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明細書 :放射線量率の測定方法及び放射線量率マップの作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5845021号 (P5845021)
公開番号 特開2013-032926 (P2013-032926A)
登録日 平成27年11月27日(2015.11.27)
発行日 平成28年1月20日(2016.1.20)
公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
発明の名称または考案の名称 放射線量率の測定方法及び放射線量率マップの作製方法
国際特許分類 G01T   1/16        (2006.01)
FI G01T 1/16 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2011-168036 (P2011-168036)
出願日 平成23年8月1日(2011.8.1)
審査請求日 平成26年7月16日(2014.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】谷垣 実
【氏名】高宮 幸一
個別代理人の代理人 【識別番号】100099793、【弁理士】、【氏名又は名称】川北 喜十郎
【識別番号】100154586、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 正広
審査官 【審査官】藤本 加代子
参考文献・文献 欧州特許出願公開第02108978(EP,A1)
特表2008-537774(JP,A)
特開2004-205375(JP,A)
米国特許出願公開第2006/0033034(US,A1)
特開平08-334563(JP,A)
特開2010-266304(JP,A)
特開2001-311792(JP,A)
特開2001-311791(JP,A)
特開2001-208848(JP,A)
調査した分野 G01T 1/16
G01T 1/17
特許請求の範囲 【請求項1】
射線の線量率を測定する方法であって、
放射線の線量率を測定する線量率測定器であって、前記線量率測定器に入射した放射線が前記線量率測定器中で失ったエネルギーに基づいて線量率を算出するように構成された線量率測定器と、現在位置に関する位置データを取得する位置情報取得機構と、前記線量率測定器により測定された線量率データ及び当該線量率データが測定された地点における位置データを関連付けて放射線量率マップデータとして記録するデータ処理機構とを備える線量率計測システムを用意することと、
前記線量率計測システムを、放射線の線量率の測定以外の目的で道路を移動する車両に装備することと、
前記車両が放射線の線量率の測定以外の目的で前記道路に沿って移動している間に、前記線量率計測システムが前記放射線量率マップデータを収集することと
あらかじめ算出した、前記車両内での放射線の線量率に対する前記車両外での放射線の線量率の比率に基づいて、前記車両内で測定された放射線の線量率の測定データを、前記車両の外の地上1mの高さにおける放射線の線量率のデータに換算することとを備える放射線量率の測定方法。
【請求項2】
前記車両は、所定の経路で定期的に前記道路を巡回する車両である請求項1に記載の放射線量率の測定方法。
【請求項3】
前記車両は、郵便配達車、路線バス、配達車両、宅配車両及びタクシーからなる一群から選択される車両である請求項1又は2に記載の放射線量率の測定方法。
【請求項4】
前記車両は、放射線量率の測定とは異なる業務に従事して前記道路を巡回する業務車両である請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線量率の測定方法。
【請求項5】
前記線量率測定器は、固体シンチレーション検出器、半導体検出器、またはガスカウンタである請求項1~4のいずれか一項に記載の放射線量率の測定方法。
【請求項6】
前記あらかじめ算出した、前記車両内での放射線の線量率に対する前記車両外での放射線の線量率の比率は、ある測定位置において測定された、前記車両内での放射線の線量率と、前記車両を前記測定位置から遠ざけた場合の、前記測定位置における前記車両外での放射線量率との比率である請求項1~5のいずれか一項に記載の放射線量率の測定方法。
【請求項7】
前記あらかじめ算出した、前記車両内での放射線の線量率に対する前記車両外での放射線の線量率の比率は、ある測定位置において測定された、前記車両内での環境放射線による放射線の線量率と、前記車両を前記測定位置から遠ざけた場合の、前記測定位置における前記車両外での環境放射線による放射線量率との比率である請求項6に記載の放射線量率の測定方法。
【請求項8】
放射線の線量率マップを作製する方法であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載の放射線量率の測定方法によって、前記放射線量率マップデータを取得することと、
前記放射線量率マップデータに基づいて、前記道路に沿った放射線の線量率マップを作製することを備える放射線量率マップの作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばγ線の空間線量率のような、放射線量率を測定する方法、及びそれに基づいて放射線量率マップを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所のような原子炉を有する原子力関連施設の敷地内及び敷地周辺には、複数の固定式のモニタリングポストが点在するように配置されており、各モニタリングポストの位置における空間線量率が常時モニターされている。ここで、空間線量率(又は放射線量率)とは、対象とする空間の単位時間当たりの放射線量のことである。放射線の量を、物質が放射線から吸収したエネルギー量(吸収線量)で測定する場合、空間線量率は、吸収線量の単位であるGy(グレイ)を用いてGy/h(グレイ/時)で表される。あるいは、放射線の量を、生体の被曝の影響による生物学的影響の大きさ(線量当量)で測定する場合、空間線量率は、線量当量の単位であるSv(シーベルト)を用いてSv/h(シーベルト/時)で表される。なお、線量当量は、吸収線量に生体への影響に応じた係数をかけることにより求められる。空間線量率をモニターすることにより、放射性物質の漏洩をいち早く検知することができるとともに、必要に応じて、近隣住民に対して避難勧告などの適切な指示を出すことができる。しかしながら、チェルノブイリ原子力発電所や福島第1原子力発電所で発生した大規模な放射性物質の漏洩事故のような原子力災害が発生した場合、漏れ出した放射性物質は半径数十km~数百km(あるいはそれ以上)の広範囲の地域に拡散する。このような原子力災害が発生した場合、空間線量の分布を示すマップ(以下、放射線量率マップと呼ぶ)を作製することは、拡散した放射性物質がどこにどのくらい分布しているかを推定するため、及び、住民の被曝管理や放射性物質の拡散状況を推定するために重要であり、住民の避難区域や屋内退避区域を画定したり、住民が無用の被曝をしないように種々の規制区域を設けたりするために有用である。また、放射線量率マップの作製することは、除染計画や被害を受けた地域の環境修復の計画等を立てる上でも非常に重要である。
【0003】
放射線量率マップの一例として、γ線(あるいはX線)の線量率分布をマッピングした(γ線の)空間線量率マップが挙げられる。このような空間線量率マップを作製する場合、モニタリングポストにおいて計測される空間線量率のデータを利用することが考えられる。しかしながら、モニタリングポストの設置箇所は限られているので、すべての地域において空間線量率を測定することは不可能である。また、大規模な放射性物質の漏洩事故を想定して、あらかじめ広範囲の地域にわたって、モニタリングポストを密に設置することは費用の面からも現実的ではない。
【0004】
ここで、特許文献1には、設置場所を検知するGPS位置測定器及び放射線量を測定する放射線測定器を有する移動可能な子局と、子局から遠く離れた場所でデータ処理を行う親局とを備える緊急時環境放射線モニタリング装置が開示されている。なお、子局は、検出した位置データ及び放射線量データを無線で親局に伝送するデータ送信装置を有しており、親局は、各子局からの位置データ及び放射線量データを受信するデータ受信装置と、受信したデータを測定エリアの放射線量率マップとして画像化するデータ処理装置を有している。
【0005】
