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明細書 :植物育成のための光制御装置、光制御方法、光制御プログラム及び光制御のためのデータ収集装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-128252 (P2014-128252A)
公開日 平成26年7月10日(2014.7.10)
発明の名称または考案の名称 植物育成のための光制御装置、光制御方法、光制御プログラム及び光制御のためのデータ収集装置
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 601C
A01G 7/00 601B
A01G 7/00 603
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2012-289219 (P2012-289219)
出願日 平成24年12月29日(2012.12.29)
発明者または考案者 【氏名】明石 行生
【氏名】田中 紘一
【氏名】畑下 昌範
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】397022885
【氏名又は名称】公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター
個別代理人の代理人 【識別番号】100110814、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 敏郎
審査請求 未請求
テーマコード 2B022
Fターム 2B022DA01
2B022DA08
要約 【課題】自然光のように変化する外部光との併用が可能で、植物の育成条件に適した光形態形成が可能な光制御装置を提供する。
【解決手段】植物に光を照射することで植物の成長を促進させる植物育成のための光制御装置1において、植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部11と、植物に応じて予め準備された光制御モデルを記憶し、光検出部によって検出された分光放射強度と光制御モデルの算出結果とから不足分の分光放射強度を求める制御部13と、この制御部13からの指令信号に基づいて、不足分の分光放射強度を補光する補光部12とを有し、補光部12によって補光された光の分光放射強度を光検出部11で検出し、検出された結果を制御部13にフィードバックするように構成した。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
植物に光を照射することで前記植物の成長を促進させる植物育成のための光制御装置において、
前記植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部と、
前記植物に応じて予め準備された光制御モデル及び予め定められた値を記憶する記憶部と、
前記光検出部によって検出された分光放射強度に基づき前記光制御モデルを用いて得られた結果と前記値とから不足分の分光放射強度を求める制御部と、
この制御部からの指令信号に基づいて、不足分の分光放射強度を補光する補光部と、
を有し、
補光後に前記植物に照射される光の分光放射強度を前記光検出部で検出し、検出された結果を前記制御部にフィードバックすること、
を特徴とする植物育成のための光制御装置。
【請求項2】
前記光検出器によって植物ごとに求められた分光放射強度と、前記植物ごとの光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度との関係から、前記光制御モデルを作成する光モデル作成部を有することを特徴とする請求項1に記載の植物育成のための光制御装置。
【請求項3】
前記光制御モデルが、分光放射強度と、光合成に関する作用分光感度と、フィトクロムの作用分光感度と、クリプトクロムの作用分光感度を用いて以下の式で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物育成のための光制御装置。
JP2014128252A_000010t.gif
(PPE:光合成・光形態形成効果、λ:波長、φ(λ):分光放射強度(W/m)、P(λ):光合成の作用分光感度、Pr(λ):フィトクロムPr型の作用分光感度、Pfr(λ):フィトクロムPfr型の作用分光感度、Cry(λ):クリプトクロムの作用分光感度、a,b,b,b,c:係数、α1~α2:光合成の有効感度波長領域、β1~β2:フィトクロムPr型の有効感度波長領域、β3~β4:フィトクロムPfr型の有効感度波長領域、γ1~γ2:クリプトクロムの有効感度波長領域)
【請求項4】
