の石油汚染土壌の浄化剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いた石油汚染土壌の浄化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油成分による土壌汚染を安全且つ安価に処理する方法として、微生物による処理方法(バイオレメディエーション)の開発が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1および特許文献2には、石油汚染で特に問題となるC重油などの重質油に対して顕著な分解活性あるいは分解促進活性を有する新規な重質油分解性菌が開示されている。このうち特許文献1の実施例1には、新規菌株であるカウロバクターsp.2B-2株と、公知の炭化水素分解微生物であるアルカニボラックス属に属する菌株との培養物0.1mLを、NSW基本培地にC重油5mg/mLを添加した培地5mLに植菌し、30℃で10日間振とう培養したとき、C重油を44.7%分解できたことが記載されている。また、特許文献2の実施例1には、新規菌株であるハロモナスsp.6B株と、公知の炭化水素分解微生物であるアルカニボラックス属に属する菌株との培養物0.1mLを、NSW基本培地にC重油5mg/mLを添加した培地5mLに植菌し、30℃で10日間振とう培養したとき、C重油を44.0%分解できたことが記載されている。
【0004】
また、本願出願人も、石油成分の分解能に極めて優れた微生物として、Polyporus属の担子菌に属するS133株(NITE P-461)を特許文献3に開示している。特許文献3の実施例4では、高濃度のC重油汚染土壌(C重油濃度15000ppm)を用いたときの分解効率を調べており、S133株にカポックパルプを添加した実験例12では、C重油量(全石油炭化水素TPHの量)を、培養後30日で約76%、培養後60日で約93%まで効率よく分解できたことを開示している(表3)。更に上記実験例12は、C重油を構成する各成分、すなわち、炭化水素(aklane fraction)、芳香族化合物、窒素・硫黄・酸素を含む化合物(NSO)、アスファルト(asphaltene)についても約83~96%もの高い分解率を有しており(表3~表6)、分解が特に困難であったNSOおよびアスファルトについても、培養後60日で約83%分解できたことを開示している(表6)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-83651号公報
【特許文献2】特開2000-139446号公報
【特許文献3】特開2009-166027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように上記特許文献3に記載のS133株を用いれば、石油成分を高い分解率で分解することが可能であるが、更に一層高い分解能を有する微生物を含む、新規な石油汚染土壌の浄化剤の提供が望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、石油成分により汚染された土壌を短時間で効率良く浄化できる石油汚染土壌の浄化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、Pestalotiopsis属のNG007株(NITE P-1233)を含むところに要旨を有するものである。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、上記石油汚染土壌の浄化剤は、更にPolyporus属の担子菌に属するS133株(NITE P-461)を含むものである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、上記石油汚染土壌の浄化剤は、上記NG007株と上記S133株に加え、更にTrametes属のD7株(NITE P-01703)を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、石油成分に汚染された土壌を、短時間で効率よく浄化することができる。本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、特に高濃度の石油成分に汚染された土壌や、石油成分のなかでも難分解性のアスファルトに汚染された土壌などを効率よく浄化することができるため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、NG007株とS133株を所定比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm)のアスファルト分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培地への栄養源の添加なし)。図1の上図は、培養後30日の結果を示し、図1の下図は、培養後15日の結果を、それぞれ、示す。
【図2】図2は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルト分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培養日数は30日、培地への栄養源の添加なし)。
【図3】図3は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルト分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日)。図3の左図は栄養源添加なしの結果を、図3の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図4】図4は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培地への栄養源の添加なし)。図4の上図は培養日数30日の結果を、図4の下図は培養日数15日の結果を、それぞれ、示す。
【図5】図5は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培地への栄養源の添加なし、培養日数15日)。
【図6】図6は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、一部について更に60日、120日)。図6の左図は栄養源添加なしの結果を、図6の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図7】図7は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日)。図7の左図は栄養源添加なしの結果を、図7の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図8】図8は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO]の分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日)。
【図9】図9は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(15000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO]の分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日)。
【図10】図10は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(30000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO]の分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日)。
【図11】図11は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルト分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日、120日)。図11の左図は栄養源添加なしの結果を、図11の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図12A】図12Aは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、NSO部、アスファルテン部(Asphaltene)]の分解率を調べたグラフである。培養日数は15日、30日、60日、120日であり、培地中に栄養源は添加しなかった。
【図12B】図12Bは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、NSO部、アスファルテン部(Asphaltene)]の分解率を調べたグラフである。培養日数は15日、30日、60日、120日であり、培地中に栄養源を添加した。
【図13】図13は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日、120日)。図13の左図は栄養源添加なしの結果を、図13の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図14A】図14Aは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日、120日)。
【図14B】図14Bは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(15000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日、120日)。
【図14C】図14Cは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(30000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日、120日)。
【図15】図15は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日、120日)。図15の上図は栄養源添加なしの結果を、図15の下図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図16A】図16Aは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率を調べたグラフである。培養日数は15日、30日、60日、120日であり、培地中に栄養源は添加しなかった。
【図16B】図16Bは、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率を調べたグラフである。培養日数は15日、30日、60日、120日であり、培地中に栄養源を添加した。
【図17A】図17Aは、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加なしのときの結果を示すグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。
【図17B】図17Bは、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加ありのときの結果を示すグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。
【図18A】図18Aは、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加なしのときの結果を示すグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。
【図18B】図18Bは、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加ありのときの結果を示すグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。
【図19A】図19Aは、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加なしのときの結果を示すグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。
【図19B】図19Bは、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部]の分解率について、培地への栄養源添加ありのときの結果を示すグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。
【図20】図20は、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。図20の左図は栄養源添加なしの結果を、図20の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図21】図21は、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。図21の左図は栄養源添加なしの結果を、図21の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【図22】図22は、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルト分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日、60日)。図22の左図は栄養源添加なしの結果を、図22の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す(培養日数は15日、30日、60日)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、石油成分分解能に優れた微生物として上記S133株を開示した後も、特に高濃度の石油成分に汚染された土壌や、石油成分のなかでも難分解性のアスファルトなどを、より一層効率よく浄化できる微生物について検討を重ねてきた。

【0014】
その結果、Pestalotiopsis属のNG007株(NITE P-1233)を用いれば所期の目的が達成されることを見出した。更には、NG007株と、前述したS133菌株との二種類を組合わせて用いれば、高濃度の石油成分に汚染された土壌の浄化効率が高まり、種々の石油成分を、より一層、効率的に浄化できることを見出し、本発明を完成した。更には、これらのNG007株とS133菌株と、新規に見出されたD7株(詳細は後述する。)との三種類を組合わせて用いれば、高濃度の石油成分汚染土壌の浄化効率が一層高まり、種々の石油成分を、更に一層、効率的に浄化できることを見出し、本発明を完成した。

