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明細書 :果樹カメムシ類の捕獲器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5114645号 (P5114645)
公開番号 特開2008-161090 (P2008-161090A)
登録日 平成24年10月26日(2012.10.26)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
公開日 平成20年7月17日(2008.7.17)
発明の名称または考案の名称 果樹カメムシ類の捕獲器
国際特許分類 A01M   1/10        (2006.01)
A01M   1/02        (2006.01)
A01N  49/00        (2006.01)
FI A01M 1/10 N
A01M 1/02 B
A01N 49/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2006-352235 (P2006-352235)
出願日 平成18年12月27日(2006.12.27)
審査請求日 平成21年9月18日(2009.9.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】591014710
【氏名又は名称】千葉県
発明者または考案者 【氏名】足立 礎
【氏名】内野 憲
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100105463、【弁理士】、【氏名又は名称】関谷 三男
【識別番号】100099128、【弁理士】、【氏名又は名称】早川 康
審査官 【審査官】竹中 靖典
参考文献・文献 特開2002-125564(JP,A)
特開2002-045103(JP,A)
実開昭62-167578(JP,U)
特開2005-168488(JP,A)
特開平11-056194(JP,A)
特開昭63-251035(JP,A)
実開昭63-173076(JP,U)
登録実用新案第3024906(JP,U)
調査した分野 A01M 1/00 - 99/00
A01N 49/00
特許請求の範囲 【請求項1】
果樹カメムシ類を集合フェロモンによって誘引するカメムシ誘引部と、果樹カメムシ類を捕獲するカメムシ捕獲部とを備え、該カメムシ捕獲部が前記カメムシ誘引部の上側に配置されている果樹カメムシ類の捕獲器であって、
前記捕獲器は、果樹カメムシ類が移動する経路に沿って凹凸加工が施されており、
前記凹凸加工は、表面粗さRa=3.3μm程度となるように粗面仕上げしたエンボス加工であることを特徴とする果樹カメムシ類の捕獲器。
【請求項2】
記カメムシ誘引部は、複数のスカート板を組み立てて構成されることを特徴とする請求項1に記載の果樹カメムシ類の捕獲器。
【請求項3】
記カメムシ捕獲部は、誘引された果樹カメムシ類を集中させる漏斗部と、集中された果樹カメムシ類を捕獲する容器部とを備えており、該容器部は前記漏斗部に着脱可能に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の果樹カメムシ類の捕獲器。
【請求項4】
前記カメムシ捕獲部は、通気用の多数の開口を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の果樹カメムシ類の捕獲器。
【請求項5】
前記捕獲器は、透光性を有する材質で形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の果樹カメムシ類の捕獲器。
【請求項6】
前記容器部は、捕獲された果樹カメムシ類を回収する開口を有するとともに、該開口を閉塞する蓋部とを備えており、該蓋部は前記容器部に係止されることを特徴とする請求項3~5のいずれかに記載の果樹カメムシ類の捕獲器。
【請求項7】
