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明細書 :上皮バリア機能の増強方法及び増強剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-012650 (P2014-012650A)
公開日 平成26年1月23日(2014.1.23)
発明の名称または考案の名称 上皮バリア機能の増強方法及び増強剤
国際特許分類 A61K  31/7125      (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
C12N  15/117       (2010.01)
FI A61K 31/7125 ZNA
A61P 43/00 111
A61P 17/00
C12N 15/00 J
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2012-151120 (P2012-151120)
出願日 平成24年7月5日(2012.7.5)
発明者または考案者 【氏名】権 寧博
【氏名】橋本 修
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4C086
Fターム 4B024AA01
4B024BA80
4B024CA01
4B024DA03
4B024HA17
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC41
要約 【課題】本発明は、上皮バリア機能の増強方法及び増強剤の提供を主な課題とする。
【解決手段】斯かる課題を解決する手段として、上皮細胞に、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを接触させる工程を含む、上皮バリア機能の増強方法;及び、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリア機能の増強剤を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
上皮細胞に、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを接触させる工程を含む、上皮バリア機能の増強方法。
【請求項2】
非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリア機能の増強剤。
【請求項3】
非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリアの機能低下に起因する疾患の治療薬。
【請求項4】
非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリアの機能低下に起因する障害の改善剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主に上皮バリア機能の増強方法及び増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮細胞は、その頂端(アピカル)面と基底(べーサル)面との境界を形成し、物質が双方向へ移動することを制限するバリアを形成する役割を果たしている。上皮バリア機能が破綻すると、気管支喘息、急性肺障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、炎症性腸疾患、タンパク漏出性胃腸症、腎障害、ネフローゼ症候群、脳浮腫、角膜炎、角膜潰瘍、リンパ浮腫等の疾患の発症あるいは症状の増悪が引き起こされる。これらの疾患の患者において、上皮バリア機能の修復を促進し、上皮バリア機能を増強することによって、疾患の治癒又は改善を図ることが可能になると考えられる。しかしながら、臨床的に応用可能な上皮バリア機能を増強するための手段は、一切知られていないのが現状である。
【0003】
また、非メチル化CpG配列を含む核酸は、免疫活性を賦活化することが知られており、自然免疫を刺激する組成物、癌免疫療法や感染症に対する効率的なワクチンとして利用できる可能性が提案され、その有用性が確認されている(特許文献1~5;非特許文献1~3)。しかしながら、非メチル化CpG配列を含む核酸と、上皮バリア形成との関連は一切知られていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開WO00/61151
【特許文献2】国際公開WO98/18810
【特許文献3】特表2003-527352号公報
【特許文献4】特表2002-511841号公報
【特許文献5】特表2002-536339号公報
【0005】

【非特許文献1】Whitmore M, Li S, Huang L. Gene Ther. 1999 Nov;6(11):1867-75.
【非特許文献2】Brunner C et al. J Immunol. 2000 Dec 1;165(11):6278-86.
【非特許文献3】Kojima Y et al. Adjuvant effect of multi-CpGmotifs on an HIV-1 DNA vaccine. Vaccine. 2002 Jul 26;20(23-24):2857-65.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上皮バリア機能の増強剤及び増強方法を提供することを主な目的とする。また、上皮バリア機能の増強によって、上皮バリア機能が低下する疾患等を治癒又は改善するための医薬組成物、外用剤等を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを用いて、上皮バリア機能を増強できることを見出した。本発明は、斯かる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を包含する。
【0009】
項1、上皮細胞に、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを接触させる工程を含む、上皮バリア機能の増強方法。
【0010】
項2、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリア機能の増強剤。
【0011】
項3、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリアの機能低下に起因する疾患の治療薬。
【0012】
項4、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、上皮バリアの機能低下に起因する障害の改善剤。
【発明の効果】
【0013】
本願発明により、簡便に上皮バリア機能の増強が達成される。また、上皮バリア機能の機能低下に起因する疾患、障害を改善する方法も提供される。非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドは生体への害が小さく、有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】経上皮電気抵抗の測定結果を、対照に対する相対値(% TER (compared to vehicle control))により示す。
【図2】傍細胞透過率の測定結果を示す。結果は、下記式により求めた、CpG ODN未処理細胞の傍細胞透過率に対する相対値(% Dextran permeability compared to vehicle control))により示す。
【図3】免疫染色の結果を示す。

