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明細書 :力率計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6083690号 (P6083690)
公開番号 特開2013-238434 (P2013-238434A)
登録日 平成29年2月3日(2017.2.3)
発行日 平成29年2月22日(2017.2.22)
公開日 平成25年11月28日(2013.11.28)
発明の名称または考案の名称 力率計測装置
国際特許分類 G01R  21/00        (2006.01)
G01R  21/08        (2006.01)
G01R  33/09        (2006.01)
FI G01R 21/00 C
G01R 21/08
G01R 33/06 R
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2012-110116 (P2012-110116)
出願日 平成24年5月11日(2012.5.11)
審査請求日 平成27年5月11日(2015.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】辻本 浩章
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100109841、【弁理士】、【氏名又は名称】堅田 健史
【識別番号】100167933、【弁理士】、【氏名又は名称】松野 知紘
【識別番号】100174137、【弁理士】、【氏名又は名称】酒谷 誠一
審査官 【審査官】續山 浩二
参考文献・文献 特開平02-120677(JP,A)
特開平03-261394(JP,A)
特開平07-297464(JP,A)
特開2012-078232(JP,A)
特開2002-310659(JP,A)
特開2011-047731(JP,A)
特開昭64-074457(JP,A)
辻本 浩章, 津嵜 陽亮,磁気抵抗効果型磁性薄膜電力センサ,電気学会研究会資料. MAG, マグネティックス研究会,日本,2011年11月24日
調査した分野 G01R 21/00
G01R 21/08
G01R 33/09
特許請求の範囲 【請求項1】
第1端子及び第2端子に接続された電源に接続線を介して接続された負荷において消費される電力の力率を測定する力率計測装置であって、
前記負荷と並列に連結された力率センサ部であって、
抵抗素子を介することなく前記第1端子と接続された第1磁性素子と、前記第1磁性素子と前記第2端子との間に接続された第1計測抵抗と、
抵抗素子を介することなく前記第1端子と接続された第2磁性素子と、前記第2磁性素子と前記第2端子との間に接続された第2計測抵抗と、
を有し、前記第1磁性素子及び前記第2磁性素子は、バイアス手段から互いに逆方向のバイアスが印加されることによって電気抵抗の変化が外部磁界に比例するが、その比例係数の符号が互いに異なり、長手方向が前記接続線と平行かつ前記接続線から等距離に配置され、前記第1計測抵抗および前記第2計測抵抗は同一の固定抵抗値を有し、該固定抵抗値は、前記第1磁性素子及び前記第2磁性素子に流れる電流が前記固定抵抗値に反比例するとみなせる程度に十分大きい、力率センサ部と、
前記第1磁性素子と前記第1計測抵抗との接続箇所の電圧と、第2磁性素子と前記第2計測抵抗との接続箇所の電圧との間の、前記負荷において消費される電力の有効電力に比例する成分および皮相電力に比例する成分を含む差動電圧を検出する電圧検出部と、
前記差動電圧に基づいて前記力率を算出する力率算出部と、を備える、力率計測装置。
【請求項2】
前記力率算出部は、
前記電圧検出部の出力に接続されたローパスフィルタと、
前記電圧検出部の出力に接続されたハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタの出力に接続された整流器と、
前記ローパスフィルタの出力を、前記整流器の出力で除算する除算手段と、
を有する、請求項1に記載の力率計測装置。
【請求項3】
前記第1磁性素子は、
短冊状の第1磁性膜と、
前記第1磁性膜の両端に設けられた一対の第1素子端子と、
前記第1磁性膜の膜面に平行に磁界を印加する第1バイアス部であって、前記磁界の方向と、前記一対の第1素子端子間を流れる電流の方向との間には所定の角度がある、第1バイアス部と、を有し、
前記第2磁性素子は、
短冊状の第2磁性膜と、
前記第2磁性膜の両端に設けられた一対の第2素子端子と、
前記第2磁性膜の膜面に平行に磁界を印加する第2バイアス部であって、前記磁界の方向と、前記一対の第2素子端子間を流れる電流の方向との間には所定の角度がある、第2バイアス部と、を有し、
前記第1磁性素子における前記所定の角度は、前記第2磁性素子における前記所定の角度とは異なる、請求項1に記載の力率計測装置。
【請求項4】
前記第1磁性素子は、
短冊状の第1磁性膜と、
前記第1磁性膜の両端に設けられた一対の第1素子端子と、
前記第1磁性膜の表面に形成された複数の第1導体であって、前記第1素子端子間の方向と、前記複数の第1導体との間には所定の角度がある、複数の第1導体と、を有し、
前記第2磁性素子は、
短冊状の第2磁性膜と、
前記第2磁性膜の両端に設けられた一対の第2素子端子と、
前記第2磁性膜の表面に形成された複数の第2導体であって、前記第2素子端子間の方向と、前記複数の第2導体との間には所定の角度がある、複数の第2導体と、を有し、 前記第1磁性素子における前記所定の角度は、前記第2磁性素子における前記所定の角度とは異なる、請求項1に記載の力率計測装置。
【請求項5】
前記第1磁性素子における磁化容易軸と、前記第1磁性素子に流れる電流の方向と、の間の角度は、