【0015】
本明細書において石油成分とは、原油や石油に含まれ得るものであれば良く、原油由来のものや石油由来のものに限定されない。なお、一般的に精製前の石油を特に原油というが、本発明では石油と原油を特に区別しないものとする。また、上記石油成分には、原油を用いた石油製品(例えば、重油、ガソリン、灯油、軽油など)も含まれる。

【0016】
(1)NG007株を含む石油汚染土壌の浄化剤および浄化方法について
上述したとおり、本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、Pestalotiopsis属のNG007株(NITE P-1233)を含むところに特徴がある。

【0017】
NG007株は、以下に詳述するように、本発明者らによって見出された新規菌株である。NG007株については、上記菌株由来の粗酵素に強いアゾ染料分解能を有することを見出し、特願2012-053269(以下、先願と呼ぶ。)に、上記菌株を含むアゾ染料分解剤を開示している。しかしながら、上記先願の出願時において、NG007株が高い石油成分分解能を有することまでは認識されていなかった。

【0018】
NG007株は、日本国愛媛県松山市内の枯れ木材より分離した新規な糸状菌であり、非白色腐朽菌である。NG007株は、以下の特徴から、ペスタロツチア(Pestalotiopsis)属に分類された。

【0019】
気生菌糸は、白色で各壁を有し、その表面は滑らかで、直径約1~3μmである。分生子柄は、褐色から暗黒色で気生菌糸上に直立して形成され、その表面は平滑で棍棒状をしている。分生胞子は、紡錘形または楕円形であり、分生胞子の構成細胞数5細胞(内、有色細胞3)であり、3本の付属糸を有する糸状菌である。付属糸を除いた大きさは、長さ:約10~25μm、幅:5μm~10μmであり、先端細胞の付属糸の大きさは約5μm~15μm、後部細胞の小柄の大きさは約2μm~6μmである。

【0020】
NG007株は、培地上で白色の菌糸として生育し、約2~3週間後に褐色から暗黒色の分生胞子を形成する。NG007株を下記の麦芽エキス寒天培地で培養した場合、培地にカテコール1,2-ジオキシゲナーゼ活性が見られた。

【0021】
麦芽エキス寒天培地(1L)
麦芽抽出物 20g
グルコース 20g
ペプトン 1g
寒天 20g
滅菌水 1L
pH 4.5

【0022】
NG007株は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに、2012年2月14日付で寄託され(受領番号NITE AP-1233)、2012年3月23日に受託された(受託番号NITE P-1233)。

【0023】
後記する実施例に示すように、NG007株は、原油のなかでも難分解性物質であるアスファルト(原油蒸留残渣の一つであり、原油に類似した組成を有するもの)を、特許文献3に記載のS133株よりも、短時間で効率よく分解できることが分かった。よって、上記菌株を用いることにより、高濃度のアスファルト汚染土壌を浄化することができる。

【0024】
このように本発明に係るNG007株は極めて優れた石油成分分解能を有することから、石油汚染土壌をスラリー化したり汚染土壌中の石油成分を抽出しなくても、石油汚染土壌へNG007株を添加してNG007株と石油汚染土壌を接触させるのみで石油成分を分解することができる。

【0025】
しかも本発明によれば、上述した種々の石油成分を高濃度に含む汚染土壌を効率よく分解し、浄化することができる。本発明によって処理可能な石油汚染土壌の好ましい濃度は、おおむね、20,000~50,000ppm程度である。上記濃度は、例えば、NG007株を、好ましくは後記する栄養源や界面活性剤などと併用して培養したり、当該菌株の培養期間を長くするなどして、更に高めることができる。

【0026】
本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤には、NG007株を含む全ての態様のものが包含される。具体的には、以下に詳述する通り、本発明の浄化剤はNG007株を含む液体培地であってもよいし、NG007株を生育させた木屑などの菌床であってもよい。また、栄養源や界面活性剤などを含むものであってもよい。

【0027】
また、本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、液体培地や菌床上などでNG007株を十分に生育させたものであってもよいし、或いは生育させたものを冷蔵保存したものであってもよい。

【0028】
次に、上記NG007株を含む浄化剤を用いて石油汚染土壌を浄化する方法について説明する。上記浄化方法は、常法に従い、NG007株を石油汚染土壌と接触させれば良い。

【0029】
具体的には、例えば、NG007株を液体培地などで培養したNG007株の培養物を石油汚染土壌に散布するなどして接触させる方法が挙げられる。用いられる培地としては、例えば、前述した麦芽エキス寒天培地のほか、Czapek-Dox寒天培地、馬鈴薯-デキストロース寒天(PDA)培地などが挙げられる。石油汚染土壌に散布されるNG007株の液体培地は、NG007株の至適pHに合わせて4.0~8.5程度に調整することが好ましい。また、上記液体培地は、上記pHになるように、適宜、希釈することが推奨される。

【0030】
或いは、NG007株は糸状菌であるので、菌床となり得る植物残渣を用いて培養したNG007株の培養物を石油汚染土壌に散布してもよい。使用可能な植物残渣としては、例えば、木屑、おが屑、鋸屑、米糠、おから、酒粕、大豆粕、製紙用パルプ、スラッジなどが挙げられる。上記植物残渣には、前述した培地成分(例えば麦芽エキスなど)が含まれていても良い。

【0031】
上述したNG007株の培養物を得るための培地または菌床には、NG007株の栄養源や界面活性剤を添加することが好ましい。栄養源はNG007株の生育を活発化し、ひいては石油成分の分解能を活性化することができる。また、界面活性剤は、脂溶性が高く親水性の低い石油成分を固体状の土壌から脱離させてNG007株の生育環境に存在し易くし、分解を促進する作用を有する。

【0032】
NG007株の栄養源としては、例えば、グルコース等の炭素源;ポリペプトン等の窒素源;マグネシウム塩、又はマンガン塩等の微量元素塩、又はマンガン塩等の微量元素源;植物繊維の破砕物(パルプ)等の植物材料などが挙げられる。栄養源は、糸状菌の栄養源として市販されているものを用いても良く、例えば、昭和産業社製の「しいたけの里」などが挙げられる。

【0033】
栄養源の添加量は、NG007株の量などに応じて適宜調整すればよいが、一般的には栄養源の量は多いほどNG007株の生育は良好であり、石油成分の分解効率は向上する。その一方で、植物材料の天然素材を除く炭素源や窒素源などの栄養源が多過ぎると環境への悪影響が懸念される。以上を考慮して、培地の全質量に対して、おおむね、5~30質量%であることが好ましい。

【0034】
使用する界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤など特に制限されないが、NG007株への悪影響が少ないことから非イオン界面活性剤が好適である。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。より具体的には、Tween20、Tween60、Tween80を用いることができる。

【0035】
界面活性剤は、NG007株の生育環境に対する石油成分の分散性を向上させることができる他、炭素源となるなどNG007株の生育を促進する可能性もある。しかし、界面活性剤の量が多過ぎるとかえってNG007株の生育に悪影響を与え得る。そこで、界面活性剤の添加量は、培地の全重量に対して、おおむね、0.05質量%以上、1.0質量%以下程度にすることが好ましく、0.1質量%以上、0.75質量%以下程度にすることがより好ましい。

