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明細書 :脂肪族ポリアミド繊維基布複合体からの脂肪族ポリアミドの再生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5110704号 (P5110704)
公開番号 特開2009-286867 (P2009-286867A)
登録日 平成24年10月19日(2012.10.19)
発行日 平成24年12月26日(2012.12.26)
公開日 平成21年12月10日(2009.12.10)
発明の名称または考案の名称 脂肪族ポリアミド繊維基布複合体からの脂肪族ポリアミドの再生方法
国際特許分類 C08J  11/08        (2006.01)
C08J  11/16        (2006.01)
C08J  11/24        (2006.01)
B60R  21/16        (2006.01)
FI C08J 11/08 ZAB
C08J 11/16
C08J 11/24
B60R 21/16
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2008-139606 (P2008-139606)
出願日 平成20年5月28日(2008.5.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行者名:社団法人化学工学会 刊行物名:化学工学会第73年会(2008)研究発表講演要旨集 発行年月日:平成20年2月17日
審査請求日 平成23年5月18日(2011.5.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】田村 裕
【氏名】戸倉 清一
【氏名】山本 秀樹
【氏名】長濱 英昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114421、【弁理士】、【氏名又は名称】薬丸 誠一
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
【識別番号】100134452、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 雄一
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特表2004-521153(JP,A)
特表2008-509255(JP,A)
特表2003-535942(JP,A)
特開平07-286061(JP,A)
特開2006-241624(JP,A)
調査した分野 C08J11/00-11/28
B29B17/00-17/04
特許請求の範囲 【請求項1】
塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液によって、脂肪族ポリアミド繊維の基布に、シリコーン及びポリエチレンの少なくともいずれか一方が夾雑物として具備された脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から脂肪族ポリアミドのみを抽出し、再生することを特徴とする脂肪族ポリアミドの再生方法。
【請求項2】
塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液によって、脂肪族ポリアミド繊維の基布に、シリコーン及びポリエチレンが夾雑物として具備された脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から脂肪族ポリアミドのみを抽出し、再生することを特徴とする脂肪族ポリアミドの再生方法。
【請求項3】
塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液に、脂肪族ポリアミド繊維基布複合体を浸漬することによって脂肪族ポリアミドのみを抽出する請求項1又は2記載の脂肪族ポリアミドの再生方法。
【請求項4】
炭素数1~4のアルキルアルコールが、メタノール又はエタノールである請求項1乃至3のいずれかに記載の脂肪族ポリアミドの再生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリアミド繊維の基布に他の合成樹脂等をコーティング等によって被覆加工し、或いは脂肪族ポリアミド繊維の基布に他の合成樹脂等を夾雑物として混入したような脂肪族ポリアミド繊維基布複合体、特に廃棄物である脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から、脂肪族ポリアミドを樹脂ペレットや樹脂チップ等の有価物として再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維基布に合成樹脂をコーティング法、押出し法、カレンダー法、ディッピング法等によって被覆加工したシート状物を、各種製品の用途に適用することが広く行われている。脂肪族ポリアミド繊維は、そのような繊維基布として用いられる代表的なものの1つである。
【0003】
脂肪族ポリアミド繊維を基布として合成樹脂をコーティング等によって被覆加工した製品も種々存在し、たとえば自動車用エアーバッグ等はその1つである。自動車用エアーバッグは、当初種々の材料で開発されてきたが、最近では脂肪族ポリアミド繊維の織布が基布として用いられ、特にナイロン66織布を基布とするものに統一されつつある。これは、ナイロン66織布の優れた強靱性や耐熱性がエアーバッグ材料として最適であると認識されたためである。
