TOP > 国内特許検索 > ちらつきの知覚閾値の測定装置及び測定方法 > 明細書

明細書 :ちらつきの知覚閾値の測定装置及び測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5413860号 (P5413860)
登録日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発行日 平成26年2月12日(2014.2.12)
発明の名称または考案の名称 ちらつきの知覚閾値の測定装置及び測定方法
国際特許分類 A61B   5/16        (2006.01)
FI A61B 5/16 300B
請求項の数または発明の数 10
全頁数 19
出願番号 特願2011-530780 (P2011-530780)
出願日 平成22年7月20日(2010.7.20)
国際出願番号 PCT/JP2010/062196
国際公開番号 WO2011/030622
国際公開日 平成23年3月17日(2011.3.17)
優先権出願番号 2009209223
優先日 平成21年9月10日(2009.9.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年1月25日(2013.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】岩木 直
【氏名】原田 暢善
【氏名】須谷 康一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】早川 貴之
参考文献・文献 特開2008-220639(JP,A)
特開2005-348936(JP,A)
特開平10-229981(JP,A)
調査した分野 A61B 5/16
特許請求の範囲 【請求項1】
操作部、表示画面、及び記録部を備える装置を用いてちらつきの知覚閾値を測定する方法であって、
各々複数の領域を有し、複数の前記領域から選択された対応する1つの前記領域のみが互いにコントラスト差を有するON期間の画像及びOFF期間の画像を前記表示画面に交互に表示する第1ステップと、
前記画像表示中に、被験者が画像のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定された場合に、前記コントラスト差を大きくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定された場合に、その時点の前記コントラスト差を測定コントラスト差として前記記録部に記録する第2ステップと、
前記記録部に記録された前記測定コントラスト差が収束したか否かを判定し、前記測定コントラスト差が収束していないと判定されたときには前記コントラスト差を小さくし、収束したと判定されたときには前記測定コントラスト差の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する第3ステップと、を含むことを特徴とするちらつきの知覚閾値の測定方法。
【請求項2】
操作部、表示画面、及び記録部を有する装置を用いてちらつきの知覚閾値を測定する方法であって、
前記表示画面の複数の領域のうち選択された1つの前記領域を第1点滅周波数で、残りの前記領域を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅表示させる第1ステップと、
前記点滅表示中に、被験者が前記表示画面のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定された場合、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定された場合、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録する第2ステップと、
前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、前記測定周波数が収束していないと判定されたときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定されたときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する第3ステップと、を含むことを特徴とするちらつきの知覚閾値の測定方法。
【請求項3】
操作部、複数の領域に配置される複数グループの1つ以上の発光素子、及び記録部を有する装置を用いてちらつきの知覚閾値を測定する方法であって、
複数の前記領域のうち選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を第1点滅周波数で、残りの前記発光素子を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅させる第1ステップと、
前記点滅中に、被験者が前記発光素子のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定していなかったと判定された場合、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定したと判定された場合、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録する第2ステップと、
前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、前記測定周波数が収束していないと判定されたときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定されたときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する第3ステップと、を含むことを特徴とするちらつきの知覚閾値の測定方法。
【請求項4】
複数の前記領域が互いに離隔している
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のちらつきの知覚閾値の測定方法。
【請求項5】
選択された前記領域が、数字又は図形を表し、
選択された前記領域を指定することが、前記数字または図形を指定する操作を行うことであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のちらつきの知覚閾値の測定方法。
【請求項6】
演算処理部、表示画面、操作部、記録部を備え、
前記演算処理部が、各々複数の領域を有し、複数の前記領域から選択された対応する1つの前記領域のみが互いにコントラスト差を有するON期間の画像及びOFF期間の画像を交互に前記表示画面に表示し、
前記画像表示中に、前記演算処理部が、
被験者が画像のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定した場合には、前記コントラスト差を大きくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定した場合には、その時点の前記コントラスト差を測定コントラスト差として前記記録部に記録し、
前記記録部に記録された前記測定コントラスト差が収束したか否かを判定し、収束していないと判定したときには前記コントラスト差を小さくし、収束したと判定したときには前記測定コントラスト差の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する
ことを特徴とするちらつきの知覚閾値の測定装置。
【請求項7】
演算処理部、表示画面、操作部、及び記録部を備え、
前記演算処理部が、前記表示画面の複数の領域のうち選択された1つの前記領域を第1点滅周波数で、残りの前記領域を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅表示させ、
前記点滅表示中に、前記演算処理部が、
被験者が前記表示画面のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定した場合には、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定した場合に、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録し、
前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、収束していないと判定したときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定したときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する
ことを特徴とするちらつきの知覚閾値の測定装置。
【請求項8】
演算処理部、操作部、複数の領域に配置される複数のグループの1つ以上の発光素子、及び記録部を備え、
前記演算処理部が、複数の前記領域のうち選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を第1点滅周波数で、残りの前記発光素子を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅表示させ、
前記点滅表示中に、前記演算処理部が、
被験者が前記発光素子のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定していなかったと判定した場合には、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定したと判定した場合に、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録し、
前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、収束していないと判定したときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定したときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する
ことを特徴とするちらつきの知覚閾値の測定装置。
【請求項9】
複数の前記領域が互いに離隔している
ことを特徴とする請求項6~8の何れか1項に記載のちらつきの知覚閾値の測定装置。
【請求項10】
選択された前記領域が、数字又は図形を表し、
選択された前記領域を指定することが、前記数字または図形を指定する操作を行うことであることを特徴とする請求項6~8の何れか1項に記載のちらつきの知覚閾値の測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人がちらつきを知覚し始める値である閾値の測定に関し、特に、被験者の恣意性、傾向性を排除してちらつきの知覚閾値を客観的、且つ簡単に測定でき、人の精神的疲労(以下、単に「疲労」とも記す)の評価に利用可能な測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代はストレス社会と呼ばれており、日常生活の中で使える疲労の客観的測定・評価手法が強く求められている。これまで、点滅する光源を見る際の「ちらつき」(フリッカー)の知覚が疲労度により変化する現象、とくに「ちらつき」を知覚することができる点滅周波数(Critical Flicker Frequency: CFF)が疲労度の増大とともに低下する現象を用いて、疲れの定量的な評価(フリッカー検査)が行われてきた。従来、フリッカー検査を用いた疲労度の定量的評価は、とくに産業衛生分野で幅広く用いられてきたが、LEDなどを装備した専用装置が必要で、日常的に手軽に、かつ誰もが用いることができなかった。
【0003】
これに対して発明者らは、フリッカー検査と同じちらつき知覚原理に基づく疲労度検査を、液晶ディスプレイやCRT等の画像提示装置を用いて行うことを可能にする技術(下記特許文献1参照)を開発してきた。これにより、携帯電話やパーソナルコンピュータなどの容易にアクセスできる機器を用いて、簡易かつ日常的に疲労の測定が原理的に可能になった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-220639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のフリッカー検査で用いられた方法において、点滅光の点滅周期を徐々に長くさせ、即ち、点滅周波数を徐々に減少させ、被験者が主観的に「ちらつき」を知覚したときにボタン押し等の反応をさせることにより、CFF等の閾値を測定していた。
【0006】
図1は、このような従来技術におけるちらつきの閾値を測定する概念を示す図である。即ち、従来技術においては、周波数を単調に変化させ、被験者が主観的に「ちらつき」を知覚したときにボタンを押下した時点の周波数を測定していた。そしてこのような複数回の測定の平均値をちらつきの閾値として利用していた。
