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明細書 :放電灯及び放電灯装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5534471号 (P5534471)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年7月2日(2014.7.2)
発明の名称または考案の名称 放電灯及び放電灯装置
国際特許分類 H01J  65/04        (2006.01)
FI H01J 65/04 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2011-518519 (P2011-518519)
出願日 平成22年6月4日(2010.6.4)
国際出願番号 PCT/JP2010/059563
国際公開番号 WO2010/140691
国際公開日 平成22年12月9日(2010.12.9)
優先権出願番号 2009135569
優先日 平成21年6月4日(2009.6.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年5月28日(2013.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】神藤 正士
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】山口 剛
参考文献・文献 特開2007-227170(JP,A)
特開2008-140575(JP,A)
特開2007-115534(JP,A)
特開2007-317398(JP,A)
調査した分野 H01J 65/04
JST7580(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
光透過性を有する非導電性部材で形成され、かつ内部に発光物質が封入された放電容器と、
一方の端部が前記放電容器の内部に設けられ、他方の端部が前記放電容器の外部に突出した第1のアンテナ部材と、
一方の端部が前記放電容器の内部に設けられ、他方の端部が前記放電容器の外部に突出して電磁波導波手段と接続可能な第2のアンテナ部材と、
前記第1のアンテナ部材の前記放電容器の外部に突出した部分に設けられた外部インピーダンス部と、
を備え、
前記外部インピーダンス部は、前記第1のアンテナ部材の前記放電容器の外部に突出した部分に巻き付けられ、前記第1のアンテナ部材からのマイクロ波の漏洩を防止する装荷コイルである、
放電灯。
【請求項2】
前記電磁波導波手段から電磁波を供給することにより、前記第1のアンテナ部材の一方の端部と前記第2のアンテナ部材の一方の端部との間隙で放電が発生するように構成されていると共に、前記間隙と前記外部インピーダンス部とにより前記電磁波の共振回路を構成している、
請求項1記載の放電灯。
【請求項4】
前記装荷コイルの線の長さは、前記第2のアンテナ部材へ入力される電磁波の一波長である請求項1又は2に記載の放電灯。
【請求項5】
前記第1のアンテナ部材の前記放電容器の外部に突出された部分は、非導電性部材に覆われ、
前記装荷コイルは、前記第1のアンテナ部材の非導電性部材で覆われた部分に巻き付けられている
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の放電灯。
【請求項6】
電磁波を発生する電磁波発生手段と、
前記電磁波発生手段により発生された電磁波が導かれる、内部導体を有する電磁波導手段と、
前記電磁波導波手段に前記第2のアンテナ部材が接続された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載に放電灯と、
を備えた放電灯装置。
【請求項7】
前記電磁波導波手段は、同軸伝送線路である、
請求項6記載の放電灯装置
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯及び放電灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドライト、プロジェクタ用の光源として、小型の高輝度放電ランプ(HIDランプ)が広く利用されている。
【0003】