【0004】
このような自動車用エアーバッグは、運転者等の安全を確保するために、最近の新車にはすべて装着される傾向にある。ところが、このようなエアーバッグは、製造工程で多くの端材が廃棄物として生じるので、そのような廃棄物を再資源化することが課題とされていた。また使用済みのエアーバッグも今後は多量に発生することが予測されるので、その処理も今後の大きな課題である。
【0005】
そして、このような廃棄物の再資源化は、自動車用エアーバッグに限ったことではなく、脂肪族ポリアミド繊維を基布として合成樹脂をコーティング等によって被覆加工した他の製品についても同様に要請されることである。このような脂肪族ポリアミド繊維を基布とする製品の再資源化は、脂肪族ポリアミドを樹脂として再利用することで有効になされる。
【0006】
脂肪族ポリアミド繊維を基布とする製品から、脂肪族ポリアミドを樹脂として再利用する場合、たとえば手作業によってコーティング等で被覆加工された合成樹脂の夾雑物を除去することが考えられるが、コストが非常に高くなり、実用には供し難いという問題がある。また、溶融によって、被覆加工された合成樹脂と脂肪族ポリアミド繊維とを分離することも考えられるが、脂肪族ポリアミド繊維は本来薬剤などによって溶解させ難いものであり、また被覆加工された合成樹脂等の夾雑物は、脂肪族ポリアミド繊維の基布に強固に固着された状態であるので、溶融のような方法で分離するのは実質的には不可能であった。
【0007】
このため、脂肪族ポリアミド繊維を基布とする製品の廃棄物を再資源化する技術として、たとえば下記特許文献1のような特許出願がなされている。この特許文献1に係る発明は、再生ペレットの製造法に関するもので、エアーバッグの基布の端材および廃材を小片に粉砕し、該小片を溶融混練してペレット化する再生ペレットの製造法において、前記小片に粉砕する際、凹形状の可動刃と固定された平刃からなる裁断機を用いることを特徴とする再生ペレットの製造法である。
【0008】
この特許文献1に係る発明は、あくまでエアーバッグの基布の端材および廃材を小片に粉砕する際の手段を改良したにすぎないもので、小片化した後に溶融混練することに着目したものではない。
【0009】
しかしながら、上述のように脂肪族ポリアミド繊維は本質的に溶解させ難いものであるので、たとえ合成樹脂夾雑物が被覆加工された脂肪族ポリアミド繊維の基布を小片化したとしても、実際に溶融混練して脂肪族ポリアミドのみを分離し、樹脂としてペレット化するのは困難である。
【0010】

【特許文献1】特開2003-191239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、煩雑な操作を伴うことなく、多大なコストをかけることなく、脂肪族ポリアミド繊維の基布に他の合成樹脂等をコーティング等によって被覆加工し、或いは脂肪族ポリアミド繊維の基布に他の合成樹脂等を夾雑物として混入したような脂肪族ポリアミド繊維基布複合体、特に廃棄物である脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から、脂肪族ポリアミドを樹脂ペレットや樹脂チップ等の有価物として再生、再利用する操作を非常に容易に且つ確実に行うことのできる再生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、脂肪族ポリアミドを溶解させる場合、高濃度蟻酸、塩化カルシウムのアルコール溶液等、限られた溶媒にしか溶解させることができず、とりわけ塩化カルシウムのアルコール溶液は、蟻酸に比べて作業環境が穏やかな上、可溶性物質も限られているので分別抽出し易いという点に着目し、このような塩化カルシウムのアルコール溶液を用いることで、脂肪族ポリアミド繊維の基布と、その基布に被覆加工された合成樹脂若しくは夾雑物とそして混入された合成樹脂を分離し、脂肪族ポリアミドのみを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液によって、脂肪族ポリアミド繊維の基布にシリコーン及びポリエチレンの少なくともいずれか一方が夾雑物として具備された脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から脂肪族ポリアミドのみを抽出し、再生することを特徴とする脂肪族ポリアミドの再生方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述のような塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液によって、脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から脂肪族ポリアミドのみを抽出し、再生する方法であるため、脂肪族ポリアミド繊維基布に被覆加工され、或いは夾雑物として混入された合成樹脂であるシリコーン及びポリエチレンの少なくともいずれか一方と、基布を構成する脂肪族ポリアミドとの、上記のような抽出液に対する溶解度の差によって、脂肪族ポリアミドのみを抽出して、被覆加工され、或いは夾雑物として混入された合成樹脂から容易に分離することができ、脂肪族ポリアミドを樹脂として再生する操作を容易且つ確実に行うことができるという効果がある。