【0015】
なお、図中*は、対照に対して有意差あり(P < 0.05)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.上皮バリア機能の増強方法
本発明は、上皮バリア機能の増強方法に関する。

【0017】
ここで、「上皮バリア機能」とは、上皮を形成する上皮細胞の頂端(アピカル)面と基底(べーサル)面との境界において、物質が双方向へ移動することを制限する機能を指す。異動が制限される物質は、イオン、分子(例えば、水溶性分子)、水などが挙げられる。

【0018】
上皮バリアは、上皮細胞同士の間に形成される細胞同士を結合する構造が主として関与する。細胞間に形成される接着構造として、タイトジャンクション(密着結合、tight junction)、アドへレンスジャンクション(接着結合、adherens junction)、ギャップジャンクション(ギャップ結合、gap junction)が挙げられる。中でも、タイトジャンクションの寄与が重要である。タイトジャンクションは、ZO-1タンパク質、オクルーディンタンパク質、クローディンタンパク質等が構成するタンパク質複合体である。また、アドへレンスジャンクションは、E-cadherinタンパク質などのカドヘリンスーパーファミリーに属するタンパク質等が構成するタンパク質複合体である。

【0019】
細胞の上皮バリア機能の増強は、公知の手法により検証、評価することができる。このような手法として、例えば、単離された上皮細胞においては、経上皮電気抵抗の測定、デキストラン等の水溶性分子の透過性(傍細胞透過率)の測定、タイトジャンクションやアドヘレンスジャンクションを構成するタンパク質の検出などが例示されるが、これに限定されるものではない。経上皮電気抵抗を測定する場合、電気抵抗値、静電容量(electric capacitance、Ccl)またはインピーダンスの上昇を、上皮バリア機能の増強と評価することができる。デキストラン、エバンスブルー染色液、フルオロセイン等の水溶性分子の透過性を測定する場合、上皮を透過する水溶性分子の物質量の低下を、上皮バリア機能の増強と評価することができる。タイトジャンクションを構成するタンパク質(例えば、タイトジャンクションは、ZO-1タンパク質、オクルーディンタンパク質、クローディンタンパク質)を検出する場合、タイトジャンクションを構成するタンパク質の検出量の増加、または、細胞間接着面への集積を、上皮バリア機能の増強と評価することができる。なお、タイトジャンクションを構成するタンパク質の検出は、例えば免疫染色により行うことができる。生体内においては、貯留体液量の測定、漏出した体液の成分分析、粘膜上皮水分蒸散量(transepithelialwater loss, TEWL)の測定、標識(例えば、テクネチウム-99m(99mTc)等の放射性同位元素、蛍光物質等を用いた標識など)したアルブミンなどのタンパク質の漏出量の算出により評価することができる。

【0020】
本発明の方法が対象とする上皮細胞は、特に限定されるものではない。上皮細胞としては、表皮細胞(顆粒層)、呼吸器(鼻腔、咽頭、気道、肺)の上皮細胞、消化管(食道、胃、小腸、大腸)の上皮細胞、角膜上皮細胞等が例示される。上皮細胞の由来は特に限定されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳類由来の上皮細胞が好適である。上皮細胞は、生体の上皮細胞であっても、単離された上皮細胞であってもよい。単離された上皮細胞は、公知の手法によって維持及び培養をすることができる。

【0021】
本発明の方法は、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(以下、CpG ODN(cytosine-phosphodiester-guanine oligodeoxynucleotide)と記載する場合がある。)を用いる。

【0022】
本発明のオリゴヌクレオチドは、デオキシヌクレオシド(デオキシアデノシン(塩基部分は、アデニン(A))、デオキシグアノシン(塩基部分は、グアニン(G))、チミジン(塩基部分は、チミン(T))、デオキシシチジン(塩基部分は、シトシン(C)))が、リン酸を介在したホスホジエステル結合によって多量体化した化合物(オリゴデオキシヌクレオチド)を指す。オリゴヌクレオチドのホスホジエステル結合の部分は、その全部または一部が、酸素原子が硫黄原子に置換されたホスホロチオエート修飾されたものであってもよい。ホスホロチオエート修飾されたホスホジエステル結合を、ホスホロチオエート結合と換言することもできる。オリゴヌクレオチドのホスホジエステル結合及び/又はホスホロチオエート結合部位を、オリゴヌクレオチドの骨格ということもある。