【0036】
上記培地には、クエン酸等のpH調整剤等を添加してもよい。上記培地の好ましいpHは、NG007株の生育などの観点から、おおむね、4.0~8.5である。

【0037】
培養工程では、上記培地にNG007株を接種し、菌糸蔓延した状態まで培養する。NG007株の培地への接種量や培養条件は、処理対象である汚染土壌の汚染状態(石油成分の種類や含有量など)に応じて、適宜適切に調整すればよい。例えば、好ましい培養温度は、おおむね、15~40℃である。

【0038】
処理対象である石油汚染土壌は、採掘した上で容器に挿入し、NG007株や栄養源などを添加し、NG007株が良好に生育できるように温度や湿度を調整してもよい。しかし、土壌汚染は広範囲に及ぶことが多く、処理すべき土壌を逐一採掘するとかえって処理効率が低下し得る。よって、石油汚染土壌にそのままNG007株を添加してもよい。なお、NG007株は25℃で十分に生育することから、日本国内であれば、NG007株は温度調節せずとも常温で石油成分を分解できると考えられる。但し、湿度は比較的高く保つべきであるので、適時水などを散布することが好ましい。

【0039】
本発明者らによる知見によれば、NG007株による石油汚染土壌の処理中は、好ましくは、遮光した方が効率的である。よって、石油汚染土壌にNG007株を添加した後は、ブルーシート等で被覆するなどして照射光量を抑えることが好ましい。

【0040】
(2)更にS133株を含む石油汚染土壌の浄化剤および浄化方法について
本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、更にPolyporus属の担子菌に属するS133株(NITE P-461)を含むことが好ましい。S133株と、前述したNG007株とを組合わせて用いることにより、それぞれの菌株を単独で用いた場合に比べ、石油成分の分解能が格段に向上する(後記する実施例を参照)。

【0041】
S133株は、本発明者らによって見出された新規菌株であり、その詳細は、特許文献3に詳述している。S133株も、優れた石油分解能を有しており、例えば、15000ppmもの高濃度のC重油で汚染された石油汚染土壌を約2ヶ月間の比較的短期間で効率よく分解することができる。また、C重油を構成する成分のなかでも特に分解が困難であったNSOおよびアスファルトについても、効率よく分解することができる。

【0042】
しかしながら、驚くべきことに、S133株を上記NG007株と併用することにより、S133株による高い石油成分分解能が一層促進されることが分かった。詳細は後記する実施例に示しているが、例えば、より高濃度の30000ppmのC重油で汚染された石油汚染土壌を約1ヶ月間の比較的短期間で、58%まで、効率よく分解することができた。

【0043】
S133株の培養方法などの詳細は、特許文献3に記載されているので、特許文献3を参照すれば良い。

【0044】
NG007株とS133株の混合比率[各菌を、それぞれの適切な培地で一定期間(7日間)培養した後、培養液全体をホモジナイズした菌糸懸濁液の混合比率]は、分解対象である石油成分の種類や濃度などによっても相違し得、適宜適切に定めれば良いが、体積比率(容量比)にて、おおむね、NG007株:S133株=10~90:90~10の範囲内であることが好ましく、NG007株:S133株=75~25:25~75の範囲内であることがより好ましい。

【0045】
上記の混合物を含む浄化剤を用いて石油汚染土壌を浄化する方法については、前述したNG007株を含む浄化剤を用いて浄化する方法と同様に行なえば良い。NG007株もS133株も、好ましく用いられる培地や菌床の種類、好ましく添加される栄養源や界面活性剤の種類などが重複するからである。具体的には、例えば、それぞれの適切な培地で所定期間培養したNG007株の培養液とS133株の培養液とを、上記の好ましい混合比率で混合したものを、前述した方法で、石油汚染土壌に添加すれば良い。或いは、いずれの菌株も、共に麦芽エキス寒天培地で好ましく培養されるため、それぞれの菌を、麦芽エキスなどを含む植物残渣で成育させた菌床を適切な割合で混合したもの[石油汚染土壌に対して、おおむね、5~30%程度(乾燥土壌に対する質量比率)]を石油汚染土壌に添加してもよい。このときの好ましい培養温度は、おおむね、15~40℃である。

【0046】
(3)上記NG007株とS133株と、D7株とを含む石油汚染土壌の浄化剤および浄化方法について
本発明に係る石油汚染土壌の浄化剤は、上記(2)に、更にTrametes属のhirsutus菌に属するD7株(NITE P-01703)を加えた合計三種類の菌株を含むことが好ましい。上述したS133株とNG007株に、更にD7株を組合わせて用いることにより、それぞれの菌株を単独で用いた場合、またはS133株とNG007株の二種類を用いた場合に比べ、石油成分の分解能が向上する(後記する実施例を参照)。

【0047】
ここで、D7株は、本発明者らによって見出された新規菌株であり、その詳細は以下のとおりである。

【0048】
D7株は、日本国愛媛県伊予市郊外の枯れ木材より分離した新規な担子菌であり、白色腐朽菌である。D7株は、以下の特徴から、トラメテス(Trametes)属に分類された。

【0049】
表面は灰白色の半円形の傘を持ち、その幅は2~7cm、厚さ2~5mmで、多数重生する。胞子の色は白色で、その大きさは、長さ:5~7μm、幅:2~3μmである。D7株は培地上で白色の菌糸として成育し、この菌糸にはクランプコネクションが見られる。

【0050】
D7株を下記の麦芽エキス寒天培地で培養した場合、培地にマンガンペルオキシダーゼ活性、ラッカーゼ活性が見られた。

【0051】
麦芽エキス寒天培地(1L)
麦芽抽出物 20g
グルコース 20g
ペプトン 1g
寒天 20g
滅菌水 1L
pH 4.5

【0052】
D7株は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに、2013年9月6日付で寄託され(受領番号NITE AP-01703、受領日2013年9月6日)、受託された(受託番号NITE P-01703、受託日2013年9月6日)。

【0053】
D7株は、石油汚染土壌の浄化剤として有用である。特に、D7株と、前述したNG007株とS133株とを組み合わせて用いることにより、NG007株とS133株を併用したときに比べ、高濃度のアスファルト汚染土壌などを、より短時間で、一層効率よく分解できることが分かった。例えば後記する表9に示すように、上記三種類の混合物を用いることにより、30000ppmの高濃度で汚染されたA重油、C重油、アスファルトの各石油汚染土壌を約1ヶ月間の比較的短期間で、84%(A重油)、82%(C重油)、69%(アスファルト)まで、効率よく分解することができた(いずれも栄養源添加ありの結果)。更に培養後約2ヶ月目には上記の各分解率は一層向上する傾向が見られ、91%(A重油)、89%(C重油)、76%(アスファルト)であった。

