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明細書 :セメント用材料およびセメント

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4595080号 (P4595080)
公開番号 特開2005-095346 (P2005-095346A)
登録日 平成22年10月1日(2010.10.1)
発行日 平成22年12月8日(2010.12.8)
公開日 平成17年4月14日(2005.4.14)
発明の名称または考案の名称 セメント用材料およびセメント
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 K
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2003-332612 (P2003-332612)
出願日 平成15年9月25日(2003.9.25)
審査請求日 平成18年6月8日(2006.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
発明者または考案者 【氏名】相澤 守
個別代理人の代理人 【識別番号】100101719、【弁理士】、【氏名又は名称】野口 恭弘
審査官 【審査官】川口 裕美子
参考文献・文献 相沢守 他,水酸アパタイトセラミックスのイノシト-ルリン酸による表面修飾とその細胞培養による評価 ,日本セラミックス協会秋季シンポジウム講演予稿集,2000年,Vol.13th,p.90
調査した分野 A61L 27/00
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩をカルシウム化合物の表面に吸着させた微結晶よりなり、
前記微結晶は、水性溶媒中で混練し、ペーストにして使用することを特徴とする
セメント用材料。
【請求項2】
イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩とカルシウム化合物のモル比が0.001~0.1である請求項1に記載のセメント用材料。
【請求項3】
カルシウム化合物がリン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムである請求項1又は2に記載のセメント用材料。
【請求項4】
リン酸カルシウムがヒドロキシアパタイトである請求項3に記載のセメント用材料。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1つに記載のセメント用材料を水性溶媒中で混練し、ペーストにする工程と、
前記ペーストを硬化させる工程と、を含むことを特徴とする
セメントの製造方法。
【請求項6】
前記水性溶媒のpHが6~11である請求項5に記載のセメントの製造方法。
【請求項7】
前記セメント用材料と前記水性溶媒との重量比が1/0.50~1/0.80である請求項5又は6に記載のセメントの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用材料およびセメントに関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸カルシウムは脊椎動物の骨や歯などの硬組織にみられる無機物質とほぼ同一の組成や構造を有し、生体適合性を示す生体活性材料群である。
なかでも、ヒドロキシアパタイトは生体内に埋め込んでも生体の拒否反応や壊死を引き起こさず、生体硬組織に同化、癒着しやすい性質を有するので、骨欠損部及び骨空隙部等の修復用材料として期待されている。ヒドロキシアパタイトの材料形態は緻密体、多孔体、顆粒、セメント等があるが、任意形状に成形可能なアパタイトセメントは今後の発展が期待される材料である。
【0003】
しかしながら、従来のアパタイトセメントは硬化時間が長く、また、生体内に埋め込んでから生体硬組織に癒着、接合が始まるまでの骨誘導期間が4~5週間と長いことが知られている。この性質は患者の苦痛と関係することから、現行のアパタイトセメントの欠点の1つとされている(特許文献1)。また、従来のアパタイトセメントには曲げ強さに弱い欠点もある(非特許文献1)。また、従来のアパタイトセメントでは、硬化する際に酸・塩基反応を伴うために、生体内で硬化するまでの間に局所的なpH変動が起こり、炎症反応が惹起されるという問題点がある。
【0004】
また、β-リン酸三カルシウムからなるセメントは、移植骨の採取部や腫瘍切除後の補填材として使われているが、大腿骨やけい骨などのように高い荷重を支える長管骨の広範囲の欠損への適応はまだ確立されていない。これは、荷重長管骨と人工骨との界面に生じる過大な応力に耐えるほどの骨結合力が短期間では得られないからである。β-リン酸三カルシウムからなるセメントは徐々に生体骨に置換されるが長時間を要するため、現実の治療では他の固定材料なしに荷重部分に用いるのには難がある(非特許文献2)。
