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明細書 :ソルガム紫斑点病関連遺伝子およびその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5783463号 (P5783463)
登録日 平成27年7月31日(2015.7.31)
発行日 平成27年9月24日(2015.9.24)
発明の名称または考案の名称 ソルガム紫斑点病関連遺伝子およびその用途
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
A01H   1/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/00 103
A01H 5/00 A
A01H 1/00 A
C12Q 1/68 A
A01N 63/00 C
A01P 3/00
G01N 33/50 P
G01N 33/68
請求項の数または発明の数 7
全頁数 47
出願番号 特願2011-528895 (P2011-528895)
出願日 平成22年8月30日(2010.8.30)
国際出願番号 PCT/JP2010/064733
国際公開番号 WO2011/025007
国際公開日 平成23年3月3日(2011.3.3)
優先権出願番号 2009199794
優先日 平成21年8月31日(2009.8.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年8月16日(2013.8.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業生物資源研究所
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】川東 広幸
【氏名】松本 隆
【氏名】呉 健忠
【氏名】米丸 淳一
【氏名】佐塚 隆志
【氏名】春日 重光
個別代理人の代理人 【識別番号】110001047、【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 特開2007-054020(JP,A)
国際公開第2007/000880(WO,A1)
PATERSON,A.H. et al,Sorghum bicolor hypothetical protein, mRNA.,GenBank,2009年 7月13日,LOCUS:XM_002450394,VERSION:XM_002450394.1 GI:242070324,[on line] 2014/11/18,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/242070324
PATERSON,A.H. et al,The Sorghum bicolor genome and the diversification of grasses,Nature (Lond),2009年,Vol.457, No.7229,p.551-556
TSUKIBOSHI,T. et al,Inheritance of resistance to target leaf spot caused by Bipolaris cookei (Saccardo) Shoemaker in sorghum (Sorghum bicolor MOENCH),日本草地学会誌,1990年,Vol.35, No.4,p.302-308
YONEMARU,J. et al,Development of Genome-wide Simple Sequence Repeat Markers Using Whole-genome Shotgun Sequences of Sorghum (Sorghum bicolor (L.) Moench),DNA Res,2009年 4月10日,Vol.16, No.3,p.187-193
春日重光 他,ソルガム紫斑点病の罹病が稈汁ブリックス糖度に及ぼす影響,日本草地学会誌,2008年,Vol.54,p.252-253
調査した分野 C12N 15/00
A01H 1/00
A01H 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ソルガムに紫斑点病罹病性を付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNAの発現または機能を抑制することを特徴とする、紫斑点病抵抗性が付与されたソルガムの作出方法。
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
【請求項2】
ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNAまたはソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するRNAをコードする下記(e)~(g)のいずれかに記載のDNAを導入する工程を含む、紫斑点病抵抗性が付与されたソルガムの作出方法。
(a)配列番号:9または12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:7、8、10または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4、5、7、8、10、または11に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(e)下記(i)~(iv)に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(f)下記(i)~(iv)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(g)下記(i)~(iv)に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA
(i)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(ii)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(iii)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(iv)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
【請求項3】
ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードする下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNA若しくはソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するRNAをコードする下記(e)~(g)のいずれかに記載のDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含む、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与するための薬剤。
(a)配列番号:9または12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:7、8、10または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4、5、7、8、10、または11に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
(e)下記(i)~(iv)に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(f)下記(i)~(iv)に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(g)下記(i)~(iv)に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA
(i)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(ii)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(iii)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(iv)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
【請求項4】
ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法であって、被検ソルガムにおける下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNAまたはその発現制御領域の塩基配列を解析し、対照の塩基配列と比較することを特徴とする方法。
(a)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1、2、4、5、7、8、10、または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4、5、7、8、10または11に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
【請求項5】
ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法であって、ソルガムにおける下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNAの発現または発現産物の分子量を検出することを特徴とする方法。
(a)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1、2、4、5、7、8、10、または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4、5、7、8、10または11に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
【請求項6】
ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法であって、被検ソルガムにおける、下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNAと連鎖する分子マーカーの塩基配列を解析し、対照の塩基配列と比較することを特徴とする方法。
(a)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1、2、4、5、7、8、10、または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4、5、7、8、10または11に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
【請求項7】
紫斑点病抵抗性のソルガムを育種する方法であって、
(a)紫斑点病抵抗性のソルガム品種と任意のソルガム品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における紫斑点病の罹病性または抵抗性を、請求項からのいずれかに記載の方法により判定する工程、および
(c)紫斑点病の抵抗性を有すると判定された品種を選抜する工程、を含む方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルガム紫斑点病の罹病性遺伝子および抵抗性遺伝子、ソルガム紫斑点病の罹病性および抵抗性の判定方法、ならびに紫斑点抵抗性のソルガムの作出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫斑点病(Purple leaf spot)は、糸状菌によって引き起こされる斑点性病害で、関東以南の温暖地で発生する病害である。日本国内で栽培されているソルガム(モロコシ属植物)品種は、その8割が紫斑点病に罹病性であり、近年、その発生が拡大傾向にある。紫斑点病に感染した個体では、一般的には葉に赤紫褐色の斑点が生じる。品種によっては黄褐色、橙色、赤から赤褐色の斑点を生じる場合もある。この斑点が広がって、長さ0.5~2cmで幅0.3~1cmの紡錘形病斑となる。
【0003】
ソルガムは、これまで、日本国においては、主に家畜飼料として栽培されていたが、近年になり、バイオ燃料(エタノール)の原料としても注目されるようになってきた。このため紫斑点病の病害によるソルガムの減収を防ぐことは、農業政策のみならず、エネルギー政策の上でも重要な課題である。
【0004】
これまでソルガムにおいては、その主たる用途が家畜飼料であったことなどから、紫斑点病に対する防除は、ほとんど行われてこなかったのが現状である。
【0005】
その一方、ソルガムの品種間で、紫斑点病に対する抵抗性に差異があることが知られていた。このため抵抗性品種の育種を目的に、この抵抗性の遺伝様式を解明するための試みがなされてきた。その結果、ソルガム紫斑点病に対する抵抗性が、単一劣性遺伝子支配であることが解明されるに至った(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、いまだに、ソルガム紫斑点病の罹病性および抵抗性の原因となる遺伝子は同定されておらず、その染色体上の存在位置および実体は不明のままである。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】月星隆雄ら、日草誌 35(4):302-308, 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ソルガム紫斑点病の罹病性および抵抗性の原因となる遺伝子を同定し、ソルガム紫斑点病の発症の機構を解明することにある。また、本発明は、解明されたソルガム紫斑点病の発症の機構に基づき、ソルガム紫斑点病の罹病性および抵抗性を簡便に判定する方法を提供することを目的とする。さらなる本発明の目的は、解明されたソルガム紫斑点病の発症の機構に基づき、紫斑点病に対する抵抗性が高められたソルガムを効率的に作出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ソルガムの抵抗性品種SLIL-05と罹病製品種bmr-6の大規模な交配集団(F3からF5)において、ソルガムのSSRマーカーおよび挿入・欠失マーカーを利用して、紫斑点病罹病性遺伝子のマッピングを行った(図1、図2)。
【0010】
