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明細書 :無線受信装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5626688号 (P5626688)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
発明の名称または考案の名称 無線受信装置
国際特許分類 H04B   7/10        (2006.01)
H04B   7/08        (2006.01)
H01Q   3/46        (2006.01)
FI H04B 7/10 A
H04B 7/08 D
H01Q 3/46
請求項の数または発明の数 8
全頁数 21
出願番号 特願2011-526779 (P2011-526779)
出願日 平成22年8月11日(2010.8.11)
国際出願番号 PCT/JP2010/063620
国際公開番号 WO2011/019051
国際公開日 平成23年2月17日(2011.2.17)
優先権出願番号 2009187714
優先日 平成21年8月13日(2009.8.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年8月2日(2013.8.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】岡田 実
【氏名】塚本 悟司
個別代理人の代理人 【識別番号】100101454、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 卓二
【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100125874、【弁理士】、【氏名又は名称】川端 純市
審査官 【審査官】石田 昌敏
参考文献・文献 特開2001-028561(JP,A)
特開2000-209140(JP,A)
特開平11-205026(JP,A)
特開2005-062040(JP,A)
特開2004-101522(JP,A)
特開2007-288547(JP,A)
調査した分野 H04B 7/02- 7/12
H01Q 3/00- 3/46
特許請求の範囲 【請求項1】
所定のサブキャリア周波数間隔で並置された複数のサブキャリア信号を含む直交周波数分割多重方式の無線信号を一個の無線受信回路を用いて受信する無線受信装置であって、
上記無線信号を受信するアレーアンテナと、
上記受信された無線信号に依存せず非同期でかつ、上記サブキャリア周波数間隔に実質的に一致する制御周波数、もしくは上記サブキャリア周波数間隔の2以上の自然数倍の制御周波数で上記アレーアンテナの指向性を変化させる指向性変化手段と、
上記指向性が変化するアレーアンテナにより受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、上記指向性が変化することにより発生するサブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する復調手段とを備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
上記アレーアンテナは、給電素子と、上記給電素子と電磁的に結合するように設けられた少なくとも1本の無給電素子と、上記無給電素子に装荷された可変リアクタンス素子とを備え、
上記指向性変化手段は、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする請求項1記載の無線受信装置。
【請求項3】
上記アレーアンテナは、互いに所定の距離だけ離隔するように設けられた複数のアンテナ素子を備え、
上記指向性変化手段は、上記複数のアンテナ素子で受信された各無線信号の位相を互いに相対的に移相することにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする請求項1記載の無線受信装置。
【請求項4】
所定のサブキャリア周波数間隔で並置された複数のサブキャリア信号を含む直交周波数分割多重方式の無線信号を一個の無線受信回路を用いて受信する無線受信装置のチャネル等化方法であって、
上記無線受信装置は、上記無線信号を受信するアレーアンテナを備え、
上記チャネル等化方法は、上記受信された無線信号に依存せず非同期でかつ、上記サブキャリア周波数間隔に実質的に一致する制御周波数、もしくは上記サブキャリア周波数間隔の2以上の自然数倍の制御周波数で上記アレーアンテナの指向性を変化させながら、上記指向性が変化するアレーアンテナにより受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、上記指向性が変化することにより発生するサブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する等化ステップを含むことを特徴とする無線受信装置のチャネル等化方法。
【請求項5】
上記アレーアンテナは、給電素子と、上記給電素子と電磁的に結合するように設けられた少なくとも1本の無給電素子と、上記無給電素子に装荷された可変リアクタンス素子とを備え、
上記等化ステップは、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする請求項記載の無線受信装置のチャネル等化方法
【請求項6】
上記アレーアンテナは、互いに所定の距離だけ離隔するように設けられた複数のアンテナ素子を備え、
上記等化ステップは、上記複数のアンテナ素子で受信された各無線信号の位相を互いに相対的に移相することにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする請求項記載の無線受信装置のチャネル等化方法
【請求項7】
所定のサブキャリア周波数間隔で並置された複数のサブキャリア信号を含む直交周波数分割多重方式の無線信号を一個の無線受信回路を用いて受信する無線受信装置であって、
上記無線信号を受信する第1のアンテナ素子と、
上記第1のアンテナ素子と電磁的に結合するように設けられた第2のアンテナ素子と、
上記第2のアンテナ素子に装荷された可変リアクタンス素子と、
上記受信された無線信号に依存せず非同期でかつ、上記サブキャリア周波数間隔に実質的に一致する制御周波数、もしくは上記サブキャリア周波数間隔の2以上の自然数倍の制御周波数で上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記第1のアンテナの指向性を変化させる指向性変化手段と、
上記指向性が変化する第1のアンテナ素子により受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、上記指向性が変化することにより新たに発生するサブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する復調手段とを備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項8】
所定のサブキャリア周波数間隔で並置された複数のサブキャリア信号を含む直交周波数分割多重方式の無線信号を一個の無線受信回路を用いて受信する無線受信装置のチャネル等化方法であって、
上記無線受信装置は、
上記無線信号を受信する第1のアンテナ素子と、
上記第1のアンテナ素子と電磁的に結合するように設けられた第2のアンテナ素子と、
上記第2のアンテナ素子に装荷された可変リアクタンス素子とを備え、
上記チャネル等化方法は、
上記受信された無線信号に依存せず非同期でかつ、上記サブキャリア周波数間隔に実質的に一致する制御周波数、もしくは上記サブキャリア周波数間隔の2以上の自然数倍の制御周波数で上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記第1のアンテナの指向性を変化させながら、上記指向性が変化する第1のアンテナ素子により受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、上記指向性が変化することにより新たに発生するサブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する等化ステップを含むことを特徴とする無線受信装置のチャネル等化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、直交周波数分割多重方式(以下、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式という。)で送信された無線信号を受信する無線受信装置に関し、特に、マルチパスフェージングにより無線信号レベルが低下することに起因する誤り率特性の劣化を補償することができる無線受信装置とそのチャネル等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、その周波数利用効率の高さとマルチパスによる周波数選択性フェージングへの耐性や遅延波による符号間干渉への耐性から移動通信においてOFDM方式が広く用いられている。しかし、フェージングによる受信信号強度の低下から生ずる劣化からは逃れられない。最大比合成ダイバーシチはマルチパスによる性能劣化の軽減には効果があるが、空間ダイバーシチの効果を最大限に得るためには、RF受信回路、A/D変換器、離散フーリエ変換(DFT(Discrete Fourier Transform))回路などがそれぞれのアンテナに必要となり回路規模の増加が避けられない。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2004-096140号公報。
【特許文献2】特開2009-141740号公報
【特許文献3】特開2007-228248号公報。
【0004】

