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明細書 :血圧降下剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5749469号 (P5749469)
公開番号 特開2012-067058 (P2012-067058A)
登録日 平成27年5月22日(2015.5.22)
発行日 平成27年7月15日(2015.7.15)
公開日 平成24年4月5日(2012.4.5)
発明の名称または考案の名称 血圧降下剤
国際特許分類 A61K  36/899       (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
A23K   1/16        (2006.01)
A23L   1/10        (2006.01)
A61K  35/60        (2006.01)
A61K  35/74        (2015.01)
FI A61K 36/899
A23L 1/30 Z
A61P 9/12
A23K 1/16 304C
A23K 1/16 304A
A23L 1/10 F
A61K 35/60
A61K 35/74 G
請求項の数または発明の数 5
全頁数 18
出願番号 特願2010-215431 (P2010-215431)
出願日 平成22年9月27日(2010.9.27)
審査請求日 平成25年7月8日(2013.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
発明者または考案者 【氏名】灘本 知憲
【氏名】浦部 貴美子
【氏名】廣瀬 潤子
個別代理人の代理人 【識別番号】100077012、【弁理士】、【氏名又は名称】岩谷 龍
審査官 【審査官】鳥居 福代
参考文献・文献 特開2005-102559(JP,A)
特開2008-133251(JP,A)
久保加織 他,ふなずし飯の栄養価と菓子への利用,家政学研究,2007年,Vol.54, No.1,p.1-6
久保加織 他,ふなずしの伝承を目的とした機能性成分の探索,滋賀大学環境総合研究センター研究年報,2010年 8月20日,Vol.7,No.1,p.72
赤羽義章 他,福井の伝統食品-マサバの「へしこ」と「なれずし」のおいしさと機能性-,日本味と匂学会誌,2007年,Vol.14, No.2,p.117-128
調査した分野 A61K 35/00-35/768
A61K 36/00-36/9068
A23K 1/00-1/24
A23L 1/00-1/48
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)



特許請求の範囲 【請求項1】
鮒寿司の飯の水抽出物を含有することを特徴とする血圧降下剤。
【請求項2】
鮒寿司の飯の水抽出物が、1日あたり、該鮒寿司の飯の水抽出物に含まれるタンパク質として体重あたり1~20mg/kgの投与量で経口投与される請求項1に記載の血圧降下剤。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療剤。
【請求項4】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用食品組成物。
【請求項5】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用飼料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧降下作用を有する組成物及びその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の変化等により、生活習慣病の人が増加しており、社会的にも大きな問題になっている。高血圧(症)は、生活習慣病の中でも発症率の高い疾患の1つである。高血圧は、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、腎硬化症等種々の合併症を引き起こすことが知られている。また、高血圧は、肥満、高脂血症、糖尿病との合併により重篤な症状を呈することがあり、その効果的な治療が強く望まれている。
【0003】
既知の血圧降下物質として、利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬などがあり、天然物、化学合成物等が多数報告されている。投与が容易である点等から、経口投与で有効であり、より安全な血圧降下作用を有する物質が求められている。
【0004】
特許文献1には、ホッケ、タラ等の魚肉又は魚肉由来タンパク質を、乳酸菌を用いて乳酸発酵させた発酵物が、アンジオテンシン変換酵素の活性を阻害する作用を有することが開示されている。
【0005】
鮒寿司(ふなずし)は、熟れ寿司(なれずし)の一種で、滋賀県の郷土料理である。鮒寿司は、新鮮なフナを数ヶ月間塩漬けにした後、炊いた飯と一緒に漬け込んで、半年から一年間、桶の中で自然発酵させて製造されるが、鮒寿司の副産物として、発酵飯(鮒寿司の飯(いい))が生成する。鮒寿司の飯は、鮒寿司製造後には大半が廃棄されており、資源の再利用や環境問題からも、その再利用が望まれている。しかしながら、鮒寿司の飯に血圧降下作用等の生理作用があることは、未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-133251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副作用がなく安全で、経口投与又は経口摂取で有効な血圧降下作用を示す血圧降下剤及びその用途を提供することを目的とする。また、廃棄物の有効利用方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記現状に鑑み鋭意研究した結果、鮒寿司の副産物である発酵飯(鮒寿司の飯)の抽出物に高いACE阻害活性があることを見出した。本発明者らはまた、鮒寿司の飯の抽出物として水抽出物が特に好適であることを見出した。さらに研究を重ねた結果、高血圧自然発症ラット(SHR)を用いた実験から、鮒寿司の飯抽出物を経口投与すると、優れた血圧降下作用が得られることを見出した。
【0009】
鮒寿司は、滋賀県の特産品として琵琶湖周辺地域で食されてきた発酵食品であり、従来より健康によいと伝えられてきたが、鮒寿司の副産物である飯の抽出物に優れた血圧降下作用があることは、本発明者らにより初めて見出された知見であった。鮒寿司の飯は、米飯、鮒及び塩を原料とする発酵飯であり、日常摂取する食品として長期間摂取しても副作用等がなく、安全で有効性の高い素材である。このため、鮒寿司の飯やその抽出物は、血圧降下を目的とする特定保健用食品、機能性食品や、動物への飼料等への利用が期待される。また、現在鮒寿司の飯は、鮒寿司製造後は大半が廃棄されているが、血圧降下剤として利用することにより、廃棄物を有効利用することもでき、環境への負荷も低減できる。
本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
【0010】
項1.鮒寿司の飯又はその抽出物を含有することを特徴とする血圧降下剤。
項2.鮒寿司の飯の抽出物を含有する項1に記載の血圧降下剤。
項3.鮒寿司の飯の抽出物が、鮒寿司の飯の水抽出物である項1又は2に記載の血圧降下剤。
項4.鮒寿司の飯又はその抽出物が、1日あたり、該鮒寿司の飯又はその抽出物に含まれるタンパク質として体重あたり1~20mg/kgの投与量で経口投与される項1~3のいずれか一項に記載の血圧降下剤。
項5.項1~4のいずれか一項に記載の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療剤。
項6.項1~4のいずれか一項に記載の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用飲食品組成物。
項7.項1~4のいずれか一項に記載の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用飼料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の血圧降下剤は、安全性が高く、長期間投与又は摂取しても副作用がなく、有効な血圧降下作用を示すため、安全かつ効果的に高血圧を改善できるという効果を有する。また、本発明の血圧降下剤を飲食品や飼料等に添加することによって、血圧降下を目的とする用途に好適な栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品等の飲食品や飼料などを簡便に製造することが可能である。さらに、本発明によれば、これまで鮒寿司製造の際の副産物として主に廃棄されている鮒寿司の飯を、有効に利用できる。このため廃棄物を低減させ、環境への負荷を少なくすることができ、しかも廃棄のコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、鮒寿司の飯(A)、鮒寿司の飯の水抽出液(B)、及び鮒寿司の飯を水で抽出した後の残渣(C)の写真である。
【図2】図2は、抽出溶媒の違いによる鮒寿司の飯からのタンパク質溶出量を調べた結果を示す図である。
【図3】図3は、抽出溶媒の違いによる鮒寿司の飯抽出液のACE阻害活性を示す図である。
【図4】図4は、熟成期間の違う鮒寿司の飯抽出液のACE阻害活性を比較した図である。
【図5】図5は、鮒寿司の飯抽出液をSHRに単回投与した場合の血圧変化を示す図である。
【図6】図6は、鮒寿司の飯抽出液をSHRに10日間連続投与した場合の血圧変化を示す図である。
【図7】図7は、鮒寿司の飯抽出液をSHRに単回投与した場合の、該飯抽出液の投与量(タンパク質換算)と血圧変化との関係を調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の血圧降下剤は、鮒寿司の飯又はその抽出物を含有するものである。
鮒寿司の飯は、鮒寿司を製造する際にフナと共に漬けられた飯が発酵したものである。鮒寿司の飯は、鮒寿司を製造することにより得ることができる。