前記容器部は、透明な材質で形成されていることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の果樹カメムシ類の捕獲器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、誘引フェロモンによって果樹カメムシ類を誘引、捕獲する果樹カメムシ類の捕獲器に係り、特に、短時間で効率良く果樹カメムシ類を捕獲できると共に、組立、設置が容易であり、保守管理も容易である果樹カメムシ類の捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
果樹カメムシ類は果樹園で繁殖せず、針葉樹地帯等から果樹園に移動・侵入してくる典型的な飛来性害虫である。果樹カメムシ類は、例えば昭和48年に全国的に大発生し、以後、甚大な果実被害を繰り返し引き起こしている。チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、ツヤアオカメムシを主体とし、現在、果樹害虫のなかでも最も重要な一群である。これらのカメムシは成虫で越冬して翌春の発生源となり、翌春から翌夏の初めにかけて各種の果樹等に被害を与え、翌夏の初めからは新成虫が発生し、この新成虫が越冬する。
【0003】
このような生態を有する果樹カメムシ類は雄成虫が放出する集合フェロモンによって雄成虫および雌成虫がともに誘引されることが確認されている。また、集合フェロモンは雌成虫を呼び寄せるのみに用いられるものでなく、他の成虫にエサ場を教えるためにも用いられるものであることが確認されている。そして、果樹カメムシ類は飛来性害虫であるため、飛来時期や量を予め把握することは防除上きわめて有効であり、それを可能とする広域に設置でき、扱いが簡易な発生予察用の捕獲器の開発が望まれている。
【0004】
従来、この種の捕獲器としては、誘殺灯や水盤式昆虫捕獲器が使用されている。誘殺灯は100W水銀灯などの光を誘引源とし、落下した個体が漏斗状の器具を通過して大型容器内に捕獲される。カメムシに限らず走光性をもつ多くの種類の夜行性害虫が対象である。また、水盤式昆虫捕獲器は人工合成したチャバネアオカメムシ集合フェロモンの含有ルアーを誘引源とする。誘引されたカメムシ類が水を張った容器内に落ちて溺死することで捕獲されるものである。
【0005】
また、従来の果樹カメムシを捕獲する捕獲器として、本願出願人の出願に係る乾式トラップがある。この乾式トラップは、果樹カメムシ類を集合フェロモンによって誘い込むカメムシ誘引部と、カメムシを捕獲するカメムシ捕獲部とからなり、カメムシ捕獲部はカメムシ誘引部の上側に配置されている。そして、カメムシ誘引部はその内側に集合フェロモンを配設するとともに、カメムシ誘引部に集合フェロモンを放出する穴若しくはスリットを有している(例えば、特許文献1参照)。

【特許文献1】特開2002-125564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記の誘殺灯は、電源設備やコンクリート等による基礎工事を必要とし、設置場所が限定されるという問題点がある。また、水盤式昆虫捕獲器はタライ等の容器内の水量が減少すると捕獲効率が急速に減少するため頻繁な水の補給が必要であり、捕獲された昆虫等の腐敗等により水が濁るため、定期的な水の交換が必要であるなど、取り扱いが煩雑であり、広域に多数設置することが困難であった。
【0007】
前記特許文献1に記載の乾式トラップは、果樹カメムシの捕獲効率が高く、しかも天敵昆虫を捕獲することなく果樹カメムシのみを捕獲し、果樹カメムシの発生調査・予察を容易、かつ的確に行うことができるという優れた効果を有するものであるが、捕獲効率をさらに高めることや、短時間で多量に捕獲することが要求されている。そして、設置や移動が容易で取り扱いが簡易な捕獲器が要求されている。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、果樹カメムシ類の捕獲効率が高く、短時間で多量の果樹カメムシ類を捕獲できる果樹カメムシ類の捕獲器を提供することにある。また、組立、設置が容易であり、取り扱いが簡易な果樹カメムシ類の捕獲器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、果樹カメムシ類の生態や挙動につき鋭意研究を重ねた結果、以下の特徴を有する本発明を完成させるに至った。すなわち、前記目的を達成すべく、本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器は、果樹カメムシ類を集合フェロモンによって誘引するカメムシ誘引部と、果樹カメムシ類を捕獲するカメムシ捕獲部とを備え、該カメムシ捕獲部が前記カメムシ誘引部の上側に配置されており、この捕獲器は、果樹カメムシ類が移動する経路に沿って凹凸加工が施されており、前記凹凸加工は、表面粗さRa=3.3μm程度となるように粗面仕上げしたエンボス加工であることを特徴とする。
