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明細書 :視野検査システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5421146号 (P5421146)
公開番号 特開2011-161122 (P2011-161122A)
登録日 平成25年11月29日(2013.11.29)
発行日 平成26年2月19日(2014.2.19)
公開日 平成23年8月25日(2011.8.25)
発明の名称または考案の名称 視野検査システム
国際特許分類 A61B   3/024       (2006.01)
A61B   3/113       (2006.01)
FI A61B 3/02 F
A61B 3/10 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 25
出願番号 特願2010-029718 (P2010-029718)
出願日 平成22年2月15日(2010.2.15)
審査請求日 平成25年2月6日(2013.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】小谷 賢太郎
【氏名】田村 俊樹
【氏名】朝尾 隆文
【氏名】堀井 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
審査官 【審査官】宮川 哲伸
参考文献・文献 国際公開第2006/106877(WO,A1)
特開2003-164425(JP,A)
特開2007-29112(JP,A)
特開2005-95572(JP,A)
国際公開第2006/030658(WO,A1)
調査した分野 A61B 3/00 - 3/18
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者の視線位置を検出して、該視線位置検出信号を出力する視野位置検出装置と、
固視点と該固視点から所定間隔離れた視標とを被験者に対して表示領域内に提示する提示装置と、
該提示装置が固視点と視標とを提示させるように制御する制御装置とを備える視野検査システムにおいて、
制御装置は、
視線位置検出装置から受信した視線位置検出信号に基づいて予め設定されている第1の基準時間以内に被験者の視線が固視点から視標に達したか否かを判定する判定手段と、
該判定手段が第1の基準時間以内に被験者の視線が固視点から視標に達したと判定したときの、視標を提示してから被験者の視線が固視点から視標に達する1回の測定にかかる反応時間を複数回分記憶する記憶手段と、
判定手段が視標に達したと判定したときに、提示装置に提示されている固視点を消滅させ、提示装置に提示されている視標を新たな固視点とし、該固視点に対して検査する表示領域内の任意の位置に新たな視標を提示する視標位置制御手段と、
記憶手段に記憶された反応時間の測定回数が所定回数に達したときに、この所定回数分の反応時間に基づき、所定の演算を行うことにより、被験者の視線が固視点から視標に達したか否かを判定するための第2の基準時間を算出する基準時間算出手段と、を備えることを特徴とする視野検査システム。
【請求項2】
制御装置は、被験者の視線が第1の基準時間以内に視標に達しないときに、その旨を報知する報知手段を更に備える請求項1に記載の視野検査システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の視野を検査する視野検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化により老化に伴う眼疾患が増加している。特に失明の大きな原因となっている緑内障は、日本では40歳以上の約20人に1人という高い有病率で、患者は約220万人いるとされている。緑内障は自覚症状がほとんどなく、緑内障であることが判明した時にはかなり症状が進行していることが多いため、精密な検査を実施する前段階として、視野に異常がある人とない人の切り分け(スクリーニング)を行う必要があり、場所を選ばずに多くの人を短時間で検査できる、スクリーニング用途の視野検査装置の必要性が述べられている。
【0003】
現在の臨床現場で普及している視野検査装置として、ゴールドマン(Goldman)視野計やハンフリー視野計がある。これらの視野計は緑内障の経過観察・治療方針を決める上では有用な視野検査装置である。ゴールドマン視野計は、視標の輝度、大きさを固定し、周辺から中心に向かって移動させ、イソプタ(等感度曲線)を求め、得られたイソプタから患者の視野を評価するものである。また、ハンフリー視野計は視標の提示位置を固定し輝度を変え測定点毎の輝度を求め、得られた輝度から患者の視野を評価するものである。これらの視野計を用いて視野を検査するためには、(1)視野検査装置内に固定された固視点を注視し続けるように医師が被験者に指示し、(2)被験者が固視点を注視した状態で、視野検査装置が固視点の周辺に視標を提示し、(3)固視点の周辺に提示された視標が見えた場合に被験者が視野検査装置の回答用ボタンを押すことで回答し、(4)被験者からの回答を視野検査装置が記録し、(5)視野検査装置に記録された回答に基づいて視野検査装置が被験者の視野の範囲を示す情報を出力する、という手順を踏む必要がある。ハンフリー視野計に関しては、(1)~(5)の前にある範囲の輝度の値を求め、そこから各検査点の輝度の値を推定するという作業が必要となる。これらの視野計による検査時間は片眼で10分から20分程度かかり、暗室のような制限された環境で検査を行う必要がある。また、検査方法が煩雑であり、教示を理解できない幼児や高齢者に対して、検査を行うことが難しいという問題がある。これらの問題点から従来の視野検査装置はスクリーニングに適していないと考えられている(特許文献1及び非特許文献1,2参照)。
【0004】
上記の視野検査は、視標が見えたかどうかの反応を示す際に、被験者の自主的な回答が必要となる。そのため、教示を理解できない乳幼児や高齢者に対しては、難しい検査である。この問題に対して、教示が不要で、被験者の自主的な回答を必要としない瞥見式視野検査装置の研究がなされている。例えば、固視点に対して、所定の視野の範囲にある視標を被験者に提示した際の眼球運動を観察する方法がある。この方法は、視覚系を持つ生物は視野内に対象物が現れると対象物の方向に視線を動かしてしまうという原理(定位反射)に基づくものである。この定位反射を観察する手段として、CCDカメラで撮影した顔画像からテンプレートマッピング法を利用して視線の方向を検出する方法や、視線位置検出装置を用いて視線の情報を得る方法が報告されている。この方法を利用すれば、眼球運動の動きから視標認識の有無を判断できるため、従来の検査装置のようにボタン押しによる回答を行う必要がなく、患者にとって煩雑さの少ない検査となる。
【0005】
しかし、視標検出の判断手法として、定位反射を用いる場合、2つの点で問題がある。まず、眼球運動が生じたとしても、生じる眼球運動の跳躍量が小さいため、その眼球運動が視標を検出できたことを示す定位反射による眼球運動なのか、偶発的な眼球運動(たとえば、固視微動)なのかを切り分けることが困難な点である。このため、被験者にとって本来見えていないはずの領域が見えていると判断されてしまうなどの誤った結果が出力されてしまう危険性があり、検査結果として、信頼性の乏しい結果となることが問題点として挙げられている。また、定位反射は試行回数が多くなると抑制されてしまい、運動自体が生じなくなる可能性が指摘されている。周辺視野に視標を提示した場合や成人に対して検査を行った際にも定位反射は生じにくい結果となったことが報告されている。これらのことから、広範囲の視野を幅広い年齢層の被験者に対して検査を行う場合に、視標検出の判断手法として定位反射を用いるには限界があると報告されている(非特許文献3~5参照)。
【0006】
網膜視神経節細胞は小さい物体や色覚、視力などを司る多数のP細胞と、大きな物体や急激に変化する視標を認識する少数で大型のM細胞やK細胞などから構成されている。近年の研究で初期の緑内障での視神経節細胞変性をM細胞で検出可能なことが明らかになり、M細胞をターゲットとしたFDT視野計が開発されている。FDT視野計は、白黒の縞模様を25Hzの周波数で交互に反転させ、正常なM細胞では視標が2重に見える錯視現象が起こるが変性を受けたM細胞では起こらないことを利用して視野異常を検出する原理であり、30秒程度の時間で片眼の検査をすることができるスクリーニングに適した装置である。しかし、FDTで正常と診断された被験者でもハンフリー視野計では異常となるケースもあり測定感度と特異度の評価が定まっていない(非特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2003- 542号公報
【0008】