【0007】
しかし、このような一様に変化する点滅光の提示条件の下では、数回の検査の後に被験者は検査遂行中に結果、即ち、ちらつき知覚のタイミングを経験的に予測することが可能であった。加えて、検査が被験者の主観的な報告のみを求めていたので、「本当にちらつきを知覚していたか」否かを判定することができなかった。従って、被験者は経験に基づいてボタン押下のタイミングを調整することにより、恣意的に検査結果を操作することが可能であった。また、「ちらつき」知覚に対応する反応に明確な正答/誤答の基準がなく、被験者の反応のタイミング(ボタン押下のタイミング)が恣意的になりやすいため、検査結果のばらつきが大きかった。さらに、被験者がちらつきを明らかに知覚できない周波数の刺激を長く見続ける傾向があるため、検査時間が長い上、検査結果がより疲労していないことを示す可能性があった。
【0008】
このように、従来の測定方法では、ボタン押下のタイミングに被験者の恣意性及び傾向性の両方が混入する可能性が高いため、客観的なちらつきの知覚閾値の測定が難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、被験者の恣意性及び傾向性を排除して、ちらつきの知覚閾値を客観的に正確に測定でき、人の精神的疲労の正確な評価に利用することができるちらつきの知覚閾値の測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0011】
即ち、本発明に係るちらつきの知覚閾値の測定方法(1)は、操作部、表示画面、及び記録部を備える装置を用いてちらつきの知覚閾値を測定する方法であって、各々複数の領域を有し、複数の前記領域から選択された対応する1つの前記領域のみが互いにコントラスト差を有するON期間の画像及びOFF期間の画像を前記表示画面に交互に表示する第1ステップと、前記画像表示中に、被験者が画像のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定された場合に、前記コントラスト差を大きくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定された場合に、その時点の前記コントラスト差を測定コントラスト差として前記記録部に記録する第2ステップと、前記記録部に記録された前記測定コントラスト差が収束したか否かを判定し、前記測定コントラスト差が収束していないと判定されたときには前記コントラスト差を小さくし、収束したと判定されたときには前記測定コントラスト差の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する第3ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るちらつきの知覚閾値の測定方法(2)は、操作部、表示画面、及び記録部を有する装置を用いてちらつきの知覚閾値を測定する方法であって、前記表示画面の複数の領域のうち選択された1つの前記領域を第1点滅周波数で、残りの前記領域を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅表示させる第1ステップと、前記点滅表示中に、被験者が前記表示画面のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定された場合、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定された場合、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録する第2ステップと、前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、前記測定周波数が収束していないと判定されたときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定されたときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する第3ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るちらつきの知覚閾値の測定方法(3)は、操作部、複数の領域に配置される複数グループの1つ以上の発光素子、及び記録部を有する装置を用いてちらつきの知覚閾値を測定する方法であって、複数の前記領域のうち選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を第1点滅周波数で、残りの前記発光素子を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅させる第1ステップと、前記点滅中に、被験者が前記発光素子のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定していなかったと判定された場合、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定したと判定された場合、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録する第2ステップと、前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、前記測定周波数が収束していないと判定されたときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定されたときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定する第3ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記のちらつきの知覚閾値の測定方法(1)~(3)において、複数の前記領域が互いに離隔していることを特徴とする。
【0015】
また、上記のちらつきの知覚閾値の測定方法(1)~(3)において、選択された前記領域が、数字又は図形を表し、選択された前記領域を指定することが、前記数字または図形を指定する操作を行うことであることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係るちらつきの知覚閾値の測定装置(1)は、演算処理部、表示画面、操作部、記録部を備え、前記演算処理部が、各々複数の領域を有し、複数の前記領域から選択された対応する1つの前記領域のみが互いにコントラスト差を有するON期間の画像及びOFF期間の画像を交互に前記表示画面に表示し、前記画像表示中に、前記演算処理部が、被験者が画像のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定した場合には、前記コントラスト差を大きくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定した場合には、その時点の前記コントラスト差を測定コントラスト差として前記記録部に記録し、前記記録部に記録された前記測定コントラスト差が収束したか否かを判定し、収束していないと判定したときには前記コントラスト差を小さくし、収束したと判定したときには前記測定コントラスト差の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るちらつきの知覚閾値の測定装置(2)は、演算処理部、表示画面、操作部、及び記録部を備え、前記演算処理部が、前記表示画面の複数の領域のうち選択された1つの前記領域を第1点滅周波数で、残りの前記領域を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅表示させ、前記点滅表示中に、前記演算処理部が、被験者が前記表示画面のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定していなかったと判定した場合には、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域を正しく指定したと判定した場合に、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録し、前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、収束していないと判定したときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定したときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るちらつきの知覚閾値の測定装置(3)は、演算処理部、操作部、複数の領域に配置される複数のグループの1つ以上の発光素子、及び記録部を備え、前記演算処理部が、複数の前記領域のうち選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を第1点滅周波数で、残りの前記発光素子を、人が点滅を知覚できない第2点滅周波数で点滅表示させ、前記点滅表示中に、前記演算処理部が、被験者が前記発光素子のちらつきを知覚したことに伴う前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定していなかったと判定した場合には、前記第1点滅周波数を小さくし、前記操作部に対する操作が、選択された1つの前記領域に配置される前記発光素子を正しく指定したと判定した場合に、その時点の前記第1点滅周波数を測定周波数として前記記録部に記録し、前記記録部に記録された前記測定周波数が収束したか否かを判定し、収束していないと判定したときには前記第1点滅周波数を大きくし、収束したと判定したときには前記測定周波数の収束値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定することを特徴とする。
【0019】
また、上記のちらつきの知覚閾値の測定装置(1)~(3)において、複数の前記領域が互いに離隔していることを特徴とする。
【0020】
また、上記のちらつきの知覚閾値の測定装置(1)~(3)において、選択された前記領域が、数字又は図形を表し、選択された前記領域を指定することが、前記数字または図形を指定する操作を行うことであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、視覚刺激に対する被験者の知覚に基づく反応が正しいか否かを判定し、この正誤判定の結果に基づいて視覚刺激のコントラスト差(または正規化コントラスト)や周波数を制御することにより、被験者の恣意性や傾向性が混入する余地を無くし、より客観的なちらつきの知覚閾値の計測を可能にすることができる。これにより、人の精神的疲労をより客観的に評価することができる。
【0022】
特に、従来の検査では疲労しているのに疲労していない検査結果を意図的に生成することができるので、過度な疲労や、疲労に起因する事故に繋がる可能性がある。これに対して、本発明は、このような意図的操作を不可能にするので、健康の自己管理のみならず、生産現場の労働管理や安全性の確保に役立つことができる。
【0023】
さらに、コントラスト差(または正規化コントラスト)や周波数の変動制御に知覚閾値へ収束させる知覚閾値決定方法を組み入れることによって、従来に比べて、より短時間でより高精度のちらつきの知覚閾値の決定が可能になる。即ち、本発明は、検査時間を短縮することにより、更なる検査の利便性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術におけるちらつきの知覚閾値を測定する概念を示す図である。
【図2】正規化コントラスト、コントラスト差を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るちらつきの知覚閾値の測定装置を示すブロック図である。
【図4】本発明によるちらつきの知覚閾値を測定する概念を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るちらつきの知覚閾値の測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】コントラスト差の変化を説明する図である。
【図7】表示される画像の1例である。
【図8】表示される画像の1例である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るちらつきの知覚閾値の測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】典型的な被験者の1回のちらつき知覚閾値測定における、正規化コントラストの収束様子を示す図である。
【図11】1被験者に関するちらつきの知覚閾値の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。尚、以下においては、特に断らない限り「疲労」とは精神的疲労を意味するものとする。

