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明細書 :漕ぎ動作判定に基づく制御を行う車椅子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5948149号 (P5948149)
公開番号 特開2013-244156 (P2013-244156A)
登録日 平成28年6月10日(2016.6.10)
発行日 平成28年7月6日(2016.7.6)
公開日 平成25年12月9日(2013.12.9)
発明の名称または考案の名称 漕ぎ動作判定に基づく制御を行う車椅子
国際特許分類 A61G   5/04        (2013.01)
FI A61G 5/04 709
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2012-119492 (P2012-119492)
出願日 平成24年5月25日(2012.5.25)
審査請求日 平成26年12月5日(2014.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】中後 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100104444、【弁理士】、【氏名又は名称】上羽 秀敏
【識別番号】100112715、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 隆夫
【識別番号】100125704、【弁理士】、【氏名又は名称】坂根 剛
【識別番号】100120662、【弁理士】、【氏名又は名称】川上 桂子
審査官 【審査官】金丸 治之
参考文献・文献 特開平11-047197(JP,A)
特開平11-056917(JP,A)
調査した分野 A61G 5/04
特許請求の範囲 【請求項1】
搭乗者の漕ぎ動作に応じて回転する左車輪及び右車輪を備える車椅子であって、
前記左車輪の速度を取得する第1速度取得部と、
前記右車輪の速度を取得する第2速度取得部と、
前記第1速度取得部により取得された左車輪の速度の変化を、前記搭乗者の所定の漕ぎ動作によって生じると予測される前記左車輪及び前記右車輪の速度の予測変化と比較することにより、前記搭乗者が前記左車輪を漕いだか否かを判定し、前記第2取得部により取得された右車輪の速度の変化を前記予測変化と比較することにより、前記搭乗者が前記右車輪を漕いだか否かを判定する漕ぎ動作判定部と、
前記漕ぎ動作判定部による判定結果に応じて、前記左車輪及び前記右車輪の少なくとも一方の回転を制御する回転制御部とを備える車椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の車椅子であって、
前記回転制御部は、前記漕ぎ動作判定部により前記搭乗者が前記左車輪及び前記右車輪を漕いでいないと判定された場合、前記左車輪及び前記右車輪の回転を停止させる、車椅子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車椅子であって、さらに、
前記漕ぎ動作判定部により前記搭乗者が前記左車輪及び前記右車輪を漕いだと判定された場合、前記漕ぎ動作が開始された後の前記左車輪及び前記右車輪の平均速度を推定する両側速度推定部を備え、
前記回転制御部は、前記推定された左車輪の平均速度と前記推定された右車輪の平均速度とを用いて、前記左車輪及び前記右車輪の少なくとも一方の回転を制御する、車椅子。
【請求項4】
請求項3に記載の車椅子であって、
前記回転制御部は、前記取得された左車輪の速度と前記取得された右車輪の速度との実測比が、前記推定された左車輪の平均速度と前記推定された右車輪の平均速度との基準比に一致するように、前記左車輪及び前記右車輪の少なくとも一方の回転を制御する、車椅子。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の車椅子であって、さらに、
前記漕ぎ動作判定部により前記搭乗者が前記左車輪及び前記右車輪の一方を漕いだと判定された場合、前記漕ぎ動作が開始された後の当該一方の車輪の平均速度を推定する片側速度推定部を備え、
前記回転制御部は、前記取得された左車輪の速度と前記取得された右車輪の速度との実測比が、前記推定された一方の車輪の平均速度と前記漕ぎ動作が開始されたときの他方の車輪の速度との基準比に一致するように、前記左車輪及び前記右車輪の回転を制御する、車椅子。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車椅子であって、さらに、
前記実測比を前記基準比と比較し、その比較結果に基づいて、前記左車輪及び前記右車輪のいずれを制御するかを決定する制御対象決定部を備え、
前記回転制御部は、前記制御対象決定部により決定された車輪の回転を制御する、車椅子。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の車椅子であって、さらに、
前記漕ぎ動作判定部により前記搭乗者が前記左車輪及び前記右車輪の一方を漕いだと判定された場合、前記漕ぎ動作が開始された後の当該一方の車輪の平均速度を推定する片側速度推定部を備え、
前記回転制御部は、前記一方の車輪の速度が前記速度推定部により推定された平均速度となるように、前記一方の車輪の回転を制御する、車椅子。
【請求項8】
請求項7に記載の車椅子であって、
前記回転制御部は、他方の車輪の速度が、前記搭乗者が漕ぎ動作を開始したときの速度となるように、前記他方の車輪の回転を制御する、車椅子。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の車椅子であって、さらに、
前記車椅子の前後方向の加速度を取得する加速度取得部を備え、
前記漕ぎ動作判定部は、前記加速度取得部により前方向の加速度が所定期間継続して取得された場合、前記搭乗者が前記左車輪及び前記右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する、車椅子。
【請求項10】
請求項に記載の車椅子であって、
前記漕ぎ動作判定部は、
前記取得された左車輪の速度の変化と前記予測変化との第1相違度を算出し、前記取得された右車輪の速度の変化と前記予測変化との第2相違度を算出する相違度算出部と、
前記算出された第1相違度が所定の範囲に存在する場合、前記搭乗者が前記左車輪を漕いだと判定し、前記算出された第2相違度が前記所定の範囲に存在する場合、前記搭乗者が前記右車輪を漕いだと判定する相違度比較部とを含む、車椅子。
【請求項11】
請求項10に記載の車椅子であって、
前記相違度算出部は、複数の予測変化を取得し、前記第1相違度及び前記第2相違度を予測変化ごとに算出し、
前記相違度比較部は、各予測変化に対応する第1相違度のうち最小の第1相違度が前記所定の範囲に存在する場合、前記搭乗者が前記左車輪を漕いだと判定し、各予測変化に対応する第2相違度のうち最小の第2相違度が前記所定の範囲に存在する場合、前記搭乗者が前記右車輪を漕いだと判定する、車椅子。
【請求項12】
搭乗者の漕ぎ動作に応じて回転する左車輪及び右車輪を備える車椅子に搭載され前記左車輪及び右車輪の回転を制御する制御装置、として動作するコンピュータに、
前記左車輪の速度を取得するステップと、
前記右車輪の速度を取得するステップと、
前記取得された左車輪の速度の変化を、前記搭乗者の所定の漕ぎ動作によって生じると予測される前記左車輪及び前記右車輪の速度の予測変化と比較することにより、前記搭乗者が前記左車輪を漕いだか否かを判定するステップと、
前記取得された右車輪の速度の変化を前記予測変化と比較することにより、前記搭乗者が前記右車輪を漕いだか否かを判定するステップと、
前記左車輪を漕いだか否かの判定結果及び前記右車輪を漕いだか否かの判定結果に応じて、前記左車輪の回転及び前記右車輪の少なくとも一方の回転を制御するステップとを実行させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子に関し、さらに詳しくは、搭乗者の漕ぎ動作に応じて回転する左車輪及び右車輪を備える車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子は、歩行が困難な高齢者、障害者の移動を補助するために用いられる。車椅子の搭乗者は、車輪に取り付けられたハンドリムを操作することにより、車椅子を前後方向に動かすことができる。搭乗者は、左車輪の回転速度と右車輪の回転速度とを調整することによって、車椅子を旋回させることができる。
【0003】
車椅子が斜面上を水平に移動する場合、車椅子が、搭乗者の意図に反して下方向に移動する現象(片流れ現象)が発生する。たとえば、歩道が車道に向かって傾斜している場合、車椅子は、搭乗者の意図に関係なく、歩道から車道の方へ移動する。このように、搭乗者が、車椅子を意図通りに動かせないことがある。
【0004】
特許文献1には、左車輪及び右車輪にそれぞれ組み込まれたパウダブレーキを制御することによって、目標経路に沿って移動することができるパッシブ型移動台車が記載されている。しかし、特許文献1には、目標経路を設定する方法が具体的に記載されていない。
【0005】
非特許文献1には、搭乗者が車椅子を漕いだときに発生する入力トルクの最大値と、入力トルクが最大値に達するまでの時間とを用いて、車椅子の走行軌道を推定することが記載されている。しかし、非特許文献1に記載されている方法は、搭乗者が車椅子を漕ぎ始めてから、入力トルクが最大値に達するまで、車椅子の走行軌道を制御することができない。
【0006】
また、非特許文献1に記載されている方法は、搭乗者が車椅子を操作することを前提としている。非特許文献1では、重力など、搭乗者の漕ぎ動作以外の要因によって車椅子が移動することが考慮されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第4411415号公報
【0008】