【非特許文献1】日本視覚学会編、「視覚情報処理ハンドブック」、日本、朝倉書店、2001年、pp.547-549
【非特許文献2】橋本茂樹、「自動視野計を用いた動的視野測定プログラムの開発」、近畿大学医学雑誌、日本、近畿大学、2003年11月25日、Vol.28、No.3、pp.207-221
【非特許文献3】菅幹生、田畑慶人、永田啓、湊小太郎、千原國宏、「没入型提示装置を用いた幼児の量的視野測定スクリーニングシステムの開発(生体工学)」、電子情報通信学会論文誌 D-II、日本、社団法人 電子情報通信学会、2005年9月1日、Vol.J88、No.9、pp.1971-1978
【非特許文献4】田舎片悟、村上宗司、福島省吾、福永秀雄、前田史篤、可児一孝、田淵昭雄、「平面型ディスプレイを用いた他覚的瞳孔視野計測技術」、生体医工学:日本エム・イー学会誌、日本、社団法人日本生体医工学会、2005年3月10日、Vol.43、No.1、pp.179-183
【非特許文献5】井手口範男、中野泰志、布川清彦、「視野測定インタフェースとしてのサッカード特性の検討」、電子情報通信学会技術研究報告 WIT、日本、社団法人 電子情報通信学会、2006年10月5日、106巻、285号、pp.45-50
【非特許文献6】中野匡、「FDT(FDTスクリーナー,ハンフリーMATRIX),SWAP,MP-1(日常診療に役立つ眼科検査機器とその利用法)--(視力・色覚・視野)」、眼科、日本、金原出版、2007年9月、49巻、10号、pp.1503-1512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の問題点として、ゴールドマン視野検査装置またはハンフリー視野検査装置では、各点に対して、精密に検査していく必要があるため、検査時間が長いことにある。
【0010】
また、瞥見式視野検査装置は視標が検出できたかどうかを判断する手法として、定位反射を用いている。視標検出の判断手法として、定位反射を用いる場合、2つの点で問題がある。まず、眼球運動が生じたとしても、生じる眼球運動の跳躍量が小さいため、その眼球運動が視標を検出できたことを示す定位反射による眼球運動なのか、偶発的な眼球運動(たとえば固視微動)なのかを切り分けることが困難な点である。このため、被験者にとって本来見えていないはずの領域が見えていると判断されてしまうなどの誤った結果が出力されてしまう危険性があり、検査結果として、信頼性の乏しい結果となることが問題点として挙げられている。また、定位反射は試行回数が多くなると抑制されてしまい、運動自体が生じなくなる可能性が指摘されている。周辺視野に視標を提示した場合や成人に対して検査を行った際にも定位反射は生じにくい結果となったことが報告されている。これらのことから、広範囲の視野を幅広い年齢層の被験者に対して検査を行う場合に、視標検出の判断手法として定位反射を用いるには限界があると報告されている。更にFDT視野検査装置では、M細胞のみを対象にしているため正常眼圧緑内障には有力であるが、他の視神経節細胞の変性については評価できない欠点がある。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、客観的に短時間で視野を検査できる視野検査システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る視野検査システムは、被験者の視線位置を検出して、該視線位置検出信号を出力する視野位置検出装置と、固視点と該固視点から所定間隔離れた視標とを被験者に対して表示領域内に提示する提示装置と、該提示装置が固視点と視標とを提示させるように制御する制御装置とを備える視野検査システムにおいて、制御装置は、視線位置検出装置から受信した視線位置検出信号に基づいて予め設定されている第1の基準時間以内に被験者の視線が固視点から視標に達したか否かを判定する判定手段と、該判定手段が第1の基準時間以内に被験者の視線が固視点から視標に達したと判定したときの、視標を提示してから被験者の視線が固視点から視標に達する1回の測定にかかる反応時間を複数回分記憶する記憶手段と、判定手段が視標に達したと判定したときに、提示装置に提示されている固視点を消滅させ、提示装置に提示されている視標を新たな固視点とし、該固視点に対して検査する表示領域内の任意の位置に新たな視標を提示する視標位置制御手段と、記憶手段に記憶された反応時間の測定回数が所定回数に達したときに、この所定回数分の反応時間に基づき、所定の演算を行うことにより、被験者の視線が固視点から視標に達したか否かを判定するための第2の基準時間を算出する基準時間算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、固視点を注視する被験者の視線が固視点から移動し視標に達したときに、制御装置の判定手段は視線位置検出装置から入力される視線位置検出信号に基づき視線が固視点から視標に達したことを判定し、既に被験者が注視していない固視点を消滅させる。このとき被験者が注視している視標は、新たな固視点となる。被験者は提示装置に新たに視標が提示されるまで、新たな固視点を注視し続ける。制御装置は、新たな固視点に対して検査する新たな視標を提示装置の表示領域内に提示させ、検査するすべての視野に視標が提示されるまでこれを繰り返す。このように固視点の提示位置が固定されていないため、被験者は視線が固視点から視標に達すると再び視線を固視点に戻す必要がなく、客観的に短時間で視野を検査できる。
【0014】
また、一般的な被験者が視標を視認したことに伴い視線を固視点から視標に移動するのにかかる時間を第1の基準時間に設定し、第1の基準時間以上であれば、判定手段によって、被験者が視標を認識できなかったと判断し、提示した視標に相当する視野を異常として取り扱う。従って、被験者の視標視認の可否を視線が固視点から視標に第1の基準時間以内に移動するかによって判定することができる。被験者の視線が第1の基準時間以内に固視点から視標に達しなければ、視標位置制御手段によって、検査する他の視野の検査に移ることができ、検査時間の短縮を図ることができる。
【0015】
また、第1の基準時間以外にも第2の基準時間により視野異常を評価することもできる。この第2の基準時間は、判定手段の判定結果に基づき、各被験者が視標を認識したときの反応時間から算出されているため、各被験者毎の反応時間の個人差の影響を受けない基準時間であるといえる。
【0016】
また、本発明に係る視野検査システムの制御装置は、被験者の視線が第1の基準時間以内に視標に達しないときに、その旨を報知する報知手段を更に備えることが好ましい。かかる構成によれば、被験者は報知手段による報知により、提示装置に既に視標が提示されていることを知る。制御装置の視標位置制御手段は次に検査する視野に移るために被験者に視標を探索させ、視線を視標に移動させることができ、更なる検査時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の如く、本発明に係る視野検査システムによれば、客観的に短時間で視野を検査できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る視野検査システムの概略構成図を示す。
【図2】同実施形態に係る視野検査システムのブロック図を示す。
【図3】同実施形態に係る視野検査システムの制御装置の制御フローを示す。
【図4】同実施形態に係る視野検査システムの制御装置の制御フローを示す。
【図5】同実施形態に係る視野検査システムにおいて、被験者の視野が正常であった場合の検査手順を示す。
【図6】同実施形態に係る視野検査システムにおいて、被験者の視野が異常であった場合の検査手順を示す。
【図7】同実施形態に係る視野検査システムにおける被験者の視線移動のグラフであって、(a)は、視野が正常な被験者の視線移動のグラフ、(b)は、視野が異常な被験者の視線移動のグラフ、を示す。
【図8】同実施形態に係る視野検査システムにおける被験者の視線が固視点から視標まで移動するのにかかる経過時間のグラフであって、(a)は、視野が正常な被験者の視線移動のグラフ、(b)は、視野が異常な被験者の視線移動のグラフ、を示す。
【図9】同実施形態に係る視野検査システムにおける第2の基準時間を算出するために提示した視標の位置のグラフを示す。
【図10】(a)は、被験者Aの反応時間のヒストグラム、(b)は、被験者Bの反応時間のヒストグラム、(c)は、被験者Cの反応時間のヒストグラム、を示す。
【図11】(a)は、被験者Dの反応時間のヒストグラム、(b)は、被験者Eの反応時間のヒストグラム、を示す。
【図12】同実施形態に係る視野検査システムの実施例において提示した視標の位置のグラフを示す。
【図13】(a)は、被験者Aの検査結果を示し、(b)は、被験者Bの検査結果を示す。
【図14】(a)は、被験者Cの検査結果を示し、(b)は、被験者Eの検査結果を示す。
【図15】(a)は、被験者Fの検査結果を示し、(b)は、被験者Gの検査結果を示す。
【図16】(a)は、被験者Hの検査結果を示し、(b)は、被験者Iの検査結果を示す。
【図17】被験者Jの検査結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る視野検査システムの一実施形態について、図面を参酌しつつ、説明する。

