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明細書 :抗ヒスチジンタグ抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5849275号 (P5849275)
公開番号 特開2013-017423 (P2013-017423A)
登録日 平成27年12月11日(2015.12.11)
発行日 平成28年1月27日(2016.1.27)
公開日 平成25年1月31日(2013.1.31)
発明の名称または考案の名称 抗ヒスチジンタグ抗体
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  16/44        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C07K   1/22        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 16/44
G01N 33/53 D
C07K 1/22
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2011-153275 (P2011-153275)
出願日 平成23年7月11日(2011.7.11)
審査請求日 平成26年6月20日(2014.6.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】古元 礼子
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】戸来 幸男
参考文献・文献 特表平11-510785(JP,A)
Protein Eng.,1995年,vol.8, no.7,pp.733-735
Nucleic Acids Res.,1995年,vol.23, no.16,pp.3347-3348
Anal. Biochem.,2006年,vol.359, no.2,pp.216-223
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
UniProt/GeneSeq
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備えたことを特徴とする抗ヒスチジンタグ抗体。
【請求項2】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を備えたことを特徴とする抗ヒスチジンタグ抗体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の抗ヒスチジンタグ抗体をコードすることを特徴とする抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子。
【請求項4】
配列番号1に示される塩基配列を有する重鎖可変領域遺伝子、及び配列番号3に示される塩基配列を有する軽鎖可変領域遺伝子を備えたことを特徴とする請求項記載の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子。
【請求項5】
配列番号5に示される塩基配列を有する重鎖遺伝子、及び配列番号7に示される塩基配列を有する軽鎖遺伝子を備えたことを特徴とする請求項記載の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子。
【請求項6】
請求項1又は2記載の抗ヒスチジンタグ抗体を用いることを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の抗ヒスチジンタグ抗体を含むことを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出キット。
【請求項8】
請求項1又は2記載の抗ヒスチジンタグ抗体を用いることを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の抗ヒスチジンタグ抗体を含むことを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ヒスチジンタグ抗体や、抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子や、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出方法や、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出キットや、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製方法や、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製キットに関する。
【背景技術】
【0002】
特定のタンパク質の目印とするために、遺伝子工学的に融合させたペプチド又はタンパク質はタンパク質タグと呼ばれ、単にタグと呼ばれることも多い。タグは、その性質に応じてタンパク質の精製、固定化、可視化、他のタンパク質との相互作用の検出等に利用されている。またタグは、単独で発現させるレポーター遺伝子等とは異なり、融合させるタンパク質の生理的・物理化学的性質に影響を与えることを避けるため、タンパク質の末端に付加させることが一般的であり、また低分子量のものが用いられることが知られている。
【0003】
蛍光を利用する緑色蛍光タンパク質(GFP)タグは、タンパク質の細胞内局在を検出する場合に用いられることが知られており、特に、一分子細胞生物学・バイオイメージングでよく用いられていることが知られている。
【0004】
一方、他の分子との特異的親和性(アフィニティー)を利用するアフィニティータグは、特定のタンパク質又はそのタンパク質と相互作用する他のタンパク質を回収する場合や、タンパク質を固定化する場合に広く用いられている。アフィニティータグには、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」が知られている。すなわち、特定の抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグとして用い、かかるタグに対する抗体に結合させることにより利用することができる。エピトープタグには、ヒスチジンタグ、HAタグ(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)、mycタグ、FLAGタグ等が知られている。また、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)及びマルトース結合タンパク質(MBP)は、それぞれグルタチオン及びマントースを特異的に結合する性質を利用したアフィニティータグとして知られている。
【0005】
ヒスチジン残基が連続したペプチドからなる上記ヒスチジンタグは、アフィニティータグとして最もよく利用されている(例えば、特許文献1参照)。ヒスチジンタグがニッケルなどの金属イオンと特異的に結合する性質を利用して、大腸菌、酵母、動物細胞等で発現させたヒスチジンタグ融合ポリペプチドを、ニッケル-キレートクロマトグラフィーカラムを用いて精製することが広く行われている。
【0006】
このようなニッケル-キレートクロマトグラフィーカラムによる精製を行う前に、通常ヒスチジンタグ融合ポリペプチドの発現を確認するステップや、その発現量を定量するステップは、精製を行うかどうかの判断や精製後のタンパク質量を概算するために必要とされている。かかるステップは、抗ヒスチジンタグ抗体を用いたウェスタンブロッティング、ELISA等の方法により一般的に行われている。抗ヒスチジン抗体の製造法として、ヒスチジンタグを融合させたポリペプチドを抗原として用い、マウス等に免疫することにより作製する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。かかる方法により作製された抗ヒスチジンモノクローナル抗体は既に市販されている。
【0007】
他方、抗原による抗体産生の誘導の程度はその抗原の物理化学的性質に依存することが知られている。例えば、不溶性の抗原は抗原提示細胞に取り込まれにくいため、抗体産生の誘導が起こりにくいとされている。しかしながら、抗原の物理化学的性質は、単純に予測できるものではなく、類似の抗原であっても抗体産生の誘導活性はまったく異なることも知られている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開昭63-251095号公報
【特許文献2】特表平11-510785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、検出感度及び特異性の高い抗ヒスチジンタグ抗体や、かかる抗ヒスチジンタグ抗体をコードする遺伝子や、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドを高感度で検出できる検出方法や検出キットや、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドを高効率で精製できる精製方法や精製キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、大腸菌チオレドキシン(Thioredoxin)(以下、「チオレドキシン」と記載する)に対する抗体を作製する過程で、たまたまチオレドキシンに融合させたヒスチジンタグに結合する抗体を得ることができ、かかる抗体を詳細に解析したところ、市販の抗ヒスチジンタグ抗体よりもヒスチジンタグの検出感度及び特異性が高いことが見いだされた。また、かかる抗体を用いたヒスチジン融合ポリペプチドの精製効率は、市販の抗ヒスチジンタグ抗体よりも高いことが確かめられた。本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち本発明は、(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備えたことを特徴とする抗ヒスチジンタグ抗体や、(2)配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を備えたことを特徴とする抗ヒスチジンタグ抗体に関する。

