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明細書 :リンパ圧測定システム及びその制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5330510号 (P5330510)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
発明の名称または考案の名称 リンパ圧測定システム及びその制御方法
国際特許分類 A61B   5/00        (2006.01)
FI A61B 5/00 101L
請求項の数または発明の数 7
全頁数 19
出願番号 特願2011-515916 (P2011-515916)
出願日 平成22年2月5日(2010.2.5)
国際出願番号 PCT/JP2010/051706
国際公開番号 WO2010/137358
国際公開日 平成22年12月2日(2010.12.2)
優先権出願番号 2009130832
優先日 平成21年5月29日(2009.5.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年12月21日(2012.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
発明者または考案者 【氏名】海野 直樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100144440、【弁理士】、【氏名又は名称】保坂 一之
審査官 【審査官】伊藤 幸仙
参考文献・文献 特表2009-539488(JP,A)
S. Modi, A. W. B. Stanton, W. E. Svensson, A. M. Peters, P. S.Mortimer, and J. R. Levick,"Human lymphatic pumping measured in healthy and lymphoedematous arms by lymphatic congestion lymphoscintigraphy",J Physiol,2007年 8月 1日,Vol.583,No.1,p271-p285
海野直樹,「インドシアニングリーンを用いたリンパ還流不全診断のための蛍光リンパ管造影」,脈管学,日本,2008年12月25日,第48 巻第6 号,p531-p535
調査した分野 A61B 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
生体観察部に装着されたマンシェットと、
前記マンシェットの圧力を測定し出力する測定手段と、
予めリンパ管に注入された蛍光色素から発せられた蛍光を前記生体観察部において検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記リンパ管内の蛍光色素の位置を示す画像を生成し表示する表示手段とを備え、
前記検知手段が、前記マンシェットの圧力が、前記生体観察部におけるリンパ流を遮断する第1の圧力から、該リンパ流が再開した時点の第2の圧力に減少するまで、前記マンシェットの圧力を下げて前記検知を繰り返すものであり、
前記測定手段が、前記マンシェットの圧力が前記第1の圧力から前記第2の圧力に減少するまで、前記マンシェットの圧力を下げて前記測定を繰り返すものであり、
前記マンシェットの少なくとも一部が、前記蛍光が透過可能なように透明な部材により形成されている、
リンパ圧測定システム。
【請求項3】
前記透明な部材上に、前記リンパ流の方向に沿ってスケールが形成されている、
請求項1に記載のリンパ圧測定システム。
【請求項4】
測定手段、検知手段、及び表示手段を備えるリンパ圧測定システムの制御方法であって、
前記測定手段が、生体観察部に装着されたマンシェットの圧力を測定し出力する測定ステップと、
前記検知手段が、予めリンパ管に注入された蛍光色素から発せられた蛍光を前記生体観察部において検知する検知ステップと、
前記表示手段が、前記検知ステップにおける検知結果に基づいて、前記リンパ管内の蛍光色素の位置を示す画像を生成し表示する表示ステップを含み、
前記検知ステップでは、前記マンシェットの圧力が、前記生体観察部におけるリンパ流を遮断する第1の圧力から、該リンパ流が再開した時点の第2の圧力に減少するまで、前記マンシェットの圧力を下げて前記検知が繰り返され、
前記測定ステップでは、前記マンシェットの圧力が前記第1の圧力から前記第2の圧力に至るまで、前記マンシェットの圧力を下げて前記測定が繰り返され、
前記マンシェットの少なくとも一部が、前記蛍光が透過可能なように透明な部材により形成されている、
方法。
【請求項5】
生体観察部に装着されたマンシェットと、
前記マンシェットに設けられ、予めリンパ管に注入された蛍光色素から発せられた蛍光を検知する第1の検知手段と、
前記マンシェットにおいて前記第1の検知手段よりも前記蛍光色素の注入点から離れた位置に設けられ、前記蛍光色素から発せられた蛍光を検知する第2の検知手段と、
前記第1の検知手段により蛍光が検知された時に前記マンシェットの圧力を上げることで前記生体観察部におけるリンパ流を遮断し、その後該マンシェットの圧力を次第に減らす圧調整手段と、
前記第2の検知手段により蛍光が検知された時の前記マンシェットの圧力を測定し出力する測定手段と、
を備えるリンパ圧測定システム。
【請求項6】
前記第1及び第2の検知手段のそれぞれが、前記蛍光色素に励起光を照射する照射手段と、該励起光を受けた蛍光色素から発せられた蛍光を検知する受光手段とを備える、
請求項5に記載のリンパ圧測定システム。
【請求項7】
前記第1の検知手段が、前記マンシェットの幅方向に沿って延びる一方の縁部に設けられ、
