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明細書 :ファイバー状ニッケルおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5629959号 (P5629959)
登録日 平成26年10月17日(2014.10.17)
発行日 平成26年11月26日(2014.11.26)
発明の名称または考案の名称 ファイバー状ニッケルおよびその製造方法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI B22F 9/24 C
B22F 1/00 M
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2010-545765 (P2010-545765)
出願日 平成22年1月5日(2010.1.5)
国際出願番号 PCT/JP2010/050030
国際公開番号 WO2010/079781
国際公開日 平成22年7月15日(2010.7.15)
優先権出願番号 2009000702
優先日 平成21年1月6日(2009.1.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年1月4日(2013.1.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】北川 宏
【氏名】小林 浩和
【氏名】細井 浩平
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
【識別番号】100115152、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 茂
審査官 【審査官】米田 健志
参考文献・文献 特表2005-518661(JP,A)
特開2006-249512(JP,A)
特開2008-266690(JP,A)
調査した分野 B22F 9/24
B22F 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケルの製造方法であって、
100℃以上200℃未満の溶媒中において、ニッケルイオンと還元剤と保護剤とを混合することによって第1の溶液を調製する第1の工程と、
前記第1の溶液を200℃~300℃の範囲にある温度で10~30分間加熱する第2の工程とを含み、
前記第1の溶液における前記ニッケルイオンの濃度が、5mmol/l~20mmol/lの範囲にあり、
前記保護剤がポリビニルピロリドンであり、
前記第1の溶液における前記ポリビニルピロリドンの構成単位の濃度が、前記ニッケルイオンの濃度の1~5倍の範囲にある(ただし、前記第2の工程の加熱時間が10分間の場合は、前記ポリビニルピロリドンの構成単位の濃度が、前記ニッケルイオンの濃度の2~3倍の範囲にある)、製造方法。
【請求項2】
前記還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第2の工程の加熱温度が240~260℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の溶液における前記ニッケルイオンの濃度が、5mmol/l~10mmol/lの範囲にあり、
前記第1の溶液における前記ポリビニルピロリドンの構成単位の濃度が、前記ニッケルイオンの濃度の3~5倍の範囲にあり、
前記第2の工程は、前記第1の溶液を200℃~300℃の範囲にある温度で20分間加熱する工程である、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程は、塩化ニッケルとポリビニルピロリドンとが溶解された160℃のトリエチレングリコール溶液に水素化ホウ素ナトリウムを加えることによって前記第1の溶液を調製する工程であり、
前記第2の工程は、前記第1の溶液を250℃で20分間加熱する工程であり、
前記第1の溶液における前記塩化ニッケルの濃度が、6.43mmol/lであり、
前記第1の溶液における前記ポリビニルピロリドンの構成単位の濃度が、前記塩化ニッケルの濃度の3~5倍の範囲にある、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
六方最密充填構造を有し、長さが100nm以上である、ファイバー状ニッケル。
【請求項7】
最大径が100nm以下である、請求項6に記載のファイバー状ニッケル。
【請求項8】
径が0.5nm以上25nm以下である、請求項6に記載のファイバー状ニッケル。
【請求項9】
水素を吸蔵することによって結晶構造が面心立方構造に変化する、請求項6に記載のファイバー状ニッケル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバー状ニッケルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤー状やロッド状の金属粒子を製造する方法が開示されている(たとえば特開2007-284714号公報および特開2008-179836号公報)。特開2007-284714号公報には、ニッケルナノロッドの製造方法が開示されている。特開2007-284714号公報には、界面活性剤、環状炭化水素および還元剤を含有し、pHが7~10の範囲にある水溶液に、ニッケルイオンを含む水溶液を添加することによって、面心立方構造(fcc構造)を有するニッケルナノロッドが得られることが記載されている。特開2008-179836号公報には、多価アルコール系化合物を還元剤としてワイヤー状の銀粒子を製造した実施例が開示されている。
【0003】
一方で、粒子状のニッケルを製造した例が開示されている(Journal of Colloid and Interface Science, 311, p461-468, 2007年)。この文献には、塩化ニッケル(II)6水和物を還元することによって、面心立方構造(fcc構造)を有するニッケルが生成したことが記載されている。また、六方最密充填構造(hcp構造)を有する粒子状のニッケルについても開示されている(特開2004-353089号公報および特開2006-45648号公報)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-284714号公報
【特許文献2】特開2008-179836号公報
【特許文献3】特開2004-353089号公報
【特許文献4】特開2006-45648号公報
【0005】