【非特許文献1】K. Gyoda et al. "Design of electronically steerable passive array radiator (ESPAR) antennas", Proceedings of Antennas and Propagation Society International Symposium, Salt Lake City, Utah, U.S.A., Vol.2, pp.922-925, July 2000.
【非特許文献2】C. Plapous et al., "Reactance domain MUSIC algorithm for electronically steerable parasitic array radiator", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol.52, Issue 12, pp.3257-3264, December 2004.
【非特許文献3】E. Taillefer et al., "Reactance-domain ESPRIT algorithm for a hexagonally shaped seven-element ESPAR antenna", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol.53, Issues 11, pp.3486-3495, November 2005.
【非特許文献4】J. G. Proakis et al., "Digital Communications", Fourth Edition, McGraw-Hill, Singapore, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図17は従来技術に係るESPARアンテナ(Electronically Steerable Passive Array Radiator)アンテナ(以下、エスパアンテナという。例えば、非特許文献1参照。)60の構成を示すブロック図である。図17において、エスパアンテナ60は1本の給電素子61と例えば6本の無給電素子62~67と、接地導体68とを備えて構成され、各無給電素子62~67の一端にそれぞれ電気長を変化させる可変容量ダイオード72~77が接続される。給電素子61の長さは1/4波長であり、各無給電素子62~67の電気長を変化させることにより、電波の到来方向に対して給電素子61の前後にある無給電素子72~77を導波器又は反射器として動作させることで八木宇多アンテナのように指向性を持たせることができる。アンテナ指向性は、可変容量ダイオード72~77に印加するDCバイアス電圧をコントローラ70により変化させることで電気的に自由に可変できる。図17に例示したエスパアンテナでは、水平面内360度の任意の方向に指向性を制御できる。従来技術に係るエスパアンテナは可変容量ダイオード72~77に印加するバイアス電圧を伝搬路の特性に合わせて可変することでアンテナの指向性を適切に制御して空間ダイバーシチ効果を得ている。
【0006】
上述の問題点に対して、上記エスパアンテナを用いた選択ダイバーシチは回路規模の点で有利だが、指向性制御のための演算の収束に時間が掛かるため、高速移動による高速フェージング環境下ではアンテナの指向性制御が追従できない。その上、マルチパス環境による周波数選択性フェージングに対しても、指向性を切り替えても何れかのサブキャリアが常に落ち込むような状況が現実には多く効果が薄い。
【0007】
上記エスパアンテナを用いた無線受信装置において、空間ダイバーシチ効果を得るための適切な指向性を実現するに必要なバイアス電圧はMUSICやESPRITなどのアルゴリズムにより計算できる(例えば、非特許文献2及び3参照。)。しかしながら、アンテナ素子の自由度に比べて一度の受信によって得られる情報が少ないため、収束時間が長くなる傾向が見られ、高速移動により伝搬路の変化が速いと追従性能が問題となる。また、アンテナ素子の自由度が少ない提案方式で使用するのと同じ一つの給電素子61に無給電素子62が一つだけ付いているエスパアンテナでも、常に受信信号強度の強い最適な方向を選び続ける状態を維持できない。これは、単一RF入力なので基本的には選択切り替えダイバーシチ動作になり、この動作では原理的に指向性を切り替えてみないと、それ以前より結果が良くなるか悪くなるかがわからないためである。
【0008】
図18は従来技術に係るダイバーシチ方式による動作を示すタイミングチャートである。図18において、破線はアンテナ素子の切り替えを行う受信信号強度を示すしきい値である。しきい値を下回るとアンテナ素子を切り替えるように制御を行うとすると三角矢印で示すタイミングでアンテナを切り替える。例えば破線で囲んだ部分のように、もう一方のアンテナの方の受信強度が強いにもかかわらず受信強度が弱いアンテナを選択し続けており、最適でないアンテナを選択し続ける場合があることがわかる。その上、移動体無線通信で広く用いられているOFDM方式に適用した場合、この方法では周波数選択性フェージングに対しても効果的でない。これは指向性を制御するための最適な方向、すなわち指向性制御の重み係数が周波数により異なるため、OFDMの全てのサブキャリアに対して最適となる重み係数を一意に決められないことによる。
【0009】
図19及び図20は従来技術に係るOFDM無線受信装置によって互いに異なる2つの指向性で受信したときのOFDM信号のスペクトラム図である。これらの図19及び図20に示すように、どちらの方向にしても落ち込むサブキャリアが存在し全てのサブキャリアに対して最適となる方向を選択することが困難であることがわかる。
【0010】
図21は特許文献1において開示された従来技術に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。図21において、エスパアンテナ10は、給電素子11と、可変容量ダイオード13が装荷された無給電素子12とを備えて構成され、コントローラ55から高周波阻止用インダクタ14を介して可変容量ダイオード13に印加される直流バイアス電圧(以下、制御電圧という。)Vcを変化させることによりエスパアンテナ10の指向性を変化させる。ここで、給電素子11で受信された無線信号はRFフロントエンド回路51に入力された後、低雑音増幅、ベースバンド信号への周波数変換、A/D変換などの処理がなされた後、OFDMベースバンド復調器50に入力される。OFDMベースバンド復調器50は、入力されるデジタル信号に対してFFT52により複数のサブキャリアにフーリエ変換した後、誤り訂正復号器53により誤り訂正することによりデジタル復調信号を得る。特許文献1では、特に、フーリエ変換後の信号に基づいて受信信号品質検出回路54により例えばRSSIなどの受信信号品質を検出し、コントローラ55は例えばRSSIが大きくなるように制御電圧Vcを変化させることにより、マルチパスフェージングにより受信信号レベルが低下することにより起因する誤り率特性の劣化を補償することができる。
【0011】
しかしながら、図21の従来技術に係るOFDM無線受信装置では、測定した受信品質に基づいて指向性をフィードバック制御していたが、制御遅延が大きく、高速に伝搬路特性が変動するフェージング通信路では、その追従性に問題があった、また、無線LANシステムのようなパケット伝送では、非常に短いパケットでデータ伝送が完結しているために、制御による遅延が許容されない。また、マルチパス遅延波の遅延広がりが大きく、周波数選択性のある伝搬路では、時変動が低速で制御遅延が問題とならない状況であっても、誤り訂正符号と組み合わせなければダイバーシチ効果が十分に得られないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、OFDM無線受信装置において、高速フェージング環境下においてアンテナの指向性制御が受信信号に追従でき、サブキャリア間干渉を確実に等化することができる無線受信装置とそのチャネル等化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明に係る無線受信装置は、所定のサブキャリア周波数間隔で並置された複数のサブキャリア信号を含む直交周波数分割多重方式の無線信号を受信する無線受信装置において、
上記無線信号を受信するアレーアンテナと、
第1の自然数を第2の自然数で除算してなる値を上記サブキャリア周波数間隔に乗算して得られる制御周波数で上記アレーアンテナの指向性を変化させる指向性変化手段と、
上記指向性が変化するアレーアンテナにより受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、サブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する復調手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記無線受信装置において、上記指向性変化手段は、上記アレーアンテナにより受信された無線信号に基づいて上記サブキャリア周波数間隔を求め、当該サブキャリア周波数間隔に対して第1の自然数を第2の自然数で除算してなる値を乗算して得られる制御周波数で周波数同期するように上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする。