【非特許文献1】「躍度最小軌道に基づくパワーアシスト車椅子の走行制御法」,電気学会論文誌C 125巻7号 1133~1139ページ、関 弘和,杉本 武明,多田隈 進著、一般社団法人 電気学会、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、搭乗者の漕ぎ動作以外の要因によって車椅子が移動する場合であっても、車輪の回転を制御できる車椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の車椅子は、搭乗者の漕ぎ動作に応じて回転する左車輪及び右車輪を備える。本発明の車椅子は、第1速度取得部と、第2速度取得部と、漕ぎ動作判定部と、回転制御部とを備える。第1速度取得部は、左車輪の速度を取得する。第2速度取得部は、右車輪の速度を取得する。漕ぎ動作判定部は、第1速度取得部により取得された左車輪の速度と、第2速度取得部により取得された右車輪の速度とに基づいて、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。回転制御部は、漕ぎ動作判定部による判定結果に応じて、左車輪及び右車輪の少なくとも一方の回転を制御する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明によれば、漕ぎ動作判定部は、左車輪の速度と右車輪の速度とに基づいて、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。回転制御部は、判定結果に応じて、左車輪及び右車輪の少なくとも一方の回転を制御する。これにより、搭乗者の漕ぎ動作以外の要因によって車椅子が移動する場合であっても、車輪の回転を制御することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
好ましくは、回転制御部は、漕ぎ動作判定部により搭乗者が左車輪及び右車輪を漕いでいないと判定された場合、左車輪及び右車輪の回転を停止させる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明によれば、搭乗者が左車輪及び右車輪を漕いでいないと判定された場合、車椅子が停止する。これにより、車椅子が搭乗者の意図に反する動きをすることを防止できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
好ましくは、本発明の車椅子はさらに、両側速度推定部を備える。両側速度推定部は、漕ぎ動作判定部により搭乗者が左車輪及び右車輪を漕いだと判定された場合、漕ぎ動作が開始された後の左車輪及び右車輪の平均速度を推定する。回転制御部は、推定された左車輪の平均速度と推定された右車輪の平均速度とを用いて、左車輪及び右車輪の少なくとも一方の回転を制御する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0015】
本発明によれば、搭乗者が左車輪及び右車輪を漕いだと判定された場合、左車輪及び右車輪の平均速度が推定される。回転制御部は、左車輪及び右車輪の平均速度を用いて、左車輪及び右車輪の回転を制御する。これにより、搭乗者の意図する軌道に沿って車椅子を走行させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0016】
好ましくは、回転制御部は、取得された左車輪の速度と取得された右車輪の速度との実測比が、推定された左車輪の平均速度と推定された右車輪の平均速度との基準比に一致するように、左車輪及び右車輪の少なくとも一方の回転を制御する。これにより、搭乗者の意図する旋回半径に沿って車椅子を走行させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0017】
本発明によれば、左車輪及び右車輪の回転が、左車輪の速度と右車輪の速度との実測比が、左車輪の平均速度と右車輪の平均速度との基準比に一致するように制御される。これにより、搭乗者の意図する軌道に沿って車椅子を走行させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0018】
好ましくは、本発明の車椅子はさらに、片側速度推定部を備える。片側速度推定部は、漕ぎ動作判定部により搭乗者が左車輪及び右車輪の一方を漕いだと判定された場合、漕ぎ動作が開始された後の当該一方の車輪の平均速度を推定する。回転制御部は、取得された左車輪の速度と取得された右車輪の速度との実測比が、推定された一方の車輪の平均速度と漕ぎ動作が開始されたときの他方の車輪の速度との基準比に一致するように、左車輪及び右車輪の回転を制御する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0019】
本発明によれば、搭乗者が一方の車輪を漕いだと判定された場合、一方の車輪の平均速度と、漕ぎ動作が開始されたときの他方の車輪との速度との基準比に基づいて、左車輪及び右車輪が制御される。これにより、搭乗者が一方の車輪のみを漕いだときであっても、搭乗者の意図する軌道に沿って車椅子を走行させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0020】
好ましくは、本発明の車椅子はさらに、制御対象決定部を備える。制御対象決定部は、実測比を基準比と比較し、その比較結果に基づいて、左車輪及び右車輪のいずれを制御するかを決定する。回転制御部は、制御対象決定部により決定された車輪の回転を制御する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0021】
本発明によれば、回転制御部は、実測比を基準比と比較した結果に基づいて、左車輪及び右車輪のいずれか一方の回転を制御する。これにより、実測比を基準比に速やかに近づけることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0022】
好ましくは、本発明の車椅子はさらに、片側速度推定部を備える。片側速度推定部は、漕ぎ動作判定部により搭乗者が左車輪及び右車輪の一方を漕いだと判定された場合、漕ぎ動作が開始された後の当該一方の車輪の平均速度を推定する。回転制御部は、一方の車輪の速度が速度推定部により推定された平均速度となるように、一方の車輪の回転を制御する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0023】
本発明によれば、搭乗者が左車輪及び右車輪の一方を漕いだと判定された場合、一方の車輪の平均速度が推定される。一方の車輪の回転は、推定された平均速度となるように制御される。これにより、搭乗者が意図的に一方の車輪のみを漕いだ場合であっても、搭乗者の意図する軌道に沿って車椅子を走行させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0024】
好ましくは、回転制御部は、他方の車輪の速度が、搭乗者が漕ぎ動作を開始したときの速度となるように、他方の車輪の回転を制御する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0025】
本発明によれば、他方の車輪の速度を、搭乗者が漕ぎ動作を開始したときの速度に維持される。このため、一方の車輪の回転のみを制御する場合に比べて、搭乗者の意図する軌道に沿って車椅子を走行させることが容易となる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0026】
好ましくは、本発明の車椅子はさらに、加速度取得部を備える。加速度取得部は、車椅子の前後方向の加速度を取得する。漕ぎ動作判定部は、加速度取得部により前方向の加速度が所定期間継続して取得された場合、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0027】
本発明によれば、漕ぎ動作判定部は、前方向の加速度が所定期間継続して取得された場合、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。左車輪及び右車輪の速度が変化するたびに、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定することがないため、左車輪及び右車輪の回転を安定的に制御できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0028】
好ましくは、漕ぎ動作判定部は、取得された左車輪の速度の変化を、搭乗者の所定の漕ぎ動作によって生じると予測される左車輪及び右車輪の速度の予測変化と比較することにより、搭乗者が左車輪を漕いだか否かを判定し、取得された右車輪の速度の変化を前記予測変化と比較することにより、搭乗者が前記右車輪を漕いだか否かを判定する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0029】
本発明によれば、漕ぎ動作判定部は、左車輪及び右車輪の速度の変化を予測変化と比較することにより、搭乗者が左車輪を漕いだか否かを判定し、搭乗者が右車輪を漕いだか否かを判定する。これにより、左車輪に対する漕ぎ動作の有無と、右車輪に対する漕ぎ動作の有無を個別に判定できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0030】
好ましくは、漕ぎ動作判定部は、相違度算出部と、相違度比較部とを備える。相違度算出部は、取得された左車輪の速度の変化と予測変化との第1相違度を算出し、取得された右車輪の速度の変化と予測変化との第2相違度を算出する。相違度比較部は、算出された第1相違度が所定の範囲に存在する場合、搭乗者が左車輪を漕いだと判定し、算出された第2相違度が所定の範囲に存在する場合、搭乗者が右車輪を漕いだと判定する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0031】
本発明によれば、搭乗者が左車輪を漕いだか否かが、左車輪の速度の変化と予測変化との第2相違度に基づいて判定される。搭乗者が右車輪を漕いだか否かが、右車輪の速度の変化と予測変化との第2相違度に基づいて判定される。これにより、左車輪に対する漕ぎ動作の有無と、右車輪に対する漕ぎ動作の有無とを高い精度で判定できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0032】
好ましくは、相違度算出部は、複数の予測変化を取得し、第1相違度及び第2相違度を予測変化ごとに算出する。相違度比較部は、各予測変化に対応する第1相違度のうち最小の第1相違度が所定の範囲に存在する場合、搭乗者が左車輪を漕いだと判定し、各予測変化に対応する第2相違度のうち最小の第2相違度が所定の範囲に存在する場合、搭乗者が右車輪を漕いだと判定する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0033】
本発明によれば、第1相違度及び第2相違度を予測変化ごとに算出し、最小の第1相違度及び最小の第2相違度を用いて、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。これにより、搭乗者が左車輪及び右車輪の少なくとも一方を漕いだか否かを判定する精度を向上させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0034】
本発明のプログラムは、本発明の車椅子が備える制御装置に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態による車椅子の背面図である。
【図2】図1に示す車椅子の左側面図である。
【図3】図1に示す車椅子の上面図である。
【図4】図1に示す制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図5A】図1に示す車椅子を搭乗者が漕いだときにおける左車輪の速度の変化を示す図である。
【図5B】図1に示す車椅子を搭乗者が漕いだときにおける右車輪の速度の変化を示す図である。
【図6】図4に示す速度検出プログラムのフローチャートである。
【図7】図4に示す車椅子制御プログラムのフローチャートである。
【図8】図5Aに示す左車輪の速度の変化を拡大したグラフである。
【図9】図7に示すマッチング処理のフローチャートである。
【図10】図1に示す車椅子と旋回半径との関係を示す図である。
【図11】図7に示す軌道制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。