具体的には、まず、F3個体(175個体)について、SSRマーカーを用いたラフマッピングを行い、紫斑点病罹病性遺伝子が染色体5番に座乗していることを解明した。次いで、F4個体(640個体)について、SSRマーカーSB3056からSB3178の間で組換えのある個体(229個体)を選抜し、圃場にて紫斑点病の調査を行い、紫斑点病罹病性遺伝子の存在領域を、約246kbpの領域に絞り込んだ。さらに、ソルガム品種BTx623の塩基配列情報に基づいて見出した挿入・欠失マーカーを用いたマッピングを行い、紫斑点病罹病性遺伝子の存在領域を約96kbpの領域に絞り込んだ。次いで、F5個体(4235個体)について、この約96kbpの候補領域に存在する挿入・欠失マーカーおよびSSRマーカーを用いたスクリーニングを行い、紫斑点病罹病性遺伝子の存在領域を最終的に約26kbpにまで絞り込んだ。
【0011】
本発明者らは、絞り込んだ領域における遺伝子の発現をRT-PCRにて調査したところ、複数の候補遺伝子のうち、特定の候補遺伝子(以下、「ds1遺伝子」と称する)の発現パターンのみが、紫斑点病の罹病性、抵抗性の区別と一致することを見出した(図3)。また、抵抗性品種SLIL-05と罹病製品種bmr-6での組織特異的遺伝子発現を調べたところ、罹病性品種bmr-6では、ds1遺伝子が茎葉部で多く発現していたが、抵抗性品種SIL-05では茎葉部での発現は、ほとんどなく見られなかった(図4)。また、罹病性品種ではmRNAの発現が見られたが、抵抗性品種ではmRNAの発現量は少なかった(図4)。ds1遺伝子周辺の塩基配列を決定し、そのコードするアミノ酸配列を品種間で比較したところ、抵抗性品種のSIL-05は、罹病性品種のBTx623と完全に一致していた(図5)。しかしながら、SIL-05では遺伝子の上流プロモーター領域が一部欠損していた(図6、図7)。このため、ds1遺伝子のプロモーター領域における欠損が、SIL-05におけるmRNAの発現の低下の原因であると推測された。罹病性品種のBTx623と罹病性品種bmr-6とでは、1アミノ酸の置換が認められた。一方、抵抗性品種の那系MS3BおよびGreenleafにおけるds1遺伝子では、コード領域に停止コドンが存在しており、正常な蛋白質が合成されないと推測された(図5、図6)。これら事実から、ds1遺伝子が紫斑点病の罹病性遺伝子であり、その発現抑制や変異によって、本来の機能が発揮されないことにより、個体に紫斑点病抵抗性が付与されることが判明した。
【0012】
さらに、ds1遺伝子のコード領域および上流域を増幅するための特定のプライマーを調製し、これらを用いて、ソルガムの各品種の遺伝子増幅を行った結果、遺伝子の増幅産物のサイズ(遺伝子型)とソルガムの罹病性、抵抗性との間に相関関係が見出された(表8、9)。
【0013】
以上の知見に基づいて、本発明者らは、同定されたds1遺伝子を標的として紫斑点病の罹病性および抵抗性の判定が可能であり、さらに、罹病性型のds1遺伝子の発現や機能を抑制することにより、ソルガムに紫斑点病に対する抵抗性を付与することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、より詳しくは、下記を提供するものである。
<1> ソルガムに紫斑点病罹病性を付与する活性を有するタンパク質をコードする、下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
<2> ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードする、下記(a)~(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:9または12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:7、8、10または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA
(c)配列番号:3、6、9または12に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4、5、7、8、10、または11に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA
<3> ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードする、下記(a)~(c)のいずれかに記載のDNA。
(a)<1>に記載のDNAの転写産物と相補的な二重鎖RNAをコードするDNA
(b)<1>に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA
(c)<1>に記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA
<4> <1>~<3>のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
<5> <1>~<3>のいずれかに記載のDNAが導入されたソルガム細胞。
<6> <5>に記載の細胞を含むソルガム植物体。
<7> <6>に記載の植物体の子孫またはクローンである、ソルガム植物体。
<8> <6>または<7>に記載のソルガム植物体の繁殖材料。
<9> ソルガムにおける<1>に記載のDNAの発現または機能を抑制することを特徴とする、紫斑点病抵抗性が付与されたソルガムの作出方法。
<10> ソルガムに<2>または<3>に記載のDNAを導入する工程を含む、ソルガムに紫斑点病抵抗性が付与されたソルガムの作出方法。
<11> <2>もしくは<3>に記載のDNA、または該DNAが挿入されたベクターを含む、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与するための薬剤。
<12> ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法であって、被検ソルガムにおける<1>もしくは<2>に記載のDNAまたはその発現制御領域の塩基配列を解析し、対照の塩基配列と比較することを特徴とする方法。
<13> ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法であって、ソルガムにおける<1>もしくは<2>に記載のDNAの発現または発現産物の分子量を検出することを特徴とする方法。
<14> ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法であって、被検ソルガムにおける、<1>もしくは<2>に記載のDNAと連鎖する分子マーカーの塩基配列を解析し、対照の塩基配列と比較することを特徴とする方法。
<15> 紫斑点病抵抗性のソルガムを育種する方法であって、
(a)紫斑点病抵抗性のソルガム品種と任意のソルガム品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における紫斑点病の罹病性または抵抗性を、<12>から<14>のいずれかに記載の方法により判定する工程、および
(c)紫斑点病の抵抗性を有すると判定された品種を選抜する工程、を含む方法。
【0015】
なお、本発明において「紫斑点病」とは、ソルガムにおいて、病原菌「Bipolaris sorghicola (Lefebvre & Sherwin) Alcorn、分類:不完全菌門,不完全糸状菌綱」により引き起こされる斑点性病害を意味する。また、本発明において「紫斑点病罹病性」とは、ソルガムが紫斑点病に感染する性質を意味する。また、本発明において「紫斑点病抵抗性」とは、紫斑点病感染に対するソルガムの抵抗性を意味する。この抵抗性により、ソルガムにおいて紫斑点病の発症、あるいは、発生した紫斑点病の程度(例えば、病斑の数や広がりとして認識される)が抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、紫斑点病罹病性遺伝子ds1が同定され、該遺伝子の染色体上の位置および構造、ならびに紫斑点病発症の機構が解明された。これにより、ds1遺伝子やその近傍のマーカーを利用して、ソルガム紫斑点病の罹病性および抵抗性を簡便に判定することが可能となった。また、罹病性型のds1遺伝子の発現や機能を抑制することにより、紫斑点病抵抗性のソルガム品種を効率的に作出することが可能となった。本発明は、紫斑点病の病害によるソルガムの収量低下の防止に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】F4集団を用いたds1候補領域のマッピングの結果を示す図である。図中、「A」はbmr-6型、「B」はSIL-05型、「H」はヘテロを示す。
【図2】F5集団を用いたds1候補領域のマッピングの結果を示す図である。
【図3】RT-PCRにより、ds1候補遺伝子の発現を検出した結果を示す電気泳動写真である。図中、「1」はds1領域がSIL-05型とbmr-6型のヘテロになっている罹病性のF4個体「#2-74 A72」、「2」はds1領域がSIL-05型となっている抵抗性のF4個体「#2-74 C5」、「3」は抵抗性品種「SIL-05」、「4」は罹病性品種「bmr-6」を示す。
【図4】RT-PCRにより、ds1遺伝子の組織特異性と品種間差を検出した結果を示す電気泳動写真である。上図中、「R」は根、「L」は葉、「S」は茎、「F」は花を示す。また、下図中の「1」はBTx623、「2」はGreenleaf、「3」はBTx624、「4」は那系MS3B、「5」はbmr-6、「6」はSIL-05、「7」はJN43、「8」は千斤白、「9」はJN358、「10」はJN290EEを示す。奇数番号は罹病性品種であり、偶数番号は抵抗性品種である。
【図5-1】ds1遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列の品種間比較を示す図である。
【図5-2】図5-1の続きの図である。
【図6】ds1遺伝子およびその周辺領域の構造の品種間比較を示す図である。
【図7-1】ds1遺伝子およびその発現制御領域の塩基配列の品種間比較を示す図である。
【図7-2】図7-1の続きの図である。
【図7-3】図7-2の続きの図である。
【図7-4】図7-3の続きの図である。
【図7-5】図7-4の続きの図である。
【図7-6】図7-5の続きの図である。
【図7-7】図7-6の続きの図である。
【図7-8】図7-7の続きの図である。
【図7-9】図7-8の続きの図である。
【図7-10】図7-9の続きの図である。
【図7-11】図7-10の続きの図である。
【図7-12】図7-11の続きの図である。
【図8-1】本実施例に使用したプライマーの標的配列を示す図である。
【図8-2】図8-1の続きの図である。
【図8-3】図8-2の続きの図である。
【図8-4】図8-3の続きの図である。
【図8-5】図8-4の続きの図である。
【図8-6】図8-5の続きの図である。
【図8-7】図8-6の続きの図である。
【図8-8】図8-7の続きの図である。
【図8-9】図8-8の続きの図である。
【図8-10】図8-9の続きの図である。
【図8-11】図8-10の続きの図である。
【図8-12】図8-11の続きの図である。
【図8-13】図8-12の続きの図である。
【図8-14】図8-13の続きの図である。
【図8-15】図8-14の続きの図である。
【図8-16】図8-15の続きの図である。
【図8-17】図8-16の続きの図である。
【図8-18】図8-17の続きの図である。
【図8-19】図8-18の続きの図である。
【図8-20】図8-19の続きの図である。
【図8-21】図8-20の続きの図である。
【図8-22】図8-21の続きの図である。
【図8-23】図8-22の続きの図である。
【図8-24】図8-23の続きの図である。
【図8-25】図8-24の続きの図である。
【図8-26】図8-25の続きの図である。
【図8-27】図8-26の続きの図である。
【図8-28】図8-27の続きの図である。
【図8-29】図8-28の続きの図である。
【図8-30】図8-29の続きの図である。
【図8-31】図8-30の続きの図である。
【図8-32】図8-31の続きの図である。
【図8-33】図8-32の続きの図である。
【図8-34】図8-33の続きの図である。
【図9】Aは、世界の各地域由来のソルガム品種のds1候補遺伝子における多型の検出に用いたプライマーセットの配置を示す。Bは、Aに示したプライマーセットを用いてPCRを実施した結果を示す電気泳動写真である。ソルガム品種として、レーン1はGooseneck(R4型)、レーン2はMoraba74(S3型)、レーン3はBTx623(S2型)、レーン4はGreenleaf(R3型)、レーン5は那系MS3B(R2型)、レーン6はbmr-6(S1型)、レーン7はSIL-05(R1型)を、それぞれ用いた。
【図10】世界の各地域由来のソルガム品種について、紫斑点病の検定を行った結果(代表例)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<罹病性型DNA、抵抗性型DNA>
本発明は、ソルガムに、紫斑点病罹病性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA(以下、「罹病性型DNA」と称する)を提供する。本発明者らにより同定された、罹病性品種BTx623由来のds1cDNAの塩基配列を配列番号:1に、ds1ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:2に、これらDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。また、罹病性品種bmr-6由来のds1cDNAの塩基配列を配列番号:4に、ds1ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:5に、これらDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:6に示す。本発明の罹病性型DNAの1つの態様は、配列番号:3に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(典型的には、配列番号:1または2に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA)であり、他の1つの態様は、配列番号:6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(典型的には、配列番号:4または5に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA)である。