【0015】
また、上記無線受信装置において、上記アレーアンテナは、給電素子と、上記給電素子と電磁的に結合するように設けられた少なくとも1本の無給電素子と、上記無給電素子に装荷された可変リアクタンス素子とを備え、
上記指向性変化手段は、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする。
【0016】
さらに、上記無線受信装置において、上記アレーアンテナは、互いに所定の距離だけ離隔するように設けられた複数のアンテナ素子を備え、
上記指向性変化手段は、上記複数のアンテナ素子で受信された各無線信号の位相を互いに相対的に移相することにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする。
【0017】
第2の発明に係る無線受信装置のチャネル等化方法は、所定のサブキャリア周波数間隔で並置された複数のサブキャリア信号を含む直交周波数分割多重方式の無線信号を受信する無線受信装置のチャネル等化方法において、
上記無線受信装置は、上記無線信号を受信するアレーアンテナを備え、
上記チャネル等化方法は、第1の自然数を第2の自然数で除算してなる値を上記サブキャリア周波数間隔に乗算して得られる制御周波数で上記アレーアンテナの指向性を変化させながら、上記指向性が変化するアレーアンテナにより受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、サブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する等化ステップを含むことを特徴とする。
【0018】
上記無線受信装置のチャネル等化方法において、上記等化ステップは、上記アレーアンテナにより受信された無線信号に基づいて上記サブキャリア周波数間隔を求め、当該サブキャリア周波数間隔に対して第1の自然数を第2の自然数で除算してなる値を乗算して得られる制御周波数で周波数同期するように上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする。
【0019】
また、上記無線受信装置のチャネル等化方法において、上記アレーアンテナは、給電素子と、上記給電素子と電磁的に結合するように設けられた少なくとも1本の無給電素子と、上記無給電素子に装荷された可変リアクタンス素子とを備え、
上記等化ステップは、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする。
【0020】
さらに、上記無線受信装置のチャネル等化方法において、上記アレーアンテナは、互いに所定の距離だけ離隔するように設けられた複数のアンテナ素子を備え、
上記等化ステップは、上記複数のアンテナ素子で受信された各無線信号の位相を互いに相対的に移相することにより上記アレーアンテナの指向性を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る無線受信装置とそのチャネル等化方法によれば、第1の自然数を第2の自然数で除算してなる値を上記サブキャリア周波数間隔に乗算して得られる制御周波数で上記アレーアンテナの指向性を変化させながら、上記指向性が変化するアレーアンテナにより受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、サブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する。従って、フィードバック制御をしないので上述の指向性ダイバーシチにおける制御遅延の問題は発生しない。また、周波数選択性伝搬路におけるダイバーシチ効果を効果的に得ることができる。それ故、OFDM無線受信装置において、高速フェージング環境下においてアンテナの指向性制御が受信信号変化に十分に追従できた状態と同等の効果が実現でき、サブキャリア間干渉をも確実に等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の変形例に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の変形例に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図1のOFDM無線受信装置で受信した無線受信信号のスペクトラムを示す図である。
【図6】図1のOFDM無線受信装置におけるOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図7】図1のOFDM無線受信装置において周期的プリフィックス(CP:Cyclic Prefix)信号又はガードインターバル(GI:Guard Interval)を挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの1/4の時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fspで4種類の等化ウェイト(E1~E4)を用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図8A】図1のOFDM無線受信装置において周期的プリフィックス(CP:Cyclic Prefix)信号又はガードインターバル(GI:Guard Interval)を挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの1/4の時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fsp×4で1種類の等化ウェイトを用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図8B】図1のOFDM無線受信装置において周期的プリフィックス(CP:Cyclic Prefix)信号又はガードインターバル(GI:Guard Interval)を挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの1/8の時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fsp×4で2種類の等化ウェイトを用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図8C】図1のOFDM無線受信装置において周期的プリフィックス(CP:Cyclic Prefix)信号又はガードインターバル(GI:Guard Interval)を挿入したとき(CP又はGIが1シンボルと同じの時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fsp×1/2で1種類の等化ウェイトを用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図9】図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための第1の例のスペクトル図である。
【図10】図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための第2の例のスペクトル図である。
【図11】図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための第3の例のスペクトル図である。
【図12】図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための第4の例のスペクトル図である。
【図13】図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための第5の例のスペクトル図である。
【図14】図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための第6の例のスペクトル図である。
【図15】図1のOFDM無線受信装置のシミュレーション実行時の諸元を示す表である。
【図16】図1のOFDM無線受信装置のシミュレーション結果であって、加法性白色雑音(AWGN)及びレイリーフェージングにおける1シンボル当たりの送信電力と雑音電力の比E/Eに対するビット誤り率BERを示すグラフである。
【図17】従来技術に係るエスパアンテナの構成を示すブロック図である。
【図18】従来技術に係るダイバーシチ方式による動作を示すタイミングチャートである。
【図19】従来技術に係るOFDM無線受信装置によって第1の指向性で受信したときのOFDM信号のスペクトラム図である。
【図20】従来技術に係るOFDM無線受信装置によって第2の指向性で受信したときのOFDM信号のスペクトラム図である。
【図21】従来技術に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。