【0014】
鮒寿司は、従来日本国滋賀県の琵琶湖周辺で行われてきた方法により、通常、フナ、塩及び米(米飯)を原料として製造することができる。本発明における好ましい鮒寿司の飯は、後述するように、フナ、米(米飯)、塩及び味醂を原料として製造されたものである。

【0015】
鮒寿司の原料となるフナとしては、コイ目コイ科コイ亜科フナ属(Carassius)の魚であればよく、例えば、ニゴロブナ(Carassius buergeri grandoculis)、ギンブナ(Carassius langsdorfi)、キンブナ(Carassius buergeri subsp. 1)、オオキンブナ(Carassius buergeri buergeri)、ゲンゴロウブナ(Carassius cuvieri)、ナガブナ(Carassius buergeri subsp. 2)、ヨーロッパブナ(Carassius carassius)等が挙げられる。本発明においては、これらの1種又は2種以上を使用した鮒寿司が使用できる。中でも、ACE阻害活性が高く、血圧降下作用が高いことから、ニゴロブナを用いて製造された鮒寿司の飯が好ましい。ニゴロブナは、琵琶湖固有種のフナである。フナは、オスであってもよく、メスであってもよい。

【0016】
鮒寿司の製造は、通常、塩切り工程、及び本漬け(飯漬け)工程をこの順に行うことにより行われる。以下に、鮒寿司の製造方法について説明する。

【0017】
(塩切り)
まず、フナからエラとウロコを取り除き、エラ部分より卵巣以外の内臓を取り出し、よく水洗する。フナの腹腔内に食塩を詰める。フナの周りにも塩をまぶしつけ、これらを桶に食塩をふりかけながら漬け込み、落し蓋をして重しを載せて冷暗所に保管(塩蔵)する。これは「塩切り」と呼ばれる。塩切りの際の食塩量は適宜調整することができるが、通常、フナと同量程度用いるのが一般的である。塩切り(塩蔵)期間は、通常1~30ケ月位である。好ましくは、3~15ケ月程度である。

【0018】
(本漬け)
次に、上記塩蔵したフナを取り出し、塩抜きを行なう。塩抜きは、通常、水洗や水漬けにより行なうことができる。塩抜きは、塩味が少し残る程度まで行なうことが好ましい。次いで、塩抜きしたフナを乾燥させることが好ましい。乾燥は、通常、天日干し(通常1~3時間程度)、又は(夜)陰干し(通常10~15時間程度)により行われる。
次いで、米飯(飯)に塩を混ぜた物を、乾燥させたフナのエラ部及び/又は腹につめ込み飯漬けにする。塩の量は、米飯の質量に対して2%~3%程度とすることが好ましい。飯漬けにおいては、飯が手に付着することを防ぐため、及び優れた血圧降下作用を有する鮒寿司を製造できることから、適宜手に味醂をつけて作業することが好ましい。このように、フナ、米(米飯)、塩及び味醂を原料として製造される鮒寿司の飯は、本発明における鮒寿司の飯として好適に用いられるものである。