【0037】
{車椅子の構造}
図1は、本実施の形態による車椅子1の背面図である。図2は、車椅子1の左側面図である。図3は、車椅子1の上面図である。図1~図3を参照して、車椅子1は、ブレーキ17a,17bが左車輪12a及び右車輪12bにそれぞれ取り付けられたパッシブ型車椅子である。車椅子1は、ブレーキ17a,17bを用いて左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御することにより、走行経路を制御できる。

【0038】
車椅子1は、シート11と、左車輪12aと、右車輪12bと、ハンドリム13a,13bと、キャスタ14a,14bと、フレーム15と、回転角センサ16a,16bと、ブレーキ17a,17bと、制御装置2とを備える。

【0039】
フレーム15は、車椅子1の本体を形成する。フレーム15には、シート11と、左車輪12aと、右車輪12bと、キャスタ14a、14bとが取り付けられる。左車輪12aは、車椅子1の左後輪である。右車輪12bは、車椅子1の右後輪である。ハンドリム13aは、左車輪12aの外側に取り付けられる。ハンドリム13bは、右車輪12bの外側に取り付けられる。キャスタ14aは、車椅子1の左前輪である。キャスタ14bは、車椅子1の右前輪である。

【0040】
搭乗者は、シート11に座り、ハンドリム13a,13bを回すことにより、車椅子1を前後に移動させる。すなわち、搭乗者は、ハンドリム13aを回すことにより、左車輪12aを漕ぐことができ、ハンドリム13bを回すことにより、右車輪12bを漕ぐことができる。

【0041】
回転角センサ16aは、左車輪12aの回転軸に取り付けられ、左車輪12aの回転位置を検出する。回転角センサ16bは、右車輪12bの回転軸に取り付けられ、右車輪12bの回転位置を検出する。ブレーキ17aは、左車輪12aに取り付けられ、左車輪12aの回転を抑制するためのブレーキトルクを発生させる。ブレーキ17bは、右車輪12bに取り付けられ、右車輪12bの回転を抑制するためのブレーキトルクを発生させる。回転角センサ16a,16bと、ブレーキ17a,17bとは、図示しない配線によって、制御装置2と接続される。

【0042】
制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの速度の変化に応じて、ブレーキ17a,17bを制御する装置である。制御装置2は、シート11の下に取り付けられる。制御装置2は、たとえば、マイクロコンピュータである。制御装置2の詳細については、後述する。

【0043】
{制御装置2の構成}
図4は、制御装置2の構成を示す機能ブロック図である。図4を参照して、制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)21と、RAM(Random Access Memory)22と、インタフェース23と、フラッシュメモリ24とを備える。

