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明細書 :感温液晶による温度計測法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-157115 (P2014-157115A)
公開日 平成26年8月28日(2014.8.28)
発明の名称または考案の名称 感温液晶による温度計測法及び装置
国際特許分類 G01K  11/12        (2006.01)
FI G01K 11/12 C
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2013-029052 (P2013-029052)
出願日 平成25年2月18日(2013.2.18)
発明者または考案者 【氏名】鳥山 孝司
【氏名】井上 義貴
【氏名】一宮 浩一
出願人 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
審査請求 未請求
テーマコード 2F056
Fターム 2F056VF06
2F056VF12
要約 【課題】 本発明は、光の3原色以外の波長域にも目を向け、温度との関係性の高い波長を見つけ、より簡易的に、より測定範囲の広い温度計測原理を見いだすことを目的とした。そのため、感温液晶の散乱光を分光器にて各波長の強度を測定し、波長強度と温度の関係を明らかにした。
【解決手段】 本発明の計測方法は、感温液晶を用いた温度計測方法において、可視光の青色部分に相当する波長域(490nm未満)のうち、輝度と温度との関係が単調増加にある領域を用いて、温度を測定することを特徴とした温度計測方法である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
感温液晶を用いた温度計測方法において、可視光の青色部分に相当する波長域(490nm未満)のうち、輝度と温度との関係が単調増加にある領域を用いて、温度を測定することを特徴とした温度計測方法
【請求項2】
粉体または液体またはシート状に固定された感温液晶と、
短波長のうち一つ以上の波長を発光することができる光源と、
反射された輝度を計測できるフォトダイオードからなる温度計測装置
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触の温度計測法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で、かつ簡便な温度(分布)の計測法は、温度制御・管理といった分野で必要になってきている。これらのニーズに対応する製品としては、赤外線カメラや放射温度計といったものがあり、製造の現場などでは既に広く利用されてきている。しかしながら、赤外線カメラは高価であるが、数℃程度の測定誤差があり、あまり精度が高いとは言えない。また、放射温度計についても計測対象の表面形状や色等の放射率の相違により測定精度が低いという問題がある。これらの問題点が解決されれば、より精度の高い合理的な温度制御を行えるようになると共に、今まで利用されていないような分野にも非接触温度計測が使用されるようになると考えられる。
【0003】
そこで、温度計測幅は狭まるという問題点があるが精度がよい温度計測法である感温液晶をもちいる手法に着目する。なお感温液晶は、温度に対応して散乱光が変化する特性を持っている。この方法では、CCDカメラにて光の3原色の輝度として計測し、その輝度と温度との相関式を用いて温度計測を行う。光の3原色をどのように用いるかによって手法は異なり、光の3原色の輝度を引数とする多項式により温度を検定するRGB法(特許文献1)や、光の3原色の輝度をHSI色空間に変換し、そのHue値と温度との関係を用いて温度を検定するHSIスプライン検定法(非特許文献1)がこれまでに報告されている。
【0004】
しかし、これらの計測法には、光の3原色全てを含む光源と、光の3原色の輝度を取得可能なCCDカメラが必要になる。光源は、光の3原色に固定しているため、青色として捉えられる波長よりも短い波長の変動が捉えられず、感温液晶の呈色範囲(色の変わる温度範囲)の高温側の温度計測が難しくなり、測定できる範囲が狭まるという問題点を有している。実際、感温液晶の呈色範囲となる温度差は、感温液晶の精製の仕方にもよるが、通常10℃という温度幅を有している。しかしながら、前述の計測法では、その10℃程度の温度幅を有する感温液晶でも7℃程度の範囲しか計測できないのという問題点を有している。また、製品化するうえで、カラーのCCDカメラは、計測系のサイズや価格を下げにくいという要因にもなっている。
本発明は、光の3原色以外の波長域にも目を向け、温度との関係性の高い波長を見つけ、より簡易的に、より測定範囲の広い温度計測原理を見いだすことを目的とした。そのため、感温液晶の散乱光を分光器にて各波長の強度を測定し、波長強度と温度の関係を明らかにした。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2003-337070公報
【0006】