特許文献1及び2には、内部に発光物質が封入される封入空間を有する膨出部と、膨出部に対向して連設される一対の細管部を有する透明容器と、細管部それぞれの内部に封入される内部導電体と、細管部の外周部に、概ね内部導電体の長手方向範囲に巻回される外部導電体としてのコイル、とから構成されたマイクロ波無電極ランプが記載されている。このように構成されたマイクロ波無電極ランプは、コイルが受信するマイクロ波により点灯されるが、放射光強度が低く実用性に欠ける。

【特許文献1】特開2008-140575号公報
【特許文献2】特開2008-140576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、ランプの点光源化が検討されている。しかし、ランプの点光源化を図ろうとすると、ランプ内の放電長が短くなってしまい、ランプ(負荷)インピーダンスが過小となる。このため、このランプを点灯する点灯回路との整合がとりにくくなり、ランプ内部への電力供給の効率が低下してしまう問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情を鑑みて提案されたものであり、電力供給を効率よく行うことができる高効率の点光源型放電灯及び放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明である放電灯は、光透過性を有する非導電性部材で形成され、かつ内部に発光物質が封入された放電容器と、一方の端部が前記放電容器の内部に設けられ、他方の端部が前記放電容器の外部に突出した第1のアンテナ部材と、一方の端部が前記放電容器の内部に設けられ、他方の端部が前記放電容器の外部に突出して電磁波導波手段と接続可能な第2のアンテナ部材と、前記第1のアンテナ部材の前記放電容器の外部に突出した部分に設けられた外部インピーダンス部と、を備えている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の放電灯であって、前記電磁波導波手段から電磁波を供給することにより、前記第1のアンテナ部材の一方の端部と前記第2のアンテナ部材の一方の端部との間隙で放電が発生するように構成されていると共に、前記間隙と前記外部インピーダンス部とにより前記電磁波の共振回路を構成している。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の放電灯であって、前記外部インピーダンス部は、前記第1のアンテナ部材の前記放電容器の外部に突出した部分に巻き付けられた装荷コイルである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の放電灯であって、前記コイルの長さは、前記第2のアンテナ部材へ入力される電磁波の1波長相当である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の放電灯であって、前記第1のアンテナ部材の前記放電容器の外部に突出された部分は、非導電性部材に覆われ、前記コイルは、前記第1のアンテナ部材の非導電性部材で覆われた部分に巻き付けられている。
【0011】
請求項6の発明である放電灯装置は、電磁波を発生する電磁波発生手段と、前記電磁波発生手段により発生された電磁波が導かれる、内部導体を有する電磁波導波手段と、前記電磁波導波手段に前記第2のアンテナ部材が接続された請求項1から請求項5のいずれか1項に記載に放電灯と、を備えている。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の放電灯装置であって、前記電磁波導波手段は、同軸伝送線路である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力供給を効率よく維持して点光源化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の放電灯装置の実施の形態を示す概略図である。
【図2】放電灯及びラーンチャを示す概略図である。
【図3】コイル線長-発光効率の測定結果を示す図である。
【図4】入射マイクロ波電力-発光効率の測定結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下では、放電灯として高輝度高圧放電ランプ(HIDランプ)を用いた放電灯装置の実施の形態を説明する。
【0016】
[放電灯装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る放電灯装置の構成を示す図である。放電灯装置は、高輝度放電ランプであるHIDランプ10と、HIDランプ10を点灯させる放電灯点灯装置12と、を備えている。
【0017】
