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明細書 :伸縮性衣類

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6074791号 (P6074791)
公開番号 特開2014-050490 (P2014-050490A)
登録日 平成29年1月20日(2017.1.20)
発行日 平成29年2月8日(2017.2.8)
公開日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発明の名称または考案の名称 伸縮性衣類
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
A41D  31/00        (2006.01)
A41D  13/00        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
A41D 31/00 501E
A41D 31/00 502Z
A41D 31/00 502F
A41D 13/00
A41D 31/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2012-195645 (P2012-195645)
出願日 平成24年9月6日(2012.9.6)
審査請求日 平成27年7月13日(2015.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】前田 康博
審査官 【審査官】今井 貞雄
参考文献・文献 特開2003-250842(JP,A)
特開2012-130201(JP,A)
特開2007-068794(JP,A)
調査した分野 A61H 3/00
A41D 13/00
A41D 31/00
特許請求の範囲 【請求項1】
伸縮性を有する衣類の一部あるいは全部に可変剛性部が設けられた伸縮性衣類であって、
前記可変剛性部は、
メッシュ体と、該メッシュ体を挟む配置に設けた誘電性高分子からなるゲルシートと、ゲルシートの外面を被覆する電極層とを備え、前記メッシュ体とゲルシートと電極層とが厚さ方向に複数層に順次積層された積層型のゲルアクチュエータとして形成され、
前記可変剛性部は、前記ゲルアクチュエータのメッシュ体と電極層との間に電圧を加えた際の剛性が、前記伸縮性衣類自体の剛性を上回るとともに、前記メッシュ体と電極層との間に電圧を加えていない際における剛性が、前記伸縮性衣類自体の剛性と同程度であることを特徴とする伸縮性衣類。
【請求項2】
前記ゲルアクチュエータを構成するゲルシートが、ポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項記載の伸縮性衣類。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッツなどの伸縮性衣類で剛性が可変となる可変剛性部を備える伸縮性衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者・歩行困難者の自立歩行支援を目的としたロボット技術を用いた歩行アシスト装置が注目されている(非特許文献1、2)。しかしながら、従来の歩行アシスト装置では、電気モータ・空気圧アクチュエータとリンク機構を組み合わせることで、歩行アシストを実現しているため、筋力の弱った高齢者にとって装置が大型であることや、アクチュエータやリンク機構が重く硬いため、装着時の重量やフィット性が問題になると考えられる。なお、本発明者は、人との同調性を高めることによって、より好適な歩行アシストを可能にするロボティックスーツを提案した(特許文献1)。
【0003】
一方、高弾性生地を用い、弾性力によって股関節屈曲を補助する機能性スパッツが開発されている(非特許文献3)。しかし、この機能性スパッツは、股関節屈曲運動を補助することができるが、股関節伸展時の運動を補助することができず、また、高弾性生地に弾性力を持たせるために、自然長から伸ばす必要があり、筋力の衰えた高齢者にとっては負担になると考えられる。
【0004】
本発明者は、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)ゲルを用いて収縮運動を行うPVCゲルアクチュエータを開発し、その駆動特性について研究してきた(非特許文献4、5)。この高分子アクチュエータは大気中で電場駆動が可能で、収縮率が10%、400Pa/layer、応答性7Hzという駆動特性を有するだけでなく、印加する電場により、剛性が生体筋のように増加する特性を有している。したがって、このPVCゲルアクチュエータの電場による剛性変化をスパッツなどの伸縮性を備える衣類に利用することにより、身体運動をアシストすることができると考えられる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-66375号公報
【0006】

