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明細書 :物理量検出システム、物理量検出方法および物理量検出プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5975566号 (P5975566)
公開番号 特開2014-048246 (P2014-048246A)
登録日 平成28年7月29日(2016.7.29)
発行日 平成28年8月23日(2016.8.23)
公開日 平成26年3月17日(2014.3.17)
発明の名称または考案の名称 物理量検出システム、物理量検出方法および物理量検出プログラム
国際特許分類 G01D  21/02        (2006.01)
G08C  17/00        (2006.01)
FI G01D 21/02
G08C 17/00 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 19
出願番号 特願2012-193628 (P2012-193628)
出願日 平成24年9月3日(2012.9.3)
審査請求日 平成27年8月25日(2015.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】近藤 淳
【氏名】成島 彰洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100136674、【弁理士】、【氏名又は名称】居藤 洋之
審査官 【審査官】櫻井 仁
参考文献・文献 特開2006-266846(JP,A)
特開2006-268579(JP,A)
特開2004-112646(JP,A)
米国特許出願公開第2003/0231107(US,A1)
特表平11-504112(JP,A)
特表2008-522184(JP,A)
特開2004-343671(JP,A)
特開2009-222589(JP,A)
特開2005-267621(JP,A)
調査した分野 G01D 18/00-21/02
G08C 17/00
G01K 7/32
H03H 9/25
G01N 5/02
G01L 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、
前記圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第1櫛歯状電極を有して高周波電気信号と前記表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、
検出対象から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、
前記圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第2櫛歯状電極を有するとともに少なくとも同2つの第2櫛歯状電極のうちの一方が前記インピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続されて前記表面弾性波変換手段によって励振された前記表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段と、
前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の振幅を用いて前記物理量を特定する物理量特定手段と、
前記物理量特定手段にて前記物理量を特定する際に前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行う温度補償手段とを備えたことを特徴とする物理量検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載した物理量検出システムにおいて、さらに、
前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の位相変化を用いて前記インピーダンス変化型センサの温度を特定する温度特定手段を備えることを特徴とする物理量検出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した物理量検出システムにおいて、
前記表面弾性波変換手段におけるどちらか一方の第1櫛歯状電極、前記表面弾性波反射手段における他方の第2櫛歯電極および前記インピーダンス変化型センサにおける他方の端子が、互いに電気的に接続されることを特徴とする物理量検出システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した物理量検出システムにおいて、
前記物理量特定手段、前記温度補償手段および前記高周波電気信号と前記電波とを相互に変換して無線送受信を行う送受信部をそれぞれ有したホスト装置と、
前記表面弾性波変換手段における第1櫛歯状電極に接続されて電波と前記高周波電気信号とを相互に変換する送受信アンテナとを備えることを特徴とする物理量検出システム。
【請求項5】
圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、
前記圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第1櫛歯状電極を有して高周波電気信号と前記表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、
検出対象から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、
前記圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第2櫛歯状電極を有するとともに同2つの第2櫛歯状電極のうちの一方が前記インピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続されて前記表面弾性波変換手段によって励振された前記表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段とを備えた物理量検出システムにおける物理量検出方法であって、
前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の振幅を用いて前記物理量を特定する物理量特定ステップと、
前記物理量特定手段にて前記物理量を特定する際に前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行う温度補償ステップとを含むことを特徴とする物理量検出方法。
【請求項6】
圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、
前記圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第1櫛歯状電極を有して高周波電気信号と前記表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、
検出対象から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、
前記圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第2櫛歯状電極を有するとともに同2つの第2櫛歯状電極のうちの一方が前記インピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続されて前記表面弾性波変換手段によって励振された前記表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段と、
メモリ装置を有してコンピュータプログラムを実行するコンピュータ部とを備えた物理量検出システムにおける物理量検出プログラムであって、
前記コンピュータ部に、
前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の振幅を用いて前記物理量を特定する物理量特定ステップと、
前記物理量特定ステップにて前記物理量を特定する際に前記表面弾性波変換手段にて変換された前記高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行う温度補償ステップとを実行させることを特徴とする物理量検出プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)を用いて種々の物理量を検出する物理量検出システム、物理量検出方法および物理量検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光、音、超音波(振動)、圧力、温度、湿度、ガス、電界または磁界などの各種物理量を表面弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)を介して検出する物理量検出システムがある。例えば、下記特許文献1には、表面弾性波と高周波電気信号とを相互に変換する表面弾性波変換IDT(Interdigital Transducer)と、受光量に応じてインピーダンスが変化する受光素子が接続された表面弾性波反射IDTとを圧電基板上で対向配置するとともに、表面弾性波変換IDTと表面弾性波反射IDTとの間で表面弾性波を往復伝播させた際における表面弾性波反射IDTの反射率の変化による表面弾性波の変化に基づいて受光素子が受光した光量を検出する無給電ワイヤレス式フォトセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006-266846号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示された無給電ワイヤレス式フォトセンサにおいては、受光素子の多くが周囲の温度変化に応じてセンサ出力(インピーダンス)が変化するため、正確な光量検出が困難であるという問題がある。このような温度の変化に起因する物理量検出精度の低下は、受光素子に限らず物理量を検出するあらゆるインピーダンス変化型センサに共通の問題である。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、インピーダンス変化型センサにおける温度が変化した場合であっても正確な物理量を検出することができる表面弾性波を用いた物理量検出システム、物理量検出方法および物理量検出プログラムを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第1櫛歯状電極を有して高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、検出対象から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第2櫛歯状電極を有するとともに少なくとも同2つの第2櫛歯状電極のうちの一方がインピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続されて表面弾性波変換手段によって励振された表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段と、表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の振幅を用いて前記物理量を特定する物理量特定手段と、物理量特定手段にて物理量を特定する際に表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の位相変化を用いて物理量の温度補償を行う温度補償手段とを備えたことにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、物理量検出システムは、物理量特定手段がインピーダンス変化型センサを介した高周波電気信号の振幅変化を用いて検出対象となる物理量を特定する際、インピーダンス変化型センサを介した高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行う温度補償手段を備えている。これにより、物理量検出システムは、インピーダンス変化型センサにおける温度が変化した場合であっても正確な物理量を検出することができる。このようにインピーダンス変化型センサを介した高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行うことができることは、インピーダンス変化型センサを介した高周波電気信号の振幅変化量がインピーダンス変化型センサのインピーダンスのみに依存すること、および同高周波電気信号の位相変化がインピーダンス変化型センサのインピーダンスに依存せず温度変化のみに依存しているという本発明者らによる新たな知見に基づくものである。
