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明細書 :有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤、その製造方法並びに有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5889554号 (P5889554)
公開番号 特開2013-013835 (P2013-013835A)
登録日 平成28年2月26日(2016.2.26)
発行日 平成28年3月22日(2016.3.22)
公開日 平成25年1月24日(2013.1.24)
発明の名称または考案の名称 有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤、その製造方法並びに有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着方法
国際特許分類 B01J  20/12        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
FI B01J 20/12 A
B01J 20/30
C02F 1/28 E
C02F 1/28 B
C09K 3/00 S
請求項の数または発明の数 13
全頁数 13
出願番号 特願2011-146561 (P2011-146561)
出願日 平成23年6月30日(2011.6.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2011年3月11日、社団法人 日本化学会 発行の「日本化学会第91春季年会 2011年 講演予稿集II」にて発表及び、 2011年3月16日、公益社団法人日本セラミックス協会発行の「2011年年会 Annual Meeting of The Ceramic Society of Japan,2011 講演予稿集」 にて発表
審査請求日 平成26年5月1日(2014.5.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】390020167
【氏名又は名称】奥多摩工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】三宅 通博
【氏名】亀島 欣一
【氏名】西本 俊介
【氏名】莎茹拉
【氏名】堀内 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】森井 隆信
参考文献・文献 特許第062275(JP,C2)
特開昭51-090992(JP,A)
特公昭39-015639(JP,B1)
調査した分野 B01J 20/00-20/34
C02F 1/28
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
塩化ナトリウムで置換した白土又は塩化カリウムで置換した白土を含む有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項2】
塩化ナトリウムで置換した白土を含む請求項1に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項3】
塩化カリウムで置換した白土を含む請求項2に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項4】
前記有害物質がπ結合を有する有機化合物である請求項1~3のいずれか1に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項5】
前記π結合を有する有機化合物が芳香族化合物である請求項4に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項6】
前記白土が酸性白土又は活性白土である請求項1~5のいずれか1に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項7】
前記ナトリウム又はカリウムの含有量が0.5~6.0重量%である請求項1~6のいずれか1に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤

【請求項8】
白土を、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含む水溶液でイオン交換することで
得られる塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムで置換した白土を含む有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤の製造方法。

【請求項9】
前記白土が酸性白土又は活性白土である請求項8に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤の製造方法。

【請求項10】
前記塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含む水溶液が、塩化ナトリウムを含む水
溶液である請求項8又は9に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤の製造方法。

【請求項11】
前記塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含む水溶液が、塩化カリウムを含む水溶
液である請求項8又は9に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤の製造方法。

【請求項12】
前記有害物質がπ結合を有する有機化合物である請求項8~11のいずれか1に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤の製造方法。

