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明細書 :腎炎の予防または治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-094919 (P2014-094919A)
公開日 平成26年5月22日(2014.5.22)
発明の名称または考案の名称 腎炎の予防または治療剤
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI A61K 37/02
A61K 48/00
A61P 13/12
C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/47
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2012-247897 (P2012-247897)
出願日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発明者または考案者 【氏名】岩野 正之
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C084
4H045
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA20
4C084BA23
4C084CA17
4C084CA53
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA812
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
要約 【課題】サイトカインを高発現する腎炎の予防・治療剤の提供。
【解決手段】FSP1または転写因子NFAT5を用いる腎炎の予防または治療剤など。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
FSP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、腎炎の予防または治療剤。
【請求項2】
腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、請求項1記載の予防または治療剤。
【請求項3】
FSP1またはその部分ペプチドをコードする核酸を有するポリヌクレオチドを含有してなる、腎炎の予防または治療剤。
【請求項4】
腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、請求項3記載の予防または治療剤。
【請求項5】
NFAT5もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、腎炎の予防または治療剤。
【請求項6】
腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、請求項5記載の予防または治療剤。
【請求項7】
NFAT5またはその部分ペプチドをコードする核酸を有するポリヌクレオチドを含有してなる、腎炎の予防または治療剤。
【請求項8】
腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、請求項7記載の予防または治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Fibroblast-specific protein 1(以下、FSP1)または転写因子Nuclear factor of activated T-cells 5(以下、NFAT5)を用いる腎炎の予防または治療剤などに関する。
【背景技術】
【0002】
FSP1は、線維芽細胞に特異的なマーカーとして同定されたタンパク質であり(非特許文献1)、対EF handドメインを有するフィラメント結合S100タンパク質をコードしている(非特許文献2)。本発明者はこれまでに、腎間質線維化の進展にFSP1 陽性線維芽細胞が重要な役割を果たすことを明らかにした (非特許文献3~5)。さらに、本発明者はIgA腎症患者の腎生検を用いた組織学的検討から、FSP1陽性線維芽細胞数がIgA腎症患者の予後を決定する最も重要な因子であることを明らかにした (非特許文献6、7)。
【0003】
最近になり、発明者は糸球体疾患において、糸球体障害の進展とともに、ポドサイトなどでFSP1の発現亢進が認められることを報告した(非特許文献8、9)。また、本発明者は、糸球体腎炎モデルマウスでは、腎炎進展初期に糸球体内TNF-αなどのサイトカインの発現亢進が認められることを報告している(非特許文献10)。Toll-like receptor (TLR)は、自然免疫の調節因子として重要であるが、近年、腎疾患の進展にも関与することが報告された (非特許文献11、12)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Struts et al., The Journal of Cell Biology, Vol.130, 393-405, 1995
【非特許文献2】Okada et al., The American Physiological Society, Vol.273, F563-574, 1997
【非特許文献3】Iwano M, et al., J Clin Invest 110, 341-350, 2002
【非特許文献4】Iwano M, et al., Curr Opin Nephrol Hypertens13, 279-284, 2004
【非特許文献5】Iwano M, et al., Mol Ther 3, 149-159, 2001
【非特許文献6】Nishitani Y, et al., Kidney Int 68, 1078-1085, 2005
【非特許文献7】Harada K, et al., Nephrol Dial Transplant 23, 3152-3159, 2008
【非特許文献8】Yamaguchi Y, et al., Am J Kidney Dis 54, 653-664,2009
【非特許文献9】Iwano M, et al., Journal of the American Society of Nephrology, Vol.23, 209-214, 2012
【非特許文献10】Nakatani K, et al., Am J Physiol-Renal299, F207-216, 2009
【非特許文献11】Shirali AC., et al.,J Am Soc Nephrol 19, 1444-1450, 2008
【非特許文献12】Sadanaga A., et al., Arthritis & Rheumatism Vol.56, 1618-1628, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、FSP1または転写因子NFAT5を用いる腎炎の予防または治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、研究の結果、(1)TLR4のシグナル伝達経路に変異を有するマウスから得られたメサンギウム細胞にLipopolysaccharide(LPS)刺激を行っても、TNF-αの発現が抑制されること、(2)野生型マウス由来のメサンギウム細胞に対するLPS刺激によるTNF-αを含むサイトカインの発現誘導が、FSP1によって抑制されること、(3)ポドサイトでFSP1を過剰発現させたトランスジェニックマウスは、LPS腹腔内投与による糸球体内TNF-αの産生が有意に抑制されたことから、FSP1にはTLR4シグナル伝達を阻害することによって腎炎の発症を抑制できることを初めて見出した。(4)さらに、高浸透圧下における細胞応答に重要な転写因子であるNFAT5が、FSP1陽性ポドサイトに認められた。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下よりなる。
[1]FSP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、腎炎の予防または治療剤;
[2]腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、[1]記載の予防または治療剤;
[3]FSP1またはその部分ペプチドをコードする核酸を有するポリヌクレオチドを含有してなる、腎炎の予防または治療剤;
[4]腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、[3]記載の予防または治療剤;
[5]NFAT5もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、腎炎の予防または治療剤;
[6]腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、[5]記載の予防または治療剤;
[7]NFAT5またはその部分ペプチドをコードする核酸を有するポリヌクレオチドを含有してなる、腎炎の予防または治療剤;
[8]腎炎が半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎および紫斑病性腎炎からなる群から選択される、[7]記載の予防または治療剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のFSP1は、TLR4のシグナル伝達系を阻害し、TNF-αを含むサイトカイン発現を抑制することで、腎炎の治療を図ることができる。また、本発明のNFAT5は、FSP1の発現を誘導することで、上記と同様の効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】A:MyD88 KO マウス (TLRファミリーのアダプター分子であるMyD88 のノックアウトマウス)由来メサンギウム細胞におけるTNF-α産生量を示す図である。B:TLR4 mutant マウス由来メサンギウム細胞におけるTNF-α産生量を示す図である。
【図2】A:FSP1処理したメサンギウム細胞におけるTNF-α、IL-6、MCP-1の産生量を示す図である。B:FSP1処理したメサンギウム細胞におけるTNF-α、IL-6、MCP-1のmRNA量比を示す図である。
【図3】FSP1処理したメサンギウム細胞におけるNFkB活性を示す図である。
【図4】A:マウスFSP1トランスジーンの構造を示す図である。Nphs1:Nephrinプロモーター、mFSP1 cDNA:マウスFSP1 cDNA、hGH polyA:ヒト成長ホルモンpolyAシグナル配列、B:コントロールマウスとFSP1.TGマウスの糸球体のFSP1染色像を示す図である。
【図5】密度勾配遠心法によって分離した、FSP1.TGマウスの糸球体におけるTNF-α、IL-6、MCP-1のmRNA量比を示す図である。
【図6】A:Microdissection法によって腎組織からくり抜かれる糸球体を示す図である。B:Microdissection法によって糸球体がくり抜かれた腎組織を示す図である。C:Microdissection法によって切除したFSP1.TGマウスの糸球体におけるTNF-αのmRNA量比を示す図である。
【図7】FSP1.TGマウスの糸球体におけるFSP1、NFAT5染色像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)は、配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を「本発明のFSP1」、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質を「本発明のNFAT5」と略記することがある)である。本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)の細胞(例えば、メサンギウム細胞、間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、腎臓、糸球体などに由来するタンパク質であってよく、また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成されたタンパク質であってもよい。あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを導入された形質転換体から産生された組換えタンパク質であってもよい。