【0023】
本発明のオリゴヌクレオチドの塩基長は特に限定されるものではない。例えば8~100塩基程度のものを用いることができ、好ましくは12~50塩基程度のもの、より好ましくは15~35塩基程度のものを用いることができる。

【0024】
非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)とは、非メチル化CpG配列を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドを指す。ここで、非メチル化CpG配列とは、シトシン(C)-グアニン(G)(5’-CpG-3’)ジヌクレオチド配列であって、当該のシトシンの5位がメチル化されていないジヌクレオチド配列をいう(非メチル化CpGモチーフ、あるいは単にCpGモチーフともいう。)一般に、真核生物においては5’-CpG-3’配列はCGメチラーゼによってシトシンがメチル化されているため、メチル化されていない5’-CpG-3’配列のゲノム中での出現頻度は小さい。

【0025】
本発明のCpG ODNの1つの態様として、免疫賦活活性を有するCpG ODNが挙げられる。該オリゴヌクレオチドは、主にToll-like receptor 9(TLR9)タンパク質に認識されることで、免疫賦活活性を発揮すると考えられている。

【0026】
免疫賦活活性を有するCpG ODNとしては、クラスA(Class A;タイプD(type D)ともいう)、クラスB(Class B;タイプK(type K)ともいう)及びクラスC(Class C)のCpG ODNが例示される。

【0027】
クラスAのCpG ODNは、配列が1以上の非メチル化CpG配列を含むパリンドローム配列であって、骨格がホスホジエステル結合である部分と、該パリンドローム配列の5’側及び/又は3’側に結合したポリG配列(poly(G)、デオキシグアノシンが2個以上連結した配列)であって骨格がホスホロチオエート結合である部分とからなるCpG ODNを指す。なお、パリンドローム配列とは、配列と相補鎖の配列とが一致する回文構造を有する配列を指す。

【0028】
クラスAのCpG ODNの具体例として、ODN2216、ODN2336、ODN1585が例示される。ODN2216、ODN2336は、ヒトにおいて顕著に免疫賦活活性が認められる。ODN1585は、マウスにおいて顕著に免疫賦活活性が認められる。上記クラスAのCpG ODN配列及び構造を下記に示す。
ODN2216:5’- ggGGGACGATCGTCgggggg -3’ (配列番号1)
ODN2336:5’- gggGACGACGTCGTCgggggg -3’ (配列番号2)
ODN1585:5’- gggGGTCAACGTTGAgggggg -3’ (配列番号3)
(配列中、大文字はホスホジエステル結合、小文字はホスホロチオエート結合をそれぞれ示す。下線部は、パリンドローム配列を示す。)

【0029】
クラスBのCpG ODNは、配列中に1以上の非メチル化CpG配列を含み、かつ、骨格がオリゴヌクレオチド全長にわたりホスホロチオエート結合であるCpG ODNを指す。クラスBのCpG ODNの具体例として、ODN2006、ODN1668、ODN1826が例示される。ODN2006は、ヒトにおいて顕著に免疫賦活活性が認められる。ODN1668、ODN1826は、マウスにおいて顕著に免疫賦活活性が認められる。上記クラスBのCpG ODNの配列及び構造を下記に示す。
ODN2006:5’- tcgtcgttttgtcgttttctcgtt -3’ (配列番号4)
ODN1668:5'- tccatgacgttcctgatgct -3' (配列番号5)
ODN1826:5’- tccatgacgttcctgacgtt -3’ (配列番号6)
(配列中、小文字はホスホロチオエート結合を示す。)