前記第2磁性素子における磁化容易軸と、前記第2磁性素子に流れる電流の方向と、の間の角度と異なる、請求項1に記載の力率計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は誘導負荷を有する電気回路に置ける消費電力の力率を計測する装置に係るものであり、特に磁性膜の磁気抵抗効果を利用した力率計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流電源を用いてリアクタンス成分を有する負荷を駆動する場合は、電圧と電流に位相差が生じる。この位相差によって、消費される電力は、有効電力と無効電力が生じる。無効電力の増大は、電源の有効利用にならないため、当然低減し、有効電力を増大させることが望ましい。
【0003】
電源から供給される電力に対して有効電力の割合を力率と呼び、通常cosθで表す。ここでθは、電流-電圧の位相差である。有効電力をできるだけ大きくするためには、電力消費回路における力率を計測し、力率が大きくなるように回路を調整する必要がある。特に、省エネという観点からは、力率の表示が現在の運転効率を直接表示することになり、力率を高めて効率的な運転を目指すとともに、力率の直接計測が望まれる。
【0004】
しかしながら、回路で消費される電力の力率は、無効電力を計測することで行われる場合が多い。これは、互いに90°位相のずれた電圧、電流信号の積を取ることで求める。この90°の位相シフトには、変圧器や積分回路といった要素が用いられていた。しかし、このような方法は、負荷変動の際には、無効電力の計算が複雑になるという課題があった。
【0005】
この課題を解決するために特許文献1では、交流電路の電圧および電流をサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段によりサンプリングされた電圧データおよび電流データをサンプリングポイント毎に記憶するメモリ手段と、前記メモリ手段により記憶された電圧データおよび電流データから無効電力を演算する疑似無効電力演算手段とを備え、前記メモリ手段は前記電圧データおよび電流データを同位相で1周期分記憶し、前記疑似無効電力演算手段は前記メモリ手段により記憶された所定周期分の電圧データおよび電流データについて、各サンプリングポイントの電流データと90°位相がずれたサンプリングポイントの電圧データをそれぞれ循環的に乗算し、それらの乗算値の平均から無効電力を演算する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2001-074788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
省エネという観点や、電力が自動車などの移動体の駆動へ利用されると、さまざまな箇所での力率計測が必要になる。そのような需要に応えるためには、小型のセンサと簡便な計測部を有する力率計測装置が必要となる。
【0008】
特許文献1で開示された力率測定装置は、比較的簡単な構成で無効電力を演算することができるとされているが、交流電路の電圧および電流をサンプリングするサンプリング手段が必要であり、計測装置特にセンサ部分の大きさは、小さくできない。また、回路結線後に電流のサンプリング手段を配置させようとすると、接続線をクランプする必要があり、壁等の溝に埋め込み配設された接続線に対してサンプリング手段を配設するのは、容易ではないという課題が生じる。さらに、特許文献1の方法では、力率を直接測定できていないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記のような課題に鑑み想到されたものであり、磁性膜の有する磁気抵抗効果を利用した力率計測装置である。より具体的に本発明の力率計測装置は、
電源に接続線を介して接続された負荷において消費される電力の力率を測定する力率計測装置であって、
前記電源に対して前記負荷と並列に連結するための一対の連結端と、
同一外部磁界によって電気抵抗の変化が異なる2つの磁性素子と、
前記2つの磁性素子の差動電圧を出力する一対の計測端子と、
前記一対の連結端と接続される一対のセンサ端子を含む力率センサ部と、
前記計測端子間の電圧を計測する電圧検出部と、
前記電圧検出部の出力に接続されたローパスフィルタと、
前記電圧検出部の出力に接続されたハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタに接続された整流器と、
前記ローパスフィルタの出力と、前記整流器の出力を除算する除算手段
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による力率計測装置は、非接触(原理)、設置が容易(超小型、薄型)、省エネ(計測時のエネルギー消費小)、といった磁性薄膜電力センサのメリットを生かし、誘導電動機の細部において、力率を直接計測できる。したがって、電力消費状況の可視化が可能になり、誘導電動機などのリアクタンス要素を有する回路に応用することにより、運転状況や負荷状況に応じた省エネ駆動制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の力率計測装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の力率センサ部の拡大を示す図である。
【図3】本発明の第1の磁性素子の動作原理を示す図である。
【図4】本発明の第2の磁性素子の動作原理を示す図である。
【図5】他の第1の磁性素子の構造を示す図である。
【図6】他の第2の磁性素子の構造を示す図である。
【図7】バーバーポールタイプの磁性素子を用いた力率センサ部の構成を示す図である。
【図8】バーバーポールタイプの磁性素子を用いた力率計測装置の構成を示す図である。
【図9】他の構成の磁性素子を用いた力率計測装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明に係る力率計測装置について図を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を例示するのであり、以下の実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下の実施形態は変更することができる。