【0054】
D7株は、前述したS133株と同様、石油汚染土壌に添加してD7株と石油汚染土壌を接触させるのみで、石油成分を分解することができる。上記D7株によって処理可能な石油汚染土壌の濃度は、D7株を、好ましくは後記する栄養源や界面活性剤などと併用したり、当該菌株式の培養期間を長くするなどして高めることができ、おおむね、20,000~50,000ppm程度の汚染土壌を処理することができる。

【0055】
D7株と石油汚染土壌を接触させる方法は常法に従えばよい。例えば、D7株を液体培地で培養した場合には、その培養液を石油汚染土壌に散布すればよい。或いは、D7株は担子菌であるので、菌床となり得る植物残渣を用いて培養したD7株を石油汚染土壌に散布してもよい。

【0056】
石油汚染土壌に散布すべきD7株の液体培地は、希釈してもよい。また、当該液体培地のpHは、D7株の至適pHに合わせて4.5~6程度に調整することが好ましい。

【0057】
D7株を培養するために用いる植物残渣としては、木屑、おが屑、鋸屑、米糠、おから、油粕、大豆粕などを挙げることができる。

【0058】
D7株を石油汚染土壌に添加する場合には、D7株の栄養源や界面活性剤も添加することが好ましい。栄養源はD7株の生育を活発化し、ひいては石油成分の分解能を活性化することができる。また、界面活性剤は、脂溶性が高く親水性の低い石油成分を固体状の土壌から脱離させてD7株の生育環境に存在し易くし、分解を促進する作用を有する。

【0059】
D7株の栄養源としては、昭和産業社製の「しいたけの里」など担子菌の栄養源として市販されているものを用いてもよいし、グルコースなどの炭素源;ポリペプトンなどの窒素源;マグネシウム塩やマンガン塩などの微量元素源;クエン酸などのpH調整剤などを適宜選択して用いてもよい。また、S133株の栄養源として、植物材料も好ましく用いられ、代表的には、植物繊維の破砕物(パルプ)が挙げられる。D7株は、白色腐朽菌に属するTrametes属の一種であり、植物などの木材中のリグニン分解能力を有しているからである。パルプの原料としては、白色腐朽菌が利用できるものであれば特に限定されないが、針葉樹や広葉樹などの木材、綿、麻、ケナフ、バガスなどが挙げられる。具体的には、例えば、カポックの木を用いたカポックパルプ、綿の実に付着する短毛(綿クズ)を用いたリンターパルプ、綿の紡績から出る繊維(綿ボロ)を利用したラグパルプ、麻を原料としたリネンパルプなどが代表的に例示される。また、古紙パルプ(再生紙)を利用しても良い。

【0060】
栄養源の添加量は、D7株の量などに応じて適宜調整すればよいが、一般的には栄養源の量は多いほどD7株の生育は良好であり、石油成分の分解効率は向上する。その一方で、植物材料の天然素材を除く炭素源や窒素源などの栄養源が多過ぎると環境への悪影響が懸念される。以上を考慮して、添加する栄養源の量は、処理対象である石油汚染土壌に対して5~30質量%程度にすることが好ましい。

【0061】
使用する界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤など特に制限されないが、D7株への悪影響が少ないことから非イオン界面活性剤が好適である。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。より具体的には、Tween20、Tween60、Tween80を用いることができる。

【0062】
界面活性剤は、D7株の生育環境に対する石油成分の分散性を向上させることの他、炭素源となるなどD7株の生育を促進する可能性もある。しかし、界面活性剤の量が多過ぎるとかえってD7株の生育に悪影響を与え得る。そこで、界面活性剤の添加量は、処理すべき石油汚染土壌に対して0.05質量%以上、1.0質量%以下程度にすることが好ましく、0.1質量%以上、0.75質量%以下程度にすることがより好ましい。

【0063】
処理対象である石油汚染土壌は、採掘した上で容器に挿入し、D7株や栄養源などを添加し、D7株が良好に生育できるように温度や湿度を調整してもよい。しかし、土壌汚染は広範囲に及ぶことが多く、処理すべき土壌を逐一採掘するとかえって処理効率が低下し得る。よって、石油汚染土壌にそのままS133株を添加してもよい。なお、D7株は25℃で十分に生育することから、日本国内であれば、D7株は温度調節せずとも常温で石油成分を分解できると考えられる。但し、湿度は比較的高く保つべきであるので、適時水を散布するなどすべきである。

【0064】
D7株の添加量は、汚染土壌の汚染状態などに応じて適宜調整すればよい。

【0065】
本発明者らによる知見によれば、D7株による石油汚染土壌の処理中は、遮光した方が効率が良い。よって、石油汚染土壌にD7株を添加した後は、ブルーシート等で被覆するなどして照射光量を抑えることが好ましい。

【0066】
本発明では、このD7株を、前述したNG007株とS133株と組み合わせて使用する。具体的には、これら三種類の菌株の混合比率[各菌を、それぞれの適切な培地で一定期間(7日間)培養した後、培養液全体をホモジナイズした菌糸懸濁液の混合比率]は、分解対象である石油成分の種類や濃度などによっても相違し得、適宜適切に定めれば良いが、体積比率(容量比)にて、おおむね、NG007株:S133株:D7株=1~6:1~3:1~3の範囲内であることが好ましく、NG007株:S133株:D7株=1~2:1~2:1~2の範囲内であることがより好ましい。