【0030】
タイプCのCpG ODNは、配列中に1以上の非メチル化CpG配列含む5’側部分、及び非メチル化CpG配列を含むパリンドローム配列を含む3’側部分からなり、骨格がオリゴヌクレオチド全長にわたりホスホロチオエート結合であるCpG ODNを指す。クラスCのCpG ODNの具体例として、ODN2395、ODN M362が例示される。ODN2395、ODN M362は、ヒト及びマウスにおいて顕著に免疫賦活活性が認められる。上記クラスCのCpG ODNの配列及び構造を下記に示す。
ODN2395:5’- tcgtcgttttcggcgcgcgccg -3’ (配列番号7)
ODN M362:5’-tcgtcgtcgttcgaacgacgttgat-3’ (配列番号8)
(配列中、小文字はホスホロチオエート結合を示す。下線部は、パリンドローム配列を示す。)

【0031】
なお、免疫賦活活性においては、クラスAのCpG OD及びクラスCのCpG ODNは、形質細胞様樹上細胞のIFN-αの産生を誘導すること、ならびに、クラスBのCpG ODN及びクラスCのCpG ODNは、B細胞を活性化及び増殖の誘導をすることが知られている。

【0032】
上記CpG ODNは、公知の手法により合成することができる。簡便のために、市販のものを用いることもできる。

【0033】
本発明の方法は、上皮細胞に、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを接触させる工程を含む。上皮細胞に、CpG ODNを接触させる手段は特に限定されるものではない。例えば、上皮細胞が単離された上皮細胞である場合、CpG ODN若しくはCpG ODNを含む溶液(例えば、水溶液)を、上皮細胞が維持される培地に添加することで、上皮細胞と、CpG ODNとを接触させることができる。

【0034】
上皮細胞に接触させる非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドの物質量は、上皮バリア機能の増強が達成される範囲内で特に限定されるものではない。好ましくは、上皮細胞1.0x105個あたり、約10nM~1mM程度、好ましくは約100nM~100μM程度、より好ましくは約0.5μM~50μMとすることができる。

【0035】
かくして、上皮バリア機能の増強が達成される。必要に応じて、前述の手法により、上皮バリア機能の増強を、検証、評価することができる。

【0036】
2.上皮バリア機能の増強剤
前述の通り、上皮細胞に、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを接触させることで、上皮バリア機能の増強をすることができる。すなわち、本発明は非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドを含む、幹細胞の細胞老化抑制剤をも提供する。また、本発明は、上皮バリア機能の増強をするための、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドをも提供する。

【0037】
本発明の増強剤は、有効成分として非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)を含む。CpG ODNとしては、前述の上記「1.」欄に記載のものを用いる。

【0038】
本発明の増強剤におけるCpG ODNの含有量は、効果を奏する範囲内で、当業者が適宜設定することができる。好ましい含有量として、約10nM~1mM程度、好ましくは約100nM~100μM程度、より好ましくは約0.5μM~50μMとすることができるが、これに限定されるものではない。

【0039】
本発明の増強剤が提供される形態は、特に限定されるものではない。具体的な形態としては、例えば、上記の含有量でCpG ODNを含む液体、上記の含有量以上の量でCpG ODNを含む液体(濃縮液体)、CpG ODNを含む固形剤等が挙げられる。適切な溶媒(水、緩衝液、生理食塩水など)にCpG ODNを溶解した、液状形態であることが好ましいが、これに限定されるものではない。

【0040】
本発明の増強剤は、提供される形態に応じて、CpG ODNの効果を阻害しない範囲で、通常の溶媒、基材を含むものであってもよい。

【0041】
本発明の増強剤の具体的用途は、上皮バリア機能の増強が必要とされる用途であれば特に限定されるものではないが、好適な例として上皮バリアの機能低下に起因する疾患の治療薬、上皮バリアの機能低下に起因する障害の改善剤が挙げられる。

【0042】
3.治療薬
本発明の治療薬は、有効成分として非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)を含む、上皮バリアの機能低下に起因する疾患の治療薬である。CpG ODNとしては、前述の上記「1.」欄に記載のものを用いる。本発明の治療薬は、医薬組成物として提供されるものであってもよい。

【0043】
本発明は、上皮バリアの機能低下に起因する疾患を治療するための、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドをも提供する。さらに、本発明は、上皮バリアの機能低下に起因する疾患の治療薬を製造するための、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドの使用をも提供する。

