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明細書 :XAGE-1b特異的免疫反応を誘導するペプチドおよびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5709108号 (P5709108)
登録日 平成27年3月13日(2015.3.13)
発行日 平成27年4月30日(2015.4.30)
発明の名称または考案の名称 XAGE-1b特異的免疫反応を誘導するペプチドおよびその利用
国際特許分類 C07K  14/82        (2006.01)
A61K  39/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
FI C07K 14/82 ZNA
A61K 39/00 H
A61P 35/00
A61P 37/04
G01N 33/68
請求項の数または発明の数 5
全頁数 61
出願番号 特願2011-514462 (P2011-514462)
出願日 平成22年5月21日(2010.5.21)
国際出願番号 PCT/JP2010/058642
国際公開番号 WO2010/134601
国際公開日 平成22年11月25日(2010.11.25)
優先権出願番号 2009124315
2009142266
優先日 平成21年5月22日(2009.5.22)
平成21年6月15日(2009.6.15)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成25年5月8日(2013.5.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】中山 睿一
【氏名】大植 祥弘
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】櫛引 明佳
参考文献・文献 SHIMONO M. et al.,Identification of DR9-restricted XAGE antigen on lung adenocarcinoma recognized by autologous CD4 T-,Int. J. Oncol. (2007) vol. 30, pages 835-840
MORISHITA Y. et al.,HLA-DRB1*0410-restricted recognition of XAGE-1b37-48 peptide by CD4 T cells.,Microbiol. Immunol. (2007) vol. 51, pages 755-762
Nakagawa et al.,Clin. Cancer Res.,Vol.11, No.15,p.5496-5503(2005)
調査した分野 C07K
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の()~()のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなる、ペプチド(ただし、HLGSRQKKIRIQLRSQ(配列番号1の17-32位)、RQKKIRIQLRSQCATW(配列番号1の21-36位)またはHLGSRQKKIRIQLRSQCATW(配列番号1の17-36位)のアミノ酸配列からなるペプチドを除く。):
)配列番号1の15-39位のアミノ酸配列;
)配列番号1の15-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の17-32位、21-29位または21-36位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列
よび
)配列番号1の49-64位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の50-60位または51-59位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列。
【請求項2】
以下の()~()のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでいることを特徴とする肺癌に対する細胞性免疫を誘導するための組成物:
)配列番号1の15-39位のアミノ酸配列;
)配列番号1の15-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の17-32位、21-29位または21-36位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(c)配列番号1の49-64位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の50-60位または51-59位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
)配列番号1の9-24位のアミノ酸配列;
)配列番号1の29-44位のアミノ酸配列;および
)配列番号1の49-64位のアミノ酸配列。
【請求項3】
上記肺癌が、非小細胞肺癌または肺腺癌であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
被験体の末梢血から採取した単核細胞分画を、請求項1に記載のペプチド、または請求項2もしくは3に記載の組成物の存在下で培養して、in vitroでXAGE-1b特異的CD4陽性またはCD8陽性T細胞を誘導する工程、および
誘導された該XAGE-1b特異的CD4陽性またはCD8陽性T細胞を収集する工程を包含する、肺癌を予防または治療するための組成物を製造する方法。
【請求項5】
上記肺癌が、非小細胞肺癌または肺腺癌であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、がんワクチン療法の開発に関し、より詳細には、肺癌におけるXAGE-1bに対する液性免疫および細胞性免疫を誘導するペプチドおよびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国のがんの罹患率は年々増加しており、現在死亡原因の第1位となっている。がんの標準的治療法である、外科療法、化学療法、放射線療法に加えて、新たな治療法の開発が急務である。中でも、がん細胞を的確に標的化でき、また副作用が少ない免疫療法は新しいがん治療法として期待されている。特に宿主免疫系にとって免疫原性が高いがん特異抗原をワクチンとして用いたワクチン療法の開発に向けての努力が、国内外で行われている。
【0003】
がん抗原として同定された抗原の中でも、がん・精巣(CT)抗原は、様々ながん組織に発現しており、正常組織では精巣にのみ発現することが知られている。このように、CT抗原はがん特異性が非常に高いため、がんワクチンの標的抗原として有望であると考えられている(非特許文献1~2等参照)。
【0004】
国内外の多くの施設で、CT抗原を標的としたがんワクチンの臨床試験が行われ、一部にその有用性が示されている(非特許文献3~4等参照)。例えば、岡山大学病院および大阪大学医学部附属病院において、食道癌患者、前立腺癌患者および悪性黒色腫患者を対象として実施された臨床試験において、CT抗原であるNY-ESO-1タンパク質を用いたがんワクチンは、腫瘍の縮小や増殖の停止等に対して一定の効果があることが認められている(非特許文献5参照)。
【0005】
これまでに、本発明者らは、肺癌患者の血清を用いたSEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法を行い、新規CT抗原であるXAGE-1bを同定した。XAGE-1bは、これまでに行われたがん組織および正常組織における発現解析の結果から、がん組織では肺癌、肝細胞癌、前立腺癌、胃癌、悪性黒色腫、正常組織では精巣に特異的に発現することが明らかになっている(非特許文献6~10)。
【0006】
さらにXAGE-1bとHLAクラスIの共発現が見られる症例では生存期間の延長が見られるということを報告し、XAGE-1bと予後との関わりも明らかになってきつつある(非特許文献13参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Boon T, et al. Curr Opin Immunol. 1; 9(5): 681-3. 1997
【非特許文献2】Scanlan MJ, et al. Immunol Rev. 188; 22-32. 2002
【非特許文献3】Jager E, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 26; 103(39): 14453-8. 2006
【非特許文献4】Dutoit V, et al. J Clin Invest 110:1813-22. 2002
【非特許文献5】Uenaka A, et al. Cancer Immun. 19; 7: 9. 2007
【非特許文献6】Ali Eldib AM, et al. Int J Cancer. 10; 108(4): 558-63. 2004
【非特許文献7】Nakagawa K, et al. Clin Cancer Res. 1; 11(15): 5496-503. 2005
【非特許文献8】Sato S, et al. Cancer Immun. 5; 7: 5. 2005
【非特許文献9】Kawabata R, et al. Int J Cancer. 15; 120(10): 2178-84. 2007
【非特許文献10】Tsuji K, et al. Cancer Immunol Immunother. 57(10): 1429-37. 2008
【非特許文献11】Scanlan MJ, et al. Cancer Immun. 23; 4:1. 2004
【非特許文献12】Stockert E, et al. J Exp Med. 20; 187(8): 1349-54. 1998
【非特許文献13】Kikuchi E,et al. Cancer Immun. 28; 8: 13. 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、CT抗原はがんワクチンの標的抗原として有望であり、CT抗原であるXAGE-1bががんワクチンの標的抗原としての機能を有していることが期待される。しかしながら、すべてのCT抗原が液性免疫反応を誘導するわけではない。例えば、MAGEやSSXなどのCT抗原は様々ながん種で発現しているが、液性免疫反応はほとんど確認されていない(非特許文献11~12参照)。このように、過去に報告されているCT抗原は、がん患者の血清中に抗体が存在する頻度が極めて低い。また、XAGE-1bは核内抗原であることが確認されているため、がんの縮小や治療に有効な程度の液性免疫を誘導するとは考えづらい。
【0009】
また、非特許文献13には、確かに、XAGE-1bとHLAクラスI分子の共発現が見られる肺腺癌患者では生存期間が延長することが報告されているが、HLAクラスI分子の発現が低下した患者では、XAGE-1bが発現していたとしても生存期間の延長が認められない。このため、一部の肺腺癌患者において、XAGE-1bとHLAクラスI分子が共発現すると予後がよいことが示されたからといって、XAGE-1bが発現する全てのがんにおいて、XAGE-1bががんの縮小や治療に有効であるとは考えづらい。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、XAGE-1bの機能を明らかにするとともに、XAGE-1bに基づくがんワクチン療法を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、本発明者らの創意工夫のもとで完成されたものである。すなわち、本発明は、XAGE-1bの特定のフラグメントおよびその利用を提供する。
【0012】
本発明は、肺癌を診断するに有用なペプチド、および該ペプチドを含有する組成物を提供する。上記ペプチドは、以下の(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなることを特徴としている:
(a)配列番号1の1-25位のアミノ酸配列;
(b)配列番号1の15-53位のアミノ酸配列;
(c)配列番号1の15-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(d)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列;および
(e)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、57-72位または65-81位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列。上記肺癌は、非小細胞肺癌または肺腺癌であってもよい。
【0013】
本発明はまた、上記ペプチド、または該ペプチドに対する抗体を用いた肺癌診断方法を提供する。本発明にかかる肺癌診断方法は、上記ペプチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するペプチド測定工程、あるいは、被験体由来の試料において、上記ペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する抗体測定工程を包含することを特徴としている。
【0014】
上記ペプチドはまた、肺癌に対する液性免疫を誘導するに有用である。すなわち、本発明は上記ペプチドを含有する、肺癌に対する液性免疫を誘導するための組成物を提供する。
【0015】
本発明はさらに、肺癌に対する細胞性免疫を誘導するに有用なペプチド、および該ペプチドを含有する組成物を提供する。上記ペプチドは、以下の(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなることを特徴としている:
(f)配列番号1の1-39位のアミノ酸配列;
(g)配列番号1の1-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の1-25位、15-39位、13-36位、13-28位、17-32位、21-36位、9-24位または21-29位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(h)配列番号1の29-53位のアミノ酸配列;
(i)配列番号1の29-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の29-48位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(j)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列;および
(k)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、53-68位、49-64位、50-60位または51-59位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列。上記肺癌は、非小細胞肺癌または肺腺癌であってもよい。
【0016】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、がんの検査または診断、がん予防またはがん治療が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】非小細胞肺癌におけるXAGE-1のRT-PCR解析の結果を示す図である。(a)は、非小細胞肺癌における、XAGE-1bの細胞株と組織での発現の違いを示す。(b)は、細胞株においても、XAGE-1bタンパク質が存在することを示す。
【図2】非小細胞肺癌患者におけるXAGE-1bタンパク質に対する抗体応答を示す図であり、(a)は非小細胞肺癌患者、(b)は健常人におけるELISAの吸光度(OD値)を表している。
【図3】非小細胞肺癌患者におけるXAGE-1bタンパク質に対する抗体応答の各領域を示す図である。
【図4】エピトープ解析に用いたXAGE-1bオーバーラップペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【図5】XAGE-1bオーバーラップペプチドに対する抗体認識を示す図である。
【図6】血清抗体陽性患者(n=20)における、抗XAGE-1b抗体によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。
【図7】特異的T細胞の誘導手順を示す図である。
【図8】血清抗体陽性患者においてXAGE-1b特異的T細胞が誘導されたことを示す図である。(a)は、血清抗体陽性患者の中で、抗原特異的なCD4陽性T細胞の誘導に成功したことを示し、(c)は、血清抗体陽性患者の中で、抗原特異的なCD8陽性T細胞の誘導に成功したことを示す。(b)および(d)は、血清抗体陰性患者5名もしくは、健常人5名では抗原特異的な反応がみられないことを示す。
【図9】特異的CD4陽性T細胞(n=14)によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。
【図10】XAGE-1bオーバーラップペプチドに対するXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞(n=14)が認識する主要エピトープ領域を示す図である。
【図11】特異的CD8陽性T細胞(n=6)によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。
【図12】XAGE-1b特異的CD8陽性T細胞(n=6)によって認識される主要エピトープ領域を示す図である。
【図13】XAGE-1b特異的抗体、XAGE-1b特異的CD4陽性T細胞、またはXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞によって認識される主要エピトープ領域を示す図である。
【図14】XAGE-1b特異的CD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞が認識する主要エピトープ領域とHLAとの関係を示す。
【図15】症例KLU187から樹立したクローンT細胞(8C187-1)の性質を示す図である。(a)は、樹立できたT細胞が、XAGE-1bのアミノ酸配列の45位-64位のアミノ酸配列を認識することを示し、(b)は、このT細胞は、HLA classI拘束性、CD8拘束性であることを示す。(c)は、このCD8陽性T細胞(8C187-1)は、HLA-A0206拘束性であることを示す。
【図16】HLA-A0206拘束性のCD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1bの最小ペプチド領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の50位-60位であることを示す図である。(a)および(b)は、CD8陽性T細胞によって認識される最小エピトープを検討した結果を示し、(c)は、最小エピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の50位-60位であることを示す。
【図17】症例KLU187から樹立したクローンT細胞(8C187-2)の性質を示す図である。(a)は、樹立できたT細胞が、XAGE-1bのアミノ酸配列の49位-64位のアミノ酸配列を認識することを示し、(b)は、このT細胞は、HLA classI拘束性、CD8拘束性であることを示す。(c)は、このCD8陽性T細胞(8C187-2)は、HLA-Cw0102拘束性であることを示す。
【図18】HLA-Cw0102拘束性のCD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1bの最小ペプチド領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の51位-59位であることを示す図である。(a)および(b)は、CD8陽性T細胞によって認識される最小エピトープを検討した結果を示し、(c)は、エピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の51位-59位であることを示す。
【図19】症例KLU187から樹立したクローンT細胞(8C187-4)の性質を示す図である。(a)は、樹立できたT細胞が、XAGE-1bのアミノ酸配列の21位-36位のアミノ酸配列を認識し、(b)は、このT細胞は、HLA classI拘束性、CD8拘束性であることを示す。(c)は、このCD8陽性T細胞(8C187-4)は、HLA-B3501拘束性であることを示す。
【図20】HLA-B3501拘束性のCD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1bの最小ペプチド領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の21位-29位であることを示す図である。(a)は、CD8陽性T細胞によって認識される最小エピトープを検討した結果を示し、(b)は、エピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の21位-29位であることを示す。
【図21】症例KLU237から樹立したクローンT細胞(8C237-22)の性質を示す図である。(a)は、樹立できたT細胞が、XAGE-1bのアミノ酸配列の21位-36位のアミノ酸配列を認識することを示し、(b)は、このT細胞は、HLA classI拘束性、CD8拘束性であることを示す。(c)は、このCD8陽性T細胞(8C237-22)は、HLA-B4002拘束性であることを示す。
【図22】HLA-B4002拘束性のCD8T細胞によって認識されるXAGE-1bの最小ペプチド領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の21位-29位であることを示す図である。(a)は、CD8陽性T細胞によって認識される最小エピトープを検討した結果を示し、(b)は、エピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の21位-29位であることを示す。
【図23】得られたCD4クローンT細胞(4C187-1)が、自然エピトープを認識していることを示す図である。
【図24】得られたCD8クローンT細胞(8C187-4)が、自然エピトープを認識していることを示す図である。(a)は、8C187-4が、XAGE-1bタンパク質および25merのXAGE-1bオーバーラップペプチドを認識していることを示し、(b)は、8C187-4は、XAGE-1bのプラスミドDNAをトランスフェクトしたB3501陽性の腫瘍細胞を特異的に認識していることを示す。
【図25】抗原と細胞との反応時間に応じた、XAGE-1bに対する特異的免疫反応の誘導を示す図である。(a)はIL-2およびIL-7存在下、(b)および(c)はIL-7およびIL-15存在下における結果を示す図である。
【図26】XAGE-1bの長鎖ペプチドのアミノ酸配列を示す図である
【図27】NY-ESO-1fペプチドが、抗原提示細胞(U937)に取り込まれたことを示す図である。
【図28】NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIIによって抗原提示されることを示す図である。
【図29】NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIによって抗原提示されることを示す図である。
【図30】反応が見られた代表的な2症例(KLU34およびKLU38)における2回刺激培養後のXAGE-1bペプチドに対するCD4陽性T細胞の応答を示す図である。(a)は、フローサイトメトリーの結果を表し、(b)は患者の血清抗体価ELISAの結果を表している。
【図31】血清抗体価陽性患者(KLU38)におけるXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。
【図32】CD8陽性T細胞によって認識されるHLA-A0206拘束性のXAGE-1b領域を示す図である。(a)は血清存在下、(b)は血清非存在下における結果を示す図である。
【図33】CD8陽性T細胞によって認識されるHLA-A0206拘束性のXAGE-1b領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。