前記第2の検知手段が、前記マンシェットの幅方向に沿って延びる他方の縁部に設けられる、
請求項5又は6に記載のリンパ圧測定システム。
【請求項8】
前記第1の検知手段が前記一方の縁部に沿って線状に延びるように設けられ、
前記第2の検知手段が前記他方の縁部に沿って線状に延びるように設けられる、
請求項7に記載のリンパ圧測定システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人体(特に四肢)のリンパ圧を測定するためのリンパ圧測定システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ管は血管とともに身体のあらゆる組織、臓器に張り巡らされており、外敵に対する防御、免疫、老廃物の排出、静脈への水分、タンパク質の還流を司っている。リンパ管内を流れるリンパは、集合リンパ管においてはリンパ管の自律収縮能(ポンプ機能)により押し出され、四肢末梢から体幹、そして胸管を経て静脈内へと流入する。
【0003】
しかし、リンパ管の自律収縮能によるポンプ機能を測定する技術は確立されていない。これは、リンパ管は血管と異なり開放系であり、また血管造影のように造影剤を直接管内に注入することが難しいことから、画像で捉えることが困難だからである。また、リンパ流は動脈のように拍動流ではなく、リンパ流の音波探知技術も存在しないため、血圧測定とは異なり、リンパ管内を流れるリンパの圧力(リンパ圧)を測定する方法は実用化されていない。血圧と同様に、リンパ圧も加齢や疾病により影響を受けることは想像に難くないが、このことは上述した技術的困難さからほとんど解明されていない。
【0004】
リンパ流を検出する方法として、皮膚あるいは皮下組織に注射したラジオアイソトープ(RI)が発するガンマ線をガンマカメラでシンチレーションカウントして画像化する、リンパ管シンチグラムが臨床検査として行われている。下記非特許文献1には、そのリンパ管シンチグラムを用いて被測定者のリンパ圧を測定する手法が記載されている。具体的には、まず、ガンマカメラの検査台上に臥床した被測定者の四肢にマンシェット(加圧帯)を巻き、一定の圧をかけて四肢を圧迫することで、リンパ管内のラジオアイソトープの移動を停止させる。続いて、徐々にマンシェットの圧を下げていき、アイソトープがマンシェットの巻かれた部位を超えて検出された時点の圧をリンパ圧として測定するというものである。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Modi S, Stanton AWB, Svenson WE, Peters AM, Mortimer PS, and Levick JR, "Human lymphatic pumpng measured in healthy and lymphoedematous arms by lymphatic congestion lymphography," J Physiol, 2007;583:271-285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1のようにラジオアイソトープを用いた場合には、被測定者の被曝という問題があり(例えば、妊婦に対する測定は困難)、また、慎重な取扱いと放射線防御施設での使用が求められる。加えて、アイソトープ自体が非常に高価である。このような事情から、上記非特許文献1に記載の手法は臨床現場で普及していない。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、より安全、安価且つ簡易にリンパ圧を測定することが可能なリンパ圧測定システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリンパ圧測定システムは、生体観察部に装着されたマンシェットと、マンシェットの圧力を測定し出力する測定手段と、予めリンパ管に注入された蛍光色素から発せられた蛍光を生体観察部において検知する検知手段と、検知手段の検知結果に基づいて、リンパ管内の蛍光色素の位置を示す画像を生成し表示する表示手段とを備え、検知手段が、マンシェットの圧力が、生体観察部におけるリンパ流を遮断する第1の圧力から、該リンパ流が再開した時点の第2の圧力に減少するまで検知を繰り返すものであり、測定手段が、マンシェットの圧力が第1の圧力から第2の圧力に減少するまで測定を繰り返すものである。
【0009】
また、本発明のリンパ圧測定システムの制御方法は、測定手段、検知手段、及び表示手段を備えるリンパ圧測定システムの制御方法であって、測定手段が、生体観察部に装着されたマンシェットの圧力を測定し出力する測定ステップと、検知手段が、予めリンパ管に注入された蛍光色素から発せられた蛍光を生体観察部において検知する検知ステップと、表示手段が、検知ステップにおける検知結果に基づいて、リンパ管内の蛍光色素の位置を示す画像を生成し表示する表示ステップを含み、検知ステップでは、マンシェットの圧力が、生体観察部におけるリンパ流を遮断する第1の圧力から、該リンパ流が再開した時点の第2の圧力に減少するまで、検知が繰り返され、測定ステップでは、マンシェットの圧力が第1の圧力から第2の圧力に至るまで測定が繰り返される。
【0010】
このようなリンパ圧測定システム及びその制御方法によれば、マンシェットの圧力が第1の圧力から第2の圧力に減少するまで、リンパ管に注入された蛍光色素が繰り返し検知されてその都度画像が表示されると共に、マンシェットの圧力が繰り返し測定及び出力される。これにより、マンシェットの圧力により遮断されていたリンパ流が再開した時点のマンシェットの圧力(第2の圧力)をリンパ圧として容易に認定することができる。蛍光色素は放射線を発するものではなく、また、安価に入手することができる。したがって、上記手法により、被曝のおそれなく、より安全、安価且つ簡易にリンパ圧を測定することができる。