【0020】
本実施形態に係る視野検査システムは、図1及び図2に示すように、被験者Pの視線位置を検出して、その視線位置検出信号を出力する視野位置検出装置1と、固視点aと該固視点aから所定間隔離れた視標bとを被験者Pに対して提示(表示)する提示装置2と、該提示装置2が固視点aと視標bとを提示させるように制御する制御装置3と、被験者Pの視線が(第1の)基準時間以内に視標bに達しないときに、その旨を報知する報知手段5とを備える。

【0021】
この視野検査システムは、まず、提示装置2に固視点aを提示し、被験者Pに視線を固視点aに注視させる。次に提示装置2に視標bを提示し、被験者Pが視標bを視認できるかを検査する。視標bを視認できたときは、被験者Pの視線が固視点aから視標bに移動する。被験者Pが視標bを視認できなかったときは、被験者Pの視線が固視点aから移動しないか、もしくは固視点aから視標bに移動するタイミングがずれる。視線位置検出装置1は、この被験者Pの視線位置を検出する。制御装置3は、この視線位置検出装置1から視線位置検出信号を受信して、被験者Pの視線が固視点aから視標bにどのように移動するかにより被験者Pが視標bを視認できたか否かを判別する。このようにして、視野検査システムは被験者Pの視野を検査する。

【0022】
固視点a及び視標bは、画面上に視覚的に表示されていないため、被験者Pには認識できないが、固視ズレの影響を抑えるため、100×100pixelの注視判定領域A,B(図5(a)参照)が与えられる。

【0023】
視野位置検出装置1は、本実施形態ではアイカメラである例を説明する。視野位置検出装置1は制御装置3に接続される。視野位置検出装置1は視線位置検出信号を制御装置3に出力する。視線位置検出信号は、被験者Pの視線位置に加え、被験者Pの頭部の姿勢に関する信号も含まれており、被験者Pの頭部の姿勢が変更されると、その都度提示装置2に提示する固視点aの位置を補正可能になっている。

【0024】
提示装置2は、固視点aと視標bを提示する略長方形状の検査用表示部21と、該検査用表示部21の四隅に設けられ、検査用表示部21の範囲を明示する4つのマーカー22と、検査用表示部21を制御する提示装置用制御装置23とを備える。マーカー22は、制御装置3に接続され、視野検査を開始するときなどに通電することによって点灯するLEDもしくは電球などの照明装置である。なお、マーカー22は、必ずしも四隅に設けられる必要はなく、四辺に設けられていてもよい。提示装置用制御装置23は、制御装置3に接続して検査用表示部21に表示する画像データの受信を受ける。

【0025】
制御装置3は、視線位置検出装置1、表示装置用制御装置23及び報知手段5を制御する制御部31と、該制御部31に接続され、視野検査の結果などを表示するディスプレイである結果表示用表示部32と、制御部31に接続され、必要な内容を入力・選択可能な入力手段33とを備える。入力手段33は、例えばキーボードやマウスなどである。また、制御装置3は、視野検査結果などをプリントアウトするための出力装置や、視野検査結果データを他のコンピュータに送信可能なようにLANなどに接続されていてもよい。

【0026】
制御部31は、各装置を制御するための制御プログラムを実行するCPU34と、検査結果などを記憶するRAM35と、視野検査システムの制御プログラムが記憶されているROM36とを備える。

【0027】
CPU34は、制御プログラムを処理する処理部と、提示回数等をカウントする回数カウンタとを備える。回数カウンタは、0から1刻みで加算するように構成される。この回数カウンタは、後述する第1判定プログラム及び第2判定プログラム等で用いられる。

【0028】
RAM35は、提示する視標毎に、検査に伴う情報である視標提示配列情報を記憶する記憶領域を備える。視標提示配列情報は、提示回数カウント値j毎に、「視標提示位置情報P(j)」、「反応時間T(j)」、「異常判定カウント値r(j)」、「判定結果R(j)」を記憶可能な一次元配列のデータ構造を有する。

【0029】
提示回数カウント値jは、提示する視標毎に割り当てられる値である。視標提示位置情報P(j)は、提示する視標の位置を極座標で示したものであり、固視点を中心として動径及び偏角で示される。反応時間T(j)は、視標を提示してから被験者の視線が固視点から視標に移動するのにかかる時間である。異常判定カウント値r(j)は、提示回数カウント値j毎に記憶される視標提示位置情報に対応する視標位置を被験者が認識できているか否かを示す値である。本実施形態では、1箇所の視野領域に対して2回反応時間を計測し、かつ、この2回計測した反応時間がそれぞれ異なる基準時間で比較し、各基準時間以内に被験者が視標を認識できたか否かを判定する。反応時間が基準時間を越えていると判定されると、+1加算される。異常判定カウント値r(j)は、最大4まで加算される。判定結果R(j)は、異常判定カウント値r(j)に基づき被験者が視標を視認できているかを判定した結果である。本実施形態では、1箇所の視野領域に対して異常判定カウント値r(j)が2回以上のとき、対応する視野領域は視認できていないと判定し、2回未満のとき、対応する視野領域は視認できていると判定する。

【0030】
ROM36に記憶されている制御プログラムは、視線位置検出装置1から受信した視線位置検出信号に基づいて予め設定されている第1の基準時間(本実施形態では、4秒)以内に被験者Pの視線が固視点a(0)から視標b(0)に達したか否かを判定する第1判定メインプログラム(判定手段)37a、及び該第1判定メインプログラム37aが第1の基準時間以内に被験者Pの視線が固視点a(0)から視標b(0)に達したと判定したときの、視標b(0)を提示してから被験者Pの視線が固視点a(0)から視標b(0)に達するまでにかかる反応時間を記憶する記憶プログラム(記憶手段)37bからなる第1判定プログラム37と、基準時間以内に被験者Pの視線が固視点a(0)から視標b(0)に達していないと判定したときに、報知手段5を制御して警告音を発報する報知プログラム38と、第1判定プログラム37が視標b(0)に達したと判定したときに、提示装置2に提示されている固視点a(0)を消滅させ、提示装置2に提示されている視標b(0)を新たな固視点a(1)とし、該固視点a(1)に対して検査する表示領域内の任意の位置に新たな視標b(1)を提示する視標位置制御プログラム(視標位置制御手段)39と、記憶プログラム37bに記憶された反応時間が所定数に達したときに、この反応時間に基づき、被験者Pの視線が固視点aから視標bに達したか否かを判定するための第2の基準時間を算出する基準時間算出プログラム(基準時間算出手段)40と、反応時間が第2の基準時間を越えているか否かを判定する第2判定プログラム41と、第1判定プログラム37及び第2判定プログラム41の判定結果より視野が正常であるか否かを判定する異常判定プログラム42と、判定結果を結果表示用表示部32に表示する判定結果表示プログラム43とが記憶されている。なお、これらの制御プログラムの具体的な処理については、後述する。