【0019】
通常、この米飯漬けも桶にて行ない、フナだけでなく飯も交互に敷き詰めて、フナは身(魚肉)の内と外から飯に囲まれた状態で敷き詰められる。この状態で漬け込み、落し蓋をして重しを載せ発酵を開始させる。発酵開始後は、夏場であれば、フナを漬けた桶を冷暗所に保管することが好ましい。そしてそのまま、発酵を行なう。発酵(熟成)期間は、通常約2ヶ月以上であればよいが、好ましくは5~30ケ月間程度、より好ましくは5~24ケ月程度、さらに好ましくは、12~24ケ月程度発酵を行なう。なおこの場合、米飯だけではなく所望によりコウジ、酒等を混ぜて飯漬してもよい。約2ヶ月以上、好ましくは5~30ケ月間程度、より好ましくは5~24ヶ月程度、さらに好ましくは、12~24ケ月程度フナと共に発酵させた鮒寿司の飯は、本発明における好ましい実施態様の1つである。

【0020】
漬け上げた後の鮒寿司(鮒の発酵物)から分離された発酵飯(鮒寿司の飯)が、本発明における有効成分として使用される。鮒寿司の飯は、米粒の形状が残っていてもよく、ペースト状であってもよい。鮒寿司と飯とを完全に分離することは困難である場合があるため、本発明における鮒寿司の飯には、その製造に使用された鮒寿司のフナの身等が混入していてもよい。好ましくは、鮒寿司の飯に対して鮒寿司が10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは実質的に鮒寿司の飯のみを用いる。

【0021】
本発明においては、このように製造された鮒寿司の飯を好適に使用することができる。また、市販品の鮒寿司には、通常鮒寿司の周りや腹の中に、発酵飯(鮒寿司の飯)が詰められている。本発明においては、このような市販品の鮒寿司に使用されている鮒寿司の飯を好適に使用することもできる。上述したフナ、米(米飯)、塩及び味醂を原料とする鮒寿司の飯は、例えば、木村水産株式会社から鮒寿司と共に市販されている。

【0022】
本発明においては、鮒寿司の飯をそのまま血圧降下剤の有効成分として使用できるが、本発明の効果を奏することになる限り、鮒寿司の飯を乾燥させた乾燥物、該飯(又はその乾燥物)を粉砕した粉砕物、該飯(又はその乾燥物)を磨砕した磨砕物等を鮒寿司の飯として使用することもできる。鮒寿司の飯は、そのまま本発明の血圧降下剤として使用することもできるが、後述するように、適量の添加成分を加えて組成物としてもよい。

【0023】
本発明における有効成分としては、鮒寿司の飯の抽出物が好適である。鮒寿司の飯の抽出物は、上述した鮒寿司の飯に溶媒を加えて可溶性成分を抽出することにより製造される。本発明においては、鮒寿司の飯をそのまま抽出原料として使用してもよいが、乾燥、粉砕等の前処理を施したものを抽出原料として使用してもよい。すなわち鮒寿司の飯の抽出物は、鮒寿司の飯、又はその乾燥物、粉砕物若しくは磨砕物を、溶媒で抽出する工程(抽出工程)を行なうことにより製造される。

【0024】
抽出するための溶媒は特に限定されないが、水系溶媒が好ましい。すなわち本発明における鮒寿司の飯の抽出物は、鮒寿司の飯の水系溶媒抽出物であることが好ましい。水系溶媒を用いると、優れた血圧降下作用を有する抽出物を得ることができることから好ましい。また、水系溶媒は、抽出作業の利便性や、水系溶媒による抽出物であれば水溶性であるため安全であること、また、溶媒が残留した場合の安全性等の点から好適に使用される。水系溶媒としては、水又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブチルアルコール等の低級アルコール;水と低級アルコールとの混合溶媒を挙げることができる。低級アルコールを用いる場合には、溶媒除去の観点から、メタノール、エタノールを用いることが好ましい(メタノール、エタノール等の低級アルコールの除去技術については、特開平08-164303号公報参照)。混合溶媒における水と有機溶媒との混合比率は、適宜設定することができる。中でも、水、エタノール、又は水とエタノールとの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。抽出溶媒として水を用いると、特に優れた血圧降下作用を奏する抽出物を得ることができる。鮒寿司の飯の水抽出物は、本発明における抽出物の最も好ましい態様の1つである。

【0025】
使用する溶媒量は、抽出素材である鮒寿司の飯が乾燥したものでなければ、該飯の質量の通常約1~25倍が好ましく、約1~20倍がより好ましく、約1~10倍がさらに好ましい。鮒寿司の飯が乾燥したものであれば、該飯の乾燥物質量の約2~40倍が好ましく、約2~20倍がより好ましい。

