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明細書 :半導体変調素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-127607 (P2014-127607A)
公開日 平成26年7月7日(2014.7.7)
発明の名称または考案の名称 半導体変調素子
国際特許分類 H01L  29/872       (2006.01)
H01L  29/47        (2006.01)
H01L  21/338       (2006.01)
H01L  29/812       (2006.01)
FI H01L 29/48 D
H01L 29/48 M
H01L 29/80 B
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2012-283832 (P2012-283832)
出願日 平成24年12月27日(2012.12.27)
発明者または考案者 【氏名】塩島 謙次
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査請求 未請求
テーマコード 4M104
5F102
Fターム 4M104AA03
4M104AA04
4M104AA10
4M104BB05
4M104BB09
4M104CC03
4M104DD36
4M104GG03
4M104HH17
4M104HH20
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ10
5F102GL02
5F102GL04
5F102GT01
5F102GT03
要約 【課題】本発明は、コンパクトで簡単な構造の半導体変調素子を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体変調素子は、電極層との間にショットキーバリアが形成された半導体層を備え、ショットキーバリアを介して流れる電流は、真電流成分It及び変位電流成分Idを含んでおり、所定の入力電圧範囲において真電流成分Itが変位電流成分Idよりも小さくなるように設定されている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
電極層との間にショットキーバリアが形成された半導体層を備える半導体変調素子において、前記ショットキーバリアを介して流れる電流は、以下の算出式で求められる真電流成分It及び変位電流成分Idを含んでおり、所定の入力電圧範囲において真電流成分Itが変位電流成分Idよりも小さくなるように設定されている半導体変調素子。
【数1】
JP2014127607A_000005t.gif
s;逆方向飽和電流、q;電荷素量、V;印加電圧、k;ボルツマン定数、A**;リチャードソン定数;φB;ショットキーバリアの障壁高さ、ε;半導体層の誘電率、Na;不純物濃度、Vbi;内蔵電位、T;絶対温度、t;時間
【請求項2】
前記半導体層は、不純物として低濃度のMgが導入されたp型GaNからなり、前記電極層は、Niからなる請求項1に記載の半導体変調素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体変調素子を備える位相変調器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアを有するとともに位相変調を行う半導体変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子では、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、GaAs(ガリウム/ヒ素)、InP(インジウム/リン)、GaN(窒化ガリウム)といった結晶材料に不純物を導入した半導体材料を用いて、ダイオード、トランジスタ、IC、光デバイス等の様々な素子が実用化されている。こうした半導体材料に対して、その表面に特定に金属材料を接触させると、その接触面の近傍にショットキーバリアと称される現象が生じ、キャリア(電子又は正孔)の少ない一種の電位の障壁が形成されるようになる。こうした現象を利用してショットキーダイオード、MESFETといった半導体素子が開発されている。特許文献1では、不純物密度より密度の高い深い準位を有する半導体基板上に金属のショットキー電極を堆積してショットキー接触を形成し、大電流を流すことで空乏層中の深い準位を帯電させ書込み状態を記憶するとともにショットキー接触に光を照射して空乏層中の欠陥をイオン化するショットキー型消去書込み可能メモリが記載されている。
【0003】
無線通信システムでは、各種機能を実現するために多くの半導体素子が使用されている。無線通信システムにおいて、一般に音声信号等の情報信号に基づいて搬送波信号の振幅、周波数又は位相を変化させる変調処理が行われており、こうした変調処理に用いられる変調器としては、例えば、Siバイポーラ直交変調器のようにトランジスタを複数段接続したものが挙げられる。また、変調処理に用いられる半導体素子としては、例えば、特許文献2では、ソース電極とドレイン電極との間に、2本のゲート電極を有するデュアルゲートHEMT(High Electron Mobility Transistor)構造FET(Field Effect Transistor)が記載されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2000-252433号公報
【特許文献2】特開2007-242746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信システムに採用されている変調方式の1つにデジタル位相変調方式が挙げられる。デジタル位相変調方式は、雑音や信号の減衰に影響を受けることが少なく、必要となる周波数帯域も狭くて済むといった特徴があるので、携帯電話や衛星デジタル放送等に広く利用されている。
【0006】
デジタル位相変調方式では、基準となる搬送波と位相のずれた波とを用いてそれぞれの波に情報を割り当てるPSK(Phase Shift Keying)波が使用されており、最も簡単なPSK波としては、1ビットを示す2値PSK波がある。2値PSK波では、例えば2値PSK波の位相0の波形範囲を2進数の1とし、位相πの波形範囲を2進数の0に対応させて位相変調を行う。
【0007】
図6は、2値PSK波を出力する変調器の具体例に関する回路構成図である。この例では、ベースバンド信号が端子Pにパルス入力された場合にそれに対応してダイオードDがオン、オフし、ダイオードDがオンの場合に端子Cから入力された搬送波がサーキュレータCrから反射板Rまでの距離を往復して位相をずらすことで、変調されたPSK波が端子Mから出力されるようになる。
【0008】
従来のデジタル位相変調方式を実現する変調器は、このように複数の回路部品を組み合せて構成されており、サイズが大きくなって複雑な構造とならざるを得なかった。
【0009】
そこで、本発明は、コンパクトで簡単な構造の半導体変調素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体変調素子は、電極層との間にショットキーバリアが形成された半導体層を備える半導体変調素子において、前記ショットキーバリアを介して流れる電流は、以下の算出式で求められる真電流成分It及び変位電流成分Idを含んでおり、所定の入力電圧範囲において真電流成分Itが変位電流成分Idよりも小さくなるように設定されている。
【数1】
JP2014127607A_000003t.gif
s;逆方向飽和電流、q;電荷素量、V;印加電圧、k;ボルツマン定数、A**;リチャードソン定数;φB;ショットキーバリアの障壁高さ、ε;半導体層の誘電率、Na;不純物濃度、Vbi;内蔵電位、T;絶対温度、t;時間
さらに、前記半導体層は、不純物として低濃度のMgが導入されたp型GaNからなり、前記電極層は、Niからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体素子により位相変調波を生成することが可能となり、コンパクトで簡単な構造の半導体変調素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態である半導体変調素子に関する概略構成図である。
【図2】交流波形の電圧を入力した場合の整流波形を示すグラフである。
【図3】図1に示す構造の半導体変調素子の電圧-電流特性を示すグラフである。
【図4】入力電圧波形が矩形波の場合に出力される電流波形を示すグラフである。
【図5】入力電圧波形が正弦波の場合に出力される電流波形を示すグラフである。
【図6】2値PSK波を出力する変調器の具体例に関する回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ショットキーバリアが形成された半導体素子において、ショットキーバリアの障壁高さが大きい場合に入力信号波形に対して微分波形を出力されることを見い出し、本発明を完成するに至った。