【請求項13】
請求項1~7のいずれか1に記載の有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着剤を、有害金属を含む溶液及び/又はπ結合を有する有機化合物に接触させることにより、該溶液中の有害金属及び/又はπ結合を有する有機化合物を除去することを特徴とする有害金属又はπ結合を有する有機化合物吸着方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属カチオンで置換した白土を含む有害物質処理剤、該処理剤の製造方法及び該処理剤を使用した有害物質処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭ごみの大半は公営の焼却場で処分されているが、焼却処分の際には微細な飛散灰、炉底に堆積する焼却炉灰に加え、種々の有害物質{塩化水素,ダイオキシン類,硫黄酸化物(SOx),重金属微粒子等}が発生する。
有害物質の大気中への放出を抑制するために、通常の焼却炉では、塩化水素、SOxの固定用に消石灰粉体を、ダイオキシン類の固定用に活性炭粉体を煙道に吹き込み、飛散灰と有害物質を固定化した粉体(以後、飛灰と称す)をバグフィルターで回収している。回収した飛灰中には低融点の鉛のような重金属が含まれるので、飛灰の空気中への飛散を抑えるために水が加えられ、さらに、重金属の溶出を抑えるためにキレート剤が添加されている。
さらに、化学製品工場の跡地の土壌では、法令基準以上の重金属、塩化水素,ダイオキシン類,硫黄酸化物(SOx)が含まれていることが度々報告されている。さらに、該土壌から溶出した水溶液が河川に流れ込むことが問題となっている。
【0003】
重金属を除去する材料について、以下が報告されている。
特許文献1は、「モンモリナイト族粘土である酸性白土がダイオキシンやハイドロカーボンと鉛を除去できること」を開示している。
しかし、該文献は、「アルカリ金属で置換した白土」について開示又は示唆がない。
【0004】
特許文献2は、「膨潤性無機層状化合物としては、特定の化合物に限定されないが、例えば、Na-モンモリロナイト、Ca-モンモリロナイト、酸性白土、合成スメクタイト、Na-ヘクトライト、Li-ヘクトライト、Na-テニオライト、Li-テニオライトおよび合成雲母からなる群のうちの少なくとも1つが挙げられる」を開示している。
しかし、該文献は、「アルカリ金属で置換した白土」について開示又は示唆がない。
【0005】
特許文献3は、「固体酸には種々あるが、まず酸性白土、フラーズ・アース、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリン、クラリット、フロリジンなどの天然の粘土鉱物で比表面積が150m2 /g以上、500m2 /g以下になるように加工しているものが挙げられる。」を開示している。
しかし、該文献は、「アルカリ金属で置換した白土」について開示又は示唆がない。
【0006】
現在、ごみ焼却時に発生する有害物質の除去材料として、消石灰(塩化水素除去用)、活性炭(ダイオキシン類除去用)、キレート剤(重金属固定用)が使われている。しかし、活性炭、キレート剤が高価であるので、廉価な代替え品が望まれている。
また、従来から陽イオン交換体として知られているモンモリロナイトは高価であるとともに、重金属を除去できても、モンモリロナイトの構造からダイオキシンを除去できないので、大量の活性炭が必要であり、高コストとなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-263587
【特許文献2】特開平06-277451
【特許文献3】特開平08-010739
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決すべく、製造容易かつ低コストの有害物質、特に重金属、芳香族化合物の除去能を有する材料を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属カチオンで置換した白土(「金属カチオン置換白土」と称する場合がある)、特にナトリウムイオンで置換した白土(「ナトリウムイオン置換白土」と称する場合がある)、リチウムイオンで置換した白土(「リチウムイオン置換白土」と称する場合がある)及びカリウムイオンで置換した白土(「カリウムイオン置換白土」と称する場合がある)が優れた金属、芳香族化合物の吸着能力を有することを見出して、本発明を完成した。
