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明細書 :電気牧柵

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-073087 (P2014-073087A)
公開日 平成26年4月24日(2014.4.24)
発明の名称または考案の名称 電気牧柵
国際特許分類 A01M  29/30        (2011.01)
FI A01M 29/00 118
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2012-220949 (P2012-220949)
出願日 平成24年10月3日(2012.10.3)
発明者または考案者 【氏名】竹田 謙一
【氏名】深澤 忍
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 2B121
Fターム 2B121AA01
2B121BB27
2B121BB30
2B121BB32
2B121DA08
2B121DA27
2B121EA21
2B121FA12
2B121FA20
要約 【課題】 家畜に対し脱柵を抑制するための学習効果を利用して、脱柵防止を効果的に図ることができる電気牧柵を提供する。
【解決手段】 本発明に係る電気牧柵は、家畜を放牧する領域に囲設した導電線10と、導電線10に電圧を印加する電圧印加部20と、導電線10により囲まれた放牧領域内に鏡面となる面を向け、導電線10に導通して取り付けられた導電板30とを備える。導電板30が鏡面性を備えることから、家畜の社会的探査行動を助長し、導電板に鼻等を接触させることにより電気刺激が強く作用し、柵を回避するという学習作用が早期に成立し、家畜の脱柵を防止する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
家畜を放牧する領域に囲設した導電線と、
該導電線に電圧を印加する電圧印加部と、
前記導電線により囲まれた放牧領域内に鏡面となる面を向け、前記導電線に導通して取り付けられた導電板とを備えることを特徴とする電気牧柵。
【請求項2】
前記導電板が、前記導電線に脱着可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の電気牧柵。
【請求項3】
前記導電板が、表面を鏡面としたステンレス板からなることを特徴とする請求項1または2記載の電気牧柵。
【請求項4】
請求項1記載の電気牧柵に使用する導電板であって、少なくとも一方の面が鏡面に形成されていることを特徴とする電気牧柵用導電板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の脱柵防止を効果的に図ることができる電気牧柵に関する。
【背景技術】
【0002】
電気牧柵は、放牧場所から家畜が逃げないようにするために放牧区域をワイヤで囲み、ワイヤに電流を流すことにより、ワイヤに触れた家畜が電気ショックを受け、二度とワイヤに触れないようにする心理的作用を利用したものである。耕作放棄地が増加している今日、家畜を放牧する事例も多く、設置が簡易な電気牧柵の利用場面が増加している。
牧柵については、動物の種類によって、電線の幅・高さ・本数などの規格が決められている。しかしながら、電線に対する学習が不十分なまま家畜が放牧されるので、電線の隙間をくぐって牧柵から抜け出てしまう家畜が後を絶たない。家畜は、首後ろや体そのものが、毛・皮で覆われているために電気刺激があまり伝わらないことと、脱柵を繰り返すことによって、電気牧柵には近寄らないようにするという学習効果が獲得されないために脱柵が日常的に発生すると考えられる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-271238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気牧柵と同様な構成を有するものとして、獣類の侵入を防止する獣害防止用電気柵(特許文献1)がある。この電気柵は獣類の侵入防止を主眼とし、多頭数の家畜を放牧させる環境において、家畜の脱柵防止を目的とするものではなく、脱柵防止効果を高める学習作用を考慮して構成されているものではない。
【0005】
本発明は、家畜に対し脱柵を抑制するための学習効果の作用を利用して、脱柵防止を効果的に図ることができる電気牧柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電気牧柵は、家畜を放牧する領域に囲設した導電線と、該導電線に電圧を印加する電圧印加部と、前記導電線により囲まれた放牧領域内に鏡面となる面を向け、前記導電線に導通して取り付けられた導電板とを備えることを特徴とする。
導電板は表面を鏡面に形成したことを特徴とし、放牧領域内に、鏡面に形成した面を向けて導電線に取り付ける。導電板は金属板等の適宜導電材料によって形成したものが使用でき、導電板の大きさ、形状、取り付け位置は任意に設定することができる。
導電板には通常は平板体を使用するが、場合によっては曲面状に形成したものを使用することも可能である。
なお、電気牧柵の形態についてはなんら限定されるものではなく、導電線の設置方法、設置本数等も適宜選択される。
【0007】
また、前記導電板を前記導電線に脱着可能に取り付けられる構成とすることにより、導電線の任意位置に取り付け、取り外すことが容易に可能であり、放牧地の地形や大きさ等に応じて適宜導電板を配置することにより、家畜の脱柵をさらに効果的に防止することができる。
前記導電板としては、表面を鏡面としたステンレス板が、鏡面性を維持でき、管理が容易であることから、好適に使用できる。
また、本発明に係る電気牧柵に用いる導電板として、少なくとも一方の面が鏡面に形成された導電板が、家畜の脱柵防止に効果的に利用することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電気牧柵によれば、鏡面に形成した面を放牧領域内に向けて導電板を設置し、導電板に接触する家畜に電気ショックを作用させることによって、放牧する家畜が導電線、導電板を回避するように学習させることができ、家畜の脱柵防止を効果的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る電気牧柵の例を示す説明図である。
【図2】実験区と対照区においてヒツジが導電線に接触した回数と、実験区においてヒツジが導電板に接触した回数を示すグラフである。
【図3】実験区においてヒツジが導電線と導電板を視た回数を示すグラフである。
【図4】実験区と対照区においてヒツジが導電線に接触した回数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る電気牧柵は、羊や牛等の家畜を放牧する放牧領域を包囲するように設置した導電線と、導電線に高電圧を印加する電圧印加部と、導電線に取り付けた導電板とを備える。導電線により柵を構築するため、放牧地に所定間隔で支柱を立設し支柱間に導電線を張設する。導電線を設置する本数、導電線の高さ方向の設置間隔、設置高さ位置等は、放牧する家畜の種類に応じて選択すればよい。
導電線に接触した家畜に電気ショックを作用させるため、導電線には露出線(ワイヤ)を使用し、導電線を互い導通して導電線に電圧印加部を接続する。
電気牧柵の放牧領域の大きさ(面積)や形状(平面形状)、設置地形等が限定されるものではなく、放牧する家畜の種類も限定されるものではない。