【0024】
図1は本発明の第1の実施形態に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るOFDM無線受信装置は、上述の問題を解決した単一RF入力でのエスパアンテナ10を用いた最大比合成ダイバーシチ方式を用いて、OFDM信号のシンボルに周波数同期して指向性を変化しながらチャネル等化器24によりチャネル等化を行うことにより、伝搬路推定とサブキャリア間干渉を軽減して等化することを特徴としている。

【0025】
図1において、受信信号はエスパアンテナ10の給電素子11により受信された低雑音増幅器(LNA)16を介して周波数変換器17に入力されてベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号はA/D変換器18によりデジタル信号に変換された後、OFDMベースバンド復調器20の自動周波数制御器(AFC)21に入力される。

【0026】
エスパアンテナ10は、互いに電磁的に結合するように例えば半波長だけ離隔された給電素子11及び無給電素子12とを備えて構成され、無給電素子12の一端に電気長を変化させる可変容量ダイオード13が接続され、制御電圧発生器15からの制御電圧Vcが高周波阻止用インダクタ14を介して可変容量ダイオード13に印加される。制御電圧Vcの変化により可変容量ダイオード13の容量が変化して無給電素子12の電気長が変化させる。これにより、無給電素子12は導波器又は反射器として動作してエスパアンテナ10の指向性を変化させる。ここで、無給電素子12の本数は複数であってもよく、バイアス電圧を発生して指向性を変化させるコントローラを備えてもよい。図1に例示したエスパアンテナ10では、水平面内0度と180度の方向の指向性、並びに無指向性に制御できる。

【0027】
OFDMベースバンド復調器20は、自動周波数制御器(AFC)21と、ガードインターバル(以下、GIという。)除去器22と、離散フーリエ変換器23と、チャネル等化器24と、位相トラッキング回路25と、サブキャリア復調器26と、デインタリーバ27と誤り訂正復号器28とを備えて構成される。自動周波数制御器21は入力されるデジタルベースバンド信号から受信信号のデータシンボル長を検出して、これより、サブキャリア周波数間隔fspを求めこれを用いてアンテナ指向性の変更周波数(制御信号周波数fcont)を制御して周波数同期させる。ここで、好ましくは、fcont=fspである。なお、制御信号周波数fcontとサブキャリア周波数間隔fspとの関係については詳細後述する。