【0026】
(第1の実施の形態)
表示装置が所定のリフレッシュレートで画像を表示する場合、OFF時とON時との画像の輝度比(LOFF/LON)を正規化されたコントラスト(以下、正規化コントラストと記す)として定義する(図2参照)。正規化コントラストを、例えば図2に示すn1からn3へのように徐々に減少させながら画像を連続的に表示すると、正規化コントラストがある閾値以下になるとき、被験者はちらつきを知覚することができる。被験者が主観的に「ちらつき」を知覚し始めたときにボタン押し等の反応をさせることにより、この閾値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定することができる。また、正規化コントラストを例えばゼロから徐々に増大させながら画像を連続的に表示すると、正規化コントラストがある閾値以上になるとき、被験者はちらつきを知覚できなくなる。同様に、被験者が主観的に「ちらつき」を知覚できなくなったときにボタン押し等の反応をさせることにより、この閾値をちらつきの知覚閾値に対応する情報として決定することができる。

【0027】
また、この閾値は、被験者の疲労程度と比例して、疲労するほど小さくなる。

【0028】
本実施の形態では、被験者に画像を提示するときに、画像中の一部領域にコントラスト差(例えば、図2のΔL1)をつけてON/OFF表示することにより、視覚刺激を生成する。その一部領域(視覚刺激領域)に関する情報(以下、領域情報と記す)を記録しておき、領域情報を基準に被験者のちらつき知覚に基づく反応が正しいかどうかを判定し、被験者の反応の正誤判定に基づいて視覚刺激領域およびコントラスト差を変動させる。さらに、変動の制御には知覚閾値へ収束させる知覚閾値決定方法を組み入れる。これにより、検査に被験者の恣意性や傾向性が混入する余地をなくし、より客観的なちらつきの知覚に基づくちらつきの閾値を短時間で測定できる。

【0029】
なお、OFF時とON時の2つ画像の正規化コントラストは、該2つの画像のコントラスト差とは逆比例する。特に、ON時のコントラスト(又は輝度値)を固定すれば、正規化コントラストとコントラスト差との関係は一義的に決まる。正規化コントラストが大きければ、コントラスト差が小さくなり、逆に、正規化コントラストが小さければ、コントラスト差が大きくなる。従って、本明細書では、正規化コントラストを小さくするように制御することは、コントラスト差を大きくするように制御することに等しい。正規化コントラストを大きくするように制御することは、コントラスト差を小さくするように制御することに等しい。