【0011】
配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント (好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである) における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合 (%) を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸 (Phe, Trp, Tyr)、脂肪族アミノ酸 (Ala, Leu, Ile, Val)、極性アミノ酸 (Gln, Asn)、塩基性アミノ酸(Lys, Arg, His)、酸性アミノ酸 (Glu, Asp)、水酸基を含むアミノ酸 (Ser, Thr)、側鎖の小さいアミノ酸 (Gly, Ala, Ser, Thr, Met) などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない (即ち、保存的アミノ酸置換である) ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている (例えば、Bowie et al., Science, 247: 1306-1310 (1990) を参照)。

【0012】
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993) に記載のアルゴリズム [該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム (version 2.0) に組み込まれている (Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needleman et al., J. Mol. Biol., 48:444-453 (1970) に記載のアルゴリズム [該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、Myers and Miller, CABIOS, 4: 11-17 (1988) に記載のアルゴリズム [該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム (version 2.0) に組み込まれている]、Pearson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988) に記載のアルゴリズム [該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている] 等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。

【0013】
配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。

【0014】
配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性としては、例えば、細胞運動能亢進活性、TNF-α、IL-6、MCP-1産生抑制活性、NFkB抑制活性、MMP-2、MMP-13の産生誘導活性などが挙げられる。配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性としては、例えば、ナトリウム/ミオイノシトール共輸送体(Sodium/myoinositol cotransporter;SMIT)、塩化ナトリウム/タウリン共輸送体(Sodium chroride/taurine cotransporter;TauT)、アルドース還元酵素(Aldose reductase)、FSP1などの転写活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、上記活性が同等(例、約0.01~100倍、好ましくは約0.1~10倍、より好ましくは0.5~2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。