請求項3に記載の植物育成のための光制御装置における式(1)のクリプトクロムの作用分光感度の項において、赤色光と青色光との割合によって以下の式(2)に当てはめ、
JP2014128252A_000011t.gif(b3:係数、δ1~δ2:青色光の波長領域、δ3~δ4:赤色光の波長領域)
BR≧0のときとBR<0のときとで係数cを切り替えることを特徴とする請求項3に記載の植物育成のための光制御装置。
【請求項5】
植物に光を照射することで前記植物の成長を促進する植物育成のための光制御方法において、
前記植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部と、前記植物に応じて予め準備された光制御モデル及び予め定められた値を記憶する記憶部と、前記光検出部の検出結果に基づいて不足分の分光放射強度を求める制御部と、この制御部からの指令信号によって不足分の分光放射強度を補光する補光部とを準備し、
前記光検出部によって前記植物に照射される分光放射強度を検出するステップと、
検出された分光放射強度と前記記憶部から読み出した光制御モデルとから不足分の分光放射強度を求めるステップと、
得前記制御部からの指令信号に基づいて不足分の分光放射強度を補光するステップと、
補光後に前記植物に照射される光の分光放射強度を前記光検出部で検出し、検出された結果を前記制御部にフィードバックするステップと、
を有することを特徴とする植物育成のための光制御方法。
【請求項6】
前記植物ごとに求められた分光放射強度と、前記植物ごとの光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度との関係から前記光制御モデルを作成するステップを有することを特徴とする請求項5に記載の植物育成のための光制御方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の植物育成のための光制御方法において、前記光制御モデルの光合成に関する作用分光感度と、フィトクロムの作用分光感度と、クリプトクロムの作用分光感度とを含む部分が以下の式で表されることを特徴とする植物育成のための光制御方法。
JP2014128252A_000012t.gif(PPE:光合成・光形態形成効果、λ:波長、φ(λ):分光放射強度(W/m)、P(λ):光合成の作用分光感度、Pr(λ):フィトクロムPr型の作用分光感度、Pfr(λ):フィトクロムPfr型の作用分光感度、Cry(λ):クリプトクロムの作用分光感度、a,b,b,b,c:係数、α1~α2:光合成の有効感度波長領域、β1~β2:フィトクロムPr型の有効感度波長領域、β3~β4:フィトクロムPfr型の有効感度波長領域、γ1~γ2:クリプトクロムの有効感度波長領域)
【請求項8】
式(1)のクリプトクロムの作用分光感度の項において、赤色光と青色光との割合によって以下の式(2)に当てはめ、
JP2014128252A_000013t.gif(b3:係数、δ1~δ2:青色光の波長領域、δ3~δ4:赤色光の波長領域)
BR≧0のときとBR<0のときとで係数cを切り替えることを特徴とする請求項7に記載の植物育成のための光制御方法。
【請求項9】
コンピュータにインストールされることで請求項5~8のいずれかに記載の光制御方法の各ステップを実行させることを特徴とする植物育成のための光制御プログラム。
【請求項10】
請求項5~8のいずれかに記載の植物育成のための光制御方法に用いられる光制御モデルを作成するためのデータ収集装置であって、植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部と、この光検出部によって検出された分光放射強度、植物ごとの光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度の関係から光制御モデルを作成する光モデル作成部と、作成された前記光制御モデルを記憶する記憶部とを有することを特徴とする光制御のためのデータ収集装置。



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成に必要な光を制御する光制御装置及び光制御方法並びに光制御プログラムに関し、特に、育成の対象となる植物に適した光形態を形成して前記植物に照射することのできる光制御装置、光制御方法及びこの方法に使用される光制御プログラム並びに光制御のためのデータ収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば植物の生産現場においては、短日植物や長日植物の花芽の形成時期を調整するために、前記植物に照射する光の時間や分光放射強度を調整することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