【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の力率計測装置の構成を示したものである。本発明の力率計測装置1は、連結端12と、力率センサ部10と、電圧検出部15と、ローパスフィルタ16と、ハイパスフィルタ17と、整流器18と、除算手段19を含む。また、本発明の力率計測装置1は、電源7に接続された負荷9(抵抗値はR1)で消費される電力の力率を計測する。ここで、電源7は交流である。なお、電源7と負荷9の間は接続線8(抵抗値はRcu)で接続される。

【0014】
連結端12は、計測対象となる回路の電源7に対して負荷9と並列に、力率計測装置1の力率センサ部10を接続するための端子である。したがって、この連結端12は1対あり、それぞれ区別する場合は、連結端12a、12bとよぶ。

【0015】
図2には、力率センサ部10と連結端12だけを示す。力率センサ部10は、磁性膜の磁気抵抗効果を利用した素子を2つ組み合わせ、それぞれの差動出力を取り出す端子(計測端子13:それぞれ13a、13b)が設けられている。また、連結端12と接続されるセンサ端子10t(10ta、10tb)が設けられる。力率センサ部10の構成としては、第1の磁性素子21と第2の磁性素子22のそれぞれに、計測抵抗23および24(それぞれ抵抗値はR2)が直列に接続されたものが、並列に接続されている。

【0016】
第1の磁性素子21は、短冊状に形成された磁性膜21jの両端に素子端子21aおよび21bが形成され、バイアス手段21cが配設されている。バイアス手段21cは、第1の磁性素子21の磁性膜21j中に形成される磁化を、素子端子21a、21b間に流れる電流Iの向きに対して、動作点まで変える(回転させる)ための手段である。例えば、図2の第1の磁性素子21の場合は、矢印MFの方向に磁界を印加する永久磁石である。この矢印MFは磁性膜21jの面内方向に印加される。

【0017】
同様に第2の磁性素子22も、短冊状に形成された磁性膜22jの両端に素子端子22aおよび22bが形成され、バイアス手段22cが配設されている。ただし、第2の磁性素子22では、バイアス手段22cは、素子端子22a、22b間に流れる電流Iに対して、バイアス手段21cとは逆方向にバイアスを印加する(矢印MF’)。なお、後述するようにバイアス手段21c、22cは、このように永久磁石のように磁性膜21j、22jに磁界を印加する手段だけでなく、磁性膜の磁化と磁性膜を流れる電流の向きを変更できる構成であればよい。