【非特許文献1】感温液晶による温度測定に関する研究(第1報、分光・色彩特性),日本機械学会論文集B編,Vol.63,No.611,pp.2473-2479,1997.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光の3原色以外の波長域にも目を向け、温度との関係性の高い波長を見つけ、より簡易的に、より測定範囲の広い温度計測原理を見いだすことを目的とした。そのため、感温液晶の散乱光を分光器にて各波長の強度を測定し、波長強度と温度の関係を明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の本発明の構成によって達成することができる。
【0009】
本発明の計測方法は、感温液晶を用いた温度計測方法において、可視光の青色部分に相当する波長域(490nm未満)のうち、輝度と温度との関係が単調増加にある領域を用いて、温度を測定することを特徴とした温度計測方法である。
【0010】
本発明を実施するための装置として、粉体または液体またはシート状に固定された感温液晶と、短波長のうち一つ以上の波長を発光することができる光源と、反射された輝度を計測できるフォトダイオードからなる温度計測装置である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について説明する。本発明は、粉体または液体またはシート状に固定された感温液晶と、短波長のうち一つ以上の波長を発光することができる光源と、反射された輝度を計測できるフォトダイオードを備えればよい。実験装置の概略を図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の装置の概略を示す。
【図2】実験装置の写真を示す。
【図3】代表的な温度における分光器から得られた全ての波長域の輝度に相当する信号強度の関係を示す。
【図4】白板を用いて正規化した信号強度比の計測結果を示す。
【図5】感温液晶の呈色範囲(28.8~35.5℃)よりも、やや広い温度範囲(25~40℃)にわたる計測結果を示す。
【図6】470、480、490nmの信号強度比と温度の関係を示す。

【実施例】
【0013】
実験装置の写真を図2に示す。予備実験から、ハロゲン光源を照射し続けると感温液晶の温度が上昇してしまうことが明らかになったので、電動の移動ステージを用いてセンサ部を等速速度で移動させる構造にした。これにより長時間にかけて同一個所にハロゲン光を照射しなくなるため、ハロゲン光の影響を極力小さくすることが可能になる。本実験では、電動の移動ステージにより移動させながら計測を行うため、温度分布の変化率は小さい程、精度のよい計測が可能になるため、実験装置のサイズの都合も考え、A4サイズのシートの縦方向をセンサの移動方向になるようにした。そのため、縦230mm、横370mmの伝熱板を製作し、伝熱板の両端には恒温水を循環させ、温度分布を形成した。センサは感温液晶に対して垂直に当て、散乱光を得るためのハロゲン光は45°の角度から照射した。分光器と電動の移動ステージの同期ができなかったため、実験の実施に対しては手動で同期させる必要があった。これを遂行するために、図1に示すようなスタートライン及びスタートチェックラインを2cm間隔に凧糸で伝熱面上に設置した。分光器の計測間隔の最短時間が1秒、電動の移動ステージの最低移動速度が1cm/sであるので、スタートラインとスタートチェックラインの間隔を1cmの倍数で設置する必要がある。本発明では、設置の容易さなどの関係から2cmとした。感温液晶の温度は、2cmの等間隔に設置したT型熱電対(計14点)とその間を補間により得た23点の温度を使用した。
【0014】
本実験における恒温水の設定温度と実験時の室温を表1に示す。本実験では、感温液晶の呈色範囲外での散乱光についても測定するが、1回の実験で幅広い温度範囲を計測できる温度設定を行うとデータの温度幅が大きくなりすぎるため、実験の精度に大きく影響を与えることになる。従って、測定は温度範囲を変えて3種類行うこととした。なお、室温は一様な温度分布の形成に対して悪影響を与えないように、伝熱板の両端に流す恒温水の中間付近の温度になるように室温を調節している。
本実験で使用する感温液晶はシート状になっているものであり、呈色範囲は28.8~35.5℃である。ハロゲン光が当たる面を表面として、伝熱板と接する面を裏面として表したときのシートの構造を表2にまとめる。シート1が通常市販されている感温液晶で、入射させるハロゲン光の反射の影響を軽減することを目的に、シートの構造が異なる5種類を準備した。なお、シートに使用されている各材料の詳細は表3の通りである。
【0015】
【表1】
JP2014157115A_000003t.gif