【0019】
本実施例において示されたように、BTx623由来のds1cDNAの塩基配列(配列番号:1)とbmr-6由来のds1cDNAの塩基配列(配列番号:4)とを比較すると、3カ所の塩基が異なり、うち1か所がアミノ酸の相違(851位におけるHとQ)を導いているが、ともに罹病性型DNAである。現在の技術水準においては、当業者であれば、特定の罹病性ソルガム品種(例えば、BTx623、bmr-6)における罹病性型DNAの塩基配列情報が得られた場合、その塩基配列を改変し、そのコードするアミノ酸配列は異なるが、同じく罹病性型であるDNAを取得することが可能である。また、自然界においても、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得ることである。従って、本発明は、BTx623およびbmr-6におけるds1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:3または6)において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ソルガムに紫斑点病罹病性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAをも含むものである。ここで「複数」とは、改変後のds1タンパク質がソルガムに紫斑点病罹病性を付与する活性を維持する範囲における、アミノ酸の改変数であり、通常、50アミノ酸以内、好ましくは30アミノ酸以内、さらに好ましくは10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、2アミノ酸)である。

【0020】
さらに、現在の技術水準においては、当業者であれば、特定の罹病性ソルガム品種(例えば、BTx623、bmr-6)から罹病性型DNAが得られた場合、その罹病性型DNAの塩基配列情報を利用して、他のソルガム品種から、同じく罹病性型である相同遺伝子をコードするDNAを取得することが可能である。従って、本発明は、BTx623およびbmr-6におけるds1DNA(配列番号:1,2,4または5)とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、ソルガムに、紫斑点病罹病性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAをも含むものである。

【0021】
こうして得られた変異DNAや相同DNAが、ソルガムに紫斑点病罹病性を付与する活性を有するタンパク質をコードするか否かは、例えば、これらDNAを導入した紫斑点病抵抗性品種に、紫斑点病の病原菌を噴霧もしくは接種し、その後、紫斑点病を発症するか否か、あるいは発症した紫斑点病の程度を検定することにより、判定することができる(紫斑点病発症の検定試験については、実施例1を参照のこと)。

【0022】
本発明は、また、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNA(以下、「抵抗性型DNA」と称する)を提供する。本発明者らにより同定された、抵抗性品種那系MS3B由来のds1cDNAの塩基配列を配列番号:7に、ds1ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:8に、これらDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:9に示す。また、抵抗性品種Greenleaf由来のds1cDNAの塩基配列を配列番号:10に、ds1ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:11に、これらDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:12に示す。本発明の抵抗型DNAの1つの態様は、配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(典型的には、配列番号:10または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA)であり、他の1つの態様は、配列番号:12に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(典型的には、配列番号:10または11に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA)である。

【0023】
本実施例において示されたように、那系MS3B由来のds1cDNAの塩基配列(配列番号:7)およびGreenleaf由来のds1cDNAの塩基配列(配列番号:10)は、罹病性品種BTx623由来のds1cDNAの塩基配列(配列番号:1)と比較すると、塩基の変異により、終止コドンが生じている。このため、那系MS3B由来のds1タンパク質およびGreenleaf由来のds1タンパク質は、罹病性品種BTx623由来のds1タンパク質(配列番号:3)と比較すると、タンパク質のC末端領域が欠損しており、本来のds1タンパク質の機能が抑制されている。この機能の抑制が個体に紫斑点病抵抗性を付与していると考えられる。現在の技術水準においては、当業者であれば、特定の罹病性ソルガム品種(例えば、BTx623、bmr-6)のds1DNAの塩基配列において、そのコードするタンパク質の紫斑点病罹病性に関する機能が抑制されるような改変を行うことが可能である。また、特定の抵抗性ソルガム品種(例えば、那系MS3B、Greenleaf)のds1DNAの塩基配列において、そのコードするタンパク質の紫斑点病抵抗性が維持されるような改変を行うことが可能である。また、自然界においても、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは起こり得ることである。従って、本発明は、BTx623、bmr-6、那系MS3BあるいはGreenleafにおけるds1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:3,6,9または12)において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質からなり、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAをも含むものである。ここで「複数」とは、改変後のds1タンパク質がソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有する範囲における、アミノ酸の改変数である。ソルガムにおけるds1タンパク質が本来の機能を発揮しなければ、紫斑点病抵抗性になると考えられるため、当該アミノ酸改変数は、本質的に制限はない。改変は、例えば、500アミノ酸以内、400アミノ酸以内、300アミノ酸以内、200アミノ酸以内、あるいは100アミノ酸以内(50アミノ酸以内、30アミノ酸以内、10アミノ酸以内、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、2アミノ酸)である。改変は、例えば、ds1タンパク質のC末端側の欠失でありうる。実際、Greenleafにおけるds1タンパク質は、BTx623あるいはbmr-6由来のds1タンパク質と比較して、460アミノ酸が欠失している。