【0020】
〔1.本発明に係るペプチド〕
本発明に係るペプチドは、以下の(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは、以下の(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴としている:
(a)配列番号1の1-25位のアミノ酸配列;
(b)配列番号1の15-53位のアミノ酸配列;
(c)配列番号1の15-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(d)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列;
(e)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、57-72位または65-81位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(f)配列番号1の1-39位のアミノ酸配列;
(g)配列番号1の1-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の1-25位、15-39位、13-36位、13-28位、17-32位、21-36位、9-24位または21-29位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(h)配列番号1の29-53位のアミノ酸配列;
(i)配列番号1の29-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の29-48位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列;
(j)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列;および
(k)配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、53-68位、49-64位、50-60位または51-59位のアミノ酸配列を含んでいる、アミノ酸配列。

【0021】
尚、配列番号1の21-40位、21-44位、25-44位、25-48位および29-48位のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドも、上記(c)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドに包含される。また、配列番号1の13-32位または17-36位に示されるアミノ酸配列からなるペプチドも、上記(g)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドに包含される。

【0022】
本発明に係るペプチドは、肺癌におけるXAGE-1bに対する液性免疫および細胞性免疫を誘導し得る。尚、本明細書では、15個未満のアミノ酸からなるペプチドを「短鎖ペプチド」と称し、15個以上のアミノ酸からなるペプチドを「長鎖ペプチド」と称して区別する場合がある。

【0023】
また、本発明に係るペプチドは、従来公知のペプチド合成方法によって調製することができる。例えば、固相ペプチド合成法等の有機化学的合成法、あるいは、ペプチドをコードする核酸を調製し、組換えDNA技術を用いて調製することが可能である。

【0024】
また、本発明に係るペプチドには、XAGE-1bに対する液性免疫および細胞性免疫を誘導することができれば、1個または数個のアミノ酸の欠失、置換、付加、または挿入等の変異が導入されたものも含まれる。

【0025】
尚、本明細書において、用語「ペプチド」は、ポリペプチドおよびタンパク質と交換可能に用いられ、ペプチドを構成するアミノ酸の数によって限定されるものではない。

【0026】
International Journal of Oncology 30: 835-840, 2007(非特許文献14)には、XAGE-1bのフラグメントとして、XAGE-1bのアミノ酸配列の33-49位または25-40位のアミノ酸配列からなるポリペプチドが開示されている(非特許文献14の図3(b))。また、Microbiol. Immunol., 51(8), 755-762, 2007(非特許文献15)には、XAGE-1bのフラグメントとして、XAGE-1bのアミノ酸配列の9-24位、13-28位、17-32位、21-36位、25-40位、29-44位、49-64位、53-68位、57-72位または65-81位のアミノ酸配列からなるポリペプチドが開示されている(非特許文献15の図2A)。

【0027】
本願において「ペプチド」として権利請求される範囲にこれらのペプチドが含まれることは意図されない。すなわち、一実施形態において、本発明に係るペプチドは、上記非特許文献14および上記非特許文献15に開示されたペプチドを除くペプチドであり得る。1つの局面において、本実施形態に係るペプチドは、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、上記非特許文献14および上記非特許文献15に開示されたペプチドを除く)であり、他の局面において、本実施形態に係るペプチドは、上記(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチド(ただし、上記非特許文献14および上記非特許文献15に開示されたペプチドを除く)である。

【0028】
また、上記文献には、本発明に係るペプチドの機能が記載も示唆もされていない。よって、以下に説明する、本発明に係るペプチドの利用においては、上記文献に開示されたペプチドを本発明の範囲から除外することは意図されない。すなわち、一実施形態において、本発明に係るペプチドは、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは、上記(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドである。

【0029】
1つの局面において、本実施形態に係るペプチドは、(i) 配列番号1の15-53位のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。他の局面において、本実施形態に係るペプチドは、(ii) 配列番号1の15-39位(配列番号20)、29-53位(配列番号21)、21-48位(配列番号2)、21-36位(配列番号3)、25-40位(配列番号4)、29-44位(配列番号5)または33-48位(配列番号6)のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。

【0030】
また、配列番号1の15-53位のアミノ酸配列からなるペプチドの効果を、配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列からなるペプチドが維持していることから、配列番号1の15-53位のアミノ酸配列からなるペプチドのフラグメント(部分断片)であって配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のいずれかのアミノ酸配列を含むものもまた、本発明の範囲内に含まれ得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。すなわち、本実施形態に係るペプチドは、(iii) 配列番号1の15-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチド、でもあり得る。

【0031】
さらに、配列番号1の15-53位のアミノ酸配列からなるペプチドにおいて、配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列が保持されていれば、それ以外の領域のアミノ酸配列が多少異なっていてもよいことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。すなわち、本実施形態に係るペプチドは、(iv) 配列番号1の15-53位のアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されているアミノ酸配列またはその部分配列からなり、当該部分配列が、配列番号1の15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。

【0032】
尚、配列番号1の15-53位、15-39位、29-53位、21-48位、21-36位、25-40位、29-44位および33-48位のアミノ酸配列は、「配列番号1の33-36位」を共通のアミノ酸配列として有する。このことから、配列番号1の33-36位のアミノ酸配列が、上記(i)~(iv)のペプチドが機能するための主要な領域であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0033】
同様に、1つの局面において、本実施形態に係るペプチドは、(i)' 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。他の局面において、本実施形態に係るペプチドは、(ii)' 配列番号1の43-67位(配列番号22)、57-81位(配列番号23)、57-72位(配列番号7)または65-81位(配列番号8)のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。なおさらに、本実施形態に係るペプチドは、(iii)' 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、57-72位または65-81位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチド、でもあり得、(iv)' 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されているアミノ酸配列またはその部分配列からなり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、57-72位または65-81位のアミノ酸配列からなるプチドであり得る。