【0014】
図1は、本発明に係る実施形態である半導体変調素子に関する概略構成図である。半導体変調素子は、基板1上に半導体材料からなる半導体層2が積層されており、半導体層2の表面に金属材料からなる電極層3及び4が形成されている。電極層3は、半導体層2との間でオーミック接触している。電極層4は、半導体層2との間でショットキー接触しており、半導体層2の接触面の近傍にショットキーバリア5が形成されている。

【0015】
基板1の材料としては、例えば、サファイア等の公知の材料が用いられる。半導体層2を基板として用いる場合には、基板1は不要となる。半導体層2は、バンドギャップの大きい半導体材料が好ましく、例えば、GaN、SiC(炭化ケイ素)、ダイヤモンドが挙げられる。これらの半導体材料のバンドギャップは、それぞれGaNが3.4eV、SiCが3.2eV、ダイヤモンドは5eVとなっており、障壁高さを大きく設定することができる。これに対して、SiやGaAsでは、バンドギャップがそれぞれ1.1eV、1.4eVで、障壁高さを大きく設定することが難しい。

【0016】
電極層3は、半導体層2に用いられる半導体材料に応じて選択され、例えば、半導体材料がGaNの場合にはInGaを用いることができ、SiCの場合にはSiC及びNi(ニッケル)の反応層、ダイヤモンドの場合にはTiを用いることができる。電極層4は、円形に形成されており、半導体層2に用いられる半導体材料に応じて選択され、例えば、半導体材料がGaNの場合にはNiを用いることができ、SiCの場合にはNi、ダイヤモンドの場合にはAuを用いることができる。