【0010】
前記のごとく構成された本発明の果樹カメムシ類の捕獲器では、集合フェロモンによって誘引された果樹カメムシ類はカメムシ誘引部から、その上側に配置されたカメムシ捕獲部に向かって上昇移動するが、この捕獲器は果樹カメムシ類が移動する経路に沿って凹凸加工が施されているため、果樹カメムシ類は集合フェロモンによって誘引されたあと、落下することなく上昇移動でき、上側のカメムシ捕獲部に導かれる。このため、短時間で多量の果樹カメムシ類を捕獲することができる。また、天敵昆虫を殆ど捕獲することなく、果樹カメムシ類のみを捕獲することができる。さらに、定期的な水の補給等が不要で、保守管理が容易となる。
【0011】
本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器の具体的な態様としては、前記カメムシ誘引部は、複数のスカート板を組み立てて構成されることを特徴としている。このように構成された本発明の果樹カメムシ類の捕獲器では、カメムシ誘引部を構成する複数のスカート板を組み立てることでカメムシ誘引部を構成し、このカメムシ誘引部の上側にカメムシ捕獲部を配置することで容易に捕獲器を組み立てて設置することができる。また、カメムシ誘引部を構成する複数のスカート板は重ねて運ぶことができるため、捕獲器を組み立てる際の搬送や移動が容易となる。
【0012】
本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器のさらに具体的な他の態様としては、前記カメムシ捕獲部は、誘引された果樹カメムシ類を集中させる漏斗部と、集中された果樹カメムシ類を捕獲する容器部とを備えており、該容器部は前記漏斗部に着脱可能に構成されることを特徴としている。このように構成された本発明の果樹カメムシ類の捕獲器では、カメムシ捕獲部の容器部が捕獲器から着脱できるため、捕獲された果樹カメムシ類を短時間で回収することができ、取り扱いが簡易となる。
【0013】
また、本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器の好ましい具体的な態様としては、前記カメムシ捕獲部は、通気用の多数の開口を有していることを特徴としている。多数の開口としては孔、スリット、隙間等の適宜の形状のものが可能である。このように構成された果樹カメムシ類の捕獲器は、カメムシ捕獲部に設けた多数の開口により通風が確保され、捕獲器内部の温度上昇を防ぐことができる。このため、特に夏季炎天下等の条件での捕獲器内部の温度上昇を防止でき、果樹カメムシ類の移動を妨げず、短時間での捕獲を可能とする。
【0014】
さらに、本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器の好ましい具体的な他の態様としては、前記捕獲器は、透光性を有する材質で形成されることを特徴としている。前記の透光性とは、光を通すという意味であり、遮光性のように光を遮る性質でなく、光透過性ということもできる。このように構成された果樹カメムシ類の捕獲器は、漏斗部やカメムシ誘引部の内部が明るくなり、果樹カメムシ類は動きが活発となりカメムシ捕獲部に迅速に移動するため、短時間で果樹カメムシ類を捕獲することができる。
【0015】
