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明細書 :害虫防除方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5305489号 (P5305489)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
発明の名称または考案の名称 害虫防除方法
国際特許分類 A01N  25/00        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01P   7/04        (2006.01)
A01M   1/20        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A01N 25/00 102
A01N 63/00 ZNAC
A01P 7/04
A01M 1/20 A
A01H 5/00 A
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 25
出願番号 特願2011-518506 (P2011-518506)
出願日 平成22年6月4日(2010.6.4)
国際出願番号 PCT/JP2010/059499
国際公開番号 WO2010/140675
国際公開日 平成22年12月9日(2010.12.9)
優先権出願番号 2009136701
優先日 平成21年6月5日(2009.6.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年4月2日(2013.4.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】新美 輝幸
【氏名】吉岡 博文
【氏名】佐藤 豊
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】爾見 武志
参考文献・文献 特表2001-524817(JP,A)
特表2002-538769(JP,A)
国際公開第2005/049841(WO,A1)
特表2009-508481(JP,A)
調査した分野 A01N 25/00
A01H 5/00
A01M 1/20
A01N 63/00
A01P 7/04
C12N 15/09
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
標的害虫のアポトーシス阻害因子(Inhibitor of apoptosis;IAP)に対する阻害物質を標的害虫の体内に取り込ませること、を特徴とする害虫防除方法であって、前記阻害物質が、以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物である、害虫防除方法
(a)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(b)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(d)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム
【請求項2】
前記標的害虫が農業害虫、衛生害虫又は不快害虫である、請求項1に記載の害虫防除方法。
【請求項3】
前記標的害虫がコウチュウ目、バッタ目、チョウ目又はゴキブリ目の昆虫である、請求項1に記載の害虫防除方法。
【請求項4】
前記標的害虫がコウチュウ目テントウムシ科、バッタ目イナゴ科、チョウ目ヤガ科又はゴキブリ目ゴキブリ科の昆虫である、請求項1に記載の害虫防除方法。
【請求項5】
前記標的害虫がニジュウヤホシテントウ、ナミテントウ、コバネイナゴ、オオタバコガ又はチュウトウゴキブリである、請求項1に記載の害虫防除方法。
【請求項6】
前記遺伝子が配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号16に示す配列、配列番号17に示す配列、又は配列番号19に示す配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の害虫防除方法。
【請求項7】
前記標的害虫が害する植物に、前記阻害物質を含有する薬剤を塗布、散布又は噴霧によって予め保持させておき、該植物の摂取によって前記阻害物質を前記標的害虫の体内に取り込ませることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の害虫防除方法。
【請求項8】
前記標的害虫の発生箇所又は侵入経路に、前記阻害物質を含有する餌を置き、該餌の摂食によって前記阻害物質を前記標的害虫の体内に取り込ませることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の害虫防除方法。
【請求項9】
標的害虫のアポトーシス阻害因子(Inhibitor of apoptosis;IAP)に対する阻害物質を標的害虫の体内に取り込ませること、を特徴とする害虫防除方法であって、
前記阻害物質をコードする遺伝子が導入されたトランスジェニック植物の摂取によって前記阻害物質を前記標的害虫の体内に取り込ませることを特徴とし、前記阻害物質が、以下の(A)~(C)からなる群より選択される化合物である、害虫防除方法:
(A)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(B)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(C)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム
【請求項10】
標的害虫のアポトーシス阻害因子に対する阻害物質を含有することを特徴とする、害虫防除剤であって、前記阻害物質が、以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物である、害虫防除剤:
(a)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(b)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(d)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム
【請求項11】
標的害虫のアポトーシス阻害因子に対する阻害物質をコードする遺伝子が導入されたトランスジェニック植物であって、前記阻害物質が、以下の(A)~(C)からなる群より選択される化合物である、トランスジェニック植物:
(A)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(B)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(C)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は害虫防除手段に関する。詳しくは害虫防除方法、当該方法に用いる害虫防除剤及びトランスジェニック植物に関する。本出願は、2009年6月5日に出願された日本国特許出願第2009-136701号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫防除には有機化合物又は無機化合物を有効成分とする化学農薬が使用されてきた。化学農薬は一般に劇毒物であり且つ作用特異性が低いことから、人体や家畜に対する毒性が高く、環境に与える影響も大きい。また、抵抗性系統が出現し易いという問題もある。一方、化学農薬を代替又は補足する技術として開発されたのが生物農薬である。生物農薬は、環境への残留性が小さい、人体などへの毒性が低い、作用特異性が高い、抵抗性系統が出現し難い等、数多くの有利な特性を有し、その応用が大いに期待されている。生物農薬には昆虫自体、昆虫の抽出物、微生物自体、微生物の抽出物、植物の抽出物などが用いられる。最近では遺伝子組換え技術を利用した生物農薬も開発されている(例えば特許文献1~3を参照)。また、新たなアプローチとして、害虫防除にRNAi(RNA干渉)を応用する試みがなされている(例えば非特許文献1~4を参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2002-159230号公報
【特許文献2】特許3033959号公報
【特許文献3】特許3532943号公報
【0004】

【非特許文献1】Baum, J.A. et al. (2007) Control of coleopteran insect pests through RNA interference. Nat. Biotechnol. 25, 1322-1326
【非特許文献2】Mao, Y.B. et al. (2007) Silencing a cotton bollworm P450 monooxygenase gene by plant-mediated RNAi impairs larval tolerance of gossypol. Nat. Biotechnol. 25, 1307-131
【非特許文献3】Price, D.R.G. and Gatehouse J.A. (2008) RNAi-mediated crop protection against insects. Trends in Biotechnology Vol.26 No.7, 393-400
【非特許文献4】Whangbo, J.S. and Hunter C.P. (2008) Environmental RNA interference. Trends in Genetics Vol. 24 No. 6, 297-305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化学農薬に比べて数多くの利点を有する生物農薬ではあるが、概して汎用性に乏しいという問題を抱える。また、生物農薬は害虫の発育ステージを選ぶものが多い(例えば幼虫のみに有効であったり、成虫のみに有効であったりする)。更には即効性に欠けることが多い。加えて、一般に抵抗性系統が出現し難いと言われてはいるが、中には抵抗性系統の出現が問題になるものも存在する。
そこで本発明は、従来の生物農薬が抱える上記問題の多くを解決し、優れた防除効果を発揮する害虫防除手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明者らは生存に必須のアポトーシス阻害因子(Inhibitor of apoptosis; IAP)に着目し、「IAP阻害物質を害虫の体内に取り込ませ、IAPを阻害することによって防除効果を得る」という戦略を発案した。そして、当該戦略の有効性を検証すべく、IAPの発現を特異的に阻害可能な二本鎖RNA(dsRNA)を用いて実験を行った。その結果、後述の実施例に示す通り、IAPの阻害が優れた防除効果を奏することが示された。ここで、IAPは生存に必須の因子であり、あらゆる生物において恒常的に(生物の発育ステージにかかわらず)その発現が認められる。従って、IAPを標的とする上記戦略は、様々な発育ステージの任意の害虫に適用できる。つまり、汎用性に優れ、適用範囲も広い。一方、IAPを標的とすることによって特異性の高い防除効果が得られる。また、目的に合わせて適切なIAP(一つ又は二以上)を選択することによって、防除対象となる害虫の種類(範囲)を調整できる。即ち、防除対象の範囲を任意に設定可能であるという、これまでの生物農薬にはない効果も発揮し得る。
【0007】
ところで、IAP阻害物質として、IAPの発現を特異的に阻害可能なRNAを採用した場合(典型的にはRNAiを利用する場合)、その特異性の高さによって、特定の害虫のみを特異的に防除することができる。即ち、非常に高い特異性を発揮させることが可能である。また、RNAiを利用した場合、迅速な防除効果を得やすいことに加え、その性質上、抵抗性系統の出現する可能性が極めて低くなると考えられる。さらには、植物に対して遺伝子改変操作を施すものではないことから、遺伝的な影響を及ぼすことがない。このように、上記戦略においてIAP阻害物質としてRNAを採用した場合には数多くの利点が得られる。
【0008】
本発明は以上の検討の末に完成したものであり、次の通りである。
[1]アポトーシス阻害因子(Inhibitor of apoptosis;IAP)に対する阻害物質を標的害虫の体内に取り込ませること、を特徴とする害虫防除方法。
[2]前記標的害虫が農業害虫、衛生害虫又は不快害虫である、[1]に記載の害虫防除方法。
[3]前記標的害虫がコウチュウ目、バッタ目、チョウ目又はゴキブリ目の昆虫である、[1]に記載の害虫防除方法。
[4]前記標的害虫がコウチュウ目テントウムシ科、バッタ目イナゴ科、チョウ目ヤガ科又はゴキブリ目ゴキブリ科の昆虫である、[1]に記載の害虫防除方法。
[5]前記標的害虫がニジュウヤホシテントウ、ナミテントウ、コバネイナゴ、オオタバコガ又はチュウトウゴキブリである、[1]に記載の害虫防除方法。
[6]前記阻害物質が、以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物である、[1]~の[5]いずれか一項に記載の害虫防除方法:
(a)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(b)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(d)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム。
[7]前記遺伝子が配列番号1に示す配列、配列番号3に示す配列、配列番号5に示す配列、配列番号16に示す配列、配列番号17に示す配列、又は配列番号19に示す配列を含む、[6]に記載の害虫防除方法。
[8]前記標的害虫が害する植物に、前記阻害物質を含有する薬剤を塗布、散布又は噴霧によって予め保持させておき、該植物の摂取によって前記阻害物質を前記標的害虫の体内に取り込ませることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の害虫防除方法。
[9]前記標的害虫の発生箇所又は侵入経路に、前記阻害物質を含有する餌を置き、該餌の摂食によって前記阻害物質を前記標的害虫の体内に取り込ませることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の害虫防除方法。
[10]前記阻害物質をコードする遺伝子が導入されたトランスジェニック植物の摂取によって前記阻害物質を前記標的害虫の体内に取り込ませることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の害虫防除方法。
[11]前記阻害物質が、以下の(A)~(C)からなる群より選択される化合物である、[10]に記載の害虫防除方法:
(A)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(B)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(C)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム。
[12]標的害虫のアポトーシス阻害因子に対する阻害物質を含有することを特徴とする、害虫防除剤。
[13]前記阻害物質が、以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物である、[12]に記載の害虫防除剤:
(a)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(b)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(d)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム。
[14]標的害虫のアポトーシス阻害因子に対する阻害物質をコードする遺伝子が導入されたトランスジェニック植物。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ニジュウヤホシテントウを供試昆虫とした実験の結果。IAP遺伝子を標的としたRNA(Hv-iap dsRNA)をスポットしたジャガイモ葉を摂食した幼虫の経時的変化を示す。対照区ではH2Oをスポットしたジャガイモ葉を用いた。
【図2】ニジュウヤホシテントウを供試昆虫とした実験の結果。摂食開始から64時間後のジャガイモ葉の状態を示す。上段が試験区(Hv-iap dsRNAをスポットしたジャガイモ葉を摂食させた群)であり、下段は対照区である。
【図3】ニジュウヤホシテントウを供試昆虫とした実験の結果。摂食開始から死亡したまでに要した時間を試験区と対照区の間で比較した。5匹の平均を示した。
【図4】オオタバコガを供試昆虫とした実験の結果。摂食開始から死亡までに要した時間を示す。IAP遺伝子を標的としたRNA(Har-iap dsRNA)を添加した人工飼料を摂食させた幼虫の経時的変化を示す。対照区ではGFP dsRNAを添加した人工飼料を摂食させた。
【図5】チュウトウゴキブリを供試昆虫とした実験の結果。Bl-iap dsRNA水溶液を摂食させた幼虫の経時的変化を示す。動き(行動能)と生存状態を調べた。対照区ではDsRed dsRNA水溶液を摂食させた。
【図6】ニジュウヤホシテントウを供試昆虫とした実験の結果。iap(Hv-iap)を発現させたベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)葉から抽出したRNAを摂食させたニジュウヤホシテントウ幼虫の経時的変化を示す。対照区として、Hv-iap 合成dsRNAを摂食させた群(ポジティブコントロール)とウイルスのみを発現させたN. benthamiana葉組織より抽出した全RNAを摂食させた群(ネガティブコントロール)を設けた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(害虫防除方法)
本発明の第1の局面は害虫防除方法に関する。本発明における「害虫」は特に限定されない。一般に、害虫は農業害虫、衛生害虫、及び不快害虫に大別される。「農業害虫」とは、農作物(園芸作物を含む。また、保存中の農作物も含む)を害する害虫をいう。保存中の農作物を害する害虫については「貯穀害虫」と呼ぶことがある。「衛生害虫」とは、ヒトの衛生環境を害する害虫をいう。同様に、「不快害虫」とは、外見や動きなどによってヒトの気分を害する害虫をいう。ヒトの財産を害する害虫(シロアリ、シミなど)や家畜を害する害虫(蚊、寄生虫など)に対しても本発明を適用可能である。