【非特許文献1】“リズム歩行アシスト”、安原謙、島田圭、小山泰司、Honda R&D technicalreview 21(2)、54-62、2009-10
【非特許文献2】“外骨格パワーアシストHALによる歩行アシスト支援に関する研究”、川村雄一郎、山海嘉之、第18回日本ロボット学会学術講演会予稿集、453-454
【非特許文献3】“高弾性生地を用いた機能性衣料による歩行補助”、静井章朗、森崇、加藤龍、森下壮一郎、横井浩史、第28回日本ロボット学会学術講演会、RSJ2010AC2J1-8、2010
【非特許文献4】“伸縮型PVCゲルアクチュエータの開発 : 組成・電場の影響”、小川尚希、山野美咲、橋本稔、高崎緑、平井利博、講演論文集2009(46)415-416、2009-3-01
【非特許文献5】“メッシュ電極を用いた伸縮型PVC ゲルアクチュエータの駆動特性”、山野美咲、橋本稔、高崎緑、平井利博、第26回日本ロボット学会学術講演会、2A1-02、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、印加する電場によって剛性が生体筋のように変化する高分子アクチュエータの特性に着目し、スパッツなどの伸縮性衣類で、腰や脚にぴったりと添うようにして着用される衣類にゲルアクチュエータを組み込み、電場を印加することにより生じる剛性変化を利用して、身体運動を拘束したり、開放したりすることで、身体動作をアシストすることを可能にする伸縮性衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、伸縮性を有する衣類の一部あるいは全部に可変剛性部が設けられた伸縮性衣類であって、前記可変剛性部は、メッシュ体と、該メッシュ体を挟む配置に設けた誘電性高分子からなるゲルシートと、ゲルシートの外面を被覆する電極層とを備え、前記メッシュ体とゲルシートと電極層とが厚さ方向に複数層に順次積層された積層型のゲルアクチュエータとして形成され、前記可変剛性部は、前記ゲルアクチュエータのメッシュ体と電極層との間に電圧を加えた際の剛性が、前記伸縮性衣類自体の剛性を上回るとともに、前記メッシュ体と電極層との間に電圧を加えていない際における剛性が、前記伸縮性衣類自体の剛性と同程度であることを特徴とする。
【0009】
伸縮性を有する衣類とは、伸縮性を有する素材、あるいは伸縮性を有する編み方、織り方によって形成した衣類であり、人体に着用して用いるものを意味する。スパッツのように、腰と脚部分に着用されるものの他に、サポーターのように人体の一部に着用(装着)されるものも含む。可変剛性部は伸縮性衣類に一体に組み込んで設ける方法、伸縮性衣類の表面に添ってゲルアクチュエータを取り付ける方法等によって設けることができる。
可変剛性部は、伸縮性衣類の一部に設けてもよいし、伸縮性衣類の全体に設けてもよい。伸縮性衣類の全体に可変剛性部を設ける場合は、可変剛性部(ゲルアクチュエータ)を複数の区画に分割して、個々の区画ごとにゲルアクチュエータに作用させる電圧を制御できるようにするとよい。各区画の可変剛性部の剛性を適宜制御することにより、伸縮性衣類による種々の作用を行わせることができる。
【0010】
前記可変剛性部は、メッシュ体とゲルシートと電極層とを厚さ方向に複数層に順次積層した積層型のゲルアクチュエータによって形成することができる。ゲルアクチュエータの剛性変化はゲルアクチュエータの積層数にも依存するから、可変剛性部に使用するゲルアクチュエータの積層数を調節することにより、用途に合わせた伸縮性衣類を提供することができる。
【0011】
また、前記可変剛性部は、前記ゲルアクチュエータのメッシュ体と電極層との間に電圧を加えた際の剛性が、前記伸縮性衣類自体の剛性を上回るように設定することで、可変剛性部を備える伸縮性衣類としての作用を発揮させることができる。
また、前記可変剛性部は、前記ゲルアクチュエータのメッシュ体と電極層との間に電圧を加えていない際における剛性が、前記伸縮性衣類自体の剛性と同程度であるようにすることにより、可変剛性部を設けたことによる動作の抵抗感、違和感なく着用することができる。
【0012】
前記可変剛性部を構成するゲルアクチュエータに用いるゲルシートには、適宜誘電性高分子材料を使用することが可能である。ポリ塩化ビニルはゲルシートを構成する誘電性高分子材料として好適に利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る伸縮性衣類は、ゲルアクチュータに電圧を印加することによりゲルアクチュエータの剛性が容易に制御できるという作用を利用して、必要部位に着用するだけで、歩行や腕を動かすといった動作をアシストすることができ、また逆に、動作に負荷を加えることによりリハビリやトレーニングにも利用することができ、従来のアシスト装置にくらべて装着しやすく、使いやすい装置(衣類)として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ゲルアクチュエータの駆動原理を示す説明図である。
【図2】積層型のゲルアクチュエータとその作用を示す説明図である。
【図3】PVCゲルアクチュエータの剛性変化の測定方法を示す説明図である。
【図4】PVCと可塑剤のDBAの重合比の相違による剛性を測定した結果を示すグラフである。
【図5】PVCゲルの膜厚を0.5mm、1.0mm、1.5mmとした3種のゲルアクチュエータについて剛性を測定した結果を示すグラフである。
【図6】積層数を5層、10層、15層とした3種のゲルアクチュエータについて剛性を測定した結果を示すグラフである。
【図7】可変剛性部をスパッツの大腿部に組み込んだ状態を示すスパッツの写真(a)、および説明図(b)である。
【図8】股関節を屈曲したときに発生する力を示すグラフである。
【図9】スパッツの剛性の測定結果を示すグラフである。
【図10】ゲルアクチュエータを組み込んだスパッツの構造図である。
【図11】スパッツによるアシスト試験の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(PVCゲルの構成)
伸縮性衣類は、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)ゲルを衣類に組み込んで剛性を可変とした。使用するPVCゲルは、ポリ塩化ビニル(PVC)と可塑剤のアジピン酸ジブチル(DBA)を溶媒のテトラヒドロフラン(THF)中で混合した後に、その混合液をシャーレにキャストし、乾燥させて得ることができる。このゲルはPVCとDBAの重合比を変えることにより剛性を調節することができる。

