TOP > 国内特許検索 > 非接触気体温度計測方法及び装置 > 明細書

明細書 :非接触気体温度計測方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5866655号 (P5866655)
公開番号 特開2013-068499 (P2013-068499A)
登録日 平成28年1月15日(2016.1.15)
発行日 平成28年2月17日(2016.2.17)
公開日 平成25年4月18日(2013.4.18)
発明の名称または考案の名称 非接触気体温度計測方法及び装置
国際特許分類 G01K  11/32        (2006.01)
G01J   5/58        (2006.01)
FI G01K 11/32 Z
G01J 5/58
請求項の数または発明の数 6
全頁数 6
出願番号 特願2011-206808 (P2011-206808)
出願日 平成23年9月22日(2011.9.22)
審査請求日 平成26年9月9日(2014.9.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】舩谷俊平
審査官 【審査官】深田 高義
参考文献・文献 特開平09-126837(JP,A)
特開2011-180028(JP,A)
特開2003-313545(JP,A)
米国特許第5572016(US,A)
米国特許第4374328(US,A)
調査した分野 G01K 11/32
G01J 5/58
特許請求の範囲 【請求項1】
温度計測対象となる気体に、蛍光染料を溶媒に溶解した1種または複数種の蛍光染料溶液を噴霧して液滴群とし、これに蛍光染料の励起波長域の波長を持つ光を照射し、蛍光染料の蛍光強度を測定し、その蛍光強度から温度を算出することを特徴とする非接触気体温度計測方法。
【請求項2】
前記複数種の蛍光染料溶液は、蛍光染料の温度依存性の違いにより選択され、測定した蛍光染料相互の蛍光強度の比から温度を算出することを特徴とする請求項1に記載の非接触気体温度計測方法。
【請求項3】
前記蛍光染料溶液は、ローダミン系蛍光染料であることを特徴とする請求項1および2に記載の非接触気体温度計測方法。
【請求項4】
前記蛍光染料溶液の希釈溶媒にグリコール系溶剤を用いることを特徴とする請求項1から3に記載の非接触気体温度計測方法。
【請求項5】
前記蛍光染料溶液を噴霧するために超音波噴霧器を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の非接触気体温度計測方法。
【請求項6】
温度計測対象となる気体に、蛍光染料を溶媒に溶解した蛍光染料溶液を液滴として噴霧する供給装置と、蛍光染料の蛍光強度分布を測定する測定装置と、予め測定された蛍光染料の蛍光強度と温度との関係に基づき前記測定装置によって測定された蛍光強度分布を温度分布に変換する変換装置と、を備えたことを特徴とする非接触気体温度計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触気体温度計測法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体の雰囲気温度をフィールド計測する技術に対しては、産業界からの要請が特に強い。例えば、熱交換器等の性能評価においては、熱電対を掃引するなどの方法で温度分布を計測することができるが、平均温度、温度変動といった基本的な物理量の比較に限られており、熱交換機器の設計に必要な温度分布に関する情報が十分に得られない。また、掃引した熱電対による流動状況への影響の問題もある。その対応策として、熱交換器を大きくするなど、安全裕度を高く見積もる方法で対処する場合もあるが、筐体サイズや流体騒音などの制約から、こうした回避策を採用できない事が多い。
【0003】
気体の温度分布計測に関する技術として、雰囲気中に微量のNO(一酸化窒素)を添加し,これにレーザーを照射してその蛍光波長分布から温度を算出するNO-LIF( Laser-Induced Fluorescence)法が知られているが、気体の温度値は数十K程度のばらつきを有するという問題点がある(非特許文献1)。
【0004】
一方、水中の温水の計測に対しては、2色LIF法を適用した温度場計測法が知られている(非特許文献2)。
この計測法は、温度依存性の異なるローダミン系蛍光染料を組み合わせることで、可視化に用いる光源の強度ムラによる蛍光強度の非一様性の影響を打ち消すとともに可視化画像のS/N比を高めることができるため、画像処理手法の向上による温度計測精度の高精度化の余地が大きい。
【0005】
さらに、この水中の蛍光染料を用いた温度場計測法として、蛍光染料の種類や濃度比の最適化により、カラーカメラ1台での2色LIF法を用いた温度計測法が開示されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Bessler, W. G. and Schulz, C.: Quantitative multi-line NO-LIF temperature imaging, Applied Physics B, Laser and Optics, Vol.78, (2004) pp.519-533.
【非特許文献2】Sakakibara,J. and Adrian,R.J.: Whole field measurement of temperature in water using two-colour laser induced fluorescence, Exp.Fluids, Vol.26, (1999) pp.7-15.
