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明細書 :海藻高温抽出組成物、海藻熱処理組成物及びそれらの製造方法並びに海藻高温抽出組成物又は海藻熱処理組成物を含む調味料、化粧料、食品及び健康食品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4431711号 (P4431711)
公開番号 特開2006-320320 (P2006-320320A)
登録日 平成22年1月8日(2010.1.8)
発行日 平成22年3月17日(2010.3.17)
公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
発明の名称または考案の名称 海藻高温抽出組成物、海藻熱処理組成物及びそれらの製造方法並びに海藻高温抽出組成物又は海藻熱処理組成物を含む調味料、化粧料、食品及び健康食品
国際特許分類 A23L   1/337       (2006.01)
A23L   1/221       (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A61K   8/73        (2006.01)
A61K   8/97        (2006.01)
A61K  36/02        (2006.01)
A61Q  19/10        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
FI A23L 1/337 Z
A23L 1/221 C
A23L 1/30 B
A61K 8/73
A61K 8/97
A61K 35/80
A61Q 19/10
A61P 9/12
請求項の数または発明の数 23
全頁数 33
出願番号 特願2006-119090 (P2006-119090)
出願日 平成18年4月24日(2006.4.24)
優先権出願番号 2005124739
優先日 平成17年4月22日(2005.4.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年4月17日(2009.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
発明者または考案者 【氏名】室田 明彦
【氏名】山ノ井 孝
【氏名】大隅 賢二
【氏名】▲かつらや▼ 要
【氏名】井上 玲子
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100101719、【弁理士】、【氏名又は名称】野口 恭弘
審査官 【審査官】冨士 良宏
参考文献・文献 特開2000-239301(JP,A)
特開平10-265399(JP,A)
特開平01-157363(JP,A)
特開2001-078706(JP,A)
特開2004-143112(JP,A)
特開2001-078705(JP,A)
特開平11-113529(JP,A)
特開平03-285658(JP,A)
特開昭58-149666(JP,A)
調査した分野 A23L 1/22-308
A23L 1/337
A61K 8/00-99
A61K 35/78-84
A61Q 1/00-99/00

特許請求の範囲 【請求項1】
海藻類を、
二酸化炭素の共存する水性媒体中で、
温度105~200℃、圧力0.10~5MPaにおいて加熱処理する工程を含むことを特徴とする
海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項2】
海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を飽和させる工程、及び、
温度110~130℃において0.5~5時間加熱処理する工程を含むことを特徴とする
海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項3】
海藻類をpH1~13の水性媒体中で30~100℃にて加熱する前処理工程を更に含む、請求項1又は2に記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項4】
可溶性成分が仕込量の40~100重量%になるまで加熱処理する請求項1~3いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項5】
加熱処理する工程の後に、固形分を分離する工程、及び、可溶性成分を濃縮又は固化する工程を含む請求項1~4いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項6】
海藻類がコンブ類、ワカメ類及びモズク類よりなる群から選ばれる請求項1~5いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項7】
該海藻高温抽出組成物がアルギン酸塩類、低分子量化アルギン酸塩類及びアルギン酸塩オリゴ糖類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1~6いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項8】
海藻中に含まれるタンパク質が低分子量化され、低分子量化タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸等に変換される請求項1~7いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項9】
加熱処理する工程の後に中和工程を含まない、請求項1~8いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項10】
加熱処理する工程の後に脱塩工程を含まない、請求項1~9いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項11】
二酸化炭素以外の無機酸及び有機酸が共存しない水性媒体中で加熱処理する、請求項1~10いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法。
【請求項12】
海藻類を、
二酸化炭素の共存する水性媒体中で、
温度50~200℃、圧力が常圧~5MPaにおいて加熱処理する工程を含むことを特徴とする
海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項13】
海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を注入する工程、及び、
温度80~180℃において0.5~5時間加熱処理する工程を含むことを特徴とする
海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項14】
温度105~150℃において加熱処理する請求項12又は13に記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項15】
海藻類をpH1~13の水性媒体中で30~100℃にて加熱する前処理工程を更に含む、請求項14に記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項16】
可溶性成分が仕込量の40~100重量%になるまで加熱処理する請求項1215いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項17】
加熱処理する工程の後に、濃縮する工程及び/又は固化する工程を含む請求項1216いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項18】
海藻類がコンブ類、ワカメ類及びモズク類よりなる群から選ばれる請求項1217いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項19】
該海藻熱処理組成物がアルギン酸塩類、低分子量化アルギン酸塩類及びアルギン酸塩オリゴ糖類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1218いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項20】
海藻中に含まれるタンパク質が低分子量化され、低分子量化タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸等に変換される請求項1219いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項21】
加熱処理する工程の後に中和工程を含まない、請求項12~20いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項22】
加熱処理する工程の後に脱塩工程を含まない、請求項12~21いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
【請求項23】
二酸化炭素以外の無機酸及び有機酸が共存しない水性媒体中で加熱処理する、請求項12~22いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類の高温抽出組成物、海藻熱処理組成物及びそれらの製造方法並びに得られた海藻高温抽出組成物又は海藻熱処理組成物を含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食文化の発展に伴ってより風味のある美味しい食事が要望され、食材の種類が多くなるとともに、その料理方法も多様化してきている。とくに各種料理に特徴ある風味、旨み及びコク等の味付けのために種々な食材のエキス調味料が実用されており、昆布等の海藻のエキス調味料が例示できる。
また、海藻のエキスはその機能性も注目されており、例えば、昆布の主要な細胞間粘質多糖類であるアルギン酸、アルギン酸塩やその誘導体は、血圧降下作用等を有することが知られている。また、フコイダンやその誘導体は抗ガン作用等を有すること、ラミナランやその誘導体は免疫力の増強作用等を有することが知られており、これらは広く研究がなされている。一方、多糖を加水分解して得られる少糖やオリゴ糖は、抗腫瘍作用、免疫活性化、コレステロール低減、美白効果など種々の生理活性を有することから、特定保健用食品、化粧品、医薬品などの素材としても注目されている。
特に、昆布に代表される海藻類は、高血圧予防または高血圧の改善に貢献する健康食品として知られている。高血圧に対する予防効果または改善効果は、昆布等に含まれるアルギン酸塩やオリゴペプチド・アミノ酸等の作用であると考えられている。褐藻類である昆布等に含有されるアミノ酸の一種であるラミニンには、一過性に血圧を下げる作用があることが知られている。
【0003】
海藻類からそのエキスを抽出する方法については、従来から種々の方法が検討されている。例えば、熱水で抽出する方法(特許文献1~3参照)、酸性溶液で抽出する方法(特許文献4参照)、含水有機溶媒で抽出する方法(特許文献5参照)、超音波処理で細胞破砕して抽出する方法(特許文献6参照)等がある。
さらに抽出したエキスの濃縮物や、乾燥加工し粉末状にしてパック等に詰めて保存や輸送を容易にすることも知られている。
しかしながら、上述した抽出法は、抽出に時間がかかり、さらに熱水抽出物等は、そのままでは微生物などが繁殖しやすく長期間保存できないという問題点がある。また、得られる抽出物の収率が低く、大量の産業廃棄物(残渣)が生じることも問題となっていた。
また、上述の抽出物では抽出物の粘度が高いことや、その乾燥物を水に溶解させると、ヌメリ感が強く、特に調味料とした場合に問題があった。
【0004】

【特許文献1】特公昭50-11980号公報
【特許文献2】特開平01-157363号公報
【特許文献3】特開平11-113529号公報
【特許文献4】特公昭52-48184号公報
【特許文献5】特開昭62-294068号公報