【0015】
この結果、繊維基布である脂肪族ポリアミドと、夾雑物である他の合成樹脂とをそれぞれ再利用することも可能となり、ひいてはこれら石油資源の節約を図ることができるという効果がある。
【0016】
さらに、上記従来の技術のような、合成樹脂が被覆加工などされた脂肪族ポリアミド繊維基布複合体を小片化するような技術や、脂肪族ポリアミド繊維基布と、被覆加工された合成樹脂とを手作業によって分離させるような技術に比べて、作業が容易で作業性が著しく向上し、処理コストも著しく低減することができるという効果がある。
【0017】
さらに、多量に発生する生分解性に乏しい脂肪族ポリアミド繊維基布複合体の廃棄物がそのまま放置される可能性も少なくなり、燃焼等による処理も不要となるので、環境保全にも寄与するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の脂肪族ポリアミドの再生方法は、上述のように、塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液によって、脂肪族ポリアミド繊維の基布にシリコーン及びポリエチレンの少なくともいずれか一方が夾雑物として具備された脂肪族ポリアミド繊維基布複合体から脂肪族ポリアミドのみを抽出し、再生する脂肪族ポリアミドの再生方法である。シリコーン及びポリエチレンの少なくともいずれか一方の夾雑物は、たとえばコーティング等の被覆加工によって具備される。
【0019】
脂肪族ポリアミドのみを抽出する溶媒として、上記のように塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液が用いられる。炭素数1~4のアルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等を用いることが可能であるが、溶解度が良好である等の理由により、特にメタノール若しくはエタノールを用いることが望ましい。
塩化カルシウムとしては、水和物及び無水物のいずれも使用することができ、水和物としては、一般に市販されていて入手が容易であること、後述の実施形態や実施例に示すように、脂肪族ポリアミドに対して優れた溶解度を示す等の理由により、2水和物を用いるのが望ましい。
塩化カルシウムは、このような2水和物の他に、1水和物、4水和物、6水和物等の形態をとることも知られており、そのような1水和物、4水和物、6水和物等を使用することも可能である。ただし、2水和物のように原料としての入手が容易でないことから、塩化カルシウム無水物をメタノール、エタノール等の炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解したアルコール溶液に、各種の水和物に相当する計算量の水を添加して、脂肪族ポリアミドの抽出液とすることも可能である。
すなわち、本発明において、「塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液」とは、塩化カルシウムの無水物や水和物を炭素数1~4のアルキルアルコールのみで溶解したアルコール溶液を意味する他、塩化カルシウム無水物を炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解するとともに、各種の水和物に相当する計算量の水、或いはそのような水和物に相当する計算量ではないが、塩化カルシウムを好適に溶解させることのできる所定量の水を添加して調製したような溶液をも含むことを意味する。
また、本発明において、「塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解する」とは、塩化カルシウムが完全に溶解されていることを要求するものではないが、脂肪族ポリアミドの溶解度を上げるためには、塩化カルシウムが結晶化しない程度に且つできるだけ多量の塩化カルシウムがアルコールに溶解していることが望ましい。この意味では、塩化カルシウム水和物、無水物の炭素数1~4のアルキルアルコール飽和溶液を用いるのが望ましく、特に飽和メタノール溶液若しくは飽和エタノール溶液を用いることが望ましく、とりわけ、塩化カルシウム・2水和物の飽和メタノール溶液を用いることが望ましい。
【0020】
また脂肪族ポリアミドを抽出する手段は特に限定されるものではなく、たとえば塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した抽出液に、上記のような脂肪族ポリアミド繊維基布複合体を浸漬させるような手段が採用される。この場合、たとえば浸漬槽に予め上記のような抽出液を貯留し、その浸漬槽に脂肪族ポリアミド繊維基布複合体が添加されることとなる。ただし、浸漬以外の手段によって脂肪族ポリアミドを抽出することも可能である。
【0021】
さらに、このような浸漬槽を用いる場合、その浸漬槽内に脂肪族ポリアミド繊維基布複合体を添加した後、その浸漬槽内の上記抽出液を攪拌することが望ましい。攪拌することによって、上記のような抽出液に対する脂肪族ポリアミドの抽出効率を向上させることができる。
【0022】
さらに、脂肪族ポリアミド繊維基布に被覆加工され、或いは夾雑物として混入される合成樹脂としては、シリコーン及びポリエチレンの少なくともいずれか一方が用いられる。
【0023】