【0011】
害虫の分類を例示すると、チョウ目(コナガ科、ヤガ科、メイガ科、ハマキガ科、ハモグリガ科、シンクイガ科、キバガ科、ツトガ科、ヒトリガ科、ドクガ科など)、カメムシ目(ヨコバイ科、ウンカ科、キジラミ科、アブラムシ科、コナジラミ科、カイガラムシ科、カスミカメムシ科、グンバイムシ科、カメムシ科、ナガカメムシ科など)、コウチュウ目(コガネムシ科、コメツキムシ科、テントウムシ科、カミキリムシ科、ハムシ科、ゾウムシ科など)、ハエ目(イエバエ科、クロバエ科、ニクバエ科、ハナバエ科、ミバエ科、ヒメコバエ上科、キモグリバエ上科など)、バッタ目(バッタ科、イナゴ科、オンブバッタ科など)、アザミウマ目(アザミウマ科、シマアザミウマ科、メロアザミウマ科など)、ティレンクス目(アフェレンコイデス科、ネオティレンクス科など)、トビムシ目(シロトビムシ科、ツチトビムシ科など)、ダニ目(ハダニ科、ワクモ科、コナダニ科、ヒゼンダニ科など)、柄眼目(ナメクジ科、オナジマイマイ科など)、カイチュウ目(カイチュウ科、アニサキス科など)、後睾吸虫目、有壁吸虫目、ゴキブリ目(ブラベルスゴキブリ科、クリプトケルクス科、オオゴキブリ科など)及びシミ目(シミ科、ムカシシミ科、メナシシミ科など)である。

【0012】
チョウ目の害虫の例はニカメイガ、コブノメイガ、イチモンジセセリ、イネヨトウ、アワヨトウ、フタオビコヤガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジマダラメイガ、ヒメイチモジマダラメイガ、ダイズサヤムシガ、マメシンクイガ、ウコンノメイガ、カブラヤガ、タマナヤガ、イモコガ、シロモンヤガ、タバコガ、オオタバコガ、ヨトウガ、シロイチモジヨトウ、コナガ、モンシロチョウ、オオモンシロチョウ、ハイマダラノメイガ、タマナギンウワバである。

【0013】
カメムシ目の害虫の例はトビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ、ツマグロヨコバイ、イナズマヨコバイ、アカスジカスミカメ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、クモヘリカメムシ、アオクサカメムシ、ミナミアオカメムシ、イネカメムシ、イネクロカメムシ、トゲシラホシカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、シラホシカメムシ、コバネヒョウタンナガカメムシ、ホソハリカメムシ、イチモンジカメムシ、クサギカメムシ、ブチヒゲカメムシ、ギアブラムシ、ムギクビレアブラムシ、トウモロコシアブラムシ、イズアブラムシである。

【0014】
コウチュウ目の害虫の例はイネミズゾウムシ、イネクビホソハムシ、イネゾウムシ、シコメツキ、マルクビクシコメツキ、ドウガネブイブイ、ウガネブイブイ、マメコガネ、アカビロウドコガネ、インゲンテントウ、フタスジヒメハムシ、オオニジュウヤホシテントウ、ニジュウヤホシテントウ、ナミテントウ、ヒメコガネ、スジコガネ、ウリハムシ、キスジノミハムシである。

【0015】
ハエ目の害虫の例はイネカラバエ、イネヒメハモグリバエ、ムギアカタマバエ、タネバエ、ダイズサヤタマバエ、ダイズクキモグリバエ、マメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、アシグロハモグリバエ、ナスハモグリバエである。

【0016】
バッタ目の害虫の例はコバネイナゴ、ハネナガイナゴである。アザミウマ目の害虫の例はイネアザミウマ、ミナミキイロアザミウマである。ティレンクス目の害虫の例はネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シストセンチュウである。トビムシ目の害虫の例はヤギシロトビムシ、マツモトシロトビムシである。ダニ目の害虫の例はムギダニ、ナミハダニ、カンザワハダニ、ケナガコナダニ、スジブトホコリダニである。柄眼目の害虫の例はカタツムリ、ナメクジである。カイチュウ目の害虫の例は回虫である。後睾吸虫目の害虫の例は横川吸虫である。有壁吸虫目の害虫の例は日本住血吸虫である。ゴキブリ目の害虫の例はチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、チュウトウゴキブリである。シミ目の害虫の例はヤマトシミ、セイヨウシミである。

【0017】
本発明の技術的特徴及び当該分野の技術常識に鑑みれば、本発明の適用範囲(即ち本発明の防除方法が適用される害虫)は広範に及ぶといえる。一方、後述の実施例に示す通り、本発明の有効性ないし実効性は、コウチュウ目テントウムシ科のニジュウヤホシテントウ及びナミテントウ、バッタ目イナゴ科のコバネイナゴ、チョウ目ヤガ科のオオタバコガ、並びにゴキブリ目ゴキブリ科のチュウトウゴキブリを供試昆虫とした実験によって確認された。この事実を考慮すれば、本発明の適用範囲を限定する意図はないが、本発明は好ましくはコウチュウ目、バッタ目、チョウ目又はゴキブリ目の昆虫に対して適用され、更に好ましくはコウチュウ目テントウムシ科の昆虫、バッタ目イナゴ科の昆虫、チョウ目ヤガ科又はゴキブリ目ゴキブリ科に対して適用される。ここでのコウチュウ目テントウムシ科の昆虫の具体例はニジュウヤホシテントウ及びナミテントウであり、バッタ目イナゴ科の昆虫の具体例はコバネイナゴである。また、チョウ目ヤガ科の昆虫の具体例はオオタバコガであり、ゴキブリ目ゴキブリ科の具体例はチュウトウゴキブリである。