【0012】
また本発明は、()上記(1)又は(2)記載の抗ヒスチジンタグ抗体をコードすることを特徴とする抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子や、()配列番号1に示される塩基配列を有する重鎖可変領域遺伝子、及び配列番号3に示される塩基配列を有する軽鎖可変領域遺伝子を備えたことを特徴とする上記()記載の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子や、()配列番号5に示される塩基配列を有する重鎖遺伝子、及び配列番号7に示される塩基配列を有する軽鎖遺伝子を備えたことを特徴とする上記()記載の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子に関する。

【0013】
また本発明は、()上記(1)又は(2)記載の抗ヒスチジンタグ抗体を用いることを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出方法に関する。

【0014】
また本発明は、()上記(1)又は(2)記載の抗ヒスチジンタグ抗体を含むことを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出キットに関する。

【0015】
また本発明は、()上記(1)又は(2)記載の抗ヒスチジンタグ抗体を用いることを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製方法に関する。

【0016】
さらに本発明は、()上記又は(2)記載の抗ヒスチジンタグ抗体を含むことを特徴とするヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製キットに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、検出感度及び特異性の高い抗ヒスチジンタグ抗体を提供することができる。また本発明によると、従来の抗ヒスチジンタグ抗体よりも少なくとも5~20倍の検出感度でヒスチジンタグ融合ポリペプチドを検出できることから、従来の抗ヒスチジンタグ抗体では検出できなかった未精製や粗精製の抽出液に含まれるヒスチジンタグ融合ポリペプチドを、精製することなく検出することができる。さらに、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体は、従来の抗ヒスチジンタグ抗体よりも高効率でヒスチジンタグ融合ポリペプチドを精製できることから、費用対効果及び時間対効果の面で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ウェスタンブロッティング法により、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体がヒスチジンタグ融合ポリペプチドを検出できることを示す図である。
【図2】免疫沈降法により、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体がヒスチジンタグ融合ポリペプチドを精製できることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の抗ヒスチジンタグ抗体としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備えた抗体や、配列番号2に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備え、ヒスチジンタグに特異的に結合する抗体や、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を備えた抗体や、配列番号6に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖を備え、ヒスチジンタグに特異的に結合する抗体であれば特に制限されないが、抗ヒスチジンタグモノクローナル抗体を好適に例示することができる。また本発明において、ヒスチジンタグとは、6~18個、具体的には6個の連続したヒスチジン残基からなるポリペプチドのことをいう。