【0016】
なお、剛性を可変とするゲルアクチュエータに使用するゲルの種類は、PVCゲルに限らない。例として、ポリ塩化ビニル(PVC)の他に、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等の誘電性高分子材料を用いることができる。これらの誘電性高分子材料は、いずれもゲルシートを形成して電気刺激した際に、屈曲変形やクリープ変形をなすという特性を有する。

【0017】
(PVCゲルアクチュエータの構造)
PVCゲルに電場を加えると、電荷が陰極からゲル内部に注入され、陽極に移動し、放電する前に電荷の蓄積はゲルの陽極付近での静電気的付着を促進する。その結果として、ゲルは陽極付近で変形する。PVCゲルは電場の印加によって陽極に這い出すように変形することから、メッシュ状の陽極と箔状の陰極とでゲルを挟むことで、電場印加時にゲルが網目の空間内に引き込まれ、全体として厚さ方向に収縮し、電場を除去するとゲル自体の弾性によって元の形状に戻るようなメカニズムをもつアクチュエータを構成することができる。図1にゲルアクチュエータの駆動原理を示す。メッシュ体であるアノード(陽極)10を厚さ方向に挟む配置にPVCゲル12a、12bを設け、PVCゲルの外面にカソード(陰極)14としてステンレス箔を設けている。

【0018】
図2は、PVCゲルアクチュエータの基本構造を積層させた構造とし、アクチュエータ全体として変位量を増大させた積層型のゲルアクチュエータを構成した例を示す。カソードであるステンレス箔を両面からPVCゲルシートで挟み、アノードのメッシュ体をPVCゲルシートの中間に配して順次積層したものである。このようにゲルアクチュエータを積層する構造とすることにより、アクチュエータ全体としては、個々のゲルシートの変位量が加算されたものとなる。

【0019】
(PVCゲルアクチュエータの剛性変化)
PVCゲルアクチュエータをアクチュエータとして使用する方法によって運動補助する場合、すなわち収縮変位を直接的に利用して運動補助する場合には、大きな収縮量が必要となる。PVCゲルアクチュエータは積層構造としたとしても大きな変位量を得ることは難しい。一方、剛性変化を運動補助に利用する場合は、PVCゲルアクチュエータの変位量はアクチュエータの剛性により自動的に決定されるため、大きな変位が可能であり、剛性変化を利用して運動補助する方法が有効に利用できる可能性がある。

【0020】
PVCゲルアクチュエータの剛性変化のメカニズムは、PVCゲルは電場の印加によって陽極に這い出すように変形することから、メッシュ状の陽極と箔状の陰極とでゲルを挟むことで、電場印加時にゲルが網目の空間内に引き込まれ、ゲルと陽極表面の接触面積の増加、吸着力によってゲルの剛性が増大するものと考えられる。よって、ゲルの膜厚、可塑剤の量、メッシュの空隙量、積層数によってアクチュエータの剛性変化の違いが出てくると考えられる。

【0021】
PVCゲルアクチュエータの剛性変化の測定を行った。測定方法を図3に示す。アクチュエータ20とZ軸ステージ16を固定し、アクチュエータ20をロードセル18に接続する。アクチュエータ20に電圧を印加し、Z軸ステージ16に取り付けられたマイクロメータを見ながら、アクチュエータ20に微小な強制変位を与え、その時の反力をロードセル18を用いて計測し、アクチュエータ20の剛性を求めた。