【0017】
こうしたショットキーバリアを有する一般的な半導体素子では、半導体層とショットキーバリアが形成された電極層との間に電圧を印加した場合、順方向に電流が流れるとともに逆方向に電流がほとんど流れない整流特性を示すようになる。図2は、交流波形の電圧を入力した場合の整流波形を示すグラフである。図2(a)に示すような交流波形が入力された場合、点線で示す電圧以下では電流がほとんど流れないため、図2(b)に示すような電流波形が出力されるようになり、入力波形と同位相の整流波形の電流が出力されるようになる。

【0018】
ショットキーバリアを介して流れる電流は、ショットキ—バリアを通して実際に流れる真電流成分及びショットキーバリアに形成される空乏層による変位電流成分の合計であることが知られており、真電流成分It及び変位電流成分Idは、以下の式により求めることができる。
【数1】
JP2014127607A_000004t.gif
s;逆方向飽和電流
q;電荷素量(1.60218×10-19C)
V;印加電圧(単位;V)
k;ボルツマン定数(1.38066×10-23J/K)
A**;リチャードソン定数(p型GaNの場合には、72A/cm2/K2
φB;ショットキーバリアの障壁高さ(単位;eV、I-V特性及びC-V特性から算出する)
ε;半導体層の誘電率(F/m)
a;半導体層の不純物濃度(cm-3
bi;内蔵電位(単位;eV、C-V特性から算出する)
C;ショットキーバリアの空乏層の容量
T;絶対温度(単位;K)
t;時間

【0019】
上記の算出式からわかるように、真電流成分Itは印加電圧Vの入力波形と同位相の波形となり、変位電流成分Idは、印加電圧Vの入力波形の微分波形となるため、位相がずれるようになる。

【0020】
ショットキーバリアを有する一般的な半導体素子では、変位電流成分に比べて真電流成分が大きくなるため、変位電流成分の影響が整流波形に表れず、図2に示すように真電流成分と同様の同位相の整流波形が得られる。これに対して、半導体層に上記した障壁高さの大きい半導体材料を用いた場合、ショットキーバリアを通る電流が流れにくくなるため、真電流成分が小さくなるが、変位電流成分は空乏層の容量に依存するため障壁高さによる影響が小さくなり、出力される電流に変位電流成分の影響が表れるようになる。

【0021】
図3は、図1に示す構造の半導体変調素子において、半導体層としてp型GaN(厚さ2μm、Mg;1.3×1018cm-3導入)を用い電極層(直径200μm厚さ60nmの円形電極)としてNiを用いた場合における電流-電圧特性を示すグラフである。

【0022】
不純物濃度の大きいショットキーバリアを有する半導体素子では、逆方向のリーク電流が生じることが知られており、特にp型GaNを半導体層に用いた場合にはリーク電流が大きくなるため、p型GaNの障壁高さを正確に測定することが困難であった。本発明者は、上記のように、不純物としてMgを低濃度で導入したp型GaNを用いることでリーク電流が低減することを見い出し、p型GaNの電流-電圧特性に基づいてその障壁高さが2.4eVであることを示して障壁高さが大きいことを定量的に明らかにした( K. Shiojima, Tomoya Sugahara, and Shiro Sakai, " Large Schottky barriers for Ni/p-GaN contacts ", Applied Physics. Letters, 74, p.1936 (1999))。

【0023】
図3に示すグラフでは、横軸に電圧をとり、縦軸に電流をとっており、電圧が-5Vから0Vまで0.01V/sの速度で変化させた場合の電流の推移を示している。電圧が-3Vまでは電圧変化に応じて電流が連続的に変化しており、真電流成分の影響が大きくなっている。電圧が-3V付近で電流がほぼ一定の値となった後に減少しており、変位電流成分の影響が大きくなっていることがわかる。

【0024】
このように、障壁高さの大きい半導体素子を用いることで、入力電圧に応じて真電流成分が変位電流成分よりも大きくなる電流又は変位電流成分が真電流成分よりも大きくなる電流を選択的に出力できるようになる。そのため、真電流成分が大きくなる場合には、入力電圧と同位相の電流が出力され、変位電流成分が大きくなる場合には、入力電圧と位相のずれた電流が出力されるようになり、入力する電圧値を情報信号に応じて選択することで、情報信号に対応して位相が異なるように変調された変調信号を出力することができる。

