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明細書 :乳酸菌の付着性を誘導するペプチド及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5830744号 (P5830744)
登録日 平成27年11月6日(2015.11.6)
発行日 平成27年12月9日(2015.12.9)
発明の名称または考案の名称 乳酸菌の付着性を誘導するペプチド及びその用途
国際特許分類 C07K   7/06        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P   1/00        (2006.01)
A61P  37/00        (2006.01)
FI C07K 7/06 ZNA
C12N 1/20 A
C12N 1/20 E
C12M 1/00 C
A23L 1/30 Z
A61K 37/02
A61P 1/00
A61P 37/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 22
出願番号 特願2011-527640 (P2011-527640)
出願日 平成22年8月9日(2010.8.9)
国際出願番号 PCT/JP2010/063478
国際公開番号 WO2011/021524
国際公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
優先権出願番号 2009189756
優先日 平成21年8月19日(2009.8.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年7月18日(2013.7.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】本多 裕之
【氏名】大河内 美奈
【氏名】杉田 智哉
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】森井 文緒
参考文献・文献 特開2008-169198(JP,A)
特表2002-514083(JP,A)
特開2005-320276(JP,A)
国際公開第2009/078438(WO,A1)
特開2008-174489(JP,A)
TOHNO M., et al.,Advanced molecular immunoassay system for immunobiotic lactic acid bacteria using a transfectant of Toll-like receptor 2,Anim. Sci. J.,2007年,vol.78, no.2,p.195-205
TOHNO M., et al.,A swine toll-like receptor 2-expressing transfectant as a potential primary screening system for immunobiotic microorganisms,FEMS Immunol. Med. Microbiol.,2005年,vol.44, no.3,p.283-288
調査した分野 C07K 1/00-19/00
C12N 1/20
PubMed
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
SCDRNGIC(配列番号1)、DRNGICKG(配列番号2)、RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)、QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、TFTKIQRK(配列番号9)、TKIQRKDF(配列番号10)、IQRKDFAG(配列番号11)、IKKFTFRN(配列番号12)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)、GNFRASDN(配列番号23)、GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)、RVKRITVE(配列番号27)、KRITVENS(配列番号28)、SLNLPQLK(配列番号29)、LNLPQLK(配列番号30)、NLPQLKEL(配列番号31)、NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)、QLKEL(配列番号36)、HVRGQQVQ(配列番号37)及びRLSVSECH(配列番号38)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる、乳酸菌の付着誘導ペプチド。
【請求項2】
SCDRNGIC(配列番号1)、DRNGICKG(配列番号2)、RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)、QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)、GNFRASDN(配列番号23)、GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)、SLNLPQLK(配列番号29)、LNLPQLK(配列番号30)、NLPQLKEL(配列番号31)、NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)及びQLKEL(配列番号36)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる、乳酸菌の付着誘導ペプチド。
【請求項3】
QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)及びFRNVK(配列番号22)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる、乳酸菌の付着誘導ペプチド。
【請求項4】
乳酸菌がラクトバチラス属(Lactobacillus)の乳酸菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
乳酸菌がラクトバチラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
培養前及び/又は培養中に請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドを乳酸菌に接触させることを特徴とする、乳酸菌の培養法。
【請求項7】
培養中に請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドを培養液に添加すること、又は請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドを予め固定した培養面上で前記乳酸菌を培養すること、によって培養中の前記接触が生ずる、請求項6に記載の培養法。
【請求項8】
培養容器と、該培養容器の内壁面又は該培養容器内に配置される支持体の表面からなる培養面であって、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドが固定化された培養面と、を備えた培養システム。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチドを含有する、乳酸菌付着誘導組成物。
【請求項10】
医薬又は食品である、請求項9に記載の組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は機能性ペプチドに関する。詳しくは、乳酸菌の付着性を誘導するペプチド及びその用途に関する。本出願は、2009年8月19日に出願された日本国特許出願第2009-189756号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
健康志向や予防医学の観点から食品による健康維持に関心が高まり、乳酸菌を利用して腸内細菌叢のバランスを改善することによる整腸作用や免疫作用が注目されている。乳酸菌自体を利用する方法はプロバイオティクスと呼ばれる(例えば特許文献1、2を参照)。一方、オリゴ糖など、乳酸菌の生育や増殖に有効な物質を用いた、いわゆるプレバイオティクスが整腸作用や腸管免疫作用、血清コレステロール・脂質の低減作用、大腸がんの抑制作用などを示すことが報告されている(例えば特許文献3、4を参照)。
【0003】
ところで、一部の腸内乳酸菌は腸上皮上および粘膜層中で病原菌と共に凝集する能力を有する。この凝集は競合的排除のプロセスの一部と考えられており、プロバイオティック特性の実現に重要であるといわれる。しかしながら、凝集に関与する分子メカニズムは未解明である。この例に限らず、腸内環境下の乳酸菌の特性については不明な点が多い。乳酸菌の解析が進まない原因の一つは、腸内環境を再現した解析ツールがないことである。現在利用されている浮遊型培養系では、菌叢のダイナミズムは到底解析できない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-277296号公報
【特許文献2】特開2008-212140号公報
【特許文献3】特開2001-226409号公報
【特許文献4】特開2001-240559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摂取した乳酸菌がプロバイオティクスとして作用するためには、それが腸管など組織表面に付着し、腸管に留まることが重要である。また、常在菌である乳酸菌が腸内環境を維持するためにはそれが活発に生育することが必要であり、そのためには十分な付着性を発揮しなければならない。一方、乳酸菌を解析したり、乳酸菌の生育や増殖などに有効な物質を探索したりするためには腸内環境を模倣した培養系、即ち、付着状態で乳酸菌を培養する培養系の創出が望まれるところであり、そのためには乳酸菌の付着性を誘導すること(高めること)が重要となる。
【0006】
そこで本発明は、乳酸菌の付着性を誘導することが可能な材料及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて本発明者らは、乳酸菌の付着や菌叢化に関与するペプチドを見出すことを目的として鋭意検討した。その際、グラム陽性菌の認識受容体であるToll様受容体(TLR2)に着目し、そのアミノ酸配列(図1)を基に腸内乳酸菌の付着性誘導に効果的な配列を探索した。まず、TLR2のアミノ酸配列を網羅する短鎖ペプチドアレイをセルロース膜上にスポット合成により作製した(図2)。供試乳酸菌としてラクトバチラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus GG)を用い、その懸濁液をペプチドアレイ上に播種してその付着量を評価した。その結果、付着性を誘導するペプチド数種が特定された。これらのペプチドの内の一部は短時間で乳酸菌の菌叢形成を促した。即ち、強い付着誘導能を示すペプチドを見出すことに成功した。また、これらのペプチドの中には、酸性条件下でも強い付着誘導能を示すことに加え、大腸菌に対しては付着誘導能を示さない(高い特異性を有する)ことが判明した。また、このように高い有用性を示したペプチドを可溶化状態で作用させたところ、乳酸菌の付着性が誘導された。この事実は、これらのペプチドの有用性を裏付けるとともに、これらのペプチドの作用によって乳酸菌自体の付着性が高まっていることを示唆する。強い付着誘導能を示したペプチド配列中の重要な部位を特定するために更に検討を進めた結果、付着誘導能と配列との関係について興味深い知見が得られるとともに、強い付着誘導能を示したペプチドの部分配列の中から強い付着誘導能を示す配列が見出された。更に検討を進めた結果、付着誘導能を示したペプチドの中に乳酸菌に対する凝集活性をも示すペプチドが見出された。また、当該ペプチドが乳酸菌の菌叢形成を促すことも判明した。
【0008】
以下に列挙する本発明は主として上記成果に基づく。