【0024】
さらに、現在の技術水準においては、当業者であれば、特定のソルガム品種からds1DNAが得られた場合、そのDNAの塩基配列情報を利用して、他のソルガム品種から、抵抗性型である相同遺伝子をコードするDNAを取得することができる。従って、本発明は、BTx623、bmr-6、那系MS3BあるいはGreenleafにおけるds1DNA(配列番号:1,2,4,5,7,8,10または11)とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであって、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするDNAが含まれる。

【0025】
こうして得られた変異DNAや相同DNAが、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与する活性を有するタンパク質をコードするか否かは、例えば、当該DNAで、紫斑点病罹病製品種のds1遺伝子を組換え、当該DNAをホモで保持するソルガムを作出し、紫斑点病菌を噴霧もしくは接種し、その後、紫斑点病を発症するか否か、あるいは発症した紫斑点病の程度を検定することにより、判定することができる(紫斑点病発症の検定試験については、実施例1を参照のこと)。

【0026】
本発明の罹病性型DNAは、その導入により、ソルガムに紫斑点病罹病性を付与することが可能であるという意味において、ソルガムに紫斑点病罹病性を付与するための薬剤であり、一方、本発明の抵抗性型DNAは、その導入により、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与することが可能であるという意味において、ソルガムに紫斑点抵抗性を付与するための薬剤である。

【0027】
なお、上記した変異DNAを作製するための、DNAへの人為的な変異の導入は、例えば、部位特異的変異誘発(site-directed mutagenesis)法(Kramer, W. & Fritz, HJ., Methods Enzymol, 154:350-367, 1987)により行うことができる。

【0028】
また、上記した相同遺伝子を単離するための方法としては、例えば、ハイブリダイゼーション技術(Southern, E. M., Journal of Molecular Biology, 98:503, 1975)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, R. K., et al. Science, 230:1350-1354, 1985、Saiki, R. K. et al. Science, 239:487-491, 1988)が挙げられる。相同遺伝子をコードするDNAを単離するためには、通常ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行なう。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、6M尿素、0.4%SDS、0.5xSSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を例示できる。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を用いれば、より相同性の高いDNAの単離を期待することができる。単離されたDNAは、核酸レベルあるいはアミノ酸配列レベルにおいて、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。配列の相同性は、BLASTN(核酸レベル)やBLASTX(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol., 215:403-410, 1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873-5877, 1993)に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。

【0029】
本発明のds1タンパク質をコードするDNAとしては、その形態に特に制限はなく、cDNAの他、ゲノムDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、ソルガムからゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作成し、これを展開して、ds1遺伝子(例えば、配列番号:1,2,4,5,7,8,10または11のいずれかに記載のDNA)の塩基配列を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、ds1遺伝子に特異的なプライマーを作成し、これを利用したPCRを行うことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、ソルガムから抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作成し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。

<ソルガムの罹病性型ds1遺伝子の発現を抑制するために用いるDNA>
また、本発明は、ソルガムの罹病性型ds1遺伝子の発現を抑制するために用いるDNAを提供する。これらのDNAの導入により、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与することが可能である。この意味において、ソルガムの罹病性型ds1遺伝子の発現を抑制するために用いるDNAは、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与するための薬剤である。ここで「ds1遺伝子の発現の抑制」には、遺伝子の転写の抑制およびタンパク質への翻訳の抑制の双方が含まれる。また、「発現の抑制」には、発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。

【0030】
ソルガムの罹病性型ds1遺伝子の発現を抑制するために用いるDNAの一つの態様は、上記した本発明の罹病性型DNAの転写産物と相補的なdsRNA(二重鎖RNA)をコードするDNAである。標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するdsRNAを細胞内に導入することにより、導入した外来遺伝子および標的内因性遺伝子の発現がいずれも抑制される、RNAi(RNA干渉、RNA interference)と呼ばれる現象を引き起こすことができる。細胞に約40~数百塩基対のdsRNAが導入されると、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼが、ATP存在下で、dsRNAを3'末端から約21~23塩基対ずつ切り出し、siRNA(short interference RNA)が生じる。このsiRNAに、特異的なタンパク質が結合して、ヌクレアーゼ複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)が形成される。この複合体はsiRNAと同じ配列を認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部で標的遺伝子の転写産物(mRNA)を切断する。また、この経路とは別にsiRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RsRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成される。このdsRNAが再びダイサーの基質となって、新たなsiRNAを生じて作用を増幅する経路も考えられている。

【0031】
本発明のdsRNAをコードするDNAは、標的遺伝子の転写産物(mRNA)のいずれかの領域に対するアンチセンスRNAをコードしたアンチセンスDNAと、該mRNAのいずれかの領域のセンスRNAをコードしたセンスDNAを含み、該アンチセンスDNAおよび該センスDNAより、それぞれアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させることができる。また、これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAよりdsRNAを作成することができる。

【0032】
本発明のdsRNAの発現システムをベクター等に保持させる場合の構成としては、同一のベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる場合と、異なるベクターからそれぞれアンチセンスRNAとセンスRNAを発現させる場合がある。同一のベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスDNAおよびセンスDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセットとセンスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを同方向にあるいは逆方向にベクターに挿入する構成である。

【0033】
また、異なる鎖上に対向するように、アンチセンスDNAとセンスDNAとを逆向きに配置した発現システムを構成することもできる。この構成では、アンチセンスRNAコード鎖とセンスRNAコード鎖とが対となった一つの二本鎖DNA(siRNAコードDNA)が備えられ、その両側にそれぞれの鎖からアンチセンスRNAとセンスRNAとを発現し得るようにプロモーターを対向して備える。この場合には、センスRNAとアンチセンスRNAの下流に余分な配列が付加されることを避けるために、それぞれの鎖(アンチセンスRNAコード鎖、センスRNAコード鎖)の3'末端にターミネーターをそれぞれ備えることが好ましい。このターミネーターは、A(アデニン)塩基を4つ以上連続させた配列などを用いることができる。また、このパリンドロームスタイルの発現システムでは、二つのプロモーターの種類は異なっていることが好ましい。

【0034】
また、異なるベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスDNAおよびセンスDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセットとセンスRNA発現カセットとをそれぞれ構築し、これらカセットを異なるベクターに保持させる構成である。

【0035】
本発明に用いるdsRNAとしては、siRNAが好ましい。「siRNA」は、細胞内で毒性を示さない範囲の短鎖からなる二重鎖RNAを意味する。標的ds1遺伝子の発現を抑制することができ、かつ、毒性を示さなければ、その鎖長に特に制限はない。dsRNAの鎖長は、例えば、15~49塩基対であり、好適には15~35塩基対でり、さらに好適には21~30塩基対である。

【0036】
本発明のdsRNAをコードするDNAとしては、標的配列のインバーテッドリピートの間に適当な配列(イントロン配列が望ましい)を挿入し、ヘアピン構造を持つダブルストランドRNA(self-complementary 'hairpin' RNA(hpRNA))を作るようなコンストラクト(Smith, N.A., et al. Nature, 407:319, 2000、Wesley, S. V. et al. Plant J. 27:581, 2001、Piccin, A. et al. Nucleic Acids Res. 29:E55, 2001)を用いることもできる。