【0026】
抽出の温度は、鮒寿司の飯からデンプンが溶出しないような温度が好ましく、例えば、約-3~10℃で抽出を行なうことが好ましい。抽出温度は、約0~10℃がより好ましく、約0~5℃がさらに好ましく、約0~2℃が特に好ましく、0℃程度が最も好ましい。抽出時間は、抽出温度により適宜選択すればよく、特に制限されないが、例えば、水系溶媒を用いて約-3~10℃で抽出を行なう場合には約10分間以上抽出を行なうことが好ましく、約10分間~24時間がより好ましい。また、デンプンの溶出を抑えるためには、抽出時間を、約10~30分間とすることがより好ましく、約10~20分間がさらに好ましい。また、抽出の際には静置したままでもよいし、攪拌してもよい。

【0027】
本発明における特に好ましい抽出物は、鮒寿司の飯を、水で、抽出温度約-3~10℃(好ましくは約0~10℃、より好ましくは約0~5℃、さらに好ましくは約0~2℃、特に好ましくは0℃程度)で約10~20分間抽出して得られる抽出物である。抽出の際は、攪拌することが好ましい。

【0028】
抽出終了後の処理は、常法に従って行うことができる。例えば、抽出工程により可溶性成分を溶出させた後、固形物を除去することにより抽出液を得ることができる。固形物の除去は、通常行われる方法、例えば、遠心分離又は濾過により行うことができる。所望により、除去した固形分を抽出に使用した溶媒で洗浄し、濾液(抽出液)と合わせることもできる。得られた抽出液は、必要に応じて溶媒を減圧や加熱により留去すればよい。但し、過剰な加熱は好ましくなく、好適には室温~50℃程度で減圧濃縮する。

【0029】
得られた抽出液は、抽出した溶液のままでも本発明の血圧降下剤の有効成分として使用できるが、本発明の効果を奏することになる限り、透析、イオン交換樹脂処理等の脱塩処理等を施してもよく、さらなる精製処理を施してもよい。また、必要に応じて濃縮、希釈、濾過などの処理をしてもよい。好ましくは、脱塩処理を行なう。鮒寿司の飯の抽出物は、そのままでは塩分が多い場合があるため、脱塩を行なうことにより、より優れた血圧降下作用を奏する抽出物を得ることができる。また、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いてもよい。

【0030】
すなわち、本発明における鮒寿司の飯の抽出物には、鮒寿司の飯を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の脱塩液、該抽出液又はその脱塩液の希釈液又は濃縮液、該抽出液又はその脱塩液の粗精製物若しくは精製物、該抽出液又はその脱塩液を乾燥して得られる乾燥物、該抽出液又はその脱塩液の粗精製物若しくは精製物を乾燥して得られる乾燥物のいずれもが含まれる。
こうして得られた抽出物はそのまま本発明の血圧降下剤として使用できるものであるが、後述するように、適量の添加成分を加えて組成物としてもよい。

【0031】
鮒寿司の飯及びその抽出物は、優れたACE阻害活性を有し、血圧降下作用を有するため、血圧を降下させるための組成物、例えば飲食品、健康食品、機能性食品、医薬組成物等の有効成分として用いられる。医薬の場合には、非経口投与の剤型又は経口投与の剤型とすることができるが、経口投与に適しており、経口投与の剤型(内服剤)とすることが好ましい。

【0032】
鮒寿司の飯又はその抽出物を含有する組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、チュアブル剤、フィルム剤、散剤、丸薬、顆粒等の固形製剤とすることが好ましい。これらの製剤は、鮒寿司の飯又はその抽出物をそのまま用いて、又は所望により種々の添加剤を混合し、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより容易に製造される。添加剤は特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、デキストリン、グルコマンナン等)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン、カルメロースナトリウム等)、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)、抗酸化剤(例えば、亜硝酸塩、アスコルビン酸、システイン等)、着色剤(例えば、タール色素、カンゾウエキス等)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール等)、コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等)、可塑剤(例えば、グリセリン等)等が挙げられる。また必要ある場合には、他の薬剤との併用も可能である。

【0033】
鮒寿司の飯又はその抽出物の製剤中の含有量は、通常、最終製剤中に約0.000001~99質量%である。

【0034】
鮒寿司の飯又はその抽出物の使用量は、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されないが、例えば、鮒寿司の飯又はその抽出物が、1日あたり、該鮒寿司の飯又はその抽出物に含まれるタンパク質として(タンパク質換算で)体重あたり、通常約1mg/kg以上の投与量で経口投与されればよく、約1~20mg/kgの投与量で経口投与されることが好ましい。より好ましくは、1日あたり、該鮒寿司の飯又はその抽出物に含まれるタンパク質として体重あたり3~15mg/kg程度、さらに好ましくは5~15mg/kg程度、特に好ましくは5~10mg/kg程度を経口投与する。またこの量を、1回又は2~3回に分けて服用してもよい。
鮒寿司の飯の抽出物のタンパク質量は、Lowry法等の公知の方法により測定できる。鮒寿司の飯のタンパク質量は、該鮒寿司の飯の抽出物のタンパク質量を測定した測定値から求めることができる。

【0035】
本発明の血圧降下剤は、優れたACE阻害活性を有するものである。また、本発明の血圧降下剤は、副作用が少なく、経口投与で優れた血圧降下作用を発揮することから、高血圧の予防又は治療のための医薬として好適に使用されるものである。前記血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療剤も、本発明の1つである。高血圧の予防又は治療剤の剤形や使用方法等は、上述した血圧降下剤と同様である。なお、「予防」には発症を抑制する又は遅延させることが含まれる。「治療」には、症状又は疾病を完全に治癒させることの他、症状を改善又は緩和することも含まれる。