【0034】
尚、配列番号1の43-81位、43-67位、57-81位、57-72位および65-81位のアミノ酸配列は、「配列番号1の65-67位」を共通のアミノ酸配列として有する。このことから、配列番号1の65-67位のアミノ酸配列が、上記(i)'~(iv)'のペプチドが機能するための主要な領域であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0035】
同様に、1つの局面において、本実施形態に係るペプチドは、(i)'' 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。他の局面において、本実施形態に係るペプチドは、(ii)'' 配列番号1の1-25位(配列番号19)、15-39位(配列番号20)、13-36位(配列番号9)、13-28位(配列番号10)、17-32位(配列番号11)、21-36位(配列番号3)、9-24位(配列番号14)または21-29位(配列番号15)のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。なおさらに、本実施形態に係るペプチドは、(iii)'' 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の1-25位、15-39位、13-36位、13-28位、17-32位、21-36位、9-24位または21-29位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチド、でもあり得、(iv)'' 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されているアミノ酸配列またはその部分配列からなり、当該部分配列が、配列番号1の1-25位、15-39位、13-36位、13-28位、17-32位、21-36位、9-24位または21-29位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。

【0036】
尚、配列番号1の1-39位、1-25位、15-39位、13-36位、13-28位、17-32位、21-36位、9-24位および21-29位のアミノ酸配列は、「配列番号1の21-24位」を共通のアミノ酸配列として有する。このことから、配列番号1の21-24位のアミノ酸配列が、上記(i)''~(iv)''のペプチドが機能するための主要な領域であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0037】
同様に、1つの局面において、本実施形態に係るペプチドは、(i)''' 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。他の局面において、本実施形態に係るペプチドは、(ii)''' 配列番号1の29-48位(配列番号12)、29-44位(配列番号5)または33-48位(配列番号6)のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。なおさらに、本実施形態に係るペプチドは、(iii)''' 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の29-48位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチド、でもあり得、(iv)''' 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されているアミノ酸配列またはその部分配列からなり、当該部分配列が、配列番号1の29-48位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。

【0038】
尚、配列番号1の29-53位、29-48位、29-44位および33-48位のアミノ酸配列は、「配列番号1の33-44位」を共通のアミノ酸配列として有する。このことから、配列番号1の33-44位のアミノ酸配列が、上記(i)'''~(iv)'''のペプチドが機能するための主要な領域であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0039】
同様に、1つの局面において、本実施形態に係るペプチドは、(i)'''' 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。他の局面において、本実施形態に係るペプチドは、(ii)'''' 43-67位(配列番号22)、57-81位(配列番号23)、53-68位(配列番号13)、49-64位(配列番号16)、50-60位(配列番号17)または51-59位(配列番号18)のアミノ酸配列からなるペプチド、であることを特徴としている。なおさらに、本実施形態に係るペプチドは、(iii)'''' 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、53-68位、49-64位、50-60位または51-59位のアミノ酸配列からなるペプチド、でもあり得、(iv)'''' 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されているアミノ酸配列またはその部分配列からなり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、53-68位、49-64位、50-60位または51-59位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。

【0040】
尚、配列番号1の43-81位、43-67位、57-81位、53-68位、49-64位、50-60位および51-59位のアミノ酸配列は、「配列番号1の57-59位」を共通のアミノ酸配列として有する。このことから、配列番号1の57-59位のアミノ酸配列が、上記(i)''''~(iv)''''のペプチドが機能するための主要な領域であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。

【0041】
さらに、実施例にて後述するように、配列番号1の21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列からなるペプチドは、肺癌に対する液性免疫を誘導する機能を有している。このことから、配列番号1の21-36位、25-40位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含む、配列番号1の15-53位、15-39位、29-53位または21-48位のアミノ酸配列からなるペプチドについても、同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。また、配列番号1の21-40位、21-44位、25-44位、25-48位および29-48位のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドについても、配列番号1の21-48位のアミノ酸配列からなるペプチドと同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得る。

【0042】
同様に、肺癌に対する液性免疫を誘導する機能を有することが実証されている、配列番号1の57-72位または65-81位のアミノ酸配列を含む、配列番号1の43-81位、43-67位または57-81位のアミノ酸配列からなるペプチドについても、同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得る。

【0043】
また、実施例にて後述するように、配列番号1の13-28位、17-32位、21-36位、9-24位または21-29位のアミノ酸配列からなるペプチドは、肺癌に対する細胞性免疫を誘導する機能を有している。このことから、配列番号1の13-28位、17-32位、21-36位、9-24位または21-29位のアミノ酸配列を含む、配列番号1の1-39位、1-25位、15-39位または13-36位のアミノ酸配列からなるペプチドについても、同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。また、13-32位または17-36位に示されるアミノ酸配列からなるペプチドについても、配列番号1の13-36位のアミノ酸配列からなるペプチドと同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得る。

【0044】
同様に、肺癌に対する細胞性免疫を誘導する機能を有することが実証されている、配列番号1の29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含む、配列番号1の29-53位または29-48位のアミノ酸配列からなるペプチドについても、同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得る。

【0045】
同様に、肺癌に対する細胞性免疫を誘導する機能を有することが実証されている、53-68位、49-64位、50-60位または51-59位のアミノ酸配列を含む、配列番号1の43-81位、43-67位または57-81位のアミノ酸配列からなるペプチドについても、同様の機能を有し、これらのペプチドも本発明の範囲内に含まれ得る。

【0046】
〔2.本発明に係る肺癌を診断するための組成物〕
本発明に係る肺癌を診断するための組成物(以下、「本発明に係る組成物1」または「組成物1」と称する)は、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでいる。上記「ペプチド」としては、上記「1.本発明に係るペプチド」で説明したとおりである。本発明に係る組成物1は、肺癌を診断するために、上記ペプチドの内の1つを単独で含んでいてもよいし、2つ以上のペプチドを組み合わせて含んでいてもよい。

【0047】
本発明に係る組成物1を用いて肺癌を診断する方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA法(酵素免疫検定法)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法等を挙げることができる。従って、本発明に係る組成物1には、上記ペプチド以外に、上述した診断方法に通常使用されている緩衝剤、塩類、界面活性剤等が含まれていてもよい。

【0048】
また、本発明に係る組成物1を用いて非小細胞肺癌または肺腺癌を診断してもよい。

【0049】
〔3.本発明に係る肺癌診断方法〕
本発明に係る肺癌診断方法は、肺癌を診断する方法であって、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドが被験体由来の試料中に存在するレベルを測定するペプチド測定工程、あるいは、被験体由来の試料において、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する抗体測定工程を包含する。上記「ペプチド」としては、上記「1.本発明に係るペプチド」で説明したとおりである。

【0050】
上記「被験体」は、特に限定されるものではなく広く動物一般を含むが、ヒトであることが好ましい。被験体がヒトである場合、がん患者やがんを有する疑いのある患者のみでなく、健常人も被験体となり得る。被験体の性別、年齢等は特に限定されない。上記「試料」としては、例えば、血液(血清、血漿、血球等)、尿、糞便、喀痰、胸・腹水、気管支肺胞洗浄液、腹腔洗浄液、生検組織、外科的に切除された検体等を挙げることができる。上記「ペプチドが被験体由来の試料中に存在するレベル」とは、ペプチドが被験体由来の試料中に存在する量を意図している。上記「抗体のレベル」とは、抗体の量を意図している。

【0051】
本発明に係る肺癌診断方法は、後述するペプチド測定工程または抗体測定工程において、被験体由来の試料に上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはこれらのペプチドに特異的に結合する抗体が存在するか否かを検出することにより決定することができる。また、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはこれらのペプチドに特異的に結合する抗体が、被験体由来の試料存在する量を測定し、この量をコントロール(例えば、正常な健康個体由来の試料に存在する量)と比較することによりがんを診断することができる。

【0052】
また、本発明に係る肺癌診断方法では、肺癌の中でも、非小細胞肺癌または肺腺癌を好適に診断することができる。

【0053】
ここで、上記「ペプチド測定工程」および上記「抗体測定工程」について説明する。

【0054】
(3-1.ペプチド測定工程)
ペプチド測定工程は、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドが被験体由来の試料中に存在する量を測定する工程である。ペプチドの量を測定する方法としては、当該分野において公知の手法を用いて測定することができる。例えば、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体を用いて、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA法(酵素免疫検定法)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、免疫組織化学法、抗体アレイ法、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法等を行うことによって測定することができるが、本発明はこれに限定されない。なお、上記ペプチドの量の測定に用いる試料は、血清であることが好ましいが、ペプチドの量の測定が可能な試料であれば特に限定されない。

【0055】
被験体由来の試料中に存在する上記ペプチドの量が、コントロール(例えば、正常な健康個体(健常人)由来の試料中に存在する上記ペプチドの量)よりも高い場合に、被験体はがんを有していると判定することが可能である。コントロールは、正常な健康個体に由来する試料をペプチド測定工程と同時に測定されることにより得られてもよく、背景データとして蓄積されているデータが用いられてもよい。

【0056】
(3-2.抗体測定工程)
抗体測定工程は、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドに特異的に結合する抗体のレベルを測定する工程である。抗体の濃度を測定する方法としては、特定の抗原に対する抗体力価のレベルを測定する方法や、目的の抗体に対する抗体を用いる方法であれば特に限定されず、当該分野において公知の手法を用いて測定することができる。例えば、ELISA法、ラジオイムノアッセイ、ELISPOT法、免疫沈降法、アフィニティーカラム法等によって測定することができるが、本発明はこれに限定されない。なお、上記抗体のレベルの測定に用いる試料は、血清であることが好ましいが、抗体レベルの測定が可能な試料であれば特に限定されない。

【0057】
抗体の力価測定に用いる抗原タンパク質は、生体試料から精製して取得することも可能であるが、組換えタンパク質として取得することが好ましい。組換えタンパク質は、例えば、XAGE-1b遺伝子または、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレチドを挿入した発現ベクターを宿主に導入して発現させ、精製することにより取得することができる。

【0058】
被験体由来の試料中に存在する上記抗体の量が、コントロール(例えば、正常な健康個体(健常人)由来の試料中に存在する上記抗体の量)よりも高い場合に、被験体はがんを有していると判定することが可能である。コントロールは、正常な健康個体に由来する試料を抗体測定工程と同時に測定されることにより得られてもよく、背景データとして蓄積されているデータが用いられてもよい。例えば、300倍に希釈した血清を用いてELISAを行った場合、健常人(コントロール)は反応しない。このため、波長490nmにおける吸光度(OD値)が1.0を超えれば統計学的に陽性であると判断し、被験体はがんを有していると判定することができる。血清の希釈倍率等の反応条件が異なれば陽性と判断できるOD値は変わるので、反応条件に応じて適宜設定することができる。

【0059】
尚、本発明に係る肺癌診断方法は、肺癌の可能性を診断するためのデータを取得する方法であり得る。この場合、本発明は医師による判断工程を含むことを意図しない。

【0060】
〔4.本発明に係る肺癌に対する液性免疫を誘導するための組成物〕
本発明に係る肺癌に対する液性免疫を誘導するための組成物(以下、「本発明に係る組成物2」または「組成物2」と称する)は、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでいる。上記「ペプチド」としては、上記「1.本発明に係るペプチド」で説明したとおりである。