【0018】
また、素子端子21a(22a)から素子端子21b(22b)に向かう方向を磁性素子21(22)の長手方向と呼ぶ。また、第1の磁性素子21と第2の磁性素子22は、接続線8の電流I方向(図1参照)に長手方向を揃えて配置される。接続線8の電流Iの発生する磁界Hを磁性膜の面内に作用させるためである。また、それぞれの磁性素子21、22は、接続線8の表面から等距離に配置されるのが望ましい。接続線8を流れる電流Iによる磁界Hは、接続線8の中心からの距離で決まるからである。逆に、接続線8の断面が円形で、接続線8の中心からの距離が等しければ、第1の磁性素子21と第2の磁性素子22は、必ずしも1直線状に配置されていなくてもよい。

【0019】
第1の磁性素子21の一方端21aは、力率センサ部10のセンサ端子10taと接続される。そして、第1の磁性素子21の他方端21bは、第1の計測抵抗23と直列に接続される。第2の磁性素子22の一方端22aは、同じく力率センサ部10のセンサ端子10taと接続される。そして、第1の磁性素子21同様、第2の磁性素子22の他方端22bは、第2の計測抵抗24と直列に接続される。

【0020】
第1の計測抵抗23および第2の計測抵抗24は、また、力率センサ部10のセンサ端子10tbに接続される。すなわち、力率センサ部10の一方端10taと他方端10tbの間で、第1の磁性素子21と第1の計測抵抗23、第2の磁性素子22と第2の計測抵抗24がブリッジ回路を構成する。

【0021】
計測端子13は、第1の磁性素子21と第2の磁性素子22の一方の素子端子21b、22bに接続されている。ここで、第1の計測抵抗23と第2の計測抵抗24は、同一の抵抗値を有し、なおかつ、磁性素子21、22の素子端子(21aと21bおよび22aと22b)間の抵抗Rmrと比較して十分大きな抵抗である。

【0022】
したがって、計測端子13a、13b間は、ブリッジ回路の差動出力となっている。また、計測抵抗23、24が磁性素子21、22の素子端子間の抵抗Rmrより十分に大きいので、力率計測装置1の連結端12間に印加される電圧に係らず、一定の電流が流れるとみなせる。

【0023】
次に図3、図4を用いて磁性素子21、22を詳説する。図3(a)には、第1の磁性素子21だけを示す。第1の磁性素子21では、磁性膜21jの磁化容易軸は素子端子21a、21b間の軸21EA方向に形成されている。言い換えると、磁化容易軸は長手方向に誘導されている。この時の素子端子21a、21b間の抵抗Rmrと、磁性膜21jの面内直角方向にかかる磁界Hとの関係を図3(b)に示す。

【0024】
図3(b)では、横軸が面内直角方向の磁界Hであり、縦軸は磁性膜21jの長手方向の抵抗値Rmr(Ω)である。なお、ここで、面内直角方向というのは、軸21EA方向に対して磁性膜21j面内方向であってかつ直角方向に、外部から磁界が印加されることを意味する。磁気抵抗特性を表す曲線MRCは、外部磁界ゼロの点を対称軸とした偶関数となる。

【0025】
第1の磁性素子21はバイアス手段21cによって、バイアス磁界MFが軸21EAに直角方向に印加されている。このバイアス磁界MFによって、磁性膜21jの磁化Mは軸21EAから角度θだけ傾く(図3(a)参照)。これを図3(b)でみると、バイアス磁界MFの大きさHbaisが磁性膜21jに印加されているので、動作点が曲線MRCに沿って、Hbais分だけ変化する。なお、第1の磁性素子21に流される電流は、素子端子21a、21b間に印加されるので、ほぼ軸21EA(長手方向)に沿って流れる。

【0026】
この傾斜θによって磁性膜21jの抵抗値は、Rm0まで下がる。この点が第1の磁性素子21の動作点となる。言い換えると、動作点での抵抗値はRm0である。