[1]SCDRNGIC(配列番号1)、DRNGICKG(配列番号2)、RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)、QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、TFTKIQRK(配列番号9)、TKIQRKDF(配列番号10)、IQRKDFAG(配列番号11)、IKKFTFRN(配列番号12)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)、GNFRASDN(配列番号23)、GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)、RVKRITVE(配列番号27)、KRITVENS(配列番号28)、SLNLPQLK(配列番号29)、LNLPQLK(配列番号30)、NLPQLKEL(配列番号31)、NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)、PQLKE(配列番号35)、QLKEL(配列番号36)、HVRGQQVQ(配列番号37)及びRLSVSECH(配列番号38)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する、乳酸菌の付着誘導ペプチド。
[2]SCDRNGIC(配列番号1)、DRNGICKG(配列番号2)、RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)、QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)、GNFRASDN(配列番号23)、GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)、SLNLPQLK(配列番号29)、LNLPQLK(配列番号30)、NLPQLKEL(配列番号31)、NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)、PQLKE(配列番号35)及びQLKEL(配列番号36)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する、乳酸菌の付着誘導ペプチド。
[3]QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)及びFRNVK(配列番号22)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する、乳酸菌の付着誘導ペプチド。
[4]乳酸菌がラクトバチラス属(Lactobacillus)の乳酸菌である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチド。
[5]乳酸菌がラクトバチラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のペプチド。
[6]培養前及び/又は培養中に[1]~[5]のいずれか一項に記載のペプチドを乳酸菌に接触させることを特徴とする、乳酸菌の培養法。
[7]培養中に[1]~[5]のいずれか一項に記載のペプチドを培養液に添加すること、又は[1]~[5]のいずれか一項に記載のペプチドを予め固定した培養面上で前記乳酸菌を培養すること、によって培養中の前記接触が生ずる、[6]に記載の培養法。
[8]培養容器と、該培養容器の内壁面又は該培養容器内に配置される支持体の表面からなる培養面であって、[1]~[5]のいずれか一項に記載のペプチドが固定化された培養面と、を備えた培養システム。
[9][1]~[5]のいずれか一項に記載のペプチドを含有する、乳酸菌付着誘導組成物。
[10]医薬又は食品である、[9]に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Toll様受容体(TLR2)の外膜配列(配列番号39)。
【図2】ペプチドアレイを用いた、TLR2外膜由来ペプチドの設計。
【図3】ペプチドアレイを用いたスクリーニングの結果を示すグラフ。各ペプチドの相対蛍光強度を比較した。蛍光強度比4.0以上を有望なペプチドとして選出した。塗りつぶした棒グラフは蛍光強度比4.0以上の配列を示している。
【図4】強い付着誘導能(蛍光強度比4.0以上)を示したペプチド配列とその性質をまとめた表。太字は正電荷のアミノ酸、下線は負電荷のアミノ酸を示す。No.1(配列番号40)、No.7(配列番号41)、No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.68(配列番号42)、No.81(配列番号9)、No.82(配列番号10)、No.83(配列番号11)、No.95(配列番号43)、No.96(配列番号44)、No.125(配列番号45)、No.126(配列番号12)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.153(配列番号46)、No.154(配列番号47)、No.169(配列番号27)、No.170(配列番号28)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31)、No.283(配列番号48)、No.285(配列番号37)、No.290(配列番号38)の配列が特定された。
【図5】ガラスアレイ上での乳酸菌の状態。No.1(配列番号40)、No.7(配列番号41)、No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.68(配列番号42)、No.81(配列番号9)、No.82(配列番号10)、No.83(配列番号11)、No.95(配列番号43)、No.96(配列番号44)、No.125(配列番号45)、No.126(配列番号12)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.153(配列番号46)について、24時間培養後の乳酸菌の様子が示される。
【図6】図5の続き。No.154(配列番号47)、No.169(配列番号27)、No.170(配列番号28)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31)、No.283(配列番号48)、No.285(配列番号37)、No.290(配列番号38)について、24時間培養後の乳酸菌の様子が示される。
【図7】ガラスアレイ上での乳酸菌の状態。(a)強い付着誘導能を示したペプチド配列(No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.81(配列番号9)、No.82(配列番号10)、No.83(配列番号11)、No.126(配列番号12)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.169(配列番号27)、No.170(配列番号28)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31)、No.285(配列番号37)、No.290(配列番号38))について乳酸菌の様子(3時間培養後)が示される。菌叢を形成していると思われる。
【図8】ガラスアレイ上での乳酸菌の状態(図7の続き)。(b)中程度の付着誘導能を示したペプチド配列(No.1(配列番号40)、No.7(配列番号41)、No.68(配列番号42)、No.95(配列番号43)、No.96(配列番号44)、No.125(配列番号45)、No.283(配列番号48))について乳酸菌の様子(3時間培養後)が示される。菌叢形成の過程にあると思われる。(c)付着誘導能が低いペプチド配列(No.154(配列番号47))について乳酸菌の様子(3時間培養後)が示される。未だ菌叢は形成されていないと思われる。
【図9】強い付着誘導能を示したペプチド配列(No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.81(配列番号9)、No.82(配列番号10)、No.83(配列番号11)、No.126(配列番号12)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.169(配列番号27)、No.170(配列番号28)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31)、No.285(配列番号37)、No.290(配列番号38))の特徴をまとめた表。下線部は連続している配列であり、重複している部分を示している。
【図10】強い付着誘導能を示したペプチド配列(No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.81(配列番号9)、No.82(配列番号10)、No.83(配列番号11)、No.126(配列番号12)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.169(配列番号27)、No.170(配列番号28)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31)、No.285(配列番号37)、No.290(配列番号38))のpH依存性を示すグラフ。
【図11】pHの影響を受けずに強い付着誘導能を示したペプチド(No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31))の特徴をまとめた表。下線部は重複している部分を示している。
【図12】各ペプチド(No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31))の特異性を示すグラフ。(a)pH 7.4のときの大腸菌K-12の接着面積を示す。ペプチドがないときの接着面積を1.0として評価した。(b)pH 7.4のときの乳酸菌と大腸菌の接着面積を比較したグラフである。大腸菌と乳酸菌の接着面積を比較したグラフ。
【図13】可溶化状態でペプチド(No.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31))を作用させたときの、ガラス表面に付着した乳酸菌の様子。
【図14】ペプチドNo.37(配列番号5)とNo.127(配列番号13)の濃度依存性。可溶化状態の各ペプチドを様々な濃度で添加し、ガラス表面に付着した乳酸菌を観察した。
【図15】ペプチドの部分配列の付着誘導能。ペプチドNo.15(配列番号1)とNo.16(配列番号2)について様々な部分配列を合成し、それらの付着性を評価した。
【図16】ペプチドの部分配列の付着誘導能。ペプチドNo.37(配列番号5)とNo.127(配列番号13)について様々な部分配列を合成し、それらの付着性を評価した。
【図17】ペプチドの部分配列の付着誘導能。ペプチドNo.147(配列番号23)とNo.237(配列番号29)について様々な部分配列を合成し、それらの付着性を評価した。
【図18】ペプチドの部分配列の付着誘導能。ペプチドNo.238(配列番号31)について様々な部分配列を合成し、それらの付着性を評価した。
【図19】培養システムの一例を示す断面図。(a)培養容器2の内壁面が培養面となる培養システム1。符号3で示す領域にはペプチドが付着している。符号4は培養液を示す。(b)培養容器2の内部に配置される支持体6の表面が培養面となる培養システム2。支持体の先端領域7にはペプチドが付着している。
【図20】培養システムの一例(中空糸型バイオリアクター8)を示す断面図。筐体9内に充填された中空糸10の表面にペプチド13が付着している(下段の部分拡大図)。符号11及び12はそれぞれ吸入口及び排出口を示す。
【図21】可溶性ペプチドによる乳酸菌の凝集試験の結果。乳酸懸濁液にペプチドを添加し、吸光度の経時変化を調べた(A)。No.37のペプチド(配列番号5)の添加によって乳酸菌の凝集が生じた(B)。
【図22】可溶性ペプチドの添加による乳酸菌のバイオフィルム形成試験の結果(XY, YZ, XZ平面画像)。a:ペプチド添加なし、b:No.37のペプチド(配列番号5)を添加、c: No.103のペプチド(配列番号63)を添加。
【図23】可溶性ペプチドの添加による乳酸菌のバイオフィルム形成試験の結果(Z軸方向断面での輝度の分布)。a:ペプチド添加なし、b:No.37のペプチド(配列番号5)を添加、c:No.103のペプチド(配列番号63)を添加。
【図24】可溶性ペプチドの添加による乳酸菌のバイオフィルム形成試験の三次元解析の結果。*菌叢の厚みについては輝度の閾値0と共にそれ以上の閾値20,40,60についても厚みを測定した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の局面は乳酸菌の付着性を誘導するペプチドに関する。用語「付着性を誘導する」とは、付着性が生ずる又は高まるように働きかけることをいう。従って、本発明のペプチドを作用させると乳酸菌の付着性が向上することになる。本発明のペプチドによれば乳酸菌の付着性を制御することが可能となる。この特性を活かし、本発明のペプチドは乳酸菌の培養用の材料(本発明の第2の局面)や乳酸菌を標的とした医薬ないし食品の有効成分(本発明の第3の局面)などに利用される。尚、用語「付着性」は用語「接着性」と交換可能に用いられる。

