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明細書 :インチワーム式アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5764845号 (P5764845)
登録日 平成27年6月26日(2015.6.26)
発行日 平成27年8月19日(2015.8.19)
発明の名称または考案の名称 インチワーム式アクチュエータ
国際特許分類 H02K  33/18        (2006.01)
FI H02K 33/18 B
請求項の数または発明の数 11
全頁数 26
出願番号 特願2012-535065 (P2012-535065)
出願日 平成23年9月22日(2011.9.22)
国際出願番号 PCT/JP2011/071560
国際公開番号 WO2012/039449
国際公開日 平成24年3月29日(2012.3.29)
優先権出願番号 2010214580
優先日 平成22年9月24日(2010.9.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年8月26日(2014.8.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】大岩 孝彰
【氏名】朝間 淳一
個別代理人の代理人 【識別番号】100136674、【弁理士】、【氏名又は名称】居藤 洋之
審査官 【審査官】森山 拓哉
参考文献・文献 特開2007-318861(JP,A)
特開平8-33386(JP,A)
特開2000-269579(JP,A)
特開2008-126396(JP,A)
特開2006-288165(JP,A)
特開2005-175271(JP,A)
調査した分野 H02K 33/00-33/18
H02N 1/00- 2/18
特許請求の範囲 【請求項1】
変位体が被変位体に対してインチワーム駆動によって相対変位するインチワーム式アクチュエータであって、
前記変位体の一部を構成するとともに前記被変位体に対してクランプ状態とアンクランプ状態を繰り返しながら同被変位体に対して相対変位する第1支持脚および第2支持脚と、
前記変位体の一部を構成するとともに電気エネルギーまたは磁気エネルギーを受けて変位または変形する伸縮手段と、
前記変位体の一部を構成するとともに前記伸縮手段における変位または変形による変位量または変形量を入力変位量として入力して同入力変量に依存して変化する変換率によって前記入力変位量を拡大変換または縮小変換した出力変位量だけ前記第1支持脚と前記第2支持脚とを相対変位させる変位量変換機構と、
前記被変位体に対して前記第1支持脚および前記第2支持脚をそれぞれ前記クランプ状態および前記アンクランプ状態にすることができるクランプ手段と、
前記伸縮手段および前記クランプ手段をそれぞれインチワーム駆動させることにより前記変位体を前記被変位体に対して相対変位させるインチワーム制御手段とを備え、
前記インチワーム制御手段は、
前記伸縮手段を一定量だけ変位または変形させることにより前記変位量変換機構を一定量だけ変形させたバイアス状態で前記伸縮手段および前記クランプ手段をインチワーム駆動させることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記変位量変換機構は、リンク機構であることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記変位量変換機構は、トグル機構であることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記伸縮手段は、ボイスコイルモータで構成されていることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記伸縮手段は、
電磁石と、
前記電磁石における一方の極側に第1の隙間を介して配置される磁性体からなる第1可動片と、
前記電磁石における他方の極側に前記第1の隙間より広い第2の隙間を介して配置される磁性体からなる第2可動片と、
前記電磁石と前記第1可動片との間および前記電磁石と前記第2可動片との間にそれぞれ配置される弾性体とで構成されていることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3、請求項5および請求項6のうちのいずれか1つに記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記被変位体と前記第1支持脚および/または前記第2支持脚とは、少なくとも一方が磁性体で構成されるとともに、他方が永久磁石を備えていることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項8】
請求項7に記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記被変位体は、磁性体で構成されており、
前記第1支持脚および前記第2支持脚は、それぞれ磁性体で構成されるとともに磁性体で構成される磁気導体によって互いに磁気的に接続されており、
前記永久磁石は、前記第1支持脚および前記第2支持脚に互いに同じ向きの磁界を生じさせるように配置され、
前記クランプ手段は、前記第1支持脚、前記第2支持脚および前記磁気導体のうちの少なくとも1つに設けられた磁界形成用コイルで構成されており、
前記インチワーム制御手段は、前記磁界形成用コイルの作動を制御することにより前記第1支持脚および前記第2支持脚に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項9】
請求項7に記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記被変位体は、互いに対向して延びる磁性体からなる第1ガイドおよび第2ガイドで構成されており、
前記第1支持脚および前記第2支持脚は、それぞれ磁性体で構成されるとともに前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間に架設されて互いに磁気的に接続されており、
前記永久磁石は、前記第1支持脚および前記第2支持脚に互いに同じ向きの磁界を生じさせるように配置され、
前記クランプ手段は、前記第1支持脚、前記第2支持脚、前記第1ガイドおよび前記第2ガイドのうちの少なくとも1つに設けられた磁界形成用コイルで構成されており、
前記インチワーム制御手段は、前記磁界形成用コイルの作動を制御することにより前記第1支持脚および前記第2支持脚に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項10】
請求項9に記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記永久磁石は、
前記第1ガイドと前記第2ガイドとの間における前記第1支持脚および前記第2支持脚の各外側にそれぞれ配置されることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記磁界形成用コイルは、
前記第1支持脚および前記第2支持脚にそれぞれ配置されることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
【請求項12】
請求項11に記載したインチワーム式アクチュエータにおいて、
前記第1支持脚に配置される磁界形成用コイルと前記第2支持脚に配置される磁界形成用コイルとは、互いに逆位相で直列接続されていることを特徴とするインチワーム式アクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、精密観測・観察機器、精密測定機器、各種加工・組立装置、各種ロボット、各種事務機器、家庭用電化製品などの機器内において位置決め機構として、または細胞操作、マイクロサージェリー、顕微鏡の試料操作、精密部品の組立てなどのマニピュレーション用として用いられるインチワーム式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小型で精密な位置決め機構としてインチワーム式のアクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、ガイド上を変位する変位体を、電気エネルギーを受けて伸長する3つの圧電素子を用いて構成したインチワーム式アクチュエータが開示されている。このインチワーム式アクチュエータにおいては、送り用圧電素子の伸縮動作と2つの固定用圧電素子のクランプ動作およびアンクランプ動作とを交互に繰り返すインチワーム駆動により変位体をガイドに沿って変位させている。
【0003】
しかし、上記したようなインチワーム式アクチュエータにおいては、2つの固定用圧電素子の非通電時には送り用圧電素子がアンクランプ状態となるため、ガイド上における変位体の位置を保持することができず、位置決め機構として使い勝手が悪い。このため、例えば、下記特許文献2,3には、電力を必要とすることなく変位体の位置を保持することができるインチワーム式アクチュエータが開示されている。
【0004】
すなわち、下記特許文献2には、変位体が備える固定用圧電素子が収縮した際、すなわち、固定用圧電素子の非通電時に変位体の位置を固定するためのクランプブロックがクランプ状態となるリンク機構を備えたインチワーム式アクチュエータが開示されている。また、下記特許文献3には、変位体に永久磁石を設けるとともにこの変位体が変位するベース上に磁性吸着部材を設けることにより、変位体をベース上に磁気的に吸着することによって変位体の位置を保持するインチワーム式アクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-288165号公報
【特許文献2】特開2005-175271号公報
【特許文献3】特開2000-269579号公報
【0006】
しかしながら、上記各特許文献1~3に記載されたインチワーム式アクチュエータにおいては、変位体を変位させるための圧電素子や電磁石への入力電圧に対する変位体の変位量が一定、すなわち、変位体を変位させる分解能(以下、「変位分解能」という)が一定であるため、変位体における変位の速度(以下、「変位速度」という)および変位分解能を使用状況に応じて使い分けることが困難である。例えば、インチワーム式アクチュエータにおいて変位体の変位分解能を向上させた場合には、一回のインチワーム駆動当りの変位量が少なくなるため、変位体の変位速度を向上させることが困難となる。一方、一回のインチワーム駆動当りの変位量を大きくすると、変位体の変位速度を向上させることができるが変位分解能は低下する。このため、従来のインチワーム式アクチュエータにおいては、使用状況に応じた変位体の変位速度と変位分解能を用いることが困難なため、使い勝手が悪いという問題があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、被変位体に対して変位する変位体の変位速度や変位分解能を使用状況に応じて使い分けることができるインチワーム式アクチュエータを提供することにある。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の特徴は、変位体が被変位体に対してインチワーム駆動によって相対変位するインチワーム式アクチュエータであって、変位体の一部を構成するとともに被変位体に対してクランプ状態とアンクランプ状態を繰り返しながら同被変位体に対して相対変位する第1支持脚および第2支持脚と、変位体の一部を構成するとともに電気エネルギーまたは磁気エネルギーを受けて変位または変形する伸縮手段と、変位体の一部を構成するとともに伸縮手段における変位または変形による変位量または変形量を入力変位量として入力して同入力変位量に依存して変化する変換率によって入力変位量を拡大変換または縮小変換した出力変位量だけ第1支持脚と第2支持脚とを相対変位させる変位量変換機構と、被変位体に対して第1支持脚および第2支持脚をそれぞれクランプ状態およびアンクランプ状態にすることができるクランプ手段と、伸縮手段およびクランプ手段をそれぞれインチワーム駆動させることにより変位体を被変位体に対して相対変位させるインチワーム制御手段とを備え、インチワーム制御手段は、伸縮手段を一定量だけ変位または変形させることにより前記変位量変換機構を一定量だけ変形させたバイアス状態で伸縮手段およびクランプ手段をインチワーム駆動させることにある。
【0009】
このように構成した請求項1に記載した本発明の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、変位体を構成する第1支持脚および第2支持脚が変位量変換機構によって互いに相対変位するように構成されている。この場合、変位量変換機構は、伸縮手段の変位量または変形量を入力変位量としてこの入力変位量に依存して変化する変換率によって入力変位量を拡大変換または縮小変換した出力変位量分だけ第1支持脚と第2支持脚とを相対変位させる。すなわち、変位量変換機構は、入力変位量を拡大変換または縮小変換する変換率を変化させることができる。これにより、インチワーム式アクチュエータは、変位量変換機構における拡大変換率または縮小変換率の変化の範囲内において適当な拡大変換率または縮小変換率を適宜使い分けることにより、変位体の変位速度や変位分解能を使用状況に応じて任意に設定することができる。なお、変位量変換機構における変換率は、入力変位量に依存して出力変位量が変化するものであればよく、変化の過程が線形または非線形であるかを問わない。
また、本発明の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、伸縮手段を一定量だけ変位または変形させた状態で伸縮手段およびクランプ手段をそれぞれインチワーム駆動させている。すなわち、インチワーム式アクチュエータは、変位量変換機構を一定量だけ変形させた状態で伸縮手段およびクランプ手段をそれぞれインチワーム駆動させている。これにより、変位量変換機構は、伸縮手段の変位量または変形量を任意の拡大変換率または縮小変換率に変更して拡大変換または縮小変換することができる。この結果、インチワーム式アクチュエータにおける変位体の変位速度、変位分解能および変位時の推進力をバイアス状態の調整によって簡単に変更することができる。