【0037】
本発明のdsRNAをコードするDNAは、標的ds1遺伝子の塩基配列と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。配列の同一性は上述した手法(BLASTプログラム)により決定できる。

【0038】
dsRNAにおけるRNA同士が対合した二重鎖RNAの部分は、完全に対合しているものに限らず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより不対合部分が含まれていてもよい。本発明においては、dsRNAにおけるRNA同士が対合する二重鎖RNA領域中に、バルジおよびミスマッチの両方が含まれていてもよい。

【0039】
ソルガムの罹病性型ds1遺伝子の発現を抑制するために用いるDNAの他の態様は、上記した本発明の罹病性型DNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA(アンチセンスDNA)である。アンチセンスDNAが標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造がつくられた部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制などが挙げられる。これらは、転写、スプライシング、または翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制する(平島および井上「新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現」,日本生化学会編,東京化学同人, pp.319-347, 1993)。本発明で用いられるアンチセンスDNAは、上記のいずれの作用で標的ds1遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、標的遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であろう。しかし、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。

【0040】
アンチセンスDNAは、本発明の罹病性型DNA(例えば、配列番号:1または4に記載の塩基配列からなるDNA)の配列情報を基にホスホロチオネート法(Stein, Nucleic Acids Res., 16:3209-3221, 1988)などにより調製することが可能である。調製されたDNAは、後述する公知の方法で、ソルガムへ導入できる。アンチセンスDNAの配列は、ソルガムが持つ内因性の罹病性ds1遺伝子の転写産物と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の相補性を有する。効果的に標的遺伝子の発現を阻害するには、アンチセンスDNAの長さは、少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上であり、さらに好ましくは500塩基以上である。通常、用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い。

【0041】
ソルガムの罹病性型ds1遺伝子の発現を抑制するために用いるDNAの他の態様は、本発明の罹病性型DNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNAである。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子、蛋白質核酸酵素, 35:2191, 1990)。

【0042】
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15のC15の3'側を切断するが、活性にはU14が9位のAと塩基対を形成することが重要とされ、15位の塩基はCの他にAまたはUでも切断されることが示されている(Koizumi et. al., FEBS Lett. 228:225, 1988)。リボザイムの基質結合部を標的部位近傍のRNA配列と相補的になるように設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することが可能である(Koizumi et. al., FEBS Lett. 239:285, 1988、小泉誠および大塚栄子,蛋白質核酸酵素,35:2191, 1990、Koizumi et. al., Nucleic. Acids. Res. 17:7059, 1989)。

【0043】
また、ヘアピン型リボザイムも、本発明の目的のために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan, Nature 323:349, 1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている(Kikuchi and Sasaki, Nucleic Acids Res. 19:6751, 1992、菊池洋,化学と生物 30:112, 1992)。標的を切断できるよう設計されたリボザイムは、ソルガム細胞中で転写されるようにカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(Yuyama et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 186:1271, 1992)。このようなリボザイムを用いて標的となるds1遺伝子の転写産物を特異的に切断し、該遺伝子の発現を抑制することができる。

<ベクター、形質転換ソルガム細胞、形質転換ソルガム植物体>
本発明は、また、上記本発明のDNA(罹病性型DNA、抵抗性型DNA、ds1遺伝子の発現を抑制するためのDNA)を含むベクター、上記本発明のDNAまたはそれを含むベクターが導入されたソルガム細胞、該細胞を含むソルガム植物体、該植物体の子孫またはクローンであるソルガム植物体、および、これらソルガム植物体の繁殖材料を提供する。

【0044】
本発明のベクターとしては、例えば、自律複製可能なベクターまたは染色体中に相同組換え可能なベクターを使用することができる。本発明のベクターは、ソルガム細胞に導入した後、本発明のDNAが発現するように、通常、適当な発現プロモーターを含む。本発明に用いるプロモーターとして、例えば、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、トウモロコシ由来のユビキチンプロモーターを挙げることができる。ベクターは、選択マーカー、複製開始点、ターミネーター、ポリリンカー、エンハンサー、リボゾーム結合部位などを適宜含むことができる。一般に、該プロモーターの下流に、本発明のDNAが位置し、さらに該DNAの下流にはターミネーターが位置する。ターミネーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス由来のターミネーターやノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーターを挙げることができる。

【0045】
上記ベクターを導入するソルガム細胞の形態としては、特に制限はなく、未熟胚、カルス、花粉などを例示することができる。上記ベクターをソルガム細胞中に導入し、ソルガム植物体を再生させる方法としては、当該技術分野における常法を用いることができる。このような方法としては、例えば、アグロバクテリウム法やパーティクルガン法により、未熟胚やカルスに遺伝子導入して植物体を再生させる方法、超音波によって遺伝子導入した花粉を用いて受粉する方法が好適に用いられる(J. A. Able et al., In Vitro Cell. Dev. Biol. 37:341-348, 2001、A. M. Casas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11212-11216, 1993、V. Girijashankar et al., Plant Cell Rep 24:513-522, 2005、J. M. JEOUNG et al., Hereditas 137:20-28, 2002、V Girijashankar et al., Plant Cell Rep 24(9):513-522, 2005、Zuo-yu Zhao et al., Plant Molecular Biology 44:789-798, 2000、S. Gurel et al., Plant Cell Rep 28(3):429-444, 2009、ZY Zhao, Methods Mol Biol, 343:233-244, 2006、AK Shrawat and H Lorz, Plant Biotechnol J, 4(6):575-603, 2006、D Syamala and P Devi Indian J Exp Biol, 41(12):1482-1486, 2003、Z Gao et al., Plant Biotechnol J, 3(6):591-599, 2005)。

【0046】
上記本発明のDNAは、外因性のDNAとしてソルガムに導入することができるが、本発明のDNAを有する品種との交配によってソルガムに導入することもできる。本発明における「導入」には、これら双方の形態が含まれる。

【0047】
一旦、染色体内に上記本発明のDNAが導入されたソルガム植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該ソルガム植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、カルス、プロトプラスト、花粉、種子、切穂等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、上記本発明のDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、ならびに該植物体、その子孫およびクローンの繁殖材料が含まれる。

【0048】
本発明の罹病性型DNAが導入されたソルガム植物体は、例えば、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与するための薬剤の開発(スクリーニング)や紫斑点病発症の機構の解明のための実験用植物として利用することができる。一方、本発明の抵抗性型DNAまたは本発明のds1遺伝子の発現を抑制するためのDNAが導入されたソルガム植物体は、これらDNAが導入されていない罹病性のソルガム植物体と比較して、その収量の増大が期待でき、より有用性の高い農作物あるいはバイオマスとして利用することができる。

<紫斑点病抵抗性が付与されたソルガムの作出方法>
本発明は、また、ソルガムにおいて、本発明の罹病性型DNA(罹病性型ds1遺伝子)の発現または機能を抑制することを特徴とする、紫斑点病抵抗性が付与されたソルガムの作出方法を提供する。本発明において、ソルガムに紫斑点病抵抗性を「付与する」とは、紫斑点病抵抗性を全く有しない品種に紫斑点病抵抗性を持たせることのみならず、既に、一定の紫斑点病抵抗性を有している品種における、紫斑点病抵抗性を、さらに増大させることをも含む意である。

【0049】
ソルガムにおける本発明の罹病性型DNAの発現または機能を抑制するための一つの態様は、ソルガムに、上記本発明の抵抗性型DNAを導入することである。ソルガムにおける紫斑点病抵抗性は、単一劣性遺伝子支配であるため、ソルガムに紫斑点病抵抗性の形質を付与するためには、通常、個体におけるds1対立遺伝子の双方を抵抗性型DNAにする必要がある。これにより個体中で抵抗性型DNAのみが発現し、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与することができる。ソルガム染色体への本発明の抵抗性型DNAの導入は、例えば、交配や相同組換えにより行うことができる。抵抗性型DNAを導入することに代えて、ソルガム染色体上の罹病性型DNAに、特定のDNA配列を導入し、その機能を破壊してもよい。