【0011】
用語「乳酸菌」は、慣例に従い、代謝産物として乳酸を生成する細菌の総称を意味する。乳酸菌の例はラクトバチラス属(Lactobacillus)の細菌(ラクトバチラス・ラムノサス、ラクトバチラス・ファーメンタム、ラクトバチラス・ブレビス、ラクトバチラス・プランタルム、ラクトバチラス・カゼイ、ラクトバチラス・アシドフィラス、ラクトバチラス・ブルガリスなど)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の細菌(ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレビ、ビフィドバクテリウム・ビフィダムなど)、ラクトコッカス属(Lactococcus)の細菌(ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・クレモリスなど)、エンテロコッカス属(Enterococcus)の細菌(エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウムなど)である。好ましい乳酸菌の一つとしてラクトバチラス・ラムノサスが挙げられる。

【0012】
本発明のペプチドはSCDRNGIC(配列番号1)、DRNGICKG(配列番号2)、RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)、QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、TFTKIQRK(配列番号9)、TKIQRKDF(配列番号10)、IQRKDFAG(配列番号11)、IKKFTFRN(配列番号12)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)、GNFRASDN(配列番号23)、GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)、RVKRITVE(配列番号27)、KRITVENS(配列番号28)、SLNLPQLK(配列番号29)、LNLPQLK(配列番号30)、NLPQLKEL(配列番号31)、NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)、PQLKE(配列番号35)、QLKEL(配列番号36)、HVRGQQVQ(配列番号37)及びRLSVSECH(配列番号38)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する。これらのペプチドは、後述の実施例に示す通り、乳酸菌に対する強い付着誘導能を示したペプチドである。