【0010】
また、請求項2に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、変位量変換機構は、リンク機構であることにある。このように構成した請求項2に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、変位量変換機構を簡単に構成することができ変位体の複雑化、大型化および重量化を抑えつつ変位体の変位速度、変位分解能および変位時の推進力を使用状況に応じて任意に設定することができる。
【0011】
また、請求項3に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、変位量変換機構は、トグル機構であることにある。このように構成した請求項3に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、変位量変換機構を簡単に構成することができ変位体の複雑化、大型化および重量化を抑えつつ変位体の変位速度、変位分解能および変位時の推進力を使用状況に応じて任意に設定することができる。
【0014】
また、請求項5に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、伸縮手段は、ボイスコイルモータで構成されていることにある。このように構成した請求項5に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、伸縮手段を圧電素子で構成した場合に比べて、消費電力を低下させることができるとともに応答速度を向上させることができる。また、変位量変換機構をトグル機構で構成した場合には、ボイスコイルモータにおけるストロークを変更することにより簡単に変位体の変位速度、変位分解能および移動時の推進力を変更することができる。
【0015】
また、請求項6に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、伸縮手段は、電磁石と、電磁石における一方の極側に第1の隙間を介して配置される磁性体からなる第1可動片と、電磁石における他方の極側に第1の隙間より広い第2の隙間を介して配置される磁性体からなる第2可動片と、電磁石と第1可動片との間および電磁石と第2可動片との間にそれぞれ配置される弾性体とで構成されていることにある。
【0016】
このように構成した請求項6に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、伸縮手段をボイスコイルモータで構成した場合に比べて、構成を簡単にして質量を低減することができるため応答速度を向上させることができる。また、変位量変換機構をトグル機構で構成した場合には、第1の隙間と第2の隙間とを使い分けることにより簡単に変位体の変位速度、変位分解能および移動時の推進力を変更することができる。
【0017】
また、請求項7に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、被変位体と第1支持脚および/または第2支持脚とは、少なくとも一方が磁性体で構成されるとともに、他方が永久磁石を備えていることにある。
【0018】
このように構成した請求項7に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、永久磁石の磁力によって第1支持脚および/または第2支持脚が被変位体に磁気的に吸着されることにより、変位体全体として被変位体に対して固定される。これにより、インチワーム式アクチュエータは、簡単な構成によって変位体への非通電時においても変位体の位置を保持することができる。
【0019】
また、請求項8に記載した本発明の他の特徴は、インチワーム式アクチュエータにおいて、被変位体は、磁性体で構成されており、第1支持脚および第2支持脚は、それぞれ磁性体で構成されるとともに磁性体で構成される磁気導体によって互いに磁気的に接続されており、永久磁石は、第1支持脚および第2支持脚に互いに同じ向きの磁界を生じさせるように配置され、クランプ手段は、第1支持脚、第2支持脚および磁気導体のうちの少なくとも1つに設けられた磁界形成用コイルで構成されており、インチワーム制御手段は、磁界形成用コイルの作動を制御することにより第1支持脚および第2支持脚に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせることにある。
【0020】
このように構成した請求項8に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、磁気導体によって磁気的に一体化されるとともに永久磁石によって互いに同じ向きの磁界が生じた状態の第1支持脚および第2支持脚に磁界形成用コイルによって互いに異なる向きの磁界が形成される。このため、第1支持脚および第2支持脚は、磁界形成用コイルによる磁界によって一方が被変位体に対して強い磁力によって引き付けられてクランプ状態となるとともに他方が相対的に弱い磁力によってアンクランプ状態となる。すなわち、インチワーム式アクチュエータは、簡単な構成によって第1支持脚および第2支持脚の固定状態と被固定状態の切り替え動作を実行することができる。また、インチワーム式アクチュエータは、第1支持脚および第2支持脚に磁界を生じさせる永久磁石によって磁界形成用コイルの非通電時において第1支持脚および第2支持脚を被変位体に磁気的に吸着させることができる。すなわち、インチワーム式アクチュエータは、変位体に対する非通電時において変位体の位置を保持することができる。
【0021】
また、請求項9に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、被変位体は、互いに対向して延びる磁性体からなる第1ガイドおよび第2ガイドで構成されており、第1支持脚および第2支持脚は、それぞれ磁性体で構成されるとともに第1ガイドと第2ガイドとの間に架設されて互いに磁気的に接続されており、永久磁石は、第1支持脚および第2支持脚に互いに同じ向きの磁界を生じさせるように配置され、クランプ手段は、第1支持脚、第2支持脚、第1ガイドおよび第2ガイドのうちの少なくとも1つに設けられた磁界形成用コイルで構成されており、インチワーム制御手段は、磁界形成用コイルの作動を制御することにより第1支持脚および第2支持脚に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせることにある。
【0022】
このように構成した請求項9に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、磁性体で構成された第1ガイドおよび第2ガイドに対して磁界形成用コイルを備えた磁性体製の第1支持脚および第2支持脚、伸縮手段および変位量変換機構からなる変位体が配置される。これにより、インチワーム式アクチュエータは、変位体が第1ガイドおよび第2ガイドに沿って変位するため、変位体を安定した状態で正確に変位させることができる。また、インチワーム式アクチュエータは、第1支持脚および第2支持脚に磁界を生じさせる永久磁石によって磁界形成用コイルの非通電時において第1支持脚および第2支持脚を被変位体に磁気的に吸着させることができる。すなわち、インチワーム式アクチュエータは、第1支持脚および第2支持脚のクランプ状態とアンクランプ状態の切り替えを実現しながら、変位体に対する非通電時において変位体の位置を保持することができる。また、この場合、永久磁石を、例えば、第1ガイドおよび第2ガイドに設けることにより変位体の構成を簡単かつ軽量にすることができる。これにより、インチワーム式アクチュエータは、従来技術における変位体に比して、変位体の構成を複雑化、大型化および重量化することなく変位体の位置を保持することができる。
【0023】
また、請求項10に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、永久磁石は、第1ガイドと第2ガイドとの間における第1支持脚および第2支持脚の各外側にそれぞれ配置されることにある。
【0024】
このように構成した請求項10に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、変位体をコンパクトに構成できるとともに変位体の変位範囲を広く設定することができる。これにより、インチワーム式アクチュエータの構成を小型化することができるとともに変位体の変位速度および位置決め精度を向上させることができる。
【0025】
また、請求項11に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、磁界形成用コイルは、第1支持脚および第2支持脚にそれぞれ配置されることにある。
【0026】
このように構成した請求項11に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、第1支持脚および第2支持脚に精度よく磁界を生じさせることができるとともに、第1支持脚および第2支持脚に永久磁石を配した場合においてはこの永久磁石によって第1支持脚および第2支持脚に生じた磁界をより確実にキャンセルすることができる。これにより、インチワーム式アクチュエータにおいては、第1支持脚および第2支持脚をより精度良くアンクランプ状態にすることができ、変位体の変位動作をより円滑して位置決め精度を向上させることができる。
【0027】
また、請求項12に記載した本発明の他の特徴は、前記インチワーム式アクチュエータにおいて、第1支持脚に配置される磁界形成用コイルと第2支持脚に配置される磁界形成用コイルとは、互いに逆位相で直列接続されていることにある。
【0028】
このように構成した請求項12に記載した本発明の他の特徴によれば、インチワーム式アクチュエータは、第1支持脚に設けられる第1磁界形成用コイルと第2支持脚に設けられる第2磁界形成用コイルの2つの磁界形成用コイルを一つのアンプ、換言すれば一つの系統で制御することができ、インチワーム式アクチュエータの構成を簡単にすることができる。
【0029】
また、これらの場合、インチワーム式アクチュエータにおいて、被変位体は、磁性体で構成されており、第1支持脚および第2支持脚は、それぞれ磁性体で構成されており、クランプ手段は、第1支持脚および第2支持脚にそれぞれ設けられた磁界形成用コイルで構成されており、インチワーム制御手段は、磁界形成用コイルの作動を制御することにより第1支持脚および第2支持脚に交互に磁界を生じさせるように構成することもできる。
【0030】
また、これらの場合、インチワーム式アクチュエータにおいて、被変位体は、磁性体で構成されており、第1支持脚および第2支持脚は、それぞれ磁性体で構成されるとともにそれぞれ永久磁石を備えており、クランプ手段は、第1支持脚および第2支持脚にそれぞれ設けられた磁界形成用コイルで構成されており、インチワーム制御手段は、磁界形成用コイルの作動を制御することにより第1支持脚および第2支持脚に互いに同時に磁界を生じさせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【図2】図1に示すインチワーム式アクチュエータにおける第1支持脚および第2支持脚の概観構成を模式的に示す平面図である。
【図3】図1に示すトグル機構における入力変位量に対する出力変位量の変換率の変化を表したグラフである。
【図4】図1に示すインチワーム式アクチュエータの作動を説明するために永久磁石によって形成される磁界を模式的に示したインチワーム式アクチュエータの正面図である。
【図5】図1に示すインチワーム式アクチュエータの作動を説明するために永久磁石および磁界形成用コイルによって形成されるそれぞれの磁界を模式的に示したインチワーム式アクチュエータの正面図である。
【図6】図1に示すインチワーム式アクチュエータの作動を説明するために永久磁石、磁界形成用コイルおよびボイスコイルによって形成されるそれぞれの磁界を模式的に示したインチワーム式アクチュエータの正面図である。
【図7】図1に示すインチワーム式アクチュエータの作動を説明するために永久磁石、磁界形成用コイルおよびボイスコイルによって形成されるそれぞれの磁界を模式的に示したインチワーム式アクチュエータの正面図である。
【図8】本発明の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を永久磁石によって形成される磁界とともに模式的に示す正面図である。
【図9】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を永久磁石、磁界形成用コイルおよびボイスコイルによって形成される磁界とともに模式的に示す正面図である。
【図10】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を永久磁石、磁界形成用コイルおよびボイスコイルによって形成される磁界とともに模式的に示す正面図である。
【図11】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【図12】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【図13】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【図14】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【図15】本発明の他の変形例に係るインチワーム式アクチュエータの全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るインチワーム式アクチュエータの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るインチワーム式アクチュエータ100の外観構成の概略を模式的に示した正面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このインチワーム式アクチュエータ100は、精密観測・観察機器、精密測定機器、各種加工装置、各種ロボット、各種事務機器、家庭用電化製品などの機器において位置決め機構として用いられるものである。