【0008】
そして、前記物理量検出システムにおいて、温度補償手段は、インピーダンス変化型センサを介した高周波電気信号の位相変化を用いてインピーダンス変化型センサのインピーダンスを補償して前記物理量の温度補償を行ってもよいし、インピーダンス変化型センサを介した高周波電気信号の振幅を補償して前記物理量の温度補償を行ってもよいし、特定した物理量を直接補償してもよい。
【0009】
また、インピーダンス変化型センサは、物理量に応じて電荷を蓄える容量が変化する可変キャパシタ、物理量に応じてインダクタンスが変化する可変インダクタ、および物理量に応じて抵抗が変化する可変抵抗のうちの少なくとも1つを含んで構成される。すなわち、本発明に係る物理量検出システムにおけるインピーダンス変化型センサは、物理現象によってインピーダンスが変化する素子を広く採用することができる。この場合、物理現象としては、例えば、光電効果(光電子放出効果、光伝導効果、光起電力効果など)、熱現象(ゼーベック効果、焦電効果など)、圧電現象、音(または振動)現象、磁気現象(ホール効果、磁気抵抗効果など)、電子放出効果(熱電子放出効果、電界放出効果など)、超伝導現象(ジョセフソン効果など)、化学現象(吸着現象、イオン移動など)がある。
【0010】
また、光電効果を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、光導電セル、フォトダイオード、フォトトランジスタ、PSD、太陽電池およびUVトロン(「炎センサ」ともいう)などがある。なお、この場合、「UVトロン」とは、金属の光電効果とガス倍増効果を利用した紫外線センサであり、特に炎から出る微弱な紫外線も検出することができるものである。すなわち、インピーダンス変化型センサとしてUVトロンを用いることにより、無給電ワイヤレス炎検出器や火災報知器を構成することもできる。
【0011】
また、圧電現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、圧電素子(ピエゾ素子)、加圧導電シート(ゴム)、トーションバー、ストレンゲージ(ロードセル)、ダイアフラムおよびマイクロフォン(圧電式)などがある。また、音現象または振動現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、マイクロフォン(電磁式)、振動センサおよび衝撃センサなどがある。また、磁気現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、ホール素子、MR素子および半導体磁気抵抗素子変位センサなどがある。また、電子放出効果を利用したインピーダンス変化型センサとしては、例えば、電離真空計などがある。また、超伝導現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、SQUID(超伝導量子干渉素子)などがある。また、化学現象を利用したインピーダンス変化型のセンサや素子としては、例えば、セラミック湿度センサ、半導体ガスセンサおよび固体電解質形酸素センサなどがある。そして、これらのインピーダンス変化型のセンサや素子は、単独でまたはこれらを適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記物理量検出システムにおいて、さらに、表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の位相変化を用いてインピーダンス変化型センサの温度を特定する温度特定手段を備えることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、物理量検出システムは、温度特定手段によってインピーダンス変化型センサの温度を特定することができる。すなわち、物理量特定手段は、1つのインピーダンス変化型センサによって検出対象となる物理量に加えてインピーダンス変化型センサの温度をも検出することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記物理量検出システムにおいて、表面弾性波変換手段におけるどちらか一方の第1櫛歯状電極、表面弾性波反射手段における他方の第2櫛歯電極およびインピーダンス変化型センサにおける他方の端子が、互いに電気的に接続されることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、物理量検出システムは、表面弾性波変換手段におけるどちらか一方の第1櫛歯状電極、表面弾性波反射手段における他方の第2櫛歯電極およびインピーダンス変化型センサにおける他方の端子が、互いに電気的に接続されている。この場合、表面弾性波変換手段、表面弾性波反射手段およびインピーダンス変化型センサが互いに電気的に接続されている場合とは、直流的、交流的および/または高周波的に接続されていることを含むものである。これにより、本発明者の実験によれば、インピーダンス変化型センサの共振現象を抑えて反射係数S11(dB)の二次曲線的変化範囲を狭めることができ、従来の無給電ワイヤレス式センサモジュールに比べてセンサとしての感知幅を約20%増加させることができることを確認した。
【0016】
そして、この場合、物理量検出システムは、導電性を有する材料で構成された導電性基板を圧電基板に対向配置して備えるとともに、この導電性基板を介して前記第1櫛歯電極、前記第2櫛歯電極および前記インピーダンス変化型センサを介して互いに電気的に接続することができる。これによれば、スルーホールやワイヤボンディングなどにより、少なくとも圧電基板上に配置される表面弾性波変換手段と表面弾性波反射手段とを容易に電気的に接続することができる。また、導電性基板をインピーダンス変化型センサに達する大きさおよび/または形状に形成することにより、表面弾性波変換手段、表面弾性波反射手段およびインピーダンス変化型センサを容易に電気的に接続することができる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、前記物理量検出システムにおいて、物理量特定手段、温度補償手段および高周波電気信号と電波とを相互に変換して無線送受信を行う送受信部をそれぞれ有したホスト装置と、表面弾性波変換手段における第1櫛歯状電極に接続されて電波と高周波電気信号とを相互に変換する送受信アンテナとを備えることにある。
【0018】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、物理量検出システムは、物理量特定手段、温度補償手段および高周波電気信号と電波とを相互に変換して無線送受信を行う送受信部をそれぞれ有したホスト装置、および表面弾性波変換手段における第1櫛歯状電極に接続されて電波と高周波電気信号とを相互に変換する送受信アンテナとを備えて構成されている。これにより、物理量検出システムは、物理量を検出するインピーダンス型センサと、このインピーダンス型センサによる検出結果に基づいて物理量を特定するホスト装置とを互いに物理的に離れた位置に配置してワイヤレス通信によって高周波電気信号の送受信を行うことができるため、ホスト装置から離れた位置での物理量を無給電で検出することができる。
【0019】
また、本発明は物理量検出システムの発明として実施できるばかりでなく、物理量検出方法および物理量検出プログラムの発明としても実施できるものである。
【0020】
具体的には、圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第1櫛歯状電極を有して高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、検出対象から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第2櫛歯状電極を有するとともに同2つの第2櫛歯状電極のうちの一方がインピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続されて表面弾性波変換手段によって励振された表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段とを備えた物理量検出システムにおける物理量検出方法であって、表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の振幅を用いて前記物理量を特定する物理量特定ステップと、物理量特定手段にて物理量を特定する際に表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行う温度補償ステップとを含むようにするとよい。
【0021】
また、圧電効果を示す圧電体で構成されるとともに表面弾性波を伝播可能な圧電基板と、圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第1櫛歯状電極を有して高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する表面弾性波変換手段と、検出対象から受ける物理量に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変化型センサと、圧電基板上にて互いに対向配置された2つの第2櫛歯状電極を有するとともに同2つの第2櫛歯状電極のうちの一方がインピーダンス変化型センサにおける一方の端子に接続されて表面弾性波変換手段によって励振された表面弾性波を反射する表面弾性波反射手段と、メモリ装置を有してコンピュータプログラムを実行するコンピュータ部とを備えた物理量検出システムにおける物理量検出プログラムであって、コンピュータ部に、表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の振幅を用いて前記物理量を特定する物理量特定ステップと、物理量特定ステップにて物理量を特定する際に表面弾性波変換手段にて変換された高周波電気信号の位相変化を用いて前記物理量の温度補償を行う温度補償ステップとを実行させるようにすればよい。これによれば、上記物理量検出システムと同様な作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る物理量検出システムの構成を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1に示す物理量検出システムにおけるホスト装置の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
【図3】インピーダンス変化型センサの温度が20℃の場合を基準としてインピーダンス変化型センサの温度とインピーダンス変化型センサからの高周波電気信号の位相との関係を示したグラフである。
【図4】インピーダンス変化型センサの温度が20℃の場合を基準としてインピーダンス変化型センサの温度とインピーダンス変化型センサからの高周波電気信号の振幅との関係を示したグラフである。
【図5】図2に示した制御部によって実行される物理量検出プログラムのフローチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る物理量検出システムにおけるセンサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【図7】(A)~(C)は本発明の変形例に係る物理量検出システムにおけるセンサモジュールの構成の一部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る物理量検出システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る物理量検出システム100の構成を模式的に示した斜視図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この物理量検出システム100は、センサモジュール110がホスト装置130から物理的に離れた場所で物理量(本実施形態においては湿度)を検出するとともに検出した物理量に対応する電気信号を無線通信を介してホスト装置130に出力する検出装置である。