【0020】
上記配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備えた抗体や、上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備え、ヒスチジンタグに特異的に結合する抗体としては、同じ生物種由来の免疫グロブリン定常領域からなる抗体であってもよく、また、異なる生物種由来の免疫グロブリン定常領域からなるキメラ抗体であってもよい。これらのモノクローナル抗体のアイソタイプは特に制限されない。

【0021】
他方、上記配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を備えた抗体は、ハイブリドーマHF16-1が培養上清中に産生するアイソタイプIgG1κのモノクローナル抗体であり、このモノクローナル抗体は、ハイブリドーマHF16-1の培養上清をアフィニティー精製することにより、精製物として調製することもできる。

【0022】
上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号4に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を備え、ヒスチジンタグに特異的に結合する抗体や、上記配列番号6に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖を備え、ヒスチジンタグに特異的に結合する抗体における90%以上の配列同一性のアミノ酸配列としては、例えば、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性のアミノ酸配列を好適に挙げることができ、配列同一性は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を用いて算出することができる。

【0023】
本発明の抗ヒスチジンタグ抗体の種類としては、モノクローナル抗体の他、モノクローナル抗体をペプシンで消化して得られるF(ab′)抗体フラグメントや、F(ab′)抗体フラグメントを還元して得られるFab′抗体フラグメントや、モノクローナル抗体をパパインで消化して得られるFab等の抗体フラグメントや、重鎖可変領域(配列番号2)と軽鎖可変領域(配列番号4)とを、アミノ酸架橋によって連結させたscFv(1本鎖抗体)等を挙げることができる。

【0024】
本発明の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子としては、上記本発明の抗ヒスチジンタグ抗体をコードする抗体遺伝子であれば特に制限されず、例えば、配列番号1に示される塩基配列を有する重鎖可変領域遺伝子、及び配列番号3に示される塩基配列を有する軽鎖可変領域遺伝子を備えた抗体遺伝子を挙げることができ、特に配列番号5に示される塩基配列を有する重鎖遺伝子、及び配列番号7に示される塩基配列を有する軽鎖遺伝子を備えた抗体遺伝子を具体的に例示することができる。

【0025】
本発明の抗ヒスチジンタグ抗体は、遺伝子組換え技術により、上記抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子を発現させることにより、組換え抗体として作製することができる。組換え抗体を作製する方法としては、例えば抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子を発現ベクターに組み込み、かかる発現ベクターをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞などの宿主細胞へ導入して、宿主細胞において組換え抗体を生産させる方法を挙げることができる(P.J.Delves., ANTIBODY PRODUCTION ESSENTIAL TECHNIQUES., 1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean., Monoclonal Antibodies., 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS, J.W.Goding., Monoclonal Antibodies:principles and practice., 1993 ACADEMIC PRESS)。特に、キメラ抗体は、特開2005-245337に記載の技術に基づいて作製することができる。発現ベクターに組み込む抗体遺伝子の塩基配列は、発現させる宿主細胞に合わせてコドン配列の最適化がされていてもよい。

【0026】
また、トランスジェニック動物作製技術を用いて本発明の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子が組み込まれたマウス、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ等のトランスジェニック動物を作製し、かかるトランスジェニック動物の血液、ミルク中などから上記抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子に由来する抗体を大量に産生することもできる。