【0067】
上記の混合物を含む浄化剤を用いて石油汚染土壌を浄化する方法については、前述したNG007株を含む浄化剤を用いて浄化する方法と同様に行なえば良い。NG007株もS133株も、好ましく用いられる培地や菌床の種類、好ましく添加される栄養源や界面活性剤の種類などが重複するからである。具体的には、例えば、それぞれの適切な培地で所定期間培養したNG007株の培養液とS133株の培養液とD7株の培養液を、上記の好ましい混合比率で混合したものを、前述した方法で、石油汚染土壌に添加すれば良い。或いは、いずれの菌株も、共に麦芽エキス寒天培地で好ましく培養されるため、それぞれの菌を、麦芽エキスなどを含む植物残渣で成育させた菌床を適切な割合で混合したもの[石油汚染土壌に対して、おおむね、5~30%程度(乾燥土壌に対する質量比率)]を石油汚染土壌に添加してもよい。このときの好ましい培養温度は、おおむね、15~40℃である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0069】
なお、以下における「%」は、特に断りのない限り、全て「質量%」である。
【実施例】
【0070】
実施例1
本実施例では、NG007株およびS133株を単独または併用して用い、アスファルトで汚染された土壌に対する浄化能を調べた。
【実施例】
【0071】
まず、実験に用いたNG007株およびS133株は、以下のようにして単離した。
【実施例】
【0072】
(1)NG007株の単離
愛媛大学農学部構内およびその近縁から採取した82種のキノコおよび腐朽木材を試料として用いた。キノコの場合は、約5mm角に切り、前述した麦芽エキス寒天培地に添加し、暗所にて25℃で2週間培養した。また、腐朽木材の場合は、約1.2g(乾燥重量で約1g)を滅菌水(9mL)に懸濁し、攪拌した後に10分間静置した後、各上澄液(1mL)を、前述した麦芽エキス寒天培地に添加し、暗所にて25℃で2週間培養した。麦芽エキス寒天培地上に生育してきた72種の菌をそれぞれ採取し、アスファルト1000ppmを上層した麦芽エキス寒天培地(具体的には、麦芽エキス寒天培地の上に、ジクロロメタンに溶解したアスファルト1000ppmを塗布した後、ジクロロメタンを蒸発させることにより、麦芽エキス寒天培地の上にアスファルトを載せたもの)にて25℃で7日間培養した。これらのうち、生育速度の速い菌を10種採取し、アスファルト15000ppmを上層した麦芽エキス寒天培地にて、更に25℃で7日間培養することによって、特に生育が活発であった糸状菌であるNG007株を単離した。
【実施例】
【0073】
得られたNG007株を顕微鏡により観察したところ、白色で各壁を有し、その表面は滑らかで、直径約1~3μmであった。分生子柄は、褐色から暗黒色で気生菌糸上に直立して形成され、その表面は平滑で棍棒状をしていた。分生胞子は、紡錘形または楕円形であり、分生胞子の構成細胞数5細胞(内、有色細胞3)であり、3本の付属糸を有する糸状菌であった。付属糸を除いた大きさは、長さ:約10~25μm、幅:5μm~10μmであり、先端細胞の付属糸の大きさは約5μm~15μm、後部細胞の小柄の大きさは約2μm~6μmであった。これらはPestalotiopsis属菌の形態学的特徴であることから、NG007株はPestalotiopsis属菌と同定した。
【実施例】
【0074】
(2)S133株の単離
蒸留水(100mL)に麦芽(20g/L)、グルコース(20g/L)、ポリペプトン(1g/L)および寒天(20g/L)を添加した。さらに、当該混合物(20ml)に、雑細菌や酵母などの繁殖を抑制するためにクロラムフェニコール(6mg)またはベニミル(6mg)を加え、麦芽エキス寒天培地を調製した。別途、1%のTween80を含むジメチルホルムアミドの1%クリセン溶液を調製した。上記麦芽エキス寒天培地(20ml)上に、上記クリセン溶液(1ml)を添加して均一になるように広げた。
【実施例】
【0075】
愛媛大学農学部構内およびその近縁から採取した124種の土壌(乾燥重量で1g)を滅菌水(9mL)に懸濁し、攪拌した後に10分間静置した。次いで、各上澄液(1mL)を上記麦芽エキス寒天培地に添加し、暗所にて25℃で2週間培養した。培地上に生育してきた87種の菌をそれぞれ採取し、同様の麦芽エキス寒天培地にて25℃で7日間培養した。生育速度の速い菌を7種採取し、同様の操作をもう一度繰り返すことによって、特にクリセン存在下における生育が活発であった担子菌であるS133株を単離した。
【実施例】
【0076】
得られたS133株を顕微鏡により観察したところ、中央に窪みがある平らで白色のカサを有し、その表面には褐色の鱗片が存在するものであった。柄は中心生であり、胞子は白色で長楕円形であった。これらはPolyporus属菌の形態学的特徴であることから(今関六也ら編、「日本のキノコ」山と渓谷社、第450~451頁(1988年);およびTomas Laessoe著,「DORLIG KINDERSLEY-HANDBOOKS-MUSHROOMS」,Dorling Kindersley Ltd.,LONDON,204,pp.202~210(1998年)を参照)、S133株はPolyporus属菌と同定した。
【実施例】
【0077】
(3)アスファルト石油汚染土壌の調製
本実施例では、原油蒸留残渣であるアスファルトに汚染された土壌を用い、土壌中のアスファルト濃度が、1000ppm、15000ppm、および30000ppmのものを用意した。
【実施例】
【0078】
まず、愛媛大学農学部附属農場から採取した土壌を3mmのメッシュで篩い分けし、120℃で2時間滅菌した。別途、下記組成のアスファルト(3g)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、3%のアスファルト溶液を調製した。上記滅菌土壌(乾燥重量で30g)に上記アスファルト溶液(1mL)を加え、土壌中のアスファルト濃度を1000ppmに調整した。
(アスファルトの組成)
脂肪族炭化水素部(aliphatic fr.)(32%)
芳香族炭化水素部(aromatic fr.)(44%)
アスファルテン部(asphaltene fr.)(14%)
窒素、硫黄および酸素を含む化合物(NSO部、NSO fr.)(10%)
【実施例】
【0079】
更に上記アスファルト溶液の添加量を調整することにより、土壌中のアスファルト濃度が15000ppm、30000ppmのものを用意した。
【実施例】
【0080】
(4)アスファルト石油汚染土壌の浄化処理
NG007株およびS133株の各菌株をそれぞれ、前述した麦芽エキス寒天培地にて、室温(25℃)で7日間培養し、その培養液をホモジナイザーで5000rpm、10分間ホモジナイズした菌糸懸濁液を用意した。このようにして得られた各菌株の菌糸懸濁液を、容量比にて、NG007株:S133株=0:100、25:75、50:50、75:25、100:0)となるように調整した。
【実施例】
【0081】
(4-1)培地中への栄養源の添加なしの場合
上記のようにして得られた各容量比の培養物を、上記(3)で調製した石油汚染土壌に対して、13.3%となるように加え、よく混合した後、暗所にて25℃で培養した。
【実施例】
【0082】
(4-2)培地中への栄養源の添加ありの場合
上記(3)で調製した石油汚染土壌に対して、栄養源として、グルコース、シイタケの里をそれぞれ10%、15%(乾燥土壌に対する質量比率)の比率で添加した。次いで、上記のようにして得られた各容量比の培養物を、石油汚染土壌に対して13.3%(乾燥土壌に対する質量比率)となるように加え、よく混合した後、暗所にて25℃で培養した。
【実施例】
【0083】
(5)アスファルト分解率の測定
アスファルトの分解率(浄化率)を、Mishraらの方法(In Situ Bioremediation otential f an Oily Sludge-Degrading Bacterial Consortium,Sanjeet Mishra,Jeevan Jyot,Ramesh Chander Kuhad,Banwari,Lai,Current Microbiology,Vol.43,328-335(2001))を参考にして測定した。