【特許文献6】特開昭58-149666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記従来の問題点を解決することである。本発明の課題は、より短時間でより簡便な方法で海藻に含まれる有効成分を抽出する、海藻高温抽出組成物の製造方法を提供することである。さらに、本発明の他の課題は抽出動作の制御が容易で、得られる海藻抽出組成物の収率に優れた海藻高温抽出組成物の製造方法を提供することである。
さらに、上記の製造方法により得られた海藻高温抽出組成物を調味料を含む食品全般、化粧料及び健康食品等に応用して利用することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、海藻類を原料として、廃棄物の少ない海藻熱処理組成物の製造方法を提供することである。本発明の製造方法により得られた海藻熱処理組成物を使用した、調味料、食品、健康食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<3>~<5>に記載された手段により達成された。好ましい実施態様である<2>、<6>~<16>と共に以下に記載する。さらに、本発明の上記課題は以下の<17>、<19>、<20>に記載された手段により達成された好ましい実施態様である<18>、<21>~<32>と共に以下に記載する。
<1>海藻類を、pH1~13の水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法。
ここで「高温」とは、加圧下に105℃以上200℃以下の温度を意味する。また「高温抽出」とは、105~200℃において、単に海藻のうまみ成分を溶かし出すことのみならず、制御した酸性、中性又はアルカリ性の条件下において、加水分解を伴って海藻を構成する成分を低分子化し、溶出することを意味する。「高温抽出組成物」とは、上記の高温抽出操作により得られる水溶性成分の混合物をいい、水溶液、その濃縮物又は乾燥物として利用できる。
<2>pH2~11の水性媒体中で、温度105~180℃において加熱処理する<1>に記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<3>海藻類を二酸化炭素の共存する水性媒体中で、温度105~200℃において抽出処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、
<4>海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を飽和させる工程、温度110~130℃において0.5~5時間加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、
<5>海藻類をアンモニア水の共存する水性媒体中で、温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、
<6>海藻類をpH1~13の水性媒体中で30~100℃にて加熱する前処理工程を更に含む、<1>~<5>いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<7>可溶性成分が仕込量の40~100重量%になるまで加熱処理する<1>~<6>いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<8>加熱処理する工程の後に、固形分を分離する工程、及び、可溶性成分を濃縮又は固化する工程を含む<1>~<7>いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<9>海藻類がコンブ類、ワカメ類及びモズク類よりなる群から選ばれる<1>~<8>いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<10>該海藻高温抽出組成物がアルギン酸塩類、低分子量化アルギン酸塩類及びアルギン酸塩オリゴ糖類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含む<1>~<9>いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<11>海藻中に含まれるタンパク質が低分子量化され、低分子量化タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸等に変換される<1>~<10>いずれか1つに記載の海藻高温抽出組成物の製造方法、
<12><1>~<11>いずれか1つに記載の製造方法により得られた海藻高温抽出組成物、
<13><12>に記載の海藻高温抽出組成物を含む調味料、
<14><12>に記載の海藻高温抽出組成物を含む化粧料、
<15><12>に記載の海藻高温抽出組成物を含む食品、
<16><12>に記載の海藻高温抽出組成物を含む健康食品、
<17>海藻類を、pH1~13の水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、
<18>pH2~11の水性媒体中で、温度80~180℃において加熱処理する<17>に記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<19>海藻類を、二酸化炭素の共存する水性媒体中で、温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、
<20>海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を注入工程、温度80~180℃において0.5~5時間加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、
<21>温度105~200℃において加熱処理する<17>~<20>いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<22>海藻類をpH1~13の水性媒体中で30~100℃にて加熱する前処理工程を更に含む、<21>に記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<23>可溶性成分が仕込量の40~100重量%になるまで加熱処理する<17>~<22>いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法。
<24>加熱処理する工程の後に、濃縮する工程及び/又は固化する工程を含む<17>~<23>いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<25>海藻類がコンブ類、ワカメ類及びモズク類よりなる群から選ばれる<17>~<24>いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<26>該海藻熱処理組成物がアルギン酸塩類、低分子量化アルギン酸塩類及びアルギン酸塩オリゴ糖類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含む<17>~<25>いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<27>海藻中に含まれるタンパク質が低分子量化され、低分子量化タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸等に変換される<17>~<26>いずれか1つに記載の海藻熱処理組成物の製造方法、
<28><17>~<27>いずれか1つに記載の製造方法により得られた海藻熱処理組成物、
<29><28>に記載の海藻熱処理組成物を含む調味料、
<30><28>に記載の海藻熱処理組成物を含む食品、
<31><28>に記載の海藻熱処理組成物を含む健康食品、
<32><28>に記載の海藻熱処理組成物を含む血圧降下機能を有する健康食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加圧下で105℃以上に加熱することにより、簡便な方法で海藻を処理して、海藻高温抽出組成物を短時間で製造することができる。さらに、高温抽出の操作を容易に制御でき、海藻構成成分の収率に優れる。
さらに、上記の製造方法により得られた海藻高温抽出組成物は調味料を含む食品全般、化粧料または健康食品等に添加して効果的に利用することが可能である。
【0009】
また、本発明によれば、海藻類を原料とした、廃棄物の少ない海藻熱処理組成物の製造方法を提供することができる。本発明の製造方法により得られた海藻熱処理組成物を使用した、調味料を含む食品全般、健康食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の海藻高温抽出組成物の製造方法は、海藻類を、pH1~13の水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
本発明の海藻高温抽出組成物の製造方法では、加圧下において加熱処理する工程を含むことから、加水分解反応を伴うものと考えられる。海藻類に含まれるタンパク質、多糖類、核酸等の加水分解反応が生じると考えられる。
本発明の製造方法により得られた海藻高温抽出組成物は、オリゴ糖、オリゴペプチド、アミノ酸等を含み、ミネラルに富んだ組成物である。また、本発明の製造方法により得られた海藻高温抽出組成物は、加水分解反応によりコンブ等に含まれる多糖類例えば増粘性を示すアルギン酸などが低分子化(分子量で約40万以下)することによりヌメリ感を減少させること、または全く感じさせない程度にすることができる。
【0011】
本発明の海藻高温抽出組成物の製造方法は、具体的には、(I)上記海藻類をpH1以上5未満の酸性水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理することを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、(II)上記海藻類をpH5以上9未満の中性水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理することを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、及び(III)上記海藻類をpH9以上13以下のアルカリ性水性媒体中で温度105~200℃において加水分解することを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、である。これらの実施態様のうち、(I)及び(II)が好ましく、(I)がより好ましい。
【0012】
本発明において海藻類とは、海中に生育する食用等の有用な植物をいい、具体的には、アオノリ類、アオサ類、ミル類等の緑藻類、ワカメ類、コンブ類、ヒジキ類、モズク類、ホンダワラ類等の褐藻類、アマノリ類、テングサ類等の紅藻類、クダモ類、ヒゲモ類等の藍藻類などが例示できる。これらの中でも、褐藻類が好ましく、特に、ワカメ類、コンブ類及びモズク類よりなる群から選ばれる少なくとも1つの海藻類を使用することが好ましい。
コンブ類は褐藻類コンブ属藻類の総称でマコンブ、リシリコンブ、ナガコンブ、ガゴメを例示できる。
海藻類は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、海藻はその全体を使用することもできるし、一部分のみを使用することもできる。具体的には、ワカメの根本の胞子嚢であるメカブを使用することが例示できる。
本発明においては、コンブ、ワカメを好ましく用いることができる。コンブの中でも、特にガゴメが好ましい。また、ワカメのメカブを使用することも好ましい。
【0013】
海藻類は、原藻のままでも使用できるが、予め細片状または粉末状に加工しておくことが好ましく、予め乾燥・破粉された海藻類を使用することが特に好ましい。このような海藻類を使用することにより、水性媒体中への分散性が向上すると共に、抽出効率が向上するので好ましい。
【0014】
上記<1>に記載の水性媒体中での加熱処理工程は、pH1~13の水性媒体中で実施する。
本発明において、水素イオン濃度とは、加熱処理前の室温(25℃)又は室温近傍(30℃)における水素イオン濃度をいう。
