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明細書 :有機薄膜太陽電池の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5805394号 (P5805394)
公開番号 特開2012-142467 (P2012-142467A)
登録日 平成27年9月11日(2015.9.11)
発行日 平成27年11月4日(2015.11.4)
公開日 平成24年7月26日(2012.7.26)
発明の名称または考案の名称 有機薄膜太陽電池の製造方法
国際特許分類 H01L  51/46        (2006.01)
H01L  51/48        (2006.01)
FI H01L 31/04 162
H01L 31/04 182
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2011-000095 (P2011-000095)
出願日 平成23年1月4日(2011.1.4)
審査請求日 平成25年12月25日(2013.12.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
発明者または考案者 【氏名】奥 健夫
【氏名】鈴木 厚志
【氏名】菊地 憲次
個別代理人の代理人 【識別番号】100094248、【弁理士】、【氏名又は名称】楠本 高義
審査官 【審査官】山本 元彦
参考文献・文献 特開2009-158730(JP,A)
特開2010-004022(JP,A)
特開2004-165514(JP,A)
特表2007-533163(JP,A)
特開2010-067642(JP,A)
特開2002-111031(JP,A)
調査した分野 H01L 51/42-51/48

JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を準備する工程と、
前記基板の一面上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上にバルクヘテロ型の有機薄膜を形成する工程と、
前記有機薄膜の上に第2電極を形成する工程と、
を含む有機薄膜太陽電池の製造方法であって、
前記有機薄膜を形成する工程が、
p型半導体材料、n型半導体材料およびGeBrの溶液を溶媒に溶解させる工程と、
不活性ガス雰囲気下において、前記第1電極の上に、前記溶解させる工程によって形成した液体によって膜を形成する工程と、
前記膜を加熱する工程と、
を含む有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記第2電極を形成する工程が、
金属層を形成する工程と、
前記金属層を加熱する工程と、
を含む請求項1の有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記膜を加熱する工程と金属層を加熱する工程によって、有機薄膜の中にナノ粒子を形成する請求項2の有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1電極を形成する工程と有機薄膜を形成する工程との間に、第1電極の上に電子ブロック層を形成する工程を有する請求項1から3のいずれかの有機薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記溶解させる工程、膜を形成する工程および膜を加熱する工程が複数回繰り返しおこなわれ、回数を重ねるごとGeBrの濃度を濃くする請求項1から4のいずれかの有機薄膜太陽電池の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクヘテロ型の有機薄膜太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料に代わる新エネルギーとして、ほとんど無尽蔵でクリーンな太陽光を電気に変えることができる太陽電池が注目されている。シリコン系の太陽電池が主流であるが、材料面や製造プロセス面から高価格である。太陽電池の普及のためには、低価格化が必要不可欠となっている。
【0003】
そこで、安価で簡単に太陽電池を製造するために、シリコン系以外の太陽電池の開発も盛んにおこなわれている。例えば、下記の特許文献1には、有機薄膜太陽電池が開示されている。この有機薄膜太陽電池は、有機薄膜中の無機ナノ粒子が濃度勾配を有する。無機ナノ粒子を含有させるために、無機ナノ粒子を溶媒に分散させ、スピンコートで成膜する方法が採用されている。無機ナノ粒子としては、金属酸化物や銅-インジウム-セレン化合物(CuInSe、通称CIS)などであり、短波長の光吸収率を向上させている。
【0004】
しかし、無機ナノ粒子は数nmほどの大きさがあるため、無機ナノ粒子を溶媒に完全に分散させることは難しい。そのため、有機薄膜で無機ナノ粒子に濃度勾配を持たせて分布させることが難しくなり、電荷輸送の障害となるおそれがある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-158730号公報(段落番号0021、0024)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、容易にナノ粒子を有機薄膜の中に分布させることができるバルクヘテロ型の有機薄膜太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法は、基板を準備する工程、基板の一面上に第1電極を形成する工程、第1電極の上にバルクヘテロ型の有機薄膜を形成する工程、および有機薄膜の上に第2電極を形成する工程を有する。有機薄膜を形成する工程は、p型半導体材料、n型半導体材料および液体状のナノ粒子の材料を溶媒に溶解させる工程、第1電極の上に、前記ナノ粒子の材料を含む各材料を溶解させた溶媒の膜を形成する工程、および前記膜を加熱する工程を有する。
【0008】
第2電極を形成する工程は、金属層を形成する工程および金属層を加熱する工程を有する。膜を加熱する工程と金属層を加熱する工程によって、有機薄膜の中にナノ粒子を形成する。ナノ粒子はGeのナノ粒子である。
【0009】
第1電極を形成する工程と有機薄膜を形成する工程との間に、第1電極の上に電子ブロック層を形成する工程を有してもよい。
【0010】
前記溶解させる工程、膜を形成する工程および膜を加熱する工程が複数回繰り返しおこなわれ、回数を重ねると後にナノ粒子の材料の濃度を濃くする。有機薄膜の中のナノ粒子の濃度が、第2の電極に近づくにつれて徐々に濃くなるように濃度勾配を持たせる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ナノ粒子の材料が液体状になっているため、溶媒の中に容易に溶解させることができ、容易に有機薄膜の中にナノ粒子を形成しやすい。Si系の太陽電池と異なり、スピンコートなどによって安価に製造することができる。ナノ粒子によって光の吸収率が向上し、発電効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】有機薄膜太陽電池の構成を示す図である。
【図2】Geのナノ粒子を含む太陽電池と含まない太陽電池の光吸収率の違いを示す図である。
【図3】Geのナノ粒子を含む太陽電池のエネルギーバンドの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法について図面を使用して説明する。

