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明細書 :オリゴ糖合成酵素およびアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6000758号 (P6000758)
公開番号 特開2014-045704 (P2014-045704A)
登録日 平成28年9月9日(2016.9.9)
発行日 平成28年10月5日(2016.10.5)
公開日 平成26年3月17日(2014.3.17)
発明の名称または考案の名称 オリゴ糖合成酵素およびアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法
国際特許分類 C12P  19/00        (2006.01)
C12N   9/10        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12P 19/00
C12N 9/10 ZNA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2012-190474 (P2012-190474)
出願日 平成24年8月30日(2012.8.30)
審査請求日 平成27年7月28日(2015.7.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】中井 博之
【氏名】仁平 高則
【氏名】鈴木 絵里香
【氏名】大坪 研一
【氏名】北岡 本光
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 国際公開第2005/063782(WO,A1)
Xu, J., et al.,,Glycosidase, PH117-related [Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482],Database DDBJ/EMBL/GenBank [online],2011年 2月 8日,Accession No. AAO76140,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAO76140
調査した分野 C12N 1/00-15/90
C12P 1/00-41/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンと、以下の酵素学的性質と配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するオリゴ糖合成酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを含む溶液中でオリゴ糖合成反応を行うステップと、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンを回収するステップを含むことを特徴とするアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法
a)作用
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはキトビオースに作用して、アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンまたはマンノシル-β-1,4-キトビオースを生成する;
b)基質特異性
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはキトビオースに作用する;
c)至適pH
30℃の条件下で、pH5.5;
d)温度安定性
pH5.5の条件下で、60℃まで安定;
e)pH安定性
4℃、24時間の条件下で、pH4.5-10.5で安定。
【請求項2】
α-マンノース1-リン酸と、キトビオースと、以下の酵素学的性質と配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するオリゴ糖合成酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを含む溶液中でオリゴ糖合成反応を行うステップと、マンノシル-β-1,4-キトビオースを回収するステップを含むことを特徴とするアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法
a)作用
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはキトビオースに作用して、アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンまたはマンノシル-β-1,4-キトビオースを生成する;
b)基質特異性
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはキトビオースに作用する;
c)至適pH
30℃の条件下で、pH5.5;
d)温度安定性
pH5.5の条件下で、60℃まで安定;
e)pH安定性
4℃、24時間の条件下で、pH4.5-10.5で安定。
【請求項3】
前記溶液は、pH5.0~7.0であることを特徴とする請求項またはに記載のアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規に発見したオリゴ糖合成酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼおよび前記酵素が触媒するオリゴ糖合成反応を用いた、アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンおよびマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミン(以下、マンノシル-β-1,4-キトビオースという)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質が有する糖鎖の生体認識(細胞接着・抗原抗体反応・情報伝達・ウイルス感染など)への重要性については近年注目が集まるところである。糖鎖は、核酸、タンパク質に次ぐ第三の鎖といわれ、近年急速にその機能解明が進められている。その中で、アスパラギン結合型糖鎖は、タンパク質などに結合し、細胞分化、老化、免疫応答といった生命現象や、癌、ウイルス感染、炎症などの疾患に深く関与していることが知られている。さらに、分子レベルでの糖鎖機能の解明、さらには糖鎖を利用した創薬への応用が期待されている。
【0003】
しかし、生体内での発現量が微量な糖鎖試料の調製は現在有機合成法に頼らざるを得ず、その困難さが糖鎖工学研究分野や糖鎖再生医療の進展を妨げている。例えば、アスパラギン結合型3糖は、従来は、有機合成法による煩雑な多段階反応で製造されており(引用文献1)、効率的な大量調製が困難であるため、非常に高額であるという問題点があった。そのため、糖鎖の簡便な製造法の確立は急務となっている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4778315号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、効率的にアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため鋭意検討した結果、新規に発見したマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼが触媒するオリゴ糖合成反応を用いて、高価なアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンおよびマンノシル-β-1,4-キトビオースをワンステップで製造することができ、反応系のスケールアップによる大量調製も可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の酵素学的性質と配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するオリゴ糖合成酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを用いるものである。
a)作用
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルグルコサミノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミン(以下、キトビオースという)に作用して、アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンまたはマンノシル-β-1,4-キトビオースを生成する;
b)基質特異性
α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはキトビオースに作用する;
c)至適pH
30℃の条件下で、pH5.5;
d)温度安定性
pH5.5の条件下で、60℃まで安定;
e)pH安定性
4℃、24時間の条件下で、pH4.5-10.5で安定。
【0008】
そして、本発明のアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法は、α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンと、前記オリゴ糖合成酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを含む溶液中でオリゴ糖合成反応を行うステップと、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンを回収するステップを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法は、α-マンノース1-リン酸と、キトビオースと、前記オリゴ糖合成酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを含む溶液中でオリゴ糖合成反応を行うステップと、マンノシル-β-1,4-キトビオースを回収するステップを含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造の製造方法は、前記溶液が、pH5.0~7.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼが触媒するオリゴ糖合成反応により、α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンまたはキトビオースを出発材料として、アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンまたはマンノシル-β-1,4-キトビオースをワンステップで簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法によれば、加リン酸分解反応の逆反応であるオリゴ糖合成反応により、アスパラギン結合型糖鎖のコア構造を選択的に製造できる。