【0036】
本発明の血圧降下剤は、前述した医薬品として用いることができるほか、血圧を下げる目的、高血圧を改善する目的又は高血圧を予防する目的の機能性食品、特定保健用食品又はドリンク剤などの飲食品として用いることができるものである。本発明の血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用飲食品組成物も、本発明の1つである。飲食品組成物中に含まれる鮒寿司の飯又はその抽出物の量は、通常、最終組成物中に約0.000001~99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。

【0037】
本発明の血圧降下剤は、食品添加剤等としても好適に使用される。鮒寿司の飯又はその抽出物を含有する食品添加剤は、飲食品の血圧降下作用を増強させるために好適に使用することができるものである。例えば、飲食品に本発明の血圧降下剤を添加すると、該剤を添加しない場合と比較して飲食品の血圧降下作用を増強することができる。飲食品の血圧降下作用を増強させることには、本来血圧降下作用を有しない飲食品に血圧降下作用を付与することも含まれる。

【0038】
本発明の血圧降下剤を含有する飲食品組成物は、該飲食品製造時に鮒寿司の飯又はその抽出物、又は前記鮒寿司の飯又はその抽出物含有製剤を配合することにより製造される。

【0039】
本発明の血圧降下剤を飲食品組成物として用いる場合、その形態は特に限定されない。また、飲食品組成物は、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。さらに、本発明にかかる飲食品組成物は、アルコール飲料又はミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発明に係る飲食品組成物は、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、和菓子などの菓子類;パン、麺類、米飯又はその加工品;清酒、薬用酒などの発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料などの飲料等の形態とすることができる。

【0040】
本発明における好ましい実施態様の1つとして、鮒寿司の飯又はその抽出物、又は前記鮒寿司の飯又はその抽出物含有製剤を熟成後の鮒寿司に添加する(例えば、鮒寿司にふりかける)ことが挙げられる。これにより、鮒寿司の風味を保ちつつ、鮒寿司の血圧降下作用を増強することができる。

【0041】
また、本発明に係る飲食品組成物は、例えば、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任意の食品に本発明の飲食品組成物を加え、その場で調製した食品の形態で患者に与えることもできる。本発明の飲食品組成物は、液状であっても、粉末や顆粒などの固形状であってもよい。

【0042】
本発明に係る飲食品組成物は、食品分野で慣用の補助成分を含んでいてもよい。前記補助成分としては、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などが挙げられる。

【0043】
本発明に係る飲食品組成物の摂取量は、摂取する哺乳動物の症状、年齢、性別などによって異なるので、一概には言えないが、鮒寿司の飯又はその抽出物を、それぞれ前述した血圧降下剤の場合と同様の量摂取させることが好ましい。

【0044】
本発明の血圧降下剤、高血圧の予防又は治療剤、高血圧の予防又は治療用飲食品組成物を摂取させる、又は投与する対象としては特に限定されないが、血圧が高い動物、又は高血圧を発症する可能性がある動物が特に好適である。動物は、ヒトが好適である。

【0045】
本発明の血圧降下剤は、ヒト以外の動物の血圧を降下させるために用いることもできる。例えば、鮒寿司の飯又はその抽出物を含有する組成物を、動物用の飼料、動物用医薬とすることができる。前記血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用飼料も、本発明の1つである。

【0046】
動物用医薬は、鮒寿司の飯又はその抽出物に、必要に応じて前述したような賦形剤等を適宜混合し、公知の製剤製法により医薬を製造することができる。血圧降下剤を含有する高血圧の予防又は治療用飼料は、動物の飼料製造時に鮒寿司の飯又はその抽出物、又は前記鮒寿司の飯又はその抽出物含有製剤を配合することにより製造される。