【0013】
好ましくは、本発明のペプチドはSCDRNGIC(配列番号1)、DRNGICKG(配列番号2)、RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)、QRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)、GNFRASDN(配列番号23)、GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)、SLNLPQLK(配列番号29)、LNLPQLK(配列番号30)、NLPQLKEL(配列番号31)、NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)、PQLKE(配列番号35)及びQLKEL(配列番号36)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する。これらは、後述の実施例に示す通り、酸性条件下でも乳酸菌に対する強い付着誘導能を示すとともに、可溶化状態であっても乳酸菌の付着性を誘導したペプチド(配列番号1、2、5、13、23、29、31)とその部分配列(同等の付着誘導能が確認されたもの)である。これらのペプチドは、酸性環境下においても乳酸菌の付着性を誘導できる点及び可溶化状態であっても乳酸菌の付着性を誘導できる点において有用性が高い。

【0014】
更に好ましくは、本発明のペプチドはQRCVNLQA(配列番号5)、QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)、KFTFRNVK(配列番号13)、KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)及びFRNVK(配列番号22)からなる群より選択されるいずれかのアミノ酸配列を有する。これらは、後述の実施例に示す通り、乳酸菌に対する付着誘導能に関して、可溶化状態で作用させた場合に明確な濃度依存性が認められたペプチド及びその部分配列(同等の付着誘導能が確認されたもの)である。

【0015】
最も好ましくは、本発明のペプチドはアミノ酸配列QRCVNLQA(配列番号5)を有する。当該ペプチドは、乳酸菌に対する凝集性を示すとともに、菌叢形成を促進することが確認されたものであり、特に有用性が高い。

【0016】
本発明のペプチドを構成する各アミノ酸はL体であってもD体であってもよい。但し、好ましくはL体のアミノ酸で構成される。本発明のペプチドは公知のペプチド合成法(例えば固相合成法、液相合成法)によって調製することができる。尚、自動ペプチド合成機を利用すれば容易かつ迅速に目的のペプチドを合成することができる。

【0017】
遺伝子工学的手法を用いて目的のペプチドを調製することにしてもよい。即ち、本発明のペプチドをコードする核酸を適当な宿主細胞に導入し、形質転換体内で発現されたペプチドを回収することにより目的のペプチドを得ることにしてもよい。回収されたペプチドは必要に応じて精製される。回収されたペプチドを適当な置換反応に供し、所望のペプチド修飾体に変換することもできる。

【0018】
所望の細胞特異性を維持する限り、上記のペプチドに何らかの修飾が施されていても良い。即ち、本発明の一態様は、上記ペプチドの修飾体(以下、「修飾ペプチド」という)を提供する。本発明における「修飾ペプチド」とは、基本構造としての特定のペプチドの一部(複数箇所であってもよい)を他の原子団等で置換すること、或いは他の分子を付加すること等の修飾を施すことによって、少なくとも一部において当該ペプチドと相違する構造の化合物をいう。当業者であれば、周知ないし慣用の手段を用いて上記のペプチドを基本とした置換体などの修飾体を設計することができる。また、かかる設計に基づき、周知ないし慣用の手段を用いて目的の修飾体を調製することができる。

【0019】
修飾ペプチドの代表例としては、ペプチドを構成するアミノ酸残基において側鎖の一部(原子又は原子団)が他の原子又は原子団で置換されたペプチド誘導体を挙げることができる。このようなペプチド誘導体は、最終生成物として当該ペプチド誘導体が得られるように設計された任意の製造工程によって調製することができる。したがって、目的のペプチド誘導体が、あるペプチドにおいて一部(例えば側鎖の一部である原子団)が特定の原子団によって見かけ上置換されたものである場合には、当該目的のペプチド誘導体はこの見かけ上基本となるペプチドを出発材料として当該特定の原子団を用いた置換反応によって製造されたものであっても、或いは例えば他の構造のペプチドを出発材料として適当な置換反応等(場合によって複数工程であってもよい)によって製造されたものであってもよい。ここでの他の原子又は原子団としては、ヒドロキシル基、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等)、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基、マロニル基、ベンゾイル基等)等を例示することができる。