【0061】
上記組成物2は、上記(a)~(e)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも1種類で含んでいれば、肺癌に対する液性免疫を誘導することができるが、複数のペプチドを組み合わせて含むことによって、肺癌に対する液性免疫をより効率よく誘導することができる。

【0062】
また、本発明に係る組成物2は、上記のペプチドの生理活性を阻害しない、ペプチド以外の他の成分(例えば、薬学的に受容可能なキャリア等)をさらに含有してもよい。

【0063】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」(以下、単に「キャリア」ともいう)とは、医薬、または動物薬のような農薬を製造するときに、処方を補助することを目的として用いられる物質であって、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。さらに、本発明にかかる薬学的組成物を受容した個体において毒性が無く、且つキャリア自体は有害な抗体の産生を誘導しないものが意図される。

【0064】
上記キャリアとしては、製剤素材として使用可能な各種有機または無機のキャリア物質が用いられ、後述する薬学的組成物の投与形態および剤型に応じて適宜選択することができる。例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等;防腐剤;抗酸化剤;安定剤;矯味矯臭剤等として配合されるが、本発明はこれらに限定されない。

【0065】
本発明に係る組成物2は、医薬品分野で通常用いられるアジュバントの存在下または非存在下において、経口的または非経口的に投与することによって、肺癌に対する液性免疫を誘導することができる。なお、本明細書中において、上記「非経口」とは、脳室内、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。

【0066】
本発明に係る組成物2は、肺癌の中でも、非小細胞肺癌または肺腺癌に対する液性免疫を好適に誘導することができる。

【0067】
〔5.本発明に係る肺癌に対する細胞性免疫を誘導するための組成物〕
本発明に係る肺癌に対する細胞性免疫を誘導するための組成物(以下、「本発明に係る組成物3」または「組成物3」と称する)は、上記(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでいる。上記「ペプチド」としては、上記「1.本発明に係るペプチド」で説明したとおりである。

【0068】
(i) 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列、(ii) 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の1-25位、15-39位、13-36位、13-28位、17-32位もしくは21-36位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列、(iii) 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列、(iv) 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の29-48位、29-44位または33-48位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列、(v) 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列、または(vi) 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位もしくは53-68位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物3は、XAGE-1b特異的CD4陽性T細胞を誘導することができる。また、(vii) 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列、(viii) 配列番号1の1-39位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の配列番号1の1-25位、15-39位、21-36位、9-24位もしくは21-29位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列、(ix) 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列、(x) 配列番号1の29-53位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の29-44位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列、(xi) 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列、または(xii) 配列番号1の43-81位のアミノ酸配列の部分配列であり、当該部分配列が、配列番号1の43-67位、57-81位、49-64位、50-60位もしくは51-59位のアミノ酸配列を含んでいるアミノ酸配列のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物3は、XAGE-1b特異的CD8陽性T細胞を誘導することができる。特に、配列番号1の50-60位のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号17)を含む組成物3は、HLA-A0206拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞を誘導することができる。また、配列番号1の51-59位のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号18)を含む組成物3は、HLA-Cw0102拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞を誘導することができる。また、配列番号1の21-29位のアミノ酸配列からなるペプチド(配列番号15)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物3は、HLA-B3501拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞およびHLA-B4002拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞を誘導することができる。

【0069】
上記組成物3は、上記(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも1種類で含んでいれば、肺癌に対する細胞性免疫を誘導することができるが、複数のペプチドを組み合わせて含むことによって、肺癌に対する細胞性免疫をより効率よく誘導することができる。

【0070】
また、本発明に係る組成物3は、上記のペプチドの生理活性を阻害しない、ペプチド以外の他の成分(例えば、薬学的に受容可能なキャリア等)をさらに含有してもよい。当該「薬学的に受容可能なキャリア」については、上記「本発明に係る肺癌に対する液性免疫を誘導するための組成物」で説明したので省略する。

【0071】
本発明に係る組成物3は、医薬品分野で通常用いられるアジュバントの存在下または非存在下において、経口的または非経口的に投与することによって、肺癌に対する細胞性免疫を誘導することができる。

【0072】
また、肺癌患者の末梢血から単核細胞分画を採取し、上記(f)~(k)のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む上記組成物と共培養し、in vitroでXAGE-1b特異的CD4陽性またはCD8陽性T細胞を誘導することができる。これらの誘導されたXAGE-1b特異的T細胞を肺癌患者の血液中に戻すことによっても、肺癌の予防または治療が可能となる。なお、in vitroでXAGE-1b特異的T細胞を誘導する場合、細胞の濃度、上記組成物3の濃度等の培養条件は適宜設定することができる。

【0073】
本発明に係る組成物3は、肺癌の中でも、非小細胞肺癌または肺腺癌に対する液性免疫を好適に誘導することができる。

【0074】
後述する実施例に示すように、XAGE-1bの解析では、特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1bの部位には特異性がある傾向が認められるものの、特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞が認識する部位は、XAGE-1bの全長にわたって存在する。このため、低コストで、タンパク質と同等の抗原提示を誘導できる長鎖ペプチドを用いて、HLAに問わずワクチンを施行するためには、XAGE-1bの全長をカバーするように長鎖ペプチドを組み合わせて投与することが好ましい。