放電灯点灯装置12には、高周波(RF)またはマイクロ波等の電磁波を導波するラーンチャ14が設けられている。ラーンチャ14の一端は、HIDランプ10の発光部が焦点位置に位置するように集光用反射鏡16に固定されている。
【0018】
ラーンチャ14の他端は、電磁波を導波する同軸伝送線路18を介して小型の固体発振器20に接続されている。固体発振器20としては、例えば、発振器20A、アンプ20B、及びアイソレータ20Cを備えたソリッドステート発振器が用いられる。固体発振器20には、例えば、28Vの電圧を出力する直流電源22が接続されている。なお、直流電源22の電圧は変更可能である。
【0019】
図2は、HIDランプ10の構成を示す図である。HIDランプ10は、内部に放電空間10Aが形成された楕円体状の放電容器10Bと、一対の棒状部材10Cと、を備えている。放電容器10B内には、例えば、キセノンガスと少量の添加物とからなる発光物質が封入されている。一対の棒状部材10Cは、放電容器10Bの長軸方向の延長線上に所定間隔隔てて設けられている。
【0020】
一対の棒状部材10Cの各々の一端は放電空間10A内に挿入されており、他端は放電容器10Bの外側に露出している。各棒状部材10Cの中心軸には、先端が先鋭に形成された金属製の棒状のアンテナ部材10Dがそれぞれ埋設されている。各アンテナ部材10Dは、放電容器10Bの内部では、各棒状部材10Cに埋設されてなく、露出されている。アンテナ部材10Dは、例えばタングステンまたはモリブデンで構成されている。また、アンテナ部材10Dの金属材料と絶縁体の熱膨張係数の相違に起因する破壊を避けるために、モリブデンの箔の両端の各々に、棒状のタングステンが接続されてもよい。本実施の形態では、高周波電力が、発光のための放電部において高効率で消費され、放電容器10Bとアンテナ部材10Dとの接合部での発熱は殆ど生じない。したがってこれを用いない構成がコスト低減のためにも推奨できる。
【0021】
放電容器10B及び一対の棒状部材10Cは、透光性を有する非導電性部材である石英またはアルミナ等の高誘電率絶縁体で形成されている。一対のアンテナ部材10Dの先端部は、ギャップGの間隔だけ隔てて放電容器10B内に挿入されている。また、アンテナ部材10Dの各々の他端部は、各棒状部材10Cに覆われた状態で、放電容器10Bから外部へ突出している。このように、一対のアンテナ部材10Dは、互いにギャップGの間隔だけ隔てて配置されている。
【0022】
また、一対の棒状部分10Cのうち、ラーンチャ14に接続されていない側の棒状部分10Cであって放電容器10Bの外部に露出している部分には、ヘリカルコイル(装荷コイル)10Eが巻き付けられている。装荷コイル10Eは、非導電性部材の棒状部分10Cに巻き付けられているので、当該棒状部分10Cの中心軸に埋設されているアンテナ部材10Dとは導通されていない。装荷コイル10Eは、ラーンチャ14から導波されたマイクロ波が棒状部分10Cから漏洩するのを防止する。なお、装荷コイル10Eについては後述する。
【0023】
ラーンチャ14は、内部円筒部材14Aと、内部円筒部材14Aを囲むように、内側面が内部円筒部材14Aの外側面と所定距離隔てて同軸に設けられた外部円筒部材14Bと、を備えている。内部円筒部材14A及び外部円筒部材14Bは、金属等の導体で構成されている。内部円筒部材14Aの先端部には、HIDランプ10のアンテナ部材10Dが埋設された棒状部分10Cが挿入され、かつ、HIDランプ10が取り付けられる取り付け部14Cが形成されている。そして、アンテナ部材10Dを内部円筒部材14Aに電気的に接続すると、マイクロ波伝送効率が改善され、発光効率が向上する。なお、内部円筒部材14Aに代えて、先端部に取り付け部14Cが穿設された円柱状部材を用いても良い。ソリッドステートマイクロ波発振器の出力端に用いるメスのN型コネクタを、ラーンチャ14として用いることができる。
【0024】
また、内部円筒部材14Aの外側面と外部円筒部材14Bの内側面との間には、固体発振器20で発振され、かつ、同軸伝送線路を導波した電磁波を、取り付け部14Cに取り付けられたHIDランプ10に供給されるように導く導波路が形成されている。
【0025】