【0020】
尚、修飾ペプチドには、構成アミノ酸残基内の官能基が適当な保護基によって保護されているものも含まれる。このような目的に使用される保護基としては、アシル基、アルキル基、単糖、オリゴ糖、多糖等を用いることができる。このような保護基は、保護基を結合させるペプチド部位や使用する保護基の種類などに応じて、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合、尿素結合等によって連結される。

【0021】
修飾ペプチドの他の例としては、糖鎖の付加による修飾が施されているものを挙げることができる。また、N末端又はC末端が他の原子等で置換されることによってアルキルアミン、アルキルアミド、スルフィニル、スルフォニルアミド、ハライド、アミド、アミノアルコール、エステル、アミノアルデヒド等に分類される各種ペプチド誘導体も修飾ペプチドの一つである。

【0022】
修飾ペプチドの更なる例は標識化ペプチドである。例えばN末端がビオチン標識やFITC標識されたペプチド、蛍光色素で標識化されたペプチドなどが標識化ペプチドに該当する。

【0023】
尚、以上で説明した各種の修飾方法を組み合わせることによって構成されるペプチド誘導体を本発明の修飾ペプチドとしてもよい。

【0024】
本発明の第2の局面は本発明のペプチドの用途に関し、乳酸菌の培養法(以下、「本発明の培養法」とも呼ぶ)及び培養システム(以下、「本発明の培養システム」とも呼ぶ)を提供する。本発明の培養法、培養システムは各種アッセイ(乳酸菌の特性や機能等を研究するためのアッセイや被験物質の乳酸菌に対する作用を調べるためのアッセイ等)や乳酸菌による物質の生産に利用可能である。本発明の培養法、培養システムによれば、従来の浮遊培養系やゲル材料などを用いて強制的に乳酸菌を固定化した状態で培養する培養系とは異なり、乳酸菌が本来備える付着性によって乳酸菌が培養面に付着した状態が形成される。この特徴により、これまでのアッセイ系では得ることができない知見をもたらすと期待される。また、物質の生産に利用した場合には生産性の向上を期待できる。また、好ましい環境下でのみ生産する物質の生産に特に適したものとなる。

【0025】
本発明の培養法は、培養前及び/又は培養中に本発明のペプチドを乳酸菌に接触させることを特徴とする。換言すれば、本発明のペプチドを乳酸菌に作用させ、乳酸菌の付着性を向上させることを特徴とする。乳酸菌の付着性を向上させる操作である、本発明のペプチドと乳酸菌との間の接触は、一態様においては培養開始前に行われる。例えば、培養に供する乳酸菌を含む培養液中に本発明のペプチドを添加することによって当該接触を実現できる。或いは、培養開始前に、本発明のペプチドが内壁表面に固定された培養皿やフラスコ等に、培養に供する乳酸菌を維持することによっても当該接触を実現することができる。

【0026】
本発明の他の一態様では培養中に本発明のペプチドを乳酸菌に接触させる。このような培養中の接触は、培養中のある時点において本発明のペプチドを培養液に添加すること、又は本発明のペプチドを予め固定した培養面上で乳酸菌を培養することによって実現できる。前者の場合、任意の時点で乳酸菌の付着性を誘導することができる。このことは、培養中の乳酸菌の付着性を時間的に制御できることを意味する。このような培養法は、培養条件や種属の異なる乳酸菌をアレイ化する等、各種アッセイに有用である。他方、後者の場合、本発明のペプチドを固定した培養面を用いた培養システムが用いられることになり、乳酸菌を培養容器に投入すると、培養面表面に固定されたペプチドに乳酸菌が接触する。培養面は例えば培養容器の内壁面に形成される。或いは、培養容器内に配置される支持体の表面に形成される。このように支持体を利用すると、培養容器内の任意の位置に捕捉した状態で乳酸菌を培養できる。即ち、乳酸菌の空間的な制御が可能となる。また、表面が凹凸の支持体や多孔性の支持体などを採用することにより、面積の広い培養面を形成できる。特に、表面積の広いこのような支持体を培養容器内に充填することにすれば格段に広い培養面を確保することができる。ここでの支持体は、乳酸菌が付着可能な表面を有するものであれば特に限定されない。支持体の材質として、セルロース、ガラス(無機ガラス、有機ガラス)、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロースアセテート系樹脂を例示することができる。支持体の形態・形状にも特段の制約はない。例えば、多孔性の支持体や中空糸状の支持体を用いることができる。尚、典型的には培養前又は培養中のいずれかにおいて本発明のペプチドと乳酸菌に接触させるが、培養前と培養中の両方において接触操作を行ってもよい。

【0027】
本発明の培養法では1種類又は2種類以上のペプチドが使用される。2種類以上のペプチドを併用する場合の組合せは特に限定されない。本発明のペプチド(1種類又は2種類以上)とともに、本発明のペプチド以外のペプチドを用いることも可能である。併用可能なペプチドの例として、細胞付着性ペプチド(RGD配列からなるトリペプチド又は当該トリペプチドを内包するより長いペプチドやGKFQ(配列番号49)、MKHT(配列番号50)、KGMH(配列番号51)、KGIR(配列番号52)、KSLK(配列番号53)、KHYH(配列番号54)、ALNGR(配列番号55)、TLTNLT(配列番号56)、SITLTN(配列番号57)、KQAGDV(配列番号58)、REDV(配列番号59)、YIGSR(配列番号60)、IKVAV(配列番号61)、PHSRN(配列番号62)等)(特開2008-63285号公報、Mina Okochi et al., Biochem Biophys Res Commun. 371 (2008) 85-89を参照)を挙げることができる。