【0010】
つまり、本発明は、以下の通りである。
1.金属カチオンで置換した白土を含む有害物質処理剤。
2.前記金属カチオンがアルカリ金属又はアルカリ土類金属である前項1に記載の有害物質処理剤。
3.前記アルカリ金属がナトリウムである前項2に記載の有害物質処理剤。
4.前記アルカリ金属がリチウムである前項2に記載の有害物質処理剤。
5.前記アルカリ金属がカリウムである前項2に記載の有害物質処理剤。
6.前記白土が酸性白土又は活性白土である前項1~5のいずれか1に記載の有害物質処理剤。
7.前記金属カチオンの含有量が0.5~6.0重量%である前項1~6のいずれか1に記載の有害物質処理剤。
8.白土を、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含む水溶液でイオン交換することで得られるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属で置換した白土を含む有害物質処理剤の製造方法。
9.前記白土が酸性白土又は活性白土である前項8に記載の処理剤の製造方法。
10.前記アルカリ金属塩が塩化ナトリウムである前項8又は9に記載の処理剤の製造方法。
11.前記アルカリ金属塩が塩化リチウムである前項8又は9に記載の処理剤の製造方法。
12.前記アルカリ金属塩が塩化カリウムである前項8又は9に記載の処理剤の製造方法。
13.前項1~7のいずれか1に記載の有害物質処理剤を、金属を含む溶液に接触させることにより、該溶液中の金属を除去することを特徴とする有害物質処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一部であるナトリウムイオン置換白土、リチウムイオン置換白土又はカリウムイオン置換白土を含む有害物質処理剤の重金属除去能は、酸性白土の重金属除去能と比較して、優れていた。
さらに、該処理剤の芳香族化合物除去能は、酸性白土の芳香族化合物除去能と比較して、優れていた。
ごみ処理用浄化材料として酸性白土の代わりに、本発明の金属カチオン置換白土を含む有害物質処理剤を使えば、重金属、芳香族化合物の除去率を向上させることができ、ごみ処理にかかる費用を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】酸性白土{AC:(a)}、リチウムイオン置換白土{Li-AC(b)}、ナトリウムイオン置換白土{Na-AC(c)}、カリウムイオン置換白土{K-AC(d)}及びナトリウム型モンモリロナイト{Na-MMT:(e)}のXRDパターン。●:モンモリロナイト、△:α-石英、▲:αクリストバライト(実施例1)
【図2】酸性白土(AC;●)とナトリウムイオン置換白土(Na-AC;■)の(a)カドミウムイオン(Cd2+)及び(b)鉛イオン(Pb2+)除去挙動の経時変化(実施例2)。
【図3】酸性白土(AC;●)とナトリウムイオン置換白土(Na-AC;■)の(a)Ni2+、(b)Zn2+、(c)Cd2+ 及び(d)Pb2+に対する吸着等温線(実施例2)。
【図4】酸性白土(AC;● )とナトリウムイオン置換白土(Na-AC;■)の(a)Ni2+、(b)Zn2+、(c)Cd2+ 及び(d)Pb2+に対する低濃度域の吸着等温線(実施例2)。
【図5】酸性白土(AC;●)、リチウムイオン置換白土(Li-AC;▼)、ナトリウムイオン置換白土(Na-AC;■)及びカリウムイオン置換白土(K-AC;▲)のPb2+に対する(a)測定濃度域全体と(b)低濃度域の吸着等温線(実施例3)。
【図6】酸性白土(AC)、リチウムイオン置換白土(Li-AC)、ナトリウムイオン置換白土(Na-AC)及びカリウムイオン置換白土(K-AC)、ナトリウム型モンモリロナイト(Na-MMT)のベンゼンに対する吸着等温線(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の金属カチオンで置換した白土を含む有害物質処理剤)
本発明の金属カチオンで置換した白土を含む有害物質処理剤(以後、「本発明の有害物質処理剤」と称する場合がある)は、選択的に、金属(特に重金属)、芳香族化合物を吸着する性質を有する。
なお、本発明の有害物質は、金属(特に重金属)、π結合を有する有機化合物{特に、芳香族化合物(より詳しくは、ダイオキシン類)}等の環境及び/又は生体に悪影響を及ぼす物質を意味する。