前記容器部は、捕獲された果樹カメムシ類を回収する開口を有するとともに、該開口を閉塞する蓋部を備えており、該蓋部は前記容器部に係止されることが好ましい。この構成によれば、果樹カメムシ類を捕獲した容器部の蓋部が、容器部に係止されて開口を塞いでいるため、捕獲された果樹カメムシ類の開口からの脱出を防止することができる。また、前記容器部は、透明な材質で形成されていることが好ましい。この構成によれば、内部に捕獲された果樹カメムシ類の捕獲量を容易に知ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の果樹カメムシ類の捕獲器は、害虫である果樹カメムシ類を短時間で効率良く捕獲することができる。また、本発明の果樹カメムシ類の捕獲器は、カメムシ誘引部が複数のスカート板を組み立てて構成されるため組立が容易に行え、複数のスカート板は重ねて搬送できるため設置作業が容易となる。さらに、捕獲された果樹カメムシ類の回収が短時間で行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る果樹カメムシ類の捕獲器を示す概略斜視図、図2は図1の捕獲器の要部を分解した斜視図、図3は図1の捕獲器の中央縦断面図、図4はスカート板の組立状態を示す要部斜視図、図5は捕獲器の使用状態を示す斜視図である。
【0018】
図1~5において、本実施形態の果樹カメムシ類の捕獲器1は、果樹カメムシ類を集合フェロモンによって誘引するカメムシ誘引部2と、果樹カメムシ類を捕獲するカメムシ捕獲部3とを備えている乾式のトラップであり、全体の形状は下方が広く、上方が狭い錐体型の形状をしている。カメムシ捕獲部3はカメムシ誘引部2の上方に配置されており、下方の漏斗部4と上方の容器部5とを備えている。そして、カメムシ誘引部2は4枚のスカート板11,11…を組み立てて構成されるスカート部を備えている。これらのスカート板は2mm程度の厚さのプラスチック板から形成され、好ましくは透光性を有するプラスチック板が用いられる。すなわち、透明でなくても、透光性を有すればよい。特に、透光性を有するプラスチック板として、適度な強度と柔軟性を有するポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0019】
ここで、1枚のスカート板11について詳細に説明すると、スカート板11は下辺部12と上辺部13とを有する略台形状をしており、下辺部と上辺部を連結する2つの傾斜辺部14,15を有している。2つの傾斜辺部の形成する角度は40度程度に設定されている。そして、2つの傾斜辺部の下端は平行辺部16,16となっている。この結果、4枚のスカート板11,11…を連結したときにスカート部の下方には4つの隙間17,17…が形成される構成となっている。さらに、一方の傾斜辺部14は直角に折り曲げられた連結辺部18となっており、固定ピン等の固定具が挿入される貫通孔19,19…が形成されている。そして、他方の傾斜辺部15に沿って貫通孔19,19…に対向する貫通孔20,20…が形成されている。4枚のスカート板11,11…は、他方の傾斜辺部15を隣接する連結辺部18に重ねて固定ピン等の固定具21で連結される。固定具21としては、固定ピンのほかに割りピン、ビスとナット、蝶ねじ等、適宜の固定手段を用いることができる。
【0020】
また、上辺部13から上方に、カメムシ捕獲部3を構成する漏斗部4と結合するためのフック部22が突出形成されている。フック部22はスカート板11の本体部分と20度程度の角度で屈曲され、この捕獲器1が組み立てられたとき鉛直方向に伸びる鉛直部22aと、この鉛直部から水平方向に延びる水平鉤部22bとを備えている。このフック部22はスカート板11と一体に形成され、弾性を有するプラスチック板により、内側に湾曲できる構成となっている。
【0021】
スカート板11の中央には貫通孔23が形成されており、スカート板の表面に止まった果樹カメムシ類は貫通孔23を通してスカート板の裏面に移動することができる。4枚のスカート板11,11…は、一例として透明なポリプロピレン樹脂から形成されており、その表裏面には凹凸加工として粗面仕上げとしたエンボス加工が施されている。本実施形態では、表面粗さRa=3.3μm程度となるように粗面仕上げを施している。なお、表面粗さは前記の例に限られず、Ra=3.0~4.0μm程度で適宜設定できることは勿論である。4枚のスカート板11,11…は果樹カメムシ類が移動する経路を構成する。
【0022】
カメムシ誘引部2は4枚のスカート板11,11…から形成されるスカート部の上側に、カメムシ捕獲部3として上方につぼまる、すなわち上方に向けて先細り断面積が小さくなる漏斗部4と、容器部5とを有している。漏斗部4は、後述する集合フェロモンによって誘引された果樹カメムシ類を集中させてカメムシ捕獲部3の容器部5へ誘導する機能を有するものであり、下方の四角柱状の導入部41と、その上に連続する中央の四角錐台状の先細部42と、その上に連続する上方の四角柱状の通路部43とから構成される。すなわち、漏斗部4は下方の大形の四角柱状の導入部41の上に四角錐台状の先細部42が連続し、さらにその上に小形の四角柱状の通路部43が連続して上方に向けてつぼまる形状をしており、内部空間が先細りとなっている。