【0025】
したがって、障壁高さの大きいショットキーバリアを有する半導体素子において、上記の算出式により算出された真電流成分及び変位電流成分について所定の入力電圧範囲において真電流成分が変位電流成分よりも小さくなるように設定された半導体素子を変調素子として用いることで、コンパクトで簡単な構造の半導体変調素子を実現することが可能となる。
【実施例】
【0026】
図3において用いた半導体変調素子を作製するために、サファイア基板上に、公知のMOCVD(Metal-organic Chemical Vapor Deposition)法により、Mgを1.3×1018cm-3の濃度でp型GaNからなる半導体層を厚さ2μmで堆積させた。p型GaNの半導体層を堆積した後、液体金属からなるInGaを半導体層の表面に塗布してオーミック電極層を形成し、半導体層の表面に公知の電子ビーム蒸着法により円形のNi層(直径200μm;厚さ60nm)からなるショットキー電極層を形成した。
【実施例】
【0027】
こうして形成した2つの電極層の間に電源及び電流計を直列で配線して接続し、電源より矩形波及び正弦波の電圧波形を入力した。図4は、入力電圧波形が矩形波の場合に出力される電流波形を示すグラフである。矩形波(細い実線)としては、±1Vのパルス幅で50秒間隔で入力した。横軸に時間をとり、縦軸に入力電圧及び出力電流をとっている。入力電圧値は左側の目盛でプロットし、出力電流値は右側の目盛でプロットしており、両者の0(ゼロ)の目盛線を一致させている。出力電流波形(太い実線)をみると、矩形波が入力された場合には、矩形波の立ち上り及び立ち下りのタイミングで出力電流が瞬間的に増加しており、入力波形に対する微分波形が出力されていることがわかる。こうした出力波形は、変位電流成分の影響が表れていると考えられる。
【実施例】
【0028】
図5は、入力電圧波形が正弦波の場合に出力される電流波形を示すグラフである。正弦波形(細い実線)は、振幅500mV(オフセット電圧0V)で周波数40mHzとした。横軸に時間をとり、縦軸に入力電圧及び出力電流をとっている。入力電圧値は左側の目盛でプロットし、出力電流値は右側の目盛でプロットしており、両者の位相の関係を見やすくするために出力電流値の0(ゼロ)の目盛線を入力電圧値の0(ゼロ)の目盛線よりも下にずらせている。出力電流波形(太い実線)をみると、入力電圧が-0.35Vより小さい範囲(入力電圧の絶対値が0.35より大きい範囲)では入力波形と同位相で変化しており、真電流成分の影響が大きく出ていると考えられる。また、-0.35Vより大きい範囲(入力電圧の絶対値が0.35より小さい範囲)では位相がずれており、入力電圧値が0(ゼロ)のときに出力電流値がピークとなっていることから、微分波形となっていることがわかる。これは、入力電圧の絶対値が小さくなって変位電流成分の影響が出ていると考えられる。なお、出力波形が最初に大きく変化しているのは、ショットキーバリアに形成された欠陥準位が中性化する過程を示しており、欠陥準位の中性化により以後に変位電流成分の影響が生じるようになると考えられる。
【実施例】
【0029】
以上説明したように、障壁高さの大きいショットキーバリアを有する半導体素子を変調素子として用いることで、入力電圧に応じて入力波形を位相の異なる出力波形に変調することが可能となる。そのため、入力電圧値を切り換えて入力波形と同位相の出力波形と位相のずれた出力波形とを出力し、それぞれの波に情報を割り当てることでPSK波を出力する変調器として構成することができる。
【実施例】
【0030】
こうしたコンパクトで簡単な構造の半導体変調素子を用いることで、超小型の無線通信装置を作成することができ、無線通信用の携帯端末、無線通信機能を組み込んだ車両、家電製品等の幅広い技術分野に応用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・基板、2・・・半導体層、3・・・電極層、4・・・電極層、5・・・ショットキーバリア
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5