【0014】
(本発明で使用する白土)
本発明で使用する白土は、酸性白土又は活性白土のいずれでも良い。
本発明で使用する酸性白土の組成は、通常のモンモリロナイト族粘土鉱物の組成とは異なり、SiO2含有量が比較的多く、Al2O3含有量が比較的少ない。例えば、本発明で使用する酸性白土は、山形県で産出される酸性白土を使用することが好ましい。
活性白土は、酸性白土を硫酸等で処理したもので、油脂精製(脱色)剤として工業的に広く利用されている。

【0015】
(金属カチオン)
本発明の金属カチオンは、アルカリ金属カチオン及びマグネシウムを含むアルカリ土類金属カチオンに属するいずれかのイオンを使用することができる。好ましい金属カチオンは、以下の通りである。特に好ましい金属カチオンは、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオンである。
(1)カリウムイオン、(2)ルビジウムイオン、(3)カルシウムイオン、(4)マグネシウムイオン、(5)ナトリウムイオン、(6)リチウムイオン。
なお、上記の金属カチオンを混合して使用することもできる。
すなわち、本発明の金属カチオンで置換した白土を含む有害物質処理剤は、上記記載のイオン又はそれらの混合で置換したものが好ましい。

【0016】
(金属カチオンで置換した白土の製造方法)
酸性白土は、SiO4四面体層-AlO6八面体層-SiO4四面体層から成る三層構造を基本構造とし、このような三層構造が数枚積層した微小な単結晶の集合体である。また、このような三層構造の積層層間に、Ca、K、Na等のカチオンとそれに配位している水分子が存在している。
本発明の金属カチオン置換白土の製造方法は、上記の白土の細孔内のカチオンを目的の金属カチオン、アルカリ金属カチオン及び/又はアルカリ土類金属カチオンに置換することができれば特に限定されない。
例えば、粉末状にした白土を、金属カチオン、アルカリ金属カチオン及び/又はアルカリ土類金属カチオンを含んだ水溶液中に入れ、好ましくは攪拌することにより細孔内のイオンと水溶液中の金属カチオンとのイオン交換を促進させ、その後該白土を水洗、乾燥することにより金属カチオン置換白土を製造することができる。

【0017】
(ナトリウムイオン置換白土の製造方法)
本発明のナトリウムイオン置換白土の製造方法は、例えば以下の方法が挙げられるが、特に限定されない。
酸性白土1.0 gを0.5 M (mol・dm-3)の塩化ナトリウム水溶液100cm3中で8時間攪拌し、固液分離後、洗浄、乾燥により得る。

【0018】
(ナトリウムイオン置換白土の組成)
本発明のナトリウムイオン置換白土の金属カチオンの含有量(重量%)は、0.5~6.0、好ましくは1.0~5.5、より好ましくは2.0~5.0である。
また、本発明のナトリウムイオン置換白土の組成は、Na型モンモリロナイトの組成とは明らかに異なる。例えば、ナトリウムイオン置換白土の組成中のCaO濃度(重量%)は、0.05~0.50、好ましくは0.10~0.40、より好ましくは0.15~0.30である。一方、Na型モンモリロナイトの組成中のCaO濃度(重量%)は、一般には、0.51以上である。
また、本発明のナトリウムイオン置換白土の組成中のSiO2濃度(重量%)は、60.0~90.0、好ましくは63.0~80.0、より好ましくは65.0~75.0である。一方、Na型モンモリロナイトの組成中のSiO2濃度(重量%)は、一般には、59.0以下である。
加えて、本発明のナトリウムイオン置換白土の比表面積は、Na型モンモリロナイトの比表面積とは明らかに異なる。ナトリウムイオン置換白土の比表面積(m2・g-1)は、50.0~120.0、好ましくは60.0~110.0、より好ましくは70.0~100.0である。一方、Na型モンモリロナイトの比表面積(m2・g-1)は、10.0~30.0である。

【0019】
(本発明で処理する媒体)
本発明の有害物質処理剤を用いて処理する媒体は、処理する有害物質によって異なる。
重金属を処理する場合には、媒体は好ましくは、液体である。例えば、水溶性排出物、特に一般あるいは産業廃棄物に由来する水溶性排出物を対象とするが、特に限定されない。
より詳しくは、廃棄物、特に家庭の塵埃、産業廃棄物又は病院廃棄物の焼却から生じる燃焼飛灰の洗浄からの水溶液、土壌から流出した水溶液、又は、土壌の洗浄からの水溶液で形成される水溶性排出物が媒体である。また、ごみ焼却飛灰の空気中への飛散を抑えるため、該飛灰に適当量の水を加えるので、該飛灰から溶出する重金属を水溶性排出物とすることができる。
芳香族化合物を処理する場合には、媒体は好ましくは、気体である。例えば、有機物質を含むゴミから排出するガスを対象とするが、特に限定されない。
より詳しくは、廃棄物、特に家庭の塵埃、産業廃棄物又は病院廃棄物の焼却から生じるガスが媒体である。