【0016】
【表2】
JP2014157115A_000004t.gif

【0017】
【表3】
JP2014157115A_000005t.gif

【0018】
実験方法
最初に、室温を恒温水槽の高温側と低温側の中間付近の温度に設定する。また、伝熱板の恒温水を流している部分の高温側には室温による冷却、低温側には加熱の影響を受ける。そのため、恒温水槽の設定温度を実際に測定したい温度よりもそれぞれ高め及び低めに調整し、任意の温度分布が形成させるようにした。
【0019】
伝熱板に設定した熱電対により温度を計測し、ある一定時間変動せず、温度分布も位置に対してほぼ一定になっているのを確認できたところで温度設定の完了となる。この温度設定をしている間に、電動の移動ステージと分光器の設定を行う。ここでは、電動の移動ステージを等速で1cm/sの速さで移動できるようにし、分光器は1秒毎に計23回計測するように設定を行った。温度設定の完了後、スタートラインより前から電動の移動ステージの等速移動をスタートさせ、センサがスタートラインを通過すると同時に分光器での計測を手動で開始させ、散乱光の計測を行う。正しく計測できていれば分光器で計測されている2番目のデータは、凧糸の値を計測し、残りのデータは全て熱電対の設置されている個所を計測することになる。なお、凧糸の色は白色であるため、分光器で計測される値は幅広い波長域で大きな値が計測されることになるので容易に確認が可能である。

【0020】
実験結果及び考察
ハロゲン光源を使用して予備実験を行った結果、シート4以外の感温液晶では表面材による反射の影響が大きく計測することができなかった。なお、十分な増幅率を有するフォトダイオードとLED光源を用いた任意波長の反射率を測定できる計測器にて計測したところ、全てのシートにおいて照射するLED光源の波長に応じた波長の強度の計測が可能であることを確認できている。従って、一般的に用いられるような表面がPETで覆われている感温液晶においても計測機側の改善により適用できると考えられる。
本発明では、分光器により様々な波長域に対して温度との関係を検討することを目的としているため、以後の結果及び結論はシート4に関して、ハロゲン光による実験を行い評価した結果を示す。

【0021】
光源の特性
図3に、代表的な温度における分光器から得られた全ての波長域の輝度に相当する信号強度の関係を示す。なお、横軸が波長で、縦軸が信号強度である。この信号強度は波打っている様子が分かる。これは、用いた分光器の出力が、校正されたデータを出力するタイプではなく、得られたデータを後から校正する仕組みであることによる。校正をするためには、白板と呼ばれる校正用の板の散乱光のデータを用いる。なお、この校正は分光器の製造業者のみができるものであり、その都度容易に行うことができないという欠点がある。そこで本発明では、この白板の散乱光を分母にして計測された信号強度を正規化し、信号強度比として評価を行うこととした。
【0022】
図4に、白板を用いて正規化した信号強度比の計測結果を示す。なお、横軸は波長で、縦軸は信号強度比である。このように正規化を行うと、図3にみられたような波打ちは観測されなくなる。

【0023】
任意の波長での波長強度比と温度との関係
図5に感温液晶の呈色範囲(28.8~35.5℃)よりも、やや広い温度範囲(25~40℃)にわたる計測結果を示す。なお、横軸が波長で、縦軸が信号強度比である。呈色範囲を外れた温度範囲では肉眼で差異を確認することはできないが、信号強度比には呈色範囲外でも違いが生じている様子が分かる。ここで、500nm未満に注目すると、温度上昇に伴い信号強度比が大きくなる傾向があるように見受けられる。そこで、代表的に470、480、490nmの信号強度比と温度の関係を図6に示す。特に、480nmでは呈色範囲を上回る温度範囲で、この関係が維持されていることが分かる。すなわち、単波長(480nm)の信号強度比を用いることにより、12.4℃範囲(25~37.4℃)の温度が検定でき、さらに単波長強度1つのみになるので計測装置の簡略化ができる可能性が示されたと言える。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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