【0018】
本明細書において「防除」とは、害虫による害がない状態又は害が少ない状態にすることを意味する。害虫を殺虫すること(駆除)、害虫の増殖を抑制すること、害虫の成長を抑制すること、害虫が近寄らないようにすること(忌避)、及び害虫を無害化ないし低害化すること(例えば農業害虫の摂食能を障害すること)は全て「防除」の概念に含まれる。

【0019】
本発明の防除方法ではアポトーシス阻害因子(Inhibitor of apoptosis、以下、「IAP」と略称する)に対する阻害物質(IAP阻害物質)を標的害虫の体内に取り込ませる。IAPの作用を阻害する物質の総称として用語「IAP阻害物質」を用いる。IAPを阻害する活性を有する限り、IAP阻害物質の種類は問わない。

【0020】
「標的害虫」とは防除対象の害虫である。換言すれば、本発明によって防除される害虫のことである。二種類以上の害虫を標的害虫にしてもよい。

【0021】
本発明では、標的害虫に対応するIAP阻害物質を用いる。詳しく言えば、標的害虫が体内で発現するIAPを阻害できる物質を「IAP阻害物質」として採用する。2種以上の害虫に対応するIAP阻害物質を用いれば、或いは2種以上のIAP阻害物質を併用することにすれば、2種以上の害虫を防除可能になる。

【0022】
IAP阻害物質の例として、IAP遺伝子の発現を阻害する核酸と、IAPに特異的に結合する物質(抗体、低分子化合物など)を挙げることができる。前者については以下で詳述する。尚、IAPに特異的に結合する物質は、IAPを標的とした結合アッセイを利用して取得ないし調製することができる。また、IAPに特異的に結合する抗体であれば、免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することもできる。

【0023】
本発明の一態様ではIAP阻害物質として、以下の(a)~(d)からなる群より選択される化合物を用いる。
(a)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(b)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子を標的としたsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(d)前記標的害虫のアポトーシス阻害因子をコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム。

【0024】
上記(a)及び(b)は、いわゆるRNAi(RNA interference;RNA干渉)による発現阻害に利用される化合物である。換言すれば、上記(a)又は(b)の化合物を用いた場合、RNAiによりIAPの発現を阻害し、防除効果を得る。このようにRNAiを利用すると標的害虫を特異的に防除することができる。また、迅速な防除効果を得やすい。さらには、その性質上、抵抗性系統の出現する可能性が極めて低くなると考えられる。加えて、植物に対して遺伝子改変操作を施すものではないことから、遺伝的な影響を及ぼすことがない。

【0025】
ここで「RNAi」とは、標的遺伝子に相同な(特に標的遺伝子に対応するmRNAに相同な)配列のRNAを標的細胞に導入することにより、標的遺伝子の発現が抑えられる現象をいう。昆虫等の害虫を対象としたRNAi法による発現抑制では通常、標的遺伝子(標的害虫のIAPをコードする遺伝子)の一部に相当する配列のdsRNA(二本鎖RNA)が用いられる。一つの標的遺伝子に対して二種類以上のdsRNAを使用することにしてもよい。

【0026】
哺乳動物細胞の遺伝子を標的としたRNAiの場合は、21~23ヌクレオチド程度の短いdsRNA(siRNA)が用いられるが、昆虫等の害虫の遺伝子を標的とする場合はむしろ数百ヌクレオチド以上という長いdsRNAがより有効なものとして好まれる。RNAiに使用するdsRNAの長さは例えば30ヌクレオチド以上、好ましくは200ヌクレオチド以上(例えば200~500ヌクレオチド長)である。効果的な発現抑制を引き起こすためにはdsRNAが好ましいが、一本鎖RNAの使用を妨げるものではない。使用するdsRNAは必ずしもセンス鎖とアンチセンス鎖の2分子に分かれている必要はなく、例えばdsRNAを構成するセンス鎖とアンチセンス鎖がヘアピンループで連結された構造のdsRNAであってもよい。修飾したRNAからなるdsRNAを用いることにしてもよい。ここでの修飾の例としてホスホロチオエート化、修飾塩基(例えば蛍光標識塩基)の使用が挙げられる。

【0027】
標的遺伝子を標的とするdsRNAが細胞内で発現するようにしても、標的遺伝子特異的なRNAiを生じさせることができる。上記(b)の核酸コンストラクトは、このような手段に用いられる。

【0028】
RNAi法に使用するdsRNAは化学合成によって、又は適当な発現ベクターを用いてin vitro又はin vivoで調製することができる。発現ベクターによる方法は、比較的長いdsRNAの調製を行うことに特に有効である。dsRNAの設計には通常、標的核酸に固有の配列(連続配列)が利用される。尚、適当な標的配列を選択するためのプログラム及びアルゴリズムが開発されている。

【0029】
ここで、上掲の非特許文献1~4(Baum, J.A. et al. (2007) Control of coleopteran insect pests through RNA interference. Nat. Biotechnol. 25, 1322-1326; Mao, Y.B. et al. (2007) Silencing a cotton bollworm P450; monooxygenase gene by plant-mediated RNAi impairs larval tolerance of gossypol. Nat. Biotechnol. 25, 1307-131; Price, D.R.G. and Gatehouse J.A. (2008) RNAi-mediated crop protection against insects. Trends in Biotechnology Vol.26 No.7, 393-400; Whangbo, J.S. and Hunter C.P. (2008) Environmental RNA interference. Trends in Genetics Vol. 24 No. 6, 297-305)は、RNAiを利用した害虫防除について報告するものであり、本発明を実施する上で参考になる。そこで、これらの文献の全ての内容を引用により援用することにする。

【0030】
上記(c)はアンチセンス法による発現阻害に用いられる化合物である。アンチセンス法による発現阻害を行う場合には通常、それが転写された際、標的遺伝子に対応するmRNAの固有の部分に相補的なRNAを生成するアンチセンス・コンストラクトが使用される。このようなアンチセンス・コンストラクト(アンチセンス核酸ともいう)は例えば、発現プラスミドの形態で標的細胞に導入される。アンチセンス・コンストラクトとして、標的細胞内に導入されたときに、標的遺伝子のDNA配列又はそれに対応するmRNA配列(以上をまとめて「標的核酸」ともいう)とハイブリダイズしてその発現を阻害するオリゴヌクレオチド・プローブを採用することもできる。このようなオリゴヌクレオチド・プローブとしては、好ましくは、エキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼなどの内因性ヌクレアーゼに対して抵抗性であるものが用いられる。アンチセンス核酸としてDNA分子を使用する場合、標的遺伝子に対応するmRNAの翻訳開始部位(例えば-10~+10の領域)を含む領域に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。

【0031】
アンチセンス核酸と標的核酸との間の相補性は厳密であることが好ましいが、多少のミスマッチが存在していてもよい。標的核酸に対するアンチセンス核酸のハイブリダイズ能は一般に、両核酸の相補性の程度及び長さの両方に依存する。通常、使用するアンチセンス核酸が長いほど、ミスマッチの数が多くても、標的核酸との間に安定な二重鎖(又は三重鎖)を形成することができる。当業者であれば、標準的な手法を用いて、許容可能なミスマッチの程度を確認することができる。

【0032】
アンチセンス核酸はDNA、RNA、若しくはこれらのキメラ混合物、又はこれらの誘導体や改変型であってもよい。また、一本鎖でも二本鎖でもよい。塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格部分を修飾することで、アンチセンス核酸の安定性、ハイブリダイゼーション能等を向上させることなどができる。アンチセンス核酸は例えば市販の自動DNA合成装置(例えばアプライド・バイオシステムズ社等)を使用するなど、常法で合成することができる。核酸修飾体や誘導体の作製には例えば、Stein et al.(1988), Nucl. Acids Res. 16:3209やSarin et al., (1988), Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:7448-7451等を参照することができる。

【0033】
標的細胞内におけるアンチセンス核酸の作用を高めるために、標的細胞内で強力に作用するプロモーター(例えばアクチンプロモーターやie1プロモーター)を利用することができる。即ち、このようなプロモーターの制御下に配置されたアンチセンス核酸を含むコンストラクトを標的細胞に導入すれば、当該プロモーターの作用によって十分な量のアンチセンス核酸の転写を確保できる。

【0034】
本発明の一態様では、リボザイムによる発現阻害を利用する(上記(d)の化合物の場合)。部位特異的認識配列でmRNAを開裂させるリボザイムを用いて、標的遺伝子に対応するmRNAを破壊することもできるが、好ましくはハンマーヘッド・リボザイムを使用する。ハンマーヘッド・リボザイムの構築方法については例えばHaseloff and Gerlach, 1988, Nature, 334:585-591を参考にすることができる。