このような装置はすでに実用化されており、例えば福島第一、第二原子力発電所を有する福島県には、NaIシンチレーション検出器、電離箱測定装置、中性子線量測定装置、ダストサンプラ、気象観測装置及びゲルマニウム半導体検出器等を搭載した環境放射線測定車が配備されている。この環境放射線測定車は、平常時には、福島第一及び第二原子力発電所に係る原子力防災対策を重点的に充実するために、発電所から半径10kmの範囲の地域において定められた計104地点を巡回し、各地点の空間線量率、大気浮遊じん中の放射能濃度等を測定している。そして、緊急時には、原子力発電所周辺地域の、予め定められている緊急時環境モニタリング地点において、同様に空間線量率、大気浮遊じん中の放射能濃度等の測定を行うことになっている。いずれの場合にも、測定されたデータは、衛星携帯電話回線を通じて福島県原子力センターに伝送される。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平8-334563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、東日本大震災における、福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故に際して、以下のような問題のために環境放射線測定車を用いた空間線量率マップの作製を実施することができなかった。まず、測定されたデータが送信される福島県原子力センターは、事故のあった福島第1原子力発電所から5km程度しか離れておらず、高線量区域であるとして立ち入り禁止区域に指定された。そのため、データ解析のために必要な人員が立ち入ることができず、解析システムを稼働できないという問題があった。さらに、高線量区域で環境放射線測定車の車両自体が汚染されてしまい、正確な空間線量率を測定することができなくなるという問題があった。ここで、環境放射線測定車は、上述の多種多様な放射線検出器群を搭載した特注の特殊車両である。また、これらの放射線検出器にカスタマイズされた回路系、データ処理システムが車両に備え付けられているため、これらの検出器群を容易に他の車両に乗せ替えることができない。そのため、環境放射線測定車両が汚染される度に、車両の除染を行わなければ正確な測定を行うことができず、実用に耐えないという問題があった。
【0008】
また、環境放射線測定車は、上述のような種々の放射線検出器、専用の回路系、データ処理システムなどを搭載するために、大型のバンを改造して製造された特殊車両である。そのため、大型のバンでは入れないような細い路地や、道路以外の箇所(例えば公園、校庭、事業所内など)での測定ができないことも問題になっていた。また、福島県が導入していた環境放射線測定車のような特注の専用車両は非常に高額であるため、広域の空間線量マップを作製するために多数台の車両を投入することは困難であった。
【0009】
さらに、原子力災害では、災害発生後環境の汚染状況を数十年に渡って長期的に観測し続け、必要に応じて放射線防護のための行動制限、除染等の対策が取られ続けることになる。しかし従来の特殊車両では、被災地域を長期にわたって継続的に観測する事は金銭的にも人員的にも負担が大きく困難である。
【0010】
本発明の目的は、原子力災害発生後の環境の汚染状況を把握するために、放射線量率(γ線の空間線量率等)を容易に、且つ、長期的に計測するための方法及びそれを利用した放射線量率マップの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、住民の生活圏において放射線の線量率を測定する方法であって、
放射線の線量率を測定する放射線測定器と、現在位置に関する位置データを取得する位置情報取得機構と、放射線測定器により測定された線量率データ及び当該線量率データが測定された地点における位置データを関連付けて放射線量率マップデータとして記録するデータ処理機構とを備える線量率計測システムを用意することと、
前記線量率計測システムを、放射線の線量率の測定以外の目的で前記住民の生活圏を移動する移動体に装備することと、
前記移動体が前記住民の生活圏を移動している間に、前記線量率計測システムが前記放射線量率マップデータを収集することとを備える放射線量率の測定方法が提供される。
【0012】
本発明の第1の態様に従えば、放射線の線量率を測定する方法であって、
放射線の線量率を測定する線量率測定器であって、前記線量率測定器に入射した放射線が前記線量率測定器中で失ったエネルギーに基づいて線量率を算出するように構成された線量率測定器と、現在位置に関する位置データを取得する位置情報取得機構と、前記線量率測定器により測定された線量率データ及び当該線量率データが測定された地点における位置データを関連付けて放射線量率マップデータとして記録するデータ処理機構とを備える線量率計測システムを用意することと、
前記線量率計測システムを、放射線の線量率の測定以外の目的で道路を移動する車両に装備することと、
前記車両が放射線の線量率の測定以外の目的で前記道路に沿って移動している間に、前記線量率計測システムが前記放射線量率マップデータを収集することと
あらかじめ算出した、前記車両内での放射線の線量率に対する前記車両外での放射線の線量率の比率に基づいて、前記車両内で測定された放射線の線量率の測定データを、前記車両の外の地上1mの高さにおける放射線の線量率のデータに換算することとを備える放射線量率の測定方法が提供される。
【0013】
本発明の放射線量率の測定方法では、前記移動体は、前記住民の生活圏を巡回する車両であってもよい。この場合には、住民の生活圏における放射線量率のデータを容易に得ることができる。また、前記移動体は、前記住民の生活圏を所定の経路で定期的に巡回する車両であってもよい。この場合には、住民の生活圏における放射線量率のデータを容易に、長期間にわたって蓄積することができる。
【0014】
本発明の放射線量率の測定方法では、前記移動体は、郵便配達車、路線バス、配達車両、宅配車両及びタクシーからなる一群から選択される車両であってもよい。あるいは、前記移動体は、放射線量率の測定とは異なる業務に従事して前記住民の生活圏を巡回する業務車両であってもよい。いずれの場合にも、業務をこなす傍らで運転手が意識しないうちに放射線量率の測定を行うことができる。そのため、放射線量率の測定のために特に人員を割く必要がなく、人件費を大きく節約できる。
【0015】
本発明の第2の態様に従えば、住民の生活圏における放射線の線量率マップを作製する方法であって、
本発明の第1の態様に従う放射線量率の測定方法によって、前記放射線量率マップデータを取得することと、
前記放射線量率マップデータに基づいて、前記住民の生活圏における放射線の線量率マップを作製することを備える放射線量率マップの作製方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、住民の生活圏に密着した地域の放射線量率マップを容易に作製できる。また、そのようなマップを長期間にわたって作製し続けることにより、例えば、原子力災害発生後の環境の汚染状況の変化を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はKURAMAシステム1の概略図である。
【図2】図2はNaIシンチレーション検出器10の概略図である。
【図3】図3は固定装置120の概略図である。
【図4】図4は3次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカーを表示した空間線量率マップの一例である。
【図5】図5は、2次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカーが表示された空間線量率マップの一例である。
【図6】図6は、学校位置から約150m以内の位置(路上)で測定された空間線量率の測定結果と、文部省により測定された校庭での空間線量率の測定結果との相関を示すグラフである。
【図7】図7は、学校位置から約80m以内の位置(路上)で測定された空間線量率の測定結果と、文部省により測定された校庭での空間線量率の測定結果との相関を示すグラフである。
【図8】図8は、学校位置から約50m以内の位置(路上)で測定された空間線量率の測定結果と、文部省により測定された校庭での空間線量率の測定結果との相関を示すグラフである。
【図9】図9は、文科省が作製した空間線量率マップと、KURAMAシステムを用いて作製された空間線量マップとの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<KURAMAシステム1>
本発明に係る放射線量率マップの作製方法に用いられるKURAMAシステム1(線量率計測システム)について説明する。KURAMAシステム1は、Kyoto University RAdiation MAppingシステムの略であり、本発明者らを中心にして京都大学において開発された空間線量率マップを作製するためのシステムである。図1に示されるように、KURAMAシステム1は空間線量率を測定する放射線測定器としてのNaIシンチレーション検出器10と、全地球測位システム(GPSシステム)を利用して現在位置の情報を取得するGPSユニット20(位置情報取得機構)と、NaIシンチレーション検出器10及びGPSユニット20により取得されたデータ(線量率データ及び位置データ)を処理するデータ処理システム30と、NaIシンチレーション検出器10からのアナログ出力をA/D変換してデータ処理システム30に取り込むためのインターフェースユニット40と、データ処理システム30により処理されたデータを後述のサーバ90に送信するデータ送信ユニット50とを主に備える。