【0015】
また、本発明のFSP1(または本発明のNFAT5)としては、例えば、(i)配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2(または配列番号:4)で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、タンパク質の活性が保持される限り特に限定されない。
本発明のFSP1は、好ましくは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、すなわちヒトFSP1タンパク質である。また、本発明のNFAT5は、好ましくは、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、すなわちヒトNFAT5タンパク質である。

【0016】
本発明のFSP1の部分ペプチド(以下、単に「本発明のFSP1部分ペプチド」と略称する場合もある)としては、上記した本発明のFSP1の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つ本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有する限り、何れのものであってもよいが、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列のうち、EF handカルシウム結合ドメインを含む部分アミノ酸配列を有するものなどが用いられる。
本発明のNFAT5の部分ペプチド(以下、単に「本発明のNFAT5部分ペプチド」と略称する場合もある)としては、上記した本発明のNFAT5の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つ本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有する限り、何れのものであってもよいが、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列のうち、Rel ホモロジードメインを含む部分アミノ酸配列を有するものなどが用いられる。
本発明のFSP1部分ペプチド(または、本発明のNFAT5部分ペプチド)のアミノ酸の数は、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)の構成アミノ酸配列のうち少なくとも30個以上、好ましくは60個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。また、「実質的に同質の活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。

【0017】
本発明のFSP1またはその部分ペプチドの塩(または、本発明のNFAT5またはその部分ペプチドの塩)としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。

【0018】
本発明のFSP1またはその塩(または、本発明のNFAT5またはその塩)は、前述した哺乳動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することができる。具体的には、哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズし、可溶性画分および/または核画分を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等で分離精製することによって、本発明のFSP1またはその塩(または、本発明のNFAT5またはその塩)を製造することができる。

【0019】
本発明のFSP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「本発明のFSP1等」と包括的に略記する場合がある)あるいは本発明のNFAT5もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「本発明のNFAT5等」と包括的に略記する場合がある)は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするタンパク質を製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(i)~(v)に記載された方法に従って行われる。
(i)M. Bodanszky およびM.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店

【0020】
このようにして得られたタンパク質は、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られるタンパク質が遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にタンパク質が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。

【0021】
本発明のFSP1部分ペプチドまたはその塩(または、本発明のNFAT5部分ペプチドまたはその塩)は、本発明のFSP1またはその塩(または、本発明のNFAT5部分ペプチドまたはその塩)を適当なペプチダーゼで切断することによっても製造することができる。

【0022】
さらに、本発明のFSP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸(以下、「本発明のFSP1またはその部分ペプチドをコードする核酸」と略記することがある)を含有するポリヌクレオチド(以下、「本発明のFSP1ポリヌクレオチド」と略記することがある)によって形質転換された細胞を培養し、得られる培養物から本発明のFSP1等を分離精製することによって製造することもできる。
また同様に、本発明のNFAT5もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸(以下、「本発明のNFAT5またはその部分ペプチドをコードする核酸」と略記することがある)を含有するポリヌクレオチド(以下、「本発明のNFAT5ポリヌクレオチド」と略記することがある)によって形質転換された細胞を培養し、得られる培養物から本発明のNFAT5等を分離精製することによって製造することもできる。

【0023】
本発明のFSP1またはその部分ペプチドをコードする核酸(または、本発明のNFAT5またはその部分ペプチドをコードする核酸)としては、前述した本発明で用いられるFSP1(または、NFAT5)のアミノ酸配列もしくはその部分アミノ酸配列をコードする核酸を含むものであればいかなるものでもよい。該核酸は、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。

【0024】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、哺乳動物(好ましくは、ヒト)のあらゆる細胞(例えば、メサンギウム細胞、間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)やそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、腎臓、糸球体など由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって増幅することもできる。

【0025】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:1(または、配列番号:3)で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:1(または、配列番号:3)で表される塩基配列と相補的な塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:2(または、配列番号:4)で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号:1(または、配列番号:3)で表される塩基配列と相補的な塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:1(または、配列番号:3)で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、特に好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST (National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool) を用い、以下の条件 (期待値=10; ギャップを許す; フィルタリング=ON; マッチスコア=1; ミスマッチスコア=-3) にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。