加熱処理物が中性の場合には、加熱処理中の水素イオン濃度はほぼ一定に維持されると考えられる。
また、本発明において水性媒体とは、水または水を50重量%以上含み、水に水混和性の有機溶媒が混合されていても良い混合溶媒を意味する。混合溶媒における水の混合割合は、好ましくは60~100重量%であり、より好ましくは、70~100重量%である。水混和性の有機溶媒としては、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、酢酸が例示でき、エチルアルコール及び酢酸が好ましい。水性溶媒として、最も好ましくは、水であり、軟水又はイオン交換水が好ましい。
【0015】
上記<1>に記載の加熱処理工程において、加熱温度は、105℃以上200℃以下(「105~200℃」とも記載する。本発明において、以下同じである。)である。
加熱温度が105℃未満であると、得られる海藻高温抽出組成物の収率が低下する。また、本発明の特徴である加水分解反応が十分に行われず、低粘度の海藻高温抽出組成物を得ることができない。また、加熱温度が200℃より高いと、海藻類に含まれるアミノ酸成分と糖類がメイラード反応を生じ、得られる海藻高温抽出組成物の風味が変化すると共に、褐色に変色する。
【0016】
前記の加熱処理は、0.1~10MPa(1.02~102kgf/cm2)の圧力で実施することが好ましく、0.1~5.0MPa(1.02~51kgf/cm2)の圧力にすることがより好ましく、0.1~1MPa(1.02~10.2kgf/cm2)とすることがより好ましい。
圧力を上記範囲内とすることにより、収率が向上し、固形分(残渣)が減少するので好ましい。また、固形分(残渣)が少なくなり、産業廃棄物が減少し、コスト的低減が期待できる。
【0017】
水溶媒のみを用いる加熱処理の場合の反応圧力は、反応温度での水の蒸気圧に依存する。たとえば反応温度200℃であれば、水の蒸気圧が約1.6MPaとなるので、反応圧力は約1.6MPaが必要となる。また、圧力容器は、この圧力に十分耐えうる耐圧容器とする必要がある。
なお、二酸化炭素加圧下における反応圧力については後述する。
【0018】
上記の水性媒体中又は水中での加熱処理は、室温において水性媒体を塩酸、硫酸等の鉱酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、又は炭酸(二酸化炭素)等により酸性側に、アンモニア水、水酸化ナトリウム、硝子ビーズ等によりアルカリ側に調整した後、海藻類と混合することが好ましい。
【0019】
上記<1>に記載の製造方法においては、加熱処理時間は、加熱温度との関係で、適宜選択できる。連続的な製造工程では、滞留時間が1~180分であることが好ましく、また、バッチ式の製造工程では、反応時間が0.5~10時間であることが好ましく、1~4時間であることがより好ましい。
加熱処理時間が上記範囲内であると、得られる海藻高温抽出組成物の収率が良好であると共に、短時間で海藻高温抽出組成物を得ることができるので好ましい。
【0020】
上記<1>に記載の製造方法は、以下の3態様に大別される。
すなわち、
(A)上記の海藻類をpH1以上5未満の酸性水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、
(B)上記の海藻類をpH5以上9未満の中性水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、及び
(C)上記の海藻類をpH9以上13以下のアルカリ性水性媒体中で温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法、
である。これらの実施態様のうち、(A)及び(C)が好ましく、(A)がより好ましい。
【0021】
上記<2>に記載の製造方法においては、pH2~11の水性媒体中で、温度105~180℃において海藻類の加熱処理を行う。
【0022】
上記<3>及び<4>に記載の水性媒体中での製造方法は、二酸化炭素の共存下で行う。
二酸化炭素共存下で加熱処理すると、得られる高温抽出組成物の収率が向上すると共に、加熱処理を短時間とすることができるので好ましい。二酸化炭素の共存下で加熱処理する高温抽出組成物の製造方法では、加熱処理後に中和工程や、脱塩工程が不要となる。従って、高温抽出組成物の製造工程を極めて簡素化することができるので特に好ましい。本発明の製造方法は、強い酸性条件を使用しない加水分解反応を伴うものであり、圧力容器の腐食等を回避できる。
さらに、二酸化炭素の共存下で加熱することにより、加水分解反応が良好に進行し、得られる高温抽出組成物の粘度を低下することができるので好ましい。また、得られた高温抽出組成物を固形化し、水に溶解したときのヌメリ感が減少するので好ましい。
【0023】
二酸化炭素の共存下での加熱処理する工程には、具体的に以下の操作が例示される。
I.処理装置中に原料海藻及び水を仕込んだ後、二酸化炭素ボンベ等により二酸化炭素を注入し、室温(25℃)又は室温より少し高い温度(30℃又は35℃)及び圧力下で二酸化炭素を注入し、まずバブリング操作により溶存酸素を脱気した後に、要すれば二酸化炭素を飽和させ、その後に加熱処理する。又は予め設定した所定の水素イオン濃度に調整してから加熱処理する、
II.処理装置中に原料海藻及び水を仕込んだ後、これらの混合物を低温に保ち(好ましくは0~25℃、より好ましくは5~15℃)、二酸化炭素を溶液中に吹き込み、要すれば常圧下又は加圧下で二酸化炭素を飽和させた後、加熱処理する、
III.処理装置中に原料海藻及び水を仕込んだ後、これらの混合物中にドライアイス(固体の二酸化炭素)を適量投入し、ドライアイス存在下で圧力容器を密閉し、所定の温度及び加圧下で要すれば二酸化炭素を水に飽和させてから加熱する。
【0024】
上記II.記載の水性媒体中での加水分解反応は、加熱処理前の海藻類を含む水性媒体の室温(25℃)におけるpHを2~6に調整することが好ましく、pHを3~5に調整することがより好ましい。
【0025】
二酸化炭素の共存下で行う海藻高温抽出組成物の製造方法において、二酸化炭素の併用量は、水性媒体の総量に対して、重量比で好ましくは0.1~150重量%であり、より好ましくは0.8~70重量%、さらに好ましくは1.0~10重量%である。
【0026】
上記<3>記載の海藻高温抽出組成物の製造方法において、加熱温度は、105℃以上200℃以下であり、105~180℃が好ましく、105~140℃がより好ましい。加熱温度が105℃未満であると、抽出効率が低下する。また、本発明の特徴である加水分解反応が十分に行われず、低粘度の海藻高温抽出組成物を得ることができない。また、加熱温度が200℃より高いと、海藻類に含まれるアミノ酸成分と糖類がメイラード反応を生じ、得られる海藻高温抽出組成物の味が変化すると共に、褐色に変色する。
前記の加熱処理を行うためには、0.10~10MPa(1.0~102kgf/cm2)の圧力にすることが好ましく、0.10~5MPa(1.0~51kgf/cm2)の圧力がより好ましく、0.10~0.6MPa(1.0~6.1kgf/cm2)の圧力であることがさらに好ましい。
【0027】
加熱処理時間は、加熱温度との関係で、適宜選択できる。連続的な製造工程では、滞留時間が1~80分であることが好ましく、また、バッチ式の製造工程では、反応時間が0.5~10時間であることが好ましく、1~4時間であることがより好ましい。
【0028】
上記の方法の中でも、海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を飽和させ、温度110~130℃において、0.5~5時間加熱処理することが好ましい。
【0029】
二酸化炭素が共存するかどうかを問わず水性媒体中での海藻類の加熱処理に用いる装置は、バッチ式と連続式に大別できる。
本発明に使用する圧力容器は、特に限定されず、公知の圧力容器を使用することができる。連続式圧力容器、バッチ式圧力容器のいずれも使用することができるが、バッチ式圧力容器を使用することが好ましい。
【0030】
二酸化炭素の共存する水性媒体中での加熱処理工程としては、具体的には以下の圧力容器を用いた加熱処理工程が例示できる。
まずN2やCO2によるバブリング操作により圧力容器中の反応媒体に溶存する酸素を脱気することが好ましい。
二酸化炭素の共存する水性媒体中での加熱処理は、サイホン式炭酸ガスボンベから、あらかじめ3℃以下に保った冷却器を経由して、ポンプにより二酸化炭素を圧力容器に注入し、注入後、水性媒体中の二酸化炭素の溶解速度が高くなるように撹拌しながら放置する方法が例示できる。二酸化炭素の濃度が十分に高くなったら、圧力容器の加熱を開始する。加熱後は圧力の過度な上昇を抑える為に、気化した二酸化炭素を放出し、圧力調整を行うこともできる。
また、圧力容器に入れる前に十分に二酸化炭素を溶解させた水性媒体を使用することもできる。さらに、加熱処理の前にドライアイスを投入して、圧力容器内の二酸化炭素量を増加させることも可能である。
【0031】
上記<5>記載の発明は、海藻類を、アンモニア水の共存する水性媒体中で、温度105~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻高温抽出組成物の製造方法であり、加熱温度は105~180℃がより好ましい。加熱温度が105℃未満であると、抽出効率が低下する。また、本発明の特徴である加水分解反応が十分に行われず、低粘度の海藻高温抽出組成物を得ることができない。また、加熱温度が200℃より高いと、海藻類に含まれるアミノ酸成分と糖類がメイラード反応を生じ、得られる海藻高温抽出組成物の味が変化すると共に、褐色に変色する。
使用するアンモニア水(NH4OH)の濃度は、0.01~15重量%、好ましくは0.04~10重量%、より好ましくは0.1~2重量%である。
アンモニア水を使用する<5>に記載の発明は、強いアルカリ性条件を使用しない加熱処理であるため、圧力容器の腐蝕等を回避できるので好ましい。
【0032】
上記<1>~<5>いずれか1つに記載の発明において、可溶性成分が仕込量の40~100重量%となるまで加熱処理を行うことが好ましい。40~90%であることがより好ましく、50~80%であることが更に好ましい。
可溶性成分を上記範囲内とすることにより、昆布本来の味覚及び/又は風味がより鮮明になり、かつグルタミン酸を主成分とするうまみ成分と、ナトリウム及びカリウム等のミネラルのバランスなどが最適となるので好ましい。
さらに、非可溶性成分(固形分)を廃棄する場合、廃棄物を少なくすることができるので好ましい。
【0033】
また、105~200℃で加熱処理を行う前に、海藻類を、pH1~13の水性媒体中で30~100℃にて加熱すること(以下、「可溶化処理」ともいう。)も好ましい実施態様である。可溶化処理を行うことにより、海藻類が膨潤及び/又は可溶化されるので、このような可溶化処理を加圧加熱処理前に行うことにより、加熱処理溶液が均一化され、再現性の良い海藻高温抽出組成物が得られ、さらに可溶性成分の収率が向上するので好ましい。以下、可溶化処理を行った後、加圧加熱処理を行う実施態様を「二段階加熱処理」ともいうこととする。
海藻類は室温で水性媒体中に溶解しようとしても、完全に溶解しない。加圧加熱処理前に微粉末状にした海藻類を可溶化することにより、加熱処理溶液が均一化され、品質にばらつきの少ない海藻高温抽出組成物を製造することができるので更に好ましい。
【0034】
可溶化処理は、撹拌しながら、所定の温度で加熱することが好ましい。可溶化処理の加熱温度は、30~100℃が好ましく、40~100℃がより好ましい。
撹拌の効果は容器の形状、規模、攪拌機の種類や容器内のバッフルの形状等により大きく異なるが、例えば(株)耐圧硝子工業製ハイパークラスターTEM-V1000を使用した場合、撹拌は、100~1,000rpmであることが好ましく、200~800rpmがより好ましく、200~600rpmがさらに好ましい。
可溶化処理時間は特に制限はないが、通常15分~20時間程度、好ましくは30分~5時間程度、さらに好ましくは30分~3時間程度であり、可溶化処理時間は、可溶化処理の温度と撹拌とのバランスによって調整する。