【0019】
図2に示されるように、NaIシンチレーション検出器10は、発光中心としてのタリウム(Tl)がドープされたNaI結晶11及びNaI結晶11に光学的に接続された光電子増倍管(不図示)が内部に配置された円筒形状の測定部12と、光電子増倍管に所定の電圧を印加する高圧電源や光電子増倍管からの出力信号を成形し波高分別するための電子回路が配置された本体部13と、測定部12及び本体部13を電気的に接続するケーブル14とを主に備える。本体部13には、測定された、単位時間あたりの放射線(γ線又はX線)の線量(以下、空間線量率という)を表示するメータ13a、NaIシンチレーション検出器10の測定レンジを切り替えるレンジスイッチ13b、測定された空間線量率に対応したアナログ電圧信号を出力する出力部13c等が設けられている。

【0020】
ここで、NaI結晶11の内部にγ線、X線などの放射線が入射した場合、NaI結晶11を構成する原子と放射線との相互作用により、高エネルギーの電子が放出されることがある。放出された高エネルギーの電子は、周りの原子を励起させつつエネルギーを失うが、励起された周りの原子からはシンチレーション光が発せられる。言い換えると、放出された高エネルギーの電子の運動エネルギーがシンチレーション光に変換される。このシンチレーション光の光量は、放出された電子の運動エネルギーの大きさに依存し、放出された電子の運動エネルギーの大きさは、NaI結晶11を構成する原子と放射線との相互作用の大きさに依存する。このことから、NaI結晶11から発せられるシンチレーション光の光量を測定することにより、γ線、X線などの放射線がNaI結晶11を構成する原子との相互作用によって結晶内部で失ったエネルギーの大きさを求めることができる。具体的には、NaI結晶11から発せられたシンチレーション光の光量を、NaI結晶11に光学的に接続された不図示の光電子増倍管により測定する。光電子増倍管からの出力信号は、本体部13に配置された電子回路により信号処理され、空間線量率が求められる。測定された空間線量率がメータ13aに表示されるとともに出力部13cから空間線量率の大きさに応じたアナログ電圧信号(例えば、0~10mV)が出力される。