【0035】
アンチセンス法の場合と同様に、例えば安定性やターゲット能を向上させることを目的として、修飾されたオリゴヌクレオチドを用いてリボザイムを構築してもよい。効果的な量のリボザイムを標的細胞内で生成させるために、昆虫細胞で強力に作用するプロモーター(例えばアクチンプロモーターやie1プロモーター)の制御下に、当該リボザイムをコードするDNAを配置した核酸コンストラクトを使用することが好ましい。

【0036】
ここで、上記(a)~(d)のいずれかの化合物を用いる場合における、標的遺伝子の配列の具体例を配列表の配列番号1、3、5、16、17、19に示す。配列番号1は、ニジュウヤホシテントウのIAP遺伝子(部分cDNA)の配列である。また、配列番号16は同遺伝子の全長cDNA配列である。当該配列がコードするアミノ酸配列を配列番号2に示す。一方、配列番号3は、ナミテントウのIAP遺伝子(部分cDNA)の配列である。当該配列がコードするアミノ酸配列を配列番号4に示す。また、配列番号5は、コバネイナゴのIAP遺伝子(部分cDNA)の配列である。当該配列がコードするアミノ酸配列を配列番号6に示す。同様に、配列番号17はオオタバコガのIAP遺伝子(部分cDNA)の配列である。当該配列がコードするアミノ酸配列を配列番号18に示す。また、配列番号19はチュウトウゴキブリのIAP遺伝子(部分cDNA)の配列である。当該配列がコードするアミノ酸配列を配列番号20に示す。

【0037】
(IAP阻害物質の取り込ませ方)
IAP阻害物質の取り込ませ方は特に限定されず、標的害虫毎に適当なものを選択すればよい。植物を食害する害虫が標的害虫の場合には、例えば、標的害虫が害する植物に、IAP阻害物質を含有する薬剤(農薬)を塗布、散布又は噴霧によって予め保持させておく。このようにすれば、標的害虫が植物を摂食した際、IAP阻害物質が標的害虫の体内に取り込まれる。一方、IAP阻害物質を含有する餌(餌剤)を標的害虫の発生箇所又は侵入経路に置いておくことにすれば、標的害虫が当該餌を摂食し、これによってIAP阻害物質が標的害虫の体内に取り込まれる。また、食害される植物にIAP阻害物質をコードする遺伝子を導入して改変しておけば、当該トランスジェニック植物を摂食した際、IAP阻害物質が標的害虫の体内に取り込まれる。このような方法に用いられるトランスジェニック植物として、(A)標的害虫のIAPをコードする遺伝子を標的としたsiRNA、(B)標的害虫のIAPをコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸、又は(C)標的害虫のIAPをコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム、が発現するように遺伝子改変された植物を用いることができる。

【0038】
(害虫防除剤)
本発明の第2の局面は、上記防除方法に利用可能な害虫防除剤に関する。本発明の害虫防除剤は例えば農薬の形態又は餌の形態で提供される。本発明の害虫防除剤は、標的害虫のIAPに対する阻害物質(IAP阻害物質)を含有する。ここでのIAP阻害物質の例は、以下の(a)~(d)である。これらの各化合物の詳細は上で述べた通りである。
(a)標的害虫のIAPをコードする遺伝子を標的としたsiRNA;
(b)標的害虫のIAPをコードする遺伝子を標的としたsiRNAを細胞内で生成する核酸コンストラクト;
(c)標的害虫のIAPをコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸;
(d)標的害虫のIAPをコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム。

【0039】
本発明の農薬の形態は特に限定されない。例えば固形状、液体状又はゲル状に調製される。具体的な剤型を例示すれば、粉剤、粒剤、水和剤、水溶剤、乳剤、液剤、油剤、エアゾル、マイクロカプセル剤、ペースト剤、くん煙剤、くん蒸剤、塗布剤である。

【0040】
本発明の農薬における有効成分の含有量は、農薬の形態によって相違するが、例えば、0.1重量%~50重量%とする。

【0041】
本発明の農薬はIAP阻害物質を有効成分(活性成分)として含有するが、一又は二以上の他の有効成分を併せて含有していてもよい。他の有効成分の例は殺虫剤(有機リン剤、カーバメート剤、合成ピレスロイド剤、ネライストキシン剤、ネオニコチノイド剤、GABA阻害物質、GABA類似物資、呼吸系阻害剤、IGR剤(昆虫成長抑制剤)、BT剤)、忌避剤、誘引剤である。一方、有効成分の他に本発明の農薬が含有可能な成分(添加剤)を例示すると、界面活性剤(陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤)、増粘剤、流動助剤、結合剤、展着剤、拡展剤、湿潤剤、増量剤、担体、安定化剤、pH調整剤、固結防止剤、防腐剤、凍結防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、分散剤、着色剤、香料である。

【0042】
(トランスジェニック植物)
本発明の更なる局面は(第3の局面)はトランスジェニック植物に関する。本発明のトランスジェニック植物には、標的害虫のIAPに対する阻害物質をコードする遺伝子が導入されている。典型的には、本発明のトランスジェニック植物は、(A)標的害虫のIAPをコードする遺伝子を標的としたsiRNA、(B)標的害虫のIAPをコードする遺伝子の転写産物を標的としたアンチセンス核酸、又は(C)標的害虫のIAPをコードする遺伝子の転写産物を標的としたリボザイム、が発現するように遺伝子改変されている。

【0043】
本発明のトランスジェニック植物は、目的遺伝子(上記のsiRNA、アンチセンス核酸又はリボザイムをコードする遺伝子)を含む遺伝子コンストラクト(組換えベクター等)を植物体又は植物細胞へ導入することによって作製することができる。遺伝子コンストラクトとしての組換えベクターは、目的遺伝子を適当なベクターに挿入することにより構築することができる。ここでのベクターとしてpBI系、pPZP系、pSMA系のベクターなどが好適に用いられる。これらのベクターを利用すると、アグロバクテリウムを介した遺伝子導入が可能である。特にpBI系のバイナリーベクター又は中間ベクター系(例えばpBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3)が好適である。バイナリーベクターとは大腸菌及びアグロバクテリウムにおいて複製可能なシャトルベクターである。利用可能なベクターの他の例としてpUC系ベクターを挙げることがきる。pUC系ベクターを用いると、植物に目的遺伝子を直接導入することができる。pUC系ベクターの例はpUC18、pUC19、pUC9である。尚、植物ウイルスベクター(カリフラワーモザイクウイルス、インゲンマメモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスなど)を用いることも可能である。

【0044】
組換えベクターを構築するには、精製したDNA(目的遺伝子を含む)をベクターのクローニングサイトに挿入すればよい。通常、目的遺伝子にはその発現に必要な配列(プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)が連結されている。目的遺伝子を高レベルで発現させるのに有用な他の配列、例えば特定の遺伝子のイントロン配列、5'非不翻訳領域の配列などを連結しておいてもよい。また、組換えベクターに、選択マーカー遺伝子を包含させることが好ましい。

【0045】
プロモーターとしては、恒常的プロモーター又は特定の条件で機能するもの(組織特異的プロモーター、発育段階特異的プロモーター、誘導性プロモーター)を用いることができ、必要に応じて選択すればよい。また、プロモーターの由来も特に限定されない。プロモーターの具体例を挙げると、ユビキチンプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、アクチンプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーターである。

【0046】
エンハンサーは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる。エンハンサーの一例はCaMV35Sプロモーター内の上流側配列を含むエンハンサー領域である。ターミネーターは遺伝子の転写を終結する配列である。例えば、CaMV 35S RNA遺伝子のターミネーター、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素遺伝子のターミネーター等を用いることができる。

【0047】
選抜マーカー遺伝子の例は、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、β-グルクロニダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子である。

【0048】
目的遺伝子を植物に導入する方法は特に限定されない。例えば、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルクルガン法、ポリエチレングリコール(PEG)法などを採用することができる。この中でもアグロバクテリウム法が特に好ましい。アグロバクテリウム法では、プロトプラスト、組織片又は植物体(in planta法)に目的遺伝子を導入することが可能である。プロトプラストを用いる場合、Tiプラスミドをもつアグロバクテリウムと共存培養する方法やスフェロプラスト化したアグロバクテリウムと融合する方法(スフェロプラスト法)等によって目的遺伝子を導入する。また、組織片を用いる場合は、対象植物の無菌培養葉片(リーフディスク)に感染させる方法やカルスに感染させる方法等によって目的遺伝子を導入する。植物体を用いる場合(in planta法)は、吸水種子、幼植物(幼苗)、鉢植え植物などへのアグロバクテリウムの直接処理等によって目的遺伝子を導入する。

【0049】
パーティクルガン法も好ましい導入法の一つである。パーティクルガン法を用いる場合は、例えば、試料(植物体、植物器官、植物組織、プロトプラストなど)を遺伝子導入装置(例えばBIOLISTIC POS 1000/He; BioRad等)により処理する。処理条件は試料により異なるが、通常は1000~1100psi程度の圧力、5~10cm程度の距離で行う。尚、目的遺伝子を含む組換えベクターと選択マーカー遺伝子を含む組換えベクターとを混合し、同時にこれら二つの組換えベクターを試料に撃ち込むとよい(コトランスフォーメーション)。