【0030】
即ち、2つの用語を適宜に入れ替えて使用することができる。但し、従来のフリッカー検査装置のCCF閾値との対比の意味においては正規化コントラストという用語を使用し、本発明をより分かりやすく説明するためにはコントラスト差という用語を使用する。

【0031】
図3は、本発明の実施の形態1に係るちらつきの知覚閾値の測定装置を示すブロック図である。

【0032】
本測定装置は、全体を制御する演算処理部(以下、CPUと記す)1と、プログラムなどを記録した不揮発性の読出専用メモリ(以下、ROMと記す)2と、データを一時的に保持可能な揮発性の書換可能メモリ(以下、RAMと記す)3と、データを持続的に保持可能な不揮発性の書換可能な記録部4と、計時部5と、外部とのインタフェースを行うインタフェース部(以下、IF部と記す)6と、これら各部の間でデータ(制御情報を含む)を交換する内部バス7と、表示部8と、操作部9とを備えている。本測定装置として、例えば公知のコンピュータや携帯端末装置(携帯電話、PHS、PDAなど)を使用することができる。

【0033】
操作部9は、キーやパッドなどの操作手段を備えている。表示部8は、表示画面(液晶パネルなど)及びそれを駆動させる駆動部を備えている。計時部5は、タイマなどの、内部クロックを用いて現在時刻の情報を出力する手段である。

【0034】
本測定装置の動作を簡単に説明すると、CPU1が、2つ以上の領域を有する画像の所定の領域を領域情報としてランダムに指定して記録部4に記録すると共に、予め指定された条件に従って2つの画像データを生成する。これらの2つの画像データは上記所定の領域においてコントラストが異なり、残りの領域においてコントラストが同一である。CPU1は、上記の2つの画像データを、IF部6を介して表示部8に伝送してそれぞれをONまたはOFF時間に表示させる。表示部8に入力される信号は、ディジタルデータ又はIF部で変換されたアナログビデオ信号である。表示部8は、所定のリフレッシュレートで、受信した画像データを被験者10に提示する。被験者10は、表示部8の表示画面に提示された画像を観察し、画像の特定の領域にちらつきが生じ始めた又はちらつきが無くなったと知覚したときに、操作部9を操作して特定の領域を指定する。この操作情報は、IF部6を介してCPU1に伝送され、RAM3や記録部4に記録される。CPU1は、被験者の指定した特定の領域が領域情報として記録された所定の領域と同じであるか否かを判定する。同じである場合、即ち、正しくちらつき領域を指定した場合にはコントラスト差を小さくして再度画像を生成し、被験者に提示する。異なる場合、即ち、正しくちらつき領域を指定できなかった場合にはコントラスト差を大きくして再度画像を生成し、被験者に提示する。

【0035】
このように、被験者に画像を提示する状態を不規則に変動させて、被験者がちらつきを正しく知覚するか否かを判定する。本発明では、画像間の正規化コントラストを一様に増加又は減少させて、被験者がちらつきを知覚した時の正規化コントラストを記録するのではなく、提示する画像間の正規化コントラスト(コントラスト差)及びちらつきの領域を不規則に変化させて、被験者がちらつきを知覚し始めた時、又は知覚しなくなった時の条件が安定して収束したときの正規化コントラスト(コントラスト差)の収束値をちらつきの知覚閾値として決定する。

【0036】
図4は、本発明によるちらつきの知覚閾値を測定する概念を示す図である。

【0037】
次に、本実施の形態1に係る測定装置の動作について具体的に説明する。図5は、本実施の形態1に係る測定装置の動作を示すフローチャートである。以下では、特に断らない限りCPU1が行う処理として説明する。また、CPU1は、適宜ROM2および記録部4から必要なデータ(プログラムを含む)をRAM3に読み出し、RAM3の所定領域をワーク領域として使用して処理を行い、一時的結果や最終の処理結果を適宜記録部4に記録することとする。また、測定に必要な初期条件は予め記録部4に記録されているとする。

【0038】
まず、表示画面に測定を行なうか否かのメニューが表示される。被験者10が操作部9を操作して測定を選択した場合、以下に説明する処理が開始される。

【0039】
ステップS1において、初期設定を行う。ここで、説明を簡単にするため、画像のコントラストは、輝度値として説明する。初期設定として、複数の領域を有する画像の形状及び大きさを含む画像の種類情報、ON期間の初期の輝度値LON、輝度値の差(コントラスト差)の初期値ΔL、並びに、1種類のコントラスト条件で画像を続けてON/OFF表示する時間Δを、記録部4から読み出す。

【0040】
以下に、図6に示す4つの扇形の領域からなる円を画像の一例として説明する。

【0041】
ステップS2において、画像データ生成のための諸条件値を計算する。即ち、画像の複数の領域のうち、コントラスト差をつけて提示するちらつき領域をランダムに決めて、領域情報としてRAM3に記憶する。例えば、図6の(a)の例では、右側の扇形はちらつき領域に該当し、上、下、及び左側の3つの扇形は、ちらつきのない参照領域、例えば中間輝度値を有する領域に該当する。この場合には、領域情報として、上下左右の扇形の位置を例えば1~4の数値に対応させて、領域情報として1~4のいずれかの数値をRAM3に記憶する。そして、ちらつき領域の大きい方の輝度値をLとし、参照領域の輝度値を中間の輝度値Lとし、また、ちらつき領域の小さい方の輝度値をLとし、それぞれL(=LON)、L(=L-ΔL/2)、L(=L-ΔL)を計算する。

【0042】
最後に、即ち、次のステップS3を開始する直前に、計時部5から時刻を取得し、開始時刻Tとする。

【0043】
ステップS3において、上記ステップS2で決めた輝度値等の条件で、画像データを生成し、表示部8の表示画面に表示させる。図6の(a)の例では、4つの領域の輝度値が(L、L、L、L)である画像データ、及び、4つの領域の輝度値が(L、L、L、L)である画像データが交互に生成され、対応する画像がON時及びOFF時に表示画面に交互的に表示される。