【0028】
OFDM信号のシンボルには、送信端末側で有効シンボル内の信号成分を部分的に複製した周期的プリフィックス(CP:Cyclic Prefix)信号をGIとして付加することで、マルチパス伝送路で生じる遅延波との干渉で生じるシンボル間干渉を軽減するようにしている。従って、上記データシンボル長とはOFDM信号のシンボルから周期的プリフィックス(CP:Cyclic Prefix)又はGIを取り除いた、離散フーリエ変換器23の入力となるデータ部分の長さである。なお、CP又はGIを考慮した同期方法については詳細後述する。本実施形態では、OFDM信号のシンボルと制御信号とを周波数同期させているが、PLL回路を用いて位相同期(完全同期)させてもよい。これについては、詳細後述する。

【0029】
GI除去器22は自動周波数制御後のデジタルベースバンド信号からGIを除去し、離散フーリエ変換器23はGI除去後のデジタルベースバンド信号をOFDMの各サブキャリア毎の信号にDFT処理を行う。次いで、チャネル等化器24は、DFT処理後の各サブキャリア信号に基づいて、詳細後述するように、各サブキャリア毎にプリアンブル信号に基づく伝搬路推定とサブキャリア間の干渉等化処理を行う。位相トラッキング回路25はチャネル等化後の各サブキャリア信号に対して位相トラッキング処理を行った後、サブキャリア復調器26は各サブキャリア信号毎に復調処理を行い、デインタリーバ27は各サブキャリア信号に基づいて所定のデインタリーバ処理を行う。さらに、誤り訂正復号器28はデインターリーブ処理後の信号に対して例えばビタビ復号方法を用いて誤り訂正復号処理を行った後、復調信号を出力する。

【0030】
以上のように構成されたOFDM無線受信装置においては、エスパアンテナ10の指向性がシンボルタイミングの周期で変化される。図6は図1のOFDM無線受信装置におけるOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。図6の例では、制御信号を正弦波としているが、制御信号は矩形波や三角波でもよい。矩形波や三角波の場合はそのスペクトルからもわかるように両隣のサブキャリアのみならずそれ以外のサブキャリアにも干渉を生じることになるが等化を行うことは可能である。また、実際には可変容量ダイオード13の容量変化はバイアス電圧に対して直線では無いため、単純な正弦波ではなく、この可変容量ダイオード13の特性を考慮して容量を変化として正弦波カーブになるようなバイアス電圧を加えるのが望ましい。この発振周波数は現在の移動体無線通信システムに用いられているほとんどの規格では1MHz以下である。

【0031】
OFDMベースバンド復調器20において、チャネル等化器24は、伝搬路における位相変化や送受信機間での周波数オフセットに対する等化を行う従来の等化器にサブキャリア間干渉対策機能を追加して構成される。この等化処理は、エスパアンテナ10の指向性を変化させることにより伝搬路が高速に変化しているように見えるうえに、サブキャリア間での干渉が生じるので従来の方法のままでは劣化が生じる。この等化処理については詳細後述する。本実施形態に係る無線受信装置の特徴はOFDMのシンボル周期に合わせてエスパアンテナ10の指向性を変化させている点にある。すなわち、アンテナ方向により受信信号強度が異なる条件では、周期的に指向性を変えることで受信無線信号はあたかもAM変調を受けたようにみえる。

【0032】
図5は図1のOFDM無線受信装置で受信した無線受信信号のスペクトラムを示す図である。図5において、シンボル周期で指向性を変化させることにより受信信号では隣のサブキャリアと重なりサブキャリア間干渉が生じる。しかし、本実施形態では、指向性変化による変調を受けても変調周波数(制御信号の制御周波数)がサブキャリア周波数の自然数倍に等しい場合はOFDM直交性が維持されており、特に、1倍に等しい場合は両隣のサブキャリアのみが干渉として含まれことから、この影響はデジタル信号処理により容易に等化することが可能である。また、一般に、第1の自然数nを第2の自然数mで除算してなる値を上記サブキャリア周波数間隔に乗算して得られる制御周波数で制御する場合(制御周波数fcont=(n/m)×fsp(サブキャリア周波数間隔)であり、m=nのときは上記の1倍となる。)もその変調による影響は、制御信号波形が既知であるので計算量の増加を容認すれば等化可能である。一方、本実施形態では、単一RFにもかかわらず指向性切り替えにより、1シンボル周期内で受信信号強度が平均化されるように働くことから選択切り替えダイバーシチと異なり無駄が無いだけでなく、最大比合成のようにどのサブキャリアもダイバーシチ効果を得ることができる。

【0033】
さらに、上述のように、本実施形態によれば、伝搬路に合わせて指向性を制御している訳ではないので伝搬路の変化が速くても追従性能が問題となることはない。すなわち伝搬路変化に対する追従性能としてはダイバーシチを行わない単独の受信機と同等の性能が期待できる。また、計算により最適方向に指向性を制御している訳ではないので、周波数選択性フェージング環境下においても問題なく動作するという特有の効果を有する。

【0034】
次いで、図1のチャネル等化器24において、伝搬路推定とサブキャリア間干渉が等化できることを以下に示す。OFDM信号の全サブキャリアに信号を持つプリアンブル信号を仮定して、この信号のベクトルをPとすると、次式で表される。

【0035】
[数1]
P=[p,p,・・・,pN-1 (1)

【0036】
ここで、pはk番目のサブキャリアのプリアンブルを表す。ここで、FをFFTを行うフーリエ変換行列とすると送信信号pは次式で表される。

【0037】
[数2]
p=F-1P (2)