【0050】
目的遺伝子が植物体に組み込まれたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ウェスタンブロッティング法等により行うことができる。レポーター遺伝子(ベータグルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ(LUC)、Green fluorescent protein(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)等)を利用して、目的遺伝子が組み込まれたことを確認してもよい。

【0051】
形質転換の対象となる植物の種類は特に限定されず、例えば、穀類、野菜、果樹等の有用農作物、観葉植物等の鑑賞用植物等である。また、単子葉植物又は双子葉植物のいずれであってもよい。単子葉植物としては例えば、イネ科(イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ、サトウキビ、シバ、ソルガム、アワ、ヒエ等)、ユリ科(アスパラガス、ユリ、タマネギ、ニラ、カタクリ等)、ショウガ科(ショウガ、ミョウガ、ウコン等)に属する植物を挙げることができる。他方、双子葉植物としては例えば、アブラナ科(シロイヌナズナ、キャベツ、ナタネ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイコン等)、ナス科(トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ等)、マメ科(ダイズ、エンドウ、インゲン、アルファルファ等)、ウリ科(キュウリ、メロン、カボチャ等)、セリ科(ニンジン、セロリ、ミツバ等)、キク科(レタス等)、アオイ科(ワタ、オクラ等)、アカザ科(シュガービート、ホウレンソウ等)、フトモモ科(ユーカリ、クローブ等)、ヤナギ科(ポプラ等)に属する植物を挙げることができる。

【0052】
用語「植物」は、植物体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、根茎種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)及び植物細胞を包含する。また、用語「植物細胞」は種子懸濁培養物、胚、分裂組織部位、カルス組織、葉及び根由来の細胞、並びに配偶体(胚、花粉)およびその前駆体細胞を包含する。植物培養細胞を対象として形質転換を行った場合には、得られた形質転換細胞から公知の組織培養法により器官又は個体を再生することができる。このような操作は当業者であれば容易に行うことができる。一例を以下に示す。まず、滅菌したカルス形成用培地(炭素源、糖類、ビタミン、無機類、オーキシンやサイトカイニン等の植物ホルモンなどを含有する)中で形質転換後の植物細胞を培養し、不定形に増殖する、脱分化したカルスを形成させる(カルス誘導)。形成したカルスをオーキシン等の植物生長調節物質を含む新しい培地に移しかえて更に増殖(継代培養)させる。尚、カルス誘導を寒天等の固型培地で行い、継代培養を液体培養で行うと、それぞれの培養を効率良く行うことができる。次に、継代培養によって増殖したカルスを適当な条件下で培養することにより器官の再分化を誘導し(再分化誘導)、植物体を再生させる。再分化誘導は、培地におけるオーキシンやサイトカイニン等の植物生長調節物質、炭素源等の各種成分の種類や量、光、温度等を適宜設定することにより行うことができる。かかる再分化誘導により、不定胚、不定根、不定芽、不定茎葉等が形成され、完全な植物体へと育成する。完全な植物体になる前の状態(例えばカプセル化された人工種子、乾燥胚、凍結乾燥細胞及び組織等)で貯蔵等を行ってもよい。

【0053】
以上のようにして作製した本発明のトランスジェニック植物は、導入した目的遺伝子が発現する結果、標的害虫のIAPに対する阻害物質を生産する。本発明のトランスジェニックを標的害虫が摂食すると、標的害虫の体内にIAP阻害物質が取り込まれ、防除効果が生ずる。尚、本発明における用語「トランスジェニック植物」は、形質転換処理により作製された「T1世代」、その植物の種子から得られた後代である「T2世代」、更にはそれ以降の後代植物(T3世代、T4世代など)を包含する。