【0033】
(インチワーム式アクチュエータ100の構成)
インチワーム式アクチュエータ100は、互いに対向して延びる軸状の第1ガイド101および第2ガイド102をそれぞれ備えている。第1ガイド101および第2ガイド102は、互いに協働して後述する変位体110を支持しつつ軸線方向に沿って案内するための部品であり、互いに起立した状態で平行配置された1本の第1ガイド101と2本の第2ガイド102とで構成されている。これらの第1ガイド101および第2ガイド102は、磁場の中で磁化される素材、すなわち磁性体素材でそれぞれ構成されている。本実施形態においては、第1ガイド101および第2ガイド102は、炭素鋼からなる丸棒でそれぞれ構成されている。

【0034】
第1ガイド101および第2ガイド102は、各両端部が上側フレーム103および下側フレーム104によってそれぞれ固定的に支持されている。上側フレーム103および下側フレーム104は、第1ガイド101と第2ガイド102とを互いに平行状態に維持するとともに、第1ガイド101と第2ガイド102との間で磁気回路を形成するための部品である。より具体的には、上側フレーム103および下側フレーム104は、第1ガイド101および第2ガイド102の各上端部および各下端部が図示しないボルトによって連結固定されている。また、これらの上側フレーム103および下側フレーム104は、磁性体素材である炭素鋼の角材でそれぞれ構成されている。これらの上側フレーム103および下側フレーム104の中央部には、永久磁石105a,105bがそれぞれ埋め込まれている。

【0035】
永久磁石105a,105bは、後述する変位体110を第1ガイド101および第2ガイド102に磁気的に吸着して保持させるとともに、後述する第1支持脚111および第2支持脚112に互いに同じ向きの磁界を生じさせるためのものである。本実施形態においては、永久磁石105a,105bは、ネオジム磁石でそれぞれ構成されており、第1ガイド101側(図示左側)にN極を配置した向きでそれぞれ上側フレーム103および下側フレーム104内に固着されている。なお、永久磁石105a,105bは、ネオジム磁石以外の他の磁石、例えば、フェライト磁石などであっても良いことは当然である。

【0036】
第1ガイド101および第2ガイド102の内側の空間には、変位体110が配置されている。変位体110は、第1ガイド101および第2ガイド102の軸線方向に沿って変位する機構体であり、第1支持脚111および第2支持脚112をそれぞれ備えている。第1支持脚111および第2支持脚112は、第1ガイド101および第2ガイド102に摺動接触しながら変位体110を変位させる部分であり、第1ガイド101と第2ガイド102との内幅に対応する長さに形成された棒状部材である。これらの第1支持脚111および第2支持脚112は、図2に示すように、第1ガイド101および第2ガイド102の各外周面に対して三点接触するように各両端部が上面視で半円形に形成されている。なお、図2においては、第1ガイド101および第2ガイド102の断面を二点鎖線で示している。

【0037】
また、第1支持脚111および第2支持脚112における各両端部間は、外形が各両端部の太さより細く形成されている。そして、この外形が細く形成された部分に磁界形成用コイル113,114がそれぞれ巻き回された状態で設けられている。これらの磁界形成用コイル113,114は、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに異なる向きの磁界を生じさせるためのものであり、銅線からなる電導線を螺旋状に巻いてそれぞれ構成されている。そして、これらの磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114とは、互いに逆位相で直列に接続されている。これらの第1支持脚111と第2支持脚112との間には、トグル機構116a,116bを介してボイスコイルモータ(VCM)115が設けられている。

【0038】
ボイスコイルモータ115は、電気エネルギーを直進運動に変換する駆動装置である。より具体的には、ボイスコイルモータ115は、磁界中においたコイルに電流を流すことにより磁界の向きと電流の向きとに垂直な力がコイルに発生する原理を利用した機構体であり、主として、ヨーク115a、永久磁石115b、およびボイスコイル115cによって構成されている。

【0039】
ヨーク115aは、永久磁石115bおよびボイスコイル115cによって生じた磁界における磁力をそれぞれ増大させるための磁性体部品であり、軟鉄材を略E字状に形成して構成されている。ヨーク115aの図示上部側および図示下部側においてそれぞれ図示水平方向に張り出して形成された上側梁部および下側梁部には、互いに対向した磁極の向きで永久磁石115bがそれぞれ貼り付けられている。永久磁石115bは、ヨーク115aに磁界を生じさせるためのものであり、ネオジム磁石によって構成されている。このヨーク115aは、背面中央部にトグル機構116bの中央部が接続されており、同トグル機構116bを介して前記第1支持脚111および第2支持脚112の図示右側の各端部にそれぞれ連結されている。