【0038】
伝搬路によるマルチパスフェージングの影響を受けたi番目素子での受信信号qiは次式で表される。

【0039】
[数3]
=Cp (3)

【0040】
ここで、Cはi番目のアンテナ素子のサイクリックインパルス応答(cyclic impulse response)であって、周波数ドメインでのインパルス応答行列である。本実施形態に係るOFDM無線受信装置によって受信された後、ベースバンドに変換された信号である復調回路への入力信号rは次式で表される。

【0041】
[数4]

=q+Dq+n
=(C+DC)p+n
=(C+DC)F-1P+n (4)

【0042】
ここで、nはノイズであり、Dはアンテナの指向性制御による受信信号変化を表し、サブアンテナの時間kにおける係数dを対角に並べた行列、すなわち次式で表される。

【0043】
[数5]
D=diag(d) (5)
[数6]
u=Fr=(H+GH)P+z (6)

【0044】
ただし、zは周波数領域での熱雑音である。ここでHは次式で表される。

【0045】
[数7]
=FC-1 (7)

【0046】
はi番目のアンテナ素子の周波数インパルス応答を対角要素に持つ行列である。また、Gは次式で表される。

【0047】
[数8]
G=FDF-1 (8)

【0048】
Gはサブキャリア間干渉を表す行列である。ここで、P、hiを対角要素に持つ対角行列Pd及びHiを導入し、次式で表す。

【0049】
[数9]
=diag(P) (9)
[数10]
=diag(h) (10)

【0050】
ここで、若干の劣化を無視して式6を変形すると、次式を得ることができる。

【0051】
[数11]
u=P+GP+z (11)

【0052】
これから、以下の共分散行列Rと相互相関行列Bが得られる

【0053】
[数12]
R=E[uu]=P+GP+σI (12)
[数13]
=E[uh] (13)

【0054】
なお、Rhは次式で表される。

【0055】
[数14]
=E[h] (14)

【0056】
Rhはチャネル応答の共分散行列である。ここで、E[x]はxのアンサンブル平均を表す。さらに、相互相関行列は次式で表される。

【0057】
[数15]
=P (15)
[数16]
=GP (16)

【0058】
従って、チャネル応答はベクトルWを用いて次式で表される。

【0059】
[数17]
=Wu (17)

【0060】
従って、等化ウェイトベクトルWは次式で表される。

【0061】
[数18]
=R-1 (18)

【0062】
これは最小二乗誤差を実現するウェイトとなっており、最大比合成ダイバーシチと同様の効果が得られることがわかる。

【0063】
次に、この結果を用いて伝搬路の等化を行う。ここで、データ部分の受信信号uを次式で表す。

【0064】
[数19]
=Hc+z (19)

【0065】
ただし、次式の通りとする。
[数20]
Hc=Hc+GHc (20)
[数21]
Hc=diag(h) (21)

【0066】
ここで、bを受信信号電力を表す係数とすると、次式の伝搬路等化時の相互相関行列Bを用いて、次式の伝搬路等化時の共分散行列Rを表すことができる。

【0067】
[数22]
=E[u
=bHc (22)

【0068】
[数23]
=E[u
=HcE[dd]Hc+σ
=bHcHc+σI (23)

【0069】
従って、送信された信号の推定値dは次式で表される。

【0070】
[数24]
d=R-1 (24)
[数25]
dc=b(bHcHc+σI)-1・Hc (25)

【0071】
これにより最大比合成による受信が可能である。また、本実施形態に係るOFDM無線受信装置において、干渉は自己のサブキャリアの周辺サブキャリアからの干渉信号であるのでサブキャリア数をフレーム長と見なしてサブキャリアの周波数順に受信信号を並べることでビタビ復号により等化することも可能である。

【0072】
図2は本発明の第1の実施形態の変形例に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。図1のOFDM無線受信装置では、制御信号周波数fcontをサブキャリア周波数間隔fspに一致するように自動周波数制御器21により制御しているが、本発明はこれに限らず、図2に示すように、自動周波数制御を行わなくてもよい。この場合は、制御信号発生器15の制御信号周波数fcontと、送信されるOFDM信号のサブキャリア周波数間隔fspを実質的に一致するように設定し、かつ各発振器の発振周波数精度が極めて高いものを用いることが好ましい。これにより、OFDMのサブキャリア間の干渉を軽減して除去することができる。

【0073】
また、以上の実施形態及びその変形例では、制御信号周波数fcontをOFDMのサブキャリア周波数間隔fspに実質的に一致させている(fc≒fs)が、本発明はこれに限らず、fcont=(n/m)×fsp(ここで、m,nはそれぞれ1以上の整数、すなわち自然数である。)と設定してもよい。

【0074】
無線送信装置での基準周波数の変動や、移動に伴いドップラー効果により生ずる周波数シフトが常に存在するために、送信信号での周波数fspと、制御信号周波数fcontとが同じになり、もしくはfsp×(n/m)=fcontとなるように設定しても、周波数同期を行わない場合には、無線受信装置において受信信号の周波数fspとfcontとが完全に同じになり、もしくは完全にfsp×(n/m)=fcontとはならない場合がある。fsp=fcontの関係、もしくはfsp×(n/m)=fcontの関係における等式関係からずれて、等式では無い関係になるにしたがい、サブキャリア間の直交性が失われてゆくため等化が困難になることで、最終的にはエラー特性の劣化要因となり、本実施形態に係るチャネル等化処理による利得を相殺してしまう。しかし、この劣化が本実施形態に係るチャネル等化処理による利得を上回らない範囲においては、周波数fspとfcontとが一致していなくても、もしくはfsp×(n/m)=fcontでなくても本実施形態に係るチャネル等化処理の効果はある。すなわち、サブキャリア間干渉を完全に等化できなくても実質的に等化できて、当該干渉を大幅に軽減できる。