【0044】
CPU21は、フラッシュメモリ24に格納されたプログラムを実行する。RAM22は、制御装置2のメインメモリである。CPU21は、プログラムをRAM22にロードし、ロードされたプログラムを実行して制御装置2を制御する。

【0045】
フラッシュメモリ24は、書き換え可能な不揮発性の半導体メモリであり、車椅子制御プログラム3と、速度検出プログラム4と、複数のモデル化データ5と、左速度データ6と、右速度データ7とを格納する。フラッシュメモリ24に格納される各種データは、プログラムの動作に応じて、RAM22にロードされる。

【0046】
車椅子制御プログラム3は、速度検出プログラム4により取得される左車輪12a及び右車輪12bの速度に基づいて、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。車椅子制御プログラム3は、判定結果に応じて、左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方を制御する。

【0047】
速度検出プログラム4は、回転角センサ16aから出力される回転位置に基づいて、左車輪12aの速度を取得し、回転角センサ16bから出力される回転位置に基づいて、右車輪12bの速度を取得する。速度検出プログラム4は、角速度を検出してもよいし、車輪の接線方向の速度(以下、「線速度」と呼ぶ。)を取得してもよい。以下、特に説明のない限り、速度検出プログラム4が、線速度を検出する場合を説明する。図2を参照して、速度Vは、速度検出プログラム4により取得された左車輪12aの線速度であり、速度Vは、速度検出プログラム4により取得された右車輪12bの線速度である。

【0048】
モデル化データ5は、搭乗者の所定の漕ぎ動作によって生じると予測される速度V,Vの変化(予測変化)を記録したデータである。各モデル化データ5は、互いに異なる複数種類の漕ぎ動作に対応する予測変化を記録している。モデル化データ5の詳細は、後述する。

【0049】
左速度データ6は、速度検出プログラム4に取得された速度Vを時系列に記録したデータである。右速度データ7は、速度検出プログラム4に取得された速度Vを時系列に記録したデータである。

【0050】
{制御装置2の動作の概略}
以下、制御装置2の動作の概略を説明する。

【0051】
制御装置2は、回転角センサ16aから入力される左車輪12aの回転位置に基づいて、速度Vを取得する。制御装置2は、回転角センサ16bから入力される右車輪12bの回転位置に基づいて、速度Vを取得する。

【0052】
制御装置2は、速度Vの変化とモデル化データ5に記録された予測変化との相違度を左車輪12aの相違度として算出する。左車輪12aの相違度が所定の範囲に存在する場合、制御装置2は、搭乗者が左車輪12aを漕いだと判定する。同様に、制御装置2は、速度Vの変化と予測変化との相違度を右車輪12bの相違度として算出する。右車輪12bの相違度が所定の範囲に存在する場合、制御装置2は、搭乗者が右車輪12bを漕いだと判定する。

【0053】
制御装置2は、判定結果に応じて、左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方の回転を制御する。たとえば、制御装置2は、左車輪12aの回転を制御する場合、ブレーキ17aのブレーキトルクを調整する。ブレーキ17a,17bのブレーキトルクを調整することにより、車椅子1の走行経路を制御することができる。

【0054】
このように、制御装置2は、速度V,Vの変化に基づいて、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方を漕いだか否かを判定する。制御装置2は、判定結果に応じて左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方の回転を制御する。これにより、漕ぎ動作以外の要因で車椅子1が移動する場合であっても、車椅子1の動きを制御することができる。

【0055】
たとえば、制御装置2は、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bを漕いでいないと判定した場合、左車輪12a及び右車輪12bの回転を停止させる。搭乗者が車椅子1を漕いでいないにもかかわらず、車椅子1が動き始めた場合(車椅子1が斜面を下り始めた場合など)に、車椅子1を強制的に停止させることができる。

【0056】
また、制御装置2は、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bを漕いだと判定した場合、搭乗者が漕ぎ動作を開始した後の左車輪12a及び右車輪12bの平均速度を推定する。制御装置2は、速度Vと速度Vとの比(実測比)が、推定された左車輪12aの平均速度と推定された右車輪12bの平均速度との比(基準比)に一致するように、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御する。すなわち、制御装置2は、車椅子1が、基準比に基づいて定められる旋回半径に沿って曲がることができるように、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御する。これにより、制御装置2は、搭乗者の意図する経路に沿って、車椅子1を移動させることができる。

【0057】
{漕ぎ動作の判定の原理}
以下、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方を漕いだか否かを判定する原理を説明する。制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bが漕がれたか否かを車輪ごとに個別に判定する。以下、左車輪12aを例にして説明する。

【0058】
左車輪12aの位置を示すパラメータとして、x(t)を定義する。x(t)は、時刻tにおける、車椅子1が移動する平面100(図3参照)上での左車輪12aの位置(左車輪12aの重心の位置)を示す。

【0059】
本実施の形態では、躍度最小軌道モデルを搭乗者の漕ぎ動作に適用する。制御装置2は、速度Vの変化を、躍度最小軌道モデルにより得られる車輪の速度変化と比較することによって、搭乗者が左車輪12aを漕いだか否かを判定する。なお、躍度最小軌道モデルにより得られる車輪の速度変化は、左車輪12a及び右車輪12bで共通である。

【0060】
躍度最小軌道モデルにおいて、x(t)は、(式1)に示すように、評価関数Cを最小にする関数として定義される。(式1)において、tは、漕ぎ動作に要する時間である。d(x)/dtは、躍度である。
【数1】
JP0005948149B2_000002t.gif

【0061】
評価関数Cが最小となる極値を有する場合、x(t)は、オイラーポアソン方程式を満たすため、x(t)は、(式2)で表わされる。(式2)より、x(t)は、5次式で表わされる。
【数2】
JP0005948149B2_000003t.gif

【0062】
次に、x(t)を(式2)から求めるための条件を設定する。搭乗者が、停止している車椅子1を漕ぎ、所望の位置に車椅子1を停止させると仮定する。つまり、搭乗者は、左車輪12aを回転させる動作と、左車輪12aの回転を停止させる動作とを、連続して行う。この仮定に基づいて、搭乗者が漕ぎ動作を開始したとき(t=0)における左車輪12aの位置をxと設定し、搭乗者が漕ぎ動作を終了したとき(t=t)における左車輪12aの位置をxと設定する。漕ぎ動作の開始時(t=0)及び終了時(t=t)における、左車輪12aの速度及び接線方向の加速度を0に設定する。

【0063】
(式2)をこれらの設定の下で解くことにより、x(t)は、(式3)、(式4)で表わされる。
【数3】
JP0005948149B2_000004t.gif
【数4】
JP0005948149B2_000005t.gif