【0050】
ソルガムにおける本発明の罹病性型DNAの発現または機能を抑制するための他の一つの態様は、ソルガムに上記本発明のds1遺伝子の発現を抑制するためのDNAを導入することである。これにより個体中の罹病性型DNAから、罹病性型の翻訳産物が生産されなくなるため、ソルガムに紫斑点病抵抗性を付与することができる。

【0051】
ソルガムにおける本発明の罹病性型DNAの発現または機能を抑制するための他の態様としては、例えば、罹病性型DNAの発現を抑制する薬剤や罹病性型の翻訳産物に結合し、その機能を抑制する薬剤の利用も考えられる。

<ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法>
本発明は、また、ソルガムにおける紫斑点病の罹病性または抵抗性を判定する方法を提供する。本発明の判定方法の一つの態様は、ソルガムにおけるds1遺伝子またはその発現制御領域の塩基配列を解析し、対照の塩基配列と比較することを特徴とする方法である。BTx623の発現制御領域を配列番号:13に、bmr-6の発現制御領域を配列番号:14に、那系MS3Bの発現制御領域を配列番号:15に、SIL-05の発現制御領域を配列番号:16に、Greenleafの発現制御領域を配列番号:17に示す。

【0052】
ds1遺伝子またはその発現制御領域の塩基配列の解析に際しては、ds1遺伝子またはその発現制御領域のDNAをPCRにより増幅した増幅産物を用いることができる。前記PCRを実施する場合において、用いられるプライマーは、ds1遺伝子またはその発現制御領域を特異的に増幅できるものである限り制限はなく、ds1遺伝子またはその発現制御領域の配列情報(例えば、配列番号:1,2,4,5,7,8,10,11,13,14,15,16または17)に基づいて適宜設計することができる。好適なプライマーとしては、表3から7に記載のプライマーが挙げられる。これらプライマーを適宜組み合わせて、ds1遺伝子またはその発現制御領域の特定の塩基配列を増幅することができる。

【0053】
なお、表3および表4に記載のプライマーは、表1および表2に記載のSSR領域を含む塩基配列を増幅するためのプライマーである。表5および表6に記載のプライマーは、挿入・欠失マーカー(塩基の挿入・欠失による品種間の塩基配列の相違)を含む塩基配列を増幅するためのプライマーである(表5の#21および表6に記載のプライマーが標的とする塩基配列は、図8を参照のこと)。表7に記載のプライマーは、ds1遺伝子のコード領域および上流域を増幅するためのプライマーである。

【0054】
【表1】
JP0005783463B2_000002t.gif

【0055】
【表2】
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【0056】
【表3】
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【0057】
【表4】
JP0005783463B2_000005t.gif

【0058】
【表5】
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【0059】
【表6】
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【0060】
【表7】
JP0005783463B2_000008t.gif

【0061】
被検ソルガムにおけるds1遺伝子の塩基配列と比較する「対照の塩基配列」は、典型的には、罹病性型品種または抵抗性型品種におけるds1遺伝子の塩基配列である。決定したds1遺伝子の塩基配列と罹病性型品種における塩基配列(例えば、配列番号:1、2、4、5)または抵抗性型品種における塩基配列(例えば、配列番号:7、8、10、11)とを比較することにより、被検ソルガムにおけるds1遺伝子が、抵抗性型であるか罹病性型であるかを評価することができる。例えば、罹病性型品種における塩基配列(例えば、配列番号:1、2、4、5)と比較して、塩基配列において大きな相違がある場合(特に、新たな終止コドンの出現やフレームシフトにより、コードするタンパク質の分子量やアミノ酸配列に大きな変化が生じる場合)、被検ソルガムにおけるds1遺伝子は抵抗性型である蓋然性が高いと判定される。また、被検ソルガムにおけるds1遺伝子の発現制御領域の塩基配列に、ds1遺伝子の発現を抑制する変異がある場合(例えば、発現制御領域の一部が大きく欠失している場合:図6、図7を参照のこと)、被検ソルガムにおけるds1遺伝子の発現制御領域は、抵抗性型である蓋然性が高いと判定される。

【0062】
被検ソルガムにおけるds1遺伝子またはその発現制御領域の塩基配列が、対照の塩基配列と相違するか否かは、上記した直接的な塩基配列の決定以外に、種々の方法により間接的に解析することができる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism、一本鎖高次構造多型)法、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用したRFLP法やPCR-RFLP法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE)、アレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法が挙げられる。

【0063】
なお、本発明の判定方法における、被検ソルガムからのDNAの調製は、常法、例えば、CTAB法を用いて行うことができる。DNAを調製するためのソルガムとしては、ソルガムの成長した植物体のみならず、ソルガムの種子や幼植物体を用いることもできる。

【0064】
また、塩基配列の決定は、常法、例えば、ジデオキシ法やマキサム-ギルバート法などにより行なうことができる。塩基配列の決定においては、市販のシークエンスキットおよびシークエンサーを利用することができる。

【0065】
また、発現制御領域の塩基配列における変異がds1遺伝子の発現に影響を与えるか否かは、当該変異を有する発現制御領域の下流にレポーター遺伝子を発現可能に連結したベクターを構築し、当該ベクターをソルガム細胞に導入し、レポーター活性を検出することにより、判定することができる。

【0066】
本発明の判定方法の他の一つの態様は、ソルガムにおけるds1遺伝子の発現または発現産物の分子量を検出することを特徴とする方法である。ここで「遺伝子の発現の検出」には、転写レベルにおける検出および翻訳レベルにおける検出の双方を含む意である。また、「発現の検出」には、発現の有無の検出のみならず、発現の程度の検出も含む意である。

【0067】
転写レベルにおける検出は、常法、例えば、RT-PCR(Reverse transcribed-Polymerase chain reaction)法やノーザンブロッティング法により実施することができる。前記PCRを実施する場合において用いられるプライマーは、ds1遺伝子を特異的に増幅できるものである限り制限はなく、ds1遺伝子の配列情報(例えば、配列番号:1,2,4,5,7,8,10または11)に基づいて適宜設計することができる。プライマーの好適な例は、上記表7に記載の#21Fと#21Rの組み合わせである。

【0068】
一方、翻訳レベルにおける検出は、常法、例えば、ウェスタンブロッティング法により、実施することができる。ウェスタンブロッティングに用いる抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、これら抗体の調製方法は、当業者に周知である。

【0069】
遺伝子発現の検出の結果、被検体において、ds1遺伝子の発現量が罹病性品種(例えば、BTx623、bmr-6)の発現量よりも有意に低ければ、また、ds1遺伝子の発現産物の分子量が罹病性品種(例えば、BTx623、bmr-6)における分子量と有意に異なれば、被検ソルガムが紫斑点病抵抗性である蓋然性が高いと判定される。実際、罹病性品種(BTx623、bmr-6)と比較して、抵抗性品種SIL-05およびGreenleafにおけるds1遺伝子の発現量は有意に低く、また、抵抗性品種那系MS3BおよびGreenleafにおけるds1タンパク質の分子量は有意に小さい。

【0070】
本発明の判定方法の他の一つの態様は、被検ソルガムにおける、ds1遺伝子と連鎖する分子マーカーの塩基配列を解析し、対照の塩基配列と比較することを特徴とする方法である。ここで「分子マーカー」とは、ds1遺伝子と遺伝的に連鎖するDNA領域であって、他のDNA領域と識別可能なDNA領域をいう。分子マーカーは、ds1遺伝子の近傍に位置する程、ds1遺伝子と同時に遺伝しやすいため、本発明の判定方法において有用性が高い。有用性の高い本発明の分子マーカーは、通常、ds1遺伝子のコード領域の両末端塩基から50kbp以内に存在するものであり、より好ましくは20kbp以内、さらに好ましくは10kbp以内に存在するものである。