【0005】

【特許文献1】特開平5-229807号公報
【非特許文献1】金澤孝文著「リン」第65~86頁(研成社、1997年)
【非特許文献2】日本化学会編「第6版 化学便覧 応用化学編II」第1485頁(丸善、2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、硬化時にpH変化を伴わないで硬化し、良好な生体適合性及び圧縮強度を有するセメント用材料及びセメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の課題は、以下の手段により達成された。
(1)イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩をカルシウム化合物の表面に吸着させた微結晶を含むことを特徴とするセメント用材料、
(2)イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩とカルシウム化合物のモル比が0.001~0.1である(1)記載のセメント用材料、
(3)カルシウム化合物がリン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムである(1)又は(2)記載のセメント用材料、
(4)リン酸カルシウムがヒドロキシアパタイトである(3)記載のセメント用材料、
(5)ヒドロキシアパタイトの微結晶及びイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩からなることを特徴とするセメント用材料、
(6)(1)~(5)いずれか1つに記載のセメント用材料を水性溶媒中で混練し、硬化させたことを特徴とするセメント、
【発明の効果】
【0008】
本発明のセメント用材料は、pHの変動を伴うことなく硬化し、生体適合性及び圧縮強度に優れたセメントを与える。本発明のセメントは、骨の欠損部又は空隙部等に充填され、新生骨の発生を容易にし、生体の硬組織と容易に一体化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のセメント用材料について説明する。
本発明においては、イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩をカルシウム化合物の表面に吸着させた微結晶をセメント用材料(以下、「セメント用材料I」ともいう。)として用いる。
ここで、カルシウム化合物の微結晶とは、平均粒子径が約1μm~約1mmの大きさの結晶を言う。吸着させる前に、微結晶は、必要に応じて再結晶法により精製して使用することが好ましい。また、乾式篩い等により微結晶を分級して粒子径のそろったカルシウム化合物を使用することが好ましい。
イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩をカルシウム化合物の表面に吸着させるには、イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の希薄な溶液中にカルシウム化合物の微結晶を浸漬処理する。イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩は、カルシウム化合物の微結晶表面に化学的に吸着すると考えられる。
吸着操作については後に詳細に説明する。
【0010】
カルシウム化合物としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が好ましく用いられる。これらは1種を単独で使用しても2種を同時に使用してもよい。1種を単独で使用する場合、リン酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0011】
リン酸カルシウムとしては、ヒドロキシアパタイト、α-リン酸三カルシウム、β-リン酸三カルシウム、γ-リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、非晶質リン酸カルシウムが好ましく、ヒドロキシアパタイトがより好ましい。これらは1種を単独で使用しても2種以上を同時に使用してもよい。
【0012】
本発明のセメント用材料Iに用いるヒドロキシアパタイト(以下、「HAp」ともいう。)の製造方法には特に限定はなく、いかなる方法で製造したものであってもよい。ヒドロキシアパタイトの製造方法としては、例えば、乾式法、半乾式法、湿式法等が挙げられる。