【0064】
(式3)及び(式4)において、x,x,tが、漕ぎ動作を特定するためのパラメータとなる。(式3)及び(式4)により示される車椅子1の予測軌道(躍度最小軌道モデルに基づく軌道)をx(x,t)(t)と定義する。また、左車輪12aの実際の軌道(実測軌道)をxreal(t)と定義する。下記(式5)に示すように、実測軌道xreal(t)を予測軌道x(x,t)(t)から差し引いた値の絶対値を積分する。(式5)により得られる積分値は、実測軌道が予測軌道と相違する度合いを示す。
【数5】
JP0005948149B2_000006t.gif

【0065】
積分値が予め定められた基準値よりも小さい場合、実測軌道が予測軌道に整合すると判定される。つまり、左車輪12aは、漕ぎ動作により移動したと判定される。積分値が基準値以上である場合、実測軌道は、予測軌道と整合しないと判定される。つまり、左車輪12aは、漕ぎ動作以外の要因により移動したと判定される。

【0066】
各モデル化データ5に記録される左車輪12aの速度の変化(予測変化)を、上述した予測軌道から計算することができる。したがって、(式5)において、予測軌道x(x,t)(t)を予測変化に置き換え、実測軌道xreal(t)を速度Vの変化に置き換えることにより、積分値は、速度Vの変化と予測変化との相違度を示す。速度Vの変化と予測変化との相違度に基づいて、速度Vが漕ぎ動作により変化したか否かを判定することができる。

【0067】
様々なx,tを設定することにより、互いに異なる複数の予測軌道を計算できる。つまり、搭乗者が左車輪12aを強く漕いだり、弱い力でゆっくり漕いだりした場合など、搭乗者の様々な動作に応じた複数の予測軌道を計算できる。これらの予測軌道から、搭乗者の様々な動作に応じた複数の予測変化を計算できる。このようにして計算された複数の予測変化が、各モデル化データ5に記録される。

【0068】
制御装置2は、複数のモデル化データ5を用いて、搭乗者が左車輪12aを漕いだか否かを判定する。制御装置2は、各モデル化データ5を用いて算出された複数の左車輪12aの相違度の中で、最小の相違度を選択する。最小の相違度がしきい値よりも小さければ、制御装置2は、搭乗者が左車輪12aを漕いだと判定する。

【0069】
制御装置2は、搭乗者が右車輪12bを漕いだか否かを判定するときにも、左車輪12aと共通のモデル化データ5を使用する。右車輪12bの物理特性(半径など)は、左車輪12aの物理的特性が同じであるため、左車輪12aと同じ予測軌道が得られるためである。

【0070】
{実測変化と予測変化との比較}
図5A及び図5Bは、漕ぎ動作により車椅子1が右旋回したときにおける各車輪の速度の変化を示すグラフである。図5Aは、左車輪12aの速度Vの変化を示す。図5Bは、右車輪12bの速度Vの変化を示す。図5A及び図5Bにおいて、速度V,Vを実線で示し、予測変化を破線で示す。

【0071】
図5A及び図5Bを参照して、車椅子1が右旋回しているため、速度Vが、速度Vよりも大きくなる。また、速度V,Vが、予測変化にほぼ整合している。

【0072】
なお、図5Aを参照して、1.75~3.0秒の期間において、速度Vが、予測変化を上回る傾向にある。この理由は、躍度最小軌道モデルにおいて、搭乗者が左車輪12aを停止させる動作を行うことが考慮されているのに対して、実際の車椅子1の操作では、搭乗者が、車椅子1を漕ぐたびに、車輪を停止させることがないためである。図5Bを参照して、実測変化は、全ての期間において、予測変化を下回る傾向にある。この理由は、搭乗者が、車椅子1を右旋回させるために、右車輪12bの回転を抑制しようとしているためであると考えられる。

【0073】
制御装置2は、速度V,Vの立ち上がり期間(図5A及び図5Bに示す例では、0.1~0.2秒の期間)に、速度V,Vを予測変化と比較して相違度を算出する。この期間では、速度V,Vは、予測変化にほぼ一致しているため、制御装置2は、速度V,Vが漕ぎ動作により変化したか否かを高い精度で判定できる。

【0074】
なお、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bを漕いで車椅子1を直進させる場合、速度V,Vの比は、ほぼ1対1となる。速度V,Vは、同一の予測変化に整合する。

【0075】
以下、制御装置2の動作について詳しく説明する。

【0076】
{各車輪の速度及び車椅子1の加速度の算出}
図6は、速度検出プログラム4のフローチャートである。以下、図6を参照して、速度検出プログラム4を実行する制御装置2の動作を説明する。

【0077】
制御装置2は、左車輪12aの回転位置が回転角センサ16aから入力された場合(ステップS21においてYes)、入力された回転位置に基づいて、速度Vを計算する(ステップS22)。具体的には、制御装置2は、直前に入力された回転位置と、新たに入力された回転位置とから、左車輪12aの回転角の変化を算出する。制御装置2は、算出された回転角の変化と、回転位置との入力間隔と、左車輪12aの半径とから、速度Vを算出する。制御装置2は、算出された速度Vを左速度データ6に記録する(ステップS23)。

【0078】
一方、制御装置2は、左車輪12aの回転位置が入力されない場合(ステップS21においてNo)、右車輪12bの回転位置が回転角センサ16bから入力されたか否かを確認する(ステップS24)。右車輪12bの回転位置が入力されない場合(ステップS24においてNo)、制御装置2は、ステップS21に戻る。

【0079】
制御装置2は、右車輪12bの回転位置が入力された場合(ステップS24においてYes)、速度Vを算出する(ステップS25)。ステップS25の処理は、ステップS22の処理と同様である。制御装置2は、算出された速度Vを、右速度データ7に記録する(ステップS26)。

【0080】
制御装置2は、ステップS23又はステップS26の後に、車椅子1の加速度を算出する(ステップS27)。具体的には、制御装置2は、左速度データ6に記録された過去2つの速度から、左車輪12aの矢印A方向(図3参照)の加速度を算出する。同様に、右車輪12bの加速度が算出される。制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの加速度の平均値を、車椅子1の加速度として算出する。車椅子1の加速度は、RAM22に時系列に記録される。

【0081】
制御装置2は、車椅子1の加速度を算出した後に、ステップS21に戻る。制御装置2は、電源が入力されている間、ステップS21~S27の処理を繰り返し実行する。

【0082】
{車輪の回転制御}
図7は、車椅子制御プログラム3のフローチャートである。以下、図7を参照して、車椅子制御プログラム3を実行する制御装置2の動作を説明する。制御装置2は、車椅子1が停止しているときに、車椅子制御プログラム3を開始すると仮定する。また、制御装置2は、車椅子制御プログラム3と並行して、速度検出プログラム4を実行している。

【0083】
制御装置2は、RAM22に記録された加速度を参照して、車椅子1の前方向(矢印A方向)の加速度がΔt1の期間継続して検出されたか否かを確認する(ステップS1)。Δt1は、たとえば、0.1秒である。