【0075】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
〔実施例1〕
実施例1ではXAGE-1b抗原について免疫原性の詳細な解析を行い、新規がんワクチン療法の標的がん抗原としての有用性を検討した。
【実施例】
【0078】
<実験材料および実験方法>
〔a.患者血清、胸水および末梢血単核球〕
本発明の実施例において使用した血清、胸水および末梢血単核球は、検体提供者すべてにおいてインフォームドコンセントのもとに検体提供を受けた。
【実施例】
【0079】
〔b.細胞の分離方法〕
患者の末梢血から比重遠心法によって単核球分画を得た。次いで、抗CD4抗体結合ビーズ、抗CD8抗体結合ビーズおよび抗CD19抗体結合ビーズ(ミリテニーバイオテク社製)を用いて、磁気細胞分離法(MACS、ミリテニーバイオテク社製)によって、順次CD8陽性分画、CD4陽性分画、CD19陽性分画およびCD4CD8CD19分画を分離した。
【実施例】
【0080】
〔c.XAGE-1bタンパク質およびペプチド〕
XAGE-1bタンパク質(81個のアミノ酸、配列番号1)は、GLバイオケム社(上海、中国)で合成されたものを使用した。合成したXAGE-1bタンパク質は、HPLCカラムで精製を行い、純度が90%以上であることを確認している。
【実施例】
【0081】
また、XAGE-1bタンパク質の全長をカバーする16merまたは17merのオーバーラップペプチド(以下、「OLP」とも略す)(1-16、5-20、9-24、13-28、17-32、21-36、25-40、29-44、33-48、37-52、41-56、45-60、49-64、53-68、57-72、61-76、および65-81)は、Fmoc固相法によってマルチプルペプチド合成機(AMS422; ABIMED, Langenfeld Germany)を用いて岡山大学共同研究室において合成したものを使用した。
【実施例】
【0082】
〔d.ELISA〕
1μg/mlの濃度の全長XAGE-1bタンパク質(炭酸バッファー、pH9.6)を4℃オーバーナイトで96穴プレート(ヌンク社製)に固相化した後に、洗浄液(PBS/0.1%TWEEN)で96穴プレートを洗浄し、5%FCS/PBSを加えて、37℃で1時間ブロッキングを行った。ブロッキング終了後、100倍、300倍、900倍、または2700倍に希釈した血清を加えて、37℃で2時間反応させた。次いで、洗浄液で洗浄した後に、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(5000倍希釈)(ジャクソン社製)を加えて、37℃で1時間反応させた。反応終了後、洗浄液で洗浄し、過酸化水素を加えた基質溶液(オルトフェニレンジアミンを0.05Mクエン酸バッファー(pH5.0)に溶解した溶液)を加えて発色させた。発色後、6N硫酸を加えて反応を停止し、マイクロプレートリーダー(バイオラッド社製)を用いて吸光度(波長490nm)を測定した。
【実施例】
【0083】
〔e.IFN-γキャッチアッセイ〕
IFN-γキャッチアッセイについて、図6を参照しながら説明する。図6は、IFN-γキャッチアッセイの手順を示す図である。
【実施例】
【0084】
(1)CD4陽性またはCD8陽性T細胞におけるXAGE-1b特異的反応の誘導
CD4陽性T細胞またはCD8陽性T細胞と、抗原提示細胞(図中、「APC」と表す)として、同数のX線照射(70Gy)CD4CD8T細胞とを、XAGE-1bオーバーラップペプチド(OLP)各1μM存在下において、24ウェルプレートまたは96ウェルプレートを用いてCOインキュベーター内で10~14日間培養した。T細胞を培養するための培地としては、特に記載がない場合は、5%プール血清/AIM-V(IL-2 25IU/ml、IL-7 5ng/ml)を用い、必要に応じてIL-15 5μg/mlをさらに添加した。
【実施例】
【0085】
必要に応じ、2回目の刺激は、培養10~14日後に、培養培地の半分を新しい培養培地に交換し、1μMになるようにXAGE-1bオーバーラップペプチド添加して、同様に行った。
【実施例】
【0086】
1回目または2回目の刺激後10~14日後に、T細胞によって産生された抗原特異的IFN-γの量を下記のELISA法によって測定した。
【実施例】
【0087】
(2)IFN-γ ELISA
エフェクター細胞(CD4陽性またはCD8陽性T細胞)の刺激培養上清100μlを、マウス抗ヒトIFN-γモノクローナル抗体(1-D1K,BD社製,500倍希釈)をオーバーナイトで固相化した後にブロッキングしたプレートに加えて、37℃で1時間反応させた。その後、PBST(0.1%Tween20-PBS)を用いてプレートを洗浄し、ウサギ抗ヒトIFN-γ抗体(自家製,600倍希釈)を加えて、37℃で1時間反応させた。
【実施例】
【0088】
洗浄液で洗浄後に、HRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(MBL製,2000倍希釈)を加えて、37℃で1時間反応させた。反応後に洗浄液で洗浄し、その後、基質溶液(o-フェニレンジアミン(o-phenylenediamine,OPDA)(和光製))を加えて発色させた。発色後、6N硫酸を加えて反応を停止し、マイクロプレートリーダー(バイオラッド社製)を用いて吸光度(波長490nm)を測定した。オーバーラップペプチドで刺激を行わなかったウェルと比べてIFN-γの産生量が多かったウェルを陽性ウェルとした。陽性ウェルについて、翌日、抗原特異的にIFN-γを産生する細胞の存在を確認した。
【実施例】
【0089】
(3)IFN-γ産生細胞の検出
オーバーラップペプチドを添加して刺激培養した後の細胞と、これと同数の自己のEBV-B細胞(エプスタイン・バール・ウイルス感染B細胞)(XAGE-1bオーバーラップペプチドで予め刺激したものまたは刺激しなかったもの)とを37℃で4時間または8時間、COインキュベーター内で反応させ、ヒトIFN-γキャッチ抗体(ミリテニーバイオテク社製)2μlを用いて培養細胞を標識した。
【実施例】
【0090】
その後、1~10mlのAIM-V培地に懸濁し、ローテーター(マックスミックス、ミリテニーバイオテク社製)を用いて懸濁しながら37℃で45分間、COインキュベーター内で反応させた。細胞を洗浄した後に、PE標識ヒトIFN-γ抗体(ミリテニーバイオテク社製)2μl、7AAD(BD社製)2μl、FITC標識抗ヒトCD4抗体またはFITC標識抗ヒトCD8抗体(ミリテニーバイオテク社製)1μlを加えて染色した。
【実施例】
【0091】
染色後、FACS buffer(1%FCS/PBS,0.02%アジ化ナトリウム)を加えて細胞を洗浄し、FACS Calibur(BD社製)を用いてフローサイトメトリーを行い、IFN-γ産生細胞を検出した。IFN-γ産生細胞の頻度は、データ解析ソフト(FlowJo,Tree Star社製)を用いて解析した。
【実施例】
【0092】
図1は、非小細胞肺癌におけるXAGE-1のmRNAの発現を示す図である。図1の(a)は、肺腺癌の手術検体(組織)10例と肺癌細胞株12例におけるXAGE-1の4つのスプライシングバリアントであるXAGE-1a、1b、1cおよび1dのmRNAの発現を調べた図である。図1の(a)に示すように、肺癌細胞株では、XAGE-1のすべてで強発現(1c、1dが優位)が認められるが、肺癌組織ではXAGE-1bおよび1dの発現のみが認められる。非特許文献7および8では、XAGE-1bと1dとでは、肺癌においてXAGE-1bが有意であることが証明されている。このため、ワクチンの候補として、XAGE-1bを標的とすることが望ましいといえる。肺癌細胞株と組織におけるXAGE-1の発現の差は原因不明であるが、XAGE-1の機能に関与する可能性がある。
【実施例】
【0093】
また、図1の(b)は、肺癌細胞株におけるXAGE-1bタンパク質が存在することを証明した図である。具体的には、mRNA陽性肺癌細胞株においてウエスタンブロットでタンパク質の存在を証明した。尚、肺癌細胞株と肺癌組織との発現の量の違いについてはこれまで検討されておらず、本発明者等が初めで明らかにした。また、肺癌組織と比較して、肺癌細胞株では、XAGE-1bタンパク質の発現量が非常に少ないため、免疫沈降法を用いなければそのタンパク質の同定はできなかった。
【実施例】
【0094】
〔実験例1〕
2005年から2009年の間に、川崎医科大学附属病院を受診した非小細胞肺癌200例(進行期肺腺癌69例含む)および対照群として健常人50例において、XAGE-1bに対する液性免疫応答の有無を検討した。
【実施例】
【0095】
具体的には、肺癌患者から採取した血清におけるXAGE-1b特異的IgG抗体の有無をELISA法によって確認した。
【実施例】
【0096】
ELISAの結果を図2および3に示す。図2は、非小細胞肺癌患者におけるXAGE-1bタンパク質に対する抗体応答を示す図であり、(a)は非小細胞肺癌患者、(b)は健常人の血清を100倍、300倍、900倍および2700倍で希釈した場合のELISAの吸光度(OD値)を表している。図3は、非小細胞肺癌患者におけるXAGE-1bタンパク質に対する抗体応答の各領域を示す図である。
【実施例】
【0097】
図2および図3に示すように、肺癌患者は、対照群(健常人)と比較して血清抗体価が高い順に、強陽性群、陽性群、弱陽性群、境界群の4つの領域に分類された。そのうち弱陽性以上の肺癌患者を血清抗体価陽性患者とした。
【実施例】
【0098】
非小細胞肺癌患者全体では、XAGE-1b血清抗体価陽性例は20/200例(10.0%)であった。また、表1に示すように、進行期(stage3B/4期)肺腺癌患者に限れば、XAGE-1b血清抗体価陽性例は13/69例(18.8%)であった。
【実施例】
【0099】
【表1】
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一方、健常人50名でも同様の実験を行ったが、図2の(b)に示すように、XAGE-1bに対する抗体反応は認められなかった。これらの結果から、肺癌患者の中でも、非小細胞肺癌患者、特に肺腺癌患者では、XAGE-1bに対する液性免疫が高頻度に誘導されていることが明らかになった。
【実施例】
【0100】
なお、非特許文献13には、肺腺癌では32.5%がXAGE-1bに対する免疫組織染色陽性であることが報告されている。このことから、進行期肺腺癌においてXAGE-1bに対する免疫組織染色が陽性であれば約60%の高い頻度でXAGE-1bに対する液性免疫が誘導され得ると予想できる。
【実施例】
【0101】
〔実験例2〕
血清抗体価陽性を示した患者の血清を用いて、血清中に含まれる抗XAGE-1b抗体が認識するXAGE-1bのエピトープを調べた。図4は、エピトープ解析に用いたXAGE-1bオーバーラップペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【実施例】
【0102】
図4に示す、17種類のXAGE-1bオーバーラップペプチドを、それぞれ1μg/mlの濃度でプレートに固相化し、血清抗体価陽性患者の血清を加えて、抗原抗体反応の有無をELISA法によって調べた。血清は、300倍に希釈したものを用いた。
【実施例】
【0103】
血清抗体価陽性患者20例におけるELISAの結果を図5および図6に示す。図5は、XAGE-1bオーバーラップペプチドに対する抗体認識を示す図である。図5のグラフに記載した破線は、抗体価(O.D.(490nm))が0.1であることを表している。図6は、抗XAGE-1b抗体によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。図6は、図5で抗体価が0.1以上であった患者の数をペプチド毎にプロットしている。
【実施例】
【0104】
図5に示すように、抗XAGE-1b抗体が認識する領域には個人差があるが、図6に示すように、抗XAGE-1b抗体の主要認識部位は、XAGE-1bの全長アミノ酸配列の、21-48位(配列番号2)、57-72位(配列番号7)、65-81位(配列番号8)の3領域であることが明らかになった。
【実施例】
【0105】
〔実験例3〕
末梢血CD4陽性T細胞におけるXAGE-1bに対する反応を検討した。血清抗体価陽性患者16名から分離した末梢血CD4陽性T細胞(1×10個)を、これと同数の放射線照射したCD4CD8細胞と共に、XAGE-1bの全長をカバーするようにプールしたオーバーラップペプチドの存在下で、10~14日間刺激培養した(刺激培養は、必要に応じ10~14日ごとに2回施行)。次いで、1×10個のCD4陽性T細胞と、同数のXAGE-1bオーバーラップペプチドパルスまたは非パルスのPFA処理した自己EBV-B細胞とを37℃で4時間反応させ、IFN-γキャッチアッセイを行った。
【実施例】
【0106】
その結果、図8の(a)および(b)に示すように、血清抗体価陽性患者16名のうち14名(87.5%)において、XAGE-1bオーバーラップペプチドで刺激したCD4陽性T細胞の中に、XAGE-1b特異的にIFN-γを産生する細胞が検出された。特異的T細胞の検出は、CD4で87.5%(14/16)であった。
【実施例】
【0107】
図30は反応が見られた代表的な2症例におけるXAGE-1bペプチドに対するCD4陽性T細胞の応答を示す図である。図30の(a)は、フローサイトメトリーの結果を表し、(b)は患者の血清抗体価ELISAの結果を表している。また、図30の(a)に示すように、症例KLU34では、ネット値で1.11%のIFN-γ産生細胞が検出された。また、症例KLUN38では、ネット値で0.94%のIFN-γ産生細胞が検出された。尚、上記「ネット値」は、ペプチド(+)におけるIFN-γ産生細胞の割合からペプチド(-)におけるIFN-γ産生細胞の割合を減じた値を表している。
【実施例】
【0108】
〔実験例4〕
実験例3においてXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞が検出された14名の患者において、その特異的CD4陽性T細胞が認識するXAGE-1bの領域を検討した。先の実験で得られた1×10個のCD4陽性T細胞と、抗原提示細胞として、各XAGE-1bオーバーラップペプチドを5μg/mlパルスまたは非パルスの、CD4陽性T細胞と同数のPFA処理した自己EBV-B細胞とを用い、37℃で4時間反応させ、IFN-γキャッチアッセイまたはELISAを行った。