【0027】
さらに、慣用のプロトコールを用いて、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドをマウス、ラット等のヒト以外の動物へ投与し、抗ヒスチジンタグ抗体を産生する細胞クローンを細胞融合技術によりスクリーニングすることにより、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を得ることができる。スクリーニングするには、例えば抗ヒスチジンタグ抗体をコードする遺伝子配列を同定することにより得られたアミノ酸配列情報から、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を用いて配列同一性を算出する方法を用いることができる。

【0028】
形質転換細胞、トランスジェニック動物、ハイブリドーマ等により産生された本発明の抗ヒスチジンタグ抗体は、例えばProteinA、ProteinGカラムによるクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、硫安塩析法、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィー等を用いて精製することができる。

【0029】
本発明のヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出方法としては、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いてヒスチジンタグ融合ポリペプチドを検出する方法であればよく、具体的には本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いた免疫蛍光染色法、ウェスタンブロッティング法、ELISA等を挙げることができ、これらの中でもウェスタンブロッティング法を好適に例示することができる。本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いたヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)、Sambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの標準的な実験室マニュアルに記載される方法等により行うことができる。

【0030】
本発明のヒスチジンタグ融合ポリペプチドの検出キットとしては、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を備え、試料中のヒスチジンタグ融合ポリペプチドを検出/測定できるキットであれば特に制限されず、例えば、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体と、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドに結合した上記抗体を検出するための、蛍光物質、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Horse Radish Peroxidase;HRP)等の標識物質をコンジュゲートした2次抗体とを備えた検出キットや、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体と、該抗体とは異なる部位でヒスチジンタグ融合ポリペプチドと反応する少なくとも1種類の抗体とを備えた検出キットなどを挙げることができる。また、これらの検出キットには、必要と目的に応じた緩衝液、pH調製剤、反応容器等をさらに備えたものであってもよい。

【0031】
本発明のヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製方法としては、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いてヒスチジンタグ融合ポリペプチドを精製する方法であればよく、具体的には本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いた免疫沈降法、クロマチン免疫沈降(ChIP)法等を挙げることができ、免疫沈降法を好適に例示することができる。本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いた免疫沈降法は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)、Sambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの標準的な実験室マニュアルに記載される方法等により行うことができ、また本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いたクロマチン免疫沈降法は、Nucleic Acids Res., 35, 648-655(2007)に記載される方法等により行うことができる。

【0032】
本発明のヒスチジンタグ融合ポリペプチドの精製キットとしては、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を備え、試料中のヒスチジンタグ融合ポリペプチドを精製できるキットであれば特に制限されず、例えば、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体と、ヒスチジンタグ融合ポリペプチドに結合した上記抗体を精製するための、ProteinAやProteinGを結合させた磁性ビーズ、セファロースビーズ、アガロースビーズ等のProteinビーズとを備えた精製キットや、かかる精製キットが、さらにタンパク質とタンパク質・DNAとを架橋させるホルマリン、グルタルアルデヒド等の架橋剤を備えた精製キットなどを挙げることができる。また、これらの精製キットには、必要と目的に応じた緩衝液、pH調製剤、反応容器等をさらに備えたものであってもよい。