可溶化処理はpH1~13の水性媒体中で行うことが好ましく、pH2~11の水性媒体中で行うことがより好ましい。また、二酸化炭素の共存する水性媒体中で行うことも好ましい。さらに、アンモニアが共存するアルカリ水溶液で可溶化することもできる。
【0035】
可溶化処理後の溶液は、低粘度であり、ゲル状態ではないことが好ましい。海藻類の溶解後も撹拌及び加熱を続けることにより液粘度を下げることができる。
【0036】
本発明の製造方法にて得られる海藻高温抽出組成物は、増粘性の観点から、多糖類の成分は、例えばカラギーナンでは分子量が400,000以下の成分を多く有していることが好ましい。分子量が400,000以下の成分を多く含むと、ヌメリ感の少ない高温抽出組成物を得ることができるので好ましい。多糖類は、分子量が大きいと増粘性を有する傾向があり、分子量が80万以上であると、特に粘性が高いことを確認した。
一方、本発明の製造方法によって得られる海藻高温抽出組成物は、生理活性を発揮する観点からは、小腸上皮細胞等から吸収されることが必要である。従って、海藻高温抽出組成物が生理活性、例えば抗ガン活性や抗高血圧活性等を発揮する為には、これらの生理活性物質の分子量は200~50,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましい。生理活性物質としては、フコイダン、アルギン酸、アガロース等が例示できる。
【0037】
加熱処理後の溶液は、目的に応じて更に固形分を分離する工程および可溶性成分を濃縮する工程又は固化する工程を施すことが好ましい。
固形分を分離する方法としては、公知の分離方法は何れも使用することができる。具体的には、遠心分離、濾過、圧搾などが例示できる。
これらの中でも、遠心分離、遠心濾過又は加圧濾過により固形分を分離することが好ましい。遠心分離は、100~6,000rpmで行うことが好ましく、2,000~5,000rpmで行うことがより好ましい。加圧濾過は、0.1~5kgf/cm2(0.01~0.5MPa)に加圧して濾過することが好ましく、0.5~3kgf/cm2(0.05~0.3MPa)に加圧して濾過することがより好ましい。
また、可溶性成分(抽出液)は、そのまま食品や化粧料等に使用することもできるが、保存性の観点から、所望により固化することが好ましい。固化する方法は特に限定されないが、噴霧乾燥や凍結乾燥により粉末化することができる。噴霧乾燥の場合、加熱した窒素気流中での粉末化したり、あるいはデキストリンや乳糖などを賦形剤として加えても良い。
【0038】
本発明の製造方法によって得られた海藻高温抽出組成物は、種々の目的に使用することができる。具体的には、得られた海藻高温抽出組成物の濃縮液及び/又はその固化物を調味料、化粧料、健康食品等に添加することができる。また、加熱処理により得られた海藻高温抽出組成物を含む水溶液をストレートタイプとして原液のまま使用することもできる。
また、得られた海藻高温抽出組成物の水溶液、その濃縮物及び/又はその固化物を、そのまま調味料を含む食品全般または健康食品として使用することもできる。
【0039】
具体的には、得られた海藻高温抽出組成物の水溶液を乾燥して粉末化した後、これを水に再溶解して、和風だし汁等として使用することができる。この場合、乾燥して得られた海藻高温抽出組成物を水に0.1~10重量%添加することが好ましく、0.3~5重量%添加することがより好ましく、0.5~3重量%添加することがより好ましい。
海藻高温抽出組成物の乾燥方法としては、公知のいかなる乾燥方法も使用することができ、その目的に応じて、公知の乾燥方法を適宜選択することが好ましい。
海藻高温抽出組成物の乾燥物は、いかなる形状とすることもできるが、粉末状、顆粒状にすることが好ましく、粉末状とすることがコスト上より好ましい。粉末タイプの海藻高温抽出組成物は和風のインスタント食品(うどん、そば等)添加剤として使用することができる。
【0040】
また、得られた海藻高温抽出組成物の水溶液から一部の水分を除去して、濃縮することも好ましい実施態様である。乾燥した海藻高温抽出組成物の含有量として10~90重量%となるように濃縮することが好ましく、20~85重量%となるように濃縮することがより好ましい。また、濃縮方法としては公知のいかなる濃縮方法も使用することができ、公知の濃縮機を適宜選択することができる。
具体的には、乾燥した海藻高温抽出組成物の含有量として70~90重量%となるように水分を除去し、ペースト状の調味料を調製することもできる。また、乾燥した海藻高温抽出組成物の含有量として20~40重量%となるように水分を除去し、濃縮タイプの調味料とすることも好ましい。
これらを水で希釈することにより、和風だし汁、みそ汁用だし汁等として使用することができる。
また、これらの濃縮物に、適宜NaClなどのミネラル成分や、各種アミノ酸、糖類、香料等を添加して調味料とすることも好ましい。特に、NaClを添加すると、調味料の保存性が向上するので好ましい。また、濃縮タイプの海藻高温抽出組成物はインスタント食品(うどん、そば等)添加剤として使用することができる。
【0041】
本発明により得られた粉末状又は濃縮タイプの海藻高温抽出組成物を、適宜水等で希釈し、調味液として使用することもできる。
【0042】
海藻類の高温抽出組成物はその機能が注目されている。特に、本発明の製造方法では、海藻類を加水分解反応を伴う加熱処理をするため、海藻類に含まれる多糖類が少糖化及び/又はオリゴ糖化し、さらにタンパク質をオリゴペプチド化、またはオリゴペプチドからさらにアミノ酸まで加水分解すると考えられる。本発明により得られた海藻高温抽出組成物は、抗ガン作用、免疫力増強作用、または血圧降下作用を含む各種の生理機能(生理活性)を有していると期待され、また、増粘性、保湿性やゲル化性等のような物理化学的機能の向上に寄与するものである。本発明により得られた海藻高温抽出組成物は、上述の用途には限られず、食品、化粧品、医薬品、繊維加工品等の幅広い製品への用途を有するものである。さらに、原料である海藻類から、高温抽出組成物を得た後の固形分(残渣)は、食物繊維、ペプチド、多糖類等を多く含むことから、家畜飼料及び園芸肥料等に応用して効果的に使用することが可能である。
尚、本発明において、多糖とは多くの単糖から構成される平均分子量が100,000を超える糖類を指す。少糖とは、オリゴ糖と同義であって、単糖が複数個結合したものであり、分子量が100,000を超えないものを指す。
【0043】
本発明により得られた海藻高温抽出組成物を健康食品として使用する態様について以下に説明する。特に、本発明の海藻高温抽出組成物を含む健康食品は、血圧降下機能を有する健康食品として好ましく使用できる。
血圧降下機能を有する健康食品に使用する場合、海藻はアルギン酸を含有する褐藻類が好ましく、コンブ、カジメ、ワカメ、モズク、アラメ、マクロシスティス、アスコフィラム、エクロニアマキシマ、レッソニヤが特に好ましい。
また、得られる海藻高温抽出組成物がアルギン酸塩類、低分子量化アルギン酸塩類及びアルギン酸塩オリゴ糖類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、アルギン酸を含有する海藻を使用することにより、これらを得ることができるので、海藻としてアルギン酸を含有する海藻を原料として使用することが好ましい。ここで、アルギン酸塩類とは、アルギン酸が強いイオン交換性を持つため、種々のアルカリイオン例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオンと結合し、塩を構成した化合物を示す。
一般的にアルギン酸塩の血圧降下作用としては、体内に入ったアルギン酸塩は胃の中の胃酸によって塩を放出し、つぎにそれが腸に移行したとき、アルカリ性である腸内で再びナトリウムイオンと塩を構成し、結果として体内のナトリウムを減少させ、血圧降下作用を示すと考えられている。
また、低分子量化したアルギン酸塩は胃の中で塩を放出した後腸から吸収され、体内で再度ナトリウム塩を構成し、そのままナトリウムを体外へと排出する。したがって、低分子量化アルギン酸塩やオリゴ糖のアルギン酸塩は、摂取した塩化ナトリウム等のナトリウム分をアルカリ性の腸内で再度捕獲して体外に排泄すると共に、腸内で体内へと吸収されたアルギン酸が、細胞内のナトリウムイオンと結合して、体外に排出するという二重の意味でのナトリウム排出機能を有することが期待される。
ここでいう低分子量アルギン酸塩類とは、平均分子量が5万~1万程度のものを意味し、アルギン酸塩オリゴ糖類とは、分子量1万以下で数百以上を意味する。
さらに、海藻中に含まれるタンパク質を低分子量化させ、低分子量化タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸等に変換させることが好ましい。藻類の仲間であるノリに含まれるタンパク質を低分子量化したオリゴペプチドの一部には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤としての機能を有するオリゴペプチド類が存在し、結果として血圧降下作用を発揮することが知られている。ここでは、同じ藻類である褐藻類の昆布類にも同様な効果があることが期待され、低分子量タンパク質やオリゴペプチドへの変換は血圧降下作用の発現補助としての機能が期待されている。
低分子量化タンパク質とは、平均分子量が5万~数千程度のものを意味し、オリゴペプチドとは、低分子量化タンパク質より小さな、平均分子量が数千以下のものを意味する。
【0044】
海藻成分中に、血圧降下機能を有する成分が含まれていることは知られていたが、日常の食生活上で高血圧症状を改善するために必要な量の海藻(例えば昆布)を日常的に摂取することはかなり困難である。これは、海藻そのものを毎日食することが困難なことに加えて、海藻類に含まれる多糖類(例えばアルギン酸塩等)は高分子であることから、腸内吸収率が低く、効果的ではなかったことに起因していると考えられる。アルギン酸等の天然多糖類が腸内で効果的に吸収されるには一定程度低分子量化していることが望ましいと考えられる。
海藻類に含まれている多糖類やタンパク質を高温抽出を通じて効果的に加水分解することで、これらが低分子量化され、腸内での吸収を高めることができ、これにより海藻類の摂取が少量であっても高血圧症状の予防及び/又は改善が可能となり、食生活上での恒常的な海藻成分の摂取が可能となることが期待される。
また、特にアルギン酸に関しては、純粋なアルギン酸塩をオリゴ糖化することよりも、本発明のように海藻を高温抽出することにより、海藻に含まれている機能性多糖類、タンパク質、アミノ酸ミネラル等の他の有効成分を体に吸収しやすい大きさ(分子量)に調整することができ、これにより血圧の逓減効果の向上が期待される。
【0045】
<17>に記載の本発明の海藻熱処理組成物の製造方法は、海藻類を、pH1~13の水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
また、<19>に記載の本発明の海藻熱処理組成物の製造方法は、海藻類を、二酸化炭素の共存する水性媒体中で、温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
さらに、<20>に記載の本発明の海藻熱処理組成物の製造方法は、海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を注入する工程、温度80~180℃において0.5~5時間加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
本発明において、海藻熱処理組成物とは、海藻類を水性媒体中で加熱処理した処理物であり、水性媒体に可溶な成分(可溶性成分)及び不溶な成分(不溶性成分)の双方を含み、可溶性成分の50重量%以上100重量%以下、及び不溶性成分の10重量%以上100重量%以下を含むものである。
可溶性成分の80~100重量%を含むことが好ましく、100重量%を含むことがさらに好ましい。また、不溶性成分の30~100重量%を含むことが好ましく、50~100重量%を含むことがより好ましい。また、残渣(廃棄物)を減少させる点からは、不溶性成分を100重量%含むことが好ましい。
【0046】