本実施の形態によれば、固体発振器20で発振された電磁波は、同軸伝送線路を介してラーンチャ14の端部に導波され、ラーンチャ14の同軸導波路で導波されて、取り付け部14Cに取り付けられたHIDランプ10に供給される。アンテナ部材10Dが放電容器10Bから露出し、アンテナ部材10Dが内部円筒部材14A内に挿入されて、ラーンチャ14の同軸導波路に電気的に接続されているため、供給された電磁波はアンテナ部材10Dを介して放電容器10B内に直接導波され、ランプ点灯前のアンテナの高インピーダンス部での電磁波伝播が妨げられて、電磁波が高インピーダンス部局所から放射される。放射された電磁波は放電容器10Bの内部に存在しているので、放射部位近傍の発光物質を選択的に励起し、これにより、容器内部の高圧ガス等の発光物質が効率よく放電する。
【0026】
HIDランプ10をラーンチャ14に取り付けた状態で、外部円筒部材14Bの端部と内部円筒部材に挿入されていないアンテナの端部との間の距離L、すなわちアンテナの外部円筒部材から突出している部分の長さが、電磁波の波長λの1/4の長さになった場合、電磁波は周囲の空間に効率よく放射される。このとき、距離Lの途中に設けられたギャップGには強い電磁波電界が発生する。この電磁波電界は、充分に強く、高気圧中でも容易に放電を形成することができる。
【0027】
本実施の形態においては、ギャップGの長さが短くなれば、発光部の長さが縮小し、点光源が構成される。一方、ギャップGの長さを長くすれば、放電領域が広がり、中、大型の高圧HIDランプ10の点灯が可能となる。
【0028】
本実施の形態のように、アンテナ部材10Dを誘電体損失が少なく誘電率の高い耐熱性のある誘電体で被覆しても、放電の開始と維持には影響しない。このことから、本実施の形態のアンテナを備えたランプは実質的な無電極放電ランプとして取り扱うことができる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態の放電灯装置は、電磁波がアンテナを介して放電容器10B内部に直接供給され、アンテナ先端部付近に電磁波電界が局所的に集中するため、放電容器10Bに封入された高圧ガスを効率よく放電させることができる。封入ガスが高圧であるので、高温高密度のプラズマが発生し、ランプ内のガス圧が高いために高温高密度プラズマの拡散速度が遅いので、アンテナ付近に電磁波電界分布に近い放電形状でプラズマが局在して、高輝度の発光を行う。
【0030】
母ガスとして、高圧のアルゴンやキセノンが封入され、添加物として、NaI、ScIが封入される。このため、容易に電離し発光するので、演色性が高く発光効率が高い発光が得られる。母ガスと添加物は、放電灯、メタルハライドランプ、HIDランプ10で用いることのできる表1に示す全ての気体を用いることができる。さらに、近年用いられるSなどの分子ガスも用いることができる。
【0031】
【表1】
JP0005534471B2_000002t.gif

【0032】
[点光源化ためのギャップGの狭小化と発光効率の問題]
点光源化のために、プラズマを維持する空間である、電極あるいはアンテナの間隔Gを狭くすると、発光効率を高くして点灯することが困難となる。この点について、詳細に説明する。
【0033】
ランプへの入射電力Tは放電の発生と維持のために消費される電力Aのほか、空間に放射される電力B、ランプで反射されて電源側に戻る電力Cに分かれる。A/Tが大きくできる点灯方式のランプは発光効率が高くなる。このため、BとCをできる限り小さくするような放電方式が必要となる。
【0034】
Cを小さくするには2つの条件(共振条件及び整合条件)を満たす必要がある。
【0035】
共振条件:ランプを(1)放電部および(2)アンテナ(電極)とで構成される負荷インピーダンスZと見なすと、ZのリアクタンスXがゼロとなるときに、共振条件が満たされて無効電力を無くすことができる。
【0036】
整合条件:Zの抵抗分Rが電源と負荷を結ぶ伝送線路の特性インピーダンスZに等しいときに、電源から負荷に供給される電力が最大となる。
【0037】
上記の共振条件及び整合条件は、以下の(1)式、(2)式を満たすときに満足される。
【0038】
【数1】
JP0005534471B2_000003t.gif
・・・(1)


JP0005534471B2_000004t.gif ・・・(2)
【0039】
ただし、νは、電子と他の粒子との衝突周波数であり、Cは、後述するキャパシタンスである。また、ωは、マイクロ波角周波数であり、ωは、電子プラズマ角周波数である。
【0040】
Rは、G、封入ガス圧P、およびプラズマ密度Nに対して、R∝PG/Nの関係がある。G<2mm以下になると、R<Zとなって整合条件を満たせなくなり、放電効率が低下する。
【0041】
放射光量Fは放電長の表面積SとNに、またSはGに比例する。Gを1/nに短縮すると、Fを等しく維持するには、同じ入射電力Tの下で、プラズマ密度Nをn倍に引き上げる必要がある。