【0021】
インターフェースユニット40は、出力部13cから出力されるアナログ電圧信号を増幅するオペアンプ41と、オペアンプ41により増幅されたアナログ電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換器42とを主に備える。なおオペアンプ41は、例えば0~10mVの低電圧のアナログ電圧信号を0~10Vのアナログ電圧信号に増幅する。

【0022】
インターフェースユニット40のAD変換器42によりAD変換された、空間線量率に関する情報を含むデジタル信号(以下、空間線量率信号と呼ぶ)と、現在位置の情報を含むGPSユニット20からの出力信号(以下、GPS出力信号と呼ぶ)とがデータ処理システム30に入力される。データ処理システム30は、空間線量率信号とGPS出力信号から、現在位置に関する情報(測定位置データ)を抽出するとともに、その位置での空間線量率データを抽出する。そして、測定位置データ(例えば、緯度情報及び経度情報)と空間線量率データとを関連付けて空間線量率マップデータ(放射線量率マップデータ)を作成し、これをテキストファイルに記録する。このテキストファイルには、1~10秒間隔で、空間線量率マップデータ(すなわち、測定位置データ及びその位置における空間線量率データ)が追加更新される。

【0023】
空間線量率マップデータが順次記載されたテキストファイルは、データ送信ユニット50によりサーバ90に送信される。サーバ90上に置かれたファイルは、他のユーザーとの間で共有することも可能である。

【0024】
上述のように、テキストファイルには、測定位置データと、それに関連付けられた空間線量率データとが記載されているので、これを用いて空間線量率マップを作製することができる。具体的には、例えば白地図を用意して、白地図上の測定位置に対応する箇所に、空間線量率の大きさによって色分けされたマーカー(例えばドットなど)を表示してもよい。あるいは、等高線マップを作製してもよい。

【0025】
また、測定位置データ及び空間線量率データを、電子地図データ(例えば、Google社のGoogle Earth(登録商標)等)と組み合わせることも可能である。この場合には、例えば図4に示されるように、3次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカーを表示させるなど、視覚的に分かり易い空間線量率マップを形成することができる。