【非特許文献1】Journal of Colloid and Interface Science, 311, p461-468, 2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来から、六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケル、およびその製造方法については知られていなかった。
【0007】
このような状況において、本発明は、六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケルおよびその製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、検討した結果、本発明者らは、六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケルを製造する方法を初めて見出した。本発明は、この新規な知見に基づく。
【0009】
すなわち、本発明の製造方法は、六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケルの製造方法であって、溶媒中において、ニッケルイオンと還元剤と保護剤とを混合することによって第1の溶液を調製する第1の工程と、前記第1の溶液を200℃以上の温度で加熱する第2の工程とを含み、前記第1の溶液における前記ニッケルイオンの濃度が、5mmol/l~20mmol/lの範囲にある。この製造方法によって、六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケルが得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来においては得ることができなかった六方最密充填構造を有するファイバー状ニッケルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例で作製したサンプル1の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図2】図2は、実施例で作製したサンプル2の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図3】図3は、実施例で作製したサンプル3の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図4】図4は、実施例で作製したサンプル4の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図5】図5は、実施例で作製したサンプル5の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図6】図6は、実施例で作製したサンプル6の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図7】図7は、実施例で作製したサンプル7の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図8】図8は、実施例で作製したサンプル8の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図9】図9は、実施例で作製したサンプル9の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図10】図10は、実施例で作製したサンプル10の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図11】図11は、実施例で作製したサンプル11の沈殿の電子顕微鏡像を示す。
【図12】図12Aは、サンプル8のEDS測定の測定位置を示し、図12Bはその測定結果を示す。
【図13】図13は、サンプル1、8および10について、X線回折測定の結果を示す。
【図14】図14は、水素ガスによる処理の前後におけるサンプル8のX線回折測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、例を挙げて以下に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。

【0013】
[ファイバー状ニッケルの製造方法]
本発明の製造方法は、六方最密充填構造(hcp構造)を有するファイバー状ニッケルの製造方法である。この製造方法は、以下の第1および第2の工程を含む。

【0014】
第1の工程では、溶媒中において、ニッケルイオンと還元剤と保護剤とを混合することによって第1の溶液を調製する。第1の溶液におけるニッケルイオンの濃度は、5mmol/l~20mmol/lの範囲(たとえば5mmol/l~10mmol/lの範囲)にある。溶媒の一例は、トリエチレングリコールである。第1の工程において、溶媒(第1の溶液)の温度に特に限定はなく、100℃以上200℃未満であってもよい。

【0015】
第2の工程では、第1の溶液を200℃以上の温度(たとえば200~300℃の範囲や250~300℃の範囲や240~260℃の範囲にある温度)で加熱する。加熱時間は好ましくは10分間以上であり、たとえば10~30分間である。第2の工程によって、ファイバー状ニッケルを得ることが可能である。

【0016】
第1の工程で用いられる還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)であってもよい。第1の溶液における水素化ホウ素ナトリウムの濃度は、ニッケルイオンの濃度の5~60倍の範囲(たとえば5~30倍の範囲)にあってもよい。

【0017】
第1の工程で用いられる保護剤は、ポリビニルピロリドンであってもよい。以下、ポリビニルピロリドン(すなわち、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン))を「PVP」という場合がある。

【0018】
上記製造方法では、第1の溶液における前記ニッケルイオンの濃度が、5mmol/l~10mmol/lの範囲にあり、第1の溶液におけるポリビニルピロリドンの構成単位(N-ビニル-2-ピロリドン由来の単位)の濃度が、ニッケルイオンの濃度の3~5倍の範囲にあってもよい。そして、第2の工程は、第1の溶液を200℃~300℃の範囲(たとえば250~300℃の範囲や240~260℃の範囲)にある温度で20分間加熱する工程であってもよい。

【0019】
本発明の好ましい一例について説明する。この好ましい一例の第1の工程では、溶媒中において、ニッケルイオンと水素化ホウ素ナトリウムとポリビニルピロリドンとを混合することによって第1の溶液を調製する。溶媒の一例は、トリエチレングリコールである。第1の溶液におけるニッケルイオンの濃度は、5mmol/l~10mmol/lの範囲にある。第1の溶液におけるポリビニルピロリドンの構成単位の濃度は、ニッケルイオンの濃度の3~5倍の範囲にある。第1の溶液における水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の濃度は、たとえば、ニッケルイオンの濃度の5~30倍の範囲にある。ニッケルイオンは、塩化ニッケルなどのニッケルの塩を溶媒に溶解させることによって、供給できる。第1の工程において、溶媒(第1の溶液)の温度は、100℃以上200℃未満であってもよい。第1の工程の典型的な一例では、ニッケルイオンとポリビニルピロリドンとを含むトリエチレングリコール溶液に水素化ホウ素ナトリウムを加えることによって第1の溶液が調製される。