【0047】
動物は、有用動物であればよく、特に限定されないが、例えば、イヌ、ネコ、サル、ラット、マウス、ウシ、ブタ、ウマ等の哺乳動物、ニワトリ等の鳥類、魚類等が挙げられる。中でも好ましくは、哺乳動物である。鮒寿司の飯又はその抽出物の摂取量は特に限定されず、動物の種類等に応じて適宜設定することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
(脱塩処理前後における成分とアンギオテンシンI変換酵素阻害活性の変化)
鮒寿司の飯として、木村水産株式会社製から市販されている鮒寿司の周り及び腹の中に詰められている発酵飯を使用した。木村水産株式会社の鮒寿司は、原料としてフナ、米、塩及び味醂を用い、本漬けを2年間行った鮒寿司である。
【実施例】
【0050】
発酵飯からの抽出は、デンプンをなるべく溶出させず、機能性成分を効率よく溶出させるため、冷却下での水/エタノール系が適当であろうとの作業仮説で行うこととした。
【実施例】
【0051】
1.抽出方法
1)発酵飯(無処理)1000gに、水1000mLを加えた。
2)1)で得られた試料を、10分間、水温0℃、スターラーにて撹拌して抽出を行なった。
3)2)で得られた発酵飯懸濁液を、遠心分離した(15,400×G、10分間、0℃)。
4)上清を、ろ紙(東洋ろ紙社、No.2)を用いてろ過した。
5)ろ液を静置後、遠心分離した(15,400×G、10分間、0℃)。
6)得られた上清を、抽出液(発酵飯試料1、脱塩前)として、以下の実験に用いた。
【実施例】
【0052】
抽出前発酵飯、前記方法で抽出した発酵飯の水(100%)抽出液、及びその残渣の外観を図1に写真で示した。図1の左からA発酵飯(無処理)、B発酵飯水(100%)抽出液、C発酵飯水(100%)抽出液後残渣である。
抽出前発酵飯(図1A)は米粒がかなり残っており、黄色みがかった状態であった。抽出後残渣(図1C)は米粒が若干細かくなり、色が抽出前に比べ白っぽくなった。発酵飯の水抽出液(図1B)は、わずかに白濁しているが、かなり透明度の高い溶液であった。
【実施例】
【0053】
2.脱塩方法
得られた抽出液(発酵飯試料1、脱塩前)850mLを、電気透析装置アシライザーG3(商品名、旭化成社)、及びネオセプタカートリッジAC-110-400(商品名、アストム社)を用いて脱塩を行ない、脱塩した抽出液(発酵飯試料1、脱塩後)を得た。
【実施例】
【0054】
3.アンギオテンシンI変換酵素阻害活性の測定
脱塩した抽出液(発酵飯試料1、脱塩後)について、伊藤らの方法*に従い、アンギオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性の測定を行なった。値はIC50(ACE50%阻害濃度)で示した。
* 伊藤らの方法は、K. Itou and Y. Akahane, Fisheries Science, vol.70, 1121-1129 (2004) に記載されている。
【実施例】
【0055】
ACE阻害活性(ACE inhibition rate)(%)は、以下の式により計算した。
ACE阻害活性(%) =100×(C-S)/(C-B)
C: コントロール(蒸留水)の紫外吸収228nmの値(OD228)
S: サンプルの紫外吸収228nmの値(OD228)
B: ブランクの紫外吸収228nmの値(OD228)
【実施例】
【0056】
pHは、堀場pHメーター(型番TOA HM-30V、堀場製作所社製)により測定した。塩分は、簡易塩分計(堀場コンパクト塩分計 型番C-121 CARDY SALT、堀場製作所社製)により測定した。タンパク質濃度は、Lowry法により、標準物質をウシ血清アルブミンとして測定した。
【実施例】
【0057】
4.結果
発酵飯試料1(脱塩前、及び脱塩後)に関する結果を、表1に示す。
【実施例】
【0058】
【表1】
JP0005749469B2_000002t.gif
【実施例】
【0059】
電気透析装置アシライザーG3による脱塩はきわめて良好であった。脱塩処理に影響を与える夾雑物なども少なかったため、今回の塩分濃度及び液量であれば、短時間(約8時間)の処理で生理活性測定試料として適切な塩分濃度まで低下した。
発酵飯抽出液(発酵飯試料1、脱塩前)のACEの50%阻害濃度(IC50: inhibitor concentration to inhibit 50% of enzyme activity)は、Lowry法によるタンパク質量換算で0.079mg/mLであった。脱塩後抽出液(発酵飯試料1、脱塩後)のACE阻害活性は少し低下したものの、これらのACE阻害活性は十分に高い値であった。水抽出液のpHが4.5と低く測定系への影響が危惧されたが、本測定系における影響はみられなかった。
【実施例】
【0060】
実施例2
(機能性成分の抽出方法の検討)
実施例1において、冷却下での水(100%)による抽出液において相当量のLowry反応陽性物質(タンパク質)を確認できた。さらに該水抽出液は、高いACE阻害活性を示した。
さらに効率的な抽出方法を得るため、水/エタノール混合比率を変えた抽出溶媒による違いについて検討した。実施例1と同様に、鮒寿司の飯として、木村水産株式会社製から市販されている鮒寿司の周り及び腹の中に詰められている発酵飯を使用した。
【実施例】
【0061】
表2に示す水(試料No.1)又は水とエタノールとの混液(試料No.2-5)を抽出溶媒としてそれぞれ用いて、使用する抽出溶媒と発酵飯との量を表2に示すようにした以外は、実施例1の1.と同様の方法で発酵飯の抽出を行なって抽出液を得た。表2に示す水とエタノールとの混合比率は、体積比である。
【実施例】
【0062】