【0011】
本発明のリンパ圧測定システムでは、マンシェットの少なくとも一部が、蛍光が透過可能なように透明な部材により形成されていてもよい。
【0012】
この場合、検知手段は生体観察部に装着されたマンシェットを透過してきた蛍光を検知できる。したがって、マンシェットが不透明な部材のみで構成されている場合と比較して、生体観察部のリンパ管内の蛍光色素をより早く検知して、その分、リンパ流が再開したか否かをより早く判定することが可能になる。
【0013】
本発明のリンパ圧測定システムでは、透明な部材上に、リンパ流の方向に沿ってスケールが形成されていてもよい。
【0014】
この場合、そのスケールを用いることで、リンパ流が所定の距離を流れた時間を計測してリンパの流速を算出することが可能になる。
【0015】
本発明のリンパ圧測定システムは、生体観察部に装着されたマンシェットと、マンシェットに設けられ、予めリンパ管に注入された蛍光色素から発せられた蛍光を検知する第1の検知手段と、マンシェットにおいて第1の検知手段よりも蛍光色素の注入点から離れた位置に設けられ、蛍光色素から発せられた蛍光を検知する第2の検知手段と、第1の検知手段により蛍光が検知された時にマンシェットの圧力を上げることで生体観察部におけるリンパ流を遮断し、その後該マンシェットの圧力を次第に減らす圧調整手段と、第2の検知手段により蛍光が検知された時のマンシェットの圧力を測定し出力する測定手段と、を備える。
【0016】
このようなリンパ圧測定システムによれば、リンパ管に注入された蛍光色素がマンシェットの一地点(第1の検知手段)で検知されると、マンシェットが加圧されて生体観察部におけるリンパ流が遮断される。その後マンシェットが徐々に減圧されてリンパ流が再開し、その流れに乗った蛍光色素がマンシェットの別の地点(第2の検知手段)で検知されると、その時のマンシェットの圧力が測定される。このように、蛍光色素の移動を検知してマンシェットの圧力を自動的に調整および測定することで、リンパ流が再開した時点でのマンシェットの圧力をリンパ圧として容易に認定することができる。蛍光色素は放射線を発するものではなく、また、安価に入手することができる。したがって、上記手法により、被曝のおそれなく、より安全、安価且つ簡易にリンパ圧を測定することができる。
【0017】
本発明のリンパ圧測定システムでは、第1及び第2の検知手段のそれぞれが、蛍光色素に励起光を照射する照射手段と、該励起光を受けた蛍光色素から発せられた蛍光を検知する受光手段とを備えていてもよい。
【0018】
この場合、蛍光色素に励起光を当てることにより、特定の波長の光を照射された時にのみ蛍光を発する蛍光色素の使用が可能となり、様々な波長特性(特異な励起光波長を持つこと)を持つ蛍光色素の使用が可能となる。
【0019】
本発明のリンパ圧測定システムでは、第1の検知手段が、マンシェットの幅方向に沿って延びる一方の縁部に設けられ、第2の検知手段が、マンシェットの幅方向に沿って延びる他方の縁部に設けられてもよい。
【0020】
この場合、検知手段をマンシェットの両縁部に設ければよいので、マンシェットを容易に製作することができる。
【0021】
本発明のリンパ圧測定システムでは、第1の検知手段が一方の縁部に沿って線状に延びるように設けられ、第2の検知手段が他方の縁部に沿って線状に延びるように設けられてもよい。
【0022】
この場合、第1及び第2の検知手段がマンシェットの両縁部において線状に設けられるので、マンシェットを生体観測部に装着したときの蛍光の捕捉範囲を広げてより確実に蛍光を検知できる。
【発明の効果】
【0023】
このようなリンパ圧測定システム及びその制御方法によれば、被曝のおそれなく且つ安全な蛍光色素を用いて、リンパ流が再開したか否かを観測し、当該再開時点でのマンシェットの圧力をリンパ圧として測定することができる。したがって、被曝のおそれなく、より安全、安価且つ簡易にリンパ圧を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係るリンパ圧測定システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すリンパ圧測定装置の斜視図である。
【図3】図1に示すマンシェットの一例を示す斜視図である。
【図4】(a)~(d)は、図1に示すリンパ流表示装置により表示される画像の例を示す図である。
【図5】図1に示すリンパ圧測定システムを用いた測定法、及び該システムの処理を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す赤外線カメラの撮影位置を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る手法と従来のシンチレーションカウントを用いた手法との相関を示すグラフである。
【図8】第1実施形態に係るシステムにより測定した、健常人及びリンパ浮腫患者の下肢リンパ圧を示すグラフである。
【図9】第1実施形態の変形例に係るリンパ圧測定装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態に係るリンパ圧測定システムの全体構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示すマンシェットの一例を示す模式図である。
【図12】図10に示すリンパ圧測定システムの処理を示すフローチャートである。
【図13】(a)~(e)は、蛍光色素がリンパ管を伝って移動する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0026】
(第1実施形態)
まず、図1~4を用いて、第1実施形態に係るリンパ圧測定システム1の機能及び構成を説明する。