【0020】
好ましい一例の第2の工程では、第1の工程で得られた溶液を、200~300℃の範囲(たとえば250~300℃の範囲や240~260℃の範囲)にある温度で10分~30分加熱する。第2の工程によって、ファイバー状ニッケルを得ることができる。

【0021】
上記製造方法において、第1の工程が以下の工程(i)であり、第2の工程が以下の工程(ii)であってもよい。すなわち、本発明の製造方法は、以下の工程(i)および(ii)を含む方法であってもよい。工程(i)では、塩化ニッケルとポリビニルピロリドンとが溶解された160℃のトリエチレングリコール溶液に水素化ホウ素ナトリウムを加えることによって第1の溶液を調製する。

【0022】
工程(i)の第1の溶液における塩化ニッケルの濃度は、6.43mmol/lである。工程(i)の第1の溶液におけるPVPの構成単位(N-ビニル-2-ピロリドン由来の単位)の濃度は、塩化ニッケルの濃度の3~5倍の範囲(19.29mmol/l~32.14mmol/l)にある。工程(i)の第1の溶液における水素化ホウ素ナトリウムの濃度は、64.3mmol/lである。

【0023】
工程(ii)では、第1の溶液を250℃で20分間加熱する。工程(ii)によって、第1の溶液中に、ファイバー状のニッケルが生成する。

【0024】
工程(i)は、以下の工程(i-a)および(i-b)を含んでもよい。まず、工程(i-a)では、塩化ニッケルとポリビニルピロリドンとが溶解されたトリエチレングリコール溶液(A)を調製する。トリエチレングリコール溶液(A)における塩化ニッケルの濃度は、11.25mmol/lである。トリエチレングリコール溶液(A)におけるPVPの構成単位の濃度は、塩化ニッケルの濃度の3~5倍の範囲(33.75mmol/l~56.25mmol/l)にある。

【0025】
工程(i-b)では、所定の温度(たとえば160℃)に加熱されたトリエチレングリコール溶液(A)に、水素化ホウ素ナトリウムを含むトリエチレングリコール溶液(B)を添加することによって、第1の溶液を調製する。トリエチレングリコール溶液(B)中の水素化ホウ素ナトリウムの濃度は、112.5mmol/lである。トリエチレングリコール溶液(A)とトリエチレングリコール溶液(B)とは、体積比で、[トリエチレングリコール溶液(A)中のトリエチレングリコールの量]:[トリエチレングリコール溶液(B)中のトリエチレングリコールの量」=4:3となるように混合する。

【0026】
なお、上記工程(i)および(ii)の条件に近い条件でも、ファイバー状ニッケルを製造することが可能である。たとえば、以下の工程(I)および(II)を含む製造方法によっても、ファイバー状ニッケルを製造することが可能である。

【0027】
工程(I)では、溶媒中において、ニッケルイオンと還元剤と、必要に応じて保護剤とを混合する。保護剤にPVPを用いる場合には、溶媒中のPVPの構成単位のモル数Aは、溶媒中のニッケルイオンのモル数Bの1倍~5倍の範囲とする。溶媒の例には、トリエチレングリコールが含まれる。還元剤の例には、NaBH4が含まれる。第1の溶液におけるニッケルイオンの濃度は、たとえば1mmol/l~20mmol/lの範囲(たとえば1mmol/l~10mmol/lの範囲や5mmol/l~20mmol/lの範囲や5mmol/l~10mmol/lの範囲)にある。第1の溶液におけるPVPの構成単位の濃度は、ニッケルイオンの濃度の1~5倍の範囲にある。第1の溶液における水素化ホウ素ナトリウムの濃度は、ニッケルイオンの濃度の5~60倍の範囲(たとえば5~30倍の範囲)にある。ニッケルイオンは、塩化ニッケルなどのニッケルの塩を溶媒に溶解させることによって、供給できる。

【0028】
工程(II)では、工程(I)で得られた溶液を、200℃~300℃の範囲にある温度で10分~30分加熱する。工程(II)によって、ファイバー状ニッケルを得ることが可能である。