本発明で用いるヒドロキシアパタイトの微結晶を湿式法で製造する場合について説明する。予めアルカリ性に調整した硝酸カルシウム等のカルシウムイオンを含む溶液に、予め弱アルカリ性に調整したリン酸アンモニウム等のリン酸イオンを含む溶液を滴下し、アルカリ性を保ちながら熟成すると、ゲル状のヒドロキシアパタイトが得られる。溶液のpHを調整するためのアルカリとしては、アンモニアが好ましく用いられる。このゲル状のヒドロキシアパタイトを加熱することによりヒドロキシアパタイトの微結晶が得られる。空気中の炭酸ガスがヒドロキシアパタイトの微結晶に取り込まれるのを防ぐために、一連の操作は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。この方法では、用いる材料の純度が、得られるヒドロキシアパタイトの微結晶の純度に反映される。従って、高純度の材料を用いれば、高純度のヒドロキシアパタイトの微結晶を得ることができる。
【0013】
本発明のセメント用材料Iに用いるヒドロキシアパタイトの微結晶の平均粒径は、1~500μmであることが好ましく、10~250μmであることがより好ましく、10~50μmであることが特に好ましい。
【0014】
イノシトールリン酸としては、イノシトール一リン酸、イノシトールニリン酸、イノシトール三リン酸、イノシトール四リン酸、イノシトール五リン酸、フィチン酸(イノシトール六リン酸)が挙げられる。なお、イノシトール六リン酸は通常フィチン酸と呼ばれている。
イノシトールリン酸又はフィチン酸の塩としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
これらの中でも、フィチン酸、フィチン酸ナトリウム塩、又はフィチン酸カリウム塩が好ましく、フィチン酸ナトリウム塩又はフィチン酸カリウム塩がより好ましく用いられる。
なお、フィチン酸ナトリウム塩には、例えばフィチン酸ナトリウム塩38水和物、フィチン酸ナトリウム塩47水和物、フィチン酸ナトリウム塩12水和物等のように、結晶水含量の異なる数種が知られているが、いずれも好ましく用いることができる。
【0015】
本発明のセメント用材料Iに用いるフィチン酸(以下、「IP」ともいう。)又はフィチン酸アルカリ金属塩の製造方法には特に限定はなく、いかなる方法で製造したものであってもよい。例えば、フィチン酸ナトリウム塩(以下、「IPNa」ともいう。)は、脱脂した植物の種子粉末を希塩酸で抽出し、抽出液から不溶性の銅塩、鉄塩などにして沈殿させ精製した後、ナトリウム塩に変え、アルコールを加えて沈殿させることにより得ることができる。
【0016】
上記カルシウム化合物の微結晶を上記イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の水溶液と混合して微結晶表面に吸着させた後に、微結晶を分離し、乾燥することによりイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩をカルシウム化合物に吸着させた微結晶(セメント用材料I)を得ることができる。
【0017】
イノシトールリン酸又はフィチン酸の水溶液を用いる場合は、前記水溶液に予めアルカリ水溶液を添加し、好ましくはpH6~11、より好ましくはpH6~8に調整しておくことが好ましい。pHの調整に用いるアルカリ水溶液は、特に限定されず、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。
【0018】
イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の水溶液の濃度としては、0.001~0.25Mが好ましく、0.001~0.05Mがより好ましい。
イノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩とカルシウム化合物のモル比としては、0.001~0.1が好ましく、0.001~0.05がより好ましい。
【0019】
吸着させる方法に特に限定はなく、ヒドロキシアパタイト等の微結晶を浸漬したイノシトールリン酸又はフィチン酸の塩の水溶液を、適宜、撹拌ないし振とうして吸着を完結させた後に静置し、目的の微結晶を分離する。混合温度は、20~90℃が好ましく、20~40℃がより好ましい。また、混合時間は、2~24時間が好ましく、2~5時間がより好ましい。フィチン酸等を吸着させたヒドロキシアパタイトは、分離して乾燥して使用することが好ましい。
【0020】
乾燥温度は、4~80℃が好ましく、4~40℃がより好ましい。また、乾燥時間は、12~48時間が好ましく、12~24時間がより好ましい。
【0021】
上記の方法で調製したセメント用材料Iは、カルシウム化合物の表面にイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩が吸着した微結晶(以下、「IPHAp」ともいう。)からなる。特に、ヒドロキシアパタイト微結晶へのイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の吸着は、その吸着等温線のラングミュアープロットから単分子層均一吸着に近似できる。