【0028】
本発明の培養法を適用可能な乳酸菌は特に限定されない。培養対象となり得る乳酸菌として、ラクトバチラス属の細菌、ビフィドバクテリウム属の細菌、ラクトコッカス属の細菌、エンテロコッカス属の細菌を例示することができる。好適な乳酸菌としてはラクトバチラス・ラムノサス、ラクトバチラス・アシドフィルス、ラクトバチラス・カゼイ、ラクトバチラス・ブルガリスを例示することができる。

【0029】
2種類以上の乳酸菌を共培養することにしてもよい。この場合の乳酸菌の組合せは特に限定されない。一方、乳酸菌に加えて他の細菌を共培養することに本発明の培養法を利用することも可能である。ここでの「他の細菌」としてクロストリジウム・パーフリンジェンスを挙げることができる。2種類以上の「他の細菌」を共培養することにしてもよい。生体の腸管に常在する菌種を採用すれば、生体の腸管により近い(より忠実に再現した)培養系を構築できる。このような培養系は生体内での乳酸菌の働き、機能、挙動などを調べる手段として、或いは腸管内の菌叢の改善を標的とした薬剤や食品の評価系として有用である。

【0030】
本発明の培養システムは本発明の培養法の実施に適したものであり、培養容器と、培養容器の内壁面又は培養容器内に配置される支持体の表面に形成される培養面を備える(図19を参照)。ここでの「培養面」の説明は、本発明の培養法における「培養面」の説明と重複するため省略する。培養容器は開放型、密閉型のいずれであってもよい。培養容器の大きさや形状は使用目的に応じて任意に設定できる。また、培養容器の材質も特に限定されない。材質を例示すれば、金属ないし合金(ステンレス、ステンレス合金、アルミ、アルミ合金)、樹脂(ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル系樹脂)である。

【0031】
本発明の培養システムは培養液の交換を連続的に実施する方式(連続式又はフロー式と呼ばれる)であってもバッチ式であってもよい。

【0032】
好ましい一態様では、円筒状の培養容器内に、本発明のペプチドを固定化した中空糸が充填された培養システム(中空糸型バイオリアクター)が提供される(図20を参照)。当該培養システムは、(1)培養液の連続的な供給が可能となる、(2)小型に構成できる、(3)生体の腸管の環境をより忠実に再現可能となるなど、数多くの利点を有する。

【0033】
本発明の第3の局面は、本発明のペプチドを含有する組成物を提供する。本発明の組成物は乳酸菌の付着誘導が望まれる各種用途に利用可能である。例えば、腸内菌叢改善剤として利用される。本発明の組成物の形態は特に限定されないが、好ましくは医薬又は食品である。即ち、好ましい態様として、本発明のペプチドを含有する、乳酸菌の付着誘導用の医薬組成物及び食品組成物が提供される。尚、2種類以上のペプチドを併用して本発明の組成物を構成してもよい。

【0034】
本発明の医薬組成物の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

【0035】
製剤化する場合の剤形も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤又は座剤などとして本発明の医薬組成物を提供できる。本発明の医薬組成物には、期待される予防ないし治療効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分(本発明のペプチド)が含有される。本発明の医薬組成物中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%~約95重量%の範囲内で設定する。

【0036】
本発明の医薬組成物はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって対象に適用される。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では本発明の医薬組成物はヒトに対して適用される。

【0037】
本発明の医薬組成物の投与量は、期待される予防ないし治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約0.1 mg~約10 mg、好ましくは約0.1 mg~約1 mgとなるよう投与量を設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回~数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、患者の病状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。

【0038】
上記の通り本発明の一態様は食品組成物である。本発明での「食品組成物」の例として一般食品(穀類、野菜、食肉、各種加工食品、菓子類、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、清涼飲料水、アルコール飲料等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品を挙げることができる。栄養補助食品又は食品添加物の場合、粉末、顆粒末、タブレット、ペースト、液体等の形状で提供することができる。食品組成物の形態で提供することによって、本発明のペプチドを日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが容易となる。

【0039】
本発明の食品組成物では、予防ないし治療効果が期待できる量の有効成分が含有されていることが好ましい。添加量は、それが使用される対象となる者の病状、健康状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。例えば、一日当たりの有効成分摂取量が約0.1 mg~約10 mg、好ましくは約0.1 mg~約1 mgとなるようにする。

【0040】
本発明の組成物(医薬組成物、食品組成物)が乳酸菌を更に含有していてもよい。ここでの乳酸菌として、例えば、ラクトバチラス属の細菌、ビフィドバクテリウム属の細菌、ラクトコッカス属の細菌、エンテロコッカス属の細菌からなる群より選択される一以上の細菌を用いることができる。乳酸菌の含有量は特に限定されないが、例えば一日あたり1×109個以上、好ましくは1×1010個以上、更に好ましくは1×1011個以上の菌体を摂取できるように組成物を調製する。