【0027】
リンパ圧測定システム1は、人間の四肢のリンパ圧を測定するために用いられる装置群である。図1に示すように、リンパ圧測定システム1は、リンパ圧を測定及び表示するリンパ圧測定装置10と、リンパ管内のリンパ流を検知及び表示するリンパ流表示装置20とを備えている。

【0028】
リンパ圧測定装置10は、図2に示すように、人間の四肢に装着可能なマンシェット(加圧帯)11と、マンシェット11に対して加圧又は減圧を行う圧調整装置12と、マンシェット11の圧力を測定及び表示する測定部(測定手段)13を備えている。図2の例では、従来からある、血圧を測定するための送気球及び水銀血圧計を、それぞれ圧調整装置12、測定部13として用いている。

【0029】
マンシェット11は、腕又は脚の一部の周囲を覆うように取り付けられる。なお、以下ではマンシェットの装着部分及びその近傍を生体観察部という。マンシェット11は空気袋を備えており、この空気袋に圧調整装置12により空気を送り込むことにより、覆った部分を加圧する。マンシェットは、帯状で、且つ巻き付けを固定するための面ファスナーを備える構造であってもよいし、図3に示すように、腕又は脚を通すことが可能な円筒状を成していてもよい。

【0030】
いずれにしても、マンシェットは、装着により覆われた部分の皮膚が視認可能であるように透明部を備えていることが好ましい。図3に示すマンシェット11は、(腕の下方にある)空気袋11aと(腕の上方にある)透明部11bとを備えている。空気袋11aと透明部11bとは、腕又は脚の挿通方向に沿った両側部において接合されている。透明部11bには、距離を示すスケール11cが挿通方向に沿って印刷されている。マンシェットが巻き付け型である場合にも、図3の例と同様に透明部及びスケールを設けることが可能である。

【0031】
透明で且つ耐圧性のある透明部11bを作製するために、例えば、エラストマー(ゴム)とナイロンとの共重合体、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ナイロン12(ポリアミド)、シリコーンゴム(シリコン)、ポリウレタンエラストマー(ポリウレタン)などを用いることができる。もちろん、透明部11bの素材はこれらに限定されるものではない。

【0032】
なお、リンパ圧測定装置10の構成は図2に示すものに限定されず、例えば従来からあるデジタル自動血圧計を用いてもよい。その場合には、生体観察部を視認できるようにマンシェット部分を透明にすれば、なお好ましい。

【0033】
リンパ流表示装置20は、図1に示すように、赤外線カメラ(検知手段)21及び画像処理装置(表示手段)22を備えている。赤外線カメラ21と画像処理装置22とは通信ケーブルで接続されている。

【0034】
赤外線カメラ21は、被測定者のリンパ管内に入った蛍光色素から発せられた蛍光を生体観察部において検知する機器である。赤外線カメラ21は携帯型であり持ち運びが容易である。赤外線カメラ21はマンシェット11の透明部11bを含む領域を撮影し、透明部11bを透過してきた蛍光を含む画像データを生成して画像処理装置22に出力する。

【0035】
ここで、被測定者に投与される蛍光色素について説明する。蛍光色素は注射により皮膚あるいは皮下組織に投与され、その後リンパ管内に入る。蛍光色素の例としてインドシアニングリーンが挙げられる。インドシアニングリーンは日本国内で認可されており、副作用もほとんどなく、一般の病院で日常的に使用されている薬品である。また、インドシアニングリーンは非常に安価であり、取扱いも容易である。蛍光色素としては、インドシアニングリーンの他に、蛍光デキストランなどの他の物質も考えられる。

【0036】
画像処理装置22は、赤外線カメラ21から入力された画像データに基づいて、リンパ管内の蛍光色素の位置を示す画像を生成し表示する機器である。画像処理装置22は機能的構成要素として処理部23、表示部24及び記憶部25を備えている。画像処理装置22は、赤外線カメラ21の映像を処理する所定のソフトウェアを携帯型パーソナルコンピュータにインストールすることで実現してもよいし、本実施形態の画像処理専用に設計されたものでもよい。いずれにしても、画像処理装置22は赤外線カメラ21と同様に携帯可能な装置とすることが可能である。

【0037】
処理部23は、赤外線カメラ21から入力された画像データを処理して表示部24に出力すると共に、その画像データを記憶部25に格納する部分である。また、処理部23は記憶部25から画像データを読み出し、録画画像として表示部24に出力することも可能である。このような処理部23の機能は中央処理装置(CPU)や主記憶装置(ROM,RAM)などの協働により実現される。

【0038】
表示部24はモニタを含んで構成され、処理部23から入力された画像データを表示(可視化)する部分である。表示部24により表示される蛍光色素の画像の例を図4に示す。図4において白く映っているのが蛍光色素である。図4(a)~(d)からは、各矢印で示すように、足背部に注射した蛍光部材がリンパ流に乗って鼠径部まで上行していることが分かる。

【0039】
記憶部25はハードディスクなどの記憶装置により構成され、処理部23から入力された画像データを記憶する部分である。

【0040】
ところで、このようなリンパ流表示装置20を用いてリンパ管内の蛍光色素を表示する手法は、下記参考文献に記載されている。
(参考文献)
Unno N, Nishiyama M, Suzuki M, Yamamoto N, Inuzuka K, Sagara D, Tanaka H, and Konno H, "Quantitative lymph imaging for assessment of lymph function using indocyanine green fluorescence lymphography," Eur J Vasc Endovasc Surg 2008;36:230-236

【0041】
次に、図5,6を用いて、被測定者の四肢のリンパ圧をリンパ圧測定システム1を用いて測定する手順を説明するとともに、本実施形態に係るリンパ圧測定システム1の制御方法について説明する。