【0044】
本発明の治療薬は、有効成分としてCpG ODNのみを含むものであっても、有効成分として非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)と他の薬理効果を奏する成分とを併用するものであってもよい。なお、ここでいう「有効成分」には、後述の通常使用される基剤又は担体等は含まれない。

【0045】
CpG ODNとしては、前述の上記「1.」欄に記載のものを用いる。本発明の治療薬におけるCpG ODNの含有量は、効果を奏する範囲内で、当業者が適宜設定することができる。好ましい含有量として、約10nM~1mM程度、好ましくは約100nM~100μM程度、より好ましくは約0.5μM~50μMとすることができるが、これに限定されるものではない。

【0046】
本発明の治療薬は、CpG ODNを含有することで、上皮バリアの機能低下に起因する疾患に対して治療効果を奏する。上皮バリアの機能低下に起因する疾患としては、気管支喘息、急性肺障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、炎症性腸疾患、タンパク漏出性胃腸症、腎障害、ネフローゼ症候群、脳浮腫、角膜炎、角膜潰瘍、リンパ浮腫等が挙げられるが、これに限定されるものではない。

【0047】
本発明の治療薬は、上記CpG ODN以外に、通常使用される基剤又は担体等を含むものであることが好ましい。基剤又は担体等は、治療薬が提供される剤形に応じて当業者が適宜選択することができる。

【0048】
本発明の治療薬が提供される剤形は特に限定されるものではなく、湿布剤、テープ剤、パッチ剤などの貼付剤;液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤などの塗布剤、吸引剤等が挙げられる。

【0049】
本発明の治療薬は、これを1日1~数回、疾患部位及び剤形に応じた適切な投与方法で投与すればよい。CpG ODNを成人1日あたり例えば0.01~1000ng、好ましくは0.1~100ng程度となるように投与すればよい。

【0050】
4.改善剤
本発明の治療薬は、有効成分として非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)を含む、上皮バリアの機能低下に起因する障害の改善剤である。CpG ODNとしては、前述の上記「1.」欄に記載のものを用いる。

【0051】
本発明は、上皮バリアの機能低下に起因する障害を改善するための、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドをも提供する。さらに、本発明は、上皮バリアの機能低下に起因する障害の改善剤を製造するための、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドの使用をも提供する。

【0052】
本発明の改善剤は、有効成分としてCpG ODNのみを含むものであっても、有効成分として非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)と他の障害の改善効果を奏する成分とを併用するものであってもよい。なお、ここでいう「有効成分」には、後述の通常使用される基剤又は担体等は含まれない。

【0053】
CpG ODNとしては、前述の上記「1.」欄に記載のものを用いる。本発明の改善剤におけるCpG ODNの含有量は、効果を奏する範囲内で、当業者が適宜設定することができる。好ましい含有量として、約10nM~1mM程度、好ましくは約100nM~100μM程度、より好ましくは約0.5μM~50μMとすることができるが、これに限定されるものではない。

【0054】
本発明の改善剤は、CpG ODNを含有することで、上皮バリアの機能低下に起因する障害に対して改善効果を発揮する。障害の具体例としては皮膚障害が挙げられる。皮膚障害とは、皮膚疾患とは診断されないものの、乾燥、かさつき、肌荒れ、ハリの欠如、しわ、脱毛、刺激へ過敏になるなどを伴う皮膚の異常状態を指す。

【0055】
本発明の改善剤は、上記CpG ODN以外に、通常使用される基剤又は担体等を含むものであることが好ましい。基剤又は担体等は、改善剤が提供される剤形に応じて当業者が適宜選択することができる。上記障害が皮膚障害である場合、本発明の改善剤を、例えば化粧品組成物(メーキャップ化粧料、基礎化粧料、化粧品)として提供される、皮膚外用組成物とすることもできる。