【0041】
尚、本明細書で特に言及しない事項(条件、操作方法など)については常法に従えばよく、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、Current protocols in Immunology, John Wiley& Sons Inc等を参考にすることができる。
【実施例】
【0042】
<Toll様受容体(TLR2)由来の付着誘導ペプチドの探索>
1.TLR2由来ペプチド配列の合成、スクリーニング
TLR2のアミノ酸配列(図1)を網羅する短鎖ペプチドアレイをセルロース膜上にスポット合成により作製した(図2)。以下の手順に従い、各ペプチド配列の付着誘導能を評価した。
(1) 腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG:ATTC 53103)をMRS培地(20ml)に植菌し、培養する(37℃、5%CO2で12時間)。
(2) OD660=約1.0になったところで本培養する。具体的には、10μlを取り、新しく用意したMRS培地(20ml)に植菌し、培養する(37℃、5%CO2で12時間)。
(3) 対数増殖中期(OD660=約1.0)になったところで菌と培地を遠沈管に移して遠心分離(20℃、1500×g、10分)する。
(4) 回収した菌をPBSで洗浄(懸濁)し、再度遠心分離(20℃、1500×g、10分)する。
(5) 上清を取り除き、DMEM培地を添加し、細菌懸濁液とする(OD660=0.4に調整)。
(6) ペプチドアレイ(メンブレン)を沈めた96ウェルプレートに細菌懸濁液を100μl播種し、培養する(37℃、5%CO2で3時間)。
(7) PBSで3回洗浄する。
(8) 10μMのcFDA溶液を100μl加え、37℃、5%CO2で1時間反応させる。
(9) 蛍光プレートリーダーで蛍光を検出する。
【実施例】
【0043】
検出結果を図3及び4に示す。図4の表には蛍光強度比(対コントロール)が4以上の配列(No.1、No.7、No.15、No.16、No.37、No.68、No.81、No.82、No.83、No.95、No.96、No.125、No.126、No.127、No.147、No.153、No.154、No.169、No.170、No.237、No.238、No.283、No.285、No.290)とその性質を示した。
【実施例】
【0044】
2.ペプチド配列の付着誘導能の検証
続いて、強い付着誘導能を示した各ペプチド配列を24ウェルのガラスアレイ上に合成し、OD660=0.25の腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGG懸濁液(DMEM pH 7.4)を15μl加えた。37℃、5%CO2で所定時間(24時間又は3時間)インキュベート後、接着の様子を位相顕微鏡下で観察した。24時間インキュベートした場合の接着の様子を図5及び6に示す。同様に、3時間インキュベートした場合の接着の様子を図7及び8に示す。ペプチドNo.15(配列番号1)、No.16(配列番号2)、No.37(配列番号5)、No.81(配列番号9)、No.82(配列番号10)、No.83(配列番号11)、No.126(配列番号12)、No.127(配列番号13)、No.147(配列番号23)、No.169(配列番号27)、No.170(配列番号28)、No.237(配列番号29)、No.238(配列番号31)、No.285(配列番号37)、No.290(配列番号38)は高接着を示し、3時間の培養後、菌叢が形成されていると思われる状態を認めた(図7(a))。また、ペプチドNo.1(配列番号40)、No.7(配列番号41)、No.68(配列番号42)、No.95(配列番号43)、No.96(配列番号44)、No.125(配列番号45)、No.283(配列番号48)は中程度の接着を示し、3時間の培養後、菌叢の形成過程と思われる状態を認めた(図8(b))。一方、No.154(配列番号47)では、未だ菌叢を形成していない(図8(c))。以上の通り、短時間で乳酸菌の菌叢形成を促すペプチド配列を見出すことができた(図9)。
【実施例】
【0045】
3.付着誘導能のpH依存性
次に、図9の表に示したペプチド配列の付着誘導能についてpH依存性を調べた。各ペプチド配列を24ウェルのガラスアレイ上に合成し、OD660=0.25の腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGG懸濁液(DMEM pH 7.4又はpH 5.5)を15μl加えた。37℃、5%CO2で3時間インキュベート後、腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGGの接着面積についてメタモルフによる画像解析を行った。pH 7.4のときの接着面積を1.0として評価し、pH 5.5のときの接着面積と比較した。結果、いくつかのペプチド配列はpHの影響を受けることなく、強い付着誘導能を発揮した(図10、11)。
【実施例】
【0046】
4.付着誘導能の細菌特異性
続いて、酸性条件下でも強い付着誘導能を示したペプチド配列の特異性を検討した。各ペプチド配列を24ウェルのガラスアレイ上に合成し、OD660=0.25の菌懸濁液(腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGG又は大腸菌K12)(DMEM pH 7.4)を15μl加えた。37℃、5%CO2で3時間インキュベート後、各菌の接着面積についてメタモルフによる画像解析を行った。尚、ペプチドがないときの接着面積を1.0として評価した。ペプチド配列によって大腸菌に対する接着誘導能に若干の差を認めたものの(図12(a))、いずれのペプチド配列も乳酸菌に対して特異的に接着誘導能を示すことが判明した(図12(b))。
【実施例】
【0047】
5.可溶化ペプチドによる付着誘導
乳酸菌に対して特異的且つ強い付着誘導能を示したペプチド配列について可溶化状態でもその能力を発揮するか否かを検証した。24ウェルプレートの各ウェルにOD660=0.25の腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGG懸濁液(DMEM pH 7.4)を10μl加えた。続いて、DMEM(pH 7.4)に溶解したペプチド(No.15、No.16、No.37、No.127、No.147、No.237、No.238)を終濃度が100μMとなるように各ウェルに添加し、37℃、5%CO2で3時間インキュベート後、接着の様子を位相顕微鏡下で観察した。接着の様子を図13に示す。ペプチド無添加の場合に比較し、ペプチドを添加した場合には付着量が増大している。特にNo.37、No.127、No.237及びNo.238を使用した場合の付着量は顕著に多い。尚、No.37、No.127については強い濃度依存性を示した(図14)。