【0022】
また、本発明では上記のセメント用材料Iとは異なり、ヒドロキシアパタイトの微結晶とイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の単なる混合物をセメント用材料(以下、「セメント用材料II」ともいう。)として使用することもできる。なお、ここでいう混合物とは、ヒドロキシアパタイトの微結晶とイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の微粉末が単に機械的に混ぜ合わされたことを意味する。セメント用材料IIは、ヒドロキシアパタイトの微結晶及びイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩の微粉末以外にも、必要に応じて第三成分を含むことができる。
【0023】
セメント用材料IIにおいて、ヒドロキシアパタイトとイノシトールリン酸若しくはフィチン酸又はそれらの塩は、セメント用材料Iと同じものを用いることができる。
【0024】
次に、本発明のセメントについて説明する。
本発明のセメント用材料I又はIIを水性溶媒中で混練してペーストにして使用する。水性溶媒としては主として水が用いられるが、エタノール等の水と混和する溶媒を添加したものも用いることができる。
混練したセメント用材料は骨欠損部等の患部に充填し、硬化させることによりセメントを調製することができる。セメント用材料としては、セメント用材料IIよりもセメント用材料Iが好ましく用いられる。得られる強度および硬化時間の短かさの点で、セメント用材料Iが優れている。
【0025】
混練時間としては、3分以内に混練から充填までの操作を済ませることが好ましい。水性溶媒のpHは、pH6~11であることが好ましく、pH6~8の水であることがより好ましい。
セメント用材料と水性溶媒の重量比は、特に限定されないが、1/0.50~1/0.80であることが好ましい。
【0026】
本発明のセメント用材料を水性溶媒中で混練する際に、適用する疾患に応じて、でんぷん、グリコサミノグリカン、アルギン酸、キチン、キトサン、ヘパリン等の多糖類、コラーゲン、ゼラチン及びこれらの誘導体等のタンパク質、抗リウマチ治療剤、抗炎症剤、抗生物質、抗腫瘍剤、骨誘導因子、レチノイン酸、レチノイン酸誘導体等の生理活性物質を添加してもよい。
【0027】
上記ペーストを骨欠損部等の患部に充填すると、2~3分で硬化し始め、約10分以内で硬化し、セメントになる。セメントは新生骨に置換され、生体硬組織と一体化する。
本発明のセメントは、従来のアパタイトセメントとは異なり硬化時に酸・塩基反応が起こらないので、硬化前後でpH変化がない。したがって、本発明のセメントは炎症反応を惹起する可能性が少ない。
【0028】
本発明のセメントは、硬化時間が短いので、治療時間を短縮することができ、患者の苦痛を低減することができる。本発明のセメントは骨折、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ等の治療に用いることができる。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
(1)ヒドロキシアパタイトの分級
ヒドロキシアパタイト(太平化学製)を目開き150μm、75μm、53μm及び37μmのふるいにより以下の5段階に分級した。
【0030】
【表1】
JP0004595080B2_000002t.gif

【0031】
(2)セメント用材料I(IPHAp)の調製
上記で得られた分級済のヒドロキシアパタイト2.5g(2.49mmol)にフィチン酸水溶液50mL(3.0mM、pH7.3、0.15mmol)を加え、5時間振とうした。吸引濾過によりIPHApを濾取し、減圧下24時間乾燥した。
【0032】
(3)フィチン酸の飽和吸着量の測定
種々の濃度に調製したフィチン酸水溶液のpHを水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調整し、それらの溶液10mLにヒドロキシアパタイト(比表面積35m/g)をそれぞれ0.3g添加し、振とう型インキュベーターを用いて(37℃、100回/分)、インキュベートした。その後、固液分離して、上清中のリン濃度をICPで測定してヒドロキシアパタイトに対するフィチン酸の吸着量を算出した。また、ラングミュアプロットからヒドロキシアパタイトに対するフィチン酸の飽和吸着量を求めたところ、15mg/gであった。
【0033】
<実施例2>