【0029】
なお、工程(ii)の条件は同じで工程(i)における第1の溶液の調製条件を変更することによって、六方最密充填構造を有する粒子状のニッケルを作製することも可能である。たとえば、第1の溶液における塩化ニッケルの濃度を2.14mmol/lとし、PVPの構成単位の濃度を塩化ニッケルの濃度の3倍とし、水素化ホウ素ナトリウムの濃度を塩化ニッケルの濃度の10倍とすることによって、六方最密充填構造を有する粒子状のニッケルが得られる。作製される粒子状ニッケルの粒径は、100nm以下であってもよく、1nm~30nmの範囲にあってもよい。

【0030】
[ファイバー状ニッケル]
本発明の製造方法によって得られるファイバー状ニッケルは、六方最密充填構造(hcp)構造を有する。ファイバー状ニッケルの最大径は、100nm以下であってもよく、25nm以下や20nm以下や10nm以下(たとえば0.5nm以上10nm以下)であってもよい。一例では、ファイバー状ニッケルの径は、0.5nm~10nmの範囲(たとえば2nm~10nmの範囲)にある。ファイバー状ニッケルの長さに限定はなく、たとえば30nm~0.2μmの範囲にあってもよく、その範囲以上の長さであってもよく、1μm以下や10μm以下や1mm以下であってもよい。一例では、ファイバー状ニッケルは、径が25nm以下(たとえば0.5nm以上25nm以下)で長さが50nm以上(たとえば100nm以上10μm以下)であってもよい。ファイバー状ニッケルの径および長さは、ファイバー状ニッケルの電子顕微鏡像から見積もることができる。

【0031】
本発明のファイバー状ニッケルは、径が0.5nm以上25nm以下であり、長さが100nm以上であってもよい。長さは1mm以下(たとえば100μm以下や10μm以下)であってもよい。また、本発明のファイバー状ニッケルは、長さが径の20倍以上であってもよい。