【0031】
第1判定プログラム37は、前述の第1判定メインプログラム37a及び記憶プログラム37bと、第1判定メインプログラム37aで視標を提示してから第1の基準時間までに視線が視標に達しなかった場合に、提示した視標領域の周辺領域の中から新たに視野領域を検査対象に追加する周辺視野追加プログラム37cとを備える。第1判定メインプログラム37aで用いる第1の基準時間は、後述する方法により定めることができ、第1判定メインプログラム37aに予め設定される。周辺視野追加プログラム37cは、第1判定メインプログラム37aで視標を提示してから第1の基準時間までに視線が視標に達しなかった場合に、提示する視標位置毎に該視野位置の周辺視野領域を1又は2以上含む追加視標パターンから読み込むようにしてもよいし、提示した視標位置から所定の動径及び偏角の周辺視野領域を追加するようにしてもよい。

【0032】
視標位置制御プログラム39は、提示装置に提示する視標の位置を表す視標提示配列情報P(j)をランダムに配列した視標提示配列パターンを複数備える。視野提示配列パターンは、視認の可否を判定する必要がある被験者の視野領域に相当する視標の視標提示位置情報P(j)を複数選定した視標の集合である。ここで選定される視標は、必ずしも異なる視標提示位置情報P(j)の集合である必要がなく、同じ視標提示位置情報P(j)を2以上重複して含めるようにしてもよい。本実施形態に係る各視標提示配列パターンには、すべての視標提示位置情報P(j)を2回づつ重複して判定するように、各視標提示位置情報P(j)を2回づつランダムに配列したものを利用する例を説明する。各視標提示配列パターンは、視標提示位置情報P(j)の順番が他の視標提示配列パターンと異なるように整列された一次元配列である。視標提示配列パターンは、検査ごとに異なるパターンが選ばれるようにして、検査に用いられる。よって、被験者は、次に提示される視標位置を予測することが困難となり、より正確な検査が可能となる。この視標提示配列パターンは、結果表示用表示部32上に選択可能に表示して、視野検査システムを操作するオペレータが入力手段33を操作することにより選択するようにしてもよい。また、制御部31が複数ある視標提示配列パターンをランダムに自動選択するようにしてもよい。

【0033】
基準時間算出プログラム40で用いられる第2の基準時間は、下記の算出式から求められる。なお、nは、視標を提示した数(i=0~n-1)とする。この算出式は、正規分布をとるヒストグラムにおいて、被験者が視野を視認するまでにかかる反応時間のうち、視野が異常な場合の視標を視認するまでにかかる反応時間が含まれる頻度を統計的に低く抑えるように係数を定めることにより求めることができる。
【数1】
JP0005421146B2_000002t.gif

【0034】
異常判定プログラム42は、視標提示位置情報P(j)毎に異常判定カウント値r(j)を集計する異常判定カウント値集計プログラム42aと、視標提示位置情報P(j)毎に集計された異常判定カウント値r(j)が所定の値以上か否かを判定する異常判定メインプログラム42bとを備える。

【0035】
異常判定カウント値集計プログラム42aは、1箇所の視標提示位置情報P(j)に対して2回以上判定する場合に用いられ、1箇所の視標提示位置情報P(j)に対して1回判定する場合は、省略することができる。

【0036】
異常判定メインプログラム42bは、異常判定カウント値r(j)が所定の値以上か否かによって、被験者が視標を視認できているか否かを判定する。本実施形態では異常判定カウント値r(j)が2回以上のときに視標を視認できていない(異常判定)と判定し、2回未満のときに視標を視認できている(正常判定)と判定する。なお、本実施形態では、異常判定と正常判定とで評価する例を示すが、これに限定されるものではなく、所定の値を複数備え、判定結果を複数備えるようにしてもよい。例えば、異常判定カウント値r(j)が2未満のときは、正常判定、2以上3未満のときは要注意判定、3以上のときは、異常判定とするようにしてもよい。また、異常判定カウント値r(j)が第1の基準時間以上のときに加算される値と、第2の基準時間以上のときに加算される値とに異なる重み付けをして加算するようにしてもよい。例えば、第1の基準時間以上のときには、+1加算し、第2の基準時間以上のときには、+2加算するようにしてもよい。

【0037】
報知手段5は、被験者Pが第1の基準時間に視標bに達していないときに、警告音を発報するスピーカである。被験者Pは報知手段5が報知すると、既に視標bが提示されていると認識する。これを合図に、被験者Pに視線を視標bに移動させて、視標bを強制的に認識させるようにする。

【0038】
次に、制御部の視野検査システムの制御フローについて、図3,図4を参酌しつつ、詳細に説明する。
(1)CPUは、回数カウンタの値iを初期化する(i=0)。CPUは、回数カウンタの値iに対応する提示回数カウント値j毎に、視標提示位置情報P(j)、反応時間T(j)、異常判定カウント値r(j)、判定結果R(j)のそれぞれの値も初期化する(S1)。
(2)視標提示配列パターンを選択する(S2)。
(3)視標提示配列パターンが選択されると、CPUは、選択された視標提示配列パターンをROMから読み出す。CPUは、読み出された視標提示配列パターンから視標提示位置情報P(j)を視標提示配列パターン毎の配列順に従いそれぞれ提示回数カウント値jに対応させてRAMに記憶する。CPUは、回数カウント値iを指定することで、この
回数カウント値iに対応する提示回数カウント値j毎の視標提示位置情報をRAMから読
み出せるようになっている。
(4)提示装置の略中心に固視点を提示する(S3)。
(5)被験者の視線を固視点に注視させる。すなわち、被験者は、オペレータによって固視点を所定時間注視するように指示されている。
(6)CPUが視線位置検出装置からの視線位置検出信号に基づき被験者が固視点を所定時間注視し続けていることを確認した後、固視点を原点に検査すべき視標を選択する。すなわち、回数カウント値iに対応する提示回数カウント値j毎の視標提示位置情報P(
j)をRAMから読み出す。CPUは、選択された視標を提示装置の表示領域上の視標提示位置情報に基づく位置に提示する(S4)。

【0039】
(7)視標を提示してからの経過時間を計測し、第1の基準時間(本実施形態では、4秒に設定される)までに被験者の視線が視標もしくは注視判定領域に達したか否かを判定する(S5)。
(8)ステップS5がYESのとき(視標を提示してから第1の基準時間以内に視線が視標もしくは注視判定領域に達したとき)、CPUは、被験者の視線が固視点から視標に達するまでにかかった反応時間T(j)をRAMの視標提示配列情報に記憶する(S6)。
(9)CPUは、回数カウンタの値iを+1加算する(S7)。

【0040】
(10)一方、ステップS5がNOのとき(視標を提示してから第1の基準時間以内に視線が視標もしくは注視判定領域に達しないとき)、CPUは、RAMから回数カウンタ値iに対応する提示回数カウント値jの異常判定カウンタ値r(j)を読み出して、+1加算する(S8)。
(11)CPUは、被験者の視線が固視点から視標に達するまでにかかった反応時間T(j)をRAMの視標提示配列情報に記憶する(S9)。
(12)CPUは、提示回数カウンタ値jに対応する視野領域の周辺領域を更に詳細に検査すべく、この周辺領域の中から新たに検査対象に加える視野領域を選択する。CPUは、選択された視野領域に相当する視標提示位置情報を、新たな視標提示カウント値jを割り当てて、視野提示配列情報に追加する(S10)。新たに追加する視野領域の数は、1箇所に限られず、2箇所以上であってもよく、適宜選択される。
(13)CPUは、回数カウンタの値iを+1加算する(S11)。