【0026】
<空間線量率測定実験>
次に、KURAMAシステム1の有用性を確かめるために行った空間線量率測定実験について説明する。上述のKURAMAシステム1を自動車に搭載し、福島県内の道路を走行しつつ空間線量率の測定を行った。なお、人体に対する被曝の影響を議論する際には、地表面から1mの高さにおいて測定された空間線量率の測定データが用いられることが多い。そこで、本実験においても、NaIシンチレーション検出器10の測定部12を、車内に配置された固定装置120を用いて地上から1mの高さに固定した状態で測定を行った。図3に示されるように、固定装置120は、車両の運転席(又は助手席)の後方に測定部12を固定する器具であり、上下方向に延びる2本の脚部120Aと、2本の脚部120Aを平行に保ちつつ、運転席(助手席)のヘッドレストに連結して固定する連結固定部120Bと、2本の脚部120Aの間に架け渡されて、地上から1mの高さに、NaIシンチレーション検出器10の測定部12を支持する支持部120Cとを備えている。

【0027】
なお、本実験のように、車内に測定部12が配置される場合には、車外での測定に比べて空間線量率が低くなる。車体により、γ線などが遮蔽されるからである(シールド効果)。そこで、空間線量率の測定に先がけて、車体によるシールド効果の影響を取り除く補正を行うために、以下に示すような校正実験を行った。校正実験においては、まず、車外において、地上から1メートルの高さの位置に測定部12を配置して、車外における空間線量率を測定した。次に、車内の、地上から1メートルの高さに測定部12を固定した状態で、同じ位置での空間線量率をした。なお、車外における測定と車内における測定とで、同じ位置での測定がなされている限り、車外と車内の測定の順序は問わない。また、校正実験は広い駐車場のような、周りに建物や木などの構造物が無いところで行われることが好ましい。測定部12の近くに構造物がある場合、例えば、その表面に放射性物質が付着していると、測定部12に対して偏った方向から放射線が入射することになる。あるいは、構造物が、構造物の陰になる位置にある放射性物質からの放射線を遮蔽することも考えられる。このような理由により、測定部12の近くに構造物がある場合には、構造物が空間線量率測定の結果に影響を及ぼす可能性があり、車体によるシールド効果を正しく評価することができないからである。なお、車外における空間線量率の測定を行っている際には、車両を測定部12から遠ざけておくことが好ましい。車両の表面などに放射性物質が付着している場合、車外での測定において見かけ上空間線量率が高くなってしまうことを避けるためである。

【0028】
上述のようにして、同じ位置に関して、車外及び車内でそれぞれ空間線量率を測定することができ、その測定結果を用いて、車内での空間線量率に対する車外での空間線量率の比率(校正比率)を求めることができる。この校正比率に従って、車内で測定された空間線量率の値を車外での値に換算することができる。

【0029】
次に、路上走行中における空間線量率の測定について説明する。まず、前述の校正実験における車内での測定と同様に、固定装置120を用いて、NaIシンチレーション検出器10の測定部12を地上から1mの高さに固定した。そして、NaIシンチレーション検出器10の本体部13、GPSユニット20、データ処理システム30、インターフェースユニット40及びデータ送信ユニット50を、車内に配置した。

【0030】
本実験では、データ処理システム30として、いわゆるネットブックと呼ばれる小型で軽量のノート型コンピュータを用いた。また、データ送信ユニット50として3G回線(携帯電話回線)を通じてデータの送受信を行うモバイルルータ端末を用いた。さらに、NaIシンチレーション検出器10として、小型で軽量の検出器であるALOKA社のNaIシンチレーション検出器(TCS-161)を用いた。また、GPSユニット20はデータ処理システム30にUSB接続可能な小型モジュールとして構成されており、インターフェースユニット40も小型の箱形モジュールとして構成されている。また、データ処理システム30には、インターフェースユニット40、GPSユニット20、NaIシンチレーション検出器10等の各機器を制御するとともに、各機器間データ送受信を管理し、測定されたデータを所望の形式に加工成形するためのインターフェースプログラムが搭載されている。本実験で用いたインターフェースプログラムは、National Instruments社製のLabVIEW(登録商標)という開発プラットホームで開発されたプログラムである。LabVIEW(登録商標)を用いることにより、直感的に分かりやすいグラフィカルなインターフェースプログラムを容易に作製することができる。

【0031】
上述のように、KURAMAシステム1を構成する各要素は、いずれも小型軽量のモジュールとして構成されており、車内に配置する際に専用の架台等を特に必要としない。また、設置に際してわずかな場所しか占有しないため、小型車両(例えば軽自動車等)であっても十分設置することができる。また、いずれもバッテリー駆動が可能であるため、測定に際して外部電源を用意する必要がない。なお、測定が長時間に及ぶ場合などに備えて、外部電源を用意してもよい。例えば、車のバッテリーから電源を供給できるようにしてもよい。