【0042】
まず、リンパ圧を測定しようとする箇所(生体観察部)にマンシェット11を装着する(ステップS11)。また、被測定者のリンパ管に蛍光色素(例えばインドシアニングリーン)を注入する(ステップS12)。実際には、マンシェット11を装着した部分よりも末端に近い部分(例えば手や足の甲)の皮膚又は皮下組織に蛍光色素を注射すればよく、蛍光色素はその後リンパ管内に至る。なお、蛍光色素の投与後は、被測定者は立位、臥位、座位いずれの姿勢をとっていてもよく、また、簡単な運動をしてもよい。

【0043】
続いて、図6に示すように、赤外線カメラ21の撮影位置をマンシェット11の透明部11bを含む領域に合わせ、リンパ流の撮影を開始する(ステップS13、検知及び表示ステップ)。このとき、赤外線カメラ21がリンパ管内の蛍光色素からの蛍光を捉え、表示部24がその映像を表示する。図5に戻って、次に、圧調整装置12によりマンシェット11を加圧し、生体観察部のリンパ流を遮断する(ステップS14)。このときの圧力を第1の圧力とする。

【0044】
続いて、撮影を継続しながらマンシェット11を所定量ずつ減圧し(例えば、1mmHgずつ,5mmHgずつ,10mmHgずつなど)、リンパ流が再開するか否かをリンパ流表示装置20を用いて観察する。このとき、赤外線カメラ21が蛍光色素からの蛍光を捉え続け、表示部24がその映像を表示し続けると共に、測定部13がマンシェットの圧力を測定し出力する(ステップS15、検知、表示及び測定ステップ)。

【0045】
そして、リンパ流が再開した場合には(ステップS16;YES)、測定者はそのリンパ流を視認してその時点でのマンシェット11の圧(第2の圧力)をリンパ圧として測定する(ステップS17)。一方、そうでない場合には(ステップS16;NO)上記ステップS15の処理が繰り返される。なお、リンパ流の再開は、リンパ管の自律収縮圧が勝って管内の蛍光色素がマンシェット11の加圧部分を越えて移動し始めることを意味する。また、リンパ流の方向に沿って映っているスケール11cを含む画像データから測定されたリンパ流の移動距離と、その距離におけるリンパ流の移動時間の測定結果とを用いれば、リンパ流の速度を算出することが可能である(ステップS18)。

【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、マンシェット11の圧力が、リンパ流を遮断する圧力からリンパ流が再開する圧力に減少するまで、リンパ管に注入された蛍光色素が繰り返し検知されてその都度画像が表示されると共に、マンシェット11の圧力が繰り返し測定及び出力される。これにより、リンパ流が再開した時点のマンシェット11の圧力をリンパ圧として容易に認定することができる。蛍光色素は放射線を発するものではなく、また、安価に入手することができる。したがって、本実施形態により、被曝のおそれなく、より安全、安価且つ簡易にリンパ圧を測定することができる。

【0047】
また、本実施形態ではマンシェット11が透明部11bを有しているので、赤外線カメラ21の撮影範囲に透明部11bが含まれるようにして蛍光を撮影することで、マンシェットが不透明な部材のみで構成されている場合と比較して、リンパ管内の蛍光色素の移動をより早く検知できる。その結果、マンシェットの圧力の低下によりリンパ流が再開したタイミングをより早く知ることができる。

【0048】
また、本実施形態では、透明部11b上のスケール11cを用いてリンパ流が所定の距離を流れた時間を計測し、その計測に基づいてリンパの流速を算出することが可能である。

【0049】
また、本実施形態のように、リンパ圧測定装置10及びリンパ流表示装置20を携帯可能なように構成することで、場所を選ばずにリンパ圧測定システム1を使用できる。また、いずれの機器も、特別な訓練を必要とすることなく容易に取り扱うことができる。

【0050】
本実施形態により測定されるリンパ圧の信憑性を確認するために、上記非特許文献1に示されている、ラジオアイソトープ及びガンマカメラを用いた手法との比較を行った。具体的には、被測定者9人の下肢(18肢)に対して、本実施形態によるリンパ圧の測定と、上記非特許文献1で示されるシンチレーションカウントを用いた測定とを行い、両者を比較した。

【0051】
この比較においては透明部を有しないマンシェットを用いたので、マンシェットの減圧は、リンパの流速を考慮して5分毎に10mmHgずつ下げることとし、ラジオアイソトープ又は蛍光色素がマンシェットを超えてさらに中枢側へと移動した時点のマンシェットの圧力をリンパ圧とした。仮に透明部を有するマンシェットを用いれば、マンシェットに覆われた部分においてリンパ流の再開を検知及び表示することができる。例えば、マンシェットの圧力をより細かく減らしながら(例えば1mmHgずつ)、リンパ流の再開をより早く且つ鋭敏に検知することができる。

【0052】
上記両手法の関係を図7のグラフに示す。なお、グラフの縦軸は本実施形態(蛍光リンパ管造影)により測定した下肢リンパ圧(mmHg)であり、横軸はラジオアイソトープによるリンパ管シンチグラムにより測定した下肢リンパ圧(mmHg)である。このグラフに示すように、両方法で得られた値の間に統計学的に有意な相関関係が得られ(相関係数r=0.5829、危険率p=0.001未満)、本発明によるリンパ圧測定の信憑性が確認できた。