【0033】
以下に、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これら実施例等により限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
[ヒスチジンタグ融合チオレドキシンの作製]
抗原として、チオレドキシンのN末端にヒスチジンタグが融合したタンパク質(ヒスチジンタグ融合チオレドキシン)を作製した。すなわち、pET-32(a)ベクター(Novagen社製)を増幅した後、大腸菌(BL21株)へ導入し、その後選択薬剤であるアンピシリンを含むLB培地中に37℃で培養を行うことにより、形質転換した大腸菌を選択した。その後、最終濃度が4μMになるようにIPTGを加え、37℃で2時間培養を行うことにより、ヒスチジンタグ融合チオレドキシンの発現誘導を行った。ヒスチジンタグ融合チオレドキシンの発現は、SDS-PAGEを行った後、クマシー染色により確認した。
【実施例1】
【0035】
ヒスチジンタグ融合チオレドキシンの発現が認められた大腸菌を遠心操作により回収した後、BugBuster10x Protein Extraction Reagent(Novagen社製、#70921-3)及びBugBuster Plus Benzonase Nuclease(Novagen社製、#70750-3)を加え、室温、1時間インキュベートした後、15,000rpm.×10分間遠心処理を行い、上清を回収した。上清に含まれるヒスチジンタグ融合チオレドキシンは、平衡化溶液PBS(-)で平衡化したHis-Select Nickel Affinity Gel(Sigma社製、P6611)を用いて回収した。His-Select Nickel Affinity Gelの洗浄は、10mMイミダゾールを含むPBS(-)で行ない、ヒスチジンタグ融合チオレドキシンの溶出は、500mM又は250mMのイミダゾールを含むPBS(-)を用いて行なった。溶出画分に含まれるヒスチジンタグ融合チオレドキシンの確認及び定量は、SDS-PAGEを行った後、クマシー染色により行った。定量は比色法(Lowry法)により行った。
【実施例2】
【0036】
[ヒスチジンタグ融合チオレドキシンを認識する抗体のスクリーニング]
上記ヒスチジンタグ融合チオレドキシンを用いたC57Bl6マウスの抗原感作(6回実施)からハイブリドーマの樹立までの方法は、定法にしたがって行った。樹立したハイブリドーマがヒスチジンタグ融合チオレドキシンに対する抗体を産生しているか、スクリーニングをELISAにより行った。調べた42クローンのうち、32クローンが陽性を示し、そのうち1クローンはELISAにより高感度[OD450=1.035(基準値=0.2以上)]のヒスチジンタグ融合チオレドキシンに対する抗体を産生するハイブリドーマ(クローン名:HF16-1、アイソタイプ:IgG1κ)として単離された。
【実施例3】
【0037】
[抗ヒスチジンタグ抗体であることの確認]
ハイブリドーマHF16-1が産生するモノクローナル抗体がチオレドキシンを認識していることをウェスタンブロッティング法で確認するため、チオレドキシン発現ベクター形質転換ヒト肝臓由来培養細胞(HepG2、Huh7)を用いて解析を行った。チオレドキシン発現ベクター形質転換ヒト肝臓由来培養細胞をタンパク質抽出バッファー(10mM Tris pH 6.8、1mM MgCl、0.5mM EGTA、pH 8.0、0.1% NP-40、プロテアーゼインヒビター)で処理し、得られたタンパク質抽出液と上記抗体とをウエスタンブロッティング法により反応させたところ、上記抗体はチオレドキシンと結合しないという予想外の結果が得られた。このような結果を踏まえ、上記抗体がヒスチジンタグを認識する抗体であることを確認するため、実施例1に準じて作製した3種類のヒスチジンタグ融合タンパク質(EGFP[緑色蛍光タンパク質]、チオレドキシン、及びヒトスタスミン[Stathmin][以下、スタスミンと記載する])を発現させた大腸菌溶解液の段階希釈試料を調製し、SDS-PAGEでかかる試料に含まれるヒスチジンタグ融合タンパク質を分離し、PVDF膜に転写させた後、ハイブリドーマHF16-1産生モノクローナル抗体を一次抗体として、HRP標識マウスIgG抗体を二次抗体として用いてウェスタンブロッティングを行った。検出は化学発光検出(ECL plusTM)(Amersham社製)を用いて行った。その結果、ハイブリドーマHF16-1産生モノクローナル抗体は、ヒスチジンタグを認識する抗ヒスチジンタグ抗体であることがわかった。