【0032】
KURAMAシステム1を構成する各要素を車内に配置した状態で、福島市内及びその近傍の国道、県道などを走行しつつ、空間線量率の測定を行った。測定されたデータは、上述のようにデータ処理システム30により測定位置データ及びその測定位置における空間線量率データに変換され、テキストファイルとして記録された。そして、記録されたテキストファイルは、データ送信ユニット50によりサーバ90に送信された。なお、データ送信ユニット50がサーバ90にデータを送信するタイミングは不定期であってもよく、あるいは、一定間隔(例えば60秒間隔等)であってもよい。

【0033】
ここで、本実験においては、サーバ90として、クラウドコンピューティング技術を用いたオンラインストレージサービスの1つである、Dropbox社の「Dropbox(登録商標)」により提供されるサーバを用いられた。Dropboxを用いると、予め設定したローカルコンピュータの所定のフォルダ内のファイルを、ネットワーク上のストレージ領域に同期させることができる。そのため、ユーザーは、ファイルをサーバ90に送信するために特別な操作をする必要はなく、ローカルコンピュータの所定のフォルダのファイルを書き換えるだけでよい。このように、Dropboxのような汎用のオンラインストレージサービスを活用することにより、データ送信用の複雑なプログラムを用意しなくとも、容易にファイルをサーバ90に送信することができた。この際に、ファイルの変更部分のみを更新すること(差分同期)も可能であるため、通信量を軽減させることができる。なお、Dropboxを用いてネットワーク上のストレージ領域に置かれたファイルを、複数の者が共有することもできる。

【0034】
そして、一定時間毎に更新されたファイルに記載された測定位置データ及びその測定位置における空間線量率データを用いて、空間線量率マップを作製した。なお、本実験においては、上述のようなGoogle社のGoogle Earth(登録商標)を用いて、3次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカーが表示された空間線量率マップ(図4参照)や、2次元マップ上に空間線量率の大きさによって色分けされたマーカーが表示された空間線量率マップ(図5参照)などを作製した。

【0035】
本実験における測定の信頼性を確かめるために、本実験における空間線量率の測定結果と、文科省が福島県内の学校の校庭で実施した空間線量率の測定結果との比較を行った。図6、7、8は、それぞれ学校位置から約150m、約80m、約50m以内の位置(路上)で測定された、本実験での空間線量率の測定結果と、文部省により測定された校庭での空間線量率の測定結果との相関を示すグラフである。これをみると、いずれの距離においても、本実験における空間線量率の測定結果と、校庭での空間線量率の測定結果は強く相関していることがわかる。特に、学校からの距離が短くなるにつれて、よい相関がみられる。この結果から、KURAMAシステムを用いて行った測定結果は、従来の手法を用いて測定された結果と比較して十分信頼できることが確認された。

【0036】
図9に、KURAMAシステムを用いた上述の実験において測定されたデータに基づいて作製された空間線量率マップ(図9左側)と、文科省が校庭を含めて福島県内の複数の測定箇所(固定地点)で行った測定に基づいて作製した空間線量率マップ(図9右側)とを示す。ここで、図9左側に示されているKURAMAシステムを用いた測定に基づいて作製された空間線量率マップの範囲は、図9右側に示されている固定地点での測定に基づいて作成された空間線量率マップにおける四角領域に相当する。一目瞭然にわかるように、KURAMAシステムを用いて作製された空間線量率マップの方が、圧倒的に(位置)分解能が優れている。ここで、固定地点での測定では、必然的に測定地点の数が限られるため、位置分解能を上げることは困難であるのに対して、KURAMAシステムを用いた測定においては、測定地点の数は特に制限されず、必要に応じて任意の間隔で測定を行うことができる。そのため、容易に、高い位置分解能で空間線量率マップを作製することができる。

【0037】
<KURAMAシステムの応用例>
上述のように、KURAMAシステム1を用いることによって、広範囲の空間線量率マップを短時間に容易に作製できることがわかった。また、NaIシンチレーション検出器10の測定部12を固定装置120に固定し、上述の校正実験を行えば、あとは車で走行している間に、自動的に測定し続けることも可能である。そのため、測定に際して大人数が必要ではなく、1~2名で十分である。さらに、上述のように、KURAMAシステム1自体が小型且つ軽量のシステムであるため、小型車両を含む任意の大きさの自動車に搭載できることは勿論、例えば、リュックに入れた状態で人が背負って移動させることも可能である。また、KURAMAシステム1は安価に製作することができるため、KURAMAシステム1を大量に投入した一斉測定を行うこともできる。このような点を考慮すると、KURAMAシステム1を以下のように応用することも可能である。

【0038】
上述のように、KURAMAシステム1においては、従来の環境放射線測定車のように大型のバンを利用する必要はなく、小型車にも搭載できる。そのため、大型のバンが入っていけないような狭い道での空間線量率の測定も可能である。さらに、KURAMAシステム1は、人がリュックに入れて背負ったり自転車に搭載したりすることも可能である。そのため、例えば人がKURAMAシステム1を携帯することによって、自動車では走行できない場所での測定も可能となる。例えば、通学路のような歩道や、学校、公園、工場、事業所などの敷地内などにおいても空間線量率の測定を行い、空間線量率マップを作製することができる。