【0044】
ステップS4において、被験者10によって操作部9が操作されたか否かを判断する。例えば、ステップS3において、「ちらつき始めたら、画像のちらつき領域に対応してそれぞれ↑、↓、←、→を押してください」と表示画面に表示し、その後画像の表示を開始させてもよい。被験者10が、表示された画像の複数の領域のうち、何れかがちらつき始めたと知覚し、何れかのキーを押下した場合、ステップS7に移行する。被験者10が依然としてキーを押下していなければ、ステップS5に移行する。

【0045】
ステップS5において、計時部5から現在時刻tを取得して開始時刻Tと比較し、その差(t-T)が、時間Δよりも小さければ(t-T<Δ)ステップS4に戻り、時間Δ以上(t-T≧Δ)であればステップS6に移行する。これによって、被験者10が↑、↓、←、→の何れかのキーを押さなければ、時間Δの間、同じコントラスト条件(輝度値条件)の画像表示が行われる。

【0046】
ステップS6において、現在のコントラスト条件ではちらつきを知覚できないとして、コントラスト差ΔLを大きくしてステップS2に戻り、新たなコントラスト条件で画像の表示及び知覚を開始させる。即ち、所定の時間内に何れかのキーも押下しなければ、正しく知覚、操作がなされていないと判定する。従って、コントラスト差ΔLを所定値D1だけ増加させる。例えば、図6(b)のΔL=2×5=10の条件では正しく知覚できない場合、コントラスト差を4(D1=4)増やして、図6(c)のΔL=2×7=14の条件に移行して再度画像の生成、表示及び知覚を開始させる。

【0047】
ステップS7において、押下されたキーの示す領域がRAM3に記憶されている領域情報と同一であるか否かを判定する。同一ではないとき、即ち、間違ったキーを押下したとき、ステップS6に戻る。同一であるとき、即ち、キーが正しく押下されたとき、ステップS8に移行する。

【0048】
ステップS8において、その時点のコントラスト差ΔLを測定コントラスト差として記録部4に記憶する。そして、以前に記憶された測定コントラスト差と今回記憶された測定コントラスト差との差異が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。所定の許容範囲内であるとき、例えば今回記憶された測定コントラスト差をちらつきの知覚閾値として記憶し、処理を終了する。上記の差異が所定の許容範囲内ではないとき、ステップS9に移行する。

【0049】
ステップS9において、ちらつきの知覚にばらつきが大きいので、コントラスト差ΔLを所定値D2(D2>D1)だけ小さくしてステップS2に戻り、新たなコントラスト条件画像の表示及び知覚を開始させる。例えば、図6(a)のΔL=2×10=20の条件で正しく知覚できた場合、コントラスト差ΔLを10(D2=10)減らして、図6(b)のΔL=2×5=10の条件に移行して再度画像の生成、表示及び知覚を開始させる。

【0050】
以上説明したように、ステップS1~S9によって、所定の時間Δの間に所定のコントラスト条件の画像を被験者に提示し、被験者がちらつきを知覚し始めたときに行った操作の正誤を判定する。この正誤の判定に基づき、コントラスト条件を不規則に上下に変動させながら、即ち提示する画像を変更しながら、被験者のちらつきに対する知覚をある客観的なちらつきの知覚閾値に徐々に近づかせて収束させることができる。このようにして、特定の被験者のちらつきの知覚閾値を客観的に測定することができる。

【0051】
従って、予め、被験者が疲労していない状態で、上記したようにちらつきの知覚閾値を測定して記録し、その後、同じ被験者について同様に測定して得られたちらつきの知覚閾値を、疲労していない状態のちらつきの知覚閾値と比較することにより、被験者が疲労しているか否かを判断することができる。

【0052】
なお、本発明は、上記した実施の形態1に限定されず、例えば、図5に示したフローチャートを種々変更して実施することができる。

【0053】
具体的には、上記では、知覚の正誤に応じて、コントラスト差ΔLの増減量を2段階(D2>D1)で変化させたが、例えば、コントラスト差ΔLの増減量をより多段階で可変にし、計測開始のときには大きな値を有し、計測の進行につれ、次第に小さい値を有するようにコントラスト差ΔLを制御するようにしてもよい。このように、コントラスト差の制御には上記のようにup-down法を使用する以外、その他の知覚閾値を決定するための心理物理学的手法を用いてもよい。そして、ちらつきの閾値の決定には、最後に記録された複数回の測定コントラスト差の平均を取ってもよい。なお、測定時間はかかるが、コントラスト差ΔLの変化量を一定(D1=D2、例えば2)にしてもよい。

【0054】
提示する画像の形状、大きさ(画素数)は任意であることができる。一例として、図7に示す数字の部分を画像のちらつき領域とし、背景の部分を参照領域とすることができる。この場合、コントラスト差が小さいと数字は認識できない。従って、数字とその背景とのコントラスト差を利用して視覚刺激を作成し、被験者が数字を知覚して対応のキーを正しく押下したか否かを判定することにより、同様に被験者のちらつきの知覚閾値を測定することができる。この場合の領域情報には、表示する数字に対応する数値を使用すればよい。図8には画像の更なる一例を示している。この場合、7つの領域からなる画像の何れかの1領域を画像のちらつき領域とし、残りの領域を参照領域とすることができる。上記した実施の形態1と同様に、被験者がちらつく領域を正しく指したか否かを判定することにより、被験者のちらつきの知覚閾値を測定することができる。

【0055】
さらに、このような画像データをCPU1がリアルタイムに生成する代わりに、予め生成されて記録部4に記録された画像データを適宜読み出してもよい。

【0056】
また、上記では、参照領域のコントラストは異なるコントラストの中間値と等しい場合を説明したが、任意の値を取って上記と同様にちらつきの知覚閾値を測定ようにしてもよい。但し、好ましい参照領域のコントラストは異なるコントラストの中間値である。なお、コントラスト差の生成方法として、提示する画像の色を変化させることとしもよい。また、初期のコントラスト差を大きな値に設定し、コントラスト差が小さくなるように制御を行う場合、被験者がちらつきを知覚できなくなるときの測定コントラスト差をちらつきの知覚閾値として決定するようにしてもよい。