【0071】
本発明の分子マーカーの好ましい態様は、挿入・欠失マーカー、SSR(単純反復配列)マーカー、およびSNP(一塩基多型)マーカーである。挿入・欠失マーカーは、塩基の挿入および/または欠失によって生じるDNA多型である。SSRマーカーは、2あるいは3塩基の単位(例えば、「CA」、「CG」、「TA」、「TC」、「AGG」、「CTT」、「CGC」、「GAG」など)が、数回から数百回反復する繰り返し配列である。この繰り返しの数が個体または系統によって異なっているため、この繰り返し数の違いはDNA多型として利用することができる。SNPマーカーは、DNAの塩基配列中の塩基1個の置換によって生ずるDNA多型である。分子マーカーとなる塩基配列は、当業者であれば、例えば、品種間におけるds1遺伝子の塩基配列の比較(図7、8)を基に、適宜抽出することが可能である。

【0072】
挿入・欠失マーカーにおける塩基配列の解析は、直接的な塩基配列の決定を行う方法以外に、当該マーカー領域を含む塩基配列をプライマーを利用したPCRを行い、得られた増幅産物を電気泳動し、ゲル上におけるDNAバンドの位置の違いとして検出する方法で実施することができる。また、SSRマーカーにおける塩基配列の解析は、直接的な塩基配列の決定を行って、繰り返し配列の違いとして検出する方法以外に、当該繰り返し部分を含む塩基配列を増幅しうるプライマーを利用したPCRを行い、得られた増幅産物を電気泳動し、ゲル上におけるDNAバンドの位置の違いとして検出する方法で実施することができる。SNPマーカーにおける塩基配列の解析は、例えば、一塩基多型部分を含む塩基配列を増幅しうるプライマーを利用したPCRを行い、得られた増幅産物中の一塩基多型部分に取り込まれた塩基の種類を偏光蛍光分析器で特定する方法で実施することができる。

【0073】
「対照の塩基配列」としては、ds1遺伝子と連鎖する公知の分子マーカーの塩基配列を利用することができる。例えば、表5および6に記載のプライマーで、表5および6に記載の挿入・欠失マーカーを含む塩基配列を増幅した場合、増幅されたDNA断片の配列または鎖長により、罹病性型であるか抵抗性型であるかを判別することができる(図8参照のこと)。また、このような判別には、図9Aのプライマーセットを好適に用いることができる(表8、9)。

【0074】
表1および2に記載のSSRマーカーは、罹病性型BTx623などのds1遺伝子と連鎖する。表3および4に記載のプライマーで、該マーカーを含む塩基配列を増幅した場合、増幅されたDNA断片の配列または鎖長により、罹病性型であるか抵抗性型であるかを判別することができる。上記した通り、被検ソルガムにおける分子マーカーの塩基配列と対照の塩基配列との比較は、直接的な塩基配列の比較以外に、塩基配列の違いを評価しうる他の指標(例えば、上記したPCRによる増幅産物の分子量など)の比較によって、実施することができる。

【0075】
比較の結果、被検ソルガムにおける分子マーカーの塩基配列が、罹病性型分子マーカーと同じ型である場合、被検ソルガムは罹病性の蓋然性が高いと判定され、抵抗性型分子マーカーと同じ型である場合、被検ソルガムは抵抗性の蓋然性が高いと判定される。

<紫斑点病抵抗性のソルガムを育種する方法>
本発明は、また、紫斑点病抵抗性のソルガムを育種する方法を提供する。本発明の育種方法は、(a)紫斑点病抵抗性のソルガム品種と任意のソルガム品種とを交配させる工程、(b)交配により得られた個体における紫斑点病の罹病性または抵抗性を、上記本発明の判定方法により判定する工程、および(c)紫斑点病の抵抗性を有すると判定された品種を選抜する工程、を含む。

【0076】
紫斑点病抵抗性のソルガム品種と交配させる「任意のソルガム品種」としては、例えば、罹病性品種、罹病性品種と抵抗性品種との交配により得られた個体が挙げられるが、これらに制限されない。本発明の育種方法を利用すれば、紫斑点病抵抗性のソルガムを、種子や幼植物の段階で選抜することが可能となり、紫斑点病抵抗性の形質を有する品種の育成を、従来よりも短期間で行うことが可能となる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
[実施例1] ds1遺伝子の存在領域の絞り込み
抵抗性品種SLIL-05と罹病製品種bmr-6との交配により得られたF3からF5の集団に対して、ソルガムの多型マーカー情報を利用して紫斑点病罹病性遺伝子(ds1)のマッピングを行った(図1、図2)。なお、マッピングに用いた多型マーカーおよびプライマーに関する情報は、表1から6を参照のこと。SSRマーカーの一部は、文献(Yonemaru J, et al., DNA Res 16:187-193, 2009)に記載されている。
【実施例】
【0079】
(1)F3集団(175個体)について、SSRマーカー(SB3067、SB3146)を用いてマッピングを行い、紫斑点病罹病性遺伝子ds1が、染色体5番に座乗していることが判明した。
【実施例】
【0080】
(2)F4集団(640個体)について、SSRマーカーSB3056からSB3178の間で、マーカースクリーニングを行った後、これらのマーカー間で組換えのある229個体を選抜し、これら個体について、圃場にて紫斑点病の検定を行った。その結果、ds1遺伝子の存在領域が約246kbpにまで絞り込まれた。ソルガムの罹病性品種BTx623の塩基配列情報を基に見出した挿入/欠失マーカー(#12、#20、#17など)を用いて、マッピングを行い、ds1遺伝子の存在領域を約96kbpまで絞り込んだ。
【実施例】
【0081】
(3)F5集団(4235個体)について、挿入/欠失マーカーおよびSSRマーカー(#12、SB22274)を用いて、これらのマーカー間で組換えのある個体をスクリーニングした。さらに、新たに見出した挿入/欠失マーカー(#20、#21、#20karaシリーズ、および#12karaシリーズ)用いて、ds1遺伝子の存在領域を絞り込んだ。その結果、最終的に、ds1遺伝子の存在領域が約26kbpにまで絞り込まれた。
【実施例】
【0082】
罹病性品種BTx623において、絞り込んだ領域に、2つの候補遺伝子配列(レセプターキナーゼと塩誘導蛋白質)を見出した。既知の植物病害抵抗性遺伝子の多くがレセプターであることから、このレセプターキナーゼ遺伝子が紫斑点病抵抗性遺伝子であると推測した。
【実施例】
【0083】
なお、多型マーカーを含む塩基配列を増幅するためのPCRにおいては、PCR試薬(GoTaq(R)Green Master Mix)を5μl、蒸留水を4.4μl、DNA(20ng/μl)を0.1μl、プライマー(10p)を0.5μlを含む計10μlの反応液を調製した。1反応当たり、そのうち9.5μlを使用し、94度で2分、「94度で1分→55℃で1分→72度で2分」を35サイクル、72度で10分の条件で反応を行った。
【実施例】
【0084】
また、紫斑点病の検定は、病原菌(Bipolaris sorghicola (Lefebvre & Sherwin) Alcorn)をソルガムに噴霧する方法もしくはオオムギ培地で培養して接種する方法にて行った。病原菌をソルガムに噴霧する方法においては、まず、104~105個/mlの濃度で紫斑点病菌を含む蒸留水(0.01%tween20)を、ソルガムの葉に対し、全体が濡れる程度に噴霧し、16時間ビニール袋中で、暗条件で保持した。次いで、明条件で、25℃の温室に移して育て、7~10日後に、発病度(病班面積/全体の面積)の検定を行った。オオムギ培地で培養して接種する方法においては、まず、皮つきのオオムギを蒸留水中にて、15分間オオトクレーブ処理を行い、冷却後、紫斑点病菌を接種した。次いで、フラスコ内部で、菌糸がオオムギに広がるまで時々攪拌しながら約2週間培養を行った。病原菌が生育した大麦粒を全長50cm程度に生育したソルガムの未展開葉の中に3粒投入し、4~5日後以降に紫斑点病の病班の検定を行った。