たとえば自動車用エアーバッグに適用される脂肪族ポリアミド繊維基布複合体の場合には、シリコーン樹脂やポリエチレンフィルムがコーティング等によって積層されるので、これらシリコーンやポリエチレンが、脂肪族ポリアミドと分離され、脂肪族ポリアミドが抽出、再生されることとなる。特に、シリコーンやポリエチレンは、塩化カルシウムを炭素数1~4のアルキルアルコールで溶解して調製した上記のような抽出液に対して溶解しないので、脂肪族ポリアミドと分離することによる抽出、再生をより好適に行うことができる。
【0024】
さらに、本発明を適用する用途も問うものではなく、上記のような自動車用エアーバッグの他、脂肪族ポリアミド繊維基布複合体で構成された種々の製品の廃棄物に適用することが可能である。
【0025】
尚、本発明は、上記のように、脂肪族ポリアミド繊維基布複合体で構成された各種製品の廃棄物に適用することを主眼とするものではあるが、廃棄物以外の脂肪族ポリアミド繊維基布複合体に適用することも可能である。
【0026】
以下、本発明のより具体的な実施形態を、図1に基づいて説明する。この図1の実施形態では、脂肪族ポリアミドを抽出する溶液として、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液が用いられる。
【0027】
先ず、図1に示すように、塩化カルシウム・2水和物とメタノールとを混合する混合槽1に、塩化カルシウム・2水和物とメタノールとを供給する。そして、混合槽1内において、攪拌翼2で、メタノール中の塩化カルシウム・2水和物を攪拌する。これによって、塩化カルシウム・2水和物はメタノールに徐々に溶解し、一定時間経過後に、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールが得られることとなる。
【0028】
このように、飽和状態となった溶液に溶解しきれない塩化カルシウム・2水和物は、図1のようにケーキ(固形物)として分離され、前記混合槽1に供給される塩化カルシウム・2水和物として再利用される。
【0029】
ケーキと分離された溶液は、浸漬槽3へ供給される。浸漬槽3には、エアーバッグを構成している脂肪族ポリアミド繊維基布複合体が添加され、前記塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールの溶液に浸漬される。そして、浸漬槽3内において、攪拌翼4で、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールの溶液中の脂肪族ポリアミド繊維基布複合体を攪拌する。
【0030】
このとき、複合体の基布を構成する脂肪族ポリアミド繊維は塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールに徐々に溶解し、脂肪族ポリアミドが塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール中に抽出されることとなる。
【0031】
一方、脂肪族ポリアミド繊維基布の表面にコーティング等によって積層されていたシリコーン樹脂やポリエチレンフィルムは、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールに溶解しないので、基布を構成していた脂肪族ポリアミドと好適に分離されることとなる。
このようにして分離した夾雑物であるシリコーン樹脂やポリエチレンフィルムは、再生品として再利用することが可能である。
【0032】
夾雑物から分離された脂肪族ポリアミドを溶解する塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液には、水又はメタノールが添加される。このように水又はメタノールを添加することによって、脂肪族ポリアミドの沈殿物が得られることとなる。この沈殿物は、乾燥等によって粉末化され、脂肪族ポリアミドの粉粒体、すなわち、いわゆるナイロンチップが得られることとなる。そして、ナイロンチップとして再利用されることとなる。
【0033】
脂肪族ポリアミドと分離された塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールは、前記混合槽1へ返送され、再利用される。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、脂肪族ポリアミド繊維基布にシリコーン樹脂及びポリエチレンフィルムがコーティング等によって積層された自動車用エアーバッグを構成する脂肪族ポリアミド繊維基布複合体を、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールに浸漬し、その複合体の夾雑物としてコーティング等によって積層されていたシリコーン樹脂及びポリエチレンフィルムを溶解させることなく、その複合体の基布を構成する脂肪族ポリアミドのみを塩化カルシウム・2水和物飽和メタノールに溶解させて抽出し、シリコーン樹脂及びポリエチレンフィルムと分離することができるので、脂肪族ポリアミドとシリコーン樹脂及びポリエチレンフィルムとをそれぞれ別々に再生して再利用することが可能となる。
【0035】