【0057】
(第2の実施の形態)
本実施の形態2に係る測定装置は、基本的に実施の形態1に係る測定装置(図3)と同じ構成を有し、表示部8の表示画面の複数の領域を異なる点滅周波数で点滅させる点においてのみ実施の形態1と異なる。即ち、表示画面を用いて、被験者に提示する画像のコントラスト差を変化させる代わりに、点滅周波数を変化させる。

【0058】
本実施の形態2では、表示画面の1つの領域を、人間が知覚可能な点滅周波数範囲内の第1点滅周波数で点滅することにより、視覚刺激を生成する。また、残りの領域を、人間が知覚不可能な点滅周波数範囲内の第2点滅周波数(0Hz、即ち点滅しない場合を含む)、即ち、常にONと知覚される点滅周波数で点滅する。そのような第1点滅周波数で点滅する領域(視覚刺激領域)に関する領域情報を記録しておき、領域情報を基準に被験者のちらつき知覚に基づく反応が正しいかどうかを判定し、被験者の反応の正誤判定に基づいて第1点滅周波数及び画像中の点滅する視覚刺激領域を変動させる。さらに、変動の制御には知覚閾値へ収束させる知覚閾値決定方法を組み入れる。これにより、検査に被験者の恣意性や傾向性が混入する余地をなくし、より客観的なちらつきの知覚に基づくちらつきの知覚閾値を短時間で測定できる。

【0059】
本実施の形態2は、基本的に前記の実施の形態1と同じ制御原理にもとづく。従って、以下において、前記の実施の形態1と異なる部分のみを説明する。

【0060】
本実施の形態2に係る測定装置の動作を簡単に説明すると、CPU1が、表示画面の2つ以上の領域のうち所定の領域を領域情報としてランダムに指定してRAM3に記録すると共に、所定の領域を第1点滅周波数で点滅させ、残りの領域を第2点滅周波数で点滅させる。被験者10は、表示部8の表示画面を観察し、特定の領域にちらつきが始めた又はちらつきが無くなったと知覚したときに、操作部9を操作して特定の領域を指定する。この操作情報は、IF部6を介してCPU1に伝送され、RAM3や記録部4に記録される。CPU1は、被験者の指定した特定の領域が領域情報として記録された所定の領域と同じであるか否かを判定する。同じである場合、即ち、正しくちらつき領域を指定した場合には第1点滅周波数を大きくして再度表示部8の表示画面を点滅させ、被験者に提示する。異なる場合、即ち、正しくちらつき領域を指定できなかった場合には第1点滅周波数を小さくして再度表示部8の表示画面を点滅させ、被験者に提示する。

【0061】
このように、被験者に提示する表示画面の状態を不規則に変動させて、被験者がちらつきを正しく知覚するか否かを判定する。本発明では、従来技術のように点滅周波数を一様に増加又は減少させて、被験者がちらつきを認知した時の点滅周波数を記録するのではなく、第1点滅周波数及びちらつきの領域を不規則に変化させて、被験者がちらつきを知覚し始めた時、又は知覚しなくなった時の条件が安定して収束したときの第1点滅周波数の収束値をちらつきの知覚閾値として決定する。

【0062】
次に、本実施の形態2に係る測定装置の動作について具体的に説明する。図9は、本実施の形態2の測定装置の動作を示すフローチャートである。

【0063】
まず、表示部8の表示画面に測定を行なうか否かのメニューが表示される。被験者10が操作部9を操作して測定を選択した場合、以下に説明する処理が開始される。

【0064】
尚、図7に示す数字の領域及び背景の領域を含む領域を、点滅させる領域の一例として説明する。

【0065】
ステップS21において、初期設定を行う。即ち、点滅する領域の種類、形状、位置などの情報、第1点滅周波数fの初期値、第1点滅周波数を変動させる幅Δfの初期値、第2点滅周波数f、及び、ある点滅周波数条件で表示画面を点滅させ続ける時間Δを、記録部4から読み出す。ここでは、fの初期値は、fとすることもできる。

【0066】
ステップS22において、点滅させる諸条件を計算する。即ち、第1点滅周波数で点滅させる1桁の数字をランダムに決めて領域情報としてRAM3に記憶する。該1桁の数字を示す、ちらつく領域に対応する第1画像データ、及び、ちらつきのない背景領域に対応する第2画像データを生成する。ちらつく領域の第1点滅周波数をfとし、ちらつきのない背景の領域の点滅周波数をfとする。

【0067】
最後に、即ち、次のステップS23を開始する直前に、計時部5から時刻を取得し、開始時刻Tとする。

【0068】
ステップS23において、上記ステップS22で決めた点滅条件で、ランダムに決めた1桁の数字に対応する領域を第1点滅周波数f1で点滅させ、背景領域を第2点滅周波数f2で点滅させる。即ち、上記の第1画像データを第1点滅周波数f1で表示画面に表示し、上記の第2画像データを第2点滅周波数f2で表示画面に表示する。

【0069】
ステップS24において、被験者10によって操作部9が操作されたか否かを判断する。例えば、ステップS23において、「画面に数字がちらついて見えたら、対応の数字キーを押してください」と表示画面に表示してから、表示画面の点滅を開始させることができる。被験者10が、表示画面に何れかの数字がちらつき始めたと知覚し、0~9のうちの何れかのキーを押下した場合、ステップS27に移行する。被験者10が依然としてキーを押下していなければ、ステップS25に移行する。