【0023】
漏斗部4の下方の四角柱状の導入部41には外周側に向けて、この捕獲器を吊るすためのつば部44が突設されており、このつば部にはロープ等が挿入される孔45が形成されている。また、四角錐台状の先細部42の上端には三角形状の受け板46が固着され、この受け板の上辺が後述するカメムシ捕獲部3の容器部5の底面を受ける構成となっており、容器部を安定して支持することができる。このように構成された漏斗部4の内面は、誘引された果樹カメムシ類が移動する経路を構成し、漏斗部の内面、すなわち導入部41、先細部42、通路部43の内面にはスカート板と同様の凹凸加工が施されている。
【0024】
漏斗部4の四角錐台状の先細部42の傾斜面には、スカート板11,11、…の上方に突出するフック部22,22…の水平鉤部22bが挿入されるスリット47,47…が形成されている。したがって、漏斗部4のスリット47,47…にスカート板11,11、…のフック部22,22…が挿入されることで漏斗部4にカメムシ誘引部2が吊り下げられ、連結される構成となっている。フック部22,22…の内面も、誘引された果樹カメムシ類が移動する経路を構成し、この内面にはスカート板と同様の凹凸加工が施されている。
【0025】
カメムシ捕獲部3の容器部5は四角柱状の容器本体50と、この容器本体の上方開口を覆う蓋部60とを備えている。容器本体50は中央部に容器本体を上下に貫通する四角柱状の通路部が形成されている。この通路部は漏斗部4の上部に突出する四角柱状の通路部43が内嵌するような大径筒部51と、これより小径の小径筒部52とを有しており、全体の高さは容器本体50の高さより小さく設定されている。したがって、容器本体50に蓋部60を被せた状態で小径筒部52は蓋部の内面と離れ、果樹カメムシ類が通過できる隙間が形成されており、容器本体50の内部空間は漏斗部4の内部空間と連通している。小径筒部52の内面は、誘引され通路部43を通過した果樹カメムシ類が移動する経路を構成し、この内面にもスカート板と同様の凹凸加工が施されている。なお、小径筒部52と連続する大径筒部51の内面も凹凸加工を施してもよい。
【0026】
容器本体50の底面には、捕獲された果樹カメムシ類が逃げ出せない程度の直径の、例えば2mm程度の通気用の多数の孔53が配列されている。そして、容器本体50の上部には外方に延出するフランジ部54が形成され、フランジ部の上面には8個の半球状の突起55が形成されている。このため、容器本体50と蓋部60とは突起55が接触することでフランジ部54と蓋部60の内面とは離れており、通気用の孔53とともに容器本体50内部の通気が可能な状態となっている。
【0027】
容器本体50の上方に位置する蓋部60は、平板部61の外周から壁部62が垂下され、この壁部の内部に容器本体のフランジ部54が隙間を空けて嵌合される構成となっている。また、平板部61の底面から下方に4つの押さえ突部63,63…が形成され、これらの押さえ突部は容器本体50の内周面に接触するように設定されている。このため、蓋部60を容器本体50に被せた状態では押さえ突部63,63…が容器本体の内周面に接触して係止されて、容易に脱落しない構成となっている。これにより、容器本体50内に捕獲された果樹カメムシ類の脱出が防止される。容器本体50は透明の樹脂で形成することが好ましく、これにより容器本体内部に捕獲された果樹カメムシ類の量を容易に把握することができる。また、蓋部60も透明の樹脂で形成すると好ましい。
【0028】
捕獲器1には果樹カメムシ類を誘引するための集合フェロモン剤70が取り付けられる。集合フェロモン剤70は集合フェロモンを含浸させたチューブタイプのものが使用される。集合フェロモンはチャバネアオカメムシのオス成虫が放出する集合フェロモンの主成分と同等のものであり、この集合フェロモンは、チャバネアオカメムシの他、ツヤアオカメムシおよびクサギカメムシ等の果樹カメムシ類を誘引することができる。