【0039】
また、上述のように、KURAMAシステム1においては、NaIシンチレーション検出器10が上述のような手順で適切に校正されていれば、測定中に測定者が特に操作しなくとも自動的に測定を行うことができる。そのため、測定を実行する者は必ずしもKURAMAシステム1や放射線計測に精通した者でなくてもよく、一般人であってもよい。例えば、後述のようにKURAMAシステム1をさらに小型軽量化することができた場合に、KURAMAシステム1を小学生や中学生に携帯させて、通学路における空間線量率の測定を行わせることも可能である。このように、小中学生にKURAMAシステム1を携帯させて通学させることにより、通学路における空間線量率のきめ細かいマップを容易に作製することができる。

【0040】
あるいは、定期的に所定のルートを巡回する車両にKURAMAシステム1を搭載し、これらの車両が巡回ルートを移動している間にそのルート上の空間線量率を測定することもできる。例えば、郵便配達車、路線バス、コンビニエンスストアの配達車両のように店舗に物品等を配達する配達車両等を用いることができる。一般に、これらの車両は、住民の生活圏に密着した地域を巡回するため、生活圏に密着した地域の空間線量率マップを容易に作製することができる。また、このような測定を長期間にわたって継続的に行うことにより、生活圏に密着した地域における、空間線量率の変動を把握することができるため、特に原子力災害発生後の環境の汚染状況を把握するために有用である。

【0041】
この場合において、巡回車両は必ずしも所定のルートを定期的に巡回しなくてもよい。例えば、宅配業者の配達車両(宅配車両)やタクシーのように、特に定まっていないルートを不定期に巡る車両であっても、生活圏に密着した地域を頻繁に移動する車両であれば、同様に生活圏に密着した地域の空間線量率マップを作製するために用いることができる。

【0042】
このように、従来の環境放射線測定車のように、放射線測定を主目的として走行される車両ではなく、放射線測定とは別の業務(例えばバスの運行業務や宅配業務)などのために所定(又は不特定)のルートを巡回する車両にKURAMAシステム1を搭載することにより、業務をこなす傍らで運転手が意識しないうちに空間線量率の測定を行うことができる。この場合には、放射線測定のために人員を割く必要がなく、人件費を大きく節約できる。このことは、生活圏に密着した地域の空間線量率のデータを長期間にわたって蓄積していく体制を作る上で非常に有利である。

【0043】
以上の説明において、KURAMAシステム1を自動車に搭載して、空間線量率の測定を行う場合、固定装置120を用いてNaIシンチレーション検出器10の測定部12を地上から1mの高さに固定していた。しかしながら、本発明はこれには限られず、任意の方法で任意の箇所に測定部12を車内(又は車外)に固定することができる。この場合において、空間線量率の測定データを、地上から高さ1mの位置での測定データに換算することができるのであれば、必ずしも測定部12を車内(又は車内)の、地上から高さ1mの位置に固定する必要はない。例えば、固定装置120を用いて、地上1mの高さに測定部12を固定することに代えて、自動車の後部座席ドア上のハンドル部分(掴まり部分)(高さ1.2~1.5m程度)に測定部12を自動車の進行方向後方に向けて固定してもよい。この場合において、上述のような車内での空間線量率に対する車外での空間線量率の比率(校正比率)に、測定部12の高さの違いも含めてもよい。つまり、上記校正比率を、車内(後部座席ドア上のハンドル部分)で測定された空間線量率に対する、車外(地上1mの位置)で測定された空間線量率の比率として測定してもよい。このようにすれば、車内の、地上1.2~1.5m程度の高さで測定された空間線量率の測定データを、車外の地上1mの高さにおける空間線量率のデータに換算することができる。

【0044】
以上の説明において、空間線量率を計測する放射線計測器として、NaIシンチレーション検出器10を例に挙げて説明してきた。しかしながら本発明はこれには限られず、任意の放射線計測器を用いることができる。例えば、CsIシンチレーション検出器のような固体シンチレーション検出器や、GM管、比例計数管のようなガス充填型の電離放射線検出器(ガスカウンタ)や、Ge検出器のような半導体検出器などを用いることができる。ここで、GM管などのガスカウンタは、γ線だけでなくβ線を計測することも可能ではある。ただし、内部のガス密度が低いため透過力の高いγ線は相互作用しにくく、γ線に対する感度は低い。これに対して、NaIシンチレーション検出器、CsIシンチレーション検出器のような固体シンチレーション検出器は、一般に、放射線の入射する入射窓が厚いためβ線が透過できず、主にγ線(及びX線)の測定に限られるが、GM管などのガスカウンタに比べてγ線に対する感度が高い。また、NaIシンチレーション検出器のような固体シンチレーション検出器においては、出力パルスのパルス波高がシンチレーション光の光量に比例し、前述のように、シンチレーション光の光量は、γ線、X線などの放射線がNaI結晶等のようなシンチレータを構成する原子との相互作用によって結晶内部で失ったエネルギーの大きさに比例する。つまり、固体シンチレーション検出器においては、出力パルスのパルス波高として放射線のエネルギー情報を求めることができる。このように固体シンチレーション検出器においては、入射した放射線のエネルギー情報を求めることができるので、吸収線量(単位はGy)を求めることができるとともに、吸収線量に放射線のエネルギーによって変わる生体効果の係数をかけることにより、線量当量(単位はSv)を求めることができる。これに対して、GM管では放射線が入射したかどうかの情報しか得ることができず、入射した放射線のエネルギーを判別することができない。そのため、GM管による測定では、放射線源を予め仮定しない限り、吸収線量(単位はGy)や線量当量(単位はSv)を求めることはできない。