【実施例】
【0084】
測定方法の概要は以下のとおりである。まず、培養開始から15日間および30日間経過後に土壌の一部を採取し、ヘキサン、ジクロロメタン、およびクロロホルムで順次抽出した。それぞれの抽出液を合わせて濃縮し、抽出物を得た。一方、アスファルト汚染土壌(菌株の添加なし)の一部を採取し、上記と同様にして、ヘキサン、ジクロロメタン、およびクロロホルムで順次抽出した各抽出液を合わせて濃縮し、抽出物を得た。
【実施例】
【0085】
上記の抽出物にヘキサンを加え、ヘキサン可溶部と不溶部に分けた。このうちヘキサン可溶部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン、トルエン、クロロホルム:メタノール(1:1)で順次溶出し、各溶出部の重量を測定した。ヘキサン溶出部は脂肪族炭化水素部を、トルエン溶出部は芳香族炭化水素部を、クロロホルム:メタノール(1:1)溶出部はNSO部を、ヘキサン不溶部はアスファルテン部を、それぞれ、含んでいる。各溶出部の重量を測定し、石油汚染土壌の浄化処理前と浄化処理後の重量を比較することにより、脂肪族炭化水素部、芳香族炭化水素部、NSO部、アスファルテン部の分解率(浄化率)をそれぞれ、算出した。本実施例では、このようにして得られた各成分の分解率の合計をA重油またはC重油の分解率とした。
【実施例】
【0086】
(6)酵素活性の測定
本実施例では、参考のため、前述した先願と同様、下記(ア)~(オ)の酵素(粗酵素)の酵素活性を測定した。先願に記載したように、これらの酵素は、アゾ染料分解作用に寄与していると考えられるが、本実施例でも、参考のため、各種酵素の酵素活性を測定した。
【実施例】
【0087】
具体的には、上記(3)で調製した石油汚染土壌の一部(5g)を採取し、蒸留水(30mL)を加え、室温(25℃)でホモジナイズ(5000rpm、10分間)した後、その上澄み液を採取した。
【実施例】
【0088】
このようにして得られた上澄み液中の各酵素の活性(U/LまたはU/l)を、以下の方法で測定した。
【実施例】
【0089】
(ア)マンガンペルオキシダーゼ(MnP)活性は、Brownらの方法(J.Bacteriology,vol.172(6),pp.3125-3130(1990))により求めた(モル吸光度係数ε:49600mol-1cm-1)。
(イ)リグニンペルオキシダーゼ(LiP)活性は、TienとKirkの方法(Methods in Enzymology,Vo1.161,pp.238-249(1988))により求めた(モル吸光度係数ε:9300mol-1cm-1
(ウ)ラッカーゼ(Laccase,Lac)活性は、LeonoWiczとGrzywnouiczの方法(Enzyme and Microbial Technology,Vol.3,pp,55-58(1981))により求めた(モル吸光度係数ε:6500mol-1cm-1
(エ)カテコール1,2-ジオキシゲナーゼ(C120)活性は、NakazawaとNakazawaの方法(Methods in Enzymology,Vo1.17,pp,5181522(1970))により求めた(モル吸光度係数ε:16000mol-1cm-1
(オ)カテコール2,3-ジオキシゲナーゼ(C230)活性は、NakazawaとNakazawaの方法(Methods in Enzymology,Vol.17,pp,518-522(1970))により求めた(モル吸光度係数ε:44000mol-1cm-1)。
【実施例】
【0090】
これらの結果を図1~図3に示す。
【実施例】
【0091】
まず、図1を参照する。図1は、NG007株とS133株を図1に示す比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm)のアスファルト分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培地への栄養源の添加なし)。図1の上図は、培養後30日の結果を示し、図1の下図は、培養後15日の結果を、それぞれ、示す。
【実施例】
【0092】
図1より、NG007株とS133株を組合わせて用いることにより、それぞれを単独で用いた場合に比べ、アスファルトの浄化率が増加することが分かる。例えば培養後30日(図1の上図)の浄化率を比較すると、NG007株単独のアスファルト浄化率は67%、S133菌単独のアスファルト浄化率は59%であったのに対し、これらを1:1の比率で組合わせたときのアスファルト浄化率は、89%まで増加した。
【実施例】
【0093】
次に図2を参照する。図2は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルト分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培養日数は30日、培地への栄養源の添加なし)。
【実施例】
【0094】
図2より、アスファルト濃度が高濃度の汚染土壌であっても、1ヶ月の処理で、68%(アスファルト濃度15000ppm)、63%(アスファルト濃度30000ppm)まで浄化できることが分かった。
【実施例】
【0095】
次に図3を参照する。図3は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のアスファルト分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである(培養日数は15日、30日)。図3の左図は栄養源添加なしの結果を、図3の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【実施例】
【0096】
図3より、共培養時に栄養源を添加することにより、アスファルトの浄化率が促進されることが分かる。
【実施例】
【0097】
以上の実験結果より、本発明によれば、原油中の難分解性物質であるアスファルトを、短時間で効率よく浄化できることが分かった。
【実施例】
【0098】
実施例2
本実施例では、NG007株およびS133株を単独または併用して用いたときの、A重油汚染土壌およびC重油汚染土壌に対する浄化能を調べた。重油は、動粘度によって1種(A重油)、2種(B重油)、3種(C重油)に分類される。C重油は、軽油のほか90%以上が残渣油であり、A重油は、軽油90%に少量の残渣油を混合したものである。
【実施例】
【0099】
まず、愛媛大学農学部附属農場から採取した土壌を3mmのメッシュで篩い分けし、120℃で2時間滅菌した。別途、下記組成のA重油またはC重油(3g)をジクロロメタン(100mL)に溶解し、3%のA重油溶液またはC重油溶液を調製した。上記滅菌土壌(乾燥重量で30g)に上記の各重油溶液(1mL)を加え、土壌中の各重油濃度を1000ppmに調整した。
(A重油組成)
脂肪族炭化水素部(aliphatic fr.)(75%)
芳香族炭化水素部(aromatic fr.)(9%)
アスファルテン部(asphaltene fr.)(13%)
NSO部( NSO fr.)(3%)
(C重油組成)
脂肪族炭化水素部(aliphatic fr.)(44%)
芳香族炭化水素部(aromatic fr.)(31%)
アスファルテン部 (asphaltene fr.)(17%)
NSO部(NSO fr.)(8%)
【実施例】
【0100】
更に上記の各重油溶液の添加量を調整することにより、土壌中の各重油濃度が15000ppm、30000ppmのものを用意した。
【実施例】
【0101】
次いで、前述した実施例1と同様にして、各汚染土壌を浄化処理し、前述したMishraらの方法を参考にして、A重油の分解率およびC重油の分解率を測定した。
【実施例】
【0102】