【0075】
また、等化のためには伝搬路と指向性変化を合わせた影響をプリアンブル信号を用いて計算により求め使用するが、この値は位相が変化させると変わってくる。従って、周波数のずれにより時間の経過と共に位相が変化させることで頻繁にプリアンブル信号を挿入して再計算する必要が生じる要因ともなる。すなわち、位相同期が結果として実現されていない場合にはそのときどきの位相状態に合わせた等化ウェイトを用意して等化しなくてはならない。しかし、これは本発明の必要条件ではないと考えられる。

【0076】
CPやGIが存在する場合は通常その長さはデータ部分の1/4や1/8など整数比なのでこれを除いたデータの開始部分と制御信号の位相関係にはfsp=fcontの場合には4通りの状態又は8通りの状態など複数の状態が存在する。そこでこれに対応した4種類の値又は8種類の値など必要な種類を用意してこれらを切り替えて設定して使う方法で実現できる。
また、データの開始部分と制御信号の位相関係の種類が減るように制御信号の周波数をn倍すれば必要な種類を減らす事ができる。

【0077】
図7は図1のOFDM無線受信装置においてCP又はGIを挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの1/4の時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fspで4種類の等化ウェイト(E1~E4)を用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。また、図8Aは図1のOFDM無線受信装置においてCP又はGIを挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの1/4の時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fsp×4で1種類の等化ウェイトを用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。図7の場合、図8Aの場合ともに、サブキャリア間の干渉を容易に等化することができるが、図8Aの場合は、周波数fsp×4だけ離れた周波数からの干渉、すなわち隣接チャネルからの干渉を受けやすくなる。

【0078】
図8Bは図1のOFDM無線受信装置においてCP又はGIを挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの1/8の時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fsp×4で2種類の等化ウェイトを用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。図8Bの場合は、周波数fsp×4だけ離れた周波数からの干渉、すなわち隣接チャネルからの干渉を受けやすくなる。

【0079】
図8Cは図1のOFDM無線受信装置においてCP又はGIを挿入したとき(CP又はGIが1シンボルの時間長を有する場合であって、制御信号周波数fcont=サブキャリア周波数間隔fsp/2で1種類の等化ウェイトを用いる場合)のOFDMシンボルと制御信号との関係を示すタイミングチャートである。図8Cの場合は、隣接チャネルからの干渉を受けやすくなるだけでなく、高次にわたるサブチャネル間干渉の発生により等化に要する計算量が増加するがサブキャリア間干渉の軽減の効果は得られる。

【0080】
等化する際には指向性変化によって生じる振幅の変化が正弦波であれば干渉が基本波に対して上下の周波数にそれぞれ1つずつしか生じない点で干渉による劣化が少なく等化が簡単かつ良好になる点で望ましい。しかし、実際のデバイスでは指向性変化が制御電圧に対して直線的に変化しないうえに、指向性の変化と振幅変化も必ずしもリニアな関係ではないので制御信号に正確な正弦波を加える必要性は薄い。矩形波や三角波など周期性をもった指向性変化であれば基本的効果は同様に期待できるが、本実施例ではより正弦波に近い振幅変化が期待でき、簡便であることから正弦波の例を示した。

【0081】
さらに、図1のOFDM無線受信装置における制御信号周波数の設定比の自然数m,nとキャリア間干渉の等化について以下に説明する。

【0082】
本実施形態では、サブキャリア周波数間隔をfspとし、周期的に指向性を変化させるための制御信号周波数をfcontとしている。ここで、n×fsp(n=1,2,3,…)が正確には制御信号周波数fcontと一致していなくてもよいが、好ましくは、n×fsp=fcontである。この場合、制御信号が正弦波であればサブキャリア間干渉は上下の周波数のn番目のサブキャリアのみに現れる。fsp=m×fcont(m=1,2,3,…)の場合も動作可能であって、この場合、正弦波ではm×fcont周期の全波整流された正弦波(m=2のとき)や正弦波を90度で切った丸みを帯びた鋸波(m=4のとき)のような特殊な波形であるので、その繰り返し波形の周波数スペクトラムから想像されるように、矩形波や三角波同様に等化がより複雑となるが機能的には動作する。

【0083】
実用化されているOFDMを用いたシステムではCP/GIを一般にはデータシンボル長の自然数分の1と設定することから、シンボル周期はサブキャリア周波数間隔の自然数比n/m倍(ここで、n,mはそれぞれ自然数(異なってもいいし、同じでもよい)である。)となるが、これは等化に用いるウェイトの種類や等化の容易さに関係するが本発明では本質的ではない。

【0084】
さらに、サブキャリア周波数間隔fsp=fcontのときの三角波、矩形波の場合のサブキャリア間干渉の現れ方について以下に説明する。図9乃至図14は図1のOFDM無線受信装置におけるキャリア間干渉の等化を説明するための各例のスペクトル図である。