【0026】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム塩濃度が約19~約40 mM、好ましくは約19~約20 mMで、温度が約50~約70℃、好ましくは約60~約65℃の条件 (特に、ナトリウム塩濃度が約19 mMで温度が約65℃の場合が好ましい)、あるいは、6×SSC (sodium chloride/sodium citrate) 中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1% SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
本発明のFSP1をコードするDNAは、好ましくは配列番号:1で表される塩基配列を含有するDNAなどである。また、本発明のNFAT5をコードするDNAは、好ましくは配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAなどである。

【0027】
本発明のFSP1部分ペプチド(または、本発明のNFAT5部分ペプチド)をコードするDNAは、配列番号:2(または、配列番号:4)で表されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT-PCR法によって増幅することもできる。

【0028】
具体的には、該部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1) 配列番号: 1(または、配列番号:3)の部分塩基配列を含むDNA、または
(2) 配列番号: 1(または、配列番号:3)の部分塩基配列を含むDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、且つ該DNAにコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAなどが用いられる。
配列番号:1(または、配列番号:3)の部分塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドなどが用いられる。

【0029】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドをコードするDNAは、該タンパク質またはペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイブリダイゼーションすることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。

【0030】
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、適当な発現ベクターに組み込んで使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。

【0031】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)をコードするDNA発現ベクターは、例えば、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。

【0032】
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)のN端末側に付加してもよい。

【0033】
上記のようにして得られる「本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)をコードするDNA」を含有する形質転換体は、公知の方法に従い、該DNAを含有する発現ベクターで、宿主を形質転換することによって製造することができる。宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。

【0034】
形質転換および形質転換体の培養方法は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。

【0035】
前記形質転換体を培養して得られる培養物から本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)を自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)を培養菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性タンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX-100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。一方、核画分から本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)を抽出する場合は、上記の遠心分離またはろ過により得られる沈殿を例えば高張液等で処理し、遠心分離して上清を回収することにより、核タンパク質の粗抽出液を得る方法などが用いられる。
このようにして得られた可溶性画分あるいは核抽出液中に含まれる本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)の単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。

【0036】
かくして得られる本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより確認することができる。

【0037】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドあるいはその塩は、TLR4阻害作用を有する。TLR4はNFkBやTNF-αなどの転写因子またはサイトカインの産生に関与しており、腎炎の発症、進展にも関与することが知られている。従って、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドあるいはその塩は、腎炎の予防・治療剤として有用である。本発明の腎炎とは、正常時と比較した場合に、TNF-α、IL-6、MCP-1などを含むサイトカインを高発現する腎炎である。そのような腎炎としては、例えば、半月体形成性糸球体腎炎、IgA腎症、ループス腎炎、紫斑病性腎炎等が挙げられる。あるいは別の態様においては、本発明の腎炎は、活動性の高い糸球体腎炎である。ここで活動性が高いとは、糸球体における半月体の形成、メサンギウム細胞の増殖、あるいはT細胞やマクロファージの糸球体内への浸潤が観察される状態をいう。また、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドあるいはその塩は、サイトカインの産生が関与する疾患であって、腎炎以外の疾患についても適用することができる。腎炎以外のサイトカインの産生が関与する疾患としては、例えば、膠原病、血管炎、炎症性腸疾患などが挙げられる。

【0038】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドあるいはその塩は、必要により薬理学的に許容し得る担体とともに混合して医薬組成物とした後に、腎炎の予防・治療薬として用いることができる。

【0039】
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその部分ペプチドあるいはその塩は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。

【0040】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、本発明のFSP1等(または、本発明のNFAT5等)を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。

【0041】
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。

【0042】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(好ましくは、ヒト)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその塩を含む腎炎の予防・治療薬の投与量は、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、成人患者(体重60kg)においては、一日あたり、約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。

【0043】
さらに、本発明のFSP1ポリヌクレオチド(または、本発明のNFAT5ポリヌクレオチド)もまた、必要により薬理学的に許容し得る担体とともに混合して医薬組成物とした後に、腎炎の予防・治療薬として用いることができる。本発明のポリヌクレオチドは、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)の製造方法で記載した通りのものである。

【0044】
本発明のFSP1ポリヌクレオチド(または、本発明のNFAT5ポリヌクレオチド)を含有してなる、腎炎の予防・治療薬は、本発明のFSP1ポリヌクレオチド(または、本発明のNFAT5ポリヌクレオチド)そのものであってもよいが、該ポリヌクレオチドを薬理学的に許容し得る担体とともに混合して得られる医薬組成物であることが好ましい。該ポリヌクレオチドは、本発明のFSP1(または、本発明のNFAT5)またはその塩を含む腎炎の予防・治療物質の場合と同様にして、製剤化し、哺乳動物(好ましくは、ヒト)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。また、本発明のポリヌクレオチドは、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後に、上記の手段で製剤化して投与することもできる。
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与してもよく、エアロゾル化後、吸入剤として気管内に局所投与することもできる。さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、本発明のポリヌクレオチドを単独またはリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。