ところで、光と植物との関係においては、「赤色光・遠赤色光」は「発芽誘導、発芽阻害、成長調節、茎伸張・葉面積拡大というような形態形成、発芽形成、色素合成」に関係することが知られている。また、「青色光」は「茎伸張・出葉速度・葉厚というような形態形成、光屈性、気孔開口、葉緑体の運動、花成というような花芽形成、既日リズムの同調、色素合成」に関係することが知られている。
【0003】
LEDは、RGB(赤緑青)の発光色の組合せにより、あらゆる色の照明光を作り出すことが容易なうえ、低消費電力や低発熱の点で他の照明装置に優れることから、LEDを利用して分光放射強度(周波数ごとの光強度)の調整を行い、植物工場等における植物生産性を高めようとする提案もなされている。
例えば、特許文献2に記載の育成方法では、赤と青の二種類のLEDを隣接して配置し、予め定められたタイミングで赤と青のLEDを交互に発光させたり同時に発光させたりすることで、植物の光合成に加えて光形態形成を促進さようとしている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-39901号公報
【特許文献2】特開2009-125007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、さらに消費電力の削減を図って植物生産のコストを削減したり、より自然に近い植物を生産するには、可能な限り自然光を照射するのが好ましい。また、植物の育成に適した光形態は植物の種類や成長の過程によって異なり、特許文献1,2のような固定的な光形態では、植物の十分な育成を図ることは困難である。特に、自然光のように天候や時間、季節により変化する外部光に対してLED等の照明装置を併用する場合は、特許文献1,2に記載されたような従来技術では変化に応じた光形態で照射を行うことは困難である。また、自然光が十分に照射している場合に無駄なエネルギーが消費されるという問題がある。さらに、必要以上に分光放射強度の高い光を照射すると、葉が収縮したり枯れたりすることがあり、成長阻害や商品価値の低下につながる恐れがある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、自然光のように変化する外部光との併用が可能で、植物の種類や成長の過程に対応が可能で育成条件に適した光形態を、前記外部光の変化に伴って調整することが可能で無駄のない光制御が可能な光制御装置、光制御方法、この光制御方法のための光制御プログラム及び光制御のためのデータ収集装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、植物に光を照射することで前記植物の成長を促進させる植物育成のための光制御装置において、前記植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部と、前記植物に応じて予め準備された光制御モデル及び予め定められた値を記憶する記憶部と、前記光検出部によって検出された分光放射強度に基づき前記光制御モデルを用いて得られた結果と前記値とから不足分の分光放射強度を求める制御部と、この制御部からの指令信号に基づいて、不足分の分光放射強度を補光する補光部と、を有し、補光後に前記植物に照射される光の分光放射強度を前記光検出部で検出し、検出された結果を前記制御部にフィードバックするように構成してある。
【0007】
前記光制御モデルは、請求項2に記載するように、植物ごとに求められた分光放射強度と、前記植物ごとの光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度との関係から作成することができ、この関係を利用して前記光制御モデルを作成する光モデル作成部を有する構成としてもよい。
具体的には、請求項3に記載するように、前記光制御モデルが、分光放射強度と、光合成に関する作用分光感度と、フィトクロムの作用分光感度と、クリプトクロムの作用分光感とを用いて、
JP2014128252A_000003t.gif(PPE:光合成・光形態形成効果、λ:波長、φ(λ):分光放射強度(W/m)、P(λ):光合成の作用分光感度、Pr(λ):フィトクロムPr型の作用分光感度、Pfr(λ):フィトクロムPfr型の作用分光感度、Cry(λ):クリプトクロムの作用分光感度、a,b,b,b,c:係数、α1~α2:光合成の有効感度波長領域、β1~β2:フィトクロムPr型の有効感度波長領域、β3~β4:フィトクロムPfr型の有効感度波長領域、γ1~γ2:クリプトクロムの有効感度波長領域)の式で表されるものとしてもよい。
【0008】
なお、この場合、請求項4に記載するように、式(1)のクリプトクロムの作用分光感度の項において、赤色光と青色光との割合によって以下の式(2)に当てはめ、
JP2014128252A_000004t.gif(b3:係数、δ1~δ2:青色光の波長領域、δ3~δ4:赤色光の波長領域)