【0085】
元々のOFDM信号は図9のように複数のサブキャリアが並んでいる。この例では9サブキャリアである。この内の一つのサブキャリアに着目すると図10のようになっている。これに正弦波で指向性を変化させた場合は、振幅変調を行ったのと同様の作用により図11のように2つの側波帯が生成される。従って、OFDM信号全体では図12のように側波帯がその両側に生成されるとともに中心部分7つのサブキャリアでは2つの側波帯が合成されサブキャリア間干渉が生じる。これに対して矩形波や三角波を作用させると、そのスペクトルに応じて一つのサブキャリアに対して図13のように高次に渡った側波帯の成分が生成される従って、OFDM信号全体では元々のOFDM信号に対して図14のように全てのサブキャリアにそれぞれ周囲のサブキャリアのよる干渉が高次の側波帯部分として付加される

【0086】
第2の実施形態.
図3は本発明の第2の実施形態に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。第2の実施形態は図1の第1の実施形態と比較して、エスパアンテナ10に代えて、互いに例えば半波長だけ離隔された2本のアンテナ素子31,32と、移相器33と、加算器34とを備えて構成されたアレーアンテナ30を備えたことを特徴とする。

【0087】
図3において、アンテナ素子31により受信された無線信号は加算器34に入力される。一方、アンテナ素子32により受信された無線信号は、制御信号電圧Vcにより移相量が変化される移相器33を介して加算器34に入力される。加算器34は入力される2つの無線信号を加算して加算結果の無線信号を低雑音増幅器16に出力する。

【0088】
以上のように構成することにより、制御信号電圧Vcによりアレーアンテナ30の指向性が変化し、図1のエスパアンテナ10と同様の作用効果を得ることができる。その他の動作及び処理については、第1の実施形態と同様である。

【0089】
なお、1個の移相器33を備えているが、本発明はこれに限らず、2本のアンテナ素子31,32で受信した無線信号の相対的な位相を変化させて指向性を変化させるために、各アンテナ素子31,32の給電回路に挿入される2個の移相器を備えてもよい。また、アレーアンテナ30は2本のアンテナ素子31,32を備えているが、本発明はこれに限らず、3本以上のN本のアンテナ素子を備え、各アンテナ素子で受信した無線信号の相対的な位相を変化させて指向性を変化させるために、各アンテナ素子の給電回路に挿入されるN個又はN-1個の移相器を備えてもよい。さらに、可変容量ダイオード13を備えているが、本発明はこれに限らず、可変リアクタンス素子を備えてもよい。

【0090】
図4は本発明の第2の実施形態の変形例に係るOFDM無線受信装置の構成を示すブロック図である。この変形例は、第1の実施形態の変形例と同様に、制御信号発生器15への周波数制御を無くした構成であり、第1の実施形態の変形例と同様の作用効果を有する。
【実施例】
【0091】
本発明者らは第1の実施形態に係るOFDM無線受信装置を用いてシミュレーションを行った。図15は図1のOFDM無線受信装置のシミュレーション実行時の諸元を示す表である。また、図16は図1のOFDM無線受信装置のシミュレーション結果であって、加法性白色雑音(AWGN)及びレイリーフェージングにおける1シンボル当たりの送信電力と雑音電力の比E/Eに対するビット誤り率BERを示すグラフである。
【実施例】
【0092】
当該シミュレーションでは基礎的な効果を確認するために単純なモデルを採用しており、符号化は行っていない。また、図7にシミュレーション結果を示す。実線はレイリーフェージング環境下でのビット誤り率特性の理論値で、破線は提案方式による特性である。ダイバーシチ効果によりゲインが得られていることがわかる。当該コンピュータシミュレーション結果により、本実施形態に係るOFDM無線受信装置においてダイバーシチゲインが得られることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上詳述したように、本発明に係る無線受信装置とそのチャネル等化方法によれば、第1の自然数を第2の自然数で除算してなる値を上記サブキャリア周波数間隔に乗算して得られる制御周波数で上記アレーアンテナの指向性を変化させながら、上記指向性が変化するアレーアンテナにより受信された無線信号を複数のサブキャリア信号にフーリエ変換した後、サブキャリア間干渉が実質的に無くなるように各サブキャリア信号毎にチャネル等化することにより、上記受信された無線信号を復調する。従って、フィードバック制御をしないので上述の指向性ダイバーシチにおける制御遅延の問題は発生しない。また、周波数選択性伝搬路におけるダイバーシチ効果を効果的に得ることができる。それ故、OFDM無線受信装置において、高速フェージング環境下においてアンテナの指向性制御が受信信号に追従でき、サブキャリア間干渉を確実に等化することができる。
【0094】
本発明は、デジタル無線通信システムの無線受信装置の伝送品質改善に寄与することができ、特に、具体的には、IEEE802.11a/gに準拠した無線LANシステム、もしくは地上デジタルテレビジョン放送の無線受信装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10…エスパアンテナ、
11…給電素子、
12…無給電素子、
13…可変容量ダイオード、
14…高周波阻止用インダクタ、
15…制御電圧発生器、
16…低雑音増幅器(LNA)、
17…周波数変換器、
18…A/D変換器、
20…OFDMベースバンド復調器、
21…自動周波数制御器(AFC)、
22…GI変換器、
23…離散フーリエ変換器、
24…チャネル等化器、
25…位相トラッキング回路、
26…サブキャリア復調器、
27…デインタリーバ、
28…誤り訂正復号器、
30…アレーアンテナ、
31,32…アンテナ素子、
33…移相器、
34…加算器。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8A】
7
【図8B】
8
【図8C】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17
【図17】
18
【図18】
19
【図19】
20
【図20】
21
【図21】
22