【0020】
(処理する媒体に含まれているアンモニアおよび金属)
処理する媒体に含まれているアンモニアおよび金属、特に重金属としては、カドミウム、クロム、コバルト、銅、スズ、マンガン、水銀、ニッケル、鉛、タリウム、銀、亜鉛、鉄、セシウムからの金属から1以上選ばれるものを例示することができる。
特に本発明の処理剤で処理する重金属としては、ニッケル、亜鉛、カドミウム及び鉛である。
なお、除去しようとする重金属は、通常、イオンの形態、特にそのそれぞれの陽イオンの形態(例えば、Cr3+、Cu2+、Ni2+、Fe2+、Fe3+、Cd2+、Hg2+、Pb2+、Zn2+又はCs+)をなす。

【0021】
(処理する媒体に含まれているπ結合を有する有機化合物)
処理する媒体、特にガス状の媒体に含まれているπ結合を有する有機化合物、特に芳香族化合物としては、トルエン、トリフェニルメタン、ベンゼン、フェノール、ナフタレン等を例示することができる。また、いわゆるダイオキシン類であるポリ塩化ジベンゾパラジオキシン (PCDD)特に2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン(TCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF)特に2,3,7,8-テトラクロロジベンゾフラン(TCDF)、ポリ塩化ビフェニルも例示することができる。
本発明の有害物質処理剤では、下記実施例4から明らかなように、Na-MMTでは極僅かしか吸着することができなかったベンゼンを吸着除去できた。さらに、該処理剤の吸着除去能力は、酸性白土(AC)と比較して、高い。

【0022】
(本発明の有害物質処理剤の使用方法)
本発明の有害物質処理剤の使用方法は、以下を例示することができるが、特に限定されない。
重金属を除去する場合
(1)金属カチオンで置換した白土の粉末を、除去対象の金属を含む溶液に添加、攪拌することにより、該金属を吸着させる。さらに、使用済み粉末を該溶液から固液分離することにより、該溶液から該金属を除去する。
(2)金属カチオンで置換した白土の粉末を、カラムに充填する。さらに、除去対象の金属を含む溶液を該カラムに通して、該金属を該溶液から分離する。
(3)金属カチオンで置換した白土の粉末と除去対象の金属を含む固体とを水中で混合し、該固体から溶出する該金属を該白土で吸着除去する。

【0023】
芳香族化合物を除去する場合
(1)金属カチオンで置換した白土の粉末を、除去対象の芳香族化合物を含むガスに接触させることにより、該芳香族化合物を吸着させる。さらに、使用済み粉末を該ガスから分離することにより、該ガスから該芳香族化合物を除去する。
(2)金属カチオンで置換した白土の粉末を、カラムに充填する。さらに、除去対象の芳香族化合物を含むガスを該カラムに通して、該芳香族化合物を該ガスから分離する。

【0024】
加えて、使用済の有害物質処理剤を高濃度のNaClで洗浄することにより、ナトリウムイオン置換白土に再生でき、再利用することができる。
また、本発明の有害物質処理剤の使用時における条件として、常温又は常圧条件下で行うことができる。さらに、本発明の有害物質処理剤は、有害な物質を含んでいないので、特別な施設内で使用する必要がない。