【実施例】
【0109】
結果を図31に示す。図31は、血清抗体価陽性患者(KLU38)における刺激培養後のXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。図31に示すように、ペプチド4(13-28位のアミノ酸領域、配列番号10)またはペプチド6(21-36位のアミノ酸領域、配列番号3)を用いてCD4陽性T細胞を刺激すると、XAGE-1b特異的にIFN-γを産生する細胞が高頻度に検出された。このことから、症例KLU38のCD4陽性T細胞は、XAGE-1bの13-36位のアミノ酸領域および21-36位のアミノ酸領域を認識していることが明らかになった。
【実施例】
【0110】
血清抗体価陽性患者の残りの13症例についても同様に解析を行った。結果を図9および図10に示す。図9は、特異的CD4陽性T細胞(n=14)によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。図9では、特異的CD4陽性T細胞の反応が特に強いペプチドに星印を付している。図10は、XAGE-1bオーバーラップペプチドに対するXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞(n=14)が認識する主要エピトープ領域を示す図である。図10は、図9の星印の数をペプチド毎にプロットしている。図9および図10に示すXAGE-1b抗体陽性14症例の検討結果から、XAGE-1bのアミノ酸配列の13-36位(配列番号9)、29-48位(配列番号12)、53-68位(配列番号13)がXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞によって高頻度に認識されることが明らかになった。さらに、XAGE-1b特異的CD4陽性T細胞によって認識される主要な部位は13-28位のアミノ酸領域(配列番号10)および33-48位のアミノ酸領域(配列番号6)であることが明らかになった。
【実施例】
【0111】
〔実験例5〕
CD8陽性T細胞のXAGE-1b認識領域を検討するために、末梢血CD8陽性T細胞を用いてIFN-γキャッチアッセイおよびELISAを行った。具体的には、血清抗体陽性患者から採取した末梢血CD8陽性T細胞1×10個と、同数のCD4CD8細胞とを、1μg/mlのXAGE-1bオーバーラップペプチド存在下において共培養した。培養後10~14日目に、CD8陽性T細胞によって産生されたXAGE-1b特異的IFN-γの量をELISA法によって測定した。IFN-γキャッチアッセイの結果、血清抗体価陽性患者9例のうち6例(66.7%)においてXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞の反応が認められた。図8の(c)および(d)は、XAGE-1b特異的CD8陽性T細胞が誘導されたことを示す図である。
【実施例】
【0112】
〔実験例6〕
XAGE-1bにおけるCD8陽性T細胞の認識領域を検討するため、反応がみられた6症例について、各XAGE-1bオーバーラップペプチド1μg/mlをパルスした自己EBV-B細胞を抗原提示細胞として用いてELISAを行った。結果を図11に示す。図11は、特異的CD8陽性T細胞(n=6)によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。図11では、特異的CD8陽性T細胞の反応が特に強いペプチドに星印を付している。図12は、XAGE-1b特異的CD8陽性T細胞(n=6)によって認識される主要エピトープ領域を示す図である。図12は、図11の星印の数をペプチド毎にプロットしている。図11および図12に示すXAGE-1b抗体陽性6症例の検討結果から、XAGE-1bのアミノ酸配列の9-24位(配列番号14)、21-36位(配列番号3)、29-44位(配列番号5)、49-64位(配列番号16)がXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞によって高頻度に認識されることが明らかになった。
【実施例】
【0113】
図13は、血清抗体価陽性患者における、XAGE-1b特異的抗体、XAGE-1b特異的CD4陽性T細胞、またはXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞によって認識される主要エピトープ領域を示す図である。図13に示すように、XAGE-1bの解析では、特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1bの部位には特異性がある傾向が認められるものの、特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞が認識する部位は、XAGE-1bの全長にわたって存在することが示された。この結果から、XAGE-1bの全長をカバーするように、複数のペプチドを組み合わせて投与することによって、被験体のHLAの種類を問わずXAGE-1bワクチンを施行し得ると考えられた。
【実施例】
【0114】
図14は、XAGE-1b特異的CD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞が認識する主要エピトープ領域とHLAとの関係を示している。
【実施例】
【0115】
図14は、XAGE-1b特異的T細胞を検出し得た15症例のHLAおよび特異的T細胞が認識するオーバーラップペプチドの領域を示す。黒はCD4陽性T細胞、灰色はCD8陽性T細胞が認識する領域を示す。我々が目指すがんワクチンは被験者のHLAに問わず施行することである。XAGE-1bに対する特異的な反応は先述したようにXAGE-1b全長にわたっており、その中でも抗体、CD4陽性T細胞およびCD8T陽性細胞が認識する主要な領域が存在することを提示してきた。また後述するように今回数種のHLAに拘束されるエピトープペプチドの同定に成功したわけであるが、図14に示すようにヒトのHLAは多種多様であり、各HLAに対するエピトープをそれぞれ同定する作業は非常に困難を極める。そのため、図14で示す各対象者のHLAと主要認識領域の対応表は、新規エピトープペプチドの推測に有用である。将来的にはHLAの組み合わせによっては、非常に効率よく特異的な反応を誘導できうる領域が明らかになる可能性がある。
【実施例】
【0116】
図15の(a)はIFN-γ ELISAの結果を表し、8C187-1によるペプチド認識の結果を表している。図15の(a)に示すように、XAGE-1bのアミノ酸配列の45-60位のアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチド45-60)または49-64位のアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチド49-64)を用いてCD8陽性T細胞(8C187-1)を刺激すると、IFN-γの産生がみられた。このことから、症例KLU187から樹立したクローンT細胞(8C187-1)は、XAGE-1bのアミノ酸配列の45-60位および49-64位のアミノ酸配列を認識していることが明らかになった。また、図15の(b)は抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗classI抗体、または抗classII抗体を添加して、IFN-γ ELISAを行った結果を表している。図15の(b)に示すように、このT細胞は、CD8拘束性、classI拘束性にペプチドを認識していることが明らかとなった。
【実施例】
【0117】
さらに、CD8陽性T細胞がどの種類のHLAによって提示されたペプチドを認識しているか検討するために、抗原提示細胞として様々な種類のEBV-B細胞を用い、XAGE-1bのアミノ酸配列の49-64位のアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチド49-64)についてIFN-γ ELISAを行った。結果を図15の(c)に示す。図15の(c)は、HLA-A0206に拘束されるCD8陽性T細胞クローンがこのペプチドを認識することを示す。図15の(c)に示すように、抗原提示細胞として、HLA-A0206を発現するEBV-B細胞(KLU187の自己のEBV-B細胞およびOS-PO7 EBV-B細胞)を用いて、KLU187の抗原特異的CD8陽性T細胞からクローン化したCD8陽性T細胞クローン(8C187-1)を刺激すると、XAGE-1b特異的にIFN-γを産生する細胞が検出された。この結果から、HLA-A0206拘束性のCD8陽性T細胞クローン(8C187-1)は、ペプチド49-64を認識することが明らかになった。
【実施例】
【0118】
さらに、ペプチド45-60および49-64について、HLA-A0206拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞によって認識される最小エピトープ領域を決定するため、図16に示す種々のペプチド(48-61、49-61,50-61、51-61、52-61、53-61、49-64、48-61、48-60、48-59、48-58、48-57および48-56)を合成し、IFN-γ ELISAを行った。
【実施例】
【0119】
結果を図16に示す。図16は、HLA-A0206拘束性のCD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。図16の(a)および(b)に示すように、IFN-γ ELISAの結果から、CD8陽性T細胞によって認識される最小エピトープは11個のアミノ酸からなることが予想された。
【実施例】
【0120】
血清中にはタンパク質分解酵素等が含まれているため、血清に含まれる様々な成分や酵素によってペプチドが修飾を受けることが考えられる。そこで、血清非存在下においても同様の検討を行った。IFN-γ ELISAの条件は、以下のとおりである:
KLU187 CD8(8C187-1) 1×10
ペプチド:XAGE-1bペプチド 各1μM。
【実施例】
【0121】
IFN-γ ELISAの結果を図32に示す。図32の(b)に示すように、タンパク分解酵素などを含まない血清非存在下(AIM-V)においてもP50-60が最も反応することから、エピトープ領域はやはりXAGE-1bのアミノ酸配列の50位-60位であることが明らかになった。また、図32の(a)に示す結果では、血清存在下(5%PS/AIM-V)においては、あたかもエピトープがP50-61であるかのように思われるが、血清非存在下ではP50-61の反応は低下した。一方、血清非存在下においてもP50-60の反応は有意であった。この結果から、XAGE-1bのアミノ酸配列の50位-60位(配列番号17)がエピトープであろうと推測された。
【実施例】
【0122】
さらに、HLA-A0206に提示されるエピトープ領域を決定するために、HLA-A0206とHLA-Cw0102とのみを共有する非自己の抗原提示細胞(Mi-EBV-B)を用いて、IFN-γ ELISAを行った。血清非存在下ではT細胞の反応が低下することが考えられた。このため、T細胞の活性を維持するために、AIM-V培地にはIL—2を添加した。IFN-γ ELISAの条件は、以下のとおりである:
KLU187 CD8(8C187-1) 1×10
ペプチド:XAGE-1bペプチド 各1μM。
【実施例】
【0123】
IFN-γ ELISAの結果を図33に示す。図33に示すように、P50-60を用いて刺激するとIFN-γが産生されることから、このCD8陽性T細胞クローンはHLA-A0206上に提示されたP50-60を認識していると判断できる。図15の(c)に示したように、このCD8陽性T細胞クローンは、(Okazaki EBV-B)HLA-Cw0102によって提示されるペプチドは認識しないことが明らかになっている。このため、HLA-A0206とHLA-Cw0102とのみを共有する抗原提示細胞(Mi-EBV-B)において、CD8陽性T細胞クローンが認識しているのは、HLA-A0206によって提示されたペプチドであると証明することができた。
【実施例】
【0124】
後述する図18示すように、一般的にCD8陽性T細胞に認識されるペプチドは、9個のアミノ酸からなるものが多い。そこで、XAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位のアミノ酸を含む9~12個のアミノ酸からなるペプチド(P50-61、P50-60、P51-61およびP51-60)を作製し、XAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位の11個のアミノ酸配列が真に最小エピトープであるかを確認した。IFN-γ ELISAの結果を図16の(c)に示す。
【実施例】
【0125】
図16の(c)に示すように、血清非存在下において、XAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位(配列番号17)を含むペプチドによってCD8陽性T細胞を刺激すると、ペプチドの濃度依存的にIFN-γ産生量が増加することが明らかになった。また、XAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位のアミノ酸配列を有するペプチドによってCD8陽性T細胞を刺激した場合は、XAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位のアミノ酸配列を有するペプチドによってCD8陽性T細胞を刺激した場合と比較して、IFN-γ産生に与える効果が顕著であった。ペプチドが低濃度であってもCD8陽性T細胞の反応が維持されることから、HLA-A0206によって提示されるペプチドは、XAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位の11個のアミノ酸配列であることが明らかになった。
【実施例】
【0126】
さらに、KLU187の抗原特異的T細胞からクローン化した別のT細胞クローン(8C187-2)の、CD8拘束性、classI拘束性を確認したのち、同様の手法で最小エピトープを決定した。
【実施例】
【0127】