本発明の海藻熱処理組成物の製造方法では、加熱処理する工程を含むことから、加水分解反応を伴うものと考えられる。海藻類に含まれるタンパク質、多糖類、核酸等の加水分解反応が生じると考えられる。
本発明の製造方法により得られた海藻熱処理組成物は、オリゴ糖、オリゴペプチド、アミノ酸等を含み、ミネラルに富んだ組成物である。また、本発明の製造方法により得られた海藻熱処理組成物は、不溶性成分をも含むものであるので、残渣を少なくすることができ、廃棄物を減少させることができる。また、不溶性成分中に含まれる食物繊維や各種のミネラル分をも含むものであり、食品や健康食品に使用した場合には、これらの成分を同時に摂取することができる。
【0047】
本発明の海藻熱処理組成物の製造方法は、具体的には、(I)上記海藻類をpH1以上5未満の酸性水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理することを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、(II)上記海藻類をpH5以上9未満の中性水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理することを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、及び(III)上記海藻類をpH9以上13以下のアルカリ性水性媒体中で温度50~200℃において加水分解することを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、である。これらの実施態様のうち、(I)及び(II)が好ましく、(I)がより好ましい。
【0048】
本発明において海藻類とは、海中に生育する食用等の有用な植物をいい、具体的には、アオノリ類、アオサ類、ミル類等の緑藻類、ワカメ類、コンブ類、ヒジキ類、モズク類、ホンダワラ類等の褐藻類、アマノリ類、テングサ類等の紅藻類、クダモ類、ヒゲモ類等の藍藻類などが例示できる。これらの中でも、褐藻類が好ましく、特に、ワカメ類、コンブ類及びモズク類よりなる群から選ばれる少なくとも1つの海藻類を使用することが好ましい。
コンブ類は褐藻類コンブ属藻類の総称でマコンブ、リシリコンブ、ナガコンブ、ガゴメを例示できる。
海藻類は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、海藻はその全体を使用することもできるし、一部分のみを使用することもできる。具体的には、ワカメの根本の胞子嚢であるメカブを使用することが例示できる。
本発明においては、コンブ、ワカメを好ましく用いることができる。コンブの中でも、特にガゴメが好ましい。また、ワカメのメカブを使用することも好ましい。
【0049】
海藻類は、原藻のままでも使用できるが、予め細片状または粉末状に加工しておくことが好ましく、予め乾燥・破粉された海藻類を使用することが特に好ましい。このような海藻類を使用することにより、水性媒体中への分散性が向上すると共に、熱処理効率が向上するので好ましい。
【0050】
本発明において、水素イオン濃度とは、加熱処理前の室温(25℃)又は室温近傍(30℃)における水素イオン濃度をいう。
加熱処理物が中性の場合には、加熱処理中の水素イオン濃度はほぼ一定に維持されると考えられる。
また、本発明において水性媒体とは、水または水を50重量%以上含み、水に水混和性の有機溶媒が混合されていても良い混合溶媒を意味する。混合溶媒における水の混合割合は、好ましくは60~100重量%であり、より好ましくは、70~100重量%である。水混和性の有機溶媒としては、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、酢酸が例示でき、エチルアルコール及び酢酸が好ましい。水性溶媒として、最も好ましくは、水であり、軟水又はイオン交換水が好ましい。
【0051】
上記<18>に記載の加熱処理工程において、加熱温度は、50℃以上200℃以下である。
加熱処理温度が50℃未満であると、十分な加水分解反応を生じない。
また、加熱温度が200℃より高いと、海藻類に含まれるアミノ酸成分と糖類がメイラード反応を生じ、得られる海藻熱処理組成物の風味が変化したり、褐色に変色する。
加熱処理温度は80℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱処理温度は180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。
【0052】
前記の加熱処理は、常圧で行うこともできるし、加圧下で行うこともできる。
加熱処理温度が100℃を超える場合、特に、105℃以上である場合、加圧下で加熱処理を行うことが好ましい。この場合、0.1~10MPa(1.02~102kgf/cm2)の圧力で実施することが好ましく、0.1~5.0MPa(1.02~51kgf/cm2)の圧力にすることがより好ましく、0.1~1MPa(1.02~10.2kgf/cm2)とすることがより好ましい。
圧力を上記範囲内とすることにより、十分な加水分解反応が生じるので好ましい。
【0053】
水溶媒のみを用いる加熱処理の場合の反応圧力は、反応温度での水の蒸気圧に依存する。たとえば反応温度200℃であれば、水の蒸気圧が約1.6MPaとなるので、反応圧力は約1.6MPaが必要となる。また、圧力容器は、この圧力に十分耐えうる耐圧容器とする必要がある。
なお、二酸化炭素加圧下における反応圧力については後述する。
【0054】
上記の水性媒体中又は水中での加熱処理は、室温において水性媒体を塩酸、硫酸等の鉱酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、又は炭酸(二酸化炭素)等により酸性側に、アンモニア水、水酸化ナトリウム、硝子ビーズ等によりアルカリ側に調整した後、海藻類と混合することが好ましい。
【0055】
上記<17>に記載の製造方法においては、加熱処理時間は、加熱温度との関係で、適宜選択できる。連続的な製造工程では、滞留時間が1~180分であることが好ましく、また、バッチ式の製造工程では、反応時間が0.5~10時間であることが好ましく、1~4時間であることがより好ましい。
加熱処理時間が上記範囲内であると、得られる海藻熱処理組成物の収率が良好であると共に、短時間で海藻熱処理組成物を得ることができるので好ましい。
【0056】
上記<17>に記載の製造方法は、以下の3態様に大別される。
すなわち、
(A)上記の海藻類をpH1以上5未満の酸性水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、
(B)上記の海藻類をpH5以上9未満の中性水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、及び
(C)上記の海藻類をpH9以上13以下のアルカリ性水性媒体中で温度50~200℃において加熱処理する工程を含むことを特徴とする海藻熱処理組成物の製造方法、
である。これらの実施態様のうち、(A)及び(C)が好ましく、(A)がより好ましい。
【0057】
上記<18>に記載の製造方法においては、pH2~11の水性媒体中で、温度80~180℃において海藻類の加熱処理を行う。
【0058】
上記<19>及び<20>に記載の水性媒体中での製造方法は、二酸化炭素の共存下で行う。
二酸化炭素共存下で加熱処理すると、得られる熱処理組成物の加水分解効率が向上すると共に、加熱処理を短時間とすることができるので好ましい。二酸化炭素の共存下で加熱処理する熱処理組成物の製造方法では、加熱処理後に中和工程や、脱塩工程が不要となる。従って、熱処理組成物の製造工程を極めて簡素化することができるので特に好ましい。本発明の製造方法は、強い酸性条件を使用しない加水分解反応を伴うものであり、圧力容器の腐食等を回避できる。
さらに、二酸化炭素の共存下で加熱することにより、加水分解反応が良好に進行し、得られる熱処理組成物の粘度を低下することもできるので好ましい。また、得られた海藻熱処理組成物を固形化し、水に溶解したときのヌメリ感が減少するので好ましい。
【0059】
二酸化炭素の共存下での加熱処理する工程には、具体的に以下の操作が例示される。
I.処理装置中に原料海藻及び水を仕込んだ後、二酸化炭素ボンベ等により二酸化炭素を注入し、室温(25℃)又は室温より少し高い温度(30℃又は35℃)及び圧力下で二酸化炭素を注入し、まずバブリング操作により溶存酸素を脱気した後に、要すれば二酸化炭素を飽和させ、その後に加熱処理する。又は予め設定した所定の水素イオン濃度に調整してから加熱処理する、
II.処理装置中に原料海藻及び水を仕込んだ後、これらの混合物を低温に保ち(好ましくは0~25℃、より好ましくは5~15℃)、二酸化炭素を溶液中に吹き込み、要すれば常圧下又は加圧下で二酸化炭素を飽和させた後、加熱処理する、
III.処理装置中に原料海藻及び水を仕込んだ後、これらの混合物中にドライアイス(固体の二酸化炭素)を適量投入し、ドライアイス存在下で圧力容器を密閉してから加熱する。
【0060】
上記II.記載の水性媒体中での加水分解反応は、加熱処理前の海藻類を含む水性媒体の室温(25℃)におけるpHを2~6に調整することが好ましく、pHを3~5に調整することがより好ましい。
【0061】
二酸化炭素の共存下で行う海藻熱処理組成物の製造方法において、二酸化炭素の併用量は、水性媒体の総量に対して、重量比で好ましくは0.1~150重量%であり、より好ましくは0.8~70重量%、さらに好ましくは1.0~10重量%である。
【0062】
上記<20>記載の海藻熱処理組成物の製造方法において、加熱温度は、50℃以上200℃以下であり、80℃以上であることが好ましく。105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。また、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度が50℃未満であると、加水分解反応が十分に生じないため、調味料を含む食品全般、健康食品、化粧料等に好適に使用することができない。また、加熱温度が200℃より高いと、海藻類に含まれるアミノ酸成分と糖類がメイラード反応を生じ、得られる海藻熱処理組成物の風味が変化したり、褐色に変色する。
前記の加熱処理は、常圧で行うこともできるし、加圧下で行うこともできる。
加熱処理温度が100℃を超える場合、特に、105℃以上である場合、加圧下で加熱処理を行うことが好ましい。この場合、0.10~10MPa(1.0~102kgf/cm2)の圧力にすることが好ましく、0.10~5MPa(1.0~51kgf/cm2)の圧力がより好ましく、0.10~0.6MPa(1.0~6.1kgf/cm2)の圧力であることがさらに好ましい。
【0063】
加熱処理時間は、加熱温度との関係で、適宜選択できる。連続的な製造工程では、滞留時間が1~80分であることが好ましく、また、バッチ式の製造工程では、反応時間が0.5~10時間であることが好ましく、1~4時間であることがより好ましい。
【0064】
上記の方法の中でも、海藻類を分散させた水性媒体に温度20~40℃、圧力0.1~0.5MPaにおいて二酸化炭素を注入し、温度80~180℃において、0.5~5時間加熱処理することが好ましい。
【0065】
二酸化炭素が共存するかどうかを問わず水性媒体中での海藻類の加熱処理に用いる装置は、バッチ式と連続式に大別できる。
本発明に使用する反応容器は、特に限定されず、公知の反応容器を使用することができる。また、加圧下で加熱処理を行う場合には、公知の圧力容器を使用することができる。
連続式反応容器、バッチ式反応容器のいずれも使用することができるが、バッチ式反応容器を使用することが好ましい。
【0066】
二酸化炭素の共存する水性媒体中での加熱処理工程としては、具体的には以下の反応容器を用いた加熱処理工程が例示できる。
まずN2やCO2によるバブリング操作により反応容器中の反応媒体に溶存する酸素を脱気することが好ましい。