【0041】
(14)報知手段を用いて被験者に視標を認識させるべく警告音を発報する(S12)。
(15)被験者が警告音の発報に伴い視標を視認したか否かを判定する(S13)。
(16)ステップS7の後もしくはステップS13でYESの後、固視点を消滅させ、視標を新たな固視点に変更する(S14)。

【0042】
(17)すべての視標提示配列情報に基づく視標を提示して判定したか否かを判定する(S15)。ここで、すべての視標提示配列情報とは、ステップS5でNOとなり、ステップS11で新たに視標提示位置情報を追加した場合は、この視標提示位置情報を追加した後の視標提示配列情報を意味する。
(18)ステップ15がNOのとき(すべての視標提示配列情報に基づく視標を判定していないとき)、ステップS4に戻り、検査が継続される。

【0043】
(19)一方、ステップ15がYESのとき(すべての視標提示配列情報に基づく視標を判定したとき)、CPUは、RAMに記憶した視標提示配列情報に基づき第2の基準時間を算出する(図6のS16)。

【0044】
(20)CPUは、回数カウンタの値iを初期化する(i=0)(S17)。
(21)CPUは、回数カウンタの値iに対応する提示回数カウント値j毎に視標提示配列情報の反応時間T(j)を読み込む。CPUは、反応時間T(j)が第2の基準時間を越えるか否かを判定する(S18)。
(22)ステップS18がYESのとき(反応時間T(j)が第2の基準時間を越えるとき)、CPUは、RAMから回数カウンタ値iに対応する異常判定カウンタ値r(j)を読み出して、+1加算する(S19)。
(23)ステップS18でNOのとき(反応時間T(j)が第2の基準時間以内のとき)又はステップS19の後、CPUは、回数カウンタの値iを+1加算する(S20)。
(24)すべての視標提示配列情報に対応する提示回転カウント値j毎に反応時間が第2の基準時間を越えるか否かを判定したか否かを判定する(S21)。
(25)ステップS21がNOのとき(すべての視標提示配列情報に対応する提示回転カウント値j毎に反応時間が第2の基準時間を越えるか否かを判定していないとき)、ステップS18に戻り、判定が継続される。

【0045】
(26)一方、ステップS21がYESのとき(すべての視標提示配列情報に対応する提示回転カウント値j毎に反応時間が第2の基準時間を越えるか否かを判定したとき)、CPUは、視標提示位置情報毎に異常判定カウント値r(j)を読み出す(S22)。
(27)CPUは、視標提示位置情報P(j)毎に、異常判定カウント値r(j)を合算してRAMに記憶する(S23)。

【0046】
(28)CPUは、視標提示位置情報P(j)毎に合算された異常判定カウント値r(j)をRAMから読み込み、異常判定カウンタ値r(j)が2回以上カウントされているか否かを判定する(S24)。
(29)ステップ24でNOのとき(異常判定カウント値r(j)が2回未満のとき)、CPUは、2回未満の異常判定カウント値r(j)に対応する視野提示位置情報に相当する視野領域が視野正常と判定し、視標提示配列情報の配列結果R(j)に視野が正常である旨の結果を記憶する(S25)。
(30)ステップ24でYESのとき(異常判定カウント値r(j)が2回以上のとき)、CPUは、2回以上の異常判定カウント値r(j)に対応する視野提示位置情報に相当する視野領域が視野異常と判定し、視標提示配列情報の配列結果R(i)に視野が異常である旨の結果を記憶する(S26)。

【0047】
(31)すべての視標提示位置情報に対応する視野領域を判定したか否かを判定する(S27)。
(32)ステップS27がNOのとき(すべての視標提示位置情報に対応する視野領域を判定していないとき)、ステップS24に戻り、判定が継続される。
(33)ステップS27がYESのとき(すべての視標提示位置情報に対応する視野領域を判定したとき)、CPUは、判定結果用表示部に判定結果R(j)を表示して(S28)、検査が完了する。

【0048】
この制御フローは、視野位置制御プログラム39によってステップS1~S4及びS13~S15の制御が処理され、第1判定プログラム37によってステップS5~S11の制御が処理され、報知プログラム38によってステップS12の制御が処理され、基準時間算出プログラム40によってステップS16の制御が処理され、第2判定プログラム41によってステップS17~S21の制御が処理され、異常判定プログラム42によってステップS22~S27の制御が処理され、判定結果表示プログラム43によってステップS28の制御が処理される。第1判定プログラム37の制御は、第1判定メインプログラム37aによってステップS5,S7,S8,S10の制御が処理され、記憶プログラム37bによってステップS6,S9の制御が処理され、周辺視野追加プログラム37cによってステップS11の制御が処理される。異常判定プログラム42の制御は、異常判定カウント値集計プログラム42aによってステップS22,S23の制御が処理され、異常判定メインプログラム42bによってステップS24~S27の制御が処理される。

【0049】
本願発明で使用する視野検査は、視線位置検出装置1を用いた眼球運動計測タイプの視野検査である。つまり、視標が検出できたかどうかを判断する手法として被験者の随意的な眼球運動を利用するものである。

【0050】
この視野検査システムによる視野検査の手順は以下のとおりである(図5参照)。図5は、視野検査システムの検査手順を示す図である。同図(a),(c),(e),(g)は、表示装置上に提示する視標の動き(位置)を示している。同図(b),(d),(f),(h)は、それぞれ同図(a),(c),(e),(g)のときに検査している視野領域を示している。

【0051】
(1)被験者は提示装置上に提示される固視点a0を注視する。被験者が一定時間固視点a0を注視すると所定の視野内に視標b0が提示される(図5(a)参照)。このとき、視標b0に対応する被験者の視野領域は、図5(b)に示すc0の位置である。視標b0は、視野の中心Oと視野領域c0との位置関係が、固視点a0との位置関係と一致するように提示される。(2)被験者は固視点a0を注視した状態で提示された視標b0を視認できれば、視標b0が提示された位置へ視線移動を行う。運動軌跡tは固視点a0から視標b0まで最短距離で視線移動する(図5(c),(d)参照)。(3)被験者が提示された視標b0に視線を移すと、視線を移した先の視標b0が新しい固視点a1となり、元の固視点a0が消滅する(図5(e),(f)参照)。(4)新しい固視点a1を注視する状態を維持し、手順(1)に戻る。被験者には(1)~(4)の手順で繰り返し視標と視線移動を行ってもらう(図5(g),(h)参照)。

【0052】
視標bを視認できなかった場合(図6参照)はその視標bが被験者にとって視野の範囲外にあると考えられる。その際被験者は視標bの出現を認知できず、固視点aを注視した状態を維持しているか視線の運動軌跡tが蛇行しているので、一定時間後に警告音を鳴らすことで、被験者には視認できていないが視標bは提示されていることを伝える。被験者は警告音により、視標認知できていないことを知らされたら、その視標bを探索するために視線移動を行い、視標bを発見したらすばやくその視標bに視線を合わせる。視標bを1000ms注視し続けると、その視標bを新しい固視点aとすることで検査が再開される。

【0053】
本手法ではこれらの手順を繰り返して視野領域を定めていく。その際、周辺視野から中心視野まで大域的に検査を行い、異常が疑われる点に関しては細かく、探索的に検査を行う。このような探索的な検査方法を取ることで視野検査にかかる時間の短縮が可能であると考えられる。