【0013】
具体的には、α-マンノース1-リン酸と、N-アセチルグルコサミンと、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを含む溶液中でオリゴ糖合成反応を行うことにより、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンを製造することができる。
【化1】
JP0006000758B2_000002t.gif

【0014】
また、α-マンノース1-リン酸と、キトビオースと、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼを含む溶液中でオリゴ糖合成反応を行うことにより、マンノシル-β-1,4-キトビオースを製造することができる。
【化2】
JP0006000758B2_000003t.gif

【0015】
反応液中でのマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼの濃度は特に限定されないが、0.76~76μM、好ましくは、1.5~3.8μMで使用し得る。

【0016】
マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼの30℃における至適pHは5.5付近であることから、前記溶液は、pH5.0~7.0であることが好ましく、特にpH5.5が好ましい。前記溶液としては、特に限定されるものではないが、酢酸緩衝溶液が好適である。

【0017】
また、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼのpH5.5における温度安定性は60℃までであることから、オリゴ糖合成反応は、30~60℃で行うことが好ましく、特に、30℃が好ましい。

【0018】
また、反応時間は、特に限定されるものではないが、30~60分が好ましく、特に、60分が好ましい。

【0019】
上記オリゴ糖合成反応により製造されたアスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンおよびマンノシル-β-1,4-キトビオースは、カラムクロマトグラフィーや結晶化等の公知の方法により単離することが可能であるが、高速液体クロマトグラフィーが好適である。