二酸化炭素の共存する水性媒体中での加熱処理は、サイホン式炭酸ガスボンベから、あらかじめ3℃以下に保った冷却器を経由して、ポンプにより二酸化炭素を反応容器に注入し、注入後、水性媒体中の二酸化炭素の溶解速度が高くなるように撹拌しながら放置する方法が例示できる。二酸化炭素の濃度が十分に高くなったら、反応容器の加熱を開始する。加熱後は圧力の過度な上昇を抑える為に、気化した二酸化炭素を放出し、圧力調整を行うこともできる。
また、反応容器に入れる前に十分に二酸化炭素を溶解させた水性媒体を使用することもできる。さらに、加熱処理の前にドライアイスを投入して、反応容器内の二酸化炭素量を増加させることも可能である。
【0067】
上記<17>記載の発明は、海藻類を、アンモニア水の共存する水性媒体中で、温度50~200℃において加熱処理する工程を含む海藻熱処理組成物の製造方法とすることもできる。加熱処理温度は上述の通り、80℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱処理温度は180℃以下であることが好ましいく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。加熱温度が50℃未満であると、本発明の特徴である加水分解反応が十分に行われない。また、加熱温度が200℃より高いと、海藻類に含まれるアミノ酸成分と糖類がメイラード反応を生じ、得られる海藻熱処理組成物の味が変化すると共に、褐色に変色する。
使用するアンモニア水(NH4OH)の濃度は、0.01~15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.04~10重量%、さらに好ましくは0.1~2重量%である。
アンモニア水を使用する、<17>に記載の発明の一実施態様は、強いアルカリ性条件を使用しない加熱処理であるため、反応容器の腐蝕等を回避できるので好ましい。
【0068】
上記<17>~<20>いずれか1つに記載の発明において、上述の通り、加熱処理温度は105℃~200℃であることが好ましい。加熱処理温度を105℃以上とすることにより、加熱処理により十分な加水分解反応を生じさせることができ、食品、健康食品等に好適に使用できる海藻熱処理組成物を得ることができるので好ましい。
【0069】
また、上記<23>に記載の発明は、105~200℃で加熱処理を行う前に、海藻類を、pH1~13の水性媒体中で30~100℃にて加熱処理する前処理工程をさらに含む。なお、この処理を、以下、「可溶化処理」ともいう。
可溶化処理を行うことにより、海藻類が膨潤及び/又は可溶化されるので、このような可溶化処理を加圧加熱処理前に行うことにより、加熱処理溶液が均一化され、再現性の良い海藻熱処理組成物が得られるので好ましい。以下、可溶化処理を行った後、加圧加熱処理を行う実施態様を「二段階加熱処理」ともいうこととする。
海藻類は室温で水性媒体中に溶解しようとしても、完全に溶解しない。加圧加熱処理前に微粉末状にした海藻類を可溶化することにより、加熱処理溶液が均一化され、品質にばらつきの少ない海藻熱処理組成物を製造することができるので更に好ましい。
【0070】
可溶化処理は、撹拌しながら、所定の温度で加熱することが好ましい。可溶化処理の加熱温度は、30~100℃が好ましく、40~100℃がより好ましい。
撹拌の効果は容器の形状、規模、攪拌機の種類や容器内のバッフルの形状等により大きく異なるが、例えば(株)耐圧硝子工業製ハイパークラスターTEM-V1000を使用した場合、撹拌は、100~1,000rpmであることが好ましく、200~800rpmがより好ましく、200~600rpmがさらに好ましい。
可溶化処理時間は特に制限はないが、通常15分~20時間程度、好ましくは30分~5時間程度、さらに好ましくは30分~3時間程度であり、可溶化処理時間は、可溶化処理の温度と撹拌とのバランスによって調整する。
可溶化処理はpH1~13の水性媒体中で行うことが好ましく、pH2~11の水性媒体中で行うことがより好ましい。また、二酸化炭素の共存する水性媒体中で行うことも好ましい。さらに、アンモニアが共存するアルカリ水溶液で可溶化することもできる。
【0071】
可溶化処理後の溶液は、低粘度であり、ゲル状態ではないことが好ましい。海藻類の溶解後も撹拌及び加熱を続けることにより液粘度を下げることができる。
【0072】
上記<18>~<23>いずれか1つに記載の発明において、可溶性成分が仕込量の40~100重量%となるまで加熱処理を行うことが好ましい。40~90%であることがより好ましく、50~80%であることが更に好ましい。
可溶性成分を上記範囲内とすることにより、調味料を含む食品全般、健康食品、化粧料等に好適に使用可能な海藻熱処理組成物を得ることができるので好ましい。
【0073】
本発明の製造方法にて得られる海藻熱処理組成物は、溶液粘度の観点から、多糖類の成分は、例えばカラギーナンでは分子量が400,000以下の成分を多く有していることが好ましい。分子量が400,000以下の成分を多く含むと、ヌメリ感の少ない海藻熱処理組成物を得ることができるので、海藻熱処理組成物を調味料等の食品に使用する場合、特に好ましい。多糖類は、分子量が大きいと増粘性を有する傾向があり、分子量が80万以上であると、特に粘性が高いことを確認した。
一方、本発明の製造方法によって得られる海藻熱処理組成物は、生理活性を発揮する観点からは、小腸上皮細胞等から吸収されることが必要である。従って、海藻熱処理組成物が生理活性、例えば抗ガン活性や抗高血圧活性等を発揮する為には、これらの生理活性物質の分子量は200~50,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましい。生理活性物質としては、フコイダン、アルギン酸、アガロース等が例示できる。
本発明の海藻熱処理組成物の製造方法において、pH、加熱温度、加熱時間は、目的に応じて適宜選択することが好ましい。
【0074】
本発明において、加熱処理する工程の後に、濃縮する工程及び/又は固化する工程を含むことが好ましい。
本発明により得られた海藻熱処理組成物は、その目的に応じて希釈、濃縮することができ、また、固化(固形化)することも好ましい。
加熱処理後の反応物は、目的に応じて更に不溶性成分を分離する工程を含むことができるが、本発明の海藻加熱処理組成物は、上述の通り、不溶性成分の10重量%以上を含む。
不溶性成分を分離する方法としては、公知の分離方法は何れも使用することができる。具体的には、遠心分離、濾過、圧搾などが例示できる。
これらの中でも、遠心分離、遠心濾過又は加圧濾過により不溶性成分を分離することが好ましい。遠心分離は、100~6,000rpmで行うことが好ましく、2,000~5,000rpmで行うことがより好ましい。加圧濾過は、0.1~5kgf/cm2(0.01~0.5MPa)に加圧して濾過することが好ましく、0.5~3kgf/cm2(0.05~0.3MPa)に加圧して濾過することがより好ましい。
また、本発明において、不溶性成分の分離を行わずに、可溶性成分及び不溶性成分の全量を海藻熱処理組成物として、調味料を含む食品全般、化粧料、健康食品等に使用することも好ましい。
また、海藻熱処理組成物は、そのまま食品や化粧料等に使用することもできるが、保存性の観点から、所望により固化することが好ましい。固化する方法は特に限定されないが、噴霧乾燥や凍結乾燥により粉末化することができる。噴霧乾燥の場合、加熱した窒素気流中での粉末化したり、あるいはデキストリンや乳糖などを賦形剤として加えても良い。
【0075】
本発明の製造方法によって得られた海藻熱処理組成物は、種々の目的に使用することができる。具体的には、得られた海藻熱処理組成物の濃縮液及び/又はその固化物を調味料を含む食品全般、化粧料、健康食品等に添加することができる。また、海藻熱処理組成物をそのまま使用することもできる。
【0076】
具体的には、得られた海藻熱処理組成物を乾燥して固化し、必要に応じて粉砕し、粉末状とした後、これを水に再溶解して、和風だし汁等として使用することができる。この場合、乾燥して得られた海藻熱処理組成物を水に0.1~10重量%添加することが好ましく、0.3~5重量%添加することがより好ましく、0.5~3重量%添加することがより好ましい。
海藻熱処理組成物の乾燥方法としては、公知のいかなる乾燥方法も使用することができ、その目的に応じて、公知の乾燥方法を適宜選択することが好ましい。
海藻熱処理組成物の乾燥物は、いかなる形状とすることもできるが、調味料として使用する場合、粉末状、顆粒状にすることが好ましく、粉末状とすることがコスト上より好ましい。粉末タイプの海藻熱処理組成物は和風のインスタント食品(うどん、そば等)添加剤として使用することができる。
【0077】
また、得られた海藻熱処理組成物から一部の水分を除去して、濃縮することも好ましい実施態様である。乾燥した海藻熱処理組成物の含有量として10~90重量%となるように濃縮することが好ましく、20~85重量%となるように濃縮することがより好ましい。また、濃縮方法としては公知のいかなる濃縮方法も使用することができ、公知の濃縮機を適宜選択することができる。
具体的には、乾燥した海藻熱処理組成物の含有量として70~90重量%となるように水分を除去し、ペースト状の調味料を調製することもできる。また、乾燥した海藻熱処理組成物の含有量として20~40重量%となるように水分を除去し、濃縮タイプの調味料とすることも好ましい。
これらを水で希釈することにより、和風だし汁、みそ汁用だし汁等として使用することができる。
また、これらの濃縮物に、適宜NaClなどのミネラル成分や、各種アミノ酸、糖類、香料等を添加して調味料とすることも好ましい。特に、NaClを添加すると、調味料の保存性が向上するので好ましい。また、濃縮タイプの海藻熱処理組成物はインスタント食品(うどん、そば等)添加剤として使用することができる。
【0078】
本発明により得られた粉末状又は濃縮タイプの海藻熱処理組成物を、適宜水等で希釈し、調味液として使用することもできる。
【0079】
海藻類の熱処理組成物はその機能が注目されている。特に、本発明の製造方法では、海藻類を加水分解反応を伴う加熱処理をするため、海藻類に含まれる多糖類が少糖化(オリゴ糖化)し、さらにタンパク質をオリゴペプチド化、またはオリゴペプチドからさらにアミノ酸まで加水分解すると考えられる。本発明により得られた海藻熱処理組成物は、抗ガン作用、免疫力増強作用、または血圧降下作用を含む各種の生理機能(生理活性)を有していると期待され、また、増粘性、保湿性やゲル化性等のような物理化学的機能の向上に寄与するものである。本発明により得られた海藻熱処理組成物は、上述の用途には限られず、食品、化粧品、医薬品、繊維加工品等の幅広い製品への用途を有するものである。さらに、原料である海藻類を加熱処理した後、その不溶性成分は、食物繊維、ペプチド、多糖類等を多く含むことから、海藻熱処理組成物に使用されなかった不溶性成分の一部を家畜飼料及び園芸肥料等に応用して効果的に使用することが可能である。
尚、本発明において、多糖とは多くの単糖から構成される平均分子量が100,000を超える糖類を指す。少糖とは、オリゴ糖と同義であって、単糖が複数個結合したものであり、分子量が100,000を超えないものを指す。
【0080】
本発明により得られた海藻熱処理組成物を健康食品として使用する態様について以下に説明する。特に、本発明の海藻熱処理組成物を含む健康食品は、血圧降下機能を有する健康食品として好ましく使用できる。
血圧降下機能を有する健康食品に使用する場合、海藻はアルギン酸を含有する褐藻類が好ましく、コンブ、カジメ、ワカメ、モズク、アラメ、マクロシスティス、アスコフィラム、エクロニアマキシマ、レッソニヤが特に好ましい。
また、得られる海藻熱処理組成物がアルギン酸塩類、低分子量化アルギン酸塩類及びアルギン酸塩オリゴ糖類よりなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましく、アルギン酸を含有する海藻を使用することにより、これらを得ることができるので、海藻としてアルギン酸を含有する海藻を原料として使用することが好ましい。ここで、アルギン酸塩類とは、アルギン酸が強いイオン交換性を持つため、種々のアルカリイオン例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオンと結合し、塩を構成した化合物を示す。