[実施例2] ds1候補遺伝子の発現と紫斑点病の罹病性・抵抗性との関係
候補領域に存在する遺伝子の発現をRT-PCRで調査した。プライマーとしては、表7に記載の#21Fと#21Rを用いた。その結果、レセプターキナーゼ遺伝子のmRNAの発現パターンのみが、病気の罹病性、抵抗性の区別と一致した(図3)。交配集団を用いた葉のRT-PCRでは、ヘテロ個体、bmr-6型個体では多くmRNAの発現があるがSIL-05型では量がかなり少ない(もしくは無い)。このことは、遺伝学的に3:1に分離し劣性ホモで抵抗性という報告(非特許文献1)にも合致する。
【実施例】
【0085】
なお、RT-PCRの手法については、文献(Kikuchi R. et al, Plant Physiol 149:1341-1353, 2009、Shimada S. et al, Plant J. 58:668-681, 2009)を参考にした。

[実施例3] ds1遺伝子の発現の組織特異性および品種間差
抵抗性品種SLIL-05と罹病製品種bmr-6のBacライブラリーを作成し(Ashikawa I. et al., Genetics 180:2267-2276,2008)、候補遺伝子領域を含むBacクローンをスクリーニングし、その塩基配列を決定した。その結果、bmr-6には塩誘導蛋白質遺伝子が存在しないことが判明した。これにより、塩誘導蛋白質遺伝子は候補遺伝子の対象から除外され、レセプターキナーゼ遺伝子を紫斑点病罹病性遺伝子とした。
【実施例】
【0086】
さらに、抵抗性品種SIL-05と罹病製品種bmr-6における組織特異的遺伝子発現を調査したところ、罹病性のbmr-6では、レセプターキナーゼ遺伝子が茎葉部で多く発現していたが、抵抗性のSIL-05では茎葉部では発現がほとんどなく見られなかった(図4上)。また、罹病性品種では発現が見られたが、抵抗性品種では発現量は少なかった(図4下)。このことから、当該レセプターキナーゼ遺伝子の遺伝子発現がなければ、ソルガムは紫斑点病抵抗性を示すと考えられた。

[実施例4] 品種間のds1遺伝子の配列の比較
レセプターキナーゼ遺伝子周辺の塩基配列を決定し、BTx623(罹病性)、SIL-05(抵抗性)、およびbmr-6(罹病性)の間で比較した。その結果、この遺伝子のコード領域のアミノ酸配列は、SIL-05とBTx623とで完全に一致しており、bmr-6ではBTx623と比較して3カ所の塩基置換があり、うち一つの変異でアミノ酸変異を伴っていた(851H→Q)(図5)。
【実施例】
【0087】
SIL-05では遺伝子の上流プロモーター領域が一部欠損しており、このため、mRNAの発現量が少ないと推測された(図6、7)。一方、ソルガム品種、那系MS3Bも紫斑点病に抵抗性を示すが、この品種のレセプターキナーゼ遺伝子の塩基配列を解析したところ、遺伝子コード領域に停止コドンが存在した(図6、7)。これにより正常な蛋白質が合成されないと考えられた。
【実施例】
【0088】
なお、品種間における塩基配列の比較には、CrastalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いた。

[実施例5] 世界の各地域由来のソルガム品種のds1候補遺伝子における多型と紫斑点病の罹病性、抵抗性との関係
ソルガムの植物葉からのDNA抽出はC-TAB法を用いた(MURRAY, M. G., and W. F. THOMPSON, Nucleic Acid Reserach 8:4321-4325,1980)。抽出したDNAを用いてPCRを行った。PCRの条件は、実施例1と同様とし、プライマーセットとしては、表7に記載の、520Fと141R(プライマーセット#1)、1141Fと1823R(プライマーセット#2)、#21GLFと#21GLR(プライマーセット#3)、#21Fと#21R(プライマーセット#4)を用いた(図9A)。プライマーセット#4を用いた場合には、PCRの後、電気泳動前に、制限酵素処理を行った。具体的には、PCRの後、PCRサンプル5ulをわけとり、制限酵素MlyIを加え、全量20ulとした。この反応系で37度で1時間処理したサンプルを電気泳動した。
【実施例】
【0089】
世界の各地域由来のソルガム品種の紫斑点病抵抗性遺伝子ds1の遺伝子型を検定した結果、各プライマーセットを用いたPCRにおいて、サイズの異なる増幅産物が検出された。増幅産物は、そのサイズに応じて分類した(図9B)。
【実施例】
【0090】
表8、表9に記載の各品種の紫斑点病の試験を、実施例1と同様の方法で実施した。その結果(代表例)を図10に示す。各プライマーセットを用いたPCRにより得られた増幅産物のサイズと紫斑点病の罹病性、抵抗性との関係を分析した結果、紫斑点病感受性型については、S1~S3に、抵抗性型については、R1~R4に分類することができた(表8、表9)。DNAを用いて決定した遺伝子型による分類と実際の接種試験の結果とが一致しており、PCR試験によって紫斑点病の罹病性、抵抗性を検定することが可能であることが判明した。
【実施例】
【0091】
【表8】
JP0005783463B2_000009t.gif
【実施例】
【0092】
【表9】
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【実施例】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明により、ソルガム紫斑点病の罹病性遺伝子ds1が同定され、ソルガム紫斑点病の発症の機構が明らかとなった。紫斑点病の罹病性および抵抗性を判定する場合、従来は、病原菌の感染試験を行う必要があったが、ds1遺伝子をマーカーとして用いれば、ソルガムを病原菌にさらすことなく、また、種子あるいは幼植物の段階においても、簡易に判定が可能であり、ひいては紫斑点病抵抗性品種を効率的に育種することが可能である。育種される紫斑点病抵抗性のソルガムは、紫斑点病の被害軽減に貢献する他、バイオマスの生産量の向上や高品質の飼料作成が期待される。
図面
【図5-1】
0
【図5-2】
1
【図6】
2
【図7-1】
3
【図7-2】
4
【図7-3】
5
【図7-4】
6
【図7-5】
7
【図7-6】
8
【図7-7】
9
【図7-8】
10
【図7-9】
11
【図7-10】
12
【図7-11】
13
【図7-12】
14
【図8-1】
15
【図8-2】
16
【図8-3】
17
【図8-4】
18
【図8-5】
19
【図8-6】
20
【図8-7】
21
【図8-8】
22
【図8-9】
23
【図8-10】
24
【図8-11】
25
【図8-12】
26
【図8-13】
27
【図8-14】
28
【図8-15】
29
【図8-16】
30
【図8-17】
31
【図8-18】
32
【図8-19】
33
【図8-20】
34
【図8-21】
35
【図8-22】
36
【図8-23】
37
【図8-24】
38
【図8-25】
39
【図8-26】
40
【図8-27】
41
【図8-28】
42
【図8-29】
43
【図8-30】
44
【図8-31】
45
【図8-32】
46
【図8-33】
47
【図8-34】
48
【図1】
49
【図2】
50
【図3】
51
【図4】
52
【図9】
53
【図10】
54