【0024】
(物理量検出システム100の構成)
物理量検出システム100は、主として、センサモジュール110とホスト装置130とで構成されている。センサモジュール110は、筐体111内に圧電基板112を備えている。筐体111は、センサモジュール110を構成する圧電基板112を含む各種部品を収めるケースであり、金属材料や樹脂材料によって構成されている。なお、図1においては、筐体111を二点鎖線で示している。

【0025】
圧電基板112は、圧電効果によって表面弾性波(破線波線で示す)を発生させるとともに発生させた表面弾性波を伝搬する部品であり、表面弾性波の発生および伝搬が可能な素材で構成されている。より具体的には、圧電基板112は、圧電効果によって表面弾性波を発生させる圧電体(「圧電素子」ともいう)によって構成されている。この場合、圧電体としては、各種結晶体(例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、水晶、ランガサイト)や、圧電効果を示す高分子材料(例えば、PVDF)などを用いることができる。本実施形態においては、圧電基板112は、結晶体で構成されている。なお、表面弾性波(Surface Acoustic Wave:SAW)とは、弾性体の表面を伝播する縦波および/または横波からなる波である。

【0026】
この圧電基板112は、図示左右方向に延びる平行四辺形状の板状体に形成されている。本実施形態においては、圧電基112は、約7mm×4mm×1mmの大きさで形成されている。この圧電基板112の大きさや形状は、センサモジュール110の使用場所、使用条件、および励振する表面弾性波(図1において破線波線で示す)の周波数などに応じて適宜決定されるものである。また、圧電基板112の厚さは、励振する表面弾性波の波長の1波長以上の厚さであればよいが、好ましくは同波長の3倍以上の厚さで構成するとよい。

【0027】
圧電基板112における長手方向両端部には、反射防止部113a,113bがそれぞれ設けられている。反射防止部113a,113bは、後述する表面弾性変換IDT116によって励振された表面弾性波および表面弾性波反射IDT117によって反射された表面弾性波の表面弾性波変換IDT116および表面弾性波反射IDT117への反射をそれぞれ防止するための部分である。本実施形態においては、反射防止部113a,113bは、平行四辺形に形成された圧電基板112における長手方向両端部の互いに平行に延びる2つの斜辺によって構成されている。本実施形態においては、反射防止部113a,113bを構成する2つの斜辺は、圧電基板112の長辺に対して約60°の角度で形成されている。

【0028】
なお、圧電基板112は、前記圧電体と、表面弾性波を伝搬可能な基体とを組み合わせて構成することもできる。例えば、圧電基板112は、PZTなどの圧電セラミックスや酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などからなる圧電薄膜をガラス、シリコンまたは樹脂などからなる基板表面の全面または部分的に積層して構成することもできる。

【0029】
この圧電基板112は、絶縁層114で被覆された導電性基板115上に固定されている。絶縁層114は、導電性基板115を筐体111内において電気的に絶縁して静電遮蔽するための誘電体層であり、高分子材料(例えば、BCB、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂など)やセラミック材料で構成されている。なお、図1においては、導電性基板115の構成を明確に表すために導電性基板115の側面を覆う絶縁層114を敢えて省略して示すとともに断面をハッチングで示している。また、導電性基板115は、後述する表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120に共通電位を供給するための導体で構成された板状の部材ある。本実施形態においては、導電性基板115は銅板によって構成されている。この導電性基板115は、絶縁層114によって筐体111内において完全に電気的に絶縁されて静電遮蔽された状態で固定されている。