【0054】
ここで、上掲の非特許文献1及び2(Baum, J.A. et al. (2007) Control of coleopteran insect pests through RNA interference. Nat. Biotechnol. 25, 1322-1326; Mao, Y.B. et al. (2007) Silencing a cotton bollworm P450 monooxygenase gene by plant-mediated RNAi impairs larval tolerance of gossypol. Nat. Biotechnol. 25, 1307-131)は、特定の標的に対するdsRNAが強制発現する組換え植物の例を報告する。これらの報告が実証するように、標的に対するdsRNAを植物体で発現させ、RNAiによる阻害効果を生じさせることは有望な害虫防除策である。そこで本発明においても、標的害虫のIAPに対するdsRNAが強制発現するように遺伝子操作することが好ましい。換言すれば、本発明のトランスジェニック植物の好ましい態様では、遺伝子操作の結果として、標的害虫のIAPに対するdsRNAが植物体の中で強制発現する。尚、上掲の二つの文献は本発明のトランスジェニック植物を作出する上で参考になることから、その全ての内容を引用により援用する。
【実施例】
【0055】
A.防除効果の検討1
アポトーシス阻害因子(IAP)に注目し、IAPの発現を特異的に阻害可能な二本鎖RNA(dsRNA)による防除効果を検討した。
<材料と方法>
1.アポトーシス阻害因子ホモログcDNAのクローニングおよび塩基配列の決定
(1)供試昆虫
ニジュウヤホシテントウ(Henosepilachna vigintioctopunctata)については名古屋大学 大学院生命農学研究科圃場のジャガイモ葉上より採集して継代飼育した個体、ナミテントウ(Harmonia axyridis)については当研究室で継代飼育した個体、コバネイナゴ(Oxya yezoensis)については名古屋大学 大学院生命農学研究科圃場の水田より採集した幼虫を用いた。
【実施例】
【0056】
(2)cDNAの調製
ニジュウヤホシテントウ(Hv)については前蛹期の幼虫の翅原基、ナミテントウ(Ha)については胚、コバネイナゴ(Oy)については幼虫の後肢より、全RNAをTRIZOL(LIFE TECHNOLOGIES)を用いた塩酸グアニジン法により抽出した。このRNAを鋳型として、SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH)に基づき、Superscript II reverse transcriptase (GIBCO BRL)を用いて5′Rapid amplification of cDNA ends(RACE)用と3′RACE用とに分けて1本鎖cDNAを合成した。
【実施例】
【0057】
(3)RT-PCR
上記の通り調製した1本鎖cDNAを鋳型として、ポリメラーゼチェーン反応(PCR)を行った。PCRのTaq DNAポリメラーゼにはAmpli Taq Gold(PERKIN ELMER)を用いた。PCRに用いたプライマーを以下に示す。
(iapセンスプライマー)
iap-01: 5′-GCIGAIGCIGGITTYTWYTA-3′(20mer)(配列番号7)
iap-02: 5′-GAYKIICCITGGGARSARCAYG-3′(22mer)(配列番号8)
(iapアンチセンスプライマー)
iap-03: 5′-CAIGYIRYIAIRTGICCRCAIGG-3′(23mer)(配列番号9)
尚、WはA+T、SはC+G、YはC+T、RはA+G、KはT+G、Iはイノシンを表す。
【実施例】
【0058】
それぞれの種に対応したセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーの組み合わせ、および反応条件は下記の通りである。
iap cDNA
【表1】
JP0005305489B2_000002t.gif
【実施例】
【0059】
(4)5′RACEおよび3′RACE
上記のように調製した1本鎖cDNAを鋳型として用い、SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH)のプロトコルに基づいてRACEを行った。用いたプライマーは、ニジュウヤホシテントウiapホモログcDNAの部分配列をもとに、5′RACE、3′RACE用に各2本ずつ設計した。設計したプライマーは以下の通りである。
(5′RACE用)
Hv-iap-01: 5′-CTTCGACCCAATCTTTCAGACCGCC-3′(25mer)(配列番号10)
Hv-iap-02: 5′-AAAGCGCGTGCTGTTCCCACGGATC-3′(25mer)(配列番号11)
【実施例】
【0060】
(3′RACE用)
Hv-iap-03: 5′-GATCCGTGGGAACAGCACGCGCTTT-3′(25mer)(配列番号12)
Hv-iap-04: 5′-GAAACAACGCAGAGGAAAGCTCGAC-3′(25mer)(配列番号13)
【実施例】
【0061】
RACEの1回目のPCR条件は、変性(94℃、5秒間);伸長(72℃、3分間)を5サイクル行い、変性(94℃、5秒間);アニーリング(70℃、10秒間);伸長(72℃、3分間)を5サイクル行った後、変性(94℃、5秒間);アニーリング(68℃、10秒間);伸長(72℃、3分間)を25サイクル行った。2回目のPCR条件は変性(94℃、5秒間);伸長(72℃、3分間)を5サイクル行い、変性(94℃、5秒間);アニーリング(70℃、10秒間);伸長(72℃、3分間)を5サイクル行った後、変性(94℃、5秒間);アニーリング(68℃、10秒間);伸長(72℃、3分間)を25サイクル行い、最後に72℃、10分間の伸長反応を行った。
【実施例】
【0062】
(5)PCR産物の精製
PCR後、TBE(89 mM Tris、89 mM ホウ酸、2 mM EDTA)にアガロース(Agarose II [DOJINDO])を添加し、0.5 mg/mlとなるようにエチジウムブロマイドを加えた1% Agarose IIアガロースゲルによる電気泳動により、PCR産物を分離した。目的とするPCR産物を含んだバンドを切り出し、Mag Extractor(Toyobo)によりPCR産物を回収してサブクローニング用のインサートとして用いた。
【実施例】
【0063】
(6)PCR産物のpBluescriptへのサブクローニング
上記のように調製したインサートをpBluescriptTMKS(+)(pBS)のEco RV認識部位に挿入した。ライゲーション反応は、DNA Ligation Kit Ver. 2(TaKaRa)を用いて行った。このライゲーション反応液を、大腸菌(XL1-Blue)への形質転換に用いた。この形質転換した大腸菌培養液をLBプレートに引き、37℃で一晩培養した。ホワイトコロニーを選出し、PCR法を用いて目的のPCR断片が挿入されたクローンを選択した。このときのPCRのTaq DNAポリメラーゼにはAmpli Taq Gold (PERKIN ELMER)を用い、プライマーはSKプライマーおよびKSプライマーを用いた。PCRは25サイクルを変性(95℃、30秒間);アニーリング(55℃、30秒間);伸長(72℃、30秒間)の条件で行った。選択したクローンをLB培地中で37℃で一晩振とう培養し、FlexiPrep Kit(Amerciam Pharmacia Biotech)によりキットのプロトコルに従ってプラスミドDNAを調製した。
【実施例】
【0064】
(7)塩基配列の決定
BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kitを用いて、プロトコルに従って塩基配列を決定した。得られた塩基配列はDNASISで解析した。
【実施例】
【0065】
2.RNAi法
(1)RNA合成用の鋳型の増幅
ニジュウヤホシテントウのiapは、pBluescript KS+ベクター(Stratagene)のEcoRVサイトにiap1とiap3のプライマーで増幅されたRT-PCR産物がサブクローニングされたものを用いた。ナミテントウのiapおよびコバネイナゴのiapは、同様にiap2とiap3のプライマーで増幅されたRT-PCR産物がサブクローニングされものを用いた。
【実施例】
【0066】
二本鎖RNAを合成するための鋳型として使用するPCR産物を得るため、上記のベクターにクローニングしたどの遺伝子にも共通して使用可能となるように、ベクター配列にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した下記のPCRプライマーを使用した。
(T7-KSプライマー)
5'-TAATACGACTCACTATAGGGAGACCACTCGAGGTCGACGGTATC-3'(配列番号14)
(T7-SKプライマー)
5'-TAATACGACTCACTATAGGGAGACCACCGCTCTAGAACTAGTGGATC-3'(配列番号15)
【実施例】
【0067】
PCRは下記の条件で行い、十分なPCR産物量を得るため、下記の反応チューブを4~8本準備した。
【実施例】
【0068】
(反応液)
テンプレートDNA(20~50 ng)+ H2O 37.75μl
10×バッファー 5μl
2 mM dNTP 5μl
10 pmol/μl T7-KSプライマー 1μl
10 pmol/μl T7-SKプライマー 1μl
AmpliTaq Gold (Perkin Elmer) 0.25μl
合計 50μl
【実施例】
【0069】
(温度サイクル)
[95℃で9分]→[94℃で60秒→55℃で30秒→72℃で30秒]×40サイクル→72℃で7分→12℃で∞
【実施例】
【0070】
上記の反応で得られたPCR産物はエタノール沈殿を行って濃縮した後、アガロース電気泳動を行い、Mag Extractor(Toyobo)を用いてゲルから精製した。
【実施例】
【0071】
(2)二本鎖RNAの合成
上記鋳型DNAを1μg用い、MEGAscrtipt T7 Kit(Ambion)に従ってRNAを合成し、適量のヌクレアーゼ・フリーの超純水に溶解した。
【実施例】
【0072】
二本鎖RNAのアニーリングを行うため、得られたRNA溶液はヒートブロックを用い65℃で30分間インキュベートした後、1~2時間かけて室温に戻した。
この二本鎖RNAを少量用い、濃度測定およびアガロース電気泳動による確認を行った。
合成が確認された二本鎖RNAは、2μg/μlの濃度に調整し、一回分ずつに小分けして-80℃で保存した。
【実施例】
【0073】
(3)二本鎖RNAの摂食
ニジュウヤホシテントウの場合、3齢幼虫を実験に用いた。5μlのHv-iap dsRNAをジャガイモ葉に10カ所程度スポットした。このジャガイモ葉を幼虫に与え、RNA溶液をスポットした領域をすべて摂食させた。対照区には、水を用いた。その後、経時的に幼虫を観察した。
【実施例】
【0074】
ナミテントウの場合、羽化後2日の雄成虫を実験に用いた。蜂の子粉末と砂糖を主成分とする人工飼料10 mgに5μlのHa-iap dsRNAを混ぜて摂食させた。対照区には、gfp dsRNAを同様に用いた。その後、経時的に成虫を観察した。
【実施例】
【0075】
コバネイナゴの場合、成虫を用いた。5μlのOy-iap dsRNAをイネ葉に5カ所程度スポットした後、摂食させた。対照区には、gfp dsRNAを同様に用いた。その後、経時的に成虫を観察した。
【実施例】
【0076】
<結果>
1.ニジュウヤホシテントウ(コウチュウ目、テントウムシ科)