【0040】
ボイスコイル115cは、前記磁界形成用コイル113,114と同様に、銅線からなる電導線を螺旋状に巻いて筒状に形成したものである。このボイスコイル115cは、ヨーク115aの中央部において図示水平方向左側に向って張り出して形成された中央梁部の外周部を囲む位置で同中央梁部の軸線方向に沿って変位可能な状態で支持されている。より具体的には、ボイスコイルモータ115cは、一方の端部にトグル機構116aの中央部が非磁性体製(例えば、樹脂製)の支持板115dを介して接続されており、同トグル機構116aを介して前記第1支持脚111および第2支持脚112の図示左側の各端部にそれぞれ連結されている。

【0041】
トグル機構116a,116bは、ヨーク115aとボイスコイル115cとを図示水平方向に相対変位可能に支持するとともに、これらのヨーク115aとボイスコイル115cとの相対変位量を縮小変換して第1支持脚111および第2支持脚112の変位量として伝達するリンク機構である。具体的には、トグル機構116a,116bは、図3に示すように、入力変位量に対する出力変位量を非線形に縮小変化させることができる。これは、トグル機構116a,116bが、縮小変換率を任意に変化させることができることを意味する。そして、この場合、トグル機構116a,116bにおける縮小変換率は、入力した変位量に依存して変化する。これにより、トグル機構116a,116bは、入力変位の許容範囲内において任意の変換率で入力変位量を縮小変換することができる。また、この場合、トグル機構116a,116bは、縮小変換率に対応する大きさに増幅した推進力を発生することができるため、倍力機構としても機能する。

【0042】
このトグル機構116a,116bは、具体的には、トグル機構116a,116bは、長尺の板バネ材を中央部で屈曲させて構成されており、この屈曲部の背面にボイスコイルモータ115のヨーク115aおよびボイスコイル115cがそれぞれ接続されている。そして、このトグル機構116a,116bの各両端部が前記第1支持脚111および第2支持脚112の各端部にそれぞれ固定的に連結されている。すなわち、トグル機構116a,116bは、ヨーク115aおよびボイスコイル115cがそれぞれ接続された屈曲部の角度が、ヨーク115aとボイスコイル115cとの相対変位によって開閉する方向に弾性変形することによってトグル機構116a,116bの各両端部を図示上下方向の変位に縮小変換して伝達するリンク機構である。そして、この場合、トグル機構116a,116bにおける縮小変換率は、ヨーク115aおよびボイスコイル115cがそれぞれ接続された屈曲部の角度に依存している。

【0043】
なお、トグル機構116a,116bが支持するヨーク115aとボイスコイル115cとにおける図示水平方向の相対変位とは、ボイスコイル115cに通電されることによりヨーク115aとボイスコイル115bとの間に生じるローレンツ力によってヨーク115aとボイスコイル115cとが互いに引き合う方向およびヨーク115aとボイスコイル115cとが互いに斥け合う方向にそれぞれ変位する動きをいう。

【0044】
磁界形成用コイル113、磁界形成用コイル114およびボイスコイル115cは、駆動電源装置120を介して制御装置130に接続されている。駆動電源装置120は、制御装置130に制御されて磁界形成用コイル113、磁界形成用コイル114およびボイスコイル115cをそれぞれ駆動するための電力を供給する装置である。本実施形態においては、磁界形成用コイル113、磁界形成用コイル114およびボイスコイル115cに対して24V程度の電力をそれぞれ供給する。なお。磁界形成用コイル113、磁界形成用コイル114およびボイスコイル115cに対して供給される電力量は、インチワーム式アクチュエータの仕様に応じて適宜選定されるものであり、本実施形態に限定されるものでないことは当然である。

【0045】
制御装置130は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、入力装置131からの指示に従って、図示しない制御プログラムを実行することにより磁界形成用コイル113、磁界形成用コイル114およびボイスコイル115cの作動をそれぞれ制御する。入力装置131は、このインチワーム式アクチュエータ100のユーザが制御装置130に対して指示を与えるためのインターフェースであり、図示しない複数の押下式キースイッチで構成されている。また、制御装置130には、制御装置130の作動状態やインチワーム式アクチュエータ100の作動状態を表示するための液晶ディスプレイからなる表示装置132が接続されている。本実施形態においては、制御装置130としてパーソナルコンピュータ(所謂「パソコン」)を用いているが、前記各機能を実行できる形式のものであれば、本実施形態に限定されるものでない。

【0046】
(インチワーム式アクチュエータ100の作動)
次に、上記のように構成したインチワーム式アクチュエータ100の作動について説明する。まず、インチワーム式アクチュエータ100に電源を投入する前の状態、すなわち、駆動電源装置120および制御装置130が電源OFFの状態について説明する。

【0047】
インチワーム式アクチュエータ100が電源OFFの状態においては、上側フレーム103および下側フレーム104と、これらの上側フレーム103および下側フレーム104に一体的に組み付けられた第1ガイド101および第2ガイド102とは、上側フレーム103および下側フレーム104に埋め込まれた永久磁石105a,105bによってそれぞれ一時的に磁化されている。このため、磁性体で構成されるとともに第1ガイド101および第2ガイド102にそれぞれ接した状態で配置された第1支持脚111および第2支持脚112は、第1ガイド101および第2ガイド102に磁気的に吸着される。すなわち、変位体110は、インチワーム式アクチュエータ100が電源OFFの状態においては、第1支持脚111および第2支持脚112が位置する第1ガイド101および第2ガイド102上でクランプされた状態となる。

【0048】
この場合、第1支持脚111および第2支持脚112には、図4に示すように、永久磁石105a,105bによって互いに同じ向きの磁界201,202が生じる。より具体的には、第1支持脚111には、主として永久磁石105aによって、永久磁石105aからの磁束が上側フレーム103、第1ガイド101、第1支持脚111、第2ガイド102および上側フレーム103を介して再び永久磁石105aに戻る向きの磁界201が生じる。一方、第2支持脚112には、主として永久磁石105bによって、永久磁石105bからの磁束が下側フレーム104、第1ガイド101、第2支持脚112、第2ガイド102および下側フレーム104を介して再び永久磁石105bに戻る向きの磁界202が生じる。

【0049】
また、インチワーム式アクチュエータ100が電源OFFの場合においては、変位体110を構成するボイスコイルモータ115cも静止状態にある。このため、変位体110は、トグル機構116a,116bにおいて力学的に平衡となる位置に静止した状態で支持される。

【0050】
第1支持脚111および第2支持脚112に磁界201,202が生じるとともに変位体110が静止した状態において、インチワーム式アクチュエータ100は、ユーザによって電源がONにされる。具体的には、ユーザは、入力装置131を操作して制御装置130の電源をONにする。これにより、制御装置130は、図示しない制御プログラムを実行することにより待機状態となる。具体的には、制御装置130は、駆動電源装置120の作動を開始させるとともに、ユーザによる変位体110の変位処理実行の指示を待つ。なお、この待機状態においても、変位体110は、前記と同様に、第1ガイド101および第2ガイド102に対して静止した状態で保持される。

【0051】
そして、制御装置130は、ユーザによる変位体110の変位処理の実行指示を入力すると、同指示に応答して変位体110の変位を開始させる。具体的には、制御装置130は、駆動電源装置120の作動を制御して磁界形成用コイル113,114に電流を流すことにより、第1支持脚111および第2支持脚112における第1ガイド101および第2ガイド102に対する各クランプ状態を、一方をクランプ強化状態とするとともに他方をクランプ低下状態とする。この場合、第1支持脚111および第2支持脚112は、どちらがクランプ強化状態またはクランプ低下状態であってもよいが、以下では、第1支持脚111をクランプ低下状態とし、第2支持脚112をクランプ強化状態とする場合について説明する。

【0052】
具体的には、制御装置130は、磁界形成用コイル113,114に対して磁界形成用コイル113側から磁界形成用コイル114側に向かう向き(以下、「正方向」という)で電流を流す。この場合、磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114とは、互いに逆位相で直列に接続されている。このため、主として、第1支持脚113、第1ガイド101、第2支持脚114および第2ガイド102には、図5に示すように、図示反時計周りの向きで磁界301が形成される。この場合、第1支持脚111においては、磁界301は永久磁石105aによって形成された磁界201に対して反対方向の向きの磁界となる。これにより、第1支持脚111を第1ガイド101および第2ガイド102にそれぞれ吸着させる磁界201における磁力が磁界301に打ち消される結果、第1支持脚111の第1ガイド102および第2ガイド102に対するクランプ力が低下する。なお、図5において磁界形成用コイル113,114は、磁界形成用コイル113,114に流れる電流の向きの理解を助けるため断面図記号で示している。