BR≧0のときとBR<0のときとで係数cを切り替えるようにしてもよい。
【0009】
本発明の光制御方法は、請求項5に記載するように、植物に光を照射することで前記植物の成長を促進する植物育成のための光制御方法において、前記植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部と、前記植物に応じて予め準備された光制御モデル及び予め定められた値を記憶する記憶部と、前記光検出部の検出結果に基づいて不足分の分光放射強度を求める制御部と、この制御部からの指令信号によって不足分の分光放射強度を補光する補光部とを準備し、前記光検出部によって前記植物に照射される分光放射強度を検出するステップと、検出された分光放射強度と前記記憶部から読み出した光制御モデルとから不足分の分光放射強度を求めるステップと、得前記制御部からの指令信号に基づいて不足分の分光放射強度を補光するステップと、補光後に前記植物に照射される光の分光放射強度を前記光検出部で検出し、検出された結果を前記制御部にフィードバックするステップとを有する。
【0010】
請求項6に記載するように、前記植物ごとに求められた分光放射強度と、前記植物ごとの光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度との関係から前記光制御モデルを作成するステップを有する構成としてもよく、請求項7に記載するように、前記光制御モデルにおける分光放射強度、光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度の部分が以下の式で表されるものであってもよい。
JP2014128252A_000005t.gif(PPE:光合成・光形態形成効果、λ:波長、φ(λ):分光放射強度(W/m)、P(λ):光合成の作用分光感度、Pr(λ):フィトクロムPr型の作用分光感度、Pfr(λ):フィトクロムPfr型の作用分光感度、Cry(λ):クリプトクロムの作用分光感度、a,b,b,b,c:係数、α1~α2:光合成の有効感度波長領域、β1~β2:フィトクロムPr型の有効感度波長領域、β3~β4:フィトクロムPfr型の有効感度波長領域、γ1~γ2:クリプトクロムの有効感度波長領域)としてもよい。
【0011】
この場合、請求項8に記載するように、式(1)のクリプトクロムの作用分光感度の項において、赤色光と青色光との割合によって以下の式(2)に当てはめ、
JP2014128252A_000006t.gif(b3:係数、δ1~δ2:青色光の波長領域、δ3~δ4:赤色光の波長領域)
BR≧0のときとBR<0のときとで係数cを切り替えるようにしてもよい。
上記の光制御方法の各ステップは、請求項9に記載のプログラムをコンピュータにインストールすることで実行することができる。
また、光制御のためのデータ収集装置は、請求項10に記載するように、植物に照射される光の分光放射強度を検出する光検出部と、この光検出部によって検出された分光放射強度、植物ごとの光合成に関する作用分光感度、フィトクロムの作用分光感度及びクリプトクロムの作用分光感度の関係から光制御モデルを作成する光モデル作成部と、作成された前記光制御モデルを記憶する記憶部とを有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自然光のように変化する外部光とLED等の照明装置とを併用することでLED等の照明装置の電力消費量を可能な限り削減することが可能であるとともに、自然光が十分に照射されているときの無駄な電力消費を抑制することができる。また、自然光の照射により自然に近い環境下で植物を育成することができるとともに、植物の種類や成長過程などの育成条件に応じた光形態を、外部光の変化に応じて調整することで一定に保つことができ、収穫時期、収穫量、収穫回数の調整を行いつつ、高品質の植物を安定的に生産することが可能になる。
また、本発明のデータ収集装置を例えば収穫量の多い農場や味が優れた植物を生産する農場に設置して光制御モデルを作成することにより、収益率の高い光制御モデルからなるデータベースを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の光制御装置によって補光を行う補光器を備えた栽培装置の一例にかかり、その構成を説明する概略図、図3は、本発明の光制御装置の一実施形態にかかり、その構成を説明するブロック図である。
この実施形態において植物を栽培する栽培装置10は、一般的な水耕栽培に用いられている栽培装置と同様の構成を有しており、図1に示すように、植物を植え付ける多数の栽培孔101aを備えた植栽部101と、この植栽部101に植え付けられた植物に供給する培養液を貯留し、植栽部101を培養液に浮遊状態で収容する貯液容器102とを有している。
【0014】