Hv-iap dsRNAをスポットしたジャガイモ葉を摂食した幼虫(試験区)の経時的変化を図1に示す。対照区と比較して、摂食開始後の早い段階から摂食量及び運動量が減少した。また、摂食開始から64時間後のジャガイモの葉を観察したところ(図2)、試験区(上段)と対照区(下段)の間で摂食量に顕著な差を認めた。また、試験区の幼虫は全て4日以内に死亡し、対照区の幼虫は4日を経過してもすべて生存した(図3)。以上のように、Hv-iap dsRNAを体内に取り込ませてIAPを阻害したことにより、速やかに摂食障害が生じ、生存・成長が阻害された。即ち、IAPの阻害が迅速且つ優れた防除効果を発揮することが示された。
【実施例】
【0077】
2.ナミテントウ(コウチュウ目、テントウムシ科)
Ha-iap dsRNAおよびgfp dsRNAをそれぞれ雄成虫2頭に与えた。Ha-iap dsRNAを与えた個体はすべて、24時間以内に摂食量が著しく減少した。4.5日間の摂食量は、Ha-iap dsRNAを与えた個体はすべて10 mg以下であったのに対し、gfp dsRNAを与えた個体はすべて20 mgであった。一方、Ha-iap dsRNAを与えた個体は、7.5日後と9日後に死亡した。これに対して、gfp dsRNAを与えた個体は33日経過してもすべて生存した。以上のように、ナミテントウについても、IAPの阻害が優れた防除効果を発揮することが示された。
【実施例】
【0078】
3.コバネイナゴ(バッタ目、イナゴ科)
Oy-iap dsRNAおよびgfp dsRNAをそれぞれ成虫2頭に与えた。結果、Oy-iap dsRNAを与えた個体は9日後と12日後に死亡した。一方、gfp dsRNAを与えた個体は25日経過してもすべて生存した。このように、コバネイナゴについても、IAPの阻害が優れた防除効果を発揮することが示された。尚、dsRNA摂食後の、イネ葉の摂食量は、実験上測定困難であったため検討しなかった。
【実施例】
【0079】
以上の通り、IAP阻害物質を害虫の体内に取り込ませることが害虫に対する防除戦略として極めて有効であることに加え、その適用範囲の広さが実証された。
【実施例】
【0080】
B.防除効果の検討2
別の昆虫を用い、IAPを標的とした防除戦略の有効性を確認した。
<材料と方法>
1.IPAホモログcDNAのクローニングおよび塩基配列の決定
(1)供試昆虫
オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、チュウトウゴキブリ(Blatta lateralis、レッドローチあるいはトルキスタンローチとも呼ばれる)、及びニジュウヤホシテントウ(Henosepilachna vigintioctopunctata)を用いた。
【実施例】
【0081】
(2)cDNAの調製
オオタバコガ(Har)については蛹化後6日の蛹の前翅原基、ゴキブリ(Bl)については終齢幼虫の後翅原基、ニジュウヤホシテントウ(Hv)については成虫の卵巣および精巣より、全RNAをTRIZOL(LIFE TECHNOLOGIES)を用いた塩酸グアニジン法により抽出した。このRNAを鋳型として、SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH)に基づき、Superscript II reverse transcriptase (GIBCO BRL)を用いて5′Rapid amplification of cDNA ends(RACE)用と3′RACE用とに分けて1本鎖cDNAを合成した。
【実施例】
【0082】
(3)RT-PCR
上記の通り調製した1本鎖cDNAを鋳型として、Polymerase chain reaction(PCR)を行った。PCRのTaq DNAポリメラーゼにはAmpli Taq Gold (PERKIN ELMER)を用いた。PCRに用いたプライマーを以下に示す。
(iapセンスプライマー)
iap-01: 5′-GCIGAIGCIGGITTYTWYTA-3′(20mer)(配列番号7)
iap-02: 5′-GAYKIICCITGGGARSARCAYG-3′(22mer)(配列番号8)
(iapアンチセンスプライマー)
iap-03: 5′-CAIGYIRYIAIRTGICCRCAIGG-3′(23mer)(配列番号9)
iap-08: 5′-GCRCAYTTISCRCAIGCIACIAC-3′(23mer)(配列番号21)
尚、WはA+T、SはC+G、YはC+T、RはA+G、KはT+G、Iはイノシンを表す。
それぞれの種に対応したセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーの組み合わせ、および反応条件は下記の通りである。
iap cDNA
【表2】
JP0005305489B2_000003t.gif
【実施例】
【0083】
(4)ニジュウヤホシテントウ3′RACE
A.<材料と方法>1.(4)と同様の方法で行った。ただしサンプルは前回と異なり、上記のように成虫の卵巣および精巣を用いた。
【実施例】
【0084】
(5)PCR産物の精製
A.<材料と方法>1.(5)と同様の方法で行った。
【実施例】
【0085】
(6)PCR産物のTOPO vector (pCR4-TOPO)へのサブクローニング
上記のように調製したインサートをTOPO TA Cloning Kit(Invitrogen)を用いTOPO vector (pCR4-TOPO)に挿入した。この反応液を、大腸菌(DHαTM-T1R)への形質転換に用いた。この形質転換した大腸菌培養液をLBプレートに引き、37℃で一晩培養した。生じたコロニーを選出し、PCR法を用いて目的のPCR断片が挿入されたクローンを選択した。このときのPCRのTaq DNAポリメラーゼにはAmpli Taq Gold (PERKIN ELMER)を用い、プライマーはT3プライマーおよびT7プライマーを用いた。PCRは25サイクルを変性、95℃/ 30秒間;アニーリング、55℃/ 30秒間;伸長、72℃/ 30秒間の条件で行った。選択したクローンをLB中で37℃で一晩振とう培養し、Axy Prep Plasmid Miniprep Kit(Axygen Scientific)によりキットのプロトコルに従ってプラスミドDNAを調製した。
【実施例】
【0086】
(7)塩基配列の決定
A.<材料と方法>1.(7)と同様の方法で行った。
【実施例】
【0087】
2.RNAi法
(1)RNA合成用の鋳型の増幅
オオタバコガおよびゴキブリのiapは、TOPO vector (pCR4-TOPO)にiap1とiap3のプライマーで増幅されたRT-PCR産物がサブクローニングされたものを用いた。二本鎖RNAを合成するための鋳型として使用するPCR産物を得るため、上記のベクターにクローニングしたどの遺伝子にも共通して使用可能となるように、ベクター配列にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した下記のPCRプライマーを使用した。
(T7-PCR4Rプライマー)
5'- TAATACGACTCACTATAGGGAGACCACCGAATTGAATTTAGCGGC -3'(配列番号22)
(T7-PCR4Lプライマー)
5'- TAATACGACTCACTATAGGGAGACCACGTCCTGCAGGTTTAAACG -3'(配列番号23)
【実施例】
【0088】
PCRは下記の条件で行い、十分なPCR産物量を得るため、下記の反応チューブを4~8本準備した。
【実施例】
【0089】
(反応液)
テンプレートDNA(20~50 ng)+ H2O 37.75μl
10×バッファー 5μl
2 mM dNTP 5μl
10 pmol/μl T7-PCR4Rプライマー 1μl
10 pmol/μl T7-PCR4Lプライマー 1μl
AmpliTaq Gold (Perkin Elmer) 0.25μl
合計 50μl
【実施例】
【0090】
(温度サイクル)
[95℃で9分]→[94℃で60秒→55℃で30秒→72℃で30秒]×40サイクル→72℃で7分→12℃で∞
【実施例】
【0091】
上記の反応で得られたPCR産物はエタノール沈殿を行って濃縮した後、アガロース電気泳動を行い、Mag Extractor(Toyobo)を用いてゲルから精製した。
【実施例】
【0092】
(2)二本鎖RNAの合成
上記鋳型DNAを1μg用い、MEGAscrtipt T7 Kit(Ambion)に従ってRNAを合成し、適量のヌクレアーゼ・フリーの超純水に溶解した。二本鎖RNAのアニーリングを行うため、得られたRNA溶液はヒートブロックを用い65°Cで30分間インキュベートした後、1~2時間かけて室温に戻した。この二本鎖RNAを少量用い、濃度測定およびアガロース電気泳動による確認を行った。合成が確認された二本鎖RNAは、オオタバコガiap(Har-iap)の場合10μg/μl、ゴキブリiap(Bl-iap)の場合5μg/μlの濃度に調整し、一回分ずつに小分けして-80℃で保存した。
【実施例】
【0093】
(3)二本鎖RNAの摂食
オオタバコガの場合、2齢幼虫を実験に用いた。1μl(10μg)のHar-iap dsRNAを少量の人工飼料(インセクタLFS、日本農産工)に添加した。この飼料を幼虫に摂食させた。GFP dsRNAを同様に用いた。その後、経時的に幼虫を観察した。
【実施例】
【0094】
ゴキブリの場合、1齢幼虫を実験に用いた。1μl(5μg)のBl-iap dsRNA水溶液を摂食させた。対照区には、DsRed dsRNAを同様に用いた。その後、経時的に幼虫を観察した。
【実施例】
【0095】
<結果>
1.ニジュウヤホシテントウ
IAPをコードする全長cDNA配列(配列番号16)が確認された。
【実施例】
【0096】
2.オオタバコガ(チョウ目、ヤガ科)
Har-iap dsRNAを添加した人工飼料を摂食させた幼虫(試験区)を経時的に観察した。図4に示す通り、試験区の幼虫は全て4日以内に死亡した。対照区の幼虫は4日を経過しても生存した。このように、IPAの阻害によって迅速且つ顕著な防除効果を発揮できることが示された。
【実施例】
【0097】
3.チュウトウゴキブリ(ゴキブリ目、ゴキブリ科)
Bl-iap dsRNA水溶液を摂食させた幼虫(試験区)を経時的に観察した。試験区の幼虫は極めて早い段階から行動障害を示した(図5)。また、試験区の幼虫はほとんどが1日以内に死亡した。これに対して対照区の幼虫には行動障害や生存・成長阻害は認められなかった。このように、IAPの阻害によって迅速且つ極めて強い防除効果を発揮できることが示された。
【実施例】
【0098】
C.防除効果の検討3(植物葉で合成させたinhibitor of apoptosis protein RNAのニジュウヤホシテントウに対する影響)
本法が遺伝子導入植物(由来のRNA)を用いた場合でも機能することを確かめるために、ウイルスベクターによりニジュウヤホシテントウのiap(Hv-iap)を発現させたベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)葉から抽出したRNAを用いてニジュウヤホシテントウへの摂食試験を行った。
【実施例】
【0099】
<材料と方法>
(1)供試植物
ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)は、日本たばこ産業株式会社葉たばこ研究所より分譲を受けた。種子をクレハソイル(株式会社クレハ)とソイルミックス(株式会社サカタのタネ)を入れたポリエチレンポットに播種し、播種後10日目の植物体を同様のポリエチレンポットに移植し、25℃の恒温室にて24時間の明条件下で生育させた。処理を行った植物体は22℃の恒温室に移し、16時間の明条件および8時間の暗条件下で静置した。
【実施例】
【0100】
(2)供試昆虫
ニジュウヤホシテントウ(Henosepilachna vigintioctopunctata)