【0054】
次に、固視点から提示視標に向かうまでの視線データを図7及び図8に示す。図7(a)、図8(a)は正常に眼球運動が生起した際の眼球運動軌跡の一例を示し、図7(b)、図8(b)は眼球運動軌跡に異常が生じたと考えられるデータの一例である。図8(a),(b)に示されているデータは上記の手順により測定した視線データの一部を抽出するものである。図8(a)は、測定開始(経過時間0msec)され、視標bが提示された経過時間約2000msecの時点から、その後視線が視標bに達した経過時間約3200msecの時点までの一例を示す。図8(b)は、測定開始から視標bが提示された約24500msecの時点から、その後経過時間約27000msecの時点で視線が視標bに到達した一例である。

【0055】
確実に視標bを視認できる位置に視標bを提示した際の眼球運動軌跡tは一回の眼球運動で提示された位置まで視線が移動する(図7(a)参照)のに対して、視標bを視認できているかが曖昧な位置に視標bを提示した場合には、一回の眼球運動で提示された視標bの位置まで視線が到達せず、固視点aから提示視標bまでの間xに200msec程度注視が生じ、その後に提示視標bの位置まで視線が移動するという眼球運動軌跡tが見られた(図7(b)参照)。

【0056】
固視点aから提示視標bに向かうまでに係る反応時間について、確実に視標bを視認できる位置に視標bを提示した場合には、約2000msecの時点で視標bを提示し、その後、約1200msec経過の時点に視標bに視線が到達している(図8(a)参照)。これに対し、視標bを視認できているかが曖昧な位置に視標bを提示した場合には、約24500msecの時点で視標bを提示し、その後、約2000msec経過の時点で固視点aから提示視標bまでの間xに視線が到達し、約3500msec経過の時点に視標bに視線が到達した(図8(b)参照)。

【0057】
上記のような眼球運動の違いにより、提示された視標位置に視野の欠損があるかどうかの定量的評価を行うことができると考えられる。

【0058】
本来、異常領域にあるために視標b0が認知できない領域に視標b0が提示されているにもかかわらず、検査過程の中で固視微動や瞬きが原因で視標が偶然認知されてしまい、擬似的な眼球運動が生じる場合がある。

【0059】
そういった不自然な眼球運動と視野領域に視標が認知できた際の意図的な眼球運動との違いはその反応時間と運動軌跡に現れると考えられる。

【0060】
意図的な視標に向かう眼球運動とそうではない眼球運動を切り分けるため、固視点から提示された視標の位置へ視線を動かすまでの反応時間と運動軌跡を特徴として利用することで、本願発明の手法が適切に視野領域を検出できることが検証できると考えられる。

【0061】
次に、被験者が視線を固視点から視認可能な視野に提示された視標に移動する時間を算出する方法として、固視点を原点とする8方向に視標を提示し、その時の固視点から提示された視標の位置へ視線を動かすまでの反応時間を計測する方法について説明する。被験者は、健常な成人男性の大学生(22~24歳、ソフトコンタクト着用)とした。視標は、半径2.2mm程度の赤色視標であり、視野角にして約0.6度である。

【0062】
計測手順は以下のとおりである。(1)被験者は、検査眼(右目)と逆側の目を眼帯により覆う。(2)被験者は、ディスプレイから400mm程度の位置で視線位置検出装置のヘッドカメラ部を装着し椅子に座る。そして、表示領域の中心が検査眼の正面にある状態で頭部を固定する。(3)計測者は、実際の視線位置と装置が検出する視線の位置を対応付けるためにキャリブレーション、バリデーション処理を行う。(4)計測者は、被験者に計測画面を提示する。(5)被験者は、初期画面で提示されている固視点を注視する。そして、固視点を原点に水平・垂直方向、斜め方向に提示される視標を視認できれば、その方向・位置に視線移動を行う。何も視認できなければ、固視点を注視し続ける。(6)固視点に対して一定時間視線が留まり続けた場合、被験者は視標を認知できていないものとし、警告音によって、視標が見えていないことを被験者に伝える。(7)警告音が鳴った場合、被験者は視標探索のための視線移動を行う。(8)全ての試行終了後、計測者は計測画面を閉じる。なお、計測手順(6),(7)については視標が認識できなかった場合の手順である。

【0063】
視標の提示位置は被験者にとって確実に視認できる場所である視野角にして水平方向10°,20°、垂直方向10°,20°、斜め方向10°,20°の16点とした。視標提示回数はそれぞれの位置に視標を5回ずつ提示し、試行回数が計80回となるようにした。全試行の終了までに要する時間は約4分であった。

【0064】
反応時間について試行回数により反応時間が変化するのか、また、反応時間のバラツキは変化するのかという点を調べるために、試行回数1~20,21~40,41~60,61~80回の4区分についてそれぞれ反応時間の平均値および標準偏差を被験者ごとに算出した。

【0065】
また、視標認知を示す眼球運動とそうでない眼球運動の比較を行うため、予備実験として、マリオット盲点に視標を提示した際の眼球運動を調べた。

【0066】
表1に被験者ごとの反応時間(試行回数1~20,21~40,41~60,61~80回ごと)の平均、標準偏差を示す。

【0067】
【表1】
JP0005421146B2_000003t.gif

【0068】
表1からすべての被験者に関して試行順序1~20,21~40,41~60,61~80回の4区分について試行後との反応時間の平均値に差は見られなかった。つまり、今回の計測の範囲内では、試行回数の増加に伴い、疲労などの影響で反応時間が増加するといったことはないと考えられる。また、標準偏差について、すべての被験者を見てみると、試行回数が増加するにしたがって標準偏差が大きく増加あるいは減少する傾向は認められなかった。以上から、本願発明の視野検査システムでは、試行回数を80回、時間にして4~5分程度という検査時間の範囲内ではあるが、試行回数にかかわらず、眼球運動は一定の反応時間で生起することがわかった。

【0069】
本願発明の手法が有効であるかを調べるためには、随意的な眼球運動が正確に抽出できているかが重要なファクターとなり、反応時間の傾向を調べた結果、被験者・試行回数にかかわらず、反応時間は2秒以内に収まり、また、試行間における反応時間の標準偏差は、各被験者プラスマイナス0.1秒程度の結果が得られた。マリオット盲点に視標を提示した際の眼球運動と比較した結果、何らかの要因で視標の存在を感知して眼球運動が生じた場合、その反応時間は10秒程度要していたことから、今回の実験から得られた標準偏差の値を考慮に入れても「視標が見える条件」と「固視ズレなどの影響により本来ならば見えないはずの視標が見えてしまうような条件」とを切り分けることは可能であると考えられる。このことから、本願発明の手法が反応時間を視野領域検出のパラメータとして利用できる可能性が示された。

【0070】
次に、計測された反応時間から各被験者に適した第2の基準時間を算出する方法について説明する。被験者は、健常な成人男性(22~24歳)とした。中心視野は、半径2mm程度の赤色視標である。

【0071】
計測手順は以下のとおりである。(1)被験者は、検査眼(右目)と逆側の目を眼帯により覆う。(2)被験者は、ディスプレイから700mm程度の位置で視線位置検出装置のヘッドカメラ部を装着し椅子に座る。そして、表示領域の中心が検査眼の正面にある状態で頭部を固定する。(3)計測者は、実際の視線位置と装置が検出する視線の位置を対応付けるためにキャリブレーション処理を行う。(4)計測者は、被験者に計測画面を提示する。(5)被験者は、初期画面で提示されている固視点を注視する。そして、固視点を原点に提示される視標を視認できれば、その方向・位置に視線移動を行う。何も視認できなければ、固視点を注視し続ける。(6)固視点に対して一定時間視線が留まり続けた場合、被験者は視標を認知できていないものとし、警告音によって、視標が見えていないことを被験者に伝える。(7)警告音が鳴った場合、被験者は視標探索のための視線移動を行う。(8)全ての試行終了後、計測者は計測画面を閉じる。なお、計測手順(6),(7)については視標が認識できなかった場合の手順である。