【0020】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。

【0021】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
バクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)のゲノム情報を基に、BT1033遺伝子に対するフォーワードプライマー(配列番号3)およびリバースプライマー(配列番号4)を設計し、合成した。BT1033遺伝子の塩基配列を配列番号2に、またこの塩基配列にコードされているアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【実施例1】
【0023】
バクテロイデス・シータイオタオミクロンのゲノムDNAを鋳型とし、上記のプライマー及びKOD plus polymerase(TOYOBO社製)を用い、95℃に2分間保持したのち、95℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で1分30秒間のサイクルを45回繰り返してPCR反応を行い、最後に68℃に5分間保持した。その結果、985bpの増幅断片が得られた。このPCRで増幅されるDNA断片は、5’末端にNdeIサイトを、3’末端にXhoIサイトをそれぞれ有するBT1033をコードするDNAである。
【実施例1】
【0024】
得られた増幅断片を制限酵素NdeI及びXhoIで消化後、同様に処理した市販の遺伝子発現用プラスミドpET-24a(ノバジェン社製)に高効率ライゲーション試薬Ligation high(TOYOBO社製)を用いて連結した。さらに、ライゲーション反応液を用いて大腸菌コンピテントセルDH5α(TOYOBO製)を形質転換し、C末端に6残基のヒスチジンからなるHisタグが付加されたBT1033をコードするDNAを含む発現ベクターpET-24aを回収した。
【実施例1】
【0025】
この発現ベクターpET-24aを用いて、大腸菌BL21(DE3)をHanahanらの方法(J.Mol.Biol.、1983年、第166巻、第557-580頁)に従って形質転換した。形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地200mLに植菌し、IPTG濃度を0.1mMとして誘導培養を18℃で24時間行った。培養液から遠心分離で回収した菌体を10mLの500mM塩化ナトリウムおよび10%グリセロールを含む20mMHEPES-NaOH緩衝液pH7.5に懸濁し、超音波処理により破砕した後、遠心分離後によって粗酵素液を得た。組換えタンパク質の精製は、Hisタグタンパク質精製用カラムHisTrapFF(GEヘルスケア社製)を用いたカラムクロマトグラフィーにより行った。得られた精製酵素溶液を、10mM HEPES-NaOH緩衝液pH7.0に対して透析を行い、遠心式フィルターユニットアミコンウルトラ-15(ミリポア社製)を用いた限外濾過によって濃縮することで、3.6mLの精製酵素標品を調製した。
【実施例2】
【0026】
得られた精製酵素標品を用い、以下に示す方法によって本タンパク質を新規酵素マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼと同定し、アスパラギン結合型糖タンパク質のコア糖鎖構造マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンおよびマンノシル-β-1,4-キトビオースを生成した。
【実施例2】
【0027】
50mM糖供与体(α-マンノース1-リン酸)、50mM糖受容体(N-アセチルグルコサミンまたはキトビオース)、精製酵素(それぞれ1.5、3.8μM)を含む40mM酢酸緩衝液(pH5.5)中で酵素反応を30℃、1時間行った。各反応液をアンバーライトMB3(オルガノ社製)で脱塩後、ショウデックスアサヒパック NH2P-50 4Eカラムによる75%アセトニトリルを溶媒とした高速液体クロマトグラフィーにより、それぞれ二糖画分(図1A)および三糖画分(図2A)を単離した。精製後の収量は共に2mgであった。それぞれの生成物をNMRにより分析したところ、マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンおよびマンノシル-β-1,4-キトビオースであることを確認した。
【実施例2】
【0028】
40mM酢酸緩衝液(pH5.5)中、2mMのα-マンノース1-リン酸および糖受容体を用いて、合成反応時に生成するリン酸をモリブデンブルー法(J.Biol.Chem.1946、162、421-428)により定量した。上記条件下に毎分1μモルのリン酸を生成する活性を1ユニットと定義した。その結果、N-アセチルグルコサミンおよびキトビオースを糖受容体としたときの活性はそれぞれ20および1.9ユニット/mgであった。
【実施例2】
【0029】
マンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼの30℃における至適pHは5.5付近であり(図3A)、安定pH範囲は4℃,24時間の条件下でpH4.5-10.5であった(図3B)。本酵素のpH5.5における安定性は60℃までであった(図3C)。本酵素を用いたオリゴ糖合成反応は、pH5.0~7.0、30~60℃が好ましいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように本発明は、医療創薬産業およびオリゴ糖製造業で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】実施例2のマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンのクロマトグラムである。
【図1B】実施例2のマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンの収率を示す図である。
【図2A】実施例2のマンノシル-β-1,4-キトビオースのクロマトグラムである。
【図2B】実施例2のマンノシル-β-1,4-キトビオースの収率を示す図である。
【図3A】実施例1で調製したマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼの至適pHを示す図である。
【図3B】実施例1で調製したマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼのpH安定性を示す図である。
【図3C】実施例1で調製したマンノシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンホスホリラーゼの温度安定性を示す図である。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図3A】
4
【図3B】
5
【図3C】
6