表2及び図2に、抽出溶媒の違いによるタンパク質溶出量(各抽出液中のタンパク質濃度(mg/mL))を示す。
表2及び図3に、各抽出溶媒を用いて得られた抽出液のACE阻害活性(IC50、タンパク質濃度(mg/mL)換算量)を示す。図2及び図3中、W/Eは、水(W)とエタノール(E)との体積混合比を表す。
【実施例】
【0063】
【表2】
JP0005749469B2_000003t.gif
【実施例】
【0064】
ACE阻害活性のIC50は、活性が50%にまで阻害される濃度を示す。従って、値が低いほど阻害活性は高い。抽出溶媒の違いによるLowry法陽性物質(タンパク質)の溶出程度に差はなかった(表2及び図2)。またACE阻害活性は、水100%で抽出したときが最も高い(表2及び図3)ことが示された。
比較のため、米飯(発酵させていないもの)を実施例1の1.と同様の方法で、0℃水100%溶媒、スターラーで攪拌抽出して米飯抽出液を得た。この米飯抽出液には、ACE阻害活性は認められなかった。
【実施例】
【0065】
従って実施例1及び2では、『発酵飯を無処理のまま、水(100%)を抽出溶媒として、冷却下で撹拌しながら抽出する』という最も簡便な抽出方法が、最も効率良くACE阻害活性物質を抽出できた。この抽出方法は、特別な試薬を必要とせず、簡単な操作であり、ACE阻害活性測定試料を得るための有効な方法である。
【実施例】
【0066】
参考例1
納豆(市販品、商品名北海道産大豆の小粒納豆、あづま食品株式会社製)を、凍結乾燥した。
凍結乾燥した納豆に10倍量の蒸留水を加え、スターラーで2時間撹拌抽出した。その後、遠心分離し(20000×g、2℃、10分)、上清を試料液として測定に用いた。ACE阻害活性は、ACE Kit-WST(商品名、同仁化学製)用いて測定した。
前記納豆抽出液のACE阻害活性値は、0.11mg/mL(タンパク質濃度換算)であった。なお、同方法で測定した鮒鮨飯抽出液のACE阻害活性値は0.028mg/mL(タンパク質濃度換算)であった。
【実施例】
【0067】
参考例2
サバのへしこ抽出液のACE阻害活性IC50値は、0.10mg/mL(タンパク質濃度換算)であった。この値は、「赤羽義章、伊藤光史;日本味と匂い学会誌、14巻、117~128頁、2007」による。このACE阻害活性測定方法は、実施例1と同じである。なお、同方法で測定した鮒鮨飯抽出液のACE阻害活性値は0.03mg/mL(タンパク質濃度換算)であった。
【実施例】
【0068】
実施例3
(製造場所、熟成期間の違う鮒鮨飯のACE阻害作用)
参考例1及び2で、鮒鮨飯抽出液にはサバのへしこや納豆よりも高いACE阻害活性が認められ、血圧上昇を抑制する作用があることが示された。そこで、製造場所、熟成期間の違う鮒鮨飯のACE阻害活性を調べた。
【実施例】
【0069】
1.方法
熟成(飯漬け)期間(約2~24ヶ月)の違う4種類の鮒寿司飯水抽出液を試料とした。
【実施例】
【0070】
抽出は、発酵飯として、熟成期間(約2~24ヶ月)の違う4種類の鮒寿司飯を用いたこと以外は、実施例1の1.の方法と同様にして行った。以下に示す4種類の抽出液を得、それぞれ試料A(1)、試料A(2)、試料B及び試料Cとして用いた。
試料A(1):約2ヶ月間熟成を行なって製造した鮒寿司の飯(有限会社「鮒味」社製)を使用した鮒寿司飯水抽出液
試料A(2):約5ヶ月間熟成を行なって製造した鮒寿司の飯(有限会社「鮒味」社製)を使用した鮒寿司飯水抽出液
試料B:約5ヶ月間熟成を行なって製造した鮒寿司の飯(マルギ植田社製)を使用した鮒寿司飯水抽出液
試料C:約24ヶ月間熟成を行なって製造した鮒寿司の飯(木村水産株式会社製)を使用した鮒寿司飯水抽出液
【実施例】
【0071】
抽出液のタンパク質濃度はDC Protein Assay Kit(商品名、Bio Rad製)により測定し、標準物質としてウシ血清アルブミンを用いた。ACE阻害率の測定は、実施例1及び2の方法と異なり、ACE Kit-WST(商品名、同仁化学製)用いて測定した。阻害率50%に相当する試料量(タンパク質濃度換算した値)IC50をACE阻害活性として表した。なお、塩分濃度やpHの測定は、実施例1と同じ方法で行った。
【実施例】
【0072】
2.結果
結果を表3及び図4に示す。これらの結果から、熟成期間が約2ヶ月以上の鮒寿司の飯が、高いACE阻害活性を示すことが分かった。
【実施例】
【0073】
【表3】
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【実施例】
【0074】
実施例4
(高血圧自然発症ラット(SHR)への投与効果1)
1.方法
1)SHRの飼育
日本SLC社(浜松市)より入手した7週齢の雄の高血圧自然発症ラット(SHR)を6匹1群として、2週間の予備飼育を行った。予備飼育後、収縮期血圧(最高血圧)が180mmHgを超えている個体を選別して、その後の実験に用いた。SHRは、温度23±2℃、湿度55±5%、明暗周期12時間(明期8-20時)の一定環境下で飼育し、人工餌料(CE-2;日本クレア)、及び滅菌水道水は自由摂取とした。
【実施例】
【0075】
2)投与実験
投与は、ステンレス製のゾンデを用いた強制経口投与とし、投与液量は直前に測定したSHRの体重100gあたり1mLとなるようにした。投与試料(鮒寿司飯抽出液)には、タンパク質濃度を1.0mg/mLに調整した実施例3で調製した試料C(木村水産株式会社製の発酵飯を用いた抽出液)の水希釈液を用いた。試料の投与量は、タンパク質として(タンパク質換算で)10mg/SHRの体重1kgとなるようにした。また、この投与試料の塩分濃度は、0.88%であった。対照試料として、塩分濃度を同一にした食塩水を用いた。比較のため、発酵させていない米飯を、実施例1に記載の方法で抽出して得られた米飯抽出液を投与した。米飯抽出液投与量は、タンパク質として10mg/SHRの体重1kgであった。