【0030】
一方、圧電基板112の図示上面には、長手方向両側に互いに対向した状態で表面弾性波変換IDT116および表面弾性波反射IDT117がそれぞれ設けられている。これらのうち、表面弾性波変換IDT116は、後述するアンテナ118から入力する高周波電気信号に対応する表面弾性波を圧電基板112に励振するとともに、表面弾性波反射IDT117によって反射された表面弾性波を受けて同受信した表面弾性波に対応する高周波電気信号を生成してアンテナ118に出力する電極である。すなわち、表面弾性波変換IDT116は、アンテナ118と圧電基板112との間で高周波電気信号と表面弾性波とを相互に変換する電極であり、本発明に係る表面弾性波変換手段に相当する。

【0031】
また、表面弾性波反射IDT117は、前記表面弾性波変換IDT116によって励振された表面弾性波を同表面弾性波変換IDT116に向けて反射するための電極であり、本発明に係る表面弾性波反射手段に相当する。これらの表面弾性波変換IDT116および表面弾性波反射IDT117は、それぞれ2つの櫛歯状電極、具体的には、2つの第1櫛歯状電極116a,116bおよび2つの第2櫛歯状電極117a,117bがそれぞれ互いに対向配置されたIDT(Interdigital
Transducer)によって構成されている。

【0032】
各2つの第1櫛歯状電極116a,116bおよび第2櫛歯状電極117a,117bは、圧電基板112に対して電圧を加えまたは受けることができる電極であり、正極(+)側および負極(—)側の一対の櫛歯状の電極によって構成されている。具体的には、直線状に延びる基部から直交する方向に互いに平行に延びる複数の電極指によって構成された2つの櫛歯状の電極が、互いの電極指間に入り込んだ状態で形成されている。

【0033】
これらの第1櫛歯状電極116a,116bおよび第2櫛歯状電極117a,117bのうち、表面弾性波変換IDT116を構成する第1櫛歯状電極116a,116bは、正極側の電極指と負極側の電極指との間隔Pが、励振する表面弾性波の波長の1/2の整数倍の長さに設定されている。本実施形態においては、第1櫛歯状電極116a,116bにおける各正極側の電極指と各負極側の電極指との間隔Pは、2つの第1櫛歯状電極116a,116bによって励振する表面弾性波の波長の1/2の長さに設定している。また、一対の櫛歯状電極116a,116bを構成する各電極指間の間隔λも、励振する表面弾性波の波長の整数倍の長さに設定されている。

【0034】
一方、表面弾性波反射IDT117を構成する第2櫛歯状電極117a,117bは、必ずしも、各正極側の電極指と各負極側の電極指との間隔Pや材質などの構成を第1櫛歯状電極116a,116bと同一にする必要はないが、本実施形態においては、第2櫛歯状電極117a,117bは第1櫛歯状電極116a,116bと同一に構成されている。

【0035】
また、第2櫛歯状電極117a,117b(表面弾性波反射IDT117)は、第1櫛歯状電極116a,116b(表面弾性波変換IDT116)に対して第1櫛歯状電極116a,116bが励振する表面弾性波の図示右側の伝搬方向上に配置される。この場合、第2櫛歯状電極117a,117bと第1櫛歯状電極116a,116bとの距離は、センサモジュール130の仕様(使用条件、励振する表面弾性波の周波数など)に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されるものではない。この場合、例えば、第1櫛歯状電極116a,116bと第2櫛歯状電極117a,117bとは、第1櫛歯状電極116a,116bによって励振される表面弾性波の振幅とは無関係に配置してもよいし、同表面弾性波の振幅が2つの第2櫛歯状電極117a,117bの電極指間に一致するように表面弾性波の波長の整数倍の間隔を介して配置することもできる。

【0036】
これらの各2つずつの第1櫛歯状電極116a,116bおよび第2櫛歯状電極117a,117bは、Al,Au,Cu,Cr,Ti,Ptなどの金属単体、これらの組み合わせ、またはこれらの合金によって構成されており、圧電基板112の長手方向に沿って表面弾性波を励振させる向き、具体的には、櫛歯状の電極指が圧電基板112の長手方向に直交する向きで設けられている。これらの各2つずつの第1櫛歯状電極116a,116bおよび第2櫛歯状電極117a,117bは、スパッタ法、フォトリソグラフィーなどにより圧電基板112の表面にそれぞれ形成される。

【0037】
表面弾性波変換IDT116を構成する2つの第1櫛歯状電極116a,116bは、一方の第1櫛歯状電極116aがアンテナ118に接続されるとともに、他方の第1櫛歯状電極116bが導電性基板115に接続されている。アンテナ118は、ホスト装置130から送信される電波(図1において破線屈曲線で示す)を高周波電気信号に変換して表面弾性波変換IDT116に出力するとともに、表面弾性波変換IDT116によって生成された高周波電気信号を電波に変換して送信出力する送受信器である。なお、このアンテナ118と表面弾性波変換IDT116における第1櫛歯状電極116aとの間には、互いのインピーダンスを整合させるための図示しないインピーダンスマッチング回路が設けられている。

【0038】
一方、表面弾性波変換IDT117を構成する2つの第2櫛歯状電極117a,117bは、一方の第2櫛歯状電極117aが湿度センサ120に接続されるとともに、他方の第2櫛歯状電極117bが導電性基板115に接続されている。湿度センサ120は、外部から受ける湿度変化に対してインピーダンスが変化するとともに同湿度に対応する電気信号を出力する半導体素子である。この湿度センサ120は、一方の端子120aが表面弾性波反射IDT117を構成する第2櫛歯状電極117aに接続されるとともに他方の端子120bが導電性基板115に接続された状態で、導電性基板115上に固定されている。

【0039】
すなわち、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120が導電性基板115を介してそれぞれ電気的に接続されている。これにより、センサモジュール110は、センサモジュール110の電気系全体が他の電気系、例えば、センサモジュール110が設置される場所やホスト装置130の電気系から浮いた所謂フローティング状態となっている。なお、図1においては、理解を容易にするために表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120は、導電性基板115に対してそれぞれ導線によって接続されている。しかし、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120と導電性基板115との接続方法は、電気的に接続されていればよく、例えば、各種ボンディングやスルーホールによって接続することができる。