【実施例4】
【0038】
[本発明の抗ヒスチジンタグ抗体と市販の抗体との検出感度の比較]
ハイブリドーマHF16-1産生モノクローナル抗体が抗ヒスチジンタグ抗体であることがわかったので、かかる本発明の抗ヒスチジンタグ抗体の検出感度を調べた。ハイブリドーマHF16-1のRPMI1640培地(Sigma社製、R8758又は和光純薬社製、189-02025)、15%ウシ胎児血清、抗生物質:Penicillin Streptomycin 5ml[GIBCO社製15140-122])における培養上清(濃度約80μg/ml)と、その培養上清のアフィニティー精製による精製物(濃度15μg/ml)の他、対照として市販の抗ヒスチジンタグ抗体(シグマ社製、Cat.No.H1029)(濃度35μg/ml[35mg/mlの抗体を1000倍希釈して使用])を試験抗体として、実施例3記載と同様にヒスチジンタグ融合スタスミン発現大腸菌溶解タンパク質を試料としてウェスタンブロッティングを行った。結果を図1に示す。その結果、培養上清では上記試料の2000倍希釈まで、その精製物では上記試料の500倍希釈までそれぞれヒスチジンタグ融合スタスミンを検出することができた。一方、対照の市販抗体を用いた場合、100倍希釈までのヒスチジンタグ融合スタスミンの検出感度であった。この結果は、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体は従来の市販抗体の5~20倍以上の検出感度であることを示している。また、対照の市販抗体を用いた場合、化学発光の検出における露光時間を長くすると、目的のヒスチジンタグ融合スタスミンの分子量よりも大きいバンドが複数現れ、非特異的反応が見られるのに対し、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体を用いた場合、露光時間を長くしても、目的のバンド以外には非特異的なバンドは検出されなかった。この結果は、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体は、高い特異性を有していることを示している。また、対照の市販抗体としてRockland社の抗ヒスチジンタグ抗体(ウサギ)を用いてウェスタンブロッティングにより検証したところ、シグマ社製の抗体と同様の検出感度であった。
【実施例5】
【0039】
[本発明の抗ヒスチジンタグ抗体が免疫沈降法に使用できることの確認]
本発明の抗ヒスチジンタグ抗体が、免疫沈降法に使用できるかどうかを調べた。免疫沈降法に用いるヒスチジンタグ融合スタスミンの調製は、pET-14ベクター(Novagen社製)のヒスチジンタグ遺伝子の下流に、ヒトスタスミン遺伝子を挿入したベクターを構築した後、上記実施例1に記載の方法により行った。ヒスチジンタグ融合スタスミンと4種類の抗体(ハイブリドーマHF16-1培養上清と、その培養上清のアフィニティー精製による精製物の他、対照として市販の抗ヒスチジンタグ抗体[シグマ社製、Cat.No.H1029]及び抗ヒトアポE抗体[マウスモノクローナル抗体、Santa Cruz社製 sc-13521])を用いた免疫沈降法は、以下の方法1にしたがって行った。
【実施例5】
【0040】
<方法1>
1)1.5mlマイクロチューブに10mM Tris buffer 1 mlを加え、さらにヒスチジンタグ融合スタスミン0.5μgと上記4種類の抗体2μgをそれぞれ加えた後、4℃、1時間反応させた。ハイブリドーマHF16-1培養上清は、10mM Tris bufferで希釈せずに、直接ヒスチジンタグ融合スタスミン溶液へ加えた。
2)ProteinGアガロース(Santa Cruz社製、sc-2002)を20μlずつ加え、4℃、一晩インキュベートした。
3)1.5mlマイクロチューブを遠心(3,000rpm.x5min)した後、上清を除き、沈殿物に洗浄用バッファーA(25mM Tris,pH7.5,150mM NaCl,0.05% NP-40,0.02% SDS)を1ml加えた後、混和し、遠心処理(3,000rpm.x5min)を行った。
4)上清を除き、沈殿に洗浄用バッファーB(25mM Tris,pH7.5,1M NaCl,0.05% NP-40,0.02% SDS)を1ml加えた後、混和し、遠心処理(3,000rpm.x5min)を行った。
5)上清を除き、沈殿に洗浄用バッファーA(25mM Tris,pH7.5,150mM NaCl,0.05% NP-40,0.02% SDS)を1ml加えた後、混和し、遠心処理(3,000rpm.x5min)を行った。