【0014】
図1に示す有機薄膜太陽電池10は、基板12の上に第1電極14、電子ブロック層16、ナノ粒子を含む有機薄膜18、第2電極20が順番に積層された構造である。

【0015】
基板12は、ガラスや樹脂でできた透明基板である。基板12の一面上に第1電極14が形成され、他面が光入射面となる。他面に反射防止膜を設けて、有機薄膜18への光の入射効率を高めても良い。基板12はフレキシブルなものであっても良い。基板12がフレキシブルであれば、太陽電池10自体もフレキシブルになり、衣料などに取り付けることが可能となる。携帯機器の電源として使用することができる。また、車のボディーなどの曲面に太陽電池10を取り付けて電源とすることも可能である。

【0016】
第1電極14は、ITO(Indium Tin Oxide)やZnO(Zinc Oxide)などの透明電極である。第1電極14が陽極となる。1枚の基板12に対して、第1電極14は1つであっても良いし、複数に分割されていても良い。

【0017】
電子ブロック層16は、電子ブロッキング効果を持った層である。電子ブロック層16によって有機薄膜18から第1電極14に一部の電子が流れることを阻止し、発電効率の低下を防止する。材料としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)(通称PEDOT:PSS)が挙げられる。なお、一部の電子が第1電極14に流れることを考慮しないのであれば、電子ブロック層16は省略されても良い。

【0018】
電子ブロック層16の層厚は、約5~50nmである。5nm未満では導電性が不足し、50nm以上になると電気抵抗が増加するおそれがあるためである。

【0019】
有機薄膜18はバルクヘテロ接合を有している。バルクヘテロ接合は、p型半導体とn型半導体が不規則に混在され、pn接合となるそれらの境界面積が広げられたものである。p型半導体材料としては有機溶媒に対して可溶性を有する材料を使用する。例えば、金属フタロシアニン(MPc)もしくは金属テトラフェニルポルフィリン(MTPP)である。これらの中の金属(M)としては、Cu,Zn,Fe,Co,Ni,Pb,Snが挙げられる。金属(M)を選択することによって、吸収できる光の波長を選択することができる。また、ポリ3ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ペンタセン、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)なども使用できる。