この栽培装置10で栽培される植物には、自然光等の外部光が照射されるが、この外部光は天候や季節によって変化し、また、植物の成長に適した波長成分の光は自然光のみによっては十分に得ることができないことがある。
そこで、この実施形態では、植物に照射される光を検出する光検出器11を栽培装置10に設けるとともに、この光検出器11の検出結果に基づいて必要な量の光を補光する補光器12とを備えている。
【0015】
補光器12は、貯液容器102に取り付けられた一対のアーム122と、このアーム122によって支持されたフレーム121とを有し、発光体である多数のLED120はフレーム121に取り付けられている。アーム122は、貯液容器102の側面に枢軸123によって回動自在に取り付けられ、貯液容器102の側面に形成された部分円弧状の溝125に位置決め用のボルトを差し込んで締め付けることで、任意の角度位置に位置決め自在である。
図1に示すような形態の栽培装置10は、多数の栽培装置10を棚上に配列することで植物工場における植物の大量生産も可能である他、単体では小型軽量であるため、家庭菜園やレストランにおける店内菜園等にも好適に利用することができる。
図2は、栽培装置の他の例にかかり、植物工場等のような比較的大規模な施設での使用に適した棚状の栽培装置の一例を示す概略図である。
栽培装置20は、植物を植え付ける多数の栽培孔201aを備えた棚板状の植栽部201と、この植栽部201に植え付けられた植物に供給する培養液を貯留し、植栽部201を培養液に浮遊状態で収容する貯液容器202とを有している。植栽部201には適宜の位置に光検出器21が配置されている。
補光器22は、植栽部201の上方に植栽部201と平行に配置された棚板状のフレーム221と、このフレーム221に取り付けられたLED220とを有している。
上記構成の栽培装置20及び補光器22を、図2において仮想線で示すように上下方向に複数配置したり、平面方向に複数配置したりすることで、大量の植物の栽培が可能になる。
【0016】
図3に示すように、栽培装置10,20に植栽された植物に対して常に好適な形態の光を自動的に照射させるために、この実施形態の光制御装置1,2は光検出器11,21の検出結果から不足分の分光放射強度を算出する制御部13と、この制御部13に対して植物ごとの光制御モデルを与えるモデル記憶部14と、植物ごとの測定データ等に基づいて光制御モデルを作成し、モデル記憶部14に格納するモデル作成部15とを有している。
前記した制御部13、モデル記憶部14及びモデル作成部15としては、市販のパーソナルコンピュータ(PC)にモデル作成用のアプリケーションをインストールしたものを利用することができる。
【0017】
[光検出器]
光検出器11,21は、植物に照射される光の分光放射強度を検出する。光の分光放射強度を検出することができるものであれば、市販のものを用いることができる。分光放射強度の検出方法としては、分光器を通した分光によるもの、一定波長域の光を透過する複数のフィルタを使って波長域ごとの分光放射強度をもとめるもの、一定波長の光を検出する検出素子によるものなどが知られている。
光検出器11,21は、植物に照射される光を正確に検出できるように、植栽部101の中央や周縁部などに配置する。光検出器11,21の数は一つでもよいが、配置位置を変えて複数設けるのが好ましい。
【0018】
[補光器]
この実施形態において補光器12,22は、波長の異なる複数種類の照明体を組み合わせて構成される。前記照明体は、光度を容易に調整でき、消費電力が小さく発熱量も小さいLEDであるのが好ましい。上記したように、「赤色光・遠赤色光」は「発芽誘導、発芽阻害、成長調節、茎伸張・葉面積拡大というような形態形成、発芽形成、色素合成」に作用し、「青色」は「茎伸張・出葉速度・葉厚というような形態形成、光屈性、気孔開口、葉緑体の運動、花成というような花芽形成、既日リズムの同調、色素合成」に作用することから、補光器12は少なくとも赤色と青色のLEDを備えているのが好ましい。緑色のLEDをさらに備えていてもよく、RGBの三原色のLEDを備えることで、補光可能な分光放射光の範囲を拡げることが可能になる。
【0019】
[制御部及び光制御モデル]
図4(a)~(d)は、光源として白色蛍光灯(照度100)、緑色蛍光灯(照度100,150,200)、赤色LED(照度100,200,250,300,400,600)、青色LED(照度100)、赤/青LED(照度:赤50+青50,赤500+青500)、緑色LED(照度200)を用いた場合のレタスにおける栽培日数と乾燥重量との関係を示すグラフである。図4(a)~(d)の各グラフにおいて縦軸は乾燥重量(g)で、横軸は経過日数である。光制御モデルを作成するには、波長の異なる光源を種々準備して図4(a)~(d)と同様のデータを収集する。