6)5)の作業をもう1度繰り返した。
7)SDS-sample bufferを30μl加え、95℃、5分処理して得られた試料を、以下のSDS-PAGE及びウェスタンブロッティング法に用いた。
【実施例5】
【0041】
免疫沈降されたヒスチジンタグ融合スタスミンのウェスタンブロッティング法による検出は、以下の方法2にしたがって行った。
【実施例5】
【0042】
<方法2>
上記試料を、12.5%ポリアクリルアミドゲル(SuperSepTMエース、和光純薬社製)を用いたSDS-PAGEで展開した後、セミドライブロッティング法によりPVDF膜に転写した。試料中のタンパク質が転写されたPVDF膜を5%スキムミルク/TBSでブロッキング処理を行った(4℃、一晩)。5%ウシ血清アルブミン/0.01% Tween-20/TBS(Tris-buffered saline)で500倍に希釈した抗ヒトOp18/スタスミン抗体(ウサギポリクローナル抗体、シグマ社製、#O0138)を用いて一次抗体反応を室温で2時間行った後、0.01% Tween-20/TBSで洗浄(10分、3回)し、5%スキムミルク/TBSで10,000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(Jackson Laboratory社製)を用いて二次抗体反応を室温で1時間行った後、再度0.01% Tween-20/TBSで洗浄した(全て震盪して反応を行った)。化学発光試薬(ECL plus、GEヘルスケア社製)と化学発光用フィルム(Hyperfilm ECL、GEヘルスケア社製)を用いてヒスチジンタグ融合スタスミンの検出を行った。結果を図2に示す。その結果、培養上清では100%のヒスチジンタグ融合スタスミンを、その精製物では80%のヒスチジンタグ融合スタスミンをそれぞれ免疫沈降できた。一方、対照の市販抗体を用いた場合、免疫沈降されたスチジンタグ融合スタスミンは70%であった。なお、ヒスチジンタグを認識しない抗ヒトアポE抗体では、ヒスチジンタグ融合スタスミンは検出されなかった。この結果は、本発明の抗ヒスチジンタグ抗体は従来の市販抗体よりも高効率でヒスチジン融合タンパク質を免疫沈降できることを示している。
【実施例6】
【0043】
[本発明の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子の同定]
本発明の抗ヒスチジンタグ抗体遺伝子の同定は以下の方法にしたがって行った。すなわち、ハイブリドーマ(HF16-1)から、RNeasy Mini kit(Qiagen社製、Cat.No.74104)を用いてトータルRNAを抽出した後、GeneRacer TM Kit(Invitrogen社製 Cat. No.L1502-01[SuperScript TM III RTとTOTP TA CloningR Kit for Sequencingを含む])を用いた5’-RACE法により重鎖及び軽鎖可変領域を増幅した。なお、重鎖及び軽鎖可変領域の増幅に用いたプライマーを、以下に示す。
重鎖:ghg1 GSP(R1507-1484);5’-cctgtaggaccagagggctccaag-3’
軽鎖:Igk-C GSP(R350-328);5’-gtggtggcgtctcaggacctttg-3’
抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子は、Blend Taq(TOYOBO社製、Cat. No.BTQ-101)を用いたPCRにより単離し、pCR4-TOPO(Invitrogen社製)ベクターを用いてクローニングした。クローニングした各DNA断片の塩基配列は、BigDye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用い、DNAシークエンサーにて決定した。
【実施例6】
【0044】
得られた抗ヒスチジンタグ抗体の遺伝子配列及びそれがコードするアミノ酸配列を以下に示す。
重鎖可変領域遺伝子配列 :配列番号1
重鎖可変領域アミノ酸配列:配列番号2
軽鎖可変領域遺伝子配列 :配列番号3
軽鎖可変領域アミノ酸配列:配列番号4
重鎖遺伝子配列 :配列番号5
重鎖アミノ酸配列 :配列番号6
軽鎖遺伝子配列 :配列番号7
軽鎖アミノ酸配列 :配列番号8
図面
【図1】
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【図2】
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