図17は、ペプチド45-60およびペプチド49-64がHLA-Cw0102拘束性のCD8陽性T細胞クローン(8C187-2)によって認識されるペプチドであることを示す図である。図17の(a)はIFN-γ ELISAの結果を表し、8C187-2によるペプチド認識の結果を表している。図17の(b)は抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗classI抗体、または抗classII抗体を添加して、IFN-γ ELISAを行った結果を表している。図17の(c)は、HLA-Cw0102に拘束されるCD8陽性T細胞クローンがこのペプチドを認識することを表している。
【実施例】
【0128】
図17に示すように、抗原提示細胞として、HLA-Cw0102を発現するEBV-B細胞を用いて、KLU187からクローン化したCD8陽性T細胞クローン(8C187-2)を刺激すると、XAGE-1b特異的なIFN-γの産生が検出された。この結果から、HLA-Cw0102拘束性のCD8陽性T細胞クローン(8C187-2)は、ペプチド49-64を認識することが明らかになった。
【実施例】
【0129】
さらに、HLA-Cw0102拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞クローン(8C187-2)によって認識される最小エピトープ領域を決定するため、図18に示す数種類のペプチド(50-61、51-61、52-61、50-60、50-59および50-58)を合成し、IFN-γ ELISAを行った。
【実施例】
【0130】
結果を図18に示す。図18は、HLA-Cw0102拘束性のCD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1b領域を示す図である。図18の(c)はCD8陽性T細胞によって産生されるIFN-γ量がペプチドの濃度依存的に増加することを示す図である。
【実施例】
【0131】
HLA-Cw0102拘束性のT細胞が認識するXAGE-1bペプチド領域は、XAGE-1bのアミノ酸配列の51-59位(配列番号18)であることが予想された。しかし、P51-61に対するCD8陽性T細胞の反応が非常に強いことから、HLA-A0206とHLA-Cw0102とのみを共有する抗原提示細胞(Mi-EBV-B)を用いて、図18の(c)に示す4種類のペプチド(51-61、51-60、51-59および50-59)の濃度によるCD8陽性T細胞クローンの反応を調べた。IFN-γ ELISAの結果を図18の(c)に示す。
【実施例】
【0132】
図18の(c)に示すように、HLA-Cw0102拘束性のペプチドの最小単位であるP51-59を含み、且つC末端のアミノ酸を追加したP51-60またはP51-61を用いて刺激した場合は、P51-59によって刺激した場合と同様、ペプチドの濃度依存的にIFN-γ産生量が増加することが明らかになった。このことから、HLA-Cw0102によって提示される最小エピトープは、XAGE-1bのアミノ酸配列の51-59位(配列番号18)であることが証明された。HLA-Cw0102によって提示されるペプチド領域は複数個存在するが、コアになる部分はXAGE-1bのアミノ酸配列の50位のアミノ酸を含まない51-59位のアミノ酸配列(配列番号18)であると考えられた。
【実施例】
【0133】
図19は、ペプチド21-36がT細胞クローン(8C187-4)によって認識されるペプチドであることを示す図である。図19の(a)はIFN-γ ELISAの結果を表し、8C187-4によるペプチド認識の結果を表している。図19の(b)は抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗classI抗体、または抗classII抗体を添加して、IFN-γ ELISAを行った結果を表している。図19の(c)は、HLA-B3501に拘束されるCD8陽性T細胞クローンがこのペプチドを認識することを表している。
【実施例】
【0134】
図19の(b)はKLU187の抗原特異的T細胞からクローン化した別のT細胞クローン(8C187-4)の、CD8、classI拘束性を確認したのち同様の手法で最小エピトープを決定した。図19の(c)に示すように、抗原提示細胞として、HLA-B3501を発現するEBV-B細胞を用いて、KLU187からクローン化したCD8陽性T細胞クローン(8C187-4)を刺激すると、XAGE-1b特異的なIFN-γの産生が検出された。この結果から、HLA-B3501拘束性のCD8陽性T細胞クローン(8C187-4)は、ペプチド21-36を認識することが明らかになった。
【実施例】
【0135】
さらに、HLA-B3501拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞クローン(8C187-4)によって認識される最小エピトープ領域を決定するため、図20に示す複数のペプチド(17-32、21-36、17-31、18-31、19-31、20-31、21-31、21-30、21-29および22-32)を合成し、IFN-γ ELISAを行った。
【実施例】
【0136】
結果を図20に示す。HLA-B3501拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞クローン(8C187-4)によって認識される最小エピトープ領域は、XAGE-1bのアミノ酸配列の21位-29位であることを同定した。
【実施例】
【0137】
図21は、ペプチド21-36がT細胞クローン(8C237-22)によって認識されるペプチドであることを示す図である。図21の(a)はIFN-γ ELISAの結果を表し、8C237-22によるペプチド認識の結果を表している。図21の(b)は抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗classI抗体、または抗classII抗体を添加して、IFN-γ ELISAを行った結果を表している。図21の(c)は、HLA-B4002に拘束されるCD8陽性T細胞クローンがこのペプチドを認識することを表している。
【実施例】
【0138】
図21の(b)は、KLU237の抗原特異的T細胞からクローン化した別のT細胞クローン(8C237-22)の、CD8拘束性、classI拘束性を確認したのちに、同様の手法で最小エピトープを決定した。図21の(c)に示すように、抗原提示細胞として、HLA-B4002を発現するEBV-B細胞を用いて、KLU187からクローン化したCD8陽性T細胞クローン(8C237-22)を刺激すると、XAGE-1b特異的なIFN-γの産生が検出された。この結果から、HLA-B4002拘束性のCD8陽性T細胞クローン(8C237-22)は、ペプチド21-36を認識することが明らかになった。
【実施例】
【0139】
さらに、HLA-B4002拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞クローン(8C237-22)によって認識される最小エピトープ領域を決定するため、図22に示す数類のペプチド(17-32、21-36、17-31、18-31、19-31、20-31、21-31、21-30、21-29および22-32)を合成し、IFN-γ ELISAを行った。
【実施例】
【0140】
結果を図22に示す。HLA-B4002拘束性のXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞クローン(8C237-22)によって認識される最小エピトープ領域は、XAGE-1bのアミノ酸配列の21位-29位(配列番号15)であることを同定した。
【実施例】
【0141】
図23は、樹立したXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞(4C187-1)は、XAGE-1bタンパク質、XAGE-1bプラスミドDNAをトランスフェクトした293T細胞のライセートおよび自己肺癌組織のライセートのそれぞれを貪食させた自己樹状細胞を用いて刺激した結果、抗原特異的IFN-γ産生反応を示したことを示す。
【実施例】
【0142】
図24は、HLA-B35拘束性のCD8陽性T細胞クローン(8C187-4)は、XAGE-1bタンパク質、5種類の25merのXAGE-1bオーバーラップペプチド(具体的なアミノ酸配列は図26を参照)を貪食させた自己樹状細胞で刺激した結果、抗原特異的IFN-γ産生反応を示したことを示す。また、25merの長鎖ペプチドを用いることによって樹立したT細胞が反応しうることを証明したことは、のちに解説する長鎖ペプチドの有用性を証明している。また図24の(b)は、8C187-4は、XAGE-1bのプラスミドDNAをトランスフェクトしたB3501陽性の腫瘍細胞を特異的に認識していることを示す。
【実施例】
【0143】
図24に示すように、抗XAGE-1b抗体陽性患者より得られたT細胞が自然エピトープペプチドを認識し、抗原陽性の腫瘍細胞に特異的な細胞傷害活性を有することが明らかになった。このことは、XAGE-1bが強い免疫原性を有し、非小細胞肺癌患者において、XAGE-1bを標的としたがんワクチン療法が有用であることを示唆している。
【実施例】
【0144】
XAGE-1b特異的CD8陽性クローンT細胞の誘導は、世界的にも誰も成功しておらず、本発明者等が初めて成功した。また、XAGE-1b特異的CD8陽性T細胞が認識するペプチド領域も明らかではなかったが、本発明によって初めて明らかになった。
【実施例】
【0145】
さらに、XAGE-1bに対する特異的免疫反応の誘導するために必要とされる抗原とCD8陽性T細胞との反応時間について検討した。図25は、抗原と細胞との反応時間に応じた、XAGE-1bに対する特異的免疫反応の誘導を示す図である。図25の(a)はIL-2およびIL-7存在下、(b)および(c)はIL-7およびIL-15存在下における結果を表している。また、(b)はXAGE-1bオーバーラップペプチドによって刺激したEBV-B細胞と共培養8時間後に、XAGE-1b特異的にIFN-γを産生するCD8陽性T細胞が誘導されることを示す図である。(c)は抗原特異的T細胞クローンにおいても同様に8時間の共培養で反応が得られたことを示す。図25の(a)~(c)のそれぞれのIFN-γ ELISAの条件は、以下のとおりである:
図25の(a)
Effector:KLU187 CD8 1×10
Target:KLU187 EBV-B(自己) 2×10
ペプチド:XAGE-1bオーバーラップペプチド 1μg/ml
3回刺激培養後(IVS×3)
図25の(b)
Effector:KLU187 CD8 1×10
Target:KLU187 EBV-B(自己) 1×10
ペプチド:XAGE-1bオーバーラップペプチド 1μg/ml
図25の(c)
Effector:KLU187 CD8クローン 8C187-1 1×10
Target:KLU187 EBV-B(自己) 2×10
ペプチド:XAGE-1bオーバーラップペプチド 1μg/ml
3回刺激培養後(IVS×3)。
【実施例】
【0146】
図25に示すように、IL-15を添加することによってCD8陽性T細胞をさらに活性化したり抗原提示能力を増強したりしたとしても、ワクチン未施行のがん患者においてXAGE-1b特異的な細胞免疫を誘導するには、抗原とCD8陽性T細胞との反応時間を8時間程度に設定する必要があることが明らかになった。
【実施例】
【0147】
公知のCT抗原であるNY-ESO-1についても、刺激培養後のCD8陽性T細胞と同数のNY-ESO-1オーバーラップペプチドでパルスあるいは非パルスの自己のEBV-B細胞とを、37℃で4時間、COインキュベーター内で反応させてIFN-γキャッチアッセイを行い、NY-ESO-1特異的CD4陽性T細胞またはCD8陽性T細胞の検出が可能であることを確認した(図示しない)。
【実施例】
【0148】
このような抗原とCD8陽性T細胞との反応時間の違いは、ペプチドの構造やXAGE-1bの抗原性など様々な要因が推測されるが、種々のがん抗原に対するT細胞の反応機序の違いも考えられる。
【実施例】
【0149】
<まとめ>
〔結論〕
〔1:液性免疫反応〕
非小細胞肺癌患者200例について、がん精巣抗原の一つであるXAGE-1bに対する免疫反応を詳細に検討した。その結果、
(1):非小細胞肺癌全体で20/200(10.0%)に抗体陽性例が認められた.
(2):stage3B/4の進行期肺腺癌に限定すると13/69(18.8%)と高い頻度で抗体陽性例が認められた.
(3):比較検討のためにNY-ESO-1に対する抗体反応を検討した結果、肺癌全体で6.7%、stage3/4の非小細胞肺癌では9.7%が抗体陽性であった.
(4):以上より、XAGE-1bに対する抗体反応陽性率は、CT抗原の中でも高い免疫原性を有し、すでにワクチンの標的抗原として臨床試験も行われているNY-ESO-1に対する抗体陽性率と比較できるものであり、肺癌患者に対するワクチンの標的抗原の候補となり得ることが判明した.
(5):抗体が認識する部位は、XAGE-1bのアミノ酸配列の21-48位(配列番号2)、57—72位(配列番号7)、65-81位(配列番号8)の3領域であることを明らかにした.
(6):さらに抗体検出感度を上げることにより、肺癌診断に応用可能である。
【実施例】
【0150】
〔2:細胞性免疫反応〕
XAGE-1b特異的なCD4陽性T細胞、およびCD8陽性T細胞の免疫反応をさらに検討した結果、
(1):血清抗体価陽性患者16名の検討で、14名(87.5%)でXAGE-1b特異的CD4陽性T細胞の検出に成功した.
(2):特異的な反応が見られた、CD4陽性T細胞が認識する部位は、CD4が認識する領域は、XAGE-1bのアミノ酸配列の13-36位(配列番号9)、29-48位(配列番号12)、53-68位(配列番号13)であり、さらに主要な部位は13-28位(配列番号10)および33-48位(配列番号6)であることを明らかにした.
(3):さらにXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞の誘導にも成功し、その検出法を確立した.
(4):血清抗体価陽性患者6例の検討で、4例(66.7%)でXAGE-1b特異的CD8陽性T細胞の検出に成功した.