【0056】
本発明の改善剤が提供される剤形は特に限定されるものではなく、湿布剤、テープ剤、パッチ剤などの貼付剤;液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤などの塗布剤、吸引剤等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
測定結果の統計処理において、Student t検定及び差異分析ANOVAを用い、被験群間の統計学的有意差を検討した。P < 0.05をもって有意差とした。
【実施例】
【0059】
[実施例1]
上皮細胞を、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)の存在下で培養し、経上皮電気抵抗(transepithelial electric resistance、TER)の測定により上皮バリア機能を評価した。
【実施例】
【0060】
<方法>
(1)細胞及び細胞培養
実験細胞として、16HBE細胞(ヒト由来正常気管支上皮細胞(温度感受性SV40 T抗原を導入して不死化した細胞株);D.C. Gruenert博士(Univ. of California, San Francisco, CA)より供与。)を用いた。16HBE細胞は、10%FBSを添加したMEM培地中で、37℃、二酸化炭素濃度5%の条件下で培養した。また、16HBE細胞は、10~30回の継代培養の間で使用した。
【実施例】
【0061】
(2)経上皮電気抵抗(Transepithelial electrical resistance、TER)の測定
16HBE細胞を、10%のFBSを添加したMEM培地中で、コンフルエントまで培養した。次に、16HBE細胞を細胞密度1x105細胞/cm2となるように24穴Transwellインサート(Corning社製、表面積0.33cm2)上に藩種し、10%のFBSを添加したMEM培地中で24時間培養した。
【実施例】
【0062】
その後、培地交換を行い、PBSに溶解した下記CpG ODNを、終濃度が1.25μM、2.5μMまたは5μMとなるように添加した培地中で、72時間さらに培養をした。
【実施例】
【0063】
CpG ODNは、下記のものを用いた。
(i)ODN2216:5’-ggGGGACGATCGTCgggggg-3’ (配列番号1)
(ii)ODN2006:5’-tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt-3’ (配列番号4)
(iii)ODN2395:5’-tcgtcgttttcggcgcgcgccg-3’ (配列番号7)
(配列中、大文字はホスホジエステル結合、小文字はホスホロチオエート結合をそれぞれ示す。下線部は、パリンドローム配列を示す。)
【実施例】
【0064】
72時間の培養後、Millicell-ERS装置(Millipore社製)を用いて、製造者の指示書に従い、銀及び塩化銀からなる2つの電極を頂端側と基底側にそれぞれ浸して、経上皮電気抵抗(Transepithelial electrical resistance、TER)を測定した。ブランクとして、細胞を藩種していないTranswellのTERを測定した(ブランクTER)。
【実施例】
【0065】
以下の方程式を用いてTER(Ω x cm2)を算出した:
(試料TER-ブランクTER)x 表面積TERブランク。
【実施例】
【0066】
<結果及び考察>
図1に、経上皮電気抵抗の測定結果を、対照に対する相対値(% TER (compared to vehicle control))により示す。
【実施例】
【0067】
TER測定において、上皮のバリアが形成されていくと、上皮細胞の頂端側と基底側との間の電気抵抗が上昇する。このような観察を通じて、単層細胞層のバリア機能を定量的に観察することができる。
【実施例】
【0068】
各CpG ODN添加培地で培養した細胞において、CpG ODNの濃度に依存して、TERが有意に上昇した。従って、上皮細胞をCpG ODNの存在下で培養を行うことにより、上皮バリア機能の増強が達成されたことが示された。
【実施例】
【0069】
[実施例2]
上皮細胞を、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)の存在下で培養し、傍細胞透過率(Apparent permeability coefficient、Papp)の測定により上皮バリア機能を評価した。
【実施例】
【0070】
<方法>
(1)実施例1と同様にして、CpG ODNの存在下、16HBE細胞を培養した。CpG ODNは、下記のものを用いた。
(i)ODN2006:5’-tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt-3’ (配列番号4)
(ii)ODN2395:5’-tcgtcgttttcggcgcgcgccg-3’ (配列番号7)
(配列中、小文字はホスホロチオエート結合を示す。下線部は、パリンドローム配列を示す。)
【実施例】
【0071】