【0022】
(PVCとDBAの重合比と剛性変化)
PVCと可塑剤のDBAの重合比による剛性変化の違いについて調べた。PVCとDBAの重合比を10:40(DBA40)、10:60(DBA60)、10:80(DBA80)、3種類のPVCゲルを作成し、それぞれの剛性を測定した。実験に用いたPVCゲルは、縦10mm、横50mm、膜厚1。0mmで、陰極のステンレス箔はゲル内部に挿入されている。また、陽極にはステンレスメッシュ電極(メッシュサイズ20)を使用し、5層積層したPVCゲルアクチュエータを用いて、剛性変化を測定した。測定結果を図4示す。
図4より、DBA40のものが最も剛性変化が大きいことがわかる。このことから、可塑剤の量を増やすことによって、剛性変化が小さくなる傾向にあると考えられる。

【0023】
(PVCゲル膜厚と剛性変化)
PVCゲルの膜厚と剛性変化の違いについて調べた。PVCゲルの膜厚を0.5mm、1.0mm、1.5mmとした3種類のアクチュエータの剛性変化を測定した。測定結果を図5に示す。図5より、膜厚が0.5mmのものが最も剛性変化が大きくなることが分かった。

【0024】
(PVCゲルアクチュエータの積層数と剛性変化)
PVCゲルアクチュエータと積層数による剛性変化の違いについて調べた。積層数を5層、10層、15層とした3種類のアクチュエータの剛性変化を測定した。測定結果を図6に示す。図6より、積層数を多くすることで、アクチュエータの剛性を大きくすることができることが分かった。
これらの実験結果より、PVCゲルアクチュエータの剛性変化を最も大きくするためには、可塑剤の重合比を小さくし、PVCゲルの膜厚を薄くし、積層数を大きくすることで可能となると考えられる。

【0025】
(可変剛性スパッツによる歩行アシスト)
伸縮性衣類の例として、スパッツにPVCゲルアクチュエータからなる可変剛性部を組み込んだ可変剛性スパッツとその作用について説明する。
可変剛性スパッツは、図7(a)に示すように、可変剛性部をスパッツの大腿部に組み込み、腰の部分と膝の部分を固定し、可変剛性スパッツとする。可変剛性部以外の部分には、通常のスパッツに用いられる高弾性素材を用いる。組み込まれたPVCゲルアクチュエータの剛性変化を制御して歩行アシストを行う。

【0026】
その方法は、電場を加えたときのスパッツの剛性変化によって大腿部に力を作用させ、股関節の運動を補助することによって歩行をアシストする。具体的には、大腿部の前部と後部に可変剛性部を拮抗させて配置し、脚を前方に振り出すときは、前部のゲルの剛性を高くし、支持脚になっているときには後部のゲルの剛性を高くするように可変剛性部を制御する。このように可変剛性部を制御することにより、歩行を補助することができる。実験では、図7(b)に示すように、右足大腿部の前部のみにPVCゲルアクチュエータを組み込み、右足を前方に振り出す際にPVCゲルアクチュエータの剛性を高くして、股関節運動を補助できるようにした。

【0027】
可変剛性スパッツによる歩行アシストでは、図8に示すように、電圧印加時のPVCゲルアクチュエータの剛性の増大による力Fによって歩行をアシストする。つまり、可変剛性スパッツによって股関節運動を補助し、歩行アシストを実現するためには、電圧印加時のPVCゲルアクチュエータの剛性がスパッツの剛性よりも大きくなり、電圧を印加していない状態のPVCゲルアクチュエータの剛性がスパッツと同程度となるようにして、股関節運動の抵抗とならないようにする必要がある。

【0028】
実験で使用したスパッツは(デュアリグ:登録商標 2WAY3/4ステッチタイツ)で、材質はポリエステル75%、ポリウレタン25%である。このスパッツを引張り、その時の伸びと応力から、スパッツの剛性を求めた。その測定結果を図9に示す。図9より、使用するスパッツの剛性は1。44kPaであることが分かった。
実験より電圧印加時のPVCゲルアクチュエータの剛性は最大で250kPaであるから(図6)、PVCゲルアクチュエータをこのスパッツに組み込み、可変剛性スパッツを作製することにより、剛性変化を利用して股関節屈曲時の運動を補助することができ、歩行をアシストすることが可能であると考えられる。

【0029】
(可変剛性スパッツの作製)
PVCゲルアクチュエータを実際にスパッツに組み込んだ、可変剛性スパッツの作製を行った。今回は、右脚の大腿部の前面にのみPVCゲルアクチュエータ4個を組み込んだものを作製した。使用したPVCゲルアクチュエータは、電圧印加時の剛性変化が最も大きくなるように、DBA40、PVCゲル膜厚0。5mm、積層数15層のアクチュエータを用いた。
図10に構造図を示す。腰・膝・アクチュエータ間は剛性の高いワイヤ(ステンレス製)で接続し、PVCゲルアクチュエータによる力が脚にロスなく伝達されるようにした。また、膝周辺でのスパッツの伸展によるずれによってアクチュエータの発生力が失われないようにするため、ワイヤの端部を膝上部にテーピングして固定し、スパッツのずれを防ぐようにした。このようにすることにより、PVCゲルアクチュエータの剛性変化によって大腿部に力を加えることができ、股関節運動を補助して歩行アシストができる。