【0011】
図1は、家畜の脱柵防止の効果の実験に使用した電気牧柵の構成を示す。この電気牧柵は、6m×6mの正方形のシバ草地を放牧領域とし、放牧領域のコーナーにそれぞれ支柱12を立設し、支柱12間に電気柵用の導電線10を張設した。導電線10は高さ方向に15cmの均等間隔として4本設置した。電圧印加部20は12Vの直流電圧が印加されるように設定されている。

【0012】
導電板30は、張設された上から3本の導電線10間に掛け渡すようにして取り付けた。実験で使用した導電板30は、30cm×30cmの正方形のステンレス板で、表面を鏡面としたものである。正方形の放牧領域の周囲に張った導電線10の各辺の中央位置に、支柱32によって支えながら、放牧領域内に、鏡面に形成した外面を露出させて導電板30を取り付けた。導電板30の両側縁に3個の貫通孔を設け、各々の貫通孔の位置で導電線10に導電板30をねじ止めして固定した。

【0013】
(予備実験1)
脱柵防止効果を高める導電板の作用を確かめる目的で、導電板の色に対する行動反応を観察する実験を行った。実験にはサフォーク種のヒツジ13頭(雌11頭、雄2頭、平均5歳)を使用し、導電板30と同一形状の平板(30cm×30cm)を認知対象物として実験した。使用した認知対象物は、表面を鏡面としたステンレス板、ステンレス板の表面を赤色としたもの、表面を白色としたもの、透明板の4種である。透明板にはアクリル板を使用した。
実験は7m四方の囲いの中に、1.4m間隔で、4種の認知対象物をそれぞれ支柱に取り付けて支持し(高さ60cm)、囲いの中に1頭ずつヒツジを導入して、10分間の探査行動を記録する方法で行った。1回の調査ごとに認知対象物の位置を変え、囲いの中の位置による選択性がないようにした。

【0014】
表1はヒツジが認知対象物に接触した回数、表2はヒツジが認知対象物を視た回数を記録したものである。表1、表2とも、表中の数値は平均値±標準偏差の値を示す。

【0015】
【表1】
JP2014073087A_000003t.gif

【0016】
【表2】
JP2014073087A_000004t.gif

【0017】
表1の実験結果は、ステンレス板と透明板に接触する回数が比較的多くなったことを示す。また、表2の実験結果は、ステンレス板の視認回数が他の認知対象物と比較して明らかに多いことを示す。これは、ヒツジが認知対象物に写った個体を他の個体と認識したことによるものと考えられる。表1と表2の予備実験から、脱柵防止の学習用として、ステンレス板が好ましいことが想定される。

【0018】
(予備実験2)
認知対象物を鏡面のステンレス板と、このステンレス板にパンチングを施した2種(30cm×30cm)として実験を行った。サフォーク種のヒツジ10頭(雌8頭、雄2頭、平均4歳)を使用し、2つの認知対象物を2.4m離して設置し、予備実験1と同様に、囲いの中に1頭ずつヒツジを導入し、10分間の探査行動を記録した。
表3にヒツジが認知対象物に接触した回数、表4にヒツジが認知対象物を視た回数を示す。

【0019】
【表3】
JP2014073087A_000005t.gif

【0020】
【表4】
JP2014073087A_000006t.gif

【0021】
表3の実験結果は、ステンレス板を認知対象物とした場合、パンチングの有無による接触回数の差異はほとんど認められないことがわかる。表4に示す実験結果は、パンチングを設けた場合はヒツジは認知対象物をほとんど視認しないことがわかる。表面を鏡面としたステンレス板とパンチングを設けたステンレス板との作用の相違が確かめられた。