【実施例】
【0048】
6.付着誘導能に重要な部位の検索
以上の検討によって有用性が高いことが判明したペプチド配列(No.15、No.16、No.37、No.127、No.147、No.237、No.238)における、付着誘導に重要な部位を特定するため、各ペプチド配列の部分配列を合成し、その付着誘導能を比較した。まず、各ペプチド配列が合成されたメンブレンディスクを沈めた96ウェルプレートに、OD660=0.4の腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスGG懸濁液(DMEM pH 7.4)を100μl加えた。37℃、5%CO2で3時間インキュベート後、cFDAで蛍光染色した。検出結果を図15~18に示す。部分配列の中に元の配列と同等(概ね0.8以上)の付着誘導能を示すもの(以下に配列を列挙する)が存在することがわかる。
RNGICKG(配列番号3)、NGICKG(配列番号4)
QRCVNLQ(配列番号6)、QRCVNL(配列番号7)、QRCVN(配列番号8)
KFTFRNV(配列番号14)、FTFRNVK(配列番号15)、KFTFRN(配列番号16)、FTFRNV(配列番号17)、TFRNVK(配列番号18)、KFTFR(配列番号19)、FTFRN(配列番号20)、TFRNV(配列番号21)、FRNVK(配列番号22)
GNFRASD(配列番号24)、GNFRAS(配列番号25)、GNFRA(配列番号26)
LNLPQLK(配列番号30)
NLPQLKE(配列番号32)、PQLKEL(配列番号33)、LPQLK(配列番号34)、PQLKE(配列番号35)、QLKEL(配列番号36)
【実施例】
【0049】
また、各部分配列の付着誘導能の比較より、付着誘導に重要と思われる部位が以下の通り特定された。
No.15の配列・・C末端側
No.16の配列・・C末端側
No.37の配列・・N末端側
No.127の配列・・中央部分
No.147の配列・・N末端側
No.237の配列・・C末端側
No.238の配列・・中央部分
【実施例】
【0050】
7.ペプチドによる乳酸菌の凝集活性の評価
腸内乳酸菌ラクトバチラス・ラムノサスを、plainDMEM(pH7.4)に懸濁し、可溶化ペプチドを混合した(全体のOD660 = 0.75、ペプチド濃度 1.0 mM )。このペプチド入り菌体懸濁液500μlを1.5mLのチューブに入れてよく攪拌した後、静置して30分間隔で上清をサンプリングし、その濁度を1マイクロリットル吸光光度計により測定した。
【実施例】
【0051】
その結果、No.37(QRCVNLQA(配列番号5))では30分において吸光度が大きく低下し、静置1時間後にはブランクとして用いたplainDMEM培地とほぼ同等の吸光度となった(図21)。その他のペプチドにおいては、コントロール(ペプチド添加なし)と比較し吸光度の減少は確認されるものの、高い凝集性はみられなかった。この変化は視覚的にも明らかであり、静置1時間後にNo.37のペプチドを添加したチューブでは、底面に菌体が集まっている様子が確認された(図21)。さらに、静置1時間後の細菌懸濁液を採取し、位相差顕微鏡よって観察するとNo.37のペプチドを添加した場合では確かに凝集を起こしている様子が確認され、その他のペプチド及びペプチドを添加しない場合では凝集を起こしていないことが確認された。
【実施例】
【0052】
8.共焦点顕微鏡を用いた乳酸菌の菌叢形成の評価
チャンバーにペプチド入り乳酸菌の懸濁液(全体のOD660 = 0.4、ペプチド濃度 100μM)50μlを加え、37℃ 5%CO2下で3時間インキュベートした。その後、付着していない菌体を洗浄した後、100μMのカルボキシフルオレセイン二酢酸(carboxyfluorescein diacetate;CFDA)を50μl加えて、さらに1時間インキュベートした。再び洗浄により、菌体外の蛍光試薬を取り除き、形成されたバイオフィルムの様子を共焦点顕微鏡によって観察した。ペプチドとしては、乳酸菌の凝集を誘導したNo.37(QRCVNLQA(配列番号5))、結合および凝集性を誘導しないNo.103のペプチド(LHMKQHIL(配列番号63))を用いた。
【実施例】
【0053】
共焦点顕微鏡ではZ軸方向にスライスした複数の画像を横からみた1枚の画像として表示できるため、付着性の評価だけでなく、菌叢の中にどの程度菌体が密に存在しているかを知ることができる。共焦点顕微鏡観察においては、Z軸方向に0.5μm間隔で連続撮影した画像を重ねて並べ、XZ平面からZ軸方向の任意の断面を選択し、画像解析ソフト「Image-J」によりその輝度を解析し、輝度の総和から菌体付着量を求めた。図22に示されるように、凝集性ペプチドNo.37(QRCVNLQA(配列番号5))を添加した場合に高い蛍光強度が得られた。また、輝度の分布においても、ペプチドを添加しない場合は輝度が全体的に低いのに対して、No.37(QRCVNLQA(配列番号5))を加えた場合に輝度が全体的に高く、乳酸菌が密に付着していることが示唆された(図23)。このことから、No.37(QRCVNLQA(配列番号5))を添加した場合では付着が促進されると共に、密な菌叢が形成されていることが分かった。また、No.103のペプチド(LHMKQHIL(配列番号63))では、菌叢の厚みも薄く輝度においても凹凸の多い形状となった。この配列は凝集誘導性を示さないことから、ペプチド添加による凝集誘導が付着促進と共に密な菌叢の形成に関与していることが示唆された(図24)。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のペプチドは乳酸菌に対する付着誘導能を有する。本発明のペプチドを利用すれば付着状態で乳酸菌を培養することが可能となり、従来の菌浮遊型リアクターとは対照的な、乳酸菌が凝集した菌叢リアクターを実現できる。このような菌叢リアクターは腸内菌叢ダイナミズムの解明に有用である。一方、摂取される乳酸菌(プロバイオテックス)又は腸内に常在する乳酸菌に作用させるプレバイオテックスとして本発明のペプチドを利用することも可能である。
【0055】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0056】
1、5 培養システム
2 培養容器
3 ペプチド付着領域
4 培養液
6 支持体
7 支持体の先端領域(ペプチド付着領域)
8 中空糸型リアクター
9 筐体
10 中空糸
11 吸入口
12 排出口
13 ペプチド
【配列表フリ-テキスト】
【0057】
配列番号1~38、40~48、63:人工配列の説明:TLR2由来の合成ペプチド
配列番号49~62:人工配列の説明:接着性ペプチド
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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