【0042】
以上より、R=一定の下では、Pは1/Gに比例することがわかる。すなわち、Gを1/nにするとPをn倍にする必要がある。
【0043】
したがって、点光源化のためにGを小さくすると、Pを高めない限り、整合条件と共振条件を満たして高効率点灯をすることができない。現在の技術ではランプ封入ガス圧は点灯時で50気圧以上200気圧以下である。また、高圧化による黒化が、ランプ壁の失透を招く恐れが高い。
【0044】
[ギャップGのキャパシタンスの補償]
本実施形態のHIDランプは、電極をモノポールアンテナと見なして、マイクロ波電力をランプ中心部にあるアンテナギャップGに給電する。放電が安定に点灯して高密度プラズマが形成されると、ギャップはプラズマにより短絡され、モノポールアンテナが完成する。しかし、Gを短くすると、実質的にモノポールアンテナに大きなキャパシタンスCが直列に挿入されたことになり、モノポールアンテナの共振条件が崩れ、無効電力が増大する。
【0045】
このため、ランプ先端部にインダクタンスLのコイルを装荷して共振条件を回復する必要が生じる。
【0046】
装荷コイル10Eは、石英を誘電体として当該装荷コイル10Eとの間で形成されるキャパシタCと装荷コイル10EのインダクタンスLの直列回路となる。装荷コイル10Eは、ランプ点灯時に以下の効果を発揮する。
【0047】
第1に、ランプ点灯時には高密度プラズマが生成されて、放電部のインピーダンスZ=0となるので、モノポールアンテナからマイクロ波が外部に放射される。装荷コイル10Eは自身のインダクタンスLとキャパシタンスCにより共振回路を形成し、漏洩しようとするマイクロ波を補足する。
【0048】
第2に、補足されたマイクロ波は 共振回路の間を往復する間に上部アンテナ先端部でプラズマ生成を助ける。
【0049】
第3に、この結果、発光効率が改善される。とりわけ、アンテナギャップを短くする点光源型AEMDランプではCが大きくなるので、ランプは短絡状態に近くなり、発光効率が低くなるが、装荷コイル10Eはこのような場合に効果を発揮する。
【0050】
ここで、装荷コイル10Eとしてヘリカルコイルを装荷することにより、発光効率を改善する原理について説明する。
【0051】
まず、ランプを点光源型にするには、Gを小さくすることが必要である。整合条件と共振条件とが成り立つ場合、Gを小さくすることは、(1)式と(2)式から分かるように、プラズマ密度を下げることに対応するので、放射光強度が低下する。従って、この場合には、後述するように、上側のアンテナ部材10Dへのヘリカルコイルの装荷が、小さなGの放射光強度の増大に効果を発揮する。
【0052】
このように、AEMDランプでは点灯時に問題があることが判る。この問題は、ランプ上部にヘリカルコイルを装荷することにより解決することができる。ヘリカルコイルのインダクタンスをL、上側のアンテナ部材10Dとの間のキャパシタンスをCとすると、ランプインピーダンスのリアクタンスは、以下の(3)式で表される。
【0053】
【数2】
JP0005534471B2_000005t.gif

【0054】
とΨは、以下の(4)式、(5)式で表される。ここで、モノポールアンテナの共振条件ωL=1/ωCを適用している。
【0055】
【数3】
JP0005534471B2_000006t.gif

【0056】
Ψは、マイクロ波入射電力とともにωが増加するにつれて、マイナス→0→プラス→0のように変化する。従って、予めX<0としておけば、共振条件X=0を満たすときのωは、X=0の時に比べて増大するので、小さなGの点光源ランプでも光量を増大することができる。これは、ωが以下の(6)式で表される条件を満たす時、モノポールアンテナからランプ外部に漏洩するマイクロ波電力を、ヘリカルコイルの作るLとCの共振回路に蓄えて、放電の点灯に有効利用している、と解釈することができる。
【0057】
【数4】
JP0005534471B2_000007t.gif

【0058】
ところで、点光源にするためにアンテナギャップを更に縮小して、例えば1mm以下にすると、1/ωCがRおよびωLよりも小さくなって、マイクロ波はプラズマを生成することなく、Cをバイパスとしてランプから外部に漏洩してしまうことになる。このような場合、ヘリカルコイルは漏洩しようとするマイクロ波電力を蓄積して漏洩を抑制するので、ランプの発光効率を改善することができる。
【0059】
[放射抵抗の低減]