一般的にアルギン酸塩の血圧降下作用としては、体内に入ったアルギン酸塩は胃の中の胃酸によって塩を放出し、つぎにそれが腸に移行したとき、アルカリ性である腸内で再びナトリウムイオンと塩を構成し、結果として体内のナトリウムを減少させ、血圧降下作用を示すと考えられている。
また、低分子量化したアルギン酸塩は胃の中で塩を放出した後腸から吸収され、体内で再度ナトリウム塩を構成し、そのままナトリウムを体外へと排出する。したがって、低分子量化アルギン酸塩やオリゴ糖のアルギン酸塩は、摂取した塩化ナトリウム等のナトリウム分をアルカリ性の腸内で再度捕獲して体外に排泄すると共に、腸内で体内へと吸収されたアルギン酸が、細胞内のナトリウムイオンと結合して、体外に排出するという二重の意味でのナトリウム排出機能を有することが期待される。
ここでいう低分子量アルギン酸塩類とは、平均分子量が5万~1万程度のものを意味し、アルギン酸塩オリゴ糖類とは、分子量1万以下で数百以上を意味する。
さらに、海藻中に含まれるタンパク質を低分子量化させ、低分子量化タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸等に変換させることが好ましい。藻類の仲間であるノリに含まれるタンパク質を低分子量化したオリゴペプチドの一部には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤としての機能を有するオリゴペプチド類が存在し、結果として血圧降下作用を発揮することが知られている。ここでは、同じ藻類である褐藻類の昆布類にも同様な効果があることが期待され、低分子量タンパク質やオリゴペプチドへの変換は血圧降下作用の発現補助としての機能が期待されている。
低分子量化タンパク質とは、平均分子量が5万~数千程度のものを意味し、オリゴペプチドとは、低分子量化タンパク質より小さな、平均分子量が数千以下のものを意味する。
【0081】
海藻成分中に、血圧降下機能を有する成分が含まれていることは知られていたが、日常の食生活上で高血圧症状を改善するために必要な量の海藻(例えば昆布)を日常的に摂取することはかなり困難である。これは、海藻そのものを毎日食することが困難なことに加えて、海藻類に含まれる多糖類(例えばアルギン酸塩等)は高分子であることから、腸内吸収率が低く、効果的ではなかったことに起因していると考えられる。アルギン酸等の天然多糖類が腸内で効果的に吸収されるには一定程度低分子量化していることが望ましいと考えられる。
海藻類に含まれている多糖類やタンパク質を熱処理を通じて効果的に加水分解することで、これらが低分子量化され、腸内での吸収を高めることができ、これにより海藻類の摂取が少量であっても高血圧症状の予防及び/又は改善が可能となり、食生活上での恒常的な海藻成分の摂取が可能となることが期待される。
また、特にアルギン酸に関しては、純粋なアルギン酸塩をオリゴ糖化することよりも、本発明のように海藻を熱処理することにより、海藻に含まれている機能性多糖類、タンパク質、アミノ酸ミネラル等の他の有効成分を体に吸収しやすい大きさ(分子量)に調整することができ、これにより血圧の逓減効果の向上が期待される。
【0082】
健康食品として使用する場合、本発明の海藻熱処理組成物は、いかなる形態で摂取することもできるが、日常的に簡易に摂取できるよう、粉末剤、錠剤、カプセル剤などの剤形で摂取することが好ましく、これらの中でも錠剤とすることが特に好ましい。錠剤としては素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠などを例示できるが、本発明はこれに限定されない。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
本実施例では、海藻類として乾燥した伊豆・伊東産めかぶ(以下メカブと略する)を使用した。
【0084】
<処理装置>
高温・高圧条件下での処理装置は、耐圧ガラス装置(耐圧ガラス工業(株)製、ハイパーグラスター、TEM-V1000N)を使用した。
【0085】
<加熱処理方法>
反応は室温中でガラス製圧力容器に水500mlとメカブを10g仕込み、撹拌(100ppm)しながら30℃まで加温した。圧力容器内の温度が30℃に達した後、サイホン式ボンベを用い、二酸化炭素を処理装置に導入した。二酸化炭素は圧力容器の圧力弁の開放下(常圧状態)で、処理装置付属の導入管を用い10分間、液中へ直接二酸化炭素を導入した。
溶液中への二酸化炭素導入(バブリング操作)により、溶液中の溶存酸素の追い出しを行った。バブリング操作後、圧力容器の開放弁を閉じた後、さらに二酸化炭素を導入することで、指定した加水分解圧力になるように調整した。なお、実施例で示した二酸化炭素の圧力はこの時点での二酸化炭素の圧力を示している。また、特に0.0MPaと記載した場合は、バブリングおよび二酸化炭素による加圧操作を行わなかったことを示している。
溶液の水素イオン濃度は、加熱処理前に測定した。また、それぞれの条件下におけるpHを表1に示した。
圧力調整後は直ちに80℃まで加温し、乾燥原料の可溶化や膨潤を目的として30分間撹拌を行った。撹拌後、容器内の温度を、120℃、130℃、または140℃に昇温し、各温度で3時間加熱処理を行った。
【0086】
<加熱処理後の操作>
加熱処理後は直ちに圧力容器内の冷却水循環用配管バルブを開け、水道水通じることで冷却を行った。室温まで冷却後、処理装置の圧力を開放した。
加熱処理を行った処理溶液は遠心器((株)コクサン社製、H-103Fn)で3000rpmの条件下で30分間回転させることで固・液分離を行った。
【0087】
固・液分離後の可溶化分(上澄み液)と遠沈した固形分はそれぞれ、凍結乾燥機(東京理科機械(株)社製、FOU-1100)で凍結乾燥を行った。乾燥後に、可溶化分、固形分のそれぞれについて収量(g)を求め、仕込量に対する収率(%)を求めた。可溶分と固形分の収量を表1に示した。
【0088】
【表1】
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【0089】
<可溶化分のGPC分析>
-HPLC分析条件-
可溶化分については、GPC(Gel permeation chromatography)カラムを装着したHPLC分析にて、分子量を測定した。
HPLCの分析条件を、表2に示す。
【0090】
【表2】
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【0091】
-GPC分子量校正曲線-
分子量の校正用標準物質には主としてプルラン(表3中、試料欄に記号p-と記載)を用いた。校正用標準物質の溶出時間と分子量を表3に示す。
【0092】
【表3】
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【0093】
-分子量計算-
分析試料の分子量計算は、EZChrom(GLサイエンス社製HPLC用ソフト)中の分子量計算ソフトを用いて行った。本計算で求まる分子量は、重量平均分子量(=Mw)、数平均分子量(=Mn)、ピークトップ分子量(=Mp)である。
ここで、数平均分子量Mnとは次式で定義されている。
Mn= ΣAi/Σ(Ai/Mi)
これに対して、重量平均分子Mwは次式で定義されている。
Mw= Σ(AiMi)/ΣAi
ここで
Ai:クロマトグラム中の計算対象となるピークデータの面積値
Mi:同ピークデータの平均分子量
である。
Mpはクロマトグラム中のピークトップでの溶出時間を、分子量校正曲線にあてはめ分子量を計算したものである。
【0094】
図1にメカブを140℃にてCO2圧力0.1MPaにて3時間加圧加熱処理後の可溶分のGPC分析結果を示す。図1中のピーク番号1~3のそれぞれについて、Mn、Mw及びMpを測定した。結果を表4に示す。
GPC分析での溶出時間(保持時間)は、分子量の大きいものから小さいものへと順に溶出する。ピーク番号1は、比較的大きな分子量分布を、ピーク番号2は、低分子量化された糖や、オリゴ糖程度、ピーク番号3は、単糖程度の分子量を示している。
【0095】
【表4】
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【0096】
上記の表4から、Mw/Mnは約1.5を示した。従って、分子量分布は比較的狭い範囲に収束していることが分かる。また、MpがMwと比較的近い数値を示したことから、GPC分析でのクロマトグラム上でのピーク形状が正規分布型を示したと考えられ、加水分解反応が良好に進行し、低分子量化が理想的に行われたと考えられる。
【0097】
表1に示したそれぞれの加熱処理条件においても、ピーク1~3に相当するピークが認められ、それぞれの高温抽出組成物は、多糖、少糖及び単糖の各成分を含有していることが確認された。
これらの加熱処理条件下におけるピーク1~3の相対面積比の値を表5に示す。
【0098】
【表5】
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【0099】
上記の結果から、加熱温度を上昇させることにより、ピーク2に相当する面積の相対値が上昇することが認められた。ピーク2は、上述の通り少糖やオリゴ糖に相当するピークである。
【0100】
(実施例2)
実施例1において、伊豆・伊東産めかぶ(メカブ)の替わりに乾燥した北海道トドホッケ産ガゴメ昆布(以下ガゴメと略す)を使用した以外は同様にして海藻高温抽出組成物を得た。
加熱温度120℃、CO2圧力を0.1MPaにて3時間処理した高温抽出組成物の収率、GPC分析により得られる分子量及び相対面積値について表6に示す。尚、GPC分析の結果、図1と同様に3つのピークが認められた。
【0101】
【表6】
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【0102】
(実施例3)
実施例1において、伊豆・伊東産めかぶ(メカブ)の替わりに乾燥した北海道日高産昆布(以下日高昆布と略す)を使用した以外は同様にして海藻高温抽出組成物を得た。
加熱温度120℃、CO2圧力を0.1MPaにて3時間処理した高温抽出組成物の収率、GPC分析により得られる分子量及び相対面積比について表7に示す。尚、GPC分析の結果、図1と同様に3つのピークが認められた。
【0103】
(実施例4)
実施例1において、バブリング操作及び二酸化炭素の導入をする替わりに、海藻を分散させた処理溶液をアンモニア水にてpHを11に調製する以外は同様にして海藻高温抽出組成物を得ることができる。
【0104】
(比較例1)
加圧を行わずに日高昆布から抽出組成物を得た。
具体的には、固く絞ったふきんで日高昆布表面をさっと拭き取り、ビーカーに水500mlと、日高昆布を10.0g入れた後、室温で30分間放置した。次に室温から95℃まで15分間かけて昇温し、液温が95℃に達したと同時に日高昆布を溶液から引き出した。
ビーカー中の抽出溶液は凍結乾燥を行った。
抽出組成物の収率、GPC分析により得られる分子量及び相対面積比について表7に示す。
【0105】
【表7】
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【0106】
上記の表7より、本発明の高温抽出組成物の製造方法は、得られる組成物の量が多く、可溶化分の収率が高いことが明らかとなった。
また、比較例においては、得られる抽出組成物には分子量200,000~300,000の比較的大きな分子量分布を有する成分が含まれていないことが明らかとなった。
【0107】
(可溶化分のミネラル・アミノ酸の成分分析)
ガゴメをCO2圧力0.0MPa、温度110℃及び120℃にて3時間加熱処理した可溶化分(実施例2)及び比較例1にて得られた可溶化分のミネラル成分の分析を行った。
また、メカブをCO2圧力0.0MPa、温度120℃にて3時間加熱処理した可溶化分(実施例1)、ガゴメをCO2圧力0.0MPa、温度120℃にて3時間加熱処理した可溶化分(実施例2)及び比較例1にて得られた可溶化分のアミノ酸成分の分析を行った。
ミネラル成分の分析は、原子吸光分光光度計(島津製作所製、AA-620)を用いて行った。原子吸光分光光度計で測定するための試料は、以下のようにして調製した。