【0029】
集合フェロモン剤70は集合フェロモン剤吊棒71と、集合フェロモン剤支持棒72とから構成されるT型の支持体に巻き付けて支持されている。集合フェロモン剤吊棒71が小径筒部52の上端に載置され、集合フェロモン剤支持棒72は小径筒部52、漏斗部4の通路部43、先細部42、導入部41内に垂下され、その下端部はスカート部2の中心部に位置している。このように、集合フェロモン剤70は、カメムシ誘引部2を構成するスカート板11,11…の内側に配置される。なお、集合フェロモン剤の位置は、スカート板の内部であればどの位置でもよく、例えば、スカート板11の貫通孔23の周囲にクリップのように挟んで固定し、一部をスカート板の外部に突出させて支持してもよい。このように構成された集合フェロモン剤70を支持する吊棒71と支持棒72とは、果樹カメムシ類が誘引されて上方へ移動する経路を構成する。したがって、集合フェロモン剤吊棒71および集合フェロモン剤支持棒72も、スカート板11,11…と同様に表面に凹凸加工が施されると好ましい。
【0030】
前記の如く構成された本実施形態の果樹カメムシ類の捕獲器1の組立動作について以下に説明する。先ず、図4に示されるように、2枚のスカート板11,11の連結辺部18と対向する傾斜辺部15とを重ね、貫通孔19,20に固定ピン等の固定具21を挿入して2枚のスカート板11,11を連結する。ついで、3枚目のスカート板11の傾斜辺部15を2枚目のスカート板11の連結辺部18と重ねて貫通孔に固定具21を挿入して連結する。最後に、4枚目のスカート板11の連結辺部18を3枚目のスカート板11の傾斜辺部15に重ねて貫通孔に固定具21を挿入し、残りの傾斜辺部と連結辺部との重なり部の貫通孔に固定具21を挿入して4枚のスカート板11,11…を連結して四角錐台状のスカート部を構成する。4枚のスカート板11,11…は平板状であり、重ねて搬送することができるため捕獲器1の移動や設置が容易に行える。
【0031】
このように構成されたスカート部は、下端部分に4つの隙間17,17…が形成される。これらの隙間を通してスカート板11の表面に止まった果樹カメムシ類は裏面側へ移動することもできる。スカート部を構成する4枚のスカート板は上方に4つのフック部22,22…が突出しているので、このフック部の外側に上方から漏斗部4を被せるとフック部は漏斗部の傾斜面に当接し、漏斗部4を下方に押し付けると各フック部は内側に僅かに弾性変形し、水平鉤部22bがスリット47に嵌合して漏斗部4とスカート板11,11…は連結される。このあと、漏斗部4の上部の通路部43の外周にカメムシ捕獲部3の容器部5を嵌め込む。容器部5の容器本体50は四角柱状の通路部43が大径筒部51に嵌合するため、漏斗部4の上に安定した状態で設置することができる。
【0032】
このように構成された本実施形態の果樹カメムシ類の捕獲器1は、上下方向の中央に位置する漏斗部4の上方の四角柱状の通路部43にカメムシ捕獲部3の容器部5が外嵌され、容器部の容器本体50の上部に蓋部60が被せられる。そして、漏斗部4のスリット47にスカート板11,11…のフック部22,22…が挿入されてスカート部が吊り下げ状態に連結され、全体の高さが50cm程度に組み立てられる。このようにして組み立てられた捕獲器1は、漏斗部4の外周から突出するつば部44にロープ75等が結ばれ、このロープ75で吊り下げて使用される。そして、集合フェロモン剤70がカメムシ誘引部2を構成するスカート板11,11…の内部に吊下げ支持される。本発明の捕獲器は、竿や木の枝等に吊下げて設置でき広域に多数設置できるため、果樹カメムシ類等の発生予察等が容易に実施できる。
【0033】
捕獲器1は果樹園から50~100m離れた平坦で風通しのよい、かつ、見通しのよい位置に設置されることが好ましい。このような距離に設置することで、集合フェロモン剤70に誘引された果樹カメムシ類による果樹園への被害を防ぐことができる。また、捕獲器1は集合フェロモン剤70が地上から150~160cmの高さに位置するように設置されることが好ましい。
【0034】