【0025】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0026】
(アルカリ金属イオン置換白土の特性評価)
リチウムイオン置換白土、ナトリウムイオン置換白土、カリウムイオン置換白土の構造及び組成を、酸性白土及びNa型モンモリナイトと比較して、評価した。詳細を以下に示す。
【実施例1】
【0027】
(使用した酸性白土)
酸性白土(AC)は、山形県鶴岡市産の水澤化学工業(株)社製品を使用した。より詳しくは、ACは、解砕後、110 ℃で乾燥することで調製した。
【実施例1】
【0028】
(使用したNa型モンモリナイト)
使用したNa型モンモリナイト(Na-MMT)は、クリミネ工業(株)社製品を使用した。より詳しくは、Na-MMTは、解砕後、110 ℃で乾燥することで調製した。
【実施例1】
【0029】
(使用したアルカリ金属イオン置換白土の製造)
使用したリチウムイオン置換白土(Li-AC)は、段落「0027」のAC1.0 gを0.5 M (mol・dm-3)のLiCl水溶液100cm3中で8時間攪拌し、固液分離、脱イオン水で洗浄後,110 ℃で乾燥することで調製した。
使用したナトリウムイオン置換白土(Na-AC)は、段落「0027」のAC1.0 gを0.5 MのNaCl水溶液100cm3中で8時間攪拌し、固液分離、脱イオン水で洗浄後,110 ℃で乾燥することで調製した。
使用したカリウムイオン置換白土(K-AC)は、段落「0027」のAC1.0 gを0.5 MのKCl水溶液100cm3中で8時間攪拌し、固液分離、脱イオン水で洗浄後,110 ℃で乾燥することで調製した。
【実施例1】
【0030】
(構造及び組成の評価)
AC 、Li-AC、Na-AC、K-AC及びNa-MMTに関し、化学組成は蛍光X線分析法(XRF)及び熱分析法(TG)により、比表面積はBET法により、結晶相は粉末X線回折法(XRD;CuKα線使用)により、評価した。
なお、化学組成の測定で使用したXRF及びTGの条件、並びに比表面積の測定で使用したBET法の条件は、以下の通りである。
1.XRF ZSX Primus(リガク)、線源;RhKα 、電圧;50 kV、電流;30 mA
2.TG Thermo Plus (リガク)、測定温度範囲;室温~1000℃、昇温速度;1℃/min、標準試料;α-Al2O3
3.BET法 BELSORP 18SP (日本ベル)、前処理;200℃ 12 h、測定温度;77 K、吸着種;窒素、窒素吸着等温線から算出
【実施例1】
【0031】
AC(a)、Li-AC(b)、Na-AC(c)、K-AC(d)及びNa-MMT(e)のXRDパターンを図1に示す。AC は、脱色性能を担うモンモリロナイト系化合物を主成分とし、α-クリストバライト及びα-石英の混合物と同定した。
ACに関し、001ピークは、Na-MMTの001ピークと比較すると、強度が弱く、ブロードであり、さらに僅かに低角度側にシフトしている。よって、ACの底面間隔は約d=1.53nmと算出した。
Li-ACに関し、001ピークは、Na-MMTの001ピークと比較すると、強度が非常に弱く、ブロードになり、高角側にシフトしている。よって、Li-ACの底面間隔は約d=1.07nmと算出した。このLi-ACの底面ピーク以外には、ACと比較して変化がなかった。
Na-AC に関し、001ピークは、Na-MMTの001ピークと比較すると、強度が非常に弱く、ブロードになり、高角側にシフトしている。よって、Na-ACの底面間隔は約d=1.01nmと算出した。このNa-ACの底面ピーク以外には、ACと比較して変化がなかった。さらに、水に入れたNa-ACは膨潤性を示した。この膨潤性の発現は,NaCl処理により、Na+がモンモリロナイト相の層間に挿入されたことを示唆する。
K-ACに関し、001ピークは、Na-MMTの001ピークと比較すると、強度が非常に弱く、ブロードになり、高角側にシフトしている。よって、K-ACの底面間隔は約d=1.07nmと算出した。このK-ACの底面ピーク以外には、ACと比較して変化がなかった。