単回投与では、投与24時間前から投与後8時間まで絶食させたが、10日間連続投与では餌は自由摂食させた。10日間連続投与の実験では、1日1回、前記量の鮒寿司飯抽出液、又は対照試料を、10日間連続で投与した。
【実施例】
【0076】
3)血圧の測定
血圧は、SHRをチャンバーに固定して37℃で15分加温した後、非観血式血圧測定器(型番MK-1030;室町機械)を用いて尾部付け根の収縮期血圧を1匹当たり少なくとも5回測定し、6匹の平均を求めた。単回投与実験では、投与直前(0時間)及び投与後2時間おきに8時間まで血圧を測定した。10日間連続投与では、投与直前(0日)と、投与後1、4、7、及び10日、さらに投与中止して5日後に血圧を測定した。連続投与では、1日に1回、血圧測定の直後に、前記方法により鮒寿司飯抽出液を強制経口投与した。
【実施例】
【0077】
2.結果
図5に、単回投与実験の結果を、図6に、10日間連続投与実験の結果を、それぞれ示す。図5において、○は、対照(0.88%食塩水を投与したコントロール)群であり、▲は、米飯抽出液を投与した群であり、■は、鮒寿司飯抽出液を投与した群である。いずれもタンパク質換算で体重あたり10mg/kg単回投与した。図6において、○は、対照(0.88%食塩水を投与した)群であり、■は、鮒寿司飯抽出液を投与した群である。
図5及び図6中の*は各測定時刻における各群の平均値の比較を行った結果、対照群と較べて有意差がある(P<0.01)ことを示している。図5では一元配置分散分析、図6ではt検定を用いた。#は、投与直前(0時間又は0日)の血圧と比較して有意差がある(P<0.01)ことを示している。図5及び図6ともt検定を用いた。
【実施例】
【0078】
鮒寿司飯抽出液の単回投与では、投与して2時間後から6時間まで血圧の低下が見られ、対照群と、米飯抽出液群との間で有意な差が認められた(図5)。また、鮒寿司飯抽出液を10日間続けて投与すると、血圧は徐々に低下して7日目以降は低くなった血圧が維持され、投与中止5日後には元に戻った(図6)。対照群では単回投与、連続投与のいずれにおいても投与後の有意な血圧低下は認められなかったため、鮒寿司飯抽出液の投与によるSHRの血圧低下は、鮒寿司飯の抽出液成分によるものであることがわかった。鮒寿司飯抽出液はSHRに対して血圧低下作用を示し、継続して投与することで、その作用が持続することが期待できた。
【実施例】
【0079】
実施例5
(高血圧自然発症ラット(SHR)への投与効果2)
次に、鮒寿司飯抽出液の投与量をラット体重1kgあたりタンパク質換算でそれぞれ10mg、5mg及び1mgにした単回投与実験を行った。実施例4と同様に、タンパク質濃度を1.0mg/mLに調整した実施例3で調製した試料C(木村水産株式会社製の発酵飯を用いた抽出液)の水希釈液を投与試料(鮒寿司飯抽出液)として用いた。実験方法は、投与量を変更した以外は、実施例4の単回投与実験と同じである。
【実施例】
【0080】
結果を図7に示す。図7中、□は、鮒寿司飯抽出液をタンパク質として5mg/kg投与した群(5mg/kg投与群)であり、■は、鮒寿司飯抽出液をタンパク質として10mg/kg投与した群(10mg/kg投与群)、●は、鮒寿司飯抽出液をタンパク質として1mg/kg投与した群(1mg/kg投与群)である。○は、対照試料(0.88%食塩水)を投与した対照群である。その結果、試料Cの水希釈液(鮒寿司飯抽出液)をタンパク質として5mg/kg投与した場合と、10mg/kg投与した場合とでは血圧低下傾向はほとんど変わらなかった。
【実施例】
【0081】
図7に示されるように、1日につき鮒寿司飯抽出液をタンパク質として体重あたり1mg/kg摂取させると、摂取前と比較してSDRの血圧が降下した。1日につき鮒寿司飯抽出液をタンパク質として体重あたり5mg/kg又は10mg/kg摂取させると、タンパク質として1mg/kg摂取させた場合よりも優れた血圧降下作用が得られた。さらに、鮒寿司飯抽出液をタンパク質として5mg/kg投与した場合と、10mg/kg投与した場合とでは血圧低下傾向はほとんど変わらなかったことから、SHRに対する血圧上昇抑制効果は、鮒寿司飯抽出液を体重あたり1日あたりタンパク質として(タンパク質換算で)5mg/kg投与で十分期待できるものと考えられた。
【実施例】
【0082】
以下に本発明の血圧降下剤の製剤例の一例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例3で製造した試料Cを凍結乾燥させた。この発酵飯試料1mLから得られた凍結乾燥物は105mgであった。
【実施例】
【0083】
1.錠剤の製造
1錠中の組成
実施例3で製造した試料C 10mLを乾燥させた乾燥粉末1050mg(タンパク質49mg含有)
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して、錠剤を製造する。
【実施例】
【0084】
2.カプセル剤の製造
1カプセル中の組成
実施例3で製造した試料C 10mLを乾燥させた乾燥粉末1050mg(タンパク質49mg含有)
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法によりゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造する。
図面
【図5】
0
【図6】
1
【図7】
2
【図1】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図4】
6