【0040】
ホスト装置130は、物理的に離れた場所に設置されるセンサモジュール110に対して表面弾性波変換IDT116に高周波電気信号を供給するための駆動信号(電波)を送信するとともにセンサモジュール110から送信される応答信号(電波)を受信して表面弾性波変換IDT116によって生成された電気信号を解析する計算装置である。このホスト装置130は、図2に示すように、主として、変調部131、送受信部132、検波部133、制御部134、入力装置13および表示装置13をそれぞれ備えて構成されている。

【0041】
変調部131は、制御部134から出力される高周波電気信号を変調して駆動信号を生成する電気回路である。また、送受信部132は、変調部131から出力される駆動信号をアンテナ132aを介してセンサモジュール110に向けて送信するとともに、センサモジュール110からの応答信号をアンテナ132aを介して受信して検波部133に出力する電気回路である。検波部133は、送受信部132を介して入力したセンサモジュール110からの応答信号を検波(復調)して制御部134に出力する電気回路である。

【0042】
制御部134は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ユーザによって予め記憶される物理量検出プログラムを実行することにより、センサモジュール110に対して送受信する高周波電気信号を用いて湿度センサ120によって検出された湿度を計算する。具体的には、制御部134は、高周波電気信号生成部134a、補償データ記憶部134b、温度補償部134cおよび物理量特定部134dをそれぞれ備えている。これらのうち、高周波電気信号生成部134aは、表面弾性波変換IDT116に供給する高周波電気信号を生成して変調部131に出力する。

【0043】
補償データ記憶部134bは、物理量特定部134dによって特定される物理量(本実施形態においては、湿度)の補正に用いる補償データを記憶するためのメモリであり、データを読み書き可能な記憶装置であるRAMによって構成されている。この場合、補償データは、湿度センサ120を介してホスト装置130に出力される高周波電気信号における位相変化に対して高周波電気信号の振幅を補正するためのデータである。

【0044】
ここで、補償データの根拠について説明しておく。本発明者らの実験によれば、図3に示すように、湿度センサ120を含むインピーダンス変化型センサを介して出力される応答信号を構成する高周波電気信号の位相がインピーダンス変化型センサの温度に対して線形に変化することを見出した。この場合、図3は、インピーダンス変化型センサの温度が20℃の場合を基準としてインピーダンス変化型センサの温度と応答信号を構成する高周波電気信号の位相との関係を示している。この図3に示す実験結果によれば、応答信号を構成する高周波電気信号における位相がインピーダンス変化型センサのインピーダンスに関係なくインピーダンス変化型センサの温度に対して線形に変化することを確認することができる。

【0045】
なお、図3および後述する図4において、「開放」とは表面弾性波反射IDT117を構成する2つの第2櫛歯状電極117a,117bの各端子間を接続しない状態であり、「短絡」とは第2櫛歯状電極117a,117bの各端子間を互いに接続した状態である。また、図3,4において「10pF」は、第2櫛歯状電極117a,117bの各端子間に10pFの容量を有するコンデンサを接続した状態である。また、図3,4「130Ω」は、第2櫛歯状電極117a,117bの各端子間に10Ωの抵抗値を有する抵抗を接続した状態である。

【0046】
また、本発明者らの実験によれば、図4に示すように、湿度センサ120を含むインピーダンス変化型センサを介して出力される応答信号を構成する高周波電気信号の振幅がインピーダンス変化型センサの温度に対して無関係であることを見出した。この場合、図4は、インピーダンス変化型センサの温度が20℃の場合を基準としてインピーダンス変化型センサの温度と応答信号を構成する高周波電気信号の振幅との関係を示している。この図4に示す実験結果によれば、応答信号を構成する高周波電気信号における振幅がインピーダンス変化型センサの温度に関係なくインピーダンスにのみ依存することを確認することができる。

【0047】
これらの実験結果から、本発明者らは、インピーダンス変化型センサを介して出力される応答信号を構成する高周波電気信号の位相を評価することによりインピーダンス変化型センサの出力とは独立してインピーダンス変化型センサの温度が検出できるとともにインピーダンス変化型センサから出力される応答信号を構成する高周波電気信号に対して温度補償を行うことができることを知見するに至ったものである。したがって、補償データ記憶部135に記憶される補償データは、インピーダンス変化型センサの温度変化に対するインピーダンスと応答信号を構成する高周波電気信号の位相との関係を予め取得しておいて、高周波電気信号の位相値からインピーダンス変化型センサのインピーダンスを補正する補正値群や補正関数によって構成されることになる。

【0048】
この場合、補償データは、インピーダンス変化型センサのインピーダンスを補正する補正値群や補正関数に限られず、インピーダンス変化型センサの温度変化に対する応答信号を構成する高周波電気信号の振幅と応答信号を構成する高周波電気信号の位相との関係から高周波電気信号の振幅を補正する補正値群や補正関数によって構成されていてもよい。また、補償データは、インピーダンス変化型センサの温度変化に対して検出対象となる物理量(本実施形態においては、湿度)と応答信号を構成する高周波電気信号の位相との関係から前記物理量を補正する補正値群や補正関数によって構成されていてもよい。本実施形態においては、補償データ記憶部134bに記憶される補償データは、応答信号を構成する高周波電気信号の位相から高周波電気信号の振幅を補正する補正値群によって構成されている。また、この補償データは、ユーザによって予め補償データ記憶部134bに記憶される。

【0049】
温度補償部134cは、検波部133によって検波された高周波電気信号の位相を検出するとともに検出した位相の変化に応じて高周波電気信号における振幅を補正する。より具体的には、温度補償部134cは、高周波電気信号の位相を検出した後、補償データ記憶部134bに記憶される補償データを用いて高周波電気信号の振幅値を補正して物理量特定部134dに出力する。物理量特定部134dは、温度補償部134cから出力された高周波電気信号の振幅値から湿度センサ120が検出した湿度を計算して特定する。