【実施例】
【0101】
(3)全RNAの抽出
全RNAの抽出はTRIZOL Reagent(invitrogen)を用いて、以下の方法で行った。ジルコニアビーズ2粒が入った2 mlのサンプリングチューブ(株式会社アシスト)にN. benthamiana葉組織およそ100 mgを入れ、液体窒素で凍結し、Shake Master(bio medical science)を用いて破砕した。そこへ1 mlのTRIZOL Reagentを加えてよく懸濁した。懸濁液を遠心分離して(12,000 x g、10分間、4℃)上層を新しい1.5 ml容エッペンドルフチューブに移し回収し、この溶液に200μlのクロロホルムを加えて撹拌した後、遠心分離した(12,000 x g、15分間、4℃)。上層を新しい1.5 ml容エッペンドルフチューブに移し回収し、この溶液に500μlのイソプロパノールを加えて撹拌して10分間静置した後、遠心分離した (12,000 x g、10分間、4℃)。得られた沈澱を70%エタノールで洗浄した後10分間風乾し、40μlのDEPC処理水に溶解して全RNAとした。分光光度計(ND-1000 Spectrophotometer、NanoDrop)を用いてA260を測定することによりRNA量を定量し、実験に用いた。
【実施例】
【0102】
(4)ジャガイモウイルスX (PVX) ベクターの調製
PVX(potato virus X)を含むpGR107バイナリーベクター(Ratcliff, F., Martin-Hernandez, A.M., and Baulcombe, D.C. (2001). Tobacco rattle virus as a vector for analysis of gene function by silencing. Plant J. 25, 237-245.)に挿入する389 bpのHv-iap cDNA断片をPCRにより調製した。制限酵素配列を付加した下記のPCRプライマーを使用した。
(Hv-iap-NotI-センスプライマー)
5’-ATAAGAATGCGGCCGCGCGGAGGCGGGGTTTTATTAC-3’(配列番号24)
(Hv-iap-NotI-アンチセンスプライマー)
5’-ATAGTTTAGCGGCCGCCAGGCGATGAGATGGCCACA-3’(配列番号25)
【実施例】
【0103】
PCRは下記の条件で行い、十分なPCR産物量を得るため、下記の反応チューブを2本準備した。
【実施例】
【0104】
(反応液)
テンプレートDNA(20~50 ng)+ H2O 37.75 ml
10×バッファー 5 ml
2 mM dNTP 5 ml
10 pmol/μl Hv-iap-NotI-センスプライマー 1 ml
10 pmol/μl Hv-iap-NotI-アンチセンスプライマー 1 ml
AmpliTaq Gold (Perkin Elmer) 0.25 ml
合計 50 ml
【実施例】
【0105】
(温度サイクル)
[95℃で9分]→[94℃で60秒→55℃で30秒→72℃で30秒]×25サイクル→72℃で7分→12℃で∞
【実施例】
【0106】
上記の反応で得られたPCR産物はエタノール沈殿を行って濃縮した後、アガロース電気泳動を行い、Mag Extractor(Toyobo)を用いてゲルから精製した。得られたcDNA断片をNotIで消化し、pGR107(Ratctliff et al. 2001)に組み込み、これを用いて大腸菌を形質転換、培養し、プラスミドDNAを精製した。
【実施例】
【0107】
(5)エレクトロポレーションによるA. tumefaciensの形質転換
Agrobacterium tumefaciensの形質転換は、Hellensらの方法(Hellens, R.P., Edwards, E.A., Leyland, N.R., Bean, S., and Mullineaux, P.M. (2000). pGreen: A versatile and flexible binary Ti vector for Agrobacterium-mediated plant transformation. Plant Mol. Biol. 42, 819-832.)に準じて行った。導入するベクター(10 ng)と共に、ヘルパープラスミドpSoup(10 ng)を加えて氷上で溶解したA. tumefaciens GV3101のエレクトロセル40μlを氷上で30分間静置した。この溶液をあらかじめ氷冷したキュベットに移し、遺伝子導入装置Micro PulserTM (BIO-RAD)を用いてエレクトロポレート(V=1.44 kV、T=2.5 kV/resistance、C=all out、R=R5 129)して形質転換した。溶液を14 mlポリプロピレンラウンド・チューブ(BECTON DICKINSON)に移し氷上に10分間静置した後、960μl SOC培地[2 % トリプトン ペプトン、0.5 % 酵母エキス、0.05% NaCl、10 mM MgCl2、10 mM MgSO4、20 mMグルコース、pH 7.0]を加え、28℃で1時間振とうした。YEB培地[0.1 % 酵母エキス、0.5 % ビーフエキス、0.5 % トリプトン ペプトン、0.5%シュークロース、2 mM MgSO4、2 % 寒天、pH 7.2]にカナマイシン(50μg/ml)およびリファンピシン(50μg/ml)を加えた培地に20μlプレーティングし、28℃で30時間培養した。
【実施例】
【0108】
(6)ウイルスベクターによるHv-iapの高発現
389 bpのHv-iap cDNA断片を含むpGR107ベクターを保持するアグロバクテリウムを、50μg/mlのカナマイシン、50μg/mlのリファンピシンおよび5μg/mlのテトラサイクリンを含むLB液体培地中で28℃で2日間培養した。培養液をLB液体培地で5~10倍希釈し、OD600=0.5-1.0になるまで28℃でさらに培養した。アグロバクテリウムを遠心分離(1,700 x g、15分)により回収し、5 mlの導入緩衝液に懸濁後、再び遠心分離により集菌した。沈澱したアグロバクテリウムをOD600=0.5になるように150μMアセトシリンゴンを含む導入緩衝液に懸濁し、室温で2時間静置した後、注射筒を用いて播種後約3週間のN. benthamiana葉の細胞間隙に注入した。アグロバクテリウム注入後3~4週間の植物の上位葉を実験に用いた。
【実施例】
【0109】
(7)RT-PCR
RT-PCRは、ReverTra Ace-Plus-(登録商標)(TOYOBO)を用いて以下のように行った。6μlの溶液中に0.5μgの全RNAと25 pmolのOligo(dT)20プライマーを混合し、65℃で5分間処理した後、直ちに氷冷した。続いて残りのRT-PCR反応液[1 x RT反応液、1 mM dNTPs、1 unit/μl RNase inhibitor、5 unit/μl ReverTra Ace(登録商標)]を加え、10μlの反応液中で、30℃で10分間、42℃で1時間、85℃で5分間の条件で逆転写反応を行った。PCR反応はExTaq(Takara)を用い、逆転写反応液1μlに対して10μlの反応液中で、アニーリング温度を53℃、20秒間、伸長反応を74℃、30秒間で27サイクルの条件で行った。RT-PCRに用いたプライマーの塩基配列を以下に示す。
(Hv-iap-NotI-センスプライマー)
5’-ATAAGAATGCGGCCGCGCGGAGGCGGGGTTTTATTAC-3’(配列番号24)
(Hv-iap-NotI-アンチセンスプライマー)
5’-ATAGTTTAGCGGCCGCCAGGCGATGAGATGGCCACA-3’(配列番号25)
(EF-1αセンスプライマー)
5’-TGTGGAAGTTTGAGACCACC-3’(配列番号26)
(EF-1αアンチセンスプライマー)
5’-GCAAGCAATGCGTGCTCAC-3’(配列番号27)
【実施例】
【0110】
(8)RNA合成用の鋳型の増幅およびdsRNAの合成
ニジュウヤホシテントウのiap(Hv-iap)は、A.<材料と方法>2.(1)(2)と同じものを使用した。
【実施例】
【0111】
(9)葉抽出RNAおよび合成dsRNAの摂食
ニジュウヤホシテントウの3齢幼虫を実験に用いた。ニジュウヤホシテントウは食草ではないN. benthamiana葉を摂食しないため、植物で発現させたRNAに含まれると思われるHv-iap dsRNAおよびsiRNAの効果を検討した。Hv-iap遺伝子断片を導入したウイルスを発現させたN. benthamiana葉より全RNAを抽出し、2μgを摂食させた。この実験の対照区には、ウイルスのみを発現させたN. benthamiana葉組織より抽出した全RNA 2μgを用いた。摂食させた後、ジャガイモ葉を幼虫に与えた。また、N. benthamiana葉組織より抽出した全RNAに含まれるHv-iap dsRNAは微量と予想されるため、ポジティブコントロールとして、Hv-iap 合成dsRNAを用いた。この場合、20 ngを摂食させた後、ジャガイモ葉を幼虫に与えた。その後、経時的に幼虫を観察した。
【実施例】
【0112】
<結果>
Hv-iap dsRNA導入ウイルスを発現させたN. benthamiana葉より抽出した全RNAを摂食させた幼虫(試験区)は、一匹を除き、43時間後には殆ど摂食を停止し、67時間後には完全に摂食を停止した(図6)。この結果は、RNAを植物内で合成させた場合であってもIAP阻害効果が十分に得られることを示す。また、標的害虫のIAPの発現を特異的に阻害するRNAが合成されるように植物体を組み換えること(即ち、トランスジェニック植物の作出)が、防除戦略として有効であることを強く示唆する。尚、20 ngという極微量のdsRNAを摂食させた場合(ポジティブコントロール)において十分な摂食停止効果が得られたことも注目に値する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の害虫防除方法では、IAP阻害物質を害虫の体内に取り込ませることによってIAPを阻害し、防除効果を得る。本発明は汎用性が高く、様々な害虫に対して適用可能である。また、種々の発育ステージの害虫に適用し得る。
【0114】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0115】
配列番号7:人工配列の説明:iapセンスプライマー(iap-01)
配列番号8:人工配列の説明:iapセンスプライマー(iap-02)
配列番号9:人工配列の説明:iapアンチセンスプライマー(iap-03)
配列番号10:人工配列の説明:5′RACE用プライマー(Hv-iap-01)
配列番号11:人工配列の説明:5′RACE用プライマー(Hv-iap-02)
配列番号12:人工配列の説明:3′RACE用プライマー(Hv-iap-03)
配列番号13:人工配列の説明:3′RACE用プライマー(Hv-iap-04)
配列番号14:人工配列の説明:PCR用プライマー(T7-KS)
配列番号15:人工配列の説明:PCR用プライマー(T7-SK)
配列番号21:人工配列の説明:iapアンチセンスプライマー(iap-08)
配列番号22:人工配列の説明:PCR用プライマー(T7-PCR4R)
配列番号23:人工配列の説明:PCR用プライマー(T7-PCR4L)
配列番号24:人工配列の説明:Hv-iap-NotI-センスプライマー
配列番号25:人工配列の説明:Hv-iap-NotI-アンチセンスプライマー
配列番号26:人工配列の説明:EF-1αセンスプライマー
配列番号27:人工配列の説明:EF-1αアンチセンスプライマー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5