【0027】
ここで、図3(a)の方向に磁界Hが印加されたとする。この外部磁界Hによって、磁化Mは軸21EA方向に回転させられ、電流Iとなす角がθより小さくなる。図3(b)を参照して、電流Iと磁化Mとのなす角度が小さくなると、第1の磁性素子21の抵抗値はΔRmrだけ増加する(+ΔRmr)。

【0028】
図4には、図3同様第2の磁性素子22だけを記載する。第2の磁性素子22では、バイアス手段22cの方向が図3の第1の磁性素子21のバイアス手段21cと電流Iに対して方向が異なる。まず、バイアス磁界MF’によって磁化Mは軸22EA方向から角度θだけ傾斜する。ただし、バイアス磁界MF’はバイアス磁界MFと方向が異なるので、磁化Mの傾斜方向も図3の場合と逆となる。

【0029】
そして、図3同様の方向から外部磁界Hが印加されたとする。磁化Mはもともと外部磁界Hの印加方向に傾斜していたので、外部磁界Hによって軸22EAから離れる方向に傾斜する。図4(b)でこれを見ると、バイアス磁界Hbaisと同じ方向に印加された外部磁界Hによって第2の磁性素子22の抵抗RmrはΔRmrだけ小さくなる(‐ΔRmr)。

【0030】
すなわち、これら2つの磁性素子21、22は、同一方向からの外部磁界Hに対して、抵抗の変化が異なる磁性素子であるといえる。これは言い換えると、異なるバイアス手段を有しているといってもよい。

【0031】
再び図2を参照して、2つの磁性素子21、22は、すでに説明したように、計測抵抗23、24と共に、ブリッジ回路を形成し、計測端子13a、13bは2つの磁性素子21、22の抵抗変化を電圧変化として、差分出力する端子である。磁性素子21、22は、図3、図4で説明したように外部磁界Hによって抵抗値が(+ΔRmr)、(-ΔRmr)だけ変化する。

【0032】
計測抵抗23、24の抵抗値は、磁性素子21、22の抵抗値より十分大きく、また計測抵抗23、24は同じ大きさの抵抗であるので、磁性素子21、22には同じ電流Iが流れるとみなせる。すると、計測端子13a、13b間の出力電圧は、2×ΔRmr×Iとなる。

【0033】
再度図3を参照して、出力の詳細について式を用いて説明を行う。まず、磁性素子が1つの場合(第1の磁性素子21)について説明する。

【0034】
力率センサ部10は、測定対象である回路の接続線8に近接して配置される。そして接続線8に流れる電流によって発生する磁界Hを受ける。接続線8に流れる電流をIとすると、磁性膜に印加される磁界Hは、比例定数をαとして、(1)式のように表される。
H=αI・・・・(1)

【0035】
図3(b)に示すように、第1の磁性素子21の電気抵抗の変化ΔRmrは、外部からの印加磁界Hに比例するので、比例定数をβとし、(1)式を考慮すると、(2)式のように表される。
ΔRmr=βH=β(αI)・・・・(2)

【0036】
磁性膜21jに磁界が印加されていない時の電気抵抗をRm0とすると、磁界Hが印加された時の磁性膜全体の電気抵抗Rmは、(3)式のように表される。
Rm=Rm0+ΔRmr=Rm0+αβI・・・・(3)

【0037】
つまり、電流Iが流れる接続線8に近接配置された力率センサ部10の磁性膜21jは、(3)式のような電気抵抗特性を有する。この磁性素子21の素子端子21a、21b間に電流Iが流れると、素子端子21a、21b間の電圧Vmrは(4)式のように表される。
Vmr=RmI=(Rm0+ΔRm)I=(Rm0+αβI)I・・・・(4)

【0038】
次に電源7(図1参照)の電圧Vinは、振幅V、角周波数ωとすると、(5)式のように表される。また、被測定回路で負荷9はリアクタンスであるので、負荷9を流れる電流Iは、電源電圧Vinとは位相のズレが生じる。この位相のズレをθとする。一方、力率センサ部10の第1の磁性素子21は、通常の抵抗なので電源電圧Vinと同位相である。したがって、電流IおよびIは、(6)式、(7)式のように表される。