【0050】
また、この制御部134には、ユーザからの指示を入力するための入力装置135および制御部134の作動状態や特定した物理量を表示するための表示装置136がそれぞれ接続されている。なお、このホスト装置300は、内蔵する各種回路を駆動するための電源を備え、または外部電源に接続されるように構成されている。

【0051】
(物理量検出システム100の作動)
次に、上記のように構成した物理量検出システム100の作動について説明する。物理量検出システム100のユーザは、センサモジュール110をホスト装置130から物理的な離れた場所であって湿度測定の対象となる場所に設置する。この場合、センサモジュール110は、電源を持たないとともにホスト装置130からの駆動信号の送信がないため、作動停止状態にある。次いで、ユーザは、ホスト装置130の入力装置135を操作することにより電源をONにするとともにホスト装置130の作動を開始させる。これにより、ホスト装置130は、物理量の検出を開始する。

【0052】
具体的には、ホスト装置130における制御部134は、図5に示す物理量検出プログラムの実行をステップS100にて開始した後、ステップS102にて、高周波電気信号を出力する。この場合、制御部134は、高周波電気信号生成部134aにて高周波電気信号を生成して変調部131に出力する。変調部131に出力された高周波電気信号は、変調部131にて変調された後、駆動信号として送受信部132によってセンサモジュール110に対して送信される。すなわち、ホスト装置130は、センサモジュール1100に表面弾性波変換IDT116に高周波電気信号を供給してセンサモジュール110からの応答信号を得るための駆動信号を送信する。この場合、ホスト装置130は、駆動信号をバースト出力することにより、センサモジュール110からの応答信号を検波し易くすることができる。

【0053】
ホスト装置130から送信された駆動信号は、センサモジュール110のアンテナ118によって受信される。アンテナ118は、受信した電波(駆動信号)に対応する高周波電気信号に変換して表面弾性波変換IDT116に出力する。表面弾性波変換IDT116は、アンテナ118から出力された高周波電気信号に対応する表面弾性波を圧電基板112上に励振する。これにより、圧電基板112上に励振された表面弾性波は、表面弾性波変換IDT116の中心として反射防止部113a側および表面弾性波反射IDT117側にそれぞれ伝搬する。これらのうち、反射防止部113a側に伝搬した表面弾性波は、反射防止部113aによって圧電基板112の図示下側の長辺に向って反射する。これにより、表面弾性波変換IDT116から反射防止部113a側に伝搬した表面弾性波が再び表面弾性波変換IDT116に戻ることが防止される。

【0054】
一方、表面弾性波反射IDT117側に向って伝搬した表面弾性波は、一部が表面弾性波反射IDT117によって表面弾性波変換IDT116側に反射されるとともに、他の一部が表面弾性波反射IDT117を通り抜ける。この場合、表面弾性波反射IDT117を通り抜けた表面弾性波は、反射防止部113bによって圧電基板112の図示上側の長辺に向って反射する。これにより、表面弾性波反射IDT117を通り抜けた表面弾性波が再び表面弾性波変換IDT116に戻ることが防止される。

【0055】
また、表面弾性波反射IDT117は、第2櫛歯状電極117aに接続された湿度センサ120のインピーダンスに応じた反射率によって表面弾性波を反射する。より具体的には、表面弾性波反射IDT117は、受けた表面弾性波に応じた高周波電気信号を生成して湿度センサ120に出力する。この場合、湿度センサ120は、湿度センサ120の周囲の湿度に応じたインピーダンスとなっている。このため、湿度センサ120に接続された表面弾性波反射IDT117のインピーダンスが湿度センサ120のインピーダンスの変化に応じて変化する。すなわち、表面弾性波反射IDT117のインピーダンスは、湿度センサ120の周囲の湿度に応じて変化する。

【0056】
そして、表面弾性波反射IDT117から出力された高周波電気信号は、湿度センサ120および表面弾性波反射IDT117のインピーダンス変化に応じて変化した後、表面弾性波反射IDT117によって表面弾性波に変換される。すなわち、表面弾性波反射IDT117における表面弾性波の反射率は、湿度センサ120の周囲の湿度に応じたものとなる。

【0057】
したがって、表面弾性波反射IDT117は、湿度センサ120のインピーダンス(換言すれば、湿度)に応じた所定の反射率によって表面弾性波を反射させる。表面弾性波反射IDT117によって所定の反射率で反射された表面弾性波は、圧電基板112上を表面弾性波変換IDT116に向って伝搬する。表面弾性波変換IDT116は、受信した表面弾性波に対応する高周波電気信号に変換するとともに同高周波電気信号をアンテナ118に出力する。アンテナ118は、表面弾性波変換IDT116から出力された高周波電気信号を電波(応答信号)に変換して送信する。アンテナ118から送信された応答信号は、ホスト装置110におけるアンテナ132aを介して送受信部132によって受信される。

【0058】
なお、表面弾性波反射IDT117は、表面弾性波を反射させる際、反射防止部113b側にも表面弾性波を励振させる。この場合、反射防止部113b側に伝搬した表面弾性波は、反射防止部113bによって圧電基板112の図示上側の長辺に向って反射する。これにより、表面弾性波用反射IDT117から反射防止部113b側に伝搬した表面弾性波が再び表面弾性波反射IDT117に戻ることが防止される。

【0059】
送受信部132によって受信されたセンサモジュール110からの電波(応答信号)は、検波部133によって高周波電気信号に復調された後、制御部134の温度補償部134cに入力される。この場合、温度補償部134cに入力される高周波電気信号は、湿度センサ120の周囲の湿度に対応したものとなっているが、より厳密には、湿度センサ120の温度の影響を受けて実際の湿度を表す信号に対して誤差を含んで構成されている。したがって、センサモジュール110から出力された応答信号を構成する高周波電気信号は、温度補償を行う必要がある。

【0060】
具体的には、制御部134は、ステップS104にて、高周波電気信号に対して温度補償処理を実行する。この場合、制御部134における温度補償部134cは、高周波電気信号の位相を検出した後、補償データ記憶部134bに記憶される補償データを用いて高周波電気信号の振幅値を補正して物理量特定部134dに出力する。すなわち、温度補償部134cが本発明に係る温度補償手段に相当するとともに、このステップS104における温度補償処理が本発明に係る温度補償ステップに相当する。