【0084】
前方向の加速度が継続して検出された場合(ステップS1においてYes)、制御装置2は、搭乗者が車椅子1を漕いだ可能性があると判断し、ブレーキを解除する(ステップS2)。具体的には、制御装置2は、ブレーキの解除を指示する制御信号を、ブレーキ17a,17bに出力する。これにより、制御装置2は、ブレーキ17a,17bの影響を受けることなく、速度V,Vを検出できる。

【0085】
制御装置2は、マッチング処理(ステップS3)を実行することにより、複数のモデル化データ5に記録された予測変化の中から、速度Vの変化に最も整合する予測変化と、速度Vの変化に最も整合する予測変化とを決定する。

【0086】
次に、制御装置2は、マッチング処理(ステップS3)の結果に基づいて、搭乗者が車椅子1を漕いだか否かを判定する(ステップS4)。搭乗者が車椅子1を漕いだと判定された場合、制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方の回転を制御する軌道制御処理を実行する(ステップS5)。これにより、制御装置2は、搭乗者の意図に応じた軌道に沿って、車椅子1を走行させることができる。搭乗者が車椅子1を漕いでいないと判定された場合、制御装置2は、車椅子1を緊急停止させる(ステップS45)。漕ぎ動作判定処理(ステップS4)の詳細は、後述する。

【0087】
制御装置2は、前方向の加速度をΔt1の期間継続して検出するまで(ステップS6においてYes)、軌道制御処理(ステップS5)を繰り返し実行する。搭乗者が車椅子1を漕ぐなどして、前方向への加速が新たに検出された場合(ステップS6においてYes)、制御装置2は、搭乗者が車椅子1を新たに漕いだかどうかを判定するために、ステップS2に戻る。

【0088】
以下、車椅子制御プログラム3の各ステップを詳しく説明する。

【0089】
{マッチング処理(ステップS3)}
図8は、図5Aに示すグラフの拡大図であり、0~0.5秒の期間の速度Vの変化を示している。図8を参照して、期間Δt1(0~0.1秒)は、前方向の加速度を検出するための期間である(ステップS1、図7参照)。0.1秒よりも後の期間において、ブレーキ17a,17bは、解除される(ステップS2)。制御装置2は、期間Δt1以降の車輪の速度を用いて、相違度を算出する。

【0090】
図9は、マッチング処理(ステップS3)のフローチャートである。制御装置2は、期間Δt2における速度Vを左速度データ6から取得し、期間Δt2における速度Vを右速度データ7から取得する(ステップS31)。また、制御装置2は、複数のモデル化データ5をフラッシュメモリ24からRAM22にロードすることにより、複数のモデル化データ5を取得する。ブレーキ17a,17bは、既に解除されているため(ステップS2)、期間Δt2における速度V,Vは、ブレーキの影響を受けていない。

【0091】
制御装置2は、全てのモデル化データ5を用いて相違度を計算したか否かを確認する(ステップS32)。制御装置2は、全てのモデル化データ5を使用していない場合(ステップS32においてNo)、相違度の計算に使用していないモデル化データ5を選択する(ステップS33)。

【0092】
制御装置2は、期間Δt2における速度Vの変化と、選択されたモデル化データ5に記録されている予測変化との相違度を計算する(ステップS34)。モデル化データ5には、期間Δt2(t=0.1~0.2秒)に対応する予測変化が記録されている。制御装置2は、速度Vを予測変化から差し引いた値の絶対値を合計することにより、相違度を算出する。制御装置2は、期間Δt2における速度Vの変化と、選択されたモデル化データ5に記録されている予測変化との相違度を計算する(ステップS35)。ステップS35の処理は、速度Vが用いられる点を除き、ステップS34と同様である。

【0093】
制御装置2は、全てのモデル化データ5を使用するまで(ステップS32においてYes)、ステップS33~S35を繰り返す。これにより、複数の左車輪12aの相違度と、複数の右車輪12bの相違度とが計算される。

【0094】
制御装置2は、全てのモデル化データ5を使用した場合(ステップS32においてYes)、複数の左車輪12aの相違度の中から、最小の相違度(以下、「左最小相違度」と呼ぶ。)を選択する(ステップS36)。制御装置2は、複数の右車輪12bの相違度の中から、最小の相違度(以下、「右最小相違度」と呼ぶ。)を選択する。

【0095】
{漕ぎ動作判定処理(ステップS4)}
以下、図7を参照して、漕ぎ動作判定処理(ステップS4)を説明する。制御装置2は、マッチング処理(ステップS3)により選択された左最小相違度及び右最小相違度を、予め設定されたしきい値と比較する(ステップS41~S43)。

【0096】
左最小相違度及び右最小相違度の両者がしきい値以上である場合(ステップS41においてYes)、制御装置2は、速度V,Vの変化が躍度最小軌道モデルに整合しないと判断する。制御装置2は、速度V,Vが搭乗者の漕ぎ動作以外の要因により変化したと判断し、車椅子1を緊急停止させる(ステップS45)。制御装置2は、最大のブレーキトルクを指示する信号をブレーキ17a,17bに出力する。

【0097】
右最小相違度のみがしきい値以上である場合(ステップS41においてNo、ステップS42においてYes)、制御装置2は、搭乗者が左車輪12aのみを漕いだと判定し、ステップS46を実行する。左最小相違度のみがしきい値以上である場合(ステップS41においてNo、ステップS42においてNo、ステップS43においてYes)、制御装置2は、搭乗者が右車輪12bのみを漕いだと判定し、ステップS47を実行する。ステップS46,S47の詳細は、後述する。

【0098】
左最小相違度及び右最小相違度の両者がしきい値よりも小さい場合(ステップS41においてNo、ステップS42においてNo、ステップS43においてNo)、制御装置2は、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bを漕いだと判定する。制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの平均速度を推定し、基準比を算出する(ステップS44)。基準比は、推定された左車輪12aの平均速度と、推定された右車輪12bの平均速度との比である。

【0099】
左車輪12aを例にして、平均速度の推定方法を詳しく説明する。各モデル化データ5は、躍度最小軌道モデルのパラメータx,tを記録している。xは、搭乗者が漕ぎ動作を終了した時刻(t=t)における車輪の位置である。

【0100】
制御装置2は、左最小相違度に対応するモデル化データ5から、x,tを抽出する。以下、左最小相違度に対応するモデル化データ5から抽出されたx,tを、xL_f,tL_fと記述する。制御装置2は、(式6)を用いて、左車輪12aの平均速度VL_estを推定する。
【数6】
JP0005948149B2_000007t.gif

【0101】
同様に、右車輪12bの平均速度VR_estは、(式7)で表わされる。(式7)において、xR_f,R_fは、右最小相違度に対応するモデル化データ5から抽出されたx,tである。
【数7】
JP0005948149B2_000008t.gif

【0102】
制御装置2は、算出された平均速度VL_est,VR_estを用いて、基準比を算出する。基準比は、(式8)により求められる。(式8)において、Dは、基準比を示す。平均速度VL_est,VR_est及び基準比Dは、軌道制御処理(ステップS5)で用いられる。
【数8】
JP0005948149B2_000009t.gif