【0039】
そこで、(4)式に(6)式および(7)式を代入すると(8)式のように変形される。

【0040】
【数1】
JP0006083690B2_000002t.gif

【0041】
図2で説明したように磁性素子21および22は、差動増幅するように接続されており、同一磁界に対しては、それぞれ出力が異なる。すなわち、外部磁界Hに対する第1の磁性素子21の電気抵抗の変化分が(2)式で示すΔRmrと表されるとすると、第2の磁性素子22の場合の外部磁界Hに対する電気抵抗の変化分は、(-ΔRmr)となる。すると第2の磁性素子22の場合の出力Vmrは(9)式のように表される。

【0042】
【数2】
JP0006083690B2_000003t.gif

【0043】
力率センサ部10の出力は、差動出力(Vmr-Vmr)であるので、(8)式および(9)式より、(10)式のように表される。

【0044】
【数3】
JP0006083690B2_000004t.gif

【0045】
ここで、(10)式の右項を(11)式のようにAとし、左項を(12)式のようにBとすると、Aは、磁性素子21、22の差分出力の直流成分であり、Bは差分出力の交流成分である。またAは、負荷9の消費電力Iにcosθが乗算された値に比例する。すなわち、Aは、負荷9で消費される電力の有効電力に比例する。また、Bは、負荷9で消費する消費電力の皮相電力に比例する。

【0046】
すなわち、図2を参照して、計測端子13a、13bの端子間には、直流成分として負荷9の有効電力に比例した電圧が得られ、交流成分として負荷9の皮相電力に比例した電圧を得ることができる。

【0047】
よく知られているように、皮相電力は、複素数で表され、その実数成分を有効電力、虚数成分を無効電力と定義される。そして、力率は、皮相電力に対する有効電力の割合と定義される。したがって、力率(cosθ)は、(13)式に示すように、有効電力/皮相電力、すなわち、A/Bで表される。

【0048】
【数4】
JP0006083690B2_000005t.gif

【0049】
上記の説明をまとめると、計測端子13aと13b間には、直流成分として負荷9の有効電力に比例した電圧(A)が生じ、交流成分として負荷9の皮相電力に比例した電圧(B)が生じている。そして、AとBを除算した結果の電圧が力率に比例した電圧として得られる。

【0050】
そこで、再度図1を参照して、計測端子13aと13bの出力は、電圧検出部(アンプ)15によって検出され、ローパスフィルタ16によって直流成分(A:有効電圧に相当)が抽出される。一方、ハイパスフィルタ17によって交流成分(B:皮相電力に相当)が抽出され、整流器18によって直流電圧に変換される。この操作で、(13)式の比例定数Kは、電源角周波数ωに依存しない定数とみなせる。これらは除算手段19によって、A/Bが求められる。結果は、力率(cosθ)に比例した電圧が得られる。

【0051】
以上のように、図1で示した構成を有する力率計測装置1によって、誘導性の負荷9で消費される電力の力率が求めることができる。

【0052】
(実施の形態2)
図5には、磁性素子のバリエーションについて説明する。上記の説明のように、本発明の力率計測装置1は、同一の外部磁界Hに対して、異なる電気抵抗の変化率を有する一対の磁性素子の差分出力から直流電圧(有効電力に比例)と交流電圧(皮相電力に比例)を求め、除算することで力率に比例した電圧を得ることができる。

【0053】
磁性素子の磁性膜自体は、図3(b)、図4(b)でも示したように、外部から作用される磁界に対しては偶関数であり、そのままでは印加磁界に比例した抵抗値を得ることはできない。そこで、磁性素子21、22では、永久磁石のような磁界発生源をバイアス手段21c、22cとして磁性膜21j、22jの近傍に配置することによって、バイアス磁界を生成し、動作点を得た。しかし、磁石のような磁界発生源を用いなくても、動作点を得る方法がある。