捕獲器1の内部に集合フェロモン剤70を吊り下げると、果樹カメムシ類はこれに感応して誘引されて飛来し、カメムシ誘引部2のスカート板11に止まる。果樹カメムシ類はフェロモン源の周辺に止まった後、上方向に歩行移動する習性があるためスカート板11に沿って上昇移動する。果樹カメムシ類は隙間17や貫通孔23を通してスカート板11の裏面側に移動することができる。スカート板11の表裏面には凹凸加工が施され、果樹カメムシ類はスカート板11の表裏面を落下することなく上昇することができるため、スカート板に止まった果樹カメムシ類は殆どすべてが経路であるスカート板の表裏面に沿って上昇し、フック部22,22…を伝って漏斗部4に導かれる。
【0035】
漏斗部4に導かれた果樹カメムシ類は漏斗部の内周面に沿って上昇し、導入部41、先細部42、通路部43を通って集められ、容器本体50の小径筒部52を通って移動する。導入部41、先細部42、通路部43、小径筒部52も凹凸加工が施されているため、果樹カメムシ類は落下することなく上昇できる。容器本体50には通気用の多数の孔53が設けられているため、容器部5の内部の温度上昇が防止され、果樹カメムシ類は活発に歩行移動することができる。小径筒部52の上端に到達した果樹カメムシ類は行き場を失い、上端面を乗り越えてカメムシ捕獲部3の容器本体50内に落下する。落下した果樹カメムシ類は容器本体50に入れられた殺虫剤によって捕殺され、容器本体50には通気用の多数の孔53が設けられているため、捕獲された果樹カメムシ類が腐敗、破損することはない。
【0036】
ここで、スカート板の設置角度に対する表面の滑りやすさと、クサギカメムシ成虫を歩行移動させたときの落下度の比較について、表1を参照して説明する。表1に記載の面粗度0は、プラスチック板の表面を研磨せず、板材製造時の板材の表面状態を示しており、表面粗さは0.101μmであった。面粗度1は板材の表面を軽く研磨し、表面粗さは1.203μmであった。また、面粗度2は板材の表面を凹凸が出るように研磨し、表面粗さは3.309μmであった。そして、クサギカメムシのオスとメスを、角度が60°、90°、120°と135°に傾斜させたプラスチック板に付着させ、落下する割合を比較した。
【0037】
表1から明らかなように、オスの場合、面粗度0では角度が60°のとき50%が落下し、角度が90°のとき66.7%が落下した。面粗度1では角度が60°のとき落下したのは0%であり、角度が90°のとき77.8%が落下した。また、面粗度2では、角度が60°、90°のとき落下せず、すべてのオスのカメムシが安定して歩行移動した。そして、メスの場合、面粗度0では角度が60°のとき60%が落下し、角度が90°のとき50%が落下した。面粗度1では角度が60°の30%が落下し、角度が90°のとき66.7%が落下した。また、面粗度2では、角度が60°のとき落下せず、角度が90°のとき5.6%が落下した。このように、表面粗さを面粗度2の約3μm程度とすることにより、果樹カメムシ類のカメムシ誘引部における落下を防止でき、捕獲数を大幅に増やすことが確認できた。また、逆傾斜のオーバーハング状態である120°、135°の場合でも、同様に面粗度が2の表面粗さが3μm程度になると落下率は大幅に低減する傾向が明らかであった。
【0038】
【表1】
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【0039】
ここで、本実施形態の果樹カメムシ類の捕獲器1と、従来の特許文献1に示される旧型捕獲器によるチャバネアオカメムシとツヤアオカメムシを捕獲した数量について、表2を参照して説明する。表2は、集合フェロモン剤70を捕獲器1のスカート板内部に吊るし、屋外にて150日間、経過したときの個体数を示している。旧型捕獲器では、チャバネアオカメムシのオス86匹、メス157匹、合計243匹に対して、本発明の捕獲器1ではチャバネアオカメムシのオス230匹、メス399匹、合計629匹であった。また、ツヤアオカメムシについては、旧型捕獲器ではオス21匹、メス25匹、合計46匹であったのに対し、本発明の捕獲器1ではオス102匹、メス98匹、合計200匹であった。このように、本発明の捕獲器1では、旧型捕獲器に対して2~4倍程度の果樹カメムシ類を捕獲することができた。
【0040】
【表2】
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【0041】