【非特許文献3】Funatani, S., Fujisawa, N. and Ikeda,H.: Simultaneous measurement of temperature and velocity using two-colour LIF combined with PIV with a colour CCD camera and its application to the turbulent buoyant plume, Meas. Sci. and Tech., Vol.15, (2004) pp.983-990.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触の多点温度計測をする技術として、非特許文献1の技術ではNOの反応性から、気体の温度値は数十K程度のばらつきを有するという問題点があり、また非特許文献2、3に開示されている水中における蛍光染料を用いた方法を、気体中での蛍光染料の安定性、拡散性の違いからそのまま適用することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、気体の温度分布を高精度で測定することができる、新規の非接触気体温度計測法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各課題は、以下の発明により解決することができる。
温度計測対象となる気体に蛍光染料溶液を噴霧して液滴群とし、これに蛍光染料の励起波長域の波長を持つ光を照射し、蛍光染料の蛍光強度を測定し、その蛍光強度から温度を算出することを主要な特徴としている。
【0010】
蛍光染料溶液を噴霧する方法は、例えば超音波噴霧器が用いられ、安定した状態で気体中に液滴として存在することができ、気体中に均一に拡散させることができる。また、蛍光染料を励起させるための光を照射する光源は、Ar-ionレーザーなども用いることができるが、より低波長のダイオードレーザーを用いてもよい。また蛍光強度の測定には、カラーカメラなどを用いて、撮影する方法をとることができ、得られた画像は解析することにより温度分布を得ることができ、3次元の解析が可能であり、非接触の多点計測を可能とする。
【0011】
また前記複数種の蛍光染料溶液は、蛍光線量の温度依存性の違いにより選択され、測定した蛍光染料相互の蛍光強度の比から温度を算出することを主要な特徴としている。
複数の温度依存性の異なる蛍光染料を用いることで、その相互の蛍光強度の比を用いて温度を算出することにより、単独の蛍光染料を用いるときよりも精度の高い測定が可能となる。
【0012】
さらに蛍光染料溶液は、ローダミン系蛍光染料を用いることを主要な特徴としている。光により励起される蛍光染料であれば、本計測方法に用いることができるが、ローダミン系蛍光染料であれば、安定した蛍光強度を得ることができ、温度計測に適している。
【0013】
また蛍光染料溶液の希釈溶媒にグリコール系溶剤を用いることを主要な特徴としている。希釈溶媒として、蛍光染料を溶解させること、及び気体中での液滴形成が可能な溶媒であれば、本計測方法に用いることが可能であるが、特にグリコール系溶剤のうち例えばエチレングリコールであれば、気体中で蛍光染料が揮発、または沈着してしまうことがなく、所望の測定時間中、安定し気体中に均一に存在させることができる。
【0014】
さらに温度計測対象となる気体に蛍光染料溶液を液滴として噴霧する供給装置と、蛍光染料の強度分布を測定する測定装置と、予め検定された蛍光染料の強度と温度との関係に基づき測定装置によって測定された強度分布を温度分布に変換する変換装置とを備えたことを主要な特徴としており、本装置構成により、気体中の温度分布を測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、気体中の温度分布を非接触、多点計測可能な計測方法および装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
本計測方法を用いて、蛍光染料を雰囲気中に噴霧し、任意断面にレーザーシート光を照射することにより2色LIF法に必要な可視化画像を取得することとした。
そこで、図1に示す測定装置を用いて、可視化用トレーサーとして2種類の蛍光染料(ローダミンB、ローダミン110)を溶解した液体を微粒化し、それをガラス製容器80(600mm×300mm×360mm)中の雰囲気に超音波噴霧器10を用いて、噴霧した。ガラス製容器80の中央に測定対象となる熱源としてニクロム線(直径0.5mm、長さ150mm)を設置し、これに1.4Vの電圧を与えることでニクロム線を加熱し(熱流束9.9×103W/m2)、容器内に浮力プルームを生じさせた。
【実施例1】
【0018】
容器80内の噴霧液滴群70に対して側方からレーザーシート光60を照射し、正面からカラーカメラ20を用いて可視化画像を取得する。噴霧する蛍光染料は、水温計測を目的とした2色LIF法では、蛍光染料をエタノールで溶解し、計測対象となる水で希釈するが、本計測方法では、蛍光染料液滴の揮発を抑え、雰囲気中への均一な拡散を促すため、蛍光染料11mg(ローダミンB 1mg、ローダミン110 10mg)をエタノール10mlで溶解し、さらにエチレングリコール100mlで希釈し、超音波噴霧器10を用いて微粒化した。
【実施例1】
【0019】
2色LIF法に用いる光源を選択する際には、ローダミンB、ローダミン110の励起波長域を考慮すると、波長:488nmのAr-ionレーザーを用いることが望ましいが、カラーカメラのR、G画像に2色LIF法を適用する場合、G画像に入射光が映りこむ影響を考慮する必要がある。特に、本計測では噴霧液滴を可視化するため、散乱光の影響が大きいことが懸念されることから、入射光源にはAr-ionレーザーよりも低波長のダイオードレーザー40(波長:445nm、レーザー出力:1.0W)を用いることにより、G画像への入射光の映り込みを軽減した。
【実施例1】
【0020】
ニクロム線を加熱することで生じさせた浮力プルームを可視化した結果を図2に示す。
図2の画像間演算により算出されたR/G画像より、ニクロム線より真上の位置に暗い(R/G値の低い)領域(図2中央部)が形成されていることが分かる。
【実施例1】
【0021】
2色LIF法では、雰囲気温度の上昇と共にR/G値が単調減少することから(非特許文献2)、ニクロム線の上側にサーマルプルームが生じ、周囲流よりも高温の領域が糸状に形成されていることが推測できる。
【実施例1】
【0022】
この画像から得られた2種類の蛍光染料の蛍光強度を、それぞれの蛍光染料について、予め測定しておいた蛍光強度と温度の相関関係から求めた相互の蛍光染料の蛍光強度の比を用いて、温度を算出した。
【実施例1】
【0023】
また1種類の蛍光染料を用いた場合は、同様に予め測定しておいた蛍光強度と温度の相関関係から求められた検量線から、温度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の非接触気体温度計測装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】本発明の気体温度計測法の一実施例における計測結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
10…超音波噴霧器、20…カラーカメラ、30…シート光学系、40…光源(ダイオードレーザー)、50…スキャニング装置、60…レーザーシート光、70…噴霧液滴群、80…ガラス製容器、90…高温領域
図面
【図1】
0
【図2】
1