【0054】
図5には、第1の磁性素子21の他の形態(第1の磁性素子31)を示す。なお、磁性膜31jの上に、縞模様の導体35が形成されている。また、磁性膜31jは、長手方向に磁化容易軸31EAが誘導されているとする。導体35は、磁性膜31jの電気抵抗と比べて十分に低い材料のものを使用するのが好ましい。具体的には銅若しくはアルミニウム、銀、金といった良導電性材料が好適に用いられる。導体35は、長手方向に対して一定方向に傾斜し、複数個形成される。

【0055】
このような磁性素子31の動作について図3と対応させながら説明する。素子端子31aおよび31b間には、電流Iが流される。素子端子31aから入力された電流Iは、縞模様の導体35から導体35へ流れる際には、磁性膜31j上を流れなければならない。導電部分は磁性膜31jしかないからである。

【0056】
磁性膜31jは、導体35より抵抗が高いため、電流Iは導体35間の最短距離を流れる。これは磁性膜31jの長手方向から見ると、傾斜した方向に電流が流れることとなる。ここで、磁性膜31jの磁化容易軸31EAは第1の磁性素子31の長手方向に誘導されているので、磁化Mと電流Iの向きに傾斜ができる。

【0057】
ここで、磁性膜31jに対して紙面上から下方向に磁界Hが印加されると、磁化Mはそれにつれて回転する(実線白矢印)。すると、回転した磁化Mと電流Iのなす角度が小さくなるので、磁性膜31jの抵抗は高くなる。すなわち、図3の場合同様、+ΔRmrの電気抵抗の変化を示す。

【0058】
図6には、縞模様の導体35が図5の場合とは、逆向きに形成されている場合を示す。電流Iの向きと磁化容易軸32EAの向きおよび外部から印加される磁界Hの向きは、図5の場合と同様である。図6の場合は、紙面上から下方向に印加される磁界Hによって、磁化M(実線矢印)は、電流Iから離れる方向に回転する。これは図4の場合同様、電気抵抗は減少する方向に変化する。すなわち、図4の場合同様、(-ΔRmr)の電気抵抗の変化を示す。

【0059】
このように、予め外部から印加磁界がない状態で、電流Iの流れる方向と、磁化Mの方向に角度をつけておくと、見かけ上バイアス磁界をかけたのと同じ状態になる。すなわち、このような磁性膜31j(または32j)と導体35の構成によってバイアス手段31c(若しくは32c)を形成することができる。

【0060】
なお、図5および図6では、電流Iの流れる方向が磁化容易軸31EA、32EAの方向と変わるような構成としたが、例えば予め磁化容易軸31EA、32EAを磁性膜31j(または32j)の長手方向に対して角度をつけて誘導しておいてもよい(実施形態3参照)。

【0061】
図7には、図5および図6を組み合わせた磁性素子30を示す。また、磁性素子30を含む力率センサ部を符号51で示す。磁性素子30は、力率センサ部10のセンサ端子51taと接続される素子端子30aと第1の計測抵抗23と接続される素子端子30bおよび第2の計測抵抗24と接続される素子端子30b’を有する。

【0062】
素子端子30aはセンタータップと言っても良い。磁性素子30は、素子端子30aから素子端子30bに向かう方向(これを「b方向」と呼ぶ)と30b’に向かう方向(これを「b’方向」と呼ぶ)けて配置された縞模様の導体35の形成方向が異なる。したがって、磁性膜30j上で流れる電流Iの向きは、b方向とb’方向では異なる方向に電流が流れている。

【0063】
このような磁性素子30に対して外部磁界Hが作用し、図7のように磁化Mが回転したとすると、b方向に向かう電流Iからは、磁化Mと電流の向きが同じ方向になるので、図3同様電気抵抗は増加する(+ΔRmr)。一方、b’方向に流れる電流Iからみると、磁化Mと電流の向きが離れる方向になるので、図4同様電気抵抗は減少する(-ΔRmr)。

【0064】
また、b方向およびb’方向にはそれぞれ、十分大きな計測抵抗23、24が直列に接続されており、それぞれの計測抵抗23、24は、力率センサ部10の端子10tbに接続されている。従って、図7に示した磁性素子30を含む力率センサ部51は、図2に示した場合と同様に、ブリッジ回路を形成しており、測定端子13a、13b間には、b方向とb’方向の差分出力が現れる。