【0032】
本発明のファイバー状ニッケルは、水素を吸蔵することによって結晶構造が面心立方構造に変化してもよい。結晶構造が六方最密充填構造から面心立方構造に変化するに伴って、ファイバー状ニッケルの磁性が常磁性から強磁性に変化する。本発明のファイバー状ニッケルは、水素吸蔵材料として利用することが可能である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。以下の方法で、11種類のサンプルを作製した。
【実施例】
【0034】
[サンプル1]
まず、トリエチレングリコール40mlに、PVPと0.15mmolの塩化ニッケル(II)6水和物(NiCl2・6H2O)とを加えることによって、トリエチレングリコール溶液(A)を調製した。加えたPVPの構成単位のモル数は、0.45mmolとした。したがって、トリエチレングリコール溶液中において、PVPの構成単位のモル数aと塩化ニッケルのモル数bとの比a/bは、3である。PVPは、和光純薬工業株式会社製の重量平均分子量MWが40000のものを用いた。
【実施例】
【0035】
次に、上記トリエチレングリコール溶液を160℃に加熱した。次に、加熱したトリエチレングリコール溶液に、1.5mmolの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を含むトリエチレングリコール30mlを一気に加えて第1の溶液を調製した。
【実施例】
【0036】
次に、第1の溶液を撹拌しながら、250℃まで加熱した。昇温速度は約25℃/分とした。第1の溶液の温度が250℃まで昇温されたのちは、第1の溶液の温度を250℃に維持したままで20分間撹拌を続けた。一連の工程によって、第1の溶液中には沈殿が生じた。この沈殿を、透過型電子顕微鏡で観察した。
【実施例】
【0037】
[サンプル2~11]
まず、トリエチレングリコール40mlに、PVPと0.45mmolの塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O)とを加えることによって、トリエチレングリコール溶液(A)を調製した。このとき、加えたPVPの構成単位のモル数aを0.45mmol/l~4.5mmol/lの範囲で変化させた。すなわち、PVPの構成単位のモル数aと塩化ニッケル6水和物のモル数bとの比a/bを、1~10の範囲で変化させた。
【実施例】
【0038】
次に、上記トリエチレングリコール溶液を160℃に加熱した。次に、加熱したトリエチレングリコール溶液に、4.5mmolの水素化ホウ素ナトリウムを含むトリエチレングリコール30mlを一気に加えて第1の溶液を調製した。
【実施例】
【0039】
次に、第1の溶液を撹拌しながら、250℃まで加熱した。昇温速度は約25℃/分とした。第1の溶液の温度が250℃まで昇温されたのちは、第1の溶液の温度を250℃に維持したままで撹拌を続けた。第1の溶液の温度を250℃に維持する時間(以下、「加熱時間」という場合がある)は、20秒~3時間の範囲で変化させた。所定の加熱時間の後に、加熱を終了した。一連の工程によって、第1の溶液中には沈殿が生じた。この沈殿を、透過型型電子顕微鏡で観察した。11種類のサンプルの作製条件に関して、第1の溶液(トリエチレングリコール70ml)中の各成分の量、上記モル比a/bの値、および上記加熱時間を、表1に示す。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP0005629959B2_000002t.gif
【実施例】
【0041】
表1の各成分の量を濃度(mmol/l)で表した表を、表2に示す。
【実施例】
【0042】
【表2】
JP0005629959B2_000003t.gif
【実施例】
【0043】
サンプル1で生成した沈殿について、電子顕微鏡の像を図1に示す。図1に示すように、サンプル1では粒子状ニッケルが生成した。電子顕微鏡像からサンプル1の粒子の粒径を測定したところ、粒径は、13.3±3.8nmであった。
【実施例】
【0044】
サンプル2~11で生成した沈殿について、電子顕微鏡の像を図2~図11に示す。図2、図4、図8および図10に示すように、塩化ニッケルの添加量が0.45mmol(濃度:6.43mmol/l)で、a/bが1~5で、加熱時間が20分の場合には、ファイバー状のニッケルが選択的に形成された。また、図3および7に示すように、塩化ニッケルの添加量が0.45mmol(濃度:6.43mmol/l)で、a/bが2~3で、加熱時間が10分の場合も、ファイバー状のニッケルらしきものが一部に見られた。その他のサンプルでは、主に粒子状のニッケルが確認された。ファイバー状のニッケルの平均径は、4.3±0.8nm(3.5nm~5.1nmの範囲)であった。
【実施例】
【0045】
サンプル8について、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)を行った。測定位置の像を図12Aに示す。また、図12Aに示した各位置における測定結果を図12Bに示す。図12Bのスペクトルから各測定位置におけるニッケル相対量を算出した結果を、表3に示す。
【実施例】
【0046】
【表3】
JP0005629959B2_000004t.gif
【実施例】
【0047】
表3に示すように、図12Aの像において色が濃いところほど、ニッケルの相対量が多かった。このことから、サンプル8では、繊維状のニッケルが生成したことが確かめられた。
【実施例】
【0048】
粒子状のニッケルが生成したサンプル1、および繊維状のニッケルが生成したサンプル8および10について、X線回折測定の結果を図13に示す。図13のスペクトルから、生成したいずれのニッケルも六方最密充填構造を有することが分かった。このように、従来製造されることがなかった、六方最密充填構造を有するファイバー状のニッケルが得られた。また、サンプル1では、六方最密充填構造を有する粒子状のニッケルが得られた。
【実施例】
【0049】
六方最密充填構造を有するニッケルは磁性を示さない。ところが、六方最密充填構造を有するニッケルを水素ガスで処理すると、水素を吸蔵することによって少なくとも一部のニッケルが面心立方構造に変わって磁性を示すようになる。水素ガスによる処理は、たとえば、水素ガス雰囲気下(1.01×105Pa(760Torr))、180℃で行われる。このような性質を様々な素子やデバイスに応用することが可能である。
【実施例】
【0050】
サンプル8と同じ条件で作製したファイバー状ニッケルを、水素ガスで処理した。具体的には、サンプル8のファイバー状ニッケルを、温度が200℃で水素圧が101.3kPaの雰囲気下に30分以上配置した。処理前後のファイバー状ニッケルについて、X線回折測定を行った。測定結果を図14に示す。
【実施例】
【0051】
図14のXRDスペクトルに示されるように、水素ガスによる処理によって、ファイバー状ニッケルの結晶構造が、六方最密充填構造から面心立方構造に変化した。また、水素ガスによる処理の前は常磁性であったファイバー状ニッケルが、水素ガスによる処理によって強磁性を示した。
【実施例】
【0052】
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、クレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、六方最密充填構造を有するファイバー状のニッケルに利用できる。六方最密充填構造を有するファイバー状のニッケルは、水素吸蔵材料、触媒、電極、センサなど、様々な分野に応用が可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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