【0072】
視標は図9に示す位置(符号1~23で示す位置)に2回ずつ提示を行った。なお、符号12,13で示す位置は検査眼として右目を用いていることからも、人間の生理的盲点であるマリオット盲点がある場所であると想定される。

【0073】
この実験により、計測された反応時間の平均、標準偏差、6×標準偏差(第2の基準時間)を被験者毎に表2に示す。
【表2】
JP0005421146B2_000004t.gif

【0074】
表2に示される値は被験者にとって確実に視標を認知できる位置に視標を提示した際に得られた反応時間のパラメータである。マリオット盲点内に視標が提示された場合には、全被験者にとって警告音がなるまで(約3000msec)視線が固視点の位置に停留し続けたため、マリオット盲点内に視標が提示された場合の反応時間の値は表2から除外されている。

【0075】
図10~図11は、各被験者の反応時間のヒストグラムである。図示した太線は、数式1により算出された第2の基準時間である。このヒストグラムの傾向からもわかるように、被験者によってその傾向が異なり、被験者毎に最適な第2の基準時間が存在することがわかる。よって、被験者毎に第2の基準時間を用いて視標を視認できているかの判定を行うことができる。

【0076】
次に、本実施形態に係る視野検査システムの実施例について説明する。被験者は、健常な成人男性(30~60歳)とした。視覚刺激は、中心視野で視覚0.2deg程度の赤色視標、周辺視野で視覚2.9deg程度の赤色視標である。視標提示位置は、ビエルム領域、マリオット盲点及び鼻側階段付近である(図12参照)。ディスプレイ解像度は、1920×1200[pixel](6面構成)である。輝度は、背景輝度510[asb]、視標輝度153[asb]である。

【0077】
最初に、反応時間計測検査を行う。被験者の反応時間を計測し、計測された反応時間の平均値と標準偏差を元に反応時間の閾値(第2の基準時間)を決定する。視標の提示回数は中心視野内10点、周辺視野10点の計20回とする。

【0078】
次に、視野計測検査(大域検査)を行う。反応時間計測検査により決定された反応時間の閾値を利用し、反応時間が閾値を越えた場合、提示視標が被験者にとって見えない領域にある(異常判定)とし、各被験者の視野の評価を行った。視標の提示箇所として、実際に緑内障を持つ被験者に検査を実施することを想定し、中心視野ではビエルム領域内(図12の点線X内)及びマリオット盲点内(図12の点線Y内)に視標を提示した。周辺視野では、鼻側階段を含む鼻側領域(図12の点線Z内)に視標の提示を行った。視標の提示回数は中心視野内23点×2と周辺視野9点の計55回とする。

【0079】
最後に、視野計測検査(精密検査)を行う。視野計測検査(大域検査)によって視野検査システムが見えない領域であると捉えた点に対して、提示視標の周辺(上下左右3deg)に視標を提示し、最終確認を行う。

【0080】
計測手順は以下のとおりである。(1)被験者は、検査眼(右目)と逆側の目を眼帯により覆う。(2)被験者は、ディスプレイから700mm程度の位置で視線位置検出装置のヘッドカメラ部を装着し椅子に座る。そして、表示領域の中心が検査眼の正面にある状態で頭部を固定する。(3)計測者は、実際の視線位置と装置が検出する視線の位置を対応付けるためにキャリブレーション処理を行う。(4)計測者は、被験者に計測画面を提示する。(5)被験者は、初期画面で提示されている固視点を注視する。そして、固視点を原点に提示される視標を視認できれば、その方向・位置に視線移動を行う。何も視認できなければ、固視点を注視し続ける。(6)固視点に対して一定時間視線が留まり続けた場合、被験者は視標を認知できていないものとし、警告音によって、視標が見えていないことを被験者に伝える。(7)警告音が鳴った場合、被験者は視標探索のための視線移動を行う。(8)全ての試行終了後、計測者は計測画面を閉じる。なお、計測手順(6),(7)については視標が認識できなかった場合の手順である。

【0081】
この検査より得られた各被験者A~C,E~Jの反応時間の平均値、標準偏差、閾値(第2の基準時間)を表3に示す。表4には健常成人男性(20歳代全体)の反応時間の平均値を示す。この検査により評価された各被験者A~C,E~Jの視野(検査結果)を図13~図17に示す。
【表3】
JP0005421146B2_000005t.gif
【表4】
JP0005421146B2_000006t.gif

【0082】
上記検査結果より、反応時間について、表3より、健常成人男性(30~60代)の平均反応時間は1046.11msecであり、標準偏差は135.49msecであった。表4の健常成人男性(20代)の平均反応時間969msec、標準偏差111.12msecと比較すると健常成人男性(30~60代)の平均反応時間の方が遅い傾向ではあるものの、その差は100msec程度であり、大きな差は見られなかった。

【0083】
第1の基準時間は、先の(健常な成人男性の大学生(22~24歳)での)検査結果(表2参照)及び上記(健常な成人男性(30~60歳)での)検査結果(表3参照)より、3秒以上に設定することが好ましく、より好ましくは、4秒であることがわかる。

【0084】
年齢差と検査結果の関係について、検査より得られた視線データについて、20歳代、50歳代で視線データはほぼ同様であり、50歳代の視線データに特異な点は見られない。このことから、年齢が異なったとしても、視野検査システムにより視野の評価が可能である。

【0085】
視野検出結果について、マリオット盲点がある位置を「見えない領域」、それ以外の箇所を「見える領域」と定義し(図12参照)、各箇所の視標認識率を見た結果、健常成人男性(20代)では、視野検査システムが「見える領域」に関して、視認率99.4%の確率で被験者にとって「見える領域」であると評価し、「見えない領域」に関して、誤認率0%の確率で被験者にとって「見えない領域」であると評価した。健常成人男性(30~60代)では、視野検査システムが「見える領域」に関して、視認率98.4%の確率で被験者にとって「見える領域」であると評価し、「見えない領域」に関して、誤認率44.4%の確率で被験者にとって「見えない領域」であると評価した。

【0086】
しかし、本検査では、眼鏡等で視力を矯正している被験者に対して、眼鏡を外して、視野検査システムによる視野の評価を行った。このような場合、被験者が固視点の中心を正確に視認することができず、例えば、被験者C(図14(a)参照)、F(図15(a)参照)、J(図17参照)のように、マリオット盲点位置を視認する個所がある。このような場合には、上述の視野検査システムに、視線位置検出装置で被験者の視線位置を検出可能な眼鏡を備えるようにして、被験者の視力を矯正した状態で検査を行うことができるようにすることが好ましい。

【0087】
また、年齢が高くなると、上まぶたの下垂が生じる人が多くなる傾向にあり、このため上側の視野が狭くなることがある。例えば、被験者E(図14(b)参照)、G(図15(b)参照)、H(図16(a)参照)、I(図16(b)参照)の場合である。このような場合には、上述の視野検査システムを行う際に、テープ等により、まぶたの挙上を行うようにすることが好ましい。

【0088】
反応時間に差が生じると考えられる30代~60代の被験者についても視野の評価が可能であったことから視野検査システムが幅広い年齢層に対して有効であると考えられる。