【0053】
続いて、本実施形態の手法を用いて、リンパの還流異常を伴う下肢リンパ浮腫患者(22人、26肢、平均年齢53歳)のリンパ圧を、健常人(27人、54肢、平均年齢46歳)のものと比較した。図8のグラフに示すように、健常人の下肢のリンパ圧は30.0±12.2mmHg(Mean±SD)であったのに対して、リンパ浮腫患者の下肢のリンパ圧は16.2±20.4mmHg(Mean±SD)と、統計学的に有意に低下していた(危険率p=0.01未満)。このことから、本発明により、下肢リンパ還流異常の程度を具体的な数値による指標で示せることが判明した。

【0054】
このように、本発明に係るリンパ圧測定システムは、安全、安価、且つ簡易にリンパ圧を測定することを可能にし、リンパ浮腫患者やリンパ還流不全の診断などに寄与するものと期待される。

【0055】
なお、デジタル自動血圧計を応用してリンパ圧測定装置を構成する場合には、測定されたリンパ圧と所定の閾値とを比較する機能を備えてもよい。例えば、図9に示すリンパ圧測定装置30のように、マンシェット11、圧調整装置12、及び測定部13に加えて比較部14を備えてもよい。この場合、測定部13は測定したリンパ圧を示す測定データを比較部14に出力する。そして、比較部14では、入力された測定データと、予め所定のメモリに記憶されている閾値とを比較する。ここで、閾値は、予め所定の検査及び統計に基づいて決定された値であり、例えば健常人とリンパ浮腫患者との境界や、ある年齢又は年齢層におけるリンパ圧の範囲などを示す。

【0056】
例えば、比較部14は、測定値が閾値未満か否かを判定してリンパ浮腫の可能性を出力したり、測定値が所定の範囲か否かを判定してリンパ圧に基づく身体年齢を出力したりする。これにより、リンパ圧測定システムのユーザは、リンパ浮腫の診断、老化判定、あるいはリンパ還流不全の程度についての情報を得ることができる。

【0057】
本実施形態では、マンシェット11には透明部11bが設けられ、その透明部11bにはスケール11cが形成されていたが、スケールを省略したり、透明部を有しないマンシェット(例えば従来のマンシェット)を用いたりしてもよい。透明部を有しないマンシェットを用いる場合には、赤外線カメラなどの検知手段は、マンシェットが巻かれた部分の近傍において蛍光を検知する必要がある。

【0058】
本実施形態では赤外線カメラ21により蛍光を検知したが、蛍光センサなどの他の機器を検知手段として用いてもよい。また、所定の画像処理又は情報処理技術を用いて、リンパ流の再開のタイミングを自動的に判定し、その結果を出力してもよい。

【0059】
本実施形態ではリンパ流表示装置20とリンパ圧測定装置10とを互いに独立に構成したが、これら二つの装置間でデータ通信可能としたり、一台の機器に二つの装置の機能を搭載したりしてもよい。その場合には、リンパ流の再開を自動判定した時点でのマンシェット11の圧力を自動的に測定することで、被測定者のリンパ圧を自動的に判定及び出力するようにしてもよい。これにより、ユーザはより簡易にリンパ圧を測定できる。

【0060】
このように、検知手段の構成や装置全体の構成、測定方法などは第1実施形態として示したものに限定されない。以下に、本発明の第2実施形態に係るリンパ圧測定システム2について説明する。

【0061】
(第2実施形態)
まず、図10,11を用いて、リンパ圧測定システム2の機能及び構成を説明する。図10に示すように、リンパ圧測定システム2は機能的構成要素としてマンシェット40、蛍光強度計50、及び圧測定装置60を備えている。

【0062】
マンシェット40は、上記実施形態におけるマンシェット11と同様に、人間の腕又は脚の一部の周囲を覆うように取り付けられる。マンシェット40は空気袋(図示せず)を備えており、圧測定装置60によりその空気袋に空気が送り込まれることで、覆った部分(生体観察部)を加圧する。図11に示すように、マンシェット40は帯状であり、腕又は脚の挿通方向(同図における矢印A)に沿って延びる両縁部に設けられた一対の面ファスナー41により腕又は脚に固定される。

【0063】
図11に示すように、マンシェット40は第1検知部42及び第2検知部43を備えている。本明細書では便宜的に、マンシェット40が生体観察部に装着されたときに蛍光色素の注入点に近い方の検知部(末梢側の検知部)を第1検知部42とし、当該注入点から遠い方に位置する検知部(中枢側の検知部)を第2検知部43とする。第1検知部42は第1のラインLED42a及び第1のラインセンサ42bを備え、第2検知部43は第2のラインLED43a及び第2のラインセンサ43bを備えている。ラインLED42a,43aは、リンパ管に注入された蛍光色素に励起光を当てるための照明手段であり、測定時には点灯している。一方、ラインセンサ42b,43bは、励起光を受けた蛍光色素から発せられた蛍光を検知し、検知した蛍光の強度を示す信号を蛍光強度計50に出力する受光手段である。

【0064】
第1のラインLED42a及び第1のラインセンサ42bは、マンシェット40の幅方向に沿って延びる一方の縁部において、互いに隣接しながらその縁部全体に沿って線状に(連続的に)設けられている。第2のラインLED43a及び第2のラインセンサ43bは、マンシェット40の幅方向に沿って延びる他方の縁部において、互いに隣接しながらその縁部全体に沿って線状に(連続的に)設けられている。したがって、マンシェット40を腕又は脚に巻き付けると、第1検知部42及び第2検知部43はその腕又は脚の周囲を囲むことになる。なお、マンシェット40の幅方向は腕又は脚の挿通方向と直交する方向であるともいえる。