【0053】
一方、第2支持脚112においては、磁界301は永久磁石105bによって形成された磁界202に対して同じ向きの磁界となる。これにより、第2支持脚112を第1ガイド101および第2ガイド102にそれぞれ吸着させる磁界202における磁力に磁界301による磁力が重畳される結果、第2支持脚112の第1ガイド102および第2ガイド102に対するクランプ力が上昇する。これらの結果、第1支持脚111はクランプ力が低下したアンクランプ状態となり、第2支持脚112はクランプ力が強化したクランプ状態となる。

【0054】
次に、制御装置130は、磁界形成用コイル113,114に前記正方向に電流を流した状態で、ボイスコイルモータ115のボイスコイル115cに電流を流すことにより同ボイスコイル115cとヨーク115aとを相対変位させる。この場合、制御装置130は、変位体110を移動させる方向に応じた電流の向きでボイスコイル115cに電流を流す。具体的には、制御装置130は、変位体110を上側フレーム103側(図示上方)に向かって変位させる場合には、ヨーク115aとボイスコイル115cとが互いに斥け合う方向にそれぞれ変位する向きでボイスコイル115cに電流を流す。

【0055】
本実施形態においては、ヨーク115aには、図6に示すように、永久磁石115bによってヨーク115aにおける図示上側半分に図示反時計回りの磁界401が常に形成されているとともに同ヨーク115aにおける図示下側半分に図示時計回りの磁界402が常に形成されている。したがって、制御装置130は、ボイスコイル115cの図示右側から図示左側に向かう向きに磁界501が生じる向きでボイスコイル115cに電流を流す。これにより、ヨーク115aとボイスコイル115cとは、ローレンツ力によって互いに斥け合う方向にそれぞれ変位するため(図示実線矢印参照)、トグル機構116a,116bは図示上下方向に沿って延びる方向に弾性変形する。なお、図6においてボイスコイル115cは、ボイスコイル115cに流れる電流の向きの理解を助けるため断面図記号で示している。

【0056】
この場合、第1支持脚111および第2支持脚112にそれぞれ接続されるトグル機構116a,116bの両端部は、ヨーク115aおよびボイスコイル115cがそれぞれ接続された屈曲部の角度に応じた縮小変形率で変位しようとする。しかし、この場合、第1支持脚111および第2支持脚112は、第1支持脚111が第1ガイド101および第2ガイド102に対してクランプ力が低下したアンクランプ状態となっているとともに、第2支持脚112が第1ガイド101および第2ガイド102に対してクランプ力が強化したクランプ状態となっている。すなわち、第1支持脚111のクランプ力は、第2支持脚112のクランプ力に対して相対的に小さくなっている。このため、第1支持脚111は、第1ガイド101および第2ガイド102に沿って上側フレーム103側(図示上側)に向かって摺動しながら変位する。

【0057】
次に、制御装置130は、ボイスコイル115cに電流を流した状態で、磁界形成用コイル113,114に反対の向きの電流を流すことにより、第1支持脚111をクランプ状態とするとともに第1支持脚111をアンクランプ状態にする。具体的には、制御装置130は、図7に示すように、磁界形成用コイル113,114に対して磁界形成用コイル114側から磁界形成用コイル113側に向かう向き(以下、「負方向」という)で電流を流す。この場合、磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114とは、互いに逆位相で直列に接続されているため、主として、第1支持脚111、第2ガイド102、第2支持脚112および第1ガイド101には、図示時計周りの向きで磁界302が形成される。なお、図7において磁界形成用コイル113,114およびボイスコイル115cは、磁界形成用コイル113,114およびボイスコイル115cに流れる電流の向きの理解を助けるため断面図記号で示している。

【0058】
そして、この場合、第1支持脚111においては、磁界302は永久磁石105aによって形成された磁界201に対して同じ向きの磁界となる。これにより、第1支持脚111を第1ガイド101および第2ガイド102にそれぞれ吸着させる磁界201における磁力に磁界302による磁力が重畳される結果、第1支持脚111の第1ガイド102および第2ガイド102に対するクランプ力が上昇する。一方、この場合、第2支持脚112においては、磁界302は永久磁石105bによって形成された磁界202に対して反対方向の磁界となる。これにより、第2支持脚112を第1ガイド101および第2ガイド102にそれぞれ吸着させる磁界202における磁力が磁界302に打ち消される結果、第2支持脚112の第1ガイド102および第2ガイド102に対するクランプ力が低下する。

【0059】
次に、制御装置130は、磁界形成用コイル113,114に前記負方向に電流を流した状態で、ボイスコイルモータ115のボイスコイル115cに電流を流すことにより同ボイスコイル115cとヨーク115aとを相対変位させる。この場合、制御装置130は、ヨーク115aとボイスコイル115cとが互いに引き合う方向にそれぞれ変位する向きに電流を流す。具体的には、制御装置130は、ボイスコイル115cの図示左側から図示右側に向かう向きに磁界502が生じる向きでボイスコイル115cに電流を流す。これにより、ヨーク115aとボイスコイル115cとは、ローレンツ力によって互いに引き合う方向にそれぞれ変位するため(図示実線矢印参照)、トグル機構116a,116bは図示上下方向に沿って縮む方向に弾性変形する。

【0060】
この場合においても、第1支持脚111および第2支持脚112にそれぞれ接続されるトグル機構116a,116bの両端部は、ヨーク115aおよびボイスコイル115cがそれぞれ接続された屈曲部の角度に応じた縮小変形率で変位しようとする。そして、この場合、第1支持脚111および第2支持脚112は、第1支持脚111が第1ガイド101および第2ガイド102に対してクランプ力が強化したクランプ状態となっているとともに、第2支持脚112が第1ガイド101および第2ガイド102に対してクランプ力が低下したアンクランプ状態となっている。すなわち、第2支持脚112のクランプ力は、第1支持脚111のクランプ力に対して相対的に小さくなる。このため、第2支持脚112は、第1ガイド101および第2ガイド102に沿って上側フレーム103側(図示上側)に向かって摺動しながら変位する。

【0061】
これにより、変位体110は、変位体110全体として上側フレーム103側に変位する。また、制御装置130は、これらの一連の動作、具体的には、第1支持脚111および第2支持脚112のアンクランプ-クランプ動作、トグル機構116a,116bの伸長-短縮動作および第1支持脚111および第2支持脚112のクランプ-アンクランプ動作を繰り返し実行することにより、変位体110を連続的に上側フレーム103側に向かって変位させることができる。すなわち、制御装置130による前記一連の動作を実行する磁界形成用コイル113,114およびボイスコイル115cの駆動が本発明に係るインチワーム駆動であり、同インチワーム駆動を実行する制御装置130が、本発明に係るインチワーム制御手段に相当する。

【0062】
なお、第1支持脚111をアンクランプ状態とするとともに第2支持脚112をクランプ状態とした前記状態において、変位体110を下側フレーム104側(図示下方)に向かって変位させる場合には、ボイスコイル115cに対して前記とは逆方向に電流を流すようにする。

【0063】
すなわち、第1支持脚111をアンクランプ状態とするとともに第2支持脚112をクランプ状態とした状態において、制御装置130は、ボイスコイル115cの図示左側から図示右側に向かう向きの磁界502が生じる向きでボイスコイル115cに電流を流す。これにより、ヨーク115aとボイスコイル115cとはローレンツ力によって互いに引き合う方向にそれぞれ変位するため、トグル機構116a,116bは図示上下方向に沿って縮む方向に弾性変形する。この場合、第1支持脚111のクランプ力は、第2支持脚112のクランプ力に対して相対的に小さくなっている。このため、第1支持脚111は、第1ガイド101および第2ガイド102に沿って下側フレーム104側(図示下側)に向かって摺動しながら変位する。

【0064】
次いで、制御装置130は、ボイスコイル115cに電流を流した状態で、磁界形成用コイル113,114に対して前記負方向電流を流すことにより前記磁界302を形成させて第1支持脚111をクランプ状態とするとともに第2支持脚112をアンクランプ状態にする。そして、制御装置130は、磁界形成用コイル113,114に前記負方向に電流を流した状態で、ボイスコイルモータ115のボイスコイル115cに反対の向きの電流を流すことにより同ボイスコイル115cとヨーク115aとをローレンツ力によって互いに斥け合う方向にそれぞれ変位させる。具体的には、制御装置130は、ボイスコイル115cの図示右側から図示左側に向かう向きの磁界501が生じる向きでボイスコイル115cに電流を流す。これにより、ヨーク115aとボイスコイル115cとは互いに斥け合う方向にそれぞれ変位するため、トグル機構116a,116bは図示上下方向に沿って延びる方向に弾性変形する。