【0020】
n型半導体材料も有機溶媒に対して可溶性を有する材料を使用する。n型半導体材料は電子受容性に優れたC60やペリレンなどが挙げられる。

【0021】
さらに、有機薄膜18はナノ粒子を含むように構成される。ナノ粒子は長波長の光吸収を向上させるGeのナノ粒子を使用する。Geのナノ粒子を形成するために、製造時にナノ粒子の材料を含む液体を使用する。例えば、GeBrの溶液を使用する。GeBrは融点が26.1℃であるため、それ以上の温度、例えば30℃以上にして溶液状態で使用する。このようにGeBrであれば容易に溶液状態になるため、溶媒に溶解させやすく、Geのナノ粒子を有機薄膜18の中に分散させることが容易である。Ge以外に、Siを含む有機溶液やポリシランの溶液を使用してもよい。

【0022】
p型半導体材料、n型半導体材料およびナノ粒子の溶液を溶解させる溶媒は、オルトジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ハロゲン化脂肪族系溶媒などが挙げられる。これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。

【0023】
有機薄膜18の膜厚は、約50~300nmである。50nm未満であると膜厚の不均一性や太陽光を吸収せずに透過するなどの問題が発生する。また、300nmを超えると、電気抵抗が高くなる問題が発生する。ナノ粒子の大きさは2nm~200nmの範囲、例えば100nmである。

【0024】
第2電極20はAlなどの金属電極である。第2電極20が陰極となる。有機薄膜18と第2電極20とがオーミック接合となるように、n型半導体の最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)と第2電極の仕事関数とを考慮して材料を選択する。Al(-4.3eV)以外にAg(-4.3eV)、Au(-5.2eV)、Cu(-4.7eV)が使用できる。第2電極20の厚みは50~500nmである。第2電極20では図中横方向に電流が流れるために薄くなると電気抵抗が増加し、厚くなると金属膜歪によるはがれ、コストアップとなる。

【0025】
有機薄膜18と第2電極20との間にフッ化リチウム(LiF)のバッファ層を設けて発電効率を高めても良い。

【0026】
有機薄膜太陽電池10の製造方法について説明する。(1)ガラスなどの基板12を準備する。この準備には、基板12を所望形状に切断したり、洗浄したりすることを含む。

【0027】
(2)基板12の一面上に第1電極14を形成する。ITOを、スパッタリング装置や蒸着装置で真空成膜をおこなう。必要に応じてITOを所望形状にパターニング(エッチング)する。

【0028】
(3)第1電極14の上にPEDOT:PSSの電子ブロック層16を形成する。電子ブロック層16の形成は、PEDOT:PSSの材料の溶液を窒素雰囲気下で塗布し、乾燥させる。キャリアの輸送効率、溶液の取り扱いやすさから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)が0.5~5wt%程度の濃度の水溶液を塗布し、乾燥させる。0.5wt%未満であると電導性が不足し、5wt%を超えると、厚みが不均一になるなどの可能性がある。形成方法としては、スピンコート、インクジェット法、ドクターブレードを使用した薄膜形成が挙げられる。電子ブロック層16を省略するのであれば、この工程は省略される。

【0029】
(4)電子ブロック層16の上に有機薄膜18を形成する。粉体のp型半導体材料、粉体のn型半導体材料および液体状となったナノ粒子の材料を含む溶液を溶媒に溶解させ、不活性ガスの雰囲気下でスピンコートする。p型半導体材料はCuPcを使用し、n型半導体材料はC60を使用する。ナノ粒子の材料の液体は、液体状のGeBrである。溶媒としては、オルトジクロロベンゼン溶液である。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、炭酸ガスが挙げられる。

【0030】
オルトジクロロベンゼンを1mlに対して、CuPcは0.5mg~10mg、C60は1mg~40mg、GeBrは0.1ml~1.0mlである。この範囲内であれば適宜変更できる。

【0031】
スピンコート以外に、インクジェット法やドクターブレードを使用した薄膜形成よって有機薄膜18を形成しても良い。

【0032】
(5)スピンコートで有機薄膜18を形成した後、恒温槽内で加熱する。溶媒の中に複数の材料を溶解させてスピンコートするため、形成された有機薄膜18はバルクヘテロ接合を有している。なお、加熱条件は80~160℃、10~60分である。

【0033】
(6)有機薄膜18の上に第2電極20を形成する。Alなどの金属を真空蒸着し、恒温槽内で加熱する。蒸着時または蒸着後に、必要に応じて第2電極20のパターニングをおこなってもよい。