【実施例1】
【0032】
XRF法及びTG法によるAC 、Na-AC、K-AC 及びNa-MMTの組成分析結果を表1に示す。
Na-AC の組成を、ACと比較すると、Na2O量が顕著に増加し、CaO量が顕著に減少し、他の成分についてはMgOが僅かに減っている程度で減量は殆ど見られなかった。この結果は、NaCl処理により、主に層間のCa2+がNa+にイオン交換され、Na-MMTのように層間イオン種がNa+になったことを示す。Na-ACの組成にClが検出されるのは、NaCl処理によるためと考えられる。
K-ACの組成を、ACと比較すると、K2O量が顕著に増加し、CaO量が顕著に減少し、他の成分についてはMgOが僅かに減っている程度で減量は殆ど見られなかった。この結果は、KCl処理により、主に層間のCa2+がK+にイオン交換され、層間イオン種がK+になったことを示す。
1000 ℃までの減量の序列はAC>Na-MMT>Na-AC≒K-ACとなり,底面間隔値から予想される層間水量の序列に符合した。
【実施例1】
【0033】
【表1】
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【実施例1】
【0034】
BET法により算出したAC、 Li-AC、Na-AC、K-AC及びNa-MMTの比表面積は、それぞれ、80、91、84、97及び15 m2・ g-1となった。
【実施例2】
【0035】
(ナトリウムイオン置換白土の金属除去特性の評価)
段落「0029」で製造したNa-AC の金属除去速度及び金属除去能を評価した。なお、ごみ焼却飛灰の組成分析結果を参考にして、除去対象とする重金属をNi, Zn, Cd及びPbとした。測定条件は、室温及びバッチ法で行った。
【実施例2】
【0036】
(金属除去速度の測定)
約10~100 ppmの塩化物水溶液(MCl2:M= Cd, Ni, Pb, Zn)100cm3に試料(AC及びNa-AC)0.5 gを加え、所定時間(5分~24時間)振とう器で攪拌した。
攪拌後遠心分離器により固液分離を行い、ろ液中の重金属イオン及びNa-ACから脱離するイオンを原子吸光分析法(AA)で分析し、下記「化1」に記載の式1によりQe(吸着量;mmol・g-1)を算出した。
なお、下記式1のCi及びCeは、それぞれ、初期濃度(mmol・dm-3)及び平衡濃度(mmol・dm-3) を意味する。また、V はMCl2水溶液の体積(dm3)、Wは試料の質量(g)を意味する。
【実施例2】
【0037】
【化1】
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【実施例2】
【0038】
(金属除去量の測定)
約10~1500 ppmの塩化物水溶液(MCl2:M= Cd, Ni, Pb, Zn)100cm3に試料0.5gを加え、1時間振とう器で攪拌した。
攪拌後遠心分離器により固液分離を行い、ろ液中の重金属イオン及びNa-ACから脱離するイオンを原子吸光分析法(AA)で分析し、段落「0036」と同様にQe(吸着量;mmol・g-1)を算出した。
【実施例2】
【0039】
(金属除去速度の測定結果)
11 ppm (約0.1 mmol・dm-3)のCdCl2水溶液及び54ppm (0.26 mmol・dm-3)のPbCl2水溶液に対するAC及びNa-ACの金属イオン除去挙動(各試料のイオン吸着量)の経時変化を図2に示す。すべての試料が、Cd2+及びPb2+を短時間に取り込み、定常状態に達した。
Ni2+, Zn2+に対しても短時間で反応が進行し、定常状態に達した(図なし)。
以上により、吸着等温線測定のための試料と溶液との接触時間を1時間と決定した。これにより、金属除去量の測定における試料と溶液との接触時間を1時間とした。
【実施例2】
【0040】
(金属除去量の測定結果)
Ni2+、Zn2+、Cd2+及びPb2+に対するAC、Na-ACの吸着等温線を図3に示す。いずれの金属イオンに対しても選択的に取り込んだ。Na-ACは、いずれの高濃度の金属イオンに対してもACより強い選択性を示した。