【0065】
ラインLED42a,43aから発せられる励起光の波長と、その励起光を受けた蛍光色素から発せられラインセンサ42b,43bにより検知される蛍光の波長とは異なる。例えば、インドシアニングリーンに当てる励起光の波長を805nmとしたならば、インドシアニングリーンからの蛍光の波長は845nmとなる。当然ながら、ラインLED42a,43aが発する励起光の波長、及びラインセンサ42b、43bが検知する蛍光の波長は上記に限定されず、蛍光色素の種類等に応じて任意に設定してよい。

【0066】
蛍光強度計50は、マンシェット40の二つのラインセンサ42b、43bと電気的に接続されており、各ラインセンサ42b,43bから入力された信号に基づいて、マンシェット40の幅方向に沿って延びる二つの縁部における蛍光の強度を表示する装置である。これにより、リンパ圧測定システム2のユーザは、ラインセンサ42b,43bで囲まれた2ヵ所の部位について、蛍光色素が通過したか否かを視覚的に知ることができる。

【0067】
また蛍光強度計50は、ラインセンサ42b、43bで囲まれた2ヵ所の部位を蛍光色素が通過したか否かを入力信号に基づいて判定し、その2ヵ所のそれぞれについて、蛍光色素がその部位を最初に通過した時に当該通過を示す通過信号を圧測定装置60に出力する。したがって、1回の測定において蛍光強度計50から通過信号が2回出力されることになる。最初の通過信号は、蛍光色素の注入点に近い方(末梢側)に位置する第1のラインセンサ42bの下を蛍光色素が通過したことを意味する。これに対して2回目の通過信号は、蛍光色素がマンシェット40で覆われている部位を通り、上記注入点から遠い方(人体の中枢側)に位置する第2のラインセンサ43bの下を通過したことを意味する。

【0068】
なお、蛍光強度計50は、蛍光強度の変化の大きさに基づいて蛍光色素の通過を判定してもよいし、検知された強度が予め内部に保持している閾値以上になった場合に蛍光色素が通過したと判定してもよい。もちろん、具体的な判定方法はこれらに限定されない。

【0069】
圧測定装置60は、マンシェット40の圧力を測定する装置である。圧測定装置60は、マンシェット40に対して送気又は吸気するための管を介して当該マンシェット40と接続されると共に、蛍光強度計50と電気的に接続されている。この圧測定装置60は機能的構成要素として圧調整部61及び測定部62を備えている。

【0070】
なお、圧測定装置60としてリンパ圧計を用いてもよいし、血圧計を用いてもよい。また、リンパ圧測定及び血圧測定の双方に対応可能な計測装置を圧測定装置60として用いてもよい。

【0071】
圧調整部61は、マンシェット40の圧力を調節する手段である。圧調整部61は、蛍光強度計50から最初の通過信号が入力されたことを契機にマンシェット40内の空気袋に空気を送り込み始め、生体観察部のリンパ流を遮断する程度(例えば60mmHg)にマンシェット40を加圧する。続いて圧調整部61は、2回目の通過信号が入力されるまで、所定のタイミングで所定量ずつ(例えば、1mmHgずつ,5mmHgずつ,10mmHgずつなど)マンシェット40を減圧していく。

【0072】
測定部62は、マンシェット40の圧力を測定する手段である。測定部62は、蛍光強度計50から最初の通過信号が入力されたことを契機に圧力測定および計時を開始する。その後2回目の通過信号が入力されると、測定部62はその時点でのマンシェット40の圧力をリンパ圧として記録し、モニタ等を介してそのリンパ圧の値を出力する。また、測定部62は計時を始めてから2回目の通過信号が入力されるまでの時間と、二つのラインセンサ42b,43b間の距離とに基づいてリンパの流速を求め、モニタ等を介して計算結果を出力する。これにより、リンパ圧測定システム2のユーザは、被測定者のリンパ圧やリンパ流速を知ることができる。

【0073】
次に、図12,13を用いて、被測定者の四肢のリンパ圧をリンパ圧測定システム2により測定する手順を説明すると共に、リンパ圧測定システム2の動作を説明する。

【0074】
まず、リンパ圧を測定しようとする箇所(生体観察部)にマンシェット40を装着し、蛍光色素を検知するために二つのラインLED42a,43aを点灯させる(ステップS21)。また、被測定者のリンパ管に蛍光色素(例えばインドシアニングリーン)を注入する(ステップS22)。これらの処理は、図5に示すステップS11,S12の処理と基本的に同じである。

【0075】
図13(a)は、皮下注射により足の甲の付近に注入された直後の蛍光色素Fを示している。その後この蛍光色素Fは、図13(b)に示すように注入地点からリンパ管を伝って人体中枢へと移動し始める。その後、図13(c)に示すように蛍光色素Fがマンシェット40の一端(蛍光色素の注入点に近い方の縁部)に達すると、その蛍光色素Fは第1のラインLED42aからの励起光を受けて蛍光を発し、その蛍光を第1のラインセンサ42bが検知する(ステップS23)。