アンテナギャップに高密度プラズマが生成されて、ギャップが実質的に短絡されると、ランプはモノポールアンテナと等価となり、放射抵抗が増大する。すなわち、ランプに入射する電磁波(マイクロ波)は効率よく空間に放射されて損失となる。これは等価回路的には放射抵抗として扱われ、無駄となる。装荷コイルは電磁波(マイクロ波)電力の電磁電力の蓄積素子として機能し、放射抵抗の軽減を図ることができる。
【0060】
装荷コイルの線の長さLは、電磁波(マイクロ波)の一波長が最適である。この時、装荷コイルには定在波が励起される。定在波は両端で最大(定在波の腹)となり、中間部で最小(定在波の節)となる。従って、装荷コイルの片方の先端を放電部(10B)付近に設置すると、ここに励起されるマイクロ波電界(定在波の腹)が放電の発生と維持に貢献するので、放射抵抗が軽減し、発光効率が大幅に向上する。
【0061】
図3は、コイル線長-発光効率の測定結果を示す図である。なお、巻き数は最適化してはいない。L=マイクロ波の一波長の付近で、発光効率が最大となることが分かる。
【0062】
[装荷コイルの材質]
装荷コイルには数10W程度のマイクロ波電力が蓄積されていると考えられ、高温に加熱される。従って、装荷コイルの材料は、高温に耐えられる材料であって、かつヘリカルコイルに加工しやすい可撓性を要する。耐熱性と可撓性の観点から、装荷コイルの材料として、モリブデン、タンタル、レニウムが適当と考えられる。また、装荷コイルの材料として、タングステンを採用してもよい。
【0063】
[装荷コイルの形状と取り付け位置]
装荷コイル先端部に生じる強いマイクロ波電界を放電の維持に使うことにより、発光効率を改善する。コイルの形状と取り付け位置を最適化することにより発光効率を高めることができる。また、装荷コイルをガラスでモールドしてもよい。
【0064】
次に、装荷コイルを装荷した場合の実験結果について説明する。アンテナ線径を0.35mmとし、アンテナギャップを1.5mmとし、10気圧のキセノンガスを封入し、0.5mgのNal+ScIと0.5mgのHgを添加したD2型メタルハライドランプを用いて、ヘリカルコイルを装荷した場合と装荷しなかった場合とにおける発光効率を測定した。
【0065】
図4に示すように、ヘリカルコイルを装荷することにより、発光効率が改善されることが分かった。
【0066】
次に、AEMDランプとAC/DC放電ランプとの特性を比較した結果について説明する。
【0067】
可視光光源用メタルハライドランプに、AEMDランプとAC/DC放電ランプとをそれぞれ応用した場合の特性を、以下の表2に示す。
【0068】
【表2】
JP0005534471B2_000008t.gif

【0069】
表2に示すように、AEMDランプの方が、発光効率がよく、ランプ寿命が長く、より点光源化を図ることができることがわかった。
【0070】
UV光源用水銀ランプに、AEMDランプとAC/DC放電ランプとをそれぞれ応用した場合の特性を、以下の表3に示す。
【0071】
【表3】
JP0005534471B2_000009t.gif

【0072】
表3に示すように、AEMDランプの方が、ランプ寿命が長く、より点光源化を図ることができ、低電力化を図ることができることがわかった。
【0073】
VUV光源用のエキシマランプに、AEMDランプとAC/DC放電ランプとをそれぞれ応用した場合の特性を、以下の表4に示す。
【0074】
【表4】
JP0005534471B2_000010t.gif

表4に示すように、AEMDランプの方が、発光強度が大きく、ランプ寿命が長く、より点光源化を図ることができ、低電力化を図ることができることがわかった。
【0075】
以上のように装荷コイルの機能を利用すると、G<2mmとしても、封入ガス圧Pをランプ製造が可能なレベルのPにおいてもランプの高効率点灯が可能となる。また、G<1mmであっても高効率点灯が可能である。すなわち、装荷コイルの利用により高効率の点光源状ランプを実現することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 HIDランプ
10A 放電空間
10B 放電容器
10C 棒状部材
10D アンテナ部材
10E 装荷コイル
12 放電灯点灯装置
14 ラーンチャ
14A 内部円筒部材
14B 外部円筒部材
20 固体マイクロ波発振器
22 直流電源
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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