【0065】
この場合、第2支持脚112のクランプ力は、第1支持脚111のクランプ力に対して相対的に小さくなる。このため、第2支持脚112は、第1ガイド101および第2ガイド102に沿って下側フレーム104側(図示下側)に向かって摺動しながら変位する。これにより、変位体110は、変位体110全体として下側フレーム104側に変位する。また、制御装置130は、これらの一連の動作、具体的には、第1支持脚111および第2支持脚112のクランプ-アンクランプ動作、トグル機構116a,116bを短縮-伸長動作および第1支持脚111および第2支持脚112のアンクランプ-クランプ動作を繰り返し実行することにより、変位体110を連続的に下側フレーム104側に向かって変位させることができる。

【0066】
すなわち、インチワーム式アクチュエータ100は、第1支持脚111および第2支持脚112をクランプ・アンクランプ状態とするための磁界形成用コイル113,114の駆動とトグル機構116a,116bを伸縮動作させるためのボイスコイルモータ115cとの組み合わせからなるインチワーク駆動により変位体110を第1ガイド101および第2ガイド102に沿って変位させる。そして、制御装置130は、ユーザにより指示された変位量だけ変位体110を変位させた後、磁界形成用コイル113,114およびボイスコイル115cへの通電を停止する。これにより、磁界形成用コイル113,114およびボイスコイル115cによる磁界301,302,401,402が解消されるため、第1支持脚111および第2支持脚112は、前記と同様のクランプ状態に復帰する。すなわち、変位体110は、変位の停止位置で位置が保持される。

【0067】
また、上記作動説明においては、制御装置130は、ボイスコイルモータ115のボイスコイル115cに対して所定量の電流を通電させる通電状態と、電流を全く流さない非通電状態を切り替えることにより作動を制御した。しかし、制御装置130は、ボイスコイル115cに対して常に一定値の電流、すなわち、バイアス電流を流した状態で更にボイスコイル115cに対して流す電流量を制御することによりボイスコイル115cを作動させるようにすることができる。

【0068】
このようなバイアス電流を用いたボイスコイル115cの制御によれば、トグル機構116a,116bは、バイアス電流による変形量を基準として変形することになる。すなわち、トグル機構116a,116bは、ヨーク115aおよびボイスコイル115cが接続されている屈曲部の屈曲角度によってトグル機構116a,116bの両端部の変位量が異なる。すなわち、トグル機構116a,116bの縮小変換率は、変位を入力した間の屈曲部の屈曲角度範囲に応じたものとなる。このため、制御装置130は、ボイスコイル115cに流すバイアス電流量によってトグル機構116a,116bにおける屈曲部の屈曲角度を予め変化させておくことで変位縮小率を変化させることができる。

【0069】
すなわち、制御装置130は、図3に示すように、トグル機構116a,116bの変位縮小率を大きくした状態(図3において例えば破線L内の範囲)でボイスコイル115cを駆動することにより変位体110を早送り(粗動)することができるとともに、トグル機構116a,116bの変位縮小率を小さくした状態(図3において例えば破線S内の範囲)でボイスコイル115cを駆動することにより変位体110を高分解能(微動)かつ高推進力(高トルク)で変位させることができる。

【0070】
なお、上記作動説明においては、第1支持脚111をアンクランプ状態とするとともに第2支持脚112をクランプ状態とした場合からの変位体110の変位の作動について説明した。しかし、前記したように、第1支持脚111をクランプ状態とするとともに第2支持脚112をアンクランプ状態とした場合から変位体110を変位させることも可能である。

【0071】
すなわち、第1支持脚111をクランプ状態とするとともに第2支持脚112をアンクランプ状態とした場合から変位体110を上側フレーム103側に変位させるには、制御装置130は、同状態においてトグル機構116a,116bを短縮させるようにボイスコイル115cの作動を制御して磁界502を形成させる。次いで、制御装置130は、第2支持脚112を上側フレーム103側に変位させた後、磁界形成用コイル113,114の作動を制御して磁界301を形成させて第1支持脚111をアンクランプ状態とするとともに第2支持脚112をクランプ状態とする。次いで、制御装置130は、トグル機構116a,116bを伸長させるようにボイスコイル115cの作動を制御して磁界501を形成させる。これにより、第1支持脚111が上側フレーム103側に変位するため、結果として変位体110の全体が上側フレーム103側に変位する。

【0072】
一方、第1支持脚111をクランプ状態とするとともに第2支持脚112をアンクランプ状態とした場合から変位体110を下側フレーム104側に変位させるには、制御装置130は、同状態においてトグル機構116a,116bを伸長させるようにボイスコイル115cの作動を制御して磁界501を形成させる。次いで、制御装置130は、第2支持脚112を下側フレーム104側に変位させた後、磁界形成用コイル113,114の作動を制御して磁界302を形成させて第1支持脚111をアンクランプ状態とするとともに第2支持脚112をクランプ状態とする。次いで、制御装置130は、トグル機構116a,116bを短縮させるようにボイスコイル115cの作動を制御して磁界502を形成させる。これにより、第1支持脚111が下側フレーム104側に変位するため、結果として変位体110の全体が下側フレーム104側に変位する。

【0073】
このような変位体110を変位させるための磁界形成用コイル113,114の通電方向とボイスコイル115cの通電方向との組み合わせは、予めユーザにより選定されて制御装置130に設定される。

【0074】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、インチワーム式アクチュエータ100は、変位体110を構成する第1支持脚111および第2支持脚112が伸縮手段であるボイスコイルモータ115の変位量に応じた変換率によって縮小変換するトグル機構116a,116bによって互いに相対変位されるように構成されている。この場合、トグル機構116a,116bは、ボイスコイルモータ115の変位に基づく入力変位量に依存して非線形に変化する縮小変換率で縮小した出力変位量分だけ第1支持脚111と第2支持脚112とを相対変位させる。これにより、インチワーム式アクチュエータ100は、トグル機構116a,116bにおける非線形の縮小変換率の範囲内において適当な縮小変換率を適宜使い分けることにより、変位体110の変位速度、位置決め精度および変位時の推進力を任意に設定することができる。

【0075】
また、上記実施形態におけるインチワーム式アクチュエータ100は、磁性体で構成された第1ガイド101および第2ガイド102に対して磁界形成用コイル113,114を備えた磁性体製の第1支持脚111および第2支持脚112、ボイスコイルモータ115およびトグル機構116a,116bからなる変位体110が配置される。これにより、変位体110は、第1ガイド101および第2ガイド102に沿って変位するため、インチワーム式アクチュエータ100は、安定した状態で正確に変位体110を変位させることができる。また、インチワーム式アクチュエータ100は、第1支持脚111および第2支持脚112に磁界を生じさせる永久磁石105a,105bによって磁界形成用コイル113,114の非通電時において第1支持脚111および第2支持脚112を第1ガイド101および第2ガイド102に磁気的に吸着させることができる。すなわち、インチワーム式アクチュエータ100は、第1支持脚111および第2支持脚112のクランプ状態とアンクランプ状態の切り替えを実現しながら、変位体110に対する非通電時において変位体110の位置を保持することができる。そして、また、永久磁石105a,105bが第1ガイド101および第2ガイド102に設けられているため、変位体110の構成を簡単かつ軽量にすることができる。これにより、インチワーム式アクチュエータ100は、従来技術における変位体110に比して、変位体110の構成を複雑化、大型化および重量化することなく変位体110の位置を保持することができる。

【0076】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記変形例の説明においては、参照する各図における上記実施形態と同様の構成部分に同じ符号または対応する符号を付して、その説明は省略する。

【0077】
例えば、上記実施形態においては、永久磁石105a,105bを上側フレーム103および下側フレーム104にそれぞれ配置した。すなわち、永久磁石105a,105bは、第1ガイド101および第2ガイド102に対して上側フレーム103および下側フレーム104を介して間接的に配置されている。しかし、永久磁石105a,105bは、第1ガイド101および第2ガイド102を介して第1支持脚111および第2支持脚112に互いに同じ向きの磁界を形成可能な位置に配置されていれば、配置位置や配置数などは上記実施形態に限定されるものではない。

【0078】
例えば、図8に示すように、永久磁石105a,105bを第1ガイド101および第2ガイド102に直接的に設けるようにしてもよいし、図示は省略するが、永久磁石105a,105bを第1支持脚111および第2支持脚112に直接配置してもよい。これらによれば、上側フレーム103および下側フレーム104の構成を簡易にすることができる。また、図9に示すように、下側フレーム104に一つの永久磁石105bのみを配置して構成することもできる。これによれば、インチワーム式アクチュエータ100を簡易に構成することができる。なお、この場合、配置する一つの永久磁石105bの配置は、上側フレーム105a、第1ガイド101および第2ガイド102などであっても良いことは当然である。