また、固形物として途中の過程で分離された塩化カルシウム・2水和物が混合槽1に返送されるとともに、脂肪族ポリアミド及び夾雑物のシリコーン樹脂及びポリエチレンフィルムと分離された塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液も混合槽1に返送されるので、脂肪族ポリアミドを抽出するために用いた薬剤が、系外に排出されることがないので、いわゆるクローズドシステムとして、環境保全を維持できる有用な再生方法を提供することが可能となる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、塩化カルシウムを、メタノール若しくはエタノールで飽和した溶液からなる抽出液、及びその飽和アルコール溶液に所定量の水を添加して調製した抽出液に、脂肪族ポリアミド繊維を溶解させて、その溶解度を試験した。
【0037】
すなわち、塩化カルシウムの無水物をメタノールに溶解させ、3.9M、4.3M、及び4.7Mの3種類の濃度の飽和メタノール溶液を調製した。この場合の3種類の濃度3.9M、4.3M、及び4.7Mは、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度を示すものである。さらに、このような3種類の濃度の飽和メタノール溶液に、水を添加して抽出液を調製した。そのときの水の添加率は、表1に示すように、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が4.7Mの場合には、抽出液全量に対して水が17.0容量%、34.0容量%、51.0容量%、及び68.0容量%となるようにそれぞれ飽和メタノール溶液に水を添加し、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が3.9Mの場合には、抽出液全量に対して水が14.0容量%、28.0容量%、42.0容量%、及び56.0容量%となるようにそれぞれ飽和メタノール溶液に水を添加し、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が4.3Mの場合には、抽出液全量に対して水が15.5容量%、31.0容量%、47.0容量%、及び62.0容量%となるように、それぞれ飽和メタノール溶液に水を添加する。このようにして、3種類の濃度の飽和メタノール溶液に、それぞれ4種類の異なる添加率となるように水を添加したものを、脂肪族ポリアミド繊維を溶解させる抽出液として調製した。
従って、水を添加していない3種類の濃度の飽和メタノール溶液を含めて、計15種類の抽出液が調製されることになる。これらの15種類の抽出液に、脂肪族ポリアミド繊維を添加して攪拌した。
メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が3種類の飽和メタノール溶液で相違していることに基づいて、それぞれの3種類の飽和メタノール溶液への水の添加率も相違しているが、これは3種類の濃度の飽和メタノール溶液中に溶解している塩化カルシウムが水和物であったと仮想した場合に、添加すべき水の計算量もそれぞれ相違することに起因するものである。
すなわち、本試験例においては、塩化カルシウムの無水物を試料に用いているが、水和物を用いることも想定して、2水和物、4水和物、6水和物、8水和物に相当する計算量の水が添加されている。従って、塩化カルシウムの1molに対して2倍、4倍、6倍、及び8倍molの水がそれぞれ添加されるので、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が相違すれば、抽出液全量中の水の添加率も相違することとなるのである。
尚、上述のように、塩化カルシウムの水和物としては、2水和物、4水和物、6水和物は存在するが、8水和物は存在しない。また8水和物に相当する計算量の水を添加すると、飽和メタノール溶液がかなり希釈されることになるので、脂肪族ポリアミド繊維の溶解度も低下することが想定される。従って、8水和物相当量の水を添加する試験を行う実益もさほどないとも思われる。
しかしながら、本試験例は、上述のように塩化カルシウムの水和物を用いることを想定して計算量の水を添加することもさることながら、むしろ塩化カルシウム飽和メタノール溶液に水を添加した場合、その水の添加量によって、脂肪族ポリアミド繊維の溶解度がどのように変化するかを確認することに重要な意義があり、その意味で、存在しない8水和物相当量の水を添加する場合の試験も行っているのである。
また、水和物を想定せずに、2倍mol、4倍mol、6倍mol以外の任意の量(たとえば1.5倍molや3倍mol等)の水を飽和メタノール溶液に添加して抽出液として調製することもむろん可能である。
【0038】
3.9M及び4.3Mの濃度の飽和メタノール溶液、及びその飽和メタノール溶液にそれぞれ塩化カルシウム1molに対して2倍mol、4倍mol、6倍mol、及び8倍molの水を添加した抽出液は、60℃で攪拌し、4.7Mの濃度の飽和メタノール溶液、及びその飽和メタノール溶液にそれぞれ塩化カルシウム1molに対して2倍mol、4倍mol、6倍mol、及び8倍molの水を添加した抽出液は、攪拌時の温度を60℃と23℃(室温)に代えて試験を行った。これらの温度で攪拌を行い、完全に溶解したなら、さらに脂肪族ポリアミド繊維を加えて攪拌した。この操作を繰り返して溶解しなくなるまで続けて溶解度を測定した。
【0039】
一方、塩化カルシウムの無水物をエタノールに溶解させ、4.57Mの濃度の飽和エタノール溶液を調製した。さらに、この飽和エタノール溶液に水を添加して抽出液を調製した。そのときの水の添加率は、表2に示すように、抽出液全量に対して水が17.0容量%、34.0容量%、51.0容量%、及び68.0容量%となるように調製した。従って、水を添加していない飽和エタノール溶液を含めて、計5種類の抽出液が調製されることになる。