(2)4-kDa FITC-デキストラン(1 mg/ml)(Sigma社製)を含む溶液を、Transwell上層(培地液0.18ml、Transwellインサート中の頂端側コンパートメント)に20μl加えた。Transwell上層のFITC-デキストラン初期濃度は、10 mg/mlであった。
【実施例】
【0072】
FITC-デキストラン溶液の添加60分後、Transwell下層(培地液1ml、基底側コンパートメント)から培地液を100 μl採取し、PTIフルオロメーター(Photon Technology International社製)を用いて、FITCの蛍光を測定した(励起波長:492 nm、蛍光波長:520 nm)。蛍光測定からTranswell下層中のFITC濃度を算出した。さらに、1秒あたりのFITC-デキストランの透過率(dQ/dt(mol/s))を算出した。
【実施例】
【0073】
以下の方程式に従い、傍細胞透過率(Papp)を算出した:
Papp (cm/s) = dQ/dt(1/AC0)
dQ/dt:透過率(mol/s)
C0:Transwell上層に加えたデキストランの初期濃度(mol/ml)
A:Transwellの表面積。
【実施例】
【0074】
<結果及び考察>
図2に、傍細胞透過率の測定結果を示す。結果は、下記式により求めた、CpG ODN未処理細胞の傍細胞透過率に対する相対値(% Dextran permeability compared to vehicle control))により示す。
【実施例】
【0075】
%デキストラン透過率 = Paap (CpG ODN処理細胞) / Paap (CpG ODN未処理細胞) x 100。
【実施例】
【0076】
Papp測定において、上皮のバリアが形成されていくと、上皮細胞の頂端側から基底側への分子の透過率が低下する。このような観察を通じて、単層細胞層のバリア機能を定量的に観察することができる。
【実施例】
【0077】
各CpG ODN添加培地で培養した細胞において、CpG ODNの濃度に依存して、FITC-デキストランの傍細胞透過性は有意に減少した。従って、上皮細胞をCpG ODNの存在下で培養を行うことにより、上皮バリア機能の増強が達成されたことが示された。
【実施例】
【0078】
[実施例3]
上皮細胞を、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチド(CpG ODN)の存在下で培養し、タイトジャンクションを構成するZO-1タンパク質及びアドヘレンスジャンクション(接着結合)を構成するE-cadherinタンパク質を免疫染色により検出し、タイトジャンクション及びアドヘレンスジャンクションの形成を評価した。
【実施例】
【0079】
<方法>
(1)実施例1と同様にして、CpG ODNの存在下、16HBE細胞を培養した。CpG ODNは、ODN2006:5’-tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt-3’(配列番号4、配列中、小文字はホスホロチオエート結合を示す。)を、5μMで用いた。
【実施例】
【0080】
(2)培養後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で37℃にて60分間静置し、試料を固定した。リン酸緩衝食塩液(PBS: Phosphate Buffered Saline)にて洗浄後、3%ウシ血清アルブミン(BSA: Bovine serum albumin)を添加したPBS中でさらに10分間、室温で静置した。その後、さらにPBSで洗浄を行った。
【実施例】
【0081】
一次抗体及び二次抗体は下記のものを用いて、ZO-1及びE-cadherinの二重染色を行った。
(i)一次抗体(4℃、24時間静置)
抗ヒトZO-1マウスモノクローナル抗体(Zymed Laboratories社製、使用濃度:10μg/ml)、
抗ヒトE-cadherinラビットポリクローナル抗体(Cell Signaling Technology社製、使用濃度:1:400)
(ii)二次抗体(室温、30分静置)
Alexa 488標識抗マウスIgG 抗体(Molecular Probes社製、使用濃度:1:400)、
Alexa 547抗ラビットIgG 抗体(Molecular Probes社製、使用濃度:1:400)。
【実施例】
【0082】
最後に、DAPI染色核染色を行い、プレパラートを作成した。
【実施例】
【0083】
試料を、共焦点顕微鏡(Olympus FV1000, Tokyo, Japan)を用いて、細胞の頂端面(Surface)及び基底面(Bottom)を観察した。
【実施例】
【0084】
<結果及び考察>
図3に、免疫染色の結果を示す。CpG ODN添加培地で培養した細胞において、ZO-1タンパク質及びE-cadherinタンパク質の細胞境界への局在増加が観察された。
【実施例】
【0085】
従って、上皮細胞をCpG ODNの存在下で培養を行うことにより、タイトジャンクション及びアドヘレンスジャンクションの形成が促進されることが示された。すなわち、CpG ODNの存在下で培養を行うことにより、上皮バリア機能の増強が達成されたことが強く示唆される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2