【0045】
また、Ge検出器などの半導体検出器は、γ線に対する感度がある程度高く、エネルギー分解能も高いという利点を有している。しかしながら、測定中は液体窒素などで冷却し続ける必要があることや、検出器からの信号を取り出して処理するために非常に複雑な電子回路が必要となるなど、その取り扱いが困難である。これに対して、固体シンチレーション検出器は取り扱いが容易であり、本発明に用いられる放射線計測器として好ましい。

【0046】
一般に、物質とγ線との相互作用は、物質を構成する元素の原子番号が大きくなるほど大きくなることが知られている。ここで、Naの原子番号は11であるのに対して、Csの原子番号は55であることから、NaIシンチレーション検出器とCsIシンチレーション検出器とを比べると、CsIシンチレーション検出器の方がγ線に対する感度が高いと言える。そのため、NaIシンチレーション検出器10に代えてCsIシンチレーション検出器を採用することにより、γ線に対する感度を維持しつつ、装置全体をさらに小型軽量化することができる。

【0047】
また、上述の説明においては、データ処理システム30としてネットブックと呼ばれる小型軽量のノート型コンピュータを用い、データ処理システム30とその他の機器(例えばインターフェースユニット40やGPSユニット20等)はデータ処理システム30とは独立の機器として設けられていた。しかしながら本発明はこれには限られず、KURAMAシステム1のさらなる小型軽量化を実現するために、KURAMAシステム1を構成する各構成部分の一部又は全部を、一体に形成してもよい。例えば、データ処理システム30とインターフェースユニット40とGPSユニット20とを一体に組み込んだ一体型のコンピュータユニットを作製してもよい。

【0048】
また、上述の説明において、測定位置に関する情報はGPSユニットを用いて計測されていたが、本発明は必ずしもこれには限られない。例えば、渋滞の無い地域を巡回する路線バスのように、所定の時刻に所定の場所を通ることがほぼ確実である場合には、GPSユニットにより計測された経度及び緯度の情報に代えて、位置情報として時刻を記録してもよい。正確な時刻が分かれば、そのとき走行していたおおよその位置を算出できるからである。

【0049】
上述の説明において、KURAMAシステム1は、測定されたデータを記載したテキストファイルをサーバ90に送信するためのデータ送信ユニット50を有していた。しかしながら、測定データは必ずしもサーバ90に送信されなくてもよい。例えば、測定されたデータをKURAMAシステム1のデータ処理システム30でデータ処理し、ローカルのデータだけを用いて空間線量率マップを形成してもよい。あるいは、KURAMAシステム1が取り外し可能なハードディスク、不揮発性の半導体メモリ(例えばSDメモリ(登録商標)など)などの記憶媒体を備え、これらの記憶媒体を介して測定されたデータを他の解析システム(例えば他のKURAMAシステムのデータ処理システムや他のコンピュータなど)に送り、そこで空間線量率マップを作製してもよい。

【0050】
なお、測定されたデータを格納するファイルは、必ずしもテキストファイルでなくてもよく、任意の形式(例えばバイナリファイル)であってもよい。また、データ処理システム30に搭載されたインターフェースプログラムは、必ずしもLabVIEW(登録商標)により作製されなくてもよい。また、NaIシンチレーション検出器等の放射線測定器からの出力は必ずしもアナログ電圧信号でなくてもよく、例えば放射線量率の情報を含んだデジタル信号が出力されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、例えば定期的に所定のルートを巡回する路線バスにKURAMAシステムを搭載することで、容易に空間線量率マップを作製できる。この場合において、本発明に係るKURAMAシステムは小型軽量化が可能であり、運用に際して特別な操作を必要としないため、専門知識が無い一般人であっても容易に空間線量率の測定を行うことができる。また、故障した場合を除けば、メンテナンスフリーにすることができるため、電源の供給さえ確保してあれば、路線バスの運転手はKURAMAシステムを搭載しているかどうかを全く意識しないまま、通常の業務として路線バスを運転するだけで、路線バスのルート上の空間線量率測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 KURAMAシステム
10 NaIシンチレーション検出器
20 GPSユニット
30 データ処理システム
40 インターフェースユニット
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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