【0070】
ステップS25において、計時部5から現在時刻tを取得して開始時刻Tと比較し、その差(t-T)が、時間Δよりも小さければ(t-T<Δ)ステップS24に戻り、時間Δ以上(t-T≧Δ)であればステップS26に移行する。これによって、被験者10が何れかのキーを押さなければ、時間Δの間、同じ点滅条件の表示画面が被験者に提示される。

【0071】
ステップS26において、現在の第1点滅周波数fではちらつきを知覚できないとして、第1点滅周波数fをΔf小さくしてステップS22に戻り、新たな点滅条件で表示画面を点滅させ、知覚を開始させる。即ち、所定の時間内に何れかのキーも押下しなければ、正しく知覚、操作がなされていないと判定する。

【0072】
ステップS27において、押下されたキーの示す数字が記憶されている領域情報と同一であるか否かを判定する。同一ではないとき、即ち、間違ったキーを押下したとき、ステップS26に戻る。同一であるとき、即ち、キーが正しく押下されたとき、ステップS28に移行する。

【0073】
ステップS28において、この時点の第1点滅周波数fを測定周波数として記録部4に記憶する。そして、以前に記憶された測定周波数と今回記憶された測定周波数との差異が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。所定の許容範囲内であるとき、例えば今回記憶された測定周波数をちらつきの知覚閾値として記憶し、処理を終了する。上記の差異が所定の許容範囲内ではないとき、ステップS29に移行する。

【0074】
ステップS29において、ちらつきの知覚にばらつきが大きいので、第1点滅周波数fをΔf大きくしてステップS22に戻り、新たな点滅条件で表示部8の表示画面を点滅させ、知覚を開始させる。

【0075】
以上説明したように、ステップS21~S29によって、所定の時間Δの間に所定のちらつき条件で表示画面を点滅させ、被験者がちらつきを知覚し始めたときに行った操作の正誤を判定する。この正誤の判定に基づき、第1点滅周波数を不規則に上下に変動させると同時に、この点滅周波数で点滅されている領域を不規則に変動させながら、被験者のちらつきに対する知覚をある客観的なちらつきの知覚閾値に徐々に近づかせて収束させることができる。このようにして、特定の被験者のちらつきの知覚閾値を客観的に測定することができる。

【0076】
もちろん、本発明は、上記した実施の形態2にも限定されず、例えば、図9に示したフローチャートを種々変更して実施することができる。

【0077】
具体的には、例えば、第1点滅周波数の変動幅Δfを可変にし、計測開始のときには大きな値を有し、計測の進行につれ、次第に小さい値を有するようにΔfを制御してもよい。即ち、fを収束させるには種々の知覚閾値を決定するための心理物理学的手法を用いることができる。また、表示画面に点滅させる領域も図6、図8に示すように、多様な種類の領域であり得る。また、初期の第1点滅周波数を小さな値に設定し、第1点滅周波数が大きくなるように制御を行う場合、被験者がちらつきを知覚できなくなるときの第1点滅周波数をちらつきの知覚閾値として決定するようにしてもよい。

【0078】
なお、上記の実施の形態2では、表示画面を用いて点滅する例を説明した。それ以外に、測定装置に複数のグループのLEDを備え、表示画面の代わりにLEDを用いて点滅を作り出しても良い。1グループのLEDは、必要に応じて1つ、または2つ以上であることができる。

【0079】
さらに、上記の実施の形態2では、画像データは、CPU1がリアルタイムに生成した。しかし、その代わりに、予め生成されて記録部4に記録された画像データ、即ち、複数の1桁の数字を示す画像データのセット、及びそれに対応する背景の画像データのセットを適宜読み出してもよい。

【0080】
さらに、上記の実施の形態1及び2では、精神的疲労度を測定するプログラムが予めROM2に記録されている場合を説明したが、インターネットサーバなどにアクセスしてプログラムを測定装置にダウンロードしてもよく、メモリカードなどの取り外し可能な記録媒体を介してプログラムを測定装置に取り込んでもよい。