【0089】
このように、固視点を注視する被験者の視線が固視点から移動し視標に達したときに、制御装置の判定手段は視線位置検出装置から入力される視線位置検出信号に基づき視線が固視点から視標に達したことを判定し、既に被験者が注視していない固視点を消滅させる。このとき被験者が注視している視標は、新たな固視点となる。被験者は提示装置に新たに視標が提示されるまで、新たな固視点を注視し続ける。制御装置は、新たな固視点に対して検査する新たな視標を提示装置の表示領域内に提示させ、検査するすべての視野に視標が提示されるまでこれを繰り返す。このように固視点の提示位置が固定されていないため、被験者は視線が固視点から視標に達すると再び視線を固視点に戻す必要がなく、客観的に短時間で視野を検査できる。

【0090】
一般的な被験者が視標を視認したことに伴い視線を固視点から視標に移動するのにかかる時間(例えば、成人男性の場合であれば2秒)を第1の基準時間に設定し、第1の基準時間以上であれば、判定手段によって、被験者が視標を認識できなかったと判断し、提示した視標に相当する視野を異常として取り扱う。従って、被験者の視標視認の可否を視線が固視点から視標に第1の基準時間以内に移動するかによって判定することができる。被験者の視線が第1の基準時間以内に固視点から視標に達しなければ、視標位置制御手段によって、検査する他の視野の検査に移ることができ、検査時間の短縮を図ることができる。

【0091】
第1の基準時間以外にも、第2の基準時間により視野異常を評価することもできる。この第2の基準時間は、判定手段の判定結果に基づき、各被験者が視標を認識したときの反応時間から算出されているため、各被験者毎の反応時間の個人差の影響を受けない基準時間であるといえる。

【0092】
被験者は報知手段による報知により、提示装置に既に視標が提示されていることを知る。制御装置の視標位置制御手段は次に検査する視野に移るために被験者に視標を探索させ、視線を視標に移動させることができる。

【0093】
従来の視野検査は視野内の各点について精密な検査を行っているのに対して、本発明では、まず大域的に被験者の視野に異常がないかを調べる。そして、異常が発見された箇所について更に詳細に領域確定のために検査していくという手段を用いる。このように従来の視野検査方法に比べて時間的に効率の良い検査方法を用いることで検査時間の短縮を行うことができる。

【0094】
従来の視野検査は視標として光視標を用いている。ゴールドマン視野計に関して、視標の輝度、大きさを固定し、周辺から中心に向かって移動させ、イソプタを求め、得られたイソプタから患者の視野を評価するものである。そして、正しいイソプタを求めるためには、スクリーンと視標とのコントラストを常に一定に保つ必要があった。また、ハンフリー視野計に関して、ある範囲の輝度の値を求め、そこから各検査点の輝度の値を推定し、得られた輝度の値から患者の視野の状態を評価するものである。輝度から視野を評価する場合、視標を投影するスクリーンと視標とのコントラストを常に一定に保つ必要性があった。以上から従来の視野検査では、検査環境として暗室での検査が必要不可欠であった。この問題点に対して、本発明では、輝度から視野を評価するのではなく、視標認知を表す眼球運動の反応時間、運動軌跡から評価しようと考えている。このため、本発明では、スクリーンと視標のコントラストについて考える必要がなく、検査環境による制限は少ないと考えられる。そして、視線位置検出装置と情報処理装置のディスプレイを検査装置として用いることで、システムと検査に用いる装置さえあれば、環境に制約を受けずに検査できる。

【0095】
視標が検出できたかどうかを判断する手法として、定位反射を用いた視野検査では、眼球運動が生じたとしても、生じる眼球運動の跳躍量が少ないため、その眼球運動が視標を検出できたことを示す定位反射による眼球運動なのか、偶発的な眼球運動(たとえば固視微動)なのかを切り分けることが困難であった。このため、被験者にとって本来見えていないはずの領域が見えていると判断されてしまうなどの誤った結果が出力されてしまう危険性があり、検査結果として、信頼性の乏しい結果となることが問題点として挙げられる。この問題点に対して、本発明では、眼球運動の反応時間に着目する。被験者にとって、視標が視認できる状況であれば、眼球運動は一定の反応時間で生じると考えられ、視標が視認できない状況であれば、眼球運動の反応時間は視標を視認できる状況よりも遅くなるか眼球運動自体が生じないと考えられる。被験者にとって「見えている」、「見えていない」の切り分けを眼球運動の反応時間から判断することで、定位反射を用いた際に言われている問題が解決できる。また、定位反射を用いた場合、試行回数、年齢、振幅などにより定位反射は抑制されてしまい、運動自体が生じなくなってしまうという問題が挙げられているが、本発明では、被験者の意図する眼球運動を視標が検出できたかどうかの判断手法として用いることで試行回数、年齢、振幅などの影響による運動抑制を考慮する必要がない。

【0096】
本願発明は医療機関での検査から、一般の健康診断における暗室などの特別な設備を必要としないスクリーニング用機器としての利用価値も高く、本発明が失明予防などを通じて社会に与える影響も大きい。

【0097】
なお、本発明に係る視野検査システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。

【0098】
上記実施形態に係る視野検査システムは、提示装置が液晶ディスプレイである例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、提示装置は、プラズマディスプレイであってもよし、固視点及び視標を提示する範囲にLEDや電球などの光源を配置した光源装置であってもよい。

【0099】
上記実施形態に係る視野検査システムは、提示装置として、1台のディスプレイを用いる例を説明したが、これに限定されものではない。例えば、提示装置は、複数台のディスプレイ(縦2台×横3台など)やプロジェクタなどであってもよい。プロジェクタは、解像度が低いため、提示装置にディスプレイを用いることが好ましい。

【0100】
上記実施形態に係る視野検査システムは、報知手段を備える例を説明したが、これに限定されるものではない。所定時間が経過した後、被験者が視標を認識できていないと判別できたときは、視標を消滅させ、視線位置検出装置が検出している視線の位置に固視点を移動させるようにしてもよい。

【0101】
上記実施形態に係る視野検査システムは、常に一定輝度の点刺激を用いて検査を行う例を説明したが、これに限定されるものではない。ソフトの利点を生かし、M細胞の異常を捕らえることが可能と報告されている錯視現象(25Hz白黒反転フリッカー刺激)を視覚刺激として利用し、検査を行うことも可能である。

【0102】
上記実施形態に係る視野検査システムは、報知手段5が警告音を発報することで聴覚的に報知する例を説明したが、これに限定されるものではない。報知手段は、提示装置に提示する視標及び固視点の形状、輝度、発色等を変更することによって視覚的に報知するようにしてもよい。

【0103】
上記実施形態に係る視野検査システムは、被験者が視標を視認して視線を移動させているか否かを反応時間で判定するようにする例を説明したが、これに限定されるものではない。被験者が視標を視認して視線を移動させているか否かを視線が固視点から視標に移動する眼球運動軌跡で判定するようにしてもよい。より具体的には固視点から視標までを最短距離で通過しているか否か、視線が固視点から視標に達するまでに注視しているか否かで判断してもよい。制御装置はこれらの情報を視線位置検出装置から検出することができる。
【符号の説明】
【0104】
1…視野位置検出装置、2…提示装置、21…検査用表示部、22…マーカー、23…提示装置用制御装置、3…制御装置、31…制御部、32…結果表示用表示部、33…入力手段、34…CPU、35…RAM、36…ROM、37…第1判定プログラム(判定手段)、37a…第1判定メインプログラム、37b…記憶プログラム(記憶手段)、37c…周辺視野追加プログラム、38…報知プログラム、39…視標位置制御プログラム(視標位置制御手段)、40…基準時間算出プログラム(基準時間算出手段)、41…第2判定プログラム、42…異常判定プログラム、42a…異常判定カウント値集計プログラム、42b…異常判定メインプログラム、43…判定結果表示プログラム、5…報知手段、a,a0,a1…固視点、b,b0,b1…視標、A,B…注視判定領域、t…運動軌跡、P…被験者
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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