【0079】
また、上記実施形態においては、磁界形成用コイル113,114を第1支持脚111および第2支持脚112にそれぞれ設けた。しかし、磁界形成用コイル113,114は、第1ガイド101および第2ガイド102を介して第1支持脚111および第2支持脚112に互いに異なる向きの磁界を形成可能な位置に配置されていれば、配置位置や配置数などは上記実施形態に限定されるものではない。

【0080】
例えば、図10に示すように、第2支持脚112に一つの磁界形成用コイル114のみを配置して構成することもできる。これによれば、インチワーム式アクチュエータ100を簡易に構成することができる。なお、この場合、図中二点鎖線で示すように、磁界形成用コイル114を第1支持脚111と第2支持脚112との間における第2ガイド102(または第1ガイド101)上に設けることもできる。この場合、磁界形成用コイル114は、第2ガイド102に固定的に設けるようにしても良いし、変位体110の変位とともに第2ガイド102上を変位するように構成することもできる。

【0081】
また、上記実施形態においては、磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114とを互いに逆位相で直列接続した。これにより、磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114の2つの磁界形成用コイルを一つの駆動電源装置120で制御することができ、インチワーム式アクチュエータの構成を簡単にすることができる。しかし、磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114とをそれぞれ駆動電源装置120で個別に制御してもよいし、磁界形成用コイル113と磁界形成用コイル114とでそれぞれ駆動電源装置120を設けることもできる。

【0082】
また、上記実施形態においては、第1支持脚111および第2支持脚112は、第1ガイド101および第2ガイド102に対して三点接触で摺動するように構成した。しかし、第1支持脚111および第2支持脚112は、第1ガイド101および第2ガイド102に対して摺動するように構成されていれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1支持脚111および第2支持脚112における第1ガイド101および第2ガイド102への接触部分を回転するローラでそれぞれ構成するとともに、同ローラが転動する第1ガイド101および第2ガイド102における摺動部分を平面状、凹状またはV字状などの形状のレールに形成することもできる。

【0083】
また、上記実施形態においては、変位体110は、第1ガイド101および第2ガイド102に対して図示上下方向に変位するように構成されている。しかし、変位体110は、昇降変位であっても良いし、水平変位であっても良いことは当然である。

【0084】
また、上記実施形態においては、変位体110は、第1ガイド101および第2ガイド102に対して変位するように構成されている。すなわち、第ガイド101および第2ガイド102が、本発明に係る被変位体に相当する。しかし、変位体110の第1ガイド101および第2ガイド102に対する変位は相対的なものである。したがって、変位体110を固定して、第1ガイド101および第2ガイド102を変位体110に対して変位するように構成してもよい。すなわち、インチワーム式アクチュエータ100は、変位体110側が第1ガイド101および第2ガイド102に対して変位するように構成されていてもよいし、第1ガイド101および第2ガイド102側が変位体110に対して変位するように構成されていてもよい

【0085】
また、上記実施形態においては、本発明における伸縮手段としてボイスコイルモータ115を用いた。しかし、本発明における伸縮手段は、変位体110の一部を構成して電気エネルギーまたは磁気エネルギーを受けて変位または変形するアクチュエータであれば必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、伸縮手段は、ボイスコイルモータ115に代えて、図11に示すような2ステップ伸縮装置140を用いることができる。

【0086】
2ステップ伸縮装置140は、主として、電磁石141の図示両側に第1可動片142および第2可動片143をそれぞれ備えて構成されている。この場合、電磁石141は、軟鉄心141aに磁界形成用コイル141bを巻き付けて構成されており、制御装置130によって作動が制御される。この電磁石141は、磁界形成用コイル141bに電流が流されている間、軟鉄心141aが磁化して一時的に磁石になる。第1可動片142は、電磁石141における一方(図示左側)の磁極に第1の隙間C1を隔てた状態でトグル機構116aの中央部に固定的に支持された磁性体である。また、第2可動片143は、電磁石141における他方(図示右側)の磁極に第1の隙間C1より広い第2の隙間C2を隔てた状態でトグル機構116bの中央部に固定的に支持された磁性体である。

【0087】
これらの第1可動片142および第2可動片143と電磁石141の各磁極との間には、スプリング144a,144bがそれぞれ配置されている。スプリング144は、電磁石141の各磁極に対して第1可動片142および第2可動片143をそれぞれ斥ける方向に押圧する弾性体である。これにより、電磁石141は、スプリング144a,144b、第1可動片142および第2可動片143を介してトグル機構116a,116bによって支持されている。

【0088】
このように構成された2ステップ伸縮装置140は、第1可動片142を磁気的に吸着可能な磁力を生じさせる電流がコイル141bに断続的に流されることによって第1可動片142が図示左右方向に変位を繰り返す。これにより、変位体110は、第1可動片142の変位量(第1の隙間C1)を縮小変換した変位量で変位する。また、2ステップ伸縮装置140は、第2可動片143を磁気的に吸着可能な磁力を生じさせる電流がコイル141bに断続的に流されることによって第2可動片143が図示左右方向に変位を繰り返す。この場合、第2可動片143を磁気的に吸着可能な磁力を生じさせる電流とは、第1可動片142を磁気的に吸着可能な磁力を生じさせる電流よりも大きい電流である。したがって、この場合、第1可動片142は、電磁石141における一方(図示左側)の磁極に磁気的に吸着された状態となる。これにより、変位体110は、第2可動片143の変位量(第2の隙間C2)を縮小変換した変位量で変位する。

【0089】
そして、この場合、変位体110は、第2可動片143の変位量が第1可動片142の変位量よりも大きいため、第1可動片142による変位時の縮小変換率よりも大きい縮小変換率で変位する。すなわち、インチワーム式アクチュエータ100は、第1可動片142を変位させることにより変位体110を微動(精密送り)することができるとともに、第2可動片143を変位させることにより変位体110を粗動(早送り)させることができる。

【0090】
なお、この2ステップ伸縮装置140は、トグル機構116aに磁性体を設けるとともにトグル機構116bに電磁石を設けて、この電磁石の通電および非通電を制御して前記磁性体を吸引および離隔変位させる構成、すなわち、1ステップの構成とすることができる。また、この伸縮手段は、これらのボイスコイルモータ115や2ステップ伸縮装置140の他に、例えば、ソレノイド、圧電素子、磁歪素子などを用いて構成することができる。この場合、伸縮手段として圧電素子や磁歪素子を用いた場合、変位変換機構は、圧電素子や磁歪素子の変形量を直接入力変位量として入力することができるとともに、圧電素子や磁歪素子の変形によって変位する物体の変位を介して入力変位量を入力することもできる。

【0091】
また、上記実施形態においては、本発明における変位変換機構として2つのリンクと1つのスライダからなるトグル機構116a,116bを用いた。しかし、変位変換機構は、前記伸縮手段の変位量や変形量に基づく入力変位量を拡大変換または縮小変換する変換率を変化させることができれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、変位変換機構として、トグル機構以外のリンク機構(例えば、スライダクランク機構)、倍力機構、カム機構、歯車列または油圧機構などを用いることができる。また、複数の変位変換機構を多段で組んで構成することにより、入力変位量の拡大率または縮小率をより大きくまたはより小さくすることもできる。なお、変位量変換機構を構成するリンク機構は、複数のリンクとこれら複数のリンクを互いに可動的に連結するジョイントとが明確に別部品として構成されている必要はなく、実質的にリンク機構として作用するものを含むものである。すなわち、上記実施形態におけるトグル機構116a,116bのように、一つの部材であっても2つの部分が弾性変形部を介して可動することでリンク機構を構成することもできる。

【0092】
なお、上記実施形態においては、トグル機構116a,116bは、入力した変位量を縮小変換した変位量として出力するする変位量縮小機構として用いた。しかし、トグル機構116a,116bは、入力した変位量を拡大変換した変位量として出力する変位量拡大機構として用いることもできる。具体的には、トグル機構116a,116bの両端部を伸縮手段の両端、例えば、ボイスコイルモータ115であれば、ヨーク115aと支持板115dとにそれぞれ接続するとともに、トグル機構116a,116bの中央部を第1支持脚111および第2支持脚112にそれぞれ接続することにより変位量拡大機構として用いることもできる。

【0093】
また、上記実施形態においては、インチワーム式アクチュエータ100は、第1ガイド101および第2ガイド102からなる被変位体に対して変位体110が変位するように構成した。しかし、インチワーム式アクチュエータ100は、被変位体を省略して構成することもできる。被変位体を省略したインチワーム式アクチュエータ100の構成例を以下に示す。なお、以下の図12~15に示す本発明の他の実施形態に係るインチワーム式アクチュエータ100は、各図が上記実施形態よりも簡略化された模式図で示されているとともに駆動電源装置120、制御装置130、入力装置131および表示装置132の各図も省略されている。