そして、これらの5種類の抽出液に、脂肪族ポリアミド繊維を添加して攪拌した。攪拌時の温度は60℃と23℃(室温)に代えて試験を行った。これらの温度で攪拌を行い、完全に溶解したなら、さらに脂肪族ポリアミド繊維を加えて攪拌した。この操作を繰り返して溶解しなくなるまで続けて溶解度を測定した。
【0040】
飽和メタノール溶液を用いる場合の試験結果を表1に示し、飽和エタノール溶液を用いる場合の試験結果を表2に示す。尚、表1及び表2において、水の添加率は容量%であり、脂肪族ポリアミド繊維の溶解度は質量%である。
【0041】
【表1】
JP0005110704B2_000002t.gif

【0042】
【表2】
JP0005110704B2_000003t.gif

【0043】
表1からも明らかなように、飽和メタノール溶液を用いる場合であって、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が4.7M及び4.3Mの場合は、抽出液全量中の水が17.0容量%(15.5容量%)となるように水を添加した場合、つまり塩化カルシウム1molに対して2倍molの水を添加した場合に最も溶解度が高いという結果が得られた。これに対して、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度が3.9Mの場合は、水を添加しない場合に最も溶解度が高いという結果が得られた。また、メタノールに対する塩化カルシウムの体積モル濃度を高くするにつれて、溶解度が向上した。さらに、常温(23℃)で攪拌する場合に比べて、60℃で攪拌する場合の方が、溶解度が高いことがわかった。
【0044】
これに対して、飽和エタノール溶液を用いる場合は、表2からも明らかなように、抽出液全量中の水が33.0容量%(4倍mol)、50.0容量%(6倍mol)となるように水を添加した場合、つまり塩化カルシウム1molに対して4倍mol及び6倍molの水を添加した場合に溶解度が高いという結果が得られた。また、飽和メタノールの場合と同様に、常温(23℃)で攪拌する場合に比べて、60℃で攪拌する場合の方が、溶解度が高いことがわかった。
【0045】
(実施例2)
狭雑物としてポリエチレンフィルムを含む両面をシリコーンコーテイングした脂肪族ポリアミド織布1Kgを5リットルの塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液に浸漬し、室温で攪拌して脂肪族ポリアミド織布部分を完全に溶解させた。
【0046】
得られた粘調な溶液を細かいステンレスメッシュでろ過してシリコーンとポリエチレンフィルムを除去した。この脂肪族ポリアミド溶液に大過剰の水を加えて脂肪族ポリアミドを沈殿させた。ろ過捕集して得た沈殿を100℃で減圧乾燥して脂肪族ポリアミドの粉末を得た。この脂肪族ポリアミド粉末を直ちにエクストルーダーに載せ加熱・熔解させ空気中に押し出しカットして、いわゆるナイロンチップとした。尚、上記脂肪族ポリアミドを沈殿させるために、大過剰の水に代えてアルコール(好ましくはメタノール)を加えることも可能である。
【0047】
(実施例3)
狭雑物としてポリエチレンフィルムを含む両面をシリコーンコーテイングした脂肪族ポリアミド織布150gを5リットルの塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液に浸漬し、室温で攪拌して脂肪族ポリアミド織布部分を完全に溶解させた。
【0048】
得られた粘調な溶液を細かいステンレスメッシュでろ過してシリコーンとポリエチレンフィルムを除去した。この脂肪族ポリアミド溶液に大過剰の水を加えて脂肪族ポリアミドを沈殿させた。ろ過捕集して得た沈殿をFT-IRにより分析し、脂肪族ポリアミドであることを確認した。尚、上記脂肪族ポリアミドを沈殿させるために、大過剰の水に代えてアルコール(好ましくはメタノール)を加えることも可能である。
【0049】
(実施例4)
容積約6.6リットルの円筒型攪拌槽に塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液4.5リットルと1×1cmに裁断した脂肪族ポリアミド織布22.5gを加え、3枚プロペラ翼を用いて500rpmで24時間攪拌した。不溶部を濾別し、濾液に大過剰の水を加えて脂肪族ポリアミドを沈殿させた。沈殿物をPTFEフィルターで分離後、100℃で減圧乾燥して脂肪族ポリアミドの粉末を得た。
【0050】
濾液は蒸留してメタノールを回収し、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液作成に再利用した。また、蒸留に伴って析出した塩化カルシウム・2水和物も濾過・乾燥後、塩化カルシウム・2水和物飽和メタノール溶液作成に再利用した。尚、上記脂肪族ポリアミドを沈殿させるために、大過剰の水に代えてアルコール(好ましくはメタノール)を加えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】一実施形態の脂肪族ポリアミドの再生方法の工程を示すフロー図。
図面
【図1】
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