【0081】
以下に、実施例を示し、本発明の特徴をさらに明らかにする。
【実施例1】
【0082】
30Hzで画面のリフレッシュが行われる液晶画面を有するパーソナルコンピューター(以下PCと記す)に、本発明の方法を実行するプログラムを実装した。該PCを用いて、刺激対象(画像)の正規化コントラストを時間的および/または空間的に変動させて画像データを生成し、ディスプレイ上に、黒色の背景に画像を表示させた。被験者のちらつきの知覚反応の正誤判断を行い、どの時点で知覚が安定して終了するかについて実験した。
【実施例1】
【0083】
刺激即ち提示する画像は、図6に示す4領域の扇形が直径10ピクセルを有する円内に配置された画像とした。被験者がちらつきを知覚したら、ちらつきの領域に対応する矢印キー(↑↓←→)を押下した。この際、ボタンの操作の有無を判定する所定の時間Δは3s(秒)とした。
【実施例1】
【0084】
正規化コントラストは、図2に示すように、ON画素の輝度値LONに対する、OFF画素の輝度値LOFFの比率、即ち、LOFF/LONとした。且つ、実験中に、ON画素の輝度値LONを255(8ビットの最大値)に固定した。即ち、ちらつき領域の大きい方の輝度値Lを255に固定した。そして、初期のコントラスト差ΔLは、1階調の輝度とした。従って、ちらつきのない3つの領域の初期の中間輝度値Lは、(L-ΔL/2=255-1/2=)254.5であった。ちらつき領域の小さい方の輝度値Lは、(L-ΔL=255-1=)254であった。即ち、初期の正規化コントラストは、(254/255=)約0.996であった。
【実施例1】
【0085】
このような条件で、典型的な被験者に一回のちらつき知覚閾値測定を行わせた。具体的には、これらの初期条件から、任意に選択された1領域の輝度値を時間的に交互にL又はL-ΔLとし、他の3領域の輝度値をL-ΔL/2として、画像を生成して被験者に提示した。所定の時間(3s)内に被験者がちらつきを知覚できなかった場合、又は、知覚に伴う反応(キーの押下)が誤答と判定された場合、被験者がちらつきを知覚しやすいように正規化コントラストを1/255小さくして(コントラスト差ΔLを1階調大きくして)、ちらつき領域を新たにランダムに選択して画像を生成し、被験者に提示した。また、上記の所定の時間内に被験者の知覚に伴う反応(キーの押下)が正答と判定された場合、コントラスト差ΔLを記録部4に記録し、そして、被験者がちらつきを知覚しにくいように正規化コントラストを1/255大きくして(ΔLを1階調小さくして)、ちらつき領域を新たにランダムに選択して画像を生成し、被験者に提示した。このように被験者の知覚反応の正誤に応じて正規化コントラスト(即ち、コントラスト差ΔL)及びちらつきの領域を変動させることは、正規化コントラストが安定して一定の閾値に達するまで繰り返される。
【実施例1】
【0086】
図10は、典型的な被験者の1回のちらつき知覚閾値測定における、正規化コントラストの収束様子を示す図である。横軸は、検査の開始から経過した測定時間(秒)を表し、縦軸は、正規化コントラストを表している。
【実施例1】
【0087】
図10に示すように、ちらつきを知覚できない状態に該当する左上から右下へ、正規化コントラストが徐々に被験者のちらつきの知覚閾値へ近づき、正規化コントラストが約0.957、コントラスト差ΔLが10.965のとき、キー押下の正誤率が約50対50と判定された。この状態を知覚が安定して収束した状態とし、測定を終了させた。従って、この測定例では、被験者のちらつきの知覚閾値は0.957とした。また、測定に使用する時間は、約80sであった。
【実施例1】
【0088】
このように、ちらつきが知覚し始める正規化コントラストを、恣意性や傾向性を排除して測定することにより、疲労度を客観的に評価することができた。また、図示していないが、同一の被験者に関して、安定的なちらつきの知覚閾値を得ることができた。これも、従来の測定装置の場合に得られた閾値が不安定であったのとは対照的に、本発明が被験者のキー操作の恣意性を排除することができたことを裏付けることである。
【実施例1】
【0089】
さらに、従来の測定装置の場合、1回の測定時間20~30sの測定を5回行い、5回の測定値の平均を求めてちらつきの知覚閾値としていたので、1人の被験者に対して2~3分の測定時間が必要であった。これに対して、本発明では本実施例での80sのように約60~90sしかかからないので、測定時間の短縮を可能にした。
【実施例2】
【0090】
本発明の信頼性を評価するために、従来のフリッカー測定装置による測定結果との比較を行った。本発明の方法によって上記の実施例1と同じように刺激の正規化コントラストを時間的空間的に変動させ、ちらつきの知覚閾値である正規化コントラスト(フリッカー値に対応する)が、疲労負荷に伴いどのように変化するかに関して検討した。即ち、深夜から翌日の午後まで徹夜で労働を行うという疲労負荷状態で、PCを用いて、ディスプレイに提示する刺激(画像)の正規化コントラストを変動させて、ちらつきの知覚閾値を測定した。
【実施例2】
【0091】
以下に、具体的に説明する。被験者として健常成人1名を選んだ。被験者には、日中から断続的に与えられた労働を行って、疲労のある状態で実験に参加してもらった。最初の測定を深夜2時30分に行い、従来のフリッカー測定装置及び本発明の方法の2方式でちらつきの知覚閾値の測定を行った。その後、被験者は与えられた労働をさらに6時間行い、朝8時30分に上記の2方式で二回目の測定を行った。そして、食事、仮眠を取り、6時間後の午後14時30分に三回目のちらつきの知覚閾値の測定を行った。ちらつきの知覚閾値の測定は、フリッカー標準機、PCの順序で行い、それぞれ、上記のように合計3回の測定を行った。
【実施例2】
【0092】
提示した刺激等の条件は、上記した実施例1と同一であった。PCには、Apple社のMac Book Proを用いた。フリッカー標準機には、SHIBATA社のROKEN DIGITAL FLICKER, MODEL RDF-1を用いた。刺激は、赤色で、55Hzから毎秒1Hzの速さで、周波数を減少させた。
【実施例2】
【0093】
図11は、1被験者に関する測定結果を示すグラフである。この図において、縦軸は、午後2時30分における測定値で規格化されたちらつきの知覚閾値である。即ち、午後2時30分における測定値を100として、これに対する比率でその後の測定値を表現している。
【実施例2】
【0094】
この図から、時間の経過に伴って、2方式で測定したちらつきの知覚閾値が、共に、最も疲労していた午前8時30分の測定において、最低値を示している。そして、仮眠をとった後は、2方式で測定したちらつきの閾値が、両方とも深夜2時30分のレベルよりも良いレベルに回復していることが確認できる。また、2方式で測定した値を変化幅で規格化すれば、即ち最大値と最小値の幅を同じにすれば、略同じ変化傾向を示す。即ち、PCで測定した値の変化が、フリッカー標準機で測定した値の変化をほぼ再現できていると言える。
【実施例2】
【0095】
以上のように、2方式で測定したちらつきの知覚閾値が、徹夜労働という疲労負荷に伴い減少すること、また、仮眠により回復することが確認された。さらに、本発明の方法で測定されたちらつきの知覚閾値は、従来法で測定されたフリッカー値と同様に、疲労の状況を反映しうるものであることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
標準的な機能を装備するパーソナルコンピュータや携帯端末装置を活用しても、或いは専用の機器を使用しても、ちらつきの知覚閾値、ひいては、人の精神的疲労を客観的に測定することができる。測定結果に対する恣意的操作を不可能にすることにより、客観的な測定結果を得ることができ、適切な自己健康管理や、生産現場の労働事故や災害の防止につながる。
【符号の説明】
【0097】
1 演算処理部(CPU)
2 読出専用メモリ(ROM)
3 書換可能メモリ(RAM)
4 記録部
5 計時部
6 IF部
7 内部バス
8 表示部
9 操作部

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10