このようなデータを用いて、植物育成と光との関係を測るための手法としては、植物育成のための測光量としては、PPFD(光合成有効光量子束密度:μmol m-2・s-1)が知られている。PPFDは以下の式で表される。
JP2014128252A_000007t.gif ここで、h:ブランク定数、c:光の速度、φ(λ):分光放射強度(W/m)、λ:光の波長である。
図5(a)は相対乾燥重量(白色蛍光灯(FL(白))を1とする乾燥重量の比)とPPFDとの関係を示すグラフである。図4に示すような測定で得られたデータに基づくこのグラフの回帰直線式は、Y=0.0097X+0.242で表される。図示するように、この回帰直線式に対してデータのばらつきが大きい(決定係数R=0.5458)ことから、光制御モデルとしてPPFDは不向きである。
【0020】
図6にレタスの場合の吸光度と波長との関係を示す。
図6の例では、光合成による効果は、概ね波長400nm~700nmの範囲内で、分光放射強度φ(λ)(W/m)と光合成の作用分布光感度P(λ)との関係で表される。
フィトクロムによる作用は、概ね波長300nm~800nmの範囲内で、分光放射強度φ(λ)(W/m)とフィトクロムPr型の作用分光感度Pr(λ)との関係式及び分光放射強度φ(λ)(W/m)とフィトクロムPfr型の作用分光感度Pfr(λ)との関係で表される。
クリプトクロムによる作用は、概ね波長300nm~800nmの範囲内で、分光放射強度φ(λ)(W/m)とクリプトクロムの作用分光感度Crv(λ)との関係で表される。
以上の関係から本願発明者は、分光放射強度と、光合成に関する作用分光感度と、フィトクロム、クリプトクロム(フォトトロピン)の作用分光感度を用いて、照射光の乾燥重量への貢献度を定量化した以下の式(1)を考案した。
JP2014128252A_000008t.gif
【0021】
ここで、PPEは、光合成・光形態形成効果(Photosynthetic
and Photomorphogenesis Effect [W/m2])を意味し、式中の分光放射強度φ(λ)には光検出器11からの検出結果を代入し、分光感度P(λ)、Pr(λ)、Pfr(λ)、Crv(λ)としては植物ごとに測定等で得られたものを用いる。
また、α1,α2は、光合成による効果が得られる範囲の上限と下限で、図6の例ではα1=400nm、α2=700nm、β1,β2は、フィトクロムPr型の作用が生じる範囲の上限と下限でβ1=300nm、β2=800nm、β3,β4は、フィトクロムPfr型の作用が生じる範囲の上限と下限でβ3=300nm、β4=800nm、γ1,γ2は、クリプトクロムによる作用が生じる範囲の上限と下限でγ1=300nm、γ2=800nmである。
係数a,b,b1,b2,cは植物ごとに決定されるもので、レタスの場合、a=0.8~1.2、b=0.6~1.0,b1=0.2~0.35、b2=0.65~0.8、係数cは青色光と赤色光の割合によって決定され、以下の式
JP2014128252A_000009t.gif(係数b3=0.1)の左辺BRがBR≧0のとき係数c=0.25、BR<0のとき係数c=1.25である。
σ1、σ2は青色光の波長範囲で、σ1=300nm、σ2=500nm、σ3、σ4は赤色光の波長範囲で、σ1=500nm、σ2=800nmである。
図5(b)は、相対乾燥重量(図5(a)と同様に白色蛍光灯(FL(白))を1とする乾燥重量の比)とPPEとの関係を示すグラフである。このグラフの回帰直線式は、Y=0.0979X-0.0974で表され、回帰直線式に対する決定係数R=0.8942となり、PPEを用いることで、データの分布は回帰直線式上に可能な限り収束する。本発明の光制御装置及び方法では、このPPEを光制御モデルとして用いる。
【0022】
このように、本発明の光制御装置及び方法で使用される光制御モデルは、植物の種類ごとに図4に示すような測定で得られたデータが、図5(b)に示すように一つの回帰直線に可能な限り収斂するように、パソコン等のモデル作成部15でPPEの式の各係数(符号の+-を含む)を求めることで得られる。そして、得られた光制御モデルは、植物ごとに分類してモデル記憶部14に格納される。
制御部13は、栽培しようとする植物に対応した光制御モデルをモデル記憶部14から読み出し、光検出器11から入力された分光放射強度(周波数ごとの光強度)の各々をこの光制御モデルに代入する。そして、制御部13は、PPEが、植物ごとに予め実験等によって求められ、植物の栽培に適した値(以下、適正値と記載)になるように、不足分の分光放射強度を求める。
このようにして得られた不足分の分光放射強度は補光器12に送信され、補光器12から照射される光の分光放射強度が前記不足分の分光放射強度にしたがって調整される。
【0023】
図7は、上記構成の光制御装置1の作用を説明する流れ図である。