Ni2+、Zn2+、Cd2+及びPb2+に対するAC、Na-ACの低濃度域での吸着等温線を図4に示す。Na-ACは、いずれの低濃度の金属イオンに対しても選択的に取り込んだ。
以上により、Na-ACは、低濃度域から高濃度域にわたり金属、特に重金属を選択的に吸着除去できる。
【実施例3】
【0041】
(リチウムイオン置換白土及びカリウム置換白土の金属除去特性の評価)
段落「0029」で製造したLi-AC及びK-ACの金属除去能を評価した。除去対象とする重金属を最も重要なPbとした。測定条件は、室温及びバッチ法で行った。
【実施例3】
【0042】
(金属除去量の測定)
約10~1500ppmのPbCl2水溶液100cm3に試料0.5gを加え、1 時間振とう器で攪拌した。攪拌後遠心分離器により固液分離を行い、ろ液中の鉛イオン及びLi-AC、K-ACから脱離するイオンを原子吸光分析法(AA)で分析し、段落「0036」と同様にQe(吸着量;mmol・g-1)を算出した。
【実施例3】
【0043】
(金属除去量の測定結果)
Pb2+に対するAC、Li-AC、Na-AC、K-ACの吸着等温線を図5{(a);測定濃度域全体、(b);低濃度域}に示す。いずれの金属イオン置換白土もPb2+を選択的に取り込んだ。白土が天然資源であるため、ある程度のバラツキは見られるが、選択性の序列は、基本的にはNa-AC > K-AC > Li-AC≒ACとなり、Na-ACは、低濃度域から高濃度域にわたりPb2+に対して最も強い選択性を示したのに対し、Li-ACの選択性は、ACと同程度であった。
以上により、Na-ACは、Pb2+を最も選択的に吸着除去できる。
【実施例4】
【0044】
(金属イオン置換白土の芳香族化合物除去特性の評価)
段落「0029」で製造したLi-AC、Na-AC 及びK-ACの芳香族化合物除去能を、AC及びNa-MMTの芳香族化合物除去能と比較・評価した。なお、π結合を有する化合物である芳香族化合物のベンゼンを除去対象とした。
【実施例4】
【0045】
(芳香族化合物除去量の測定)
各試料のベンゼン吸着量を以下の条件下でガス吸着測定器を用いて測定した。
<測定条件>
ガス吸着測定器:ベルソープ18(日本ベル製)
試料量(AC 、Li-AC、Na-AC、K-AC、Na-MMT):0.1 g
前処理温度:200℃(真空下)
前処理時間:12h以上
吸着ガス:高純度ベンゼン
吸着温度:25℃
空気恒温槽温度:30℃
吸着範囲:相対圧で0.3~0.9
【実施例4】
【0046】
(芳香族化合物除去量の測定結果)
AC、Li-AC、Na-AC、K-ACのベンゼンに対する吸着等温線を図6に示す。総ての試料でベンゼン吸着が見られたが、Na-MMTではベンゼン吸着が極僅かであった。中でもK-ACが最も多くのベンゼンを吸着し、その吸着量は約40 mL(STP)/gであり、ACの吸着量の約4倍であった。特に、K+及びNa+で置換することにより、低圧力域(低濃度域)での吸着性能が向上した。これら試料のベンゼン吸着性能の序列は、K-AC > Na-AC > Li-AC≧ACとなった。
以上により、本発明の有害物質処理剤は、ACと比較して優れた芳香族化合物除去能を有する。
【実施例4】
【0047】
(総論)
上記実施例2~4により、ACをアルカリ金属型、特にNa型やK型に変換すると、重金属に対する取り込み量が増加し、さらにπ結合を有する化合物である芳香族化合物に対する吸着量も増加する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のナトリウムイオン置換白土やカリウムイオン置換白土を含む有害物質処理剤を使えば、重金属及び芳香族化合物の除去率が向上するので、ごみ処理にかかる費用を軽減できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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