【0065】
図8には、この力率センサ部51を有する力率計測装置2の構成を示す。計測端子13a、13bを出力とし、電圧検出部15、ローパスフィルタ16、ハイパスフィルタ17、整流器18、除算手段19は実施の形態1の場合と同じである。本実施の形態で示した力率センサ部51は、バイアス手段に永久磁石等の磁界発生源を必要としないので、小型かつ薄膜化が可能となる。また、磁性素子30はb方向とb’方向に磁性素子31と32を同時形成したものであるが、それぞれ別々に形成して導線で連結してもよい。

【0066】
(実施の形態3)
図9に本実施の形態に関わる力率計測装置3の構成を示す。実施の形態1および2と同じ部分は同じ符号を用い、また説明も省略する。本実施の形態に係る力率計測装置3では、磁性素子41、42に特徴がある。磁性素子41および42は、長手方向に対して、磁化容易軸41EA、42EAが傾斜して誘導されている。さらに、磁性素子41および42の磁化容易軸がそれぞれ磁性膜に流れる電流Iに対して異なる方向に向けて誘導されている。

【0067】
このような構成にすることによって、被測定回路に流れる電流Iによって生成される磁界Hの影響を受け、磁性素子41、42の磁化Mは、M1およびM2のように回転する。磁性素子41、42に流れる電流Iの向きは、素子端子間(41a、41b間および42a、42b間:長手方向)にあるので、磁性素子41、42において、電流の向きと磁化の向きの関係は、それぞれ接近する向きと離れる向きというように異なる向きとなる。

【0068】
これは、実施の形態1および2の場合同様、それぞれの磁性素子41、42において、電気抵抗は増加(+ΔRmr)と減少(-ΔRmr)となる。その後の信号処理に関しても、実施の形態1および2と同様であり、力率cosθに比例する電圧を得ることができる。

【0069】
以上のように本発明の力率計測装置3は、被測定回路中の誘導負荷9での消費電力の力率を電圧値として計測することができる。これは、誘導モータといった、運転状態で力率が変化する負荷の電力制御に大変有効である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、家庭電気製品分野、自動車分野、産業機器分野など誘導負荷(リアクタンス)を制御する局面において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、2、3 力率計測装置
7 電源
8 接続線(抵抗)
9 負荷
10 力率センサ部
10t(10ta、10tb) センサ端子
12(12a、12b) 連結端
13(13a、13b) 計測端子
15 電圧検出部
16 ローパスフィルタ
17 ハイパスフィルタ
18 整流器
19 除算手段
21 第1の磁性素子
21a、21b (第1の磁性素子の)素子端子
21c (第1の磁性素子の)バイアス手段
21j (第1の磁性素子の)磁性膜
21EA (第1の磁性素子の)磁化容易軸
22 第2の磁性素子
22a、22b (第2の磁性素子の)素子端子
22c (第2の磁性素子の)バイアス手段
22j (第2の磁性素子の)磁性膜
22EA (第2の磁性素子の)磁化容易軸
23 第1の計測抵抗
24 第2の計測抵抗
25 絶縁層

31 第1の磁性素子
31a、31b (第1の磁性素子の)素子端子
31j (第1の磁性素子の)磁性膜
31EA (第1の磁性素子の)磁化容易軸
32 第2の磁性素子
32a、32b (第2の磁性素子の)素子端子
32j (第2の磁性素子の)磁性膜
32EA (第2の磁性素子の)磁化容易軸

41 第1の磁性素子
41a、41b (第1の磁性素子の)素子端子
41j (第1の磁性素子の)磁性膜
41EA (第1の磁性素子の)磁化容易軸
42 第2の磁性素子
42a、42b (第2の磁性素子の)素子端子
42j (第2の磁性素子の)磁性膜
42EA (第2の磁性素子の)磁化容易軸
51、52 力率センサ部
51t(51ta、51tb)、52t(52ta、52tb) センサ端子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8