【0103】
右最小相違度のみがしきい値以上である場合(ステップS42においてYes)、制御装置2は、ステップS46を実行する。制御装置2は、(式6)を用いて、平均速度VL_estを推定する。制御装置2は、モデル化データ5を用いて平均速度VR_estを推定できない。このため、制御装置2は、漕ぎ動作が開始されたとき(t=0秒)の速度Vを、平均速度VR_estに設定する。制御装置2は、(式8)を用いて、基準比Dを算出する。なお、制御装置2は、平均速度VR_estとして、漕ぎ動作が開始されてから(t=0)、相違度の計算に用いられる速度Vの取得が終了するまで(t=0.2秒)のいずれかの速度Vを設定すればよい。

【0104】
左最小相違度のみがしきい値以上である場合(ステップS43においてYes)、制御装置2は、ステップS47を実行する。制御装置2は、(式7)を用いて、平均速度VR_estを推定する。制御装置2は、モデル化データ5を用いて平均速度VL_estを推定できない。このため、制御装置2は、漕ぎ動作が開始されたとき(t=0秒)の速度Vを、平均速度VL_estに設定する。制御装置2は、(式8)を用いて、基準比Dを算出する。なお、制御装置2は、平均速度VL_estとして、0~0.2秒の期間のいずれかの速度Vを設定すればよい。

【0105】
{軌道制御処理(ステップS5)}
以下、平均速度VL_est,VR_estが、ステップS44の処理により推定された場合を例にして、軌道制御処理(ステップS5)を説明する。

【0106】
最初に、搭乗者の意図する軌道を、基準比Dに基づいて特定できる原理を説明する。図10は、車椅子1が左方向に旋回する場合における、速度V,Vと、車椅子1の旋回半径Rとの関係を示す図である。図10を参照して、Tは、左車輪12aと右車輪12bとの距離を示す。図10に示す車椅子1は、図3に示す上面図に対応する。この場合、車椅子1の旋回半径Rは、(式9)で表わされる。
【数9】
JP0005948149B2_000010t.gif

【0107】
距離Tは固定値であるため、旋回半径Rは、速度V,Vに依存する。すなわち、速度Vと速度Vとの比が一定であれば、車椅子1は、速度V又は速度Vが変化したとしても、旋回半径Rを維持することができる。制御装置2は、速度Vと速度Vとの比を基準比に一致させるように、ブレーキ17a,17bを制御する。これにより、制御装置2は、車椅子1を、搭乗者の意図する旋回半径Rで走行させることができる。

【0108】
図11は、軌道制御処理(ステップS5)のフローチャートである。図11を参照して、制御装置2は、実測比Dを算出する(ステップS51)。実測比Dは、現在の速度Vと現在の速度Vとの比である。実測比Dは、(式10)で表わされる。
【数10】
JP0005948149B2_000011t.gif

【0109】
制御装置2は、実測比Dを基準比Dと比較して、左車輪12a及び右車輪12bのいずれを制御するかを決定する(ステップS52)。つまり、制御装置2は、実測比Dを基準比Dに一致させるためには、左車輪12a及び右車輪12bのいずれにブレーキをかける必要があるかを判定する。

【0110】
制御装置2は、基準比Dが実測比Dよりも大きい場合、速度Vが過剰であると判定する。制御装置2は、速度Vを抑制するために、ブレーキ17aを制御することを決定する。つまり、左車輪12aが、制御対象として決定される。一方、制御装置2は、基準比Dが実測比Dよりも小さい場合、速度Vが過剰であると判定する。制御装置2は、速度Vを抑制するために、ブレーキ17bを制御することを決定する。つまり、右車輪12bが、制御対象として決定される。

【0111】
右車輪12bが制御対象に決定された場合(ステップS53においてYes)、制御装置2は、右車輪12bの目標速度VR_refを決定する(ステップS54)。目標速度VR_refは、(式11)で表わされる。
【数11】
JP0005948149B2_000012t.gif

【0112】
(式11)において、速度Vが、左車輪12aの目標速度VL_refとして代入される。速度Vを基準比Dの逆数に乗算することにより、目標速度VR_refを算出することができる。制御装置2は、算出された目標速度VR_refを用いて、ブレーキ17bを制御する(ステップS55)。制御装置2は、算出された目標速度VR_refに基づいて、ブレーキ17bのブレーキトルクを決定し、決定したブレーキトルクに対応する制御信号をブレーキ17bに出力する。

【0113】
一方、左車輪12aが制御対象に決定された場合(ステップS53においてNo)、制御装置2は、目標速度VL_refを決定する(ステップS56)。目標速度VL_refは、(式12)で表わされる。
【数12】
JP0005948149B2_000013t.gif

【0114】
(式12)において、速度Vが、目標速度VR_refとして代入される。速度Vを基準比Dに乗算することにより、目標速度VL_refを算出することができる。制御装置2は、算出された目標速度VL_refを用いて、ブレーキ17aを制御する(ステップS57)。制御装置2は、算出された目標速度VL_refに基づいて、ブレーキ17aのブレーキトルクを決定し、決定したブレーキトルクに対応する制御信号をブレーキ17aに出力する。

【0115】
前方向の加速度が継続して検出されるまで(ステップS6においてYes,図6参照)、軌道制御処理(ステップS5)が繰り返し実行される。制御装置2は、フィードバック制御により、実測比Dを基準比Dに近づけることにより、搭乗者の意図する軌道に沿って、車椅子1を走行させることができる。

【0116】
前方向の加速度が継続して検出された場合、制御装置2は、マッチング処理(ステップS3)を新たに実行する。このとき、マッチング処理を開始(t=0.1秒)するときの速度V,Vが、モデル化データ5に記録される予測変化の初期速度(V=0)に一致しない場合がある。この場合、制御装置は、t=0.1秒における速度V,Vを予測変化に加算して、マッチング処理を実行する。

【0117】
また、搭乗者が左車輪12aのみを漕いだと判定した場合、搭乗者が右車輪12bのみを漕いだと判定した場合も同様の処理が実行される。これにより、搭乗者が一方の車輪を漕いだ場合であっても、制御装置2は、搭乗者の意図する経路に沿って車椅子1を走行させることができる。車椅子が斜面を水平に走行しているときに、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bのいずれか一方を漕ぐことが考えられる。このような場合に、制御装置2は、実測比Dcを基準比Dsに近づけるように、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御することにより、搭乗者の意図に沿った経路で車椅子1を走行させることができる。

【0118】
以上説明したように、制御装置2は、速度V,Vの変化が躍度最小軌道モデルに整合するかどうかを判定する。これにより、搭乗者が車椅子1を漕いでいないときに、車椅子1が移動を開始したとしても、車椅子1を適切に制御できる。また、制御装置2は、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方を漕いだと判定した場合、実測比Dを基準比Dに近づけるように、左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方の回転を制御する。これにより、制御装置2は、搭乗者の意図する軌道に沿って、車椅子1を走行させることができる。