【0061】
次に、制御部134は、ステップS106にて、物理量特定処理を実行する。この場合、制御部134における物理量特定部134dは、温度補償部134cから出力された高周波電気信号の振幅値に対して予め記憶されている湿度変換テーブルを用いて湿度センサ120が検出した湿度を計算して特定する。すなわち、物理量特定部134dが本発明に係る物理量特定手段に相当するとともに、このステップS106における物理量特定処理が本発明に係る物理量特定ステップに相当する。

【0062】
次に、制御部134は、ステップ108にて、前記特定した物理量である湿度を表示装置136に表示させる。これにより、ユーザは、センサモジュール120を設置した場所における湿度を認識することができる。なお、制御部134は、特定した物理量を表示装置136に表示させる以外に、記憶装置内に記憶したり、他の機器に送信したりすることができることは言うまでもない。

【0063】
次に、制御部134は、ステップS110にて、この物理量検出プログラムの実行の中断が指示された否かを判定する。この場合、制御部134は、入力装置135を介してユーザによって物理量検出プログラムの実行の中断が指示されるまでの間、この判定処理にて「No」と判定し続けてステップS102に戻り再び物理量の検出処理を実行する。一方、制御部134は、入力装置135を介してユーザによって物理量検出プログラムの実行の中断が指示された場合には、この判定処理にて「Yes」判定してステップS112に進む。これにより、制御部134は、ステップS112にて、この物理量検出プログラムの実行を終了する。

【0064】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、物理量検出システム100は、物理量特定部134dが湿度センサ120を介した高周波電気信号の振幅変化を用いて検出対象となる湿度を特定する際、温度補償部134cが高周波電気信号の位相変化を用いて特定される湿度の温度補償を行っている。これにより、物理量検出システム100は、湿度センサ120の温度が変化した場合であっても正確な湿度を検出することができる。そして、このように湿度センサ120の検出湿度の温度補償を高周波電気信号の位相変化を用いて行うことができることは、湿度センサ120を介した高周波電気信号の振幅変化量がインピーダンス変化型センサのインピーダンスのみに依存すること、および同高周波電気信号の位相変化が湿度センサ120のインピーダンスに依存せず温度変化のみに依存しているという本発明者らによる新たな知見に基づくものである。

【0065】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記変形例の説明においては、参照する各図における上記実施形態と同様の構成部分に同じ符号または対応する符号を付すとともに直接関わらない部分については一部の構成を適宜省略して示して、それらの説明も省略する。また、各図において、破線矢印は表面弾性波を示す。

【0066】
例えば、上記実施形態においては、センサモジュール200は、湿度センサ120を備えることにより湿度センサ120の周囲の湿度に応じて表面弾性波反射IDT117における表面弾性波の反射率を変化させるように構成した。すなわち、湿度センサ120が、本発明に係るインピーダンス変化型センサに相当する。しかし、表面弾性波反射IDT117における表面弾性波の反射率を変化させるためのインピーダンス変化型センサは、外部から受ける物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するもの、すなわち、キャパシタ、インダクタンスまたは抵抗が変化する素子であれば、必ずしも湿度センサ120に限定されるものではない。すなわち、インピーダンス変化型センサは、光、音、超音波(振動)、圧力、温度、湿度、ガス、電界または磁界などの物理量に応じたインピーダンスとなるインピーダンス変換素子を用いることができる。この場合、例えば、圧力検出であればストレンゲージ(ロードセル)や圧電素子(ピエゾ素子)、光検出であればフォトダイオードやフォトレジスタなどを用いることができる。なお、インピーダンス変化型センサは、前記した各種インピーダンス変換素子を単独で、またはこれらを適宜組み合わせて構成することができる。

【0067】
また、上記実施形態においては、インピーダンス変化型センサである湿度センサ120を圧電基板202および導電性基板115と同じ筐体111内に配置した。しかし、湿度センサ120などによって構成されるインピーダンス変化型センサは、これらを収める筐体111の外側に配置されていてもよい。

【0068】
また、上記実施形態においては、センサモジュール110におけるアンテナ118およびホスト装置130におけるアンテナ132aは、図1に示されるようにポール形のアンテナを採用している。しかし、アンテナ118,132aは、センサモジュール110とホスト装置130との間で電波の送受信、すなわち、駆動信号の受信と応答信号の送信を行うことができる形式のものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、アンテナ118,132aは、フィルム状やコイル状のアンテナを採用することができる。また、アンテナ118,132aの配置位置も筐体111やホスト装置130の外側であっても内側であってもよい。また、アンテナ118としてフィルム状のアンテナを採用した場合、このフィルム状のアンテナ118は、圧電基板112の表裏面や絶縁層114で被覆された導電性基板115の表裏面に貼り付けて設けることもできる。

【0069】
また、上記実施形態においては、センサモジュール110は、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120を導電性基板115に接続することにより、これらの表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120を互いに電気的に接続して共通電位を供給するように構成した。しかし、センサモジュール110は、上記実施形態の場合、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120は互いに電気的に接続されて共通電位が供給されていればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。

【0070】
例えば、センサモジュール110は、図6に示すように、表面弾性波変換IDT116の第1櫛歯状電極116b、表面弾性波反射IDT117の第2櫛歯状電極117bおよび湿度センサ120の他方の端子119bを互いに直結することにより、これらの表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120に共通電位を供給するように構成することもできる。

【0071】
また、上記実施形態においては、導電性基板115は、圧電基板112および湿度センサ120を載置可能な大きさおよび形状に形成した。これにより、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120を容易に電気的に接続することができる。しかし、導電性基板115は、導電性を有する材料で構成され、少なくとも圧電基板112上に配置される他方の第1櫛歯電極116bと他方の第2櫛歯電極117b間に対応する大きさおよび形状に形成されて圧電基板112に対向配置されていれば、スルーホールやワイヤボンディングなどにより、少なくとも圧電基板112上に配置される表面弾性波変換IDT116と表面弾性波反射IDT117とを容易に電気的に接続することができる。なお、導電性基板115を構成する材料は、上記実施形態における銅材のほか電気を通すことができる材料(電気伝導率が高い材料)であれば特に限定されるものではない。例えば、導電性基板115の材料としては、アルミニウムなどの軽金属、金や銀などの貴金属、導電性セラミックおよび導電性高分子などを用いることができる。また、導電性基板115は、これらの材料を適宜組み合わせて構成することができるとともに、これらの材料と絶縁材料との組み合わせ、例えば、高周波回路で多用されるガラスエポキシ基板の両面に銅箔を設けて導電性基板115を構成することもできる。