【0030】
(歩行アシスト実験)
上述した方法によって作成した可変剛性スパッツを実際に着用し、歩行アシスト感が得られるかどうか評価実験を行った。
被験者は20代男子学生1名で、図11のように直立の状態から、ブザーの音に合わせ、 PVCゲルアクチュエータに電圧を印加・除去し、そのタイミングで足の上げ下げを行い、その時の足の上げやすさを、スパッツを着用した場合と、着用しない場合の違いを評価した。PVCゲルアクチュエータへの印加電圧は300Vである。
評価試験の結果、可変剛性スパッツを着用した方が、着用しない場合に比べ、足を上げるのが楽になる感じを得ることができた。この着用試験結果は、可変剛性スパッツが股関節運動を補助するように作用し、歩行アシストを実現する方法として有効に機能し得ることを示すものである。

【0031】
上述した可変剛性スパッツは、スパッツの大腿部の前部にPVCゲルからなる可変剛性部を組み込んだものであるが、前述したようにスパッツの大腿部の前面とこれに対向する位置の後面に可変剛性部を組み込む構成とすることもできる。この場合は、脚を前方に振り出す際には、前面の可変剛性部の剛性を高く、後面の可変剛性部の剛性を低くし、脚が地面を踏みしめる際には、前面の可変剛性部の剛性を低く、後面の剛性を高くするように制御すればよい。PVCゲルからなる可変剛性部は、剛性を低くした際にはスパッツと同程度の剛性になるから、脚の動作を妨げる(抵抗となる)ことはない。可変剛性部の剛性は、ゲルアクチュエータに電圧を印加する状態と印加しない状態とに切り替えるのみで制御できるから、脚の動作にあわせて電圧の印加を制御することは容易である。

【0032】
スパッツは伸縮性を備えた衣類であり、スポーツウェアにも利用されている。これはスパッツが、人の体形を整える作用の他に、人の動きを保護したり、補助したりする作用を有することによる。これらの作用はいわば受動的な作用であるのに対して、スパッツに可変剛性部を組み込んだ可変剛性スパッツは、スパッツの機能を損なうことなく、人の動きをより積極的に補助する作用を備えるものとなる。
人の動作を補助する衣類としては、スパッツのように下肢に着用するものに限らず、上肢に着用するものや、胴体部分等にも着用するものがある。このような、伸縮性を有する衣類で、人体の補整あるいは保護を目的とする衣類については、衣類の適宜部位に可変剛性部を組み込むことによって、人の動作を積極的に補助する機能を付与することが可能である。

【0033】
これらの伸縮性素材からなる補整あるいは保護用の衣類に可変剛性部を組み込む場合は、人の動作に合わせてその動作を補助できる位置に組み込めばよく、可変剛性部を組み込む位置や、組み込み数、大きさ、組み込み範囲は、用途に応じて、適宜選択することができる。場合によっては、伸縮性衣類の全面(全範囲)に可変剛性部を組み込み、可変剛性部を複数の区画に分割し、区画ごとに個別に剛性を制御するようにすることも可能である。

【0034】
また、本発明に係る可変剛性伸縮性衣類は、歩行アシストのように、動作を補助する利用方法に限られるものではない。可変剛性部の制御を動作を補助する制御とは逆に、動作に負荷を加えるように制御することで、運動能力を回復するためのリハビリ用として利用したり、スポーツ選手などで筋力を増強するトレーニングとして利用することも可能である。

【0035】
伸縮性を有する衣類に可変剛性部を組み込む方法は、従来のリンク機構を人体に装着する補助装置と比較して、衣類と同様に着用して使用することができるから、使用上の違和感が少なく、無理なく長時間着用して使用することが可能である。可変剛性部は電気的に制御することになるが、可変剛性部を制御する際に消費する電気エネルギーはわずかであり、電源を含む制御装置の小型化も容易で実用化が容易に可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 アノード
12a、12b PVCゲル
14 カソード
16 Z軸ステージ
18 ロードセル
20 アクチュエータ




図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図11】
8
【図7】
9
【図10】
10