(1)るつぼを用いて分析試料を灰化し、ビーカー中にて10%塩酸を5mL加え、時計皿で蓋い30分間室温にて放置した。
(2)るつぼ内の物質を純水にて洗い流し、10%塩酸5mLを添加し、ビーカー内容量を150mLとした。
(3)沸騰石を適量添加し、ビーカー内容量が90mLになるまで、沸騰を続けた。
(4)ビーカー内溶液を濾過し、その濾液を200mLメスフラスコに移し、全量を200mLに調製した。
なお、必要に応じ、測定に際し希釈を行った。
【0108】
ミネラル成分の分析結果を下記の表8に示す。本分析は原料を1.0g使用したときに従来法での組成物(日高昆布、95℃)と本発明により得られた海藻高温抽出組成物を比較したものであり、可溶化回収率(組成物量/原料の割合)の違いを考慮して計算したものである。
これらの結果から、Na、K、Fe分において両者の間に明らかな違いが見られた。
【0109】
【表8】
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【0110】
アミノ酸分析は、全自動アミノ酸分析装置(日立製作所製、L8800-AAA型)を用いて常法に従い行った。
結果を表9に示す。
これらの分析結果の数値はいずれもミネラル成分の分析と同様、原料を1.0g使用したときに、従来法での組成物と海藻高温抽出組成物での組成物を比較したものであり、可溶化回収率(組成物量/原料の割合)の違いを考慮して計算したものである。
【0111】
【表9】
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【0112】
尚、表9中、アミノ酸略記語は味の素(株)編アミノ酸ハンドブック(p5)の記載にしたがった。また、それ以外のアミノ酸記号については英語名を表記した。
【0113】
(実施例5)
実施例3において、CO2圧力を0.0MPaまたは0.1MPaとし、加熱処理時間を変化させて海藻高温抽出組成物を得た。得られた海藻高温抽出組成物をGPC分析した結果、CO2圧力を0.1MPaとすると、より短い加熱処理時間でピーク1に相当するピークが観察される。
【0114】
(調味料としての使用)
1.実施例1~4にて得られた海藻高温抽出組成物(乾燥物又は濃縮物)を、和食の吸い物用の調味料として使用した。組成物が吸い物全体の約1重量%(乾燥物換算)になるように使用したところ良好な味と風味を備えていた。
2.実施例1~4にて得られた海藻高温抽出組成物を2重量%(乾燥物換算)含有する水溶液を調製し、これを和風だし汁として使用したところ、良好な味と風味を備えていた。
3.実施例1~4にて得られた海藻高温抽出組成物の水溶液から一部の水分を除去することにより濃縮した。海藻高温抽出組成物を50重量%(乾燥物換算)含有する水ペーストを作製し、このペーストを、適宜希釈して和風だし汁を調製したところ、良好な味と風味を備えた和風だし汁が得られた。
4.実施例1~4にて得られた海藻高温抽出組成物の水溶液から一部の水を除去することにより濃縮した。海藻高温抽出組成物を、30重量%(乾燥物換算)含有する水溶液を調製した。さらに、これにNaClを加え、保存性の向上した和風だし汁用調味料とした。この調味料を適宜希釈して和風だし汁を調製したところ、良好な味と風味を備えた和風だし汁が得られた。
【0115】
(化粧料としての使用)
また、実施例1~4にて得られた海藻高温抽出組成物(可溶化分の乾燥物)を石鹸に3%練り込んで海藻高温抽出組成物含有石鹸を作製したところ、使用感の良い石鹸が得られた。
(健康食品としての使用)
また、蕎麦及びパンに実施例1~4にて得られた海藻高温抽出組成物(固形分)を1~5%添加してフコイダン等の含まれた健康食品が得られた。
【0116】
(比較例2)
実施例1~3において、CO2圧力を0.0MPaまたは0.1MPaとして200℃で3時間加熱して、海藻高温抽出組成物を得た。得られた高温抽出組成物は、褐色を帯びていた。
また、日高昆布をCO2圧力を0.0MPaとして200℃で3時間加熱して得られた可溶分の凍結乾燥物を、和食の吸い物用の調味料として吸い物全体の約0.5重量%使用したところ良好な風味が得られなかった。
【0117】
(実施例6)
血圧降圧剤としての効果の評価)
<錠剤化処理>
昆布の高温抽出組成物を含む昆布熱処理組成物(以後、まるごと昆布と略す)は、日常的に簡単に摂取することが必要であるため、昆布の高温抽出組成物を含む加熱処理物に対し、錠剤化処理を行った。また、加熱処理を行っていない昆布粉末に対しても錠剤化処理を行った。
錠剤の製造方法を以下に記載する。昆布の原材料は北海道日浦産乾コンブ(利尻系エナガオニコンブ)を用いた。まるごと昆布錠剤および昆布粉末錠剤の製造では、初めに昆布原料を50℃で15時間乾燥し、マキノ式ピンミルで2回粉砕し、粉末試料を作製した。
昆布粉末の二酸化炭素を使用した加水分解を伴う熱処理は、容量10Lのテフロン(登録商標)ライニングのオートクレーブ装置を用いて行った。一回の反応での仕込量は、昆布粉末を600gに水6,000gとした。仕込み後、反応容器はスティーム加熱により30℃まで昇温させ0.30MPaになるまで二酸化炭素を反応容器内に圧入した。オートクレーブの内圧が0.30MPaで平衡であることを確認後、80℃まで昇温し1時間保温した。つづけて、反応温度を120℃とし、2時間加温を行った。反応終了後直ちに冷却水を循環させオートクレーブ内の温度が30℃以下になるまで冷却を行った。加熱処理物を、コロイドミルを用いて湿式粉砕し、さらに乾燥させることで、粉末の昆布加熱処理物とした。
粉末の昆布熱処理組成物(まるごと昆布)および昆布粉末を用いた造粒行程では、各粉末2100gにマルチトール(アマルティMR-50)を2058g加え、混合攪拌後70%エタノールを1055ml添加し乾燥後、乾燥混合造粒粉末試料を作製した。打錠工程では、上記乾燥混合造粒粉末試料が99%に対し、潤沢剤としてシュガーエステル(DSKF20W)が1%となるように添加し、十分に混合した後、8mmφ、210mgの打錠型を用いて打錠し、試験用錠剤とした。



【0118】
<モニター試験実施方法>
モニター試験は2003年に日本高血圧学会家庭血圧測定条件作業部会が設定した「家庭血圧測定ガイドライン」に従って実施方法を作成した。モニター試験には、昆布を加水分解し体内吸収力を高めた「まるごと昆布」と、比較対照とする未処理の「昆布粉末」の錠剤を服用することで比較試験を行った。
モニター試験の実施方法を下記に記載する。
【0119】
服用試料:(A)まるごと昆布錠剤
(B)昆布粉末錠剤
成分:1錠(208mg)中
昆布成分 50%
マルチトール 49%
シュガーエステル 1%
服用量:(A)、(B)とも 朝食後3錠 夕食後3錠 (1日 6錠)
服用方法:
A群:被験者番号奇数(1,3,5,7,9)
服用前1週間の血圧測定後、(A)を2週間服用後、続けて(B)を2週間服用
B群:被験者番号偶数(2,4,6,8,10)
服用前1週間の血圧測定後、(B)を2週間服用後、続けて(A)を2週間服用
血圧測定方法:家庭血圧測定ガイドラインに準じて1日 朝、晩2回測定
朝:起床後1時間以内 排尿後 朝食前 座位1~2分間の安静後
晩:就寝前 座位1~2分間の安静後
血圧値記録:血圧記録表に最高血圧、最低血圧、脈拍、測定時の注意事項、測定時間を記録
使用血圧計:テルモ血圧計:ES-P302
【0120】
〔被験者〕
被験者の選定に当たっては血圧降下剤等の投与を受けている場合には対象から除外した。被験者は成人男子8名、成人女子2名の計10名で行った。被験者の年齢および性別を下記表10に示す。
【0121】
【表10】
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【0122】
<血圧データの処理>
〔平均血圧の算出〕
データは、収縮期血圧(上の血圧又は最高血圧ともいう)と拡張期血圧(下の血圧又は最低血圧ともいう)から求めた平均血圧(mmHg)で行った。ここでの平均血圧を求める計算式は、講談社プラス・アルファ新書の「血圧革命」(高沢謙二著、2005年7月発行)に記載されている下記の式を用いた。
平均血圧=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)÷3
【0123】
〔モニターデータのまとめ〕
-有意差検定-
モニター試験は、A群およびB群の2群に分けて行った。平均血圧の測定期間である1週間は群間で共通で行った。その後、A群は、まるごと昆布(昆布高温抽出組成物)錠を2週間服用し、その後、昆布粉末錠を2週間服用し、合計5週間の服用試験を行った。B群は服用の順序が逆であり、先に昆布粉末錠を2週間服用し、その後、2週間まるごと昆布錠を服用した。
ここでは、各錠剤を服用後、試験錠剤の効果が期待される、第3週目および第5週目のデータ間の差を求めることで有意差検定を試みた。ここで、A群の第3週目のデータと第5週目のデータとを対とし、同様にB群の第3週目のデータと第5週目のデータを対とし、「対になったデータのt検定方法」を行った。
なお、A群およびB群を別々に検定したのは、モニター試験が5週間の長期に渡ることからの季節変動を考慮したものである。
対のデータは被験者10人の内、A群で試験が続行できなくなった2名と、B群で日常生活での影響が著しい1名を除いた3名および4名のデータでの比較検討を行った。
【0124】
上記「対になったデータのt検定方法」は、共立出版、「データのとりまとめ方」、著者J.C.Miller/J.N.Miller 第3章有意差検定を参照した。
具体的には、検定では、対になったデータ間の差の平均値xav,dと標準偏差sdを用いて、下記の式により求めたtの絶対値とその臨界値を比較し、有意な差があるかどうかを判定した。ここでのnはデータ数を示す。
【0125】
【数1】
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【0126】
上記の式によって求められたt値と、自由度(n-1)のスチューデントの両側t分布に従う理論値(臨界値)を比較することにより、有意差検定を行った。
【0127】
A群及びB群について、第3週目、第5週目における平均血圧を算術平均した平均値を以下の表11~14に平均値(mmHg)として示す。
また、A群及びB群について、平均値(mmHg)の差の有意差検定を朝・晩の平均値についてそれぞれ行った。結果を以下の表11~14に示す。
【0128】
【表11】
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【0129】
【表12】
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【0130】
【表13】
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【0131】
【表14】
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【0132】
まるごと昆布服用期間が先行したA群の朝のデータでは、tの実験値が4.52を示したことから、有意水準0.05(95%)で有意な差があると判定された(自由度2、両側検定)。同様に、晩のデータでは有意水準0.20(80%)で有意となった。
昆布粉末錠剤が先行したB群の朝のデータでは、tの実験値が2.28を示したことから、有意水準0.15(85%)で有意となった(自由度3、両側検定)。同様に、晩のデータにおいてもtの実験値が2.15を示したことから有意水準0.15(85%)で有意となった。
以上の結果から、原料の昆布を加熱処理することにより体内吸収力を高めた海藻熱処理組成物である、まるごと昆布には、未処理の昆布粉末に比べて血圧降下作用が見られることがt検定の結果明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】メカブを140℃にてCO2圧力0.1MPaにて3時間加圧加熱処理後の可溶化分のGPC分析のクロマトグラフィーの一例である。
【符号の説明】
【0134】
1 ピーク1
2 ピーク2
3 ピーク3
図面
【図1】
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