具体的には、まず、培養開始から15日間および30日間経過後に土壌の一部を採取し、ヘキサン、ジクロロメタン、およびクロロホルムで順次抽出した。それぞれの抽出液を合わせて濃縮し、抽出物を得た。一方、A重油汚染土壌またはC重油汚染土壌(菌株の添加なし)の一部を採取し、上記と同様にして、ヘキサン、ジクロロメタン、およびクロロホルムで順次抽出した各抽出液を合わせて濃縮し、抽出物を得た。得られた抽出物にヘキサンを加え、ヘキサン可溶部と不溶部に分けた後、ヘキサン可溶部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、ヘキサン、トルエン、クロロホルム:メタノール(1:1)で順次溶出した。各溶出部の重量を測定し、処理前後の重量を比較することにより、脂肪族炭化水素部、芳香族炭化水素部、NSO部、アスファルテン部の各分解率を算出した。本実施例では、このようにして得られた各成分の分解率の合計をA重油またはC重油の分解率とした。
【実施例】
【0103】
これらの結果を図4~図10、並びに表1~表5に示す。表1は、図4に対応するものであり、各酵素活性の結果を示している。表2は、図5に対応するものであり、各酵素活性の結果を示している。なお、表2には、更に処理開始後30日目の結果も併記している。表3~表5は、図7に対応するものであり、各酵素活性の結果を示している。このうち、表3はC重油汚染土壌1000ppmのときの結果を、表4はC重油汚染土壌15000ppmのときの結果を、表5はC重油汚染土壌30000ppmのときの結果を、それぞれ、示す。
【実施例】
【0104】
【表1】
JP2014088548A_000002t.gif
【実施例】
【0105】
【表2】
JP2014088548A_000003t.gif
【実施例】
【0106】
【表3】
JP2014088548A_000004t.gif
【実施例】
【0107】
【表4】
JP2014088548A_000005t.gif
【実施例】
【0108】
【表5】
JP2014088548A_000006t.gif
【実施例】
【0109】
まず、図4を参照する。図4は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培地への栄養源の添加なし)。図4の上図は培養日数30日の結果を、図4の下図は培養日数15日の結果を、それぞれ、示す。図4中、HOAは、A重油汚染土壌を意味する。
【実施例】
【0110】
その結果、A重油濃度が高濃度の汚染土壌であっても、15日の処理で、67%(A重油濃度15000ppm)、49%(A重油濃度30000ppm)まで浄化できること;更に1ヶ月の処理では、78%(A重油濃度15000ppm)、68%(A重油濃度30000ppm)まで浄化できることが分かった。
【実施例】
【0111】
次に、図5を参照する。図5は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油分解率(左軸)、各種酵素活性(右軸)の結果を示すグラフである(培地への栄養源の添加なし、培養日数15日)。図5中、HOCは、C重油汚染土壌を意味する。
【実施例】
【0112】
その結果、C重油濃度が高濃度の汚染土壌であっても、15日間の処理で、64%(C重油濃度15000ppm)、58%(C重油濃度30000ppm)まで浄化できることが分かった。
【実施例】
【0113】
次に、図6を参照する。図6は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、A重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のA重油分解率について、培地への栄養源添加の影響を調べたグラフである。図6の左図は栄養源添加なしの結果を、図6の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【実施例】
【0114】
その結果、共培養時に栄養源を添加することにより、A重油の浄化率が促進されることが分かる。
【実施例】
【0115】
次に、図7~図10を参照する。これらの図は、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、C重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のC重油の分解率(図7)およびC重油を構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、アスファルテン部(Asphaltene)、NSO部の分解率(図8~図10)の結果を、それぞれ、示している。図8~図10のうち、図8はC重油汚染土壌(1000ppm)のときの結果を、図9はC重油汚染土壌(15000ppm)のときの結果を、図10はC重油汚染土壌(30000ppm)のときの結果を、それぞれ、示している。図8~図10において、□は栄養源添加なしの結果を、■は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【実施例】
【0116】
その結果、共培養時に栄養源を添加することにより、C重油の浄化率が促進されることが分かる(図7を参照)。
【実施例】
【0117】
以上の実験結果より、本発明によれば、原油中のアスファルトだけでなく、C重油やA重油に汚染された土壌も、効率よく浄化できることが分かった。
【実施例】
【0118】
実施例3
本実施例では、NG007株とS133株を1:1の比率で共培養したときの、アスファルト汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)に対する浄化能をより詳しく調べるため、前述した実施例1(培養日数15日、30日)において培養日数を60日、120日まで延長し、実施例1と同様にしてアスファルトの浄化率を測定した。その結果を図11に示す。図11の左図は栄養源添加なしの結果を、図11の右図は栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。
【実施例】
【0119】
図11より、栄養源無添加の場合は、アスファルトの濃度にかかわらず、培養日数を60日、120日に延長してもアスファルトの浄化率は、培養日数30日のときと殆ど変化しなかった(図11の左図を参照)のに対し、栄養源を添加すると、アスファルトが高濃度の場合(15000ppm、30000ppm)にアスファルトの浄化率が一層向上し、約90%近傍の極めて高い浄化率を達成することができた。
【実施例】
【0120】
参考のため、各濃度のアスファルト汚染土壌を用いたときの各酵素活性(U/l)を表6A(1000ppm)、表6B(15000ppm)、表6C(30000ppm)に示す。これらの酵素活性は、前述した実施例2と同様にして調べたものであり、各表における括弧書の太字部分は、栄養源を添加した後の酵素活性を示す。栄養源は培養後、15日目、30日目、60日目、90日目に添加した。例えば表6AのC12Oにおいて、30日間培養の欄に記載の括弧書の数値(920U/l)は培養後15日目に栄養源を加えて更に15日間(合計30日間)培養したときの値であり;60日間培養の欄に記載の数値(9525U/l)は培養後15日目および30日目に栄養源を加えて更に30日間(合計60日間)培養したときの値であり;120日間培養の欄に記載の数値(10425U/l)は培養後15日目、30日目、60日目、90日目に栄養源を加えて更に30日間(合計120日間)培養したときの値である。
【実施例】
【0121】
【表6A】
JP2014088548A_000007t.gif
【実施例】
【0122】
【表6B】
JP2014088548A_000008t.gif
【実施例】
【0123】
【表6C】
JP2014088548A_000009t.gif
【実施例】
【0124】
更に前述した実施例2と同様にして、アスファルトを構成する各成分[脂肪族炭化水素部(Aliphatic)、芳香族炭化水素部(Aromatic)、NSO部、アスファルテン部(Asphaltene)]の分解率を調べた。その結果を図12に示す。図12Aは栄養源添加なしの結果を、図12Bは栄養源添加ありの結果を、それぞれ、示す。図12Aおよび図12Bにおける、各成分の各濃度(1000ppm、15000ppm、30000ppm)のそれぞれについて、左から順に、培養後15日、30日、60日、120日の結果を示している。その結果、いずれの成分においても、共培養時に栄養源を添加することにより浄化率が促進され、特に高濃度の場合(15000ppm、30000ppm)に浄化率が一層向上する傾向が見られた。