【0072】
また、上記実施形態においては、センサモジュール110は、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120を導電性基板115に接続することにより、これらの表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120を互いに電気的に接続して共通電位を供給するように構成した。しかし、センサモジュール110は、必ずしも、表面弾性波変換IDT116、表面弾性波反射IDT117および湿度センサ120を互いに電気的に接続して共通電位を供給するように構成する必要はない。

【0073】
例えば、センサモジュール110は、図7(A)~(B)に示すように、表面弾性波変換IDT116における第1櫛歯状電極116bを接地して構成することができる。また、センサモジュール110は、図7(A)に示すように、表面弾性波反射IDT117を構成する2つの第2櫛歯状電極117aと第2櫛歯状電極117bとの間に湿度センサ120を接続して構成することもできる。また、センサモジュール110は、図7(B)に示すように、表面弾性波反射IDT117を構成する2つの第2櫛歯状電極117a,117bのうち、一方の第2櫛歯状電極117aに湿度センサ120を接続して接地するとともに他方の第2櫛歯状電極117bを接地して構成することもできる。また、センサモジュール110は、図7(C)に示すように、表面弾性波反射IDT117を構成する2つの第2櫛歯状電極117a,117bに対してそれぞれ湿度センサ120を接続して接地して構成することもできる。すなわち、表面弾性波反射IDT117は、少なくとも2つの第2櫛歯状電極117a,117bのうちの一方が湿度センサ120(インピーダンス変化型センサ)における一方の端子に接続されていればよい。

【0074】
また、上記実施形態においては、センサモジュール110は、一組の表面弾性波変換IDT116と表面弾性波反射IDT117とを設けた。しかし、センサモジュール110は、複数組の表面弾性波変換IDT116と表面弾性波反射IDT117とを設けることもできる。この場合、各組における表面弾性波の伝搬経路長を互いに異なるものとした所謂タグを用いることにより各組のごとの応答信号を区別するようにするとよい。

【0075】
また、センサモジュール110は、1つの表面弾性波変換IDT116に対して2つ以上の表面弾性波反射IDT117を設けて構成することができるとともに、1つの表面弾性波反射IDT117に対して2つ以上の表面弾性波変換IDT116を設けて構成することもできる。

【0076】
また、上記実施形態においては、物理量検出システム100は、1つのセンサモジュール110に対して駆動信号の無線送信および応答信号の無線受信を行なう構成とした。しかし、物理量検出システム100は、1つのホスト装置130に対して複数のセンサモジュール110に対して駆動信号の無線送信および応答信号の無線受信を行なう構成とすることもできる。

【0077】
また、上記実施形態においては、表面弾性波変換IDT116と表面弾性波反射IDT117とを互いに対向配置した。しかし、表面弾性波変換IDT116と表面弾性波反射IDT117とは、互いに表面弾性波が往復伝搬できれば、必ずしも対向配置する必要はない。例えば、センサモジュール110は、表面弾性波変換IDT116によって励振される表面弾性波の伝搬経路上に表面弾性波の進行方向を変更する反射部を設けることにより表面弾性波反射IDT117を表面弾性波変換IDT116に対して対向しない位置に自由に配置することもできる。

【0078】
また、上記実施形態においては、ホスト装置130は、センサモジュール110に対して電波を送信する機能と受信する機能を共に兼ね備えて構成されている。すなわち、ホスト装置130は、センサモジュール110に対して駆動信号を無線送信するとともに同センサモジュール110からの応答信号を無線受信する。しかし、ホスト装置130は、駆動信号を無線送信する機能と応答信号を無線受信する機能とを別個の装置で構成されていてもよい。

【0079】
また、上記実施形態においては、制御部134は、センサモジュール110からの応答信号を構成する高周波電気信号における位相変化を用いて湿度センサ120の検出湿度の温度補正のみを行った。しかし、制御部134は、この温度補償に代えてまたは加えてセンサモジュール110からの応答信号を構成する高周波電気信号における位相変化を用いて湿度センサ120の温度を検出することもできる。これによれば、物理量検出システム100は、湿度センサ120によって温度が検出できるとともに1つの湿度センサ120によって湿度と温度とを同時に検出することができる。すなわち、物理量検出システム100は、センサモジュール110からの応答信号を構成する高周波電気信号における位相変化を用いてインピーダンス変化型センサの温度を検出する温度検出部および温度の検出処理を実行する温度検出ステップを備えて構成することができる。

【0080】
また、上記実施形態においては、物理量検出システム100は、センサモジュール110とホスト装置130との間の駆動信号および応答信号の送受信を無線通信で行うように構成した。しかし、物理量検出システム100は、センサモジュール110とホスト装置130とを有線で結ぶことにより、センサモジュール110とホスト装置130との間の駆動信号および応答信号の送受信を有線通信で行うように構成することもできる。また、物理量検出システム100は、センサモジュール110とホスト装置130とを一体的に構成することもできる。
【符号の説明】
【0081】
100…物理量検出システム、
110…センサモジュール、111…筐体、112…圧電基板、113a,113b…反射防止部、114…絶縁層、115…導電性基板、116…表面弾性波変換IDT、116a,116b…第1櫛歯状電極、117…表面弾性波反射IDT、117a,117b…第2櫛歯状電極、118…アンテナ、
120…湿度センサ、120a,120b…端子、
130…ホスト装置、131…変調部、132…送受信部、132a…アンテナ、133…検波部、134…制御部、134a…高周波電気信号生成部、134b…補償データ記憶部、134c…温度補償部、134d…物理量特定部、135…入力装置、136…表示装置。
図面
【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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