【0022】
(脱柵防止実験)
導電板30を取り付けた電気牧柵と、導電板30を取り付けていない電気牧柵との作用の相違を観察するため、図1に示す導電板30を取り付けた電気牧柵を使用する実験区と、導電板30を取り付けていない対照区にそれぞれサフォーク種のヒツジを導入してヒツジの行動を観察した。対照区に使用した電気牧柵は、導電板30を取り付けていない以外は、図1に示す電気牧柵と、放牧領域、導電線10の配置、導電線10への印加電圧等を同一としたものである。放牧領域の中央には水槽40を設置した。

【0023】
実験では、実験区に3頭(雄2頭、雌1頭、平均6か月齢)、対照区に3頭(雄2頭、雌1頭、平均6か月齢)のヒツジを導入して行動を観察した。
実験は、電気牧柵内に十分にシバが生育している条件で7日間にわたって連続観察を行った後、5日間実験を停止し、次いで、電気牧柵内のシバを刈り取った条件で7日間にわたって連続観察を行った。前半における7日間の実験と、後半の7日間の実験では、実験区と対照区に同じヒツジを導入して行動を観察した。

【0024】
図2は、電気牧柵内に十分にシバが生育している条件において、ヒツジが電気牧柵に接触した回数を、経過日数とともに示したグラフである。図2では、実験区において導電線にヒツジが接触した回数、及び導電板(学習板)に接触した回数と、対照区においてヒツジが導電線に接触した回数を示す。
図3は、実験区においてヒツジが電線を視た回数と、導電板(学習板)を視た回数を、経過日数とともにグラフに示したものである。対照区においてはヒツジが導電線を視たことがなかったため、図3には対照区のデータを示していない。

【0025】
図4は、電気牧柵内のシバを刈り取った条件(後半の実験)で、ヒツジが電気牧柵に接触した回数を示すグラフである。実験区では、ヒツジが導電板(学習板)にまったく接触しなかったため、導電板に接触した回数のデータを示していない。

【0026】
上記実験結果は、前半の7日間の実験期間では、実験区のヒツジは何回か導電板30に接触したが、導電板30との接触回数は日数の経過とともに減少し、導電線10との接触回数をみると、実験区においては、対照区と比較して、接触回数が大きく減少していることがわかる。
また、後半の7日間の実験期間においては、実験区のヒツジが導電線10に接触する回数がはじめから抑制されているのに対して、対照区のヒツジについては後半の実験開始日には比較的接触回数が多くなっている。

【0027】
この実験結果は、導電板30を設けた実験区のヒツジについては、対照区のヒツジよりも、導電線10及び導電板30との接触を回避するという学習作用が有効に機能していることを示している。本実験では前半の7日間の実験期間と後半の7日間の実験期間の間に5日間の休止期間を設けた。実験区のヒツジは、この休止期間を経過した後も、導電線10を回避するという学習効果が維持されていたと言うことができる。

【0028】
動物には、新しいものを見つけると、必ず「目で見て」「続けて匂いを嗅いで」確かめる行動特性がある。本実験で使用したステンレス板は鏡面性を持っていることから、家畜の社会的探査行動(鏡面に映った自身の像を他個体と認識)を助長しやすく、ステンレス板を見た家畜が濡れた鼻を導電板に付けると、電気刺激が非常に強く伝わり、家畜が受ける電気ショック効果が大きくなる。

【0029】
上記実験では、前半の7日間の実験期間において、導電板(学習板)のない対照区のヒツジは何度も柵の導電線に近づいたが、導電板を取り付けた実験区のヒツジは、実験開始後2日くらいで、まったく柵に近づかなくなった。5日間の空白期間をあけた後半の7日間の実験期間では、シバを刈って脱柵しやすい環境として比較実験を行ったところ、対照区のヒツジは何度も柵に近づいたが、導電板(学習板)を設置した実験区のヒツジは、はじめから柵に近づくことがなかった。
このことから、導電板によって柵を回避するという学習作用が早期に成立し、その後も学習作用が持続することから、鏡面の導電板を用いて電気牧柵を構築する方法は、家畜の脱柵防止を図る上で効果的に作用するということができる。

【0030】
上記実験においては、ステンレス板からなる導電板30を使用したが、導電板30の機能としては、導電性とともに鏡面性が重要である。したがって、鏡面の平面に形成されている導電材料であれば、ステンレス板に限らず適宜導電材料を使用することができる。また、導電板30の大きさや形状等についても適宜設定することが可能である。
また、上記実験においてはサフォーク種のヒツジを実験動物として使ったが、本発明に係る電気牧柵はヒツジに限らず、草食動物の家畜については同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 導電線
12、32 支柱
20 電圧印加部
30 導電板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3