【実施例】
【0125】
実施例4
本実施例では、汚染土壌としてC重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)を用いたこと以外は前述した実施例3と同様にして、培養日数を60日、120日まで延長したときのC重油の浄化率(図13)、C重油を構成する各成分の浄化率(図14A~図14C)、各酵素活性(表7A~表7C)を測定した。その結果、図13、図14A~図14Cに示すように、栄養源の添加によりC重油の浄化率は増加する傾向が見られ、特にC重油が高濃度の場合(15000ppm、30000ppm)、栄養源添加培地で培養後120日には30000ppmで約80%、150000ppmで約100%に近い浄化率を達成することができた。
【実施例】
【0126】
【表7A】
JP2014088548A_000010t.gif
【実施例】
【0127】
【表7B】
JP2014088548A_000011t.gif
【実施例】
【0128】
【表7C】
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【実施例】
【0129】
実施例5
本実施例では、汚染土壌としてA重油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)を用いたこと以外は前述した実施例3と同様にして、培養日数を60日、120日まで延長したときのA重油の浄化率(図15)、A重油を構成する各成分の浄化率(図16A~図16C)、各酵素活性(表8A~表8C)を測定した。その結果、図15、図16A~図16Cに示すように、栄養源の添加によりA重油の浄化率は増加する傾向が見られ、特にA重油が高濃度の場合(15000ppm、30000ppm)、栄養源添加培地で培養後120日には、いずれの濃度も約100%に近い浄化率を達成することができた。
【実施例】
【0130】
【表8A】
JP2014088548A_000013t.gif
【実施例】
【0131】
【表8B】
JP2014088548A_000014t.gif
【実施例】
【0132】
【表8C】
JP2014088548A_000015t.gif
【実施例】
【0133】
実施例6
本実施例では、NG007株とS133株とD7株を1:1:1の比率で共培養したときの、石油汚染土壌(1000ppm、15000ppm、30000ppm)に対する浄化能を調べた。具体的には、前述した実施例1および実施例2と同様にして、培地中に栄養源添加あり・添加なしの場合における、A重油、C重油、およびアスファルトの浄化率(培養日数15日、30日、60日)、これらを構成する各成分の浄化率(培養日数15日、30日、60日)を調べた。また、参考のため、前述した実施例2と同様にして、A重油、C重油、およびアスファルトのそれぞれについて、各酵素活性を調べた(培養日数15日、30日、60日)。
【実施例】
【0134】
本実施例に用いた三種類の菌株のうち、NG007株およびS133株は、前述した実施例1と同様にして単離した。
【実施例】
【0135】
また、D7株の単離方法は以下のとおりである。
【実施例】
【0136】
愛媛県伊予市郊外の腐った木から採取した12種のキノコを採取した。これらを約5mm角に切り、色素RBBR(レマゾ-ルブリリアントブルーR)(100ppm)を含む前述した麦芽エキス寒天培地に添加し、暗所にて25℃で2週間培養した。その麦芽エキス寒天培地上に生育してきた12種の菌をそれぞれ採取し、C重油1000ppmを上層した麦芽エキス寒天培地(具体的には、麦芽エキス寒天培地の上に、ジクロロメタンに溶解したC重油1000ppmを塗布した後、ジクロロメタンを蒸発させることにより、麦芽エキス寒天培地の上にC重油を載せたもの)にて25℃で7日間培養した。これらのうち、生育速度の速い菌を3種採取し、C重油15000ppmを上層した麦芽エキス寒天培地にて、更に25℃で7日間培養することによって、特に生育が活発であった担子菌であるD7株を単離した。
【実施例】
【0137】
得られたD7株を顕微鏡により観察したところ、表面は灰白色の半円形の傘を持ち、その表面は粗毛で覆われ、環紋をあらわす。その幅は2~7cm、厚さ2~5mmで、多数重生する。胞子は白色で、その大きさは長さ5~7μm×幅2~3μmである。これらはTrametes属菌の形態学的特徴であることから、D7株はTrametes属菌と同定した。
【実施例】
【0138】
上述した三種類の各菌株をそれぞれ、前述した麦芽エキス寒天培地にて、室温(25℃)で7日間培養し、その培養液をホモジナイザーで5000rpm、10分間ホモジナイズした菌糸懸濁液を用意した。このようにして得られた各菌株の菌糸懸濁液を、容量比にて、NG007株:S133株:D7株=1:1:1となるように調整し、上記の実験を行なった。
【実施例】
【0139】
A重油を用いたときの結果を図17、図20、および表10に示す。詳細には、A重油を構成する各成分の浄化率を図17A、図17Bに示すと共に、A重油の浄化率を図20に示した。また、表10には、各酵素活性の結果を示した。
【実施例】
【0140】
C重油を用いたときの結果を図18、図21、および表11に示す。詳細には、C重油を構成する各成分の浄化率を図18A、図18Bに示すと共に、C重油の浄化率を図21に示した。また、表11には、各酵素活性の結果を示した。
【実施例】
【0141】
アスファルトを用いたときの結果を図19、図22、および表12に示す。詳細には、アスファルトを構成する各成分の浄化率を図19A、図19Bに示すと共に、アスファルトの浄化率を図22に示した。また、表12には、各酵素活性の結果を示した。
【実施例】
【0142】
更に、A重油、C重油、アスファルトを用いたときの浄化率の結果を表9にまとめて示す。
【実施例】
【0143】
【表9】
JP2014088548A_000016t.gif
【実施例】
【0144】
【表10】
JP2014088548A_000017t.gif
【実施例】
【0145】
【表11】
JP2014088548A_000018t.gif
【実施例】
【0146】
【表12】
JP2014088548A_000019t.gif
【実施例】
【0147】
三種類の混合物(NG007株+S133株+D7株)を用いたときの結果を、前述した二種類の混合物((NG007株+S133株)を用いたときの結果と対比すると、三種類の混合物を用いることにより、石油汚染土壌の浄化率が向上する傾向が見られた。この傾向は。特にA重油およびC重油を用いたときに顕著に見られた。例えば、A重油の場合、図20(三種類の混合物)と図15(二種類の混合物)を対比すると、栄養源添加の有無やA重油の濃度に関わらず、培養後15日、30日、60日のいずれにおいても、三種類の混合物を用いたときの方が、A重油の浄化率が向上した。同様の傾向はC重油を用いたときにも見られ、図21(三種類の混合物)と図13(二種類の混合物)を対比すると、栄養源添加の有無やC重油の濃度に関わらず、培養後15日、30日、60日のいずれにおいても、三種類の混合物を用いたときの方が、C重油の浄化率が向上した。
【実施例】
【0148】
上記実施例1~実施例6の結果より、本発明の石油汚染土壌浄化剤は、従来法では短時間の高い分解処理が困難であった高濃度石油汚染土壌を十分に浄化できる技術として極めて有用であることが十分実証された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12A】
11
【図12B】
12
【図13】
13
【図14A】
14
【図14B】
15
【図14C】
16
【図15】
17
【図16A】
18
【図16B】
19
【図17A】
20
【図17B】
21
【図18A】
22
【図18B】
23
【図19A】
24
【図19B】
25
【図20】
26
【図21】
27
【図22】
28