【0076】
この検知に応じて、蛍光色素が第1のラインセンサ42bの下を通過したと蛍光強度計50が判定する。そして、この判定を受けて、圧測定装置60内の圧調整部61がマンシェット40を加圧し、生体観察部のリンパ流を遮断する(ステップS24)。したがって、図13(c)に示す状態が維持される。また、この時に測定部62が圧力の測定及び計時を開始する(ステップS24)。

【0077】
その後、圧調整部61はマンシェット40を徐々に減圧し、測定部62は圧力測定及び計時を継続する(ステップS25)。その後、この減圧処理によりリンパ管の自律収縮圧がマンシェット40の圧力を上回ると、蛍光色素Fが中枢に向かって移動し始め(リンパ流の再開)、その少なくとも一部が図13(d)に示すようにマンシェット40の他端(蛍光色素の注入点から遠い方の縁部)に達する。この時、その他端に達した蛍光色素Fは第2のラインLED43aからの励起光を受けて蛍光を発し、その蛍光を第2のラインセンサ43bが検知する(ステップS26;YES)。

【0078】
この検知に応じて、蛍光色素が第2のラインセンサ43bの下を通過したと蛍光強度計50が判定する。続いて、この判定を受けて、圧測定装置60の測定部62がその時点でのマンシェット40の圧力をリンパ圧として測定すると共に、リンパの流速を求める(ステップS27)。そして、測定部62は測定したリンパ圧及び算出したリンパ流速をモニタ等を介して出力する(ステップS28)。これでリンパ圧の測定が終了する。なお、蛍光色素Fはその後、図13(e)に示すように人体の中枢部に向かって更に進んでいく。

【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、リンパ管に注入された蛍光色素がマンシェット40の一地点(第1検知部42)で検知されると、マンシェット40が加圧されて生体観察部におけるリンパ流が遮断される。その後マンシェット40が徐々に減圧されてリンパ流が再開し、その流れに乗った蛍光色素がマンシェット40の別の地点(第2検知部43)で検知されると、その時のマンシェット40の圧力が測定される。このように、蛍光色素の移動を検知してマンシェット40の圧力を自動的に調整および測定することで、リンパ流が再開した時点のマンシェット40の圧力をリンパ圧として容易に認定することができる。したがって、被曝のおそれなく、より安全、安価且つ簡易にリンパ圧を測定することができる。本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。

【0080】
また本実施形態では、蛍光色素に励起光を当てることにより、特定の波長の光を照射された時にのみ蛍光を発する蛍光色素の使用が可能となり、様々な波長特性(特異な励起光波長を持つこと)を持つ蛍光色素の使用が可能となる。その結果、蛍光色素から発せられた蛍光波長のみを検知し、その他の波長の光をフィルタで除外できることから、より正確(高感度)かつ特異的にリンパ流を検知できる。

【0081】
また本実施形態では、二つの検知部42,43をマンシェット40の両縁部に設ければよいので、マンシェット40を容易に製作することができる。また、二つの検知部42,43はマンシェット40の両縁部において線状に設けられるので、マンシェット40を生体観測部に装着したときの蛍光の捕捉範囲を広げてより確実に蛍光を検知できる。

【0082】
なお、本実施形態では蛍光強度計50が蛍光の強度を表示したが、この表示機能を省略してもよい。

【0083】
本実施形態では二つの検知部42,43をマンシェット40の幅方向に沿って延びる縁部に設けたが、第1及び第2の検知手段を配置する場所はこれに限定されず、例えばその縁部よりも内側に検知手段を設けてもよい。また、本実施形態では検知部42,43を線状に(連続的に)設けたが、検知手段をマンシェット40の幅方向に沿って所定の間隔をおいて(非連続的に)設けてもよい。また、本実施形態では検知部42,43がそれぞれラインLED42a,43aを有していたが、このような照明手段を省略してもよい。

【0084】
本実施形態ではマンシェット40に二つの検知部42,43を設けたが、より多くの検知部をマンシェットに設けてもよい。例えば、図11のようにマンシェットの幅方向に沿って延びる両縁部に検知部を設けた上で、当該二つの検知部の間に1以上の更なる検知部を設けてもよい。このように、腕又は脚の挿通方向において所定の間隔で3以上の検知部を設けることで、末端側から中枢側へのリンパの進み方をより詳細に観察することができる。

【0085】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…リンパ圧測定システム、10,30…リンパ圧測定装置、11…マンシェット、11b…透明部、11c…スケール、12…圧調整装置、13…測定部(測定手段)、14…比較部、20…リンパ流表示装置、21…赤外線カメラ(検知手段)、22…画像処理装置(表示手段)、23…処理部、24…表示部、25…記憶部、2…リンパ圧測定システム、40…マンシェット、42…第1検知部(第1の検知手段)、42a…第1ラインLED(照射手段)、42b…第1ラインセンサ(受光手段)、43…第2検知部(第2の検知手段)、43a…第2ラインLED(照射手段)、43b…第2ラインセンサ(受光手段)、50…蛍光強度計、60…圧測定装置、61…圧調整部(圧調整手段)、62…測定部(測定手段)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
10
【図4】
11
【図8】
12