【0045】
該ポリヌクレオチドの投与量は、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、成人患者(体重60kg)においては、一日あたり、約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
【実施例】
【0047】
(実施例1)TLR4シグナル経路変異マウス由来メサンギウム細胞におけるサイトカイン産生
8週齢の MyD88 KO マウス (MyD-/-)、MyD KOのコントロールマウス (MyD+/+)、TLR4 mutant マウス (C3H/HeJ)、TLR4 mutantのコントロールマウス (C3H/HeN)の4種類のマウスから腎臓を摘出し、糸球体を単離後、マウス初代メサンギウム細胞を作製した。10%FCS添加RPMI1640培地で4代継代した細胞を実験に供した。
メサンギウム細胞 10,000個を96穴培養プレートに付着させた後、LPS 500 pg/mlあるいはPBSを添加後10時間の培養上清を採取し、TNF-α濃度を市販のELISAキットで測定した(図1)。MyD-/-マウスとC3H/HeJマウス由来のメサンギウム細胞は、LPS刺激に全く応答しなかった。従って、メサンギウム細胞ではTLR4を介してサイトカイン産生が誘導されることが判った。
【実施例】
【0048】
(実施例2)FSP1によるin vitroサイトカイン産生抑制効果
BALB/cマウスから得られたメサンギウム細胞を培養後、LPS 500 pg/mlとリコンビナントマウスFSP1を0、2、10μMの濃度で添加した。4時間後にRNAzolを用いてRNAを抽出し、real time PCR法で、TNF-α、IL-6、MCP-1のmRNA量を測定し18S RNA量で補正して定量化した(図2B)。また10時間培養後の培養上清中の TNF-α、IL-6、MCP-1濃度を市販のELISAキットで測定した(図2A)。FSP1は、LPS刺激したメサンギウム細胞のサイトカイン産生レベルを有意に抑制した。
【実施例】
【0049】
(実施例3)FSP1によるin vitro NFkB活性抑制
BALB/cマウスから得られたメサンギウム細胞を培養後、Amaxa社遺伝子導入装置を用いてNFkBレポーターベクター(pGL4.32[luc 2p/NFkB-RE])とコントロールベクター(pRL-SV40)を導入し、24時間後にLPS(10 ng/ml)とFSP1を添加した。4時間後にDual-Luciferase Reporter Assayキット(プロメガ社)を用いて、NFkB活性を検討した(図3)。FSP1は、LPS刺激したメサンギウム細胞のNFkB活性を有意に抑制した。
【実施例】
【0050】
(実施例4)FSP1トランスジェニックマウスにおけるin vivo サイトカイン産生抑制効果
Nephrin promoterにマウスFSP1の遺伝子を繋ぎ、トランスジーンを構築し、マウス受精卵に導入して、ポドサイト特異的にFSP1遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウス(+/-;FSP1.TG)を作製した(図4)。トランスジェニックマウスとコントロールマウスにLPS 100 ngを腹腔内投与後24時間で、腎臓を摘出し、必要に応じてMicrodissection法により糸球体を単離した。RNAを抽出後real time PCR法で、TNF-α、IL-6、MCP-1のmRNA量を測定し18S RNA量で補正して定量化した(図5、6)。ポドサイト特異的にFSP1を過剰発現するトランスジェニックマウス(+/-)はコントロールマウス(-/-)に比べて、サイトカイン産生レベルを有意に抑制した。
【実施例】
【0051】
(実施例5)FSP1陽性ポドサイトにおけるNFAT5発現
実施例4のポドサイト特異的にFSP1遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウス(+/-)のポドサイトにおいて、NFAT5が発現していることを共焦点レーザー顕微鏡を用いて確認した(図7)。また、ポドサイト細胞株を高浸透圧下で培養すると、FSP1 mRNA発現量が約10倍に上昇した(データ未掲載)。NFAT5は高浸透圧下における細胞応答に関わる転写因子であることから、ポドサイトにおけるFSP1誘導にNFAT5が関与する可能性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のFSP1または転写因子NFAT5は、サイトカインを高発現する腎炎の予防または治療剤として用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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