実施例1で調製したIPHApに水を、固液比1/0.60(重量比)で混合し、1分間混練後、成形器に充填した。一軸加圧成形(0.8MPa)後、1日間静置することにより硬化させ、直径5mm、高さ7~8mmの円柱状のセメントを調製した。
硬化したセメント(IPHAC)の圧縮強度を評価した。
圧縮強度は安田精機製作所製強度試験機を用いて、クロスヘッドスピード0.5mm/minで測定し、破壊時の最大荷重をその試験片の断面積で割ることにより算出した。
また、フィチン酸を吸着させていないヒドロキシアパタイト(太平化学製、未分級)(HAp)を上記と同様の操作で硬化させ、セメント(HAC)を調製した。セメント(HAC)の圧縮強度を測定し、対照とした。
結果を下表2に示す。
【0034】
【表2】
JP0004595080B2_000003t.gif
IPHAp-Eを硬化させたセメントIPHAC-Eの圧縮強度が一番大きく、対照のHACの約3倍の強度を示した。
【0035】
<実施例3>
(圧縮強度に及ぼす固液比の影響)
実施例1で調製したIPHApに水を、固液比1/0.50~1/1.20で混合し、1分間混練後、成形器に充填した。一軸加圧成形(0.8MPa)後、1日間静置することにより硬化させ、直径5mm、高さ7~8mmの円柱状のセメントを調製した。硬化したセメント(IPHAC)の圧縮強度を実施例2と同様に評価した。
IPHAC-A及びIPHAC-Eについて、圧縮強度が一番大きいのは、固液比1/0.60のときであり、そのときの圧縮強度は6.8MPaであった。
【0036】
<実施例4>
実施例1で調製したIPHAp-Eに水を、固液比1/0.60(重量比)で混合し、1分間混練後、ステンレス製の型(直径1cm及び高さ1.5cmの円柱状)に充填し、インキュベーター(37℃、湿度100%)内に静置した。荷重200g、直径2mmのビガー針を用いて測定し、圧痕がつかなくなるまでの時間を硬化時間とした。
また対照として、ヒドロキシアパタイト(HAp)を用いて上記と同様の操作(固液比1/1.00)を行った。
対照のHACでは、完全に硬化するまで約90分かかったのに対し、IPHAC-Eでは、約10分で完全に硬化した。
【0037】
<実施例5>
(1)生体擬似体液の調製
約700mLの蒸留水に、塩化ナトリウム(7.996g)、炭酸水素ナトリウム(0.350g)、塩化カリウム(0.224g)、リン酸水素カリウム三水和物(0.228g)、塩化マグネシウム六水和物(0.305g)、1M塩酸(40mL)、塩化カルシウム(0.278g)、硫酸ナトリウム(0.071g)及びトリスヒドロキシメチルアミノメタン(6.057g)を順次加えた。1M塩酸を用いてpHを7.40に調整した後に、蒸留水を加え、全液量を正確に1000mLとした。
(2)生体擬似体液浸漬実験
実施例2で調製したセメント(IPHAC-E)を生体擬似体液中に浸漬し、セメントの圧縮強度及び生体擬似体液中のカルシウムイオン若しくはリンイオンのイオン濃度を経時的に測定した。
IPHAC-Eを浸漬した生体擬似体液中のカルシウムイオン若しくはリンイオンのイオン濃度は経時的に減少し、6日後以降一定のイオン濃度になった。この結果は、セメント(IPHAC-E)上にリン酸カルシウムが析出していることを示している。擬似体液中のカルシウムイオン及びリン酸イオン濃度の経時変化の割合から考えると、アパタイトが析出しているものと推察される。
また、生体擬似体液に浸漬してから30日後におけるセメントの圧縮強度を測定したところ、IPHAC-EはHACの約5倍の圧縮強度を示した。
【0038】
<実施例6>
骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)(6×10個)をポリスチレンプレート中に播種し、1日間培養した。前記ポリスチレンプレート中にトランズウェルを設置し、実施例2で調製したセメント(IPHAC-E)を投入し、2、4、6及び8日後の細胞数を数えた。
細胞数は経時的に増加し、6日後にはプラトーに達した。この結果から、本発明のセメントは良好な生体適合性を有することがわかった。
【0039】
<実施例7>
ヒドロキシアパタイト(太平化学製、HAp-100)1gに、0.05Mフィチン酸12ナトリウム塩水和物(IPNa)の水溶液(pH10.7~10.8、1mL)を添加(固液比1/1.00)後、混練し、直径10mmの金型に詰めて10MPaの圧力で押した。室温で1日間放置したところ、セメントは完全に硬化し、圧縮強度も良好であった。
【0040】
<実施例8>
ヒドロキシアパタイト(太平化学製、HAp-100)1gに、0.01Mフィチン酸12ナトリウム塩水和物(IPNa)の水溶液(pH10.7~10.8、1mL)を添加(固液比1/1.00)後、混練し、直径10mmの金型に詰めて10MPaの圧力で押した。室温で1日間放置したところ、セメントは完全に硬化し、圧縮強度も良好であった。