【0094】
例えば、図12に示すインチワーム式アクチュエータ100においては、変位体110が、主として、第1支持脚111、第2支持脚112、ボイスコイルモータ115、トグル機構116a,116bおよびクランプ素子150によって構成されている。この場合、クランプ素子150は、圧電効果によって伸縮する圧電素子であり、第1支持脚111および第2支持脚112における各一方の端部にそれぞれ設けられている。このクランプ素子150は、制御装置130による作動制御によって伸縮変形することにより第1支持脚111および第2支持脚112の長さを伸縮させる。

【0095】
このように構成されたインチワーム式アクチュエータ100は、第1支持脚111および第2支持脚112の伸縮方向両端部を挟んで架設状態で支持可能な形状(例えば、筒状)に形成された被変位体Wの内側に変位体110が配置されて用いられる。具体的には、インチワーム式アクチュエータ100は、制御装置130がボイスコイルモータ115とクランプ素子150とをインチワーム駆動することにより変位体110が被変位体W内を変位する(図示破線矢印参照)。なお、この場合、変位体110は、クランプ素子150の伸張によって被変位体W内で機械的にクランプ状態となるため、第1支持脚111、第2支持脚112および被変位体Wは、必ずしも磁性体である必要はなく、金属材料以外にセラミック材、樹脂材、ガラス材、ゴム材または木材などで構成することができる。また、クランプ素子150は、電圧が印加されることにより伸張するタイプであってもよいし、電圧が印加されることにより収縮するタイプであってもよいが、電圧が印加されることにより収縮するタイプを用いることにより、クランプ素子150の非通電時に変位体110の被変位体W内で位置を保持することができる。

【0096】
また、他の例として、図13に示すインチワーム式アクチュエータ100においては、変位体110が、主として、第1支持脚111、第2支持脚112、ボイスコイルモータ115、トグル機構116a,116b、永久磁石151a,151b、磁気導体152および磁界形成用コイル153によって構成されている。これらのうち、永久磁石151a,151bは、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに同じ向きの磁界を生じさせるためのものであり、第1支持脚111および第2支持脚112にそれぞれ設けられている。また、磁気導体152は、第1支持脚111と第2支持脚112とを磁気的に接続するための磁性体であり、第1支持軸111および第2支持脚112に対してそれぞれ摺動自在に設けられている。なお、この磁気導体152は、第1支持脚111と第2支持脚112とを磁気的に接続するための磁性体であればよく、例えば伸縮または屈曲する部材(例えば、トグル機構116a,116b)で構成されていてもよい。

【0097】
また、磁界形成用コイル153は、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせるためのものであり、磁気導体152に設けられている。この磁界形成用コイル153は、制御装置130によって作動が制御される。なお、この磁界形成用コイル153は、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせることができれば、配置位置および配置数は本実施形態に限定されるものではない。

【0098】
このように構成されたインチワーム式アクチュエータ100は、磁性体で構成された平板状の被変位体W上に変位体110が配置されて用いられる。具体的には、インチワーム式アクチュエータ100は、制御装置130が磁界形成用コイル153とボイスコイルモータ115とをインチワーム駆動することにより変位体110が被変位体W上を変位する(図示破線矢印参照)。この変位体110の変位時においては、磁気導体152は第1支持脚111および第2支持脚112に対する磁気的な吸着力が断続的かつ交互に変化するため、第1支持脚111または第2支持脚112に対して摺動しながら変位体110とともに変位する。なお、変位体110を被変位体W上で変位させる場合には、変位体110の変位方向を規制するための突起状や溝状の案内ガイドを被変位体W上に設けるようにするとよい。

【0099】
また、他の例として、図14に示すインチワーム式アクチュエータ100においては、変位体110が、主として、第1支持脚111、第2支持脚112、磁界形成用コイル113,114、ボイスコイルモータ115およびトグル機構116a,116bによって構成されている。この場合、第1支持脚111および第2支持脚112は、それぞれ磁性体によって構成されている。また、磁界形成用コイル113,114は、制御装置130による作動制御によって通電されることにより第1支持脚111および第2支持脚112を磁化して一時的に磁石とする。この場合、制御装置130は、磁界形成用コイル113および磁界形成用コイル114の一方にのみ通電することにより、第1支持脚111および第2支持脚112の一方のみに磁界を生じさせて磁化させる。

【0100】
このように構成されたインチワーム式アクチュエータ100は、磁性体で構成された平板状の被変位体W上に変位体110が配置されて用いられる。具体的には、インチワーム式アクチュエータ100は、制御装置130が磁界形成用コイル113,114とボイスコイルモータ115とをインチワーム駆動することにより変位体110を被変位体W上で変位させることができる(図示破線矢印参照)。

【0101】
また、他の例として、図15に示すインチワーム式アクチュエータ100においては、変位体110が、主として、第1支持脚111、第2支持脚112、磁界形成用コイル113,114、ボイスコイルモータ115、トグル機構116a,116b、永久磁石154a,154bによって構成されている。この場合、第1支持脚111および第2支持脚112は、それぞれ磁性体によって構成されている。また、磁界形成用コイル113,114は、制御装置130による作動制御によって通電されることにより第1支持脚111および第2支持脚112を磁化して一時的に磁石とする。この場合、制御装置130は、磁界形成用コイル113および磁界形成用コイル114の作動を制御することにより、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに同じ向きの磁界を同時に生じさせて磁化させる。また、永久磁石154a,154bは、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに異なる向きの磁界を生じさせるためのものであり、第1支持脚111および第2支持脚112にそれぞれ設けられている。

【0102】
このように構成されたインチワーム式アクチュエータ100は、磁性体で構成された平板状の被変位体W上に変位体110が配置されて用いられる。具体的には、インチワーム式アクチュエータ100は、制御装置130が磁界形成用コイル113,114とボイスコイルモータ115とをインチワーム駆動することにより変位体110を被変位体W上で変位させることができる(図示破線矢印参照)。この場合、磁界形成用コイル113,114が非通電時においては、変位体110は、永久磁石154a,154bの磁力によって被変位体W上に磁気的に吸着されて保持される。したがって、変位体110が変位する被変位体Wは、必ずしも水平面である必要はなく、例えば、傾斜面や垂直面であってもよい。

【0103】
なお、詳しい説明は省略するが、永久磁石154a,154bを第1支持脚111および第2支持脚112に互いに同じ向きの磁界を生じさせるように配置しても変位体110を変位させることができる。この場合、制御部130は、磁界形成用コイル113および磁界形成用コイル114の作動を制御することにより、第1支持脚111および第2支持脚112に互いに異なる向きの磁界を同時に生じさせて磁化させるようにする。これによれば、図15に示すインチワーム式アクチュエータ100と同様に、変位体110を被変位体W上で変位させることができる。

【0104】
また、上記実施形態においては、インチワーム式アクチュエータ100は、精密観測・観察機器、精密測定機器、各種加工装置、各種ロボット、各種事務機器、家庭用電化製品などの機器において位置決め機構として用いた例について説明した。しかし、本発明に係るインチワーム式アクチュエータは、上記以外の装置や機器における位置決め機構、搬送機構またはマニピュレーション機構として幅広く利用できるものである。例えば、光学顕微鏡装置内や原子間力顕微鏡(AFM)装置内において各種光学レンズや試料ステージなどを位置決めするパラレルリンク機構におけるアクチュエータとして用いることができる。また、細胞操作、マイクロサージェリー、顕微鏡の試料操作、精密部品の組立てなどのマニピュレーション用としても用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
W…被変位体、C1・・・第1の隙間、C2…第2の隙間、
100…インチワーム式アクチュエータ、101…第1ガイド、102…第2ガイド、103…上側フレーム、104…下側フレーム、105a,105b…永久磁石、
110…変位体、111…第1支持脚、112…第2支持脚、113,114…磁界形成用コイル、115…ボイスコイルモータ、115a…ヨーク、115b…永久磁石、115c…ボイスコイル、115d…支持板、116a,116b…トグル機構
120…駆動電源装置、
130…制御装置、131…入力装置、132…表示装置、
140…2ステップ伸縮装置、141…電磁石、141a…軟鉄心、141b…磁界形成用コイル、142…第1可動片、143…第2可動片、144a,144b…スプリング、
150…クランプ素子、151a,151b…永久磁石、152…磁気導体、153…磁界形成用コイル、154a,154b…永久磁石、
201,202,301,302,401,402,501,502…磁界。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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