【0119】
なお、上記実施の形態において、搭乗者が左車輪12aのみを漕いだと判定した場合(ステップS42においてYes)、又は、搭乗者が右車輪12bのみを漕いだと判定した場合(ステップS43においてYes)、基準比Dが算出される例を説明したが、これに限られない。この場合、制御装置2は、搭乗者により漕がれた一方の車輪を平均速度に維持するようにブレーキを制御してもよい。他方の車輪の速度は、ユーザが漕ぎ動作を介したときの速度に維持される。たとえば、搭乗者が車椅子1を左方向に急旋回させる場合、左車輪12aはほとんど回転しないため、基準比Dを算出することができないと考えられる。このように、制御装置2は、基準比Dsを算出することなく、車輪の回転を制御してもよい。

【0120】
上記実施の形態において、車椅子1が、ブレーキ17a,17bを備える例を説明したが、これに限られない。車椅子1は、ブレーキ17a,17bに代えて、左車輪12a及び右車輪12bをそれぞれ駆動させるモータを備えてもよい。あるいは、ブレーキ及びモータが、左車輪12a及び右車輪12bのそれぞれに取り付けられてもよい。つまり、制御装置2は、ブレーキ又はモータを制御することにより、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御することができればよい。

【0121】
上記実施の形態において、制御装置2は、マッチング処理(ステップS3)の結果に応じて、緊急停止(ステップS45)又は軌道制御処理(ステップS5)を実行する例を説明したが、これに限られない。たとえば、車椅子制御プログラム3において、軌道制御処理(ステップS5)を省略してもよい。この場合、制御装置2は、左最小相違度及び右最小相違度がしきい値以上である場合に限り(ステップS41においてYes)、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御して、車椅子1を緊急停止させる(ステップS45)。これにより、車椅子1が搭乗者の意図に関係なく動き出すことを防止できる。あるいは、制御装置2は、緊急停止(ステップS45)を省略してもよい。

【0122】
上記実施の形態において、制御装置2は、回転角センサ16a,16bを用いて、速度V,Vを取得する例を説明したが、これに限られない。制御装置2は、回転角センサ16a,16bに代えて、左車輪12a及び右車輪12bに角速度センサをそれぞれ取り付けてもよい。この場合であっても、制御装置2は、速度V,Vを取得することができる。

【0123】
上記実施の形態において、制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの線速度を用いて、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御する例を説明したが、これに限られない。制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの角速度を用いて、左車輪12a及び右車輪12bの回転を制御してもよい。

【0124】
上記実施の形態において、制御装置2は、軌道制御処理(ステップS5)を実行するときに、左車輪12a及び右車輪12bのいずれか一方の回転を制御する例を説明した。しかし、制御装置2は、左車輪12a及び右車輪12bの両者の回転を制御することによって、実測比Dを基準比Dに近づけてもよい。

【0125】
上記実施の形態において、制御装置2は、左最小相違度及び右最小相違度がしきい値よりも小さい場合(ステップS43においてNo)、実測比Dが基準比Dに一致するように、左車輪12a及び右車輪12bの一方の車輪の回転を制御する例を説明した(ステップS5)。しかし、制御装置2は、左最小相違度及び右最小相違度がしきい値よりも小さい場合(ステップS43においてNo)、軌道制御処理(ステップS5)において、下記の処理を実行してもよい。制御装置2は、左車輪12aの速度Vが平均速度VL_estとなるようにブレーキ17aを制御し、右車輪12bの速度Vが平均速度VR_estとなるようにブレーキ17bを制御する。すなわち、制御装置2は、搭乗者が左車輪12a及び右車輪12bを漕いだと判定した場合(ステップS43においてNo)、平均速度VL_est,VR_estを用いて、左車輪12a及び右車輪12bの少なくとも一方の回転を制御すればよい。

【0126】
上記実施の形態において、予測変化が、躍度最小軌道モデルにより得られる例を説明したが、躍度最小軌道モデル以外のモデルを用いて、予測変化を計算してもよい。つまり、予測変化は、搭乗者の漕ぎ動作をモデル化した関数により得ることができればよい。

【0127】
上記実施の形態において、制御装置2は、左車輪12aの相違度を算出し(ステップS34)、左車輪12aの相違度に基づいて、搭乗者が左車輪12aを漕いだか否かを判定する例を説明した(ステップS4)。しかし、制御装置2は、相違度を算出する方法以外の方法を用いて、搭乗者が左車輪12aを漕いだか否かを判定してもよい。たとえば、制御装置2は、速度Vの変化に整合する予測変化を、最小二乗法を用いて特定することができた場合、搭乗者が左車輪12aを漕いだと判定してもよい。すなわち、制御装置2は、速度Vの変化を予測変化と比較することにより、搭乗者が左車輪12aを漕いだか否かを判定すればよい。右車輪12bについても同様である。

【0128】
上記実施の形態において、制御装置2は、フラッシュメモリ24に記憶されているモデル化データ5を取得する例を説明した。しかし、制御装置2は、予め設定された関数を用いて、予測変化を生成してもよい。たとえば、制御装置2には、搭乗者の漕ぎ動作をモデル化することにより得られた関数f(t)が設定されている。制御装置2は、期間Δt2における予測変化を関数f(t)から生成し、生成した予測変化を速度V,Vと比較すればよい。この場合、フラッシュメモリ24は、複数種類の関数f(t)を記憶してもよい。あるいは、フラッシュメモリ24は、1つの関数f(t)を記憶し、関数f(t)に含まれる定数に関して、様々な値を記憶してもよい。この場合、制御装置2は、複数の予測変化を1つの関数f(t)から取得することができる。

【0129】
上記実施の形態において、車椅子制御プログラム3及び速度検出プログラム4が、マイクロコンピュータにインストールされている例を説明した。これらのプログラムをインストールする方法は、特に限定されない。たとえば、車椅子制御プログラム3は、ネットワークに接続されたサーバからダウンロードされ、マイクロコンピュータにインストールされてもよい。あるいは、車椅子制御プログラム3を記録したコンピュータ読み取り可能な媒体(たとえば、光ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、フレキシブルディスクなど)が配布されている場合、車椅子制御プログラム3は、その媒体からマイクロコンピュータにインストールされてもよい。

【0130】
上記実施の形態において、制御装置2がマイクロコンピュータである場合を例に説明したが、これに限られない。制御装置2は、ハードウェア回路により構成されてもよい。

【0131】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 車椅子
2 制御装置
3 車椅子制御プログラム
4 速度検出プログラム
5 モデル化データ
12a 左車輪
12b 右車輪
13a,13b ハンドリム
16a,16b 回転角センサ
17a,17b ブレーキ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5A】
4
【図5B】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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