光制御装置の起動(ステップS1)とともに、光検出器11によって分光放射強度が検出される(ステップS2)。
この検出結果は制御部13に送信され、モデル記憶部14から読み出された光制御モデルに代入される(ステップS3)。
制御部13ではPPEの前記適正値と光制御モデルでの計算結果とが比較され(ステップS4)、不足分の分光放射強度が求められる(ステップS5)。そして、制御部13から補光器12に対して補光指令が出力される(ステップS6)。これにより補光器12の照度は変化するが、補光の結果は光検出器によって検出され(ステップS1)、以後、ステップS2~S6の動作が光制御の終了まで繰り返される(ステップS7)。これらの各ステップは、パソコン等の処理装置にインストールされメモリに記憶されたプログラムを実行することによって行なわれる。
以上の手順により、栽培装置10に植栽された植物には常に好適な形態の光が照射されることになる。
【0024】
[データ収集装置]
上記で説明した光制御装置1のうち、光検出器11(21)と、制御部13と、モデル作成部15と、モデル記憶部14とで、所定の植物の成長と前記植物に照射された分光放射強度に関するデータを収集して光制御モデルを作成するデータ収集装置を構成することができる。
このデータ収集装置を、例えば農場に設置して、種まきから収穫までの期間、植物に照射されている光の分光放射強度を継続して計測することにより、植物の成長と植物に照射された分光放射強度との関係を示すデータを収集する。そして、得られたデータに基づいて、モデル作成部15が光制御モデルを作成する。作成された光制御モデルは、モデル記憶部14に格納される。このような測定とモデル作成を収穫量の多い農場や味が優れた植物を生産する農場で行うことにより、収益率の高い光制御モデルからなるデータベースを構築することができる。
【0025】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限られない。
例えば、本発明が適用される栽培装置は図1及び図2に示すようなものに限らず、例えば丸形のテーブル状のものや水槽状のものであってもよい。
また、発光体はLEDであるとして説明したが、分光放射強度を調整できるのであれば、蛍光灯や白熱灯等の他の発光体も使用が可能である。これら発光体の多くは、それ自体が赤色や青色の発光色を有するものではないので、フィルタや着色によって赤色や青色の発光体を得るようにする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の光制御装置によって補光を行う補光器を備えた栽培装置の一例にかかり、その構成を説明する概略図である。
【図2】本発明の光制御装置によって補光を行う補光器を備えた栽培装置の他の例にかかり、その構成を説明する概略図である。
【図3】本発明の光制御装置の一実施形態にかかり、その構成を説明するブロック図である。
【図4a】光源として白色蛍光灯(照度100)、緑色蛍光灯(照度100)、赤色LED(照度100)、赤/青LED(照度50+50)、青色LED(照度100)を用いた場合のレタスにおける栽培日数と乾燥重量との測定例にかかり、その関係を示すグラフである。
【図4b】光源として白色蛍光灯(照度100)、緑色蛍光灯(照度200)、赤色LED(照度200)、赤色LED(照度400)、赤色LED(照度600)を用いた場合のレタスにおける栽培日数と乾燥重量との測定例にかかり、その関係を示すグラフである。
【図4c】光源として白色蛍光灯(照度100)、緑色蛍光灯(照度150)、赤色LED(照度300)、赤色LED(照度500)、赤/青LED(照度500+100)を用いた場合のレタスにおける栽培日数と乾燥重量との測定例にかかり、その関係を示すグラフである。
【図4d】光源として白色蛍光灯(照度100)、緑色蛍光灯(照度200)、赤色LED(照度200)、赤色LED(照度250)、緑色LED(照度200)を用いた場合のレタスにおける栽培日数と乾燥重量との測定例にかかり、その関係を示すグラフである。
【図5a】相対乾燥重量とPPFDとの関係を示すグラフである。
【図5b】相対乾燥重量とPPFとの関係を示すグラフである。
【図6】レタスの場合の吸光度と波長との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の光制御装置の作用を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0027】
1,2 光制御装置
10,20 栽培装置
11,21 光検出器
12,22 補光器
13 制御部
14 モデル記憶部
15 モデル作成部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図4a】
5
【図4b】
6
【図4c】
7
【図4d】
8
【図5a】
9
【図5b】
10