【0034】
上記(5)および(6)の加熱処理によってGeBrが熱分解され、Geのナノ粒子が有機薄膜18の中に形成され、Brの気体が発生する。

【0035】
本発明のGeのナノ粒子を含む太陽電池10と、従来のGeのナノ粒子を含まない太陽電池の光吸収率の違いを図2に示す。Geのナノ粒子によって長波長帯域での光吸収率が向上しており、広帯域の波長で発電が可能である。

【0036】
図3に示すように、通常は1.7eV以上の光エネルギー(hν)が入射されると発電するが、Geのエネルギーギャップは0.7eVであるため、0.7eV以上の光エネルギーであれば、発電が可能である。短波長の光であれば発電量が大きく、長波長であれば発電量は小さい。

【0037】
次に上記(1)~(6)について、実際におこなった実験について説明する。上記(1)および(2)について、ITO(膜厚200nm、シート抵抗10Ω/□)がコーティングされた20mm×20mmのガラス基板12を使用した。目の細かい手袋で表面が滑らかになるまでITOの表面を研磨し、基板12を超純水で洗浄、超純水中から基板12を取り出し窒素ガス噴射で基板12の上の水分を飛ばし、アセトンとメタノールを用いて超音波洗浄した。さらに、超音波洗浄後、超純水で基板12を洗浄し窒素ガス噴射で水分を除去した。

【0038】
上記(3)について、電子ブロック層16を形成するために、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)の水溶液を窒素雰囲気下でスピンコートした。スピンコートの回転速度は35秒かけて2000rpmまで回転させ、10秒間維持し、その後減速させた。スピンコート後、100℃で10分間熱処理をおこなって電子ブロック層16を形成した。

【0039】
上記(4)について、オルトジクロロベンゼンを1mlに対して、CuPcを2mg、C60を16mg、GeBrを0.3ml溶解させた。窒素ガスの雰囲気下でスピンコートをおこなった。スピンコートの条件は、800rpm、80秒間である。なお、スピンコートの時間は、30~200秒で変更可能である。

【0040】
上記(5)について、スピンコートで有機薄膜18を形成した後、100℃、30分間熱処理をおこなった。有機薄膜18の厚みは約100nmであった。

【0041】
上記(6)について、約150nmの厚みのAlを真空蒸着し、140℃で20分間熱処理をおこなって第2電極20を形成した。

【0042】
上記実験によって制作した太陽電池10を含めて、表1にGeのナノ粒子が入った太陽電池10と入っていない太陽電池の比較を示す。この比較は、株式会社三永電機製作所製のソーラーシュミレーターを使用している。太陽電池10の各層の厚みなどは同一条件でおこなっている。太陽電池10は、p型半導体としてCuPcまたはZnTPPを使用した2種類である。各太陽電池10は電子ブロック層16を備えている。Geのナノ粒子が有機薄膜18の中に分散されることによって、発電効率が一桁良くなっていることが分かる。

【0043】
【表1】
JP0005805394B2_000002t.gif

【0044】
以上のように、本発明はナノ粒子の材料の溶液を使用しているため、溶媒に溶解させることが容易である。有機薄膜18の中にナノ粒子を均一に分散させやすくなっている。使用しているナノ粒子がGeであるため、長波長の光の吸収を高めることができ、光吸収できる波長を広げることができる。有機薄膜18の材料の選択によってシースルー型太陽電池も製造することができる。

【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記(4)と(5)を複数回に分けておこなう。回数を重ねるにつれて徐々に、溶媒中のGeBrの濃度が徐々に濃くなるようにする。製造された太陽電池10の有機薄膜18は、第2電極20に近づくにしたがってGeのナノ粒子の濃度が徐々に濃くなる。電極界面近傍にナノ粒子を分布させて電荷輸送の障壁とならないようにする。引用文献1とは異なり、本願の方法でナノ粒子の材料が溶液状になっているため、所望の濃度勾配を作りやすくなっている。

【0046】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0047】
10:有機薄膜太陽電池
12:基板
14:第1電極
16:電子ブロック層
18:ナノ粒子を含む有機薄膜
20:第2電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2