また、前記の本発明の捕獲器1と旧型捕獲器の果樹カメムシ類の回収時間を表3に示している。この表3は、捕獲器1基当たり1回の回収に要する時間を示すものである。この表3から明らかなように、果樹カメムシ類を回収する時間は、1回当たり旧型捕獲器では52.5秒を要したのに対し、本発明の捕獲器1では10.9秒を要するだけで、回収時間を5分の1程度に短縮できた。
【0042】
【表3】
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【0043】
さらに、本発明の捕獲器1で、スカート板と漏斗部とを黄色のプラスチック板で形成したものと、透明のプラスチック板で形成したもので果樹カメムシ類の捕獲数を比較した。表4で示されるように、黄色のプラスチック板の場合は、チャバネアオカメムシのオスは88匹、メス132匹で合計220匹であるのに対し、透明のプラスチック板の場合は、チャバネアオカメムシのオスは230匹、メス399匹で合計629匹であった。また、ツヤアオカメムシでは、黄色のプラスチック板の場合は、オス32匹、メス35匹で合計67匹であったのに対し、透明のプラスチック板の場合は、オス102匹、メス98匹で合計200匹であった。このように、透明のプラスチック板、すなわち、透光性を有する板材を用いることにより、捕獲数を3倍程度増やすことが可能であった。
【0044】
【表4】
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【0045】
なお、前記の実施形態では、集合フェロモン剤70は吊棒71と支持棒72とから構成される支持体に巻き付けて吊り下げ支持される例を示したが、図6に示される集合フェロモン剤70Aのように、1枚のスカート板11の上辺部13に引掛けられた針金、ひも等も支持具74の下端にU字状に湾曲させて吊下げられ、スカート板11の貫通孔23から見える位置に配置させるように構成することもできる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、カメムシ誘引部を4枚のスカート板から構成する四角錐台状とし、中間の漏斗部も四角錐台状とし、上方の容器部を直方体状の例を示したが、カメムシ誘引部を円錐台状とし、中間の漏斗部も円錐台を基本とする形状とし、上方の容器部を円柱状として構成することもできる。このように、果樹カメムシ類を下方で誘引し、上方に向けて先細りのカメムシ捕獲部を有する形状であれば、どのような形状でもよい。
【0047】
スカート板の凹凸加工としてエンボス加工の例を示したが、やすりによる粗面加工処理や、サンドブラスト法による表面処理加工を用いることもできる。さらに、ローレット加工による表面処理を行って、果樹カメムシ類の上方への歩行移動時の落下を防止するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の活用例として、カメムシ誘引部やカメムシ捕獲部に発光ダイオード等の光源を用いることができ、光源を取り付けることによって、さらに多くの果樹カメムシ類を捕獲することができる。また、果樹カメムシ類の捕獲に限らず、他の害虫の捕獲の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る果樹カメムシ類の捕獲器の一実施形態の斜視図。
【図2】図1の捕獲器の要部を分解した状態の斜視図。
【図3】図1の捕獲器の中央縦断面図。
【図4】スカート板の組立状態を示す要部斜視図。
【図5】捕獲器の使用状態を示す斜視図。
【図6】集合フェロモン剤をスカート板内に配置する他の例を示す要部斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1:果樹カメムシ類の捕獲器、2:カメムシ誘引部、3:カメムシ捕獲部、4:漏斗部、5:容器部、11:スカート板(経路)、21:固定具、41:導入部(経路)、42:先細部(経路)、43:通路部(経路)、50:容器本体、51:大径筒部、52:小径筒部(経路)、53:孔(通気用の開口)、60:蓋部、70,70A:集合フェロモン剤、75:ロープ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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