(5):特異的CD8陽性T細胞が認識するHLA-A0206拘束性のエピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位(配列番号17)であり、HLA-Cw0102拘束性のエピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の51-59位(配列番号18)であることを明らかにした。また、特異的CD8陽性T細胞が認識するHLA-B3501拘束性のエピトープ領域および特異的CD8陽性T細胞が認識するHLA-B4002拘束性のエピトープ領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の21-29位(配列番号15)であることを明らかにした.
(6):特異的CD8陽性T細胞が認識するエピトープ領域を同定したことは、これらの領域を含むペプチドは、がん・ペプチドワクチンの候補となり、より効率に細胞傷害性T細胞を誘導出来得る。
【実施例】
【0151】
〔考察〕
本発明において、
(1):肺癌患者におけるXAGE-1bに対する特異的な液性、細胞性免疫応答を確認した.
(2):XAGE-1b抗体陽性例は非小細胞肺癌全体で20/200例(10.0%)、進行期(Stage3B/4)肺腺癌に限れば13/69例(18.8%)で液性免疫が誘導されている.
(3):抗XAGE-1b抗体の認識部位は、XAGE-1bのアミノ酸配列の21-48位(配列番号2)、57-72位(配列番号7)、65-81位(配列番号8)の3領域であった.
(4):XAGE-1bに対する特異的CD4陽性T細胞は14/16例(87.5%)で誘導され、CD4陽性T細胞が認識する部位は、XAGE-1bのアミノ酸配列の13-36位(配列番号9)、29-48位(配列番号12)、53-68位(配列番号13)であり、さらに主要な部位は13-28位(配列番号10)および33-48位(配列番号6)である.
(5)XAGE-1bに対する特異的CD8陽性T細胞は4/6例(66.7%)で誘導され、CD8が認識する領域は、XAGE-1bのアミノ酸配列の9-24位(配列番号14)、21-36位(配列番号3)、29-44位(配列番号5)、49-64位(配列番号16)である.
(6):特異的CD8陽性T細胞の反応はNY-ESO-1などと比べ、反応時間を要し、従来の検出法では困難を要する.
(7):XAGE-1bに対するHLA-A0206拘束性の特異的CD8陽性T細胞が認識するペプチド領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位(配列番号17)である.
(8):XAGE-1bに対するHLA-Cw0102拘束性の特異的CD8陽性T細胞が認識するペプチド領域はXAGE-1bのアミノ酸配列の51-59位(配列番号18)である.
(9):XAGE-1bに対するHLA-B3501拘束性の特異的CD8陽性T細胞およびXAGE-1bに対するHLA-B4002拘束性の特異的CD8陽性T細胞が認識するペプチド領域は、XAGE-1bのアミノ酸配列の21-29位(配列番号15)である.
(10):XAGE-1b特異的抗体が認識する部位を明らかにしたことは、肺癌診断に応用可能である.
(11):XAGE-1b特異的CD4陽性およびCD8陽性T細胞が認識する領域を明らかにしたことは、同領域を含むペプチドが、がんワクチン療法のペプチド(抗原)候補となる.
(12):XAGE-1b特異的CD8陽性T細胞が認識する領域を明らかにしたことは、同部位が細胞傷害性T細胞を誘導できうる免疫原生の強いペプチドであり、がんワクチン療法を含む、がん治療に応用可能である。
【実施例】
【0152】
〔実施例2〕
実施例2では、XAGE-1bの長鎖ペプチドを作製した。図26は、XAGE-1bの長鎖ペプチドのアミノ酸配列を示す図である。図26に示すように、実施例2で作製したXAGE-1bの長鎖ペプチドは、81個のアミノ酸からなるXAGE-1bの全長をカバーするように設計された、25個のアミノ酸からなる以下の5種類のペプチドである.
ペプチド1-25(配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)
ペプチド15-39(配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)
ペプチド29-53(配列番号21に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)
ペプチド43-67(配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)
ペプチド57-81(配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるペプチド)。
【実施例】
【0153】
ここで、XAGE-1bと同じがん精巣抗原であるNY-ESO-1を標的としたペプチドワクチンの解析結果を示す。
【実施例】
【0154】
NY-ESO-1ワクチンに関しては、タンパク質(NY-ESO-1全長ペプチド)ワクチンが既に施行されている。しかし、NY-ESO-1のタンパク質ワクチンは、
(i)非常にコストがかかる、
(ii)タンパク質は非常に大きな物質であるので、適切なアジュバント(免疫賦活剤)を使用しなければ抗原提示細胞に貪食されにくい、および
(iii)外来物質であるため、CD8陽性T細胞に対して充分に抗原提示されにくい(MHC classIを介して抗原提示されにくい)、
と予想される。そこで、現在は、NY-ESO-1タンパク質の免疫原性の高い部位(特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞が認識している頻度が高い部位)を予測して、その部位を含む長鎖ペプチドのワクチン(NY-SO-1fペプチドワクチン)が施行されている。
【実施例】
【0155】
しかし、fペプチド(20個のアミノ酸からなる長鎖ペプチド)をワクチンとして使用する場合に、
(A)fペプチドが抗原提示され得るのか、および
(B)fペプチドワクチンはタンパク質ワクチンと同じ効果を奏するのか、
は不明であった。
【実施例】
【0156】
そこで、まず、上記(A)に関して検討を行った。具体的には、ヒト単球白血病株であるU937を用い、20ng/mlのPMAを用いてプライミングしたU937を、FAMTMをコンジュゲイトしたNY-ESO-1fペプチドを用いて培養した。U937におけるNY-ESO-1fペプチドの局在は、蛍光色素であるFAMTMの蛍光を観察することによって確認した。
【実施例】
【0157】
結果を図27に示す。図27は、NY-ESO-1fペプチドが、抗原提示細胞(U937)に取り込まれたことを示す図である。図27のWGA(Wheat Germ Agglutini)は、細胞膜が染色されていることを示す。
【実施例】
【0158】
図27に示すように、培養3時間後に、NY-ESO-1fペプチドが細胞に取り込まれていることが確認された。この結果から、NY-ESO-1タンパク質(NY-ESO-1全長ペプチド)よりも短いNY-ESO-1fペプチド(20アミノ酸)は、抗原提示細胞に取り込まれ得ることが明らかになった。
【実施例】
【0159】
また、NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIIによって抗原提示されることが確認された(図28)。具体的には、NY-ESO-1特異的CD4陽性T細胞クローン(E-8A1)について、抗原提示細胞として自己EBV-B細胞を用いて、ペプチドNY-ESO-1fペプチド存在下において、4℃または37℃の温度条件下でIFN-γ ELISAを行った。
【実施例】
【0160】
図28は、NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIIによって抗原提示されることを示す図である。図28の横軸の「E/T ratio」は、Effector(T細胞)とTarget(EBV-B細胞)の共培養比率を表している。図28に示すように、MHC classIIによるNY-ESO-1fペプチドの提示は、温度の影響を受けることも明らかになった。この結果は、NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIIによって抗原提示されるが、NY-ESO-1fペプチドの取込みが低温によって阻害されることによって、CD4陽性T細胞に対する反応が低下することを示している。
【実施例】
【0161】
さらに、NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIによっても抗原提示される、すなわちクロスプレゼンテーションされることが確認された(図29)。具体的には、1μMのNY-ESO-192-100短鎖ペプチド、1μMのNY-ESO-191-110fペプチドまたは10μg/mlの組換えタンパク質を含有している無血清AIM-V培地中で、10μMのサイトカラシンBの存在下または非存在下において、樹状細胞(5×10個/ml)を培養し、抗原をパルスした。細胞を洗浄した後に、CD8陽性T細胞クローン(TK-f01 2H10)(5×10個)を、それぞれの抗原でパルスした樹状細胞(5×10個)と37℃において24時間、共培養した。抗原刺激によるIFN-γの産生量はELISAによって測定した。
【実施例】
【0162】
図29は、NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIによって抗原提示されることを示す図である。図29に示すように、MHC classIによるNY-ESO-1fペプチドの提示は、サイトカラシンBの影響を受けることも明らかになった。この結果は、NY-ESO-1fペプチドは、MHC classIによって抗原提示されるが、NY-ESO-1fペプチドの取込みがサイトカラシンBによって阻害されることによって、CD8陽性T細胞に対する反応が低下することを示している。
【実施例】
【0163】
外来抗原(タンパク質およびペプチド)が抗原提示細胞に取り込まれた場合は、基本的にMHC classII経路(CD4陽性T細胞の誘導に関与する経路)を介して抗原提示される。これに対して、MHC classI経路(CD8陽性T細胞の誘導に関与する経路)は内在性抗原を抗原提示するための経路である。しかし、外来抗原がMHC classI経路を介して抗原提示される場合がある。これは、クロスプレゼンテーションとして知られている。
【実施例】
【0164】
NY-ESO-1のfペプチド(長鎖ペプチド)は、抗原提示細胞に取り込まれ、外来抗原を抗原提示するための本来の経路であるMHC classII経路を介してCD4陽性T細胞を活性化し得、MHC classI経路を介してクロスプレゼンテーションされてCD8陽性T細胞を活性化し得ることが確認された。また、図29の結果は、適切なアジュバントを使用しなければ、タンパク質は、クロスプレゼンテーションによってCD8陽性T細胞を充分に誘導できないことを示唆している。これらの結果は、長鎖ペプチドが、ワクチンとしてタンパク質と同様の機能を有することを証明するものである。
【実施例】
【0165】
尚、短鎖ペプチドワクチン(MHC classI経路の場合、最小エピトープは、およそ9個~11個のアミノ酸からなる。例えば、東京大学、中村祐輔教授指導のワクチンなど)は、被験体のHLAの種類に制限される。これに対して、タンパク質ワクチンは、抗原全長をカバーするので被験体のHLAの種類を問わない。
【実施例】
【0166】
具体的に説明すると、短鎖ペプチドワクチンは、特定のHLAに拘束されるペプチドを使用するため、それ以外のHLA拘束性のT細胞は基本的には認識できない。例えば、XAGE-1bの場合、HLA-Cw0102拘束性のエピトープペプチドはXAGE-1bのアミノ酸配列の51-59位に対応するアミノ酸配列を有するペプチド(配列番号18で表される9個のアミノ酸からなるペプチド)である。しかし、この短鎖ペプチドワクチンは、HLA-Cw0102拘束性の免疫を誘導することはできるが、HLA-A0206拘束性の免疫を誘導することはできない。これは、HLA-A0206拘束性の最小エピトープはXAGE-1bのアミノ酸配列の50-60位に対応するアミノ酸配列を有するペプチド(配列番号17で表される11個のアミノ酸からなるペプチド)であり、配列番号18で表される9個のアミノ酸からなるペプチドでは短すぎるためである。このため、配列番号18で表される9個のアミノ酸からなる短鎖ペプチドのワクチンは、Cw0102というHLAを有する被験体にしか使用できない。
【実施例】
【0167】
一方、例えば、配列番号17で表される11個のアミノ酸からなる短鎖ペプチドワクチンは、HLA-A0206拘束性の免疫を誘導することができる。さらに、この短鎖ペプチドワクチンは、抗原提示細胞に取り込まれ、適切に処理されて、HLA-Cw0102拘束性の免疫をも誘導し得る。つまり、特異的CD4陽性T細胞または特異的CD8陽性T細胞がそれぞれ認識する部位(可能ならばエピトープペプチド)を同定し、そして認識の頻度を調べることによって、タンパク質ワクチンと同様に被験体のHLAの種類に関係なく、低コストで、且つ有効なワクチンとなり得る長鎖ペプチドを作製することができる。
【実施例】
【0168】
図13に示したように、XAGE-1bの解析では、特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞によって認識されるXAGE-1bの部位には特異性がある傾向が認められるものの、特異的抗体、特異的CD4陽性T細胞、または特異的CD8陽性T細胞が認識する部位は、XAGE-1bの全長にわたって存在する。このため、XAGE-1bの全長をカバーするように、複数の長鎖ペプチドを組み合わせて投与することによって、被験体のHLAの種類を問わずXAGE-1bワクチンを施行し得ると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明は、がんの検査または診断、がん予防またはがん治療などに利用され得るものであり、がんを対象とした医学、医療の発展に寄与するだけでなく、臨